- 44 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/08/29(月) 23:12:05 ID:NexOnjGg0
- Contract1−『ロンゲスト・プレゼント』 chapter2
- 45 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/08/29(月) 23:12:48 ID:NexOnjGg0
-
日も落ちて数刻ほどたった暗い路地裏。
そこを両手いっぱいにビニール袋を提げて歩く一人の男。
よれよれのノータイ黒スーツに顎ヒゲの男は足元に転がるゴミを軽く避けながら暗い路地裏の奥へと足を進める。
両手の袋には一人で運ぶには少しばかり多すぎる雑貨が詰め込まれている。
その男の顔はどこか不満げだ。
- 46 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/08/29(月) 23:14:04 ID:NexOnjGg0
「やれやれ、最近ついてねえな。……ん?」
と、少し離れたところで何やら人が集まっている。
「ゲヘヘ、こんな時間に裏通りうろついてんのは男を誘ってんのかい?」
「お兄さんたちが遊んであげるぜ」
「そ、そんな事しません! ここを通してください!」
「そんな事言わないで、とりあえず俺たちの車に乗らない? 楽しいことしようぜ」
- 47 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/08/29(月) 23:14:48 ID:NexOnjGg0
どうやら一人の少女が三人のゴロツキに絡まれているらしい。
ここ最近はこの辺りも少し物騒になってきた。
このような光景を目撃するのも初めてではない。
両手の荷物をそっと地面に降ろし、ゴロツキの集団へゆっくりと近寄る。
後ろから聞こえてくる跫音にいかつい顔をした男たちが振り返る。
「よう大将、お楽しみだな。俺も混ぜてくれよ」
- 48 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/08/29(月) 23:15:35 ID:NexOnjGg0
「何だ手前。怪我したくなかったら引っ込んでろ!」
近づく邪魔者にスキンヘッドの男が応じる。
ゴロツキの男は大きなバトルナイフを引き抜いてチラつかせる。
だがしかし、スーツの男はまるで旧友に話しかけるような物腰で親しげに近寄る。
「お? そのナイフ、陸軍の二式短剣か。盗難品、もしくはお前、脱走兵か?」
「なっ!?」
- 49 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/08/29(月) 23:16:42 ID:NexOnjGg0
脱走の事実を言い当てられ驚いている隙に、スーツの男は目の前まで近づいてきていた。
とっさにナイフで牽制しようと邪魔者の顔を睨みつけると、ある事に気づく。
―――この男、目が笑っていない。
次の瞬間、邪魔者の手によってスキンヘッドの視界は逆転し、暗闇に包まれる。
そして男は間髪入れずに次の獲物へ低く襲い掛かる。
スーツの男は呆気にとられているゴロツキの顎を鋭く打ち抜くと、残りの一人へ駆け寄る。
- 50 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/08/29(月) 23:17:24 ID:NexOnjGg0
-
「くそおぉ!!」
しかし一人残ったゴロツキが懐へ手を差し入れ、拳銃を引き抜いて構えようとする。
だがそうはさせない。
スーツに隠したPSS拳銃を素早く引き抜き、ゴロツキの額へと押し付ける。
金属の冷たい感触が哀れな男に現実を突きつける。
- 51 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/08/29(月) 23:18:30 ID:NexOnjGg0
「さあ、そいつを仕舞うんだ。……よし、それで良い。
これでこの通りでは何一つ揉め事は起きなかったという訳だ。そうだろう?大将」
「は、はいぃぃ! 何も問題は起きていません!」
「おう、良い子だ。ほら、揉め事がお前の頭を吹き飛ばす前に帰った方が良いぞ」
突きつけた拳銃を離すと、慌てた男は気を失った仲間を引きずりながら路地裏に消えていった。
先程の少女をチラと見ると腰を抜かしているようだ。
そこで手を差し伸ばし、少女が体を起こすのを手伝う。
- 52 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/29(月) 23:21:00 ID:NexOnjGg0
-
「あ、あの、ありがとうございます!」
「最近は軍の脱走が多いのか。物騒なもんだ」
「…………あの、何かお礼を」
男は少女の声の小ささからか、話に気づかない。
「あー、もうこんな時間か。じゃ気を付けてな」
「ちょ、まって……」
そういって男は路上に置いたビニール袋を持ち直すと、さっさと行ってしまった。
そして後には呆気にとられた少女が一人。
立ち去る男の名は……
- 53 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/08/29(月) 23:22:18 ID:NexOnjGg0
(,,゚Д゚)「あー、良いことした」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
