- 108 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/10(金) 00:17:47 ID:ymPuZE/Q0
- 深夜の森に響く甲高い発砲音、周囲の木々を照らす炎が建物から上がっていた。
森の中に鎮座するには不釣り合いな大きさの施設、その建物の内の一つ。
硝煙の香りが立ち込める室内で男が壁に据え付けられた室内回線に向かっている。
男はこの棟の武装警備員である。
とある軍から出向してきた軍属の人間で、確固たる訓練を受けた軍人である。
しかし男はいつにもなく焦っていた。
なぜなら先程まで談笑していたはずの男の仲間はすでにこの世にはいない。
今まで男とコーヒーを飲んでいた仲間たちは、いきなり飛び込んできた侵入者の攻撃で死亡している。
たまたま部屋から出たので突如現れた襲撃者から逃れることが出来た。
男は乱入者の攻撃からとっさに逃げ、今こうして倉庫に身を隠している。
「畜生! こちら警備棟地下、セキュリティー・チーム! 聞こえるか!?」
「こちらHQ。聞こえてい……√\……z/……」
「侵入者だ! この建物にも侵入者がいるぞ! ……おい? 聞こえているのか!? …………くそっ!!」
突如として雑音を吐き出し始めた子機と時を同じくして天井の蛍光灯が消える。
一拍おいて、部屋に一つだけある非常灯が室内を薄く赤で照らしだす。
酷く頼りない非常灯で暗い室内を見渡すことはできない。
武器も連絡手段もなく、ここにあるのは目の前の非常灯だけ。
あまりの状況に夢かと思いたくて頭を振る。
「くそ、いったい何が…………っッッ」
- 109 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/10(金) 00:18:52 ID:ymPuZE/Q0
その瞬間、男の身体を無数の金属が貫くと、その身を無理やり地面へと引き倒す。
男を襲ったのは6.8×43mm SPC弾。
防弾チョッキを貫通したそれは循環器をズタズタに引き裂き、外傷性ショックにて即座に絶命に至らせた。
すると凶弾の射手が部屋の入り口から現れた。
頭部には異形と見間違えるようなナイトヴィジョンが見える。
男の視線と同軸に連動した銃口が素早く室内を見渡し、ゆっくりと室内に入る。
男は注意深く床に臥した死体へと近寄り、死体から非常灯より黒く朱い液体が広がった事を確認する。
「オールクリア。どこもかしこもシベリアの兵ばかりだな……」
「なんでシベリア兵が此処にいるのかは解らないけど、ツイてないのは確実だおね」
男は廊下に戻り、周囲を警戒しながら無線のスイッチを入れる。
(,,゚Д゚)『こちらマスティフ6、B1Fを制圧し、発電機と制御盤を破壊した。
現在警備棟は非常電源に切り替わっている。これより上階へと向かう、誘導を頼む』
( ´_ゝ`)『こちらビーグル2、コピー。耳をかっぽじって聞け。
まずはB1Fの隔壁を作動させよう、アクセスパネルがあるはずだ』
その男の名前はタロウ・ギコーネ。
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- 110 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/10(金) 00:19:32 ID:ymPuZE/Q0
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(,,゚Д゚) GIFTのようです Contract1−『ロンゲスト・プレゼント』 chapter4
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- 111 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/10(金) 00:21:44 ID:ymPuZE/Q0
- 警備棟を縦に貫く貨物エレベーターの内の一つ。
大型車も載るほどの広さで、主に警備機材を運搬する目的のために作られたはずのようなのだが、最近使用された形跡はない。
そのエレベーターの中に人影が三つ。放置されたままの資材の隅に身を潜めている。
( ^ω^)「使われていない貨物エレベーターとは盲点だお」
ξ゚听)ξ「監視カメラもないなんて何処が警備棟なのかしらね」
(,,゚Д゚)「そういうの、この国じゃ『灯台元暗し』って言うんだろ?まるでブーンみたいな奴を、な?」
(# ^ω^)「……よく知ってるおね」
( ´_ゝ`)『どうやら施設改修でこの棟が警備棟になる際に増設されたようなんだが、それから使用履歴がほとんどない。
急ピッチの工事のせいか警備システムの目が届いていない場所だ』
(,,゚Д゚)「システムの穴を見つけるとは、流石だな」
( ´_ゝ`)『俺ら兄弟のマネしてんじゃねえよ。
っと、よしもうすぐ14Fに着くぞ。準備しろ』
(,,゚Д゚)「良いか、これから保安室を掌握するまでは出来るだけ静かにいくぞ。
指示を聞き漏らすなよ。」
( ^ω^)ξ゚听)ξ「了解」
- 112 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/10(金) 00:23:58 ID:ymPuZE/Q0
- (,,゚Д゚)「各自装備をチェック。備えろ」
少し間をおいて、エレベーターの扉というよりは隔壁に近いそれが上部へゆっくりとせりあがる。
完全な暗闇から多少明るい場所へ出るため、暗視装置が光量を自動で調節する。
せりあがる隔壁の向こうには足元を照らせるだけの最低限の非常灯が設置された長く暗い廊下が見えた。
廊下には幾つかドアがあるが、光もなく見た限りでは人の気配はないようだ。
その廊下は夜目の効く者には、そこまで暗いものでもない為、ギコ達は視界の狭まる暗視装置を外す。
エレベーターから僅かに足を踏み出し、そこで腰を低く膝立ちで様子を見る。
(,,゚Д゚)「……クリア」
( ´_ゝ`)『よし、そこは保安室のある14Fの北西部だ、保安室はその長い廊下をぬけた右前方にある。
必要なら入口のロックはこちらから解除する。
ドアに取り付いたら渡しておいた通信モジュールをアクセスパネルに接続してくれ』
(,,゚Д゚)「了解。よし、俺がポイントマンだ。行くぞ」
- 113 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/10(金) 00:27:05 ID:ymPuZE/Q0
- 三人は廊下を固まって進む。
リノリウムの床を蹴る足取りは慎重だ。
だが警備上の重要エリアであるというのに周囲に人影が見当たらない。
どうやら殆どの警備兵が施設入り口の戦闘に出張っているようだ。
ξ゚听)ξ「……!」
と、前方のドアから光が漏れる。
誰かがフラッシュライトを扱っているらしい。
ギコ達はもれなく周囲を警戒しながらそのドアの手前に取りつく。
先頭のギコがゆっくりと部屋を覗きこむと、なかには一人の警備兵がライトを片手に壁の配電盤を扱っている。
どうやら停電の復旧作業をしているらしい。
(,,゚Д゚)(室内に一名。 俺がやる)
ギコがハンドサインで部屋の状況を伝えると腰のナイフをすらりと抜く。
そのままツンとブーンは姿勢を低くし、廊下の前後を警戒している。
警備兵は作業に集中しているのか、こちらに注意を投げかかる様子はない。
ここで騒ぎになる訳にはいかない。
ギコは右手に黒塗りのナイフを構え、ゆっくりと忍びよる。
男の真後ろまでくると素早く左手で男の口を塞ぐ。
同時に背中右側の肋骨下に存在する肝臓をナイフの切っ先で狙う。
寝かせたナイフの刃を体全体でぶつかる様に押し込むとずぶり、と刃先が沈んでいく。
「っ……かっ……」
鈍く緩やかな抵抗で背中へと深々と刺さった刃を、素早く引き抜く。
肝臓の刺突によって血管は破壊され、腹腔内大量出血によって男は即座に意識を失った。
ゆらりと力を失って男の身体がギコの方へもたれかかってくる。
そのままナイフを男の首元に走らせると完全にトドメを刺す。
(,,゚Д゚)「おやすみ、イワン君」
音の出ぬよう男の身体を支えて床へ静かに横たわらせる。
と、ギコの無線にブーンの声が。
- 114 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/10(金) 00:29:25 ID:ymPuZE/Q0
- ( ^ω^)「6、2……! そこから動くなお。廊下に新手、一名。……間に合わない、僕がやるお」
( ^ω^)(右手に何か持ってるおね……多少は音が出るかお)
先ほどの警備兵の仲間が様子を見にきたのか、廊下の奥から工具箱らしき物を片手に人影が一人。
まともな非常灯がない廊下でもある程度接近されてしまえば侵入者だと判明してしまう。
ブーンは迷わずライフルの銃口を人影に向ける。セレクターをセミオートにし、引き金を三回立て続けに引き絞る。
減音器にて低く抑えられた銃声を合図に亜音速弾が警備兵に襲い掛かる。
的確に狙って発射された三つの弾丸はそれぞれ頭部、胸部、腹部に着弾した。
ξ゚听)ξ(!)