- 54 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/08/29(月) 23:23:46 ID:NexOnjGg0
-
(,,゚Д゚) GIFTのようです Contract1−『ロンゲスト・プレゼント』 chapter2
____________________________________________________________________________
- 55 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/29(月) 23:25:02 ID:NexOnjGg0
- 場所は変わって、ヤーパンの首都を一望する高層ビルの最上階。
薄暗い部屋には華美な調度品が置かれ、中央には権力を誇示するかのような巨大な執務机。
一枚の大きな窓を通して注ぐ街明りによって二人の男のシルエットが浮かんでいる。
その一人の男は大きな椅子に深くかけ、ゆったりと葉巻を燻らせながら眼前の部下の話に耳を傾けている。
「どうやら犬どもが朝日を嗅ぎつけたようです。おそらく近いうちに攻撃が始まるかと」
「例の傭兵連中か。あの者共なら容易く朝日を奪うだろう」
もう一人の部下の男は机の前で直立したまま答える。
その部下の男の顔には重圧に緊張した色が浮かんでいる。
- 56 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/29(月) 23:25:42 ID:NexOnjGg0
「しかし……、奪還されてはまずいのでは?」
「構わん。朝日の研究はある程度までは役だったがそこまでだ」
「では、データのみ始末するということで」
「そうだ、朝日は『CODE:α』の事も知らん。下手に消すとアリセームの連中に我々が怪しまれる」
「はっ、かしこまりました」
- 57 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/29(月) 23:26:42 ID:NexOnjGg0
男は葉巻を灰皿に置くと立ち上がり、部屋の壁に据えられた大型モニターの前まで悠然と歩く。
すかさず部下が手元のPDAでモニターを操作し画面を切り替える。
「ふむ、この犬の頭は元被験者だったか。まさか朝日と巡り会うとは……面白い」
男は顔に薄く笑みを浮かべて壁のモニターを見つめる。
モニターに映るのはある傭兵のプロフィール。
- 58 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/29(月) 23:28:57 ID:NexOnjGg0
「なるほど、例の処置を施した者でしたか」
「……よし、では頼んだぞ。同志」
「はっ、失礼いたします閣下」
部下の男は軽く安堵の表情を浮かべながら部屋を去る。
そして広く薄暗い部屋に一人残された男が呟く。
「くっくっく……タロウ・ギコーネか。皮肉なものだ」
ヤーパンの首都『帝都』は眠らない街。
しかしその明るさとは裏腹に、そこに巣食う闇はどこまでも深い。
今も、闇はじわじわとその勢力を広げている。
- 59 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/08/29(月) 23:31:01 ID:NexOnjGg0
- ___________________________________________________________________________
場所は戻って、先ほどの帝都近郊のベッドタウン。その町の小汚いオフィスビル二階奥。
少しばかり立てつけの悪くなった扉を開けると、そこは傭兵たちのアジト。
物が散乱しゴミゴミとしている様は事務所には見えないがつまるところ『Black Dog』の事務所。
そこの軋む扉をギコは無理やり押し閉めようと格闘している。
- 60 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/08/29(月) 23:32:03 ID:NexOnjGg0
-
(,,゚Д゚)「くそ……、この扉までいかれてきやがった」
( ´_ゝ`)「お、補給のお帰りか」
どうにか扉に勝利したギコが応接室に入るとそこには兄者のみ。
ちなみに応接室とはいっても直接の来客があるわけでも無いので、たいてい誰かがくつろいでいる。
と、兄者は何か図面のようなものを開いているようだ。
とりあえず買ってきた食料品をこれまた古ぼけた冷蔵庫に入れる。
- 61 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/29(月) 23:32:51 ID:NexOnjGg0
(,,゚Д゚)「あれ、ほかの連中は? それとほれ、ご注文の瓶コーラだ」
( ´_ゝ`)「おお……ありがてえ、ありがてえ。皆は来週の準備で出てるよ」
(,,゚Д゚)「ふーん。お、それが例の研究所の図面か」
兄者が見ているのは潜入を依頼された製薬会社の詳細な敷地図だった。
- 62 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/29(月) 23:33:42 ID:NexOnjGg0
-
( ´_ゝ`)「まだギコには見せてなかったな。さっきSMGのシステムにハッキングしたんだ。
俺の部屋で成果を見るか?」