男の身体がゆっくりと崩れる。
弛緩したその右手からは箱が手放され、廊下に金属同士のぶつかる大きな音が響きわたる。
その音の大きさに、三人の身体に緊張が走る。
ここは警備棟、大きな騒ぎになれば面倒なことになる。
だが少し待ってみても辺りには遠くから聞こえてくる発砲音以外は聞こえない。
どうやら誰も戦闘中の騒動の中、工具箱が落ちた程度の音は気にしなかったようだ。
ξ;゚听)ξ「フーッ、はらはらしたわね」
- 115 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/10(金) 00:36:09 ID:ymPuZE/Q0
- ギコが警備兵を始末した部屋からのそりとあらわれる。
三人はまた固まって前方に崩れる死体の元へ進み、生死を確認する。
(,,゚Д゚)「一撃で脳幹を破壊しているな。良くやった。」
ξ゚听)ξ「特訓の成果かしらね」
( ^ω^)「おっおっおっ、もうすぐ保安室だおね」
廊下を突き当り、周囲を確認してから右へ曲がると奥に頑丈そうな鋼鉄製の扉がある。
扉の上には保安室の文字が。
(,,゚Д゚)「よし、あれだな。2、チェック ザ 6」
ξ゚听)ξ「2、コピー」
ツンが後方のカバーに回り、扉に慎重に接近する。
ギコは扉の前まで来ると扉を軽く調べた後にポーチから手のひら大の通信機器を取り出す。
(,,゚Д゚)「ふむ、これを吹き飛ばすのはスマートじゃないな。ビーグル2、今コンソールにモジュールを接続する」
ギコが扉の横に据えられたコンソールに機器を取り付ける。
兄者のパソコンとリンクさせるお手製の機械だ。
( ´_ゝ`)『おう。お、来た来た。よし…………、少し待ってくれ』
コンソールのパネルにノイズが走り、次々と文字が流れていく。
- 116 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/10(金) 00:42:01 ID:ymPuZE/Q0
- コンソールのパネルにノイズが走り、次々と文字が流れていく。
(,,゚Д゚)「3、フラッシュバンレディ」
( ^ω^)「コピー」
ブーンがギコの背のバックパックに下げられたフラッシュバンを手に取る。
ピンを引き抜き投下に備える。
(,,゚Д゚)「スタンバイ」
構えているライフルをセミオートに切り替える。
フォアグリップを握り直し、感触を確かめる。
ゆっくりと呼吸を整え、肩の力を抜く。
ξ゚听)ξ( ^ω^)「コピー」
頭の中で事前に確認した保安室の図面を思い出し、行動の最適解をイメージする。
集中によって頭の中で何かが切り替わった事を確認する。
兄者の声がひどくスローに聞こえる。
慣れ親しんだ感触だ。
( ´_ゝ`)『よしよし……、良い子だ……。よし!開くぞ。準備しろ。
3……2……1……』
視界が広まる。身体は軽い。いつも通りだ、やれる。
と、扉から闘いの合図を知らせる電子音が鳴り響く。
(,,゚Д゚)「Breaching! Breaching!」
甲高い電子開錠音の後に投げ込まれたフラッシュバンが100万カンデラの光と200デジベルの音の洪水で保安室を埋め尽くす。
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- 117 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/10(金) 00:46:29 ID:ymPuZE/Q0
- 一方その頃、研究所の正面ゲートから離れた小高い丘の上。
暗闇に目を凝らすと人影が2人地に伏せていた。
(´<_` )「クー、ゲート前、右前方300mにRPG。撃てるか?」
川 ゚ -゚)「大丈夫だ」
クーが構えているVSSの引き金を引くと、減音された銃声が辺りの木々に吸収される。
発射された徹甲弾はRPGを構えていた射手の腹部を貫いていた。
ゲート前の戦闘では圧倒していた自衛軍の特殊部隊がじりじりと後退し始めていた。
弟者は観測用の三脚付きの双眼鏡から目を離さずに呟く。
(´<_` )「Good! ありゃ即死できないな、かわいそうに。
……10分か……よし、そろそろ良い時間だ。移動しよう」
クーがVSSのスリングを掴み、ライフルの保持に使用していた背嚢を背負う。
その膝を付いて屈んだまま懐からコンパクトなMP7A1を取り出し、薬室の弾薬を確認する。
川 ゚ -゚)「そうだな。次の地点は?」
弟者は双眼鏡を収納し、クーと同様にAS VALを取り出す。
狙撃の痕跡を抹消し、移動の準備をしている。
弟者はタクティカルベストのポーチから手帳を取り出し目を凝らす。
(´<_` )「ポイント・ウィスキーだ。ここから……西に200m程度先の丘の上だ
そこである程度仕事をこなしたら、近くのマンホールから施設に潜り込……?」
- 118 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/10(金) 00:47:55 ID:ymPuZE/Q0
- 胸の無線のスイッチに手を伸ばし、連絡を行うとしたその瞬間。
弟者の腕のPDAが警告画面を表示する。
設置した警戒用のセンサーからの信号に二人の間に緊張が走る。
(´<_` )「! クー、お客さんだ。右前方40mのセンサーが起動。向こうの崖下、……あの岩陰の辺りだ」
川 ゚ -゚)「……裏を取りに来たか。あそこの手前にはトラップを仕掛けてるはずだ」
センサーの設置に合わせて、狙撃地点の周囲にはM18A1クレイモア地雷を仕掛けてある。
信管とワイヤーを連結したそれは起爆すればC4爆薬によって約700個ものベアリング弾を吐き出す代物だ。
(´<_` )「ああ、そうだ。あっちには二個仕掛けてる。」
川 ゚ -゚)「よし、まずは隠れて様子を見よう」
地雷はちょうど二人のいる小高い丘から見下ろす形の岩場に仕掛けてある。
距離は約30m。丘の上に伏せて待ち構えていると、こちらに向かってくる人影が見えた。
弟者が双眼鏡を構える。
(´<_` )「見えた。武装した男が10……いや、15人程度。こっちに向かっている」
川 ゚ -゚)「このままだとトラップにかかるな」
- 119 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/10(金) 00:51:26 ID:ymPuZE/Q0
- 弟者がスリングでAS VALをたぐりよせ、銃口を男たちに向ける。
クーは一度背負った背嚢を目の前に下ろすとその上にライフルを据えスコープを調整する。
近距離に合わせたスコープを覗くとトリチウムによって発光している照準が男たちを捉える。
川 ゚ -゚)「見えたぞ。いつでも撃てる、どうする?」
(´<_` )「いや、まだだ。そうだな二個目だ。二個目のクレイモアが起爆したら攻撃しよう」
川 ゚ -゚)「……今だ、起爆するぞ」
クーの声に合わせたかのように、男たちの目前で橙色の閃光が迸り、ドンと短い爆発音が響く。
罠に掛かった男たちは突然の爆発と散弾の襲来を理解できていないらしく、汚いシベリア語をまき散らしている。
死傷したのは効果範囲内にいた5、6人だったようだ。
(´<_` )「なんだ、あいつらシベリア人か?」
すると最初の起爆の衝撃によってワイヤーピンの抜けた二個目のクレイモアが起爆する。
信管を数秒ほど遅延させる事によって時間差となった二回目のベアリング弾が男たちを襲う。
そして起爆に合わせてクーと弟者が完全に消音された9×39mm弾を集団に発射する。
不意を突いたトラップと位置不明の銃撃によって遊撃に向かっていた十数名の敵兵は瞬く間に舞台から去ることとなった。
二人はそのまま起き上り周囲を警戒する。
(´<_` )「南無南無。一気に片付いてよかったぜ」
川 ゚ -゚)「ああ。だがこれでここも騒がしくなるな」
(´<_` )「もう死体を隠している暇がない。移動しよう」
- 120 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/10(金) 00:54:32 ID:ymPuZE/Q0
- 弟者たちは薄暗い夜の森を駆け抜けていく。
重い装備も物ともせず、足元の怪しい暗闇でもその移動ペースは落ちない。
弟者が移動しながら戦闘中の特殊部隊隊長に連絡を入れる。
さきほど弟者たちが相手にした敵兵達はおそらく森を迂回して特殊部隊を挟撃したかったのだろう。
ほかにも敵がいるかもしれない。
(´<_` )『ホテル6、こちらシエラ2』
『こちらホテル6、どうした』
(´<_` )『狙撃地点から移動中に敵小隊と遭遇。
秘匿位置のまま排除したが、敵兵が森林内に浸透している可能性がある。注意してくれ』
無線越しに、乱れた銃声音と罵声のような声が聞こえてくる。
『了解だ、こちらも手厳しくなってきた。現在ゲートから後退中だ。幸運をいのる』
(´<_` )『すまない。シエラ2、オーバー』
ふいに森が少し開ける。森を切り開いた場所にコンクリート製の小さな一階建ての建物がある。
壁は薄汚れツタが侵食しつつあるその建物は少々昔に立てられたものように見える。
(´<_` )「あそこだ、あの小屋に地下道への連絡口がある」