(,,゚Д゚)「おいおい大企業にハッキングなんてよくやったな。よし、見せて貰おうか」
( ´_ゝ`)「ただし、件の研究所自体にはアクセスできなかったんだ。
おそらく研究所のネットワーク全体が閉鎖されているんだろう」
ギコ達は応接室の隣の部屋の一つのPCルームに移動する。
部屋一杯に兄者が使用するあらゆる電子機器が積まれているような部屋だ。
- 63 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/29(月) 23:34:26 ID:NexOnjGg0
(,,゚Д゚)「ただの研究所にしては妙に秘匿性が高いな」
( ´_ゝ`)「ああ、だからハッキングできたのは警備部門までだ。
コイツを見てくれ。これで解ったんだがここ二ヶ月で一気に警備が強化されているようだな。」
コーラの王冠が開けられる軽い音が響く。
兄者が瓶を仰ぎながら複数のモニターにデータを表示すると、それを眺めているギコの顔が少し険しくなる。
- 64 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/29(月) 23:35:28 ID:NexOnjGg0
(,,゚Д゚)「……こいつはまるでちょっとした要塞だな。周囲は高電圧ワイヤー付きの3mの壁。要所には機関銃陣地。
それにストライカー装甲車。小型の対空陣地に哨戒ヘリ………戦争でもする気なのか?」
( ´_ゝ`)「流石はSMG、貧乏人からむしり取った金でおもちゃを揃えてる。
だが急ぎで警備を強化しただけあって隙も多い。警備部門のネットワークセキュリティは穴だらけだったぞ」
(,,゚Д゚)「警備強化には朝日が絡んでいる可能性が高いな。……ん?これは何だ?」
ギコが指差すのは少し古い施設図の写真。建物の重なるように長い線が引かれている。
兄者が高速でキーボードを叩くと部屋のモニターが目まぐるしくその表示を変える。
- 65 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/29(月) 23:37:26 ID:NexOnjGg0
( ´_ゝ`)「それは……、地下の排水施設だな。これは使えるかもしれん。警備記録だと巡回も手薄なようだな」
(,,゚Д゚)「うん、ここから侵入できそうだ。ところで肝心の朝日の居場所は掴めたか?」
( ´_ゝ`)「それはハッキリとは言えないな。いくつか警備の厳重な場所もあるが虱潰しに行くしかない。
どちらにせよ警備記録を見るにあまり穏やかじゃなさそうだ。おそらく朝日は軟禁状態だろう」
(,,゚Д゚)「それはよろしく無いな。……しかし朝日祐介か、いったい何の研究をしてたんだ?」
( ´_ゝ`)「さあな。ま、首を突っ込んだらロクな事にならない気はするがな。
『君子危うきに近寄らず』だ、データは覗き見しない方が良いかもな」
兄者が飲み干したコーラを後ろのゴミ箱に投げ入れると、玄関から慌ただしい声がする。
- 66 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/29(月) 23:38:10 ID:NexOnjGg0
ξ゚听)ξ「あら、誰もいないの? 」
川 ゚ -゚)「兄者が留守番してるはずなんだが。部屋かな」
部屋に慌ただしく入ってきたのはクーとツン、2人とも何か重そうな麻袋を抱えている。
と、ギコと兄者が部屋の扉からひょこっと顔を出す。
( ´_ゝ`)「やっとお帰りか」
(,,゚Д゚)「ようおかえり。どこにいってたんだ?」
ξ゚听)ξ「装備を整えにショボンの所に行ってたのよ」
川 ゚ -゚)「頼んでおいた銃が届いたんでな。……こいつだ」
- 67 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/29(月) 23:42:18 ID:NexOnjGg0
(,,゚Д゚)「おぉ、VSSヴィントレスか。これは任務に合わせてきたな」
短く太い黒の銃身に木製のストック、そしてスコープが据えられている。
現れた銃は『VSSヴィントレス』、シベリアが産んだ特殊部隊のための奇銃。
川 ゚ -゚)「流石に隠密任務で大口径狙撃銃を振り回すわけにはいかないからな。
ただ、試射したら解ったんだが、この銃やたらに癖が強い」
ξ゚听)ξ「シベリアの銃よね。あまり詳しくないけど、確か消音狙撃銃よね」
(,,゚Д゚)「そうだ、訓練で扱ったことがあるが、恐ろしく静かな狙撃銃だ。400m先のボディアーマーを貫く威力もある」
川 ゚ -゚)「その代わり弾頭が重くて初速が低いせいで弾道が落ちやすいんだ
しかも有効射程距離は400m以内。使いどころが限られてくる」
ξ;゚听)ξ「よくそんなの扱おうと思うわね……」
( ´_ゝ`)「まったく話に入れないZE☆」
- 68 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/29(月) 23:45:39 ID:NexOnjGg0
- 兄者を蚊帳の外に話は進んでいく。するとどたどたと玄関から複数の足音がする。
_
( ゚∀゚)「よう揃ってるな」
( ^ω^)「ただいまだおー」
( ´_>`)「おいクー、事務所で何物騒なものを構えているんだ?」
(,,゚Д゚)「全員帰ってきたか。よし、そろそろ作戦を詰めるとしようか」
作戦決行まで、あと7日。
next chapter is coming soon.....
戻る 次へ