川 ゚ -゚)「Ok、さっさとあの研究所に乗り込もうじゃないか」
- 121 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/10(金) 01:02:49 ID:ymPuZE/Q0
弟者たちが小屋へと駆けよる。
ドアに取りつくとそれを蹴破って室内へと侵入する。
勢い良く入ってはみたものの、幸いにも室内には人影は見当たらない。
室内は少し据えた匂いがしていて、少なくとも数年は人が使用したような形跡は見当たらない。
川 ゚ -゚)「クリアだ……忌々しい埃の量だな」
(´<_` )「ふむ、これだな」
弟者が銃を下ろすと、部屋の中央の床に積もった埃を足ではらう。
そこには金属製のマンホールが設置されており、所々錆びている。
取っ手を掴み、軽く持ち上げてマンホールをずらす。
中には梯子が下りておるが先は見えない。
暗闇を覗きこむとドブのような臭いが上がってくる。
(´<_` )「まったく、これこそ20世紀の香りだな……」
川 ゚ -゚)「上手いことでも言ったつもりか」
(´<_` ;)「手厳しいな……」『……ビーグル2、こちらシエラ2だ。今、ウィスキーの蓋を開いた』
( ´_ゝ`)『勤務中に飲酒とは良い身分ですNE☆』
(´<_` )『なかなかの年代物でね。良い香りがするんだ』
( ´_ゝ`)『そうだな。そんなに酒が好きなら、今度モロトフカクテルを奢ってやろう』
(´<_` )『酒焼けで焼死は勘弁願いたいね
例の立坑を見つけた。これより地下に入る。シエラアウト』
川 ゚ -゚)「作戦開始から15分か。ギコ達もそろそろセキュりティを抑える頃か」
弟者はブッシュハットを一度脱いで暗視装置を頭に着ける。
すぐに電源をいれ、周囲を緑の濃淡で表現された世界に変える。
改めてブッシュハットを被りなおし、クーの方を一瞥し梯子へと足を下ろした。
(´<_` )「俺は警備員に同情するね、ほんと」
ギコ達が大暴れしているであろう警備棟の職員に同情を寄せつつ、弟者は地下の暗闇にきえた。
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- 122 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/10(金) 01:04:01 ID:ymPuZE/Q0
- 今日の投下は以上です。
弟者の顔は元に戻すことにしました
- 124 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/09(金) 20:25:15 ID:e4yISufU0
- 今から続きを投下します
- 125 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/03/09(金) 20:27:50 ID:e4yISufU0
- 研究所正門ゲートから連なる舗装路上にて。
「くそっ、小隊長! 追撃が厳しくなってきました!」
正面ゲート前の戦闘から、政府軍の部隊がじりじりと後退を続けていた。
肩に小隊長と大尉を示す徽章を付けた男、ホテル6に対してその部下が話しかけている。
今、正面ゲートにて陽動をかけているヤーパン政府軍特殊部隊は部隊を三つのチームに分けていた。
一つのチームは10人ほどで構成されている。
- 126 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/09(金) 20:29:43 ID:e4yISufU0
- 「少尉、落ち着け。まだ作戦行動時刻じゃない。
彼らが保安室を制圧するまで、まだ最終後退線までの余裕はある」
「……了解です。しかしこの追撃はただの警備兵とは思えません! 情報部のクソ野郎どもめ!」
「確かに、ソビエトの最新兵器を保有しているのはおかしいな。だが傭兵が保安室を制圧したら支援のヘリが到着する、それまでの我慢だ」
三つにチームを分け、その内二つが正面ゲート周辺の林に残る。
さらに残り一つのチームがゲートから連なる道を後退していくことで、部隊はすり鉢状の弧を描く小規模な遅滞戦闘を仕掛けている。
彼らが戦っているのはまさにそのすり鉢の底に当たる部分である。
ここで敵の追撃を受け止め保安室確保後に両翼の戦力がゲートへと押し上げる算段だ。
つまり、最も追撃の激しい部分であり、現にチームは警備兵とは思えない敵の銃火に晒されている。
と、銃火から二人の身を隠す木が着弾に震える。
「……っつ、この! 小隊長! 後ろの土嚢へ!」
少尉と呼ばれた男が木陰から僅かに身を晒し、発砲点へと撃ち返した。
その制圧射撃の間に小隊長格の男が後ろの腰ほどの高さへ土嚢が積まれた射撃壕へと移り、少尉と射撃を交代する。
正確な三点射がこちらへ発砲してきた警備の男に直撃する。
「少尉! 今だ!」
- 127 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/09(金) 20:34:42 ID:e4yISufU0
- 男の放つ制圧射撃の隙に少尉格の男が木陰から土嚢の影目指して素早く滑り込んできた。
軽く一息を入れて、少しばかり意気の上がった少尉に声をかける。
「よし……、作戦開始から6分か。
軍曹、衛星通信機をビーグル2へ繋いでくれ」
少尉の男は肩に背負った大型通信機の子器を下ろすと、上部の周波数コントロールノブを回し始めた。
「……了解、こちらです」
小隊長はいつの間にか額にかいていた汗を拭い去り、軍曹から通信機の子器を受け取る。
『こちらホテル6、ビーグル聞こえるか』
十秒ほどの間を置いて子器から軽いノイズとともに兄者の声が聞こえる。
( ´_ゝ`)『聞こえるぞ、ホテル6。すまない、少し取り込み中でな』
『そうか。こちらは予想以上の敵の火力に晒されている。情報部がヘマしたらしい。
そちらの保安室の確保状況は?』
- 128 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/09(金) 20:39:51 ID:e4yISufU0
すると小隊長の耳に聞きなれた銃弾の通過音が届き、近くの土嚢が弾ける。
敵のゲート前の軽機関銃か何かが威力を発揮している。
だが目の前の土嚢の間には防弾版が通してあるらしく、貫通の心配はないようだ。
頭上をかすめ飛ぶ弾丸の音が煩く、弾丸の飛んできた方向へそっと顔を出す。
すると150mほど先の正面ゲートから黒々とした装甲車がその身を現す。
それを目撃した近くの部下が声を荒げるのが聞こえた。
「BTR!」
殺意に満ちたシベリア製の歩兵戦闘車BTR80には30oの強力な低圧機関砲を備えられており、軽装歩兵には大きな脅威だ。
小隊長は歯噛みする。事前の情報では考えられないほどの火力だ。
たかが製薬会社の施設が軍用の装甲車まで装備しているとは聞いていない。
政府軍の兵士が闇夜には紛れている、装甲車の灯光器が彼らは今夜の獲物とするべく探している。
『くそ! すこし厄介な物が来た! 少し待ってくれ!』
( ´_ゝ`)『ああ、それか。
安心してくれ』
向かってくるBTRの機関砲には流石にこの土嚢も耐えられない。
小隊長の男の頭に次々とBTRを対処する為の思考が流れていく。
これだは作戦の抜本的な変更も免れないかもしれない。
その時、耳には無線の向こう側の音が聞こえていた。
ちょうど子器から甲高い電子音とキーボードを叩いたような音が聞こえた。
- 129 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/03/09(金) 20:43:16 ID:e4yISufU0
( ´_ゝ`)『ここからはうちの仕事さ』
まるで兄者の声に合わせたかのように、正面ゲートのオートタレットが突如その向きを変え発砲する。
無人化されたそれはソビエト製の20o鉄鋼榴弾を吐き出し、目の前のBTRの後部へ着弾し、小爆発を起こした。
装甲の薄いBTRの後部ハッチを貫通し、榴弾は主機エンジンもろとも乗員を肉片に変えた。
そのままオートタレットは周囲の警備兵へ狙いを定め射撃しつづける。
ゲート前の守備陣地の軽機関銃手は血煙と化し、わずか数秒で数十人の警備兵がこの世から退場した。
もはや突如の無人兵器の暴走に敵兵は恐慌状態に陥っている。
小気味良い重機関銃の発砲から逃げるように警備兵が撤退する。
しかし機関銃はそれすら見逃さず、180度回転したかと思うと逃亡者の背中に向けて発砲する。
「なっ……、いったい何が」
_
( ゚∀゚)「いえー、こちらシエラ1。俺のネット回線越しの射撃はいかがかい?」
( ´_ゝ`)『もう保安室は確保したぞ、ホテル6。
次の仕事に取り掛かろう、アウト』
「隊長!」
「……なるほど、連中め。流石は戦争の犬というか。
オールチーム、正面ゲートを確保しろ!」
援護を得た政府軍が追撃していきゲートを目指して林からゲートへ駆け抜ける。
士気の高い政府軍の兵士たちが歓声の声を上げた。
今、作戦開始から約十分。
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