- 2 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 00:14:36 ID:i0AdbL6w0
- 「
生きる価値が、分からない。
固体そのものが生を成し、息を吸って存在する意味がよくわからなかった。
('A`)「…………」
まるで空気のようにそこにあって、まるで風景のように展示する。
そんな人生に、何を感じることがあるだろうか。
('A`)「………はぁ」
この世は色々と窮屈すぎる。変わることのない多色変化が薄い世界に、僕は辟易を覚えた。
('A`)「まぁ、しょうがないけどな」
──だから、僕は自分を隠す。
ここには無いのだと、自分自身を世界から隠す。力あるものから身を守るため、弱い価値を曝け出さないように。
僕は、世界から自分を無くした。
」
【主人公の章】
- 3 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 00:15:17 ID:i0AdbL6w0
- (,,゚Д゚)「………いつまでそこにつったんでンだ?」
('A`)「……スミマセ…」
从 ゚∀从「ぎこぉ〜……もうやめなって。そいつ泣きそうになってんジャン」
僕の朝は早い。
だってそうだろう、こんな風にならなければならない始まりがあるからだ。
(,,゚Д゚)「いいんだよコイツ……なんだって俺らの言うこと聞くんだからよ」
从 ゚∀从「つってもさぁ〜わざわざ、あたしんらの為に朝早くから朝ご飯持ってきてくれてるんでしょ?」
从 ゚∀从「少しは労わってやってもいんじゃね?」
('A`)「…………」
(,,゚Д゚)「んじゃ、なにやらせんの?つぅーか労わりってどういう意味だよ」
从 ゚∀从「ぎゃははは! オマエって馬鹿だろ!?」
(,,゚Д゚)「うっせ。馬鹿はオマエもだろ」
- 4 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 00:16:09 ID:i0AdbL6w0
- ここはとあるホテル街。
僕が身分を語る上で、決していてはいけない所である。だから、僕の制服姿はとても浮いていた。
でも、朝早くに私服で出て、また家に帰って制服に着替えてでは、とても登校時間には間に合わない。
同じ学校に通っているはずのド派手な色で染めた私服の二人の前では、僕は普段通りの学校の制服だった。
从 ゚∀从「とりあえずよぉ〜……なんかポケットに入ってるもんでいいんじゃね?」
──二人はいわゆる不良カップル。
校則違反バッチシの髪色を湛え、耳におそろいの銀色の輪っかを着けている。
その二人の男の方から携帯で呼び出され、僕はここにいた。待ち合わせの場所はホテル前であり、そこから二人は現れた。
そこで二人はなにをしていたのかなんてのは、言うまでもないだろう。
(,,゚Д゚)「入ってるもんて……コレしかねぇぞ?」
どのような用事で、こんな場所に来たかというと。
それは単純明快。朝飯を持ってい来いということだけ。もちろん自腹だ。
- 5 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 00:17:15 ID:i0AdbL6w0
- 从 ゚∀从「ぎゃはは! それオマエ、近藤さんじゃねーかっ」
('A`)「…………」
(,,゚Д゚)「しゃーねーな……オマエ、これやるからもうどっか行けよ。邪魔だ」
そうやって投げるように乱雑に渡されたのは、切り離されたコンドームだった。
それ自体は無使用だったが、手に持っているだけで、何かしらの水気を帯びたような感触が肌に伝わってきそうだった。
从 ゚∀从「んなもん、コイツに渡してどうすんだよwwwww」
(,,゚Д゚)「一人でシコシコすんときでも使うだろ。便利だぞ? なぁドクオ」
('A`)「…………」
口から出る言葉は無く、ただ少し頷いて返事を返した。
そんな僕の様子に満足したのか、男の方は視線を外して、女の方へと身体を寄せる。
(,,゚Д゚)「つか俺ン家行こうぜ。オマエも今日、暇だろ?」
从 ゚∀从「ひまっちゃー暇だわ。学校行く気もなし」
それから二人はもう自分の姿など写って無いかのように、肩を寄り添い歩いていく。
僕はその二人の背中を見つめ、手元に残った四角いピンクの袋を、そっと握り締める。
- 6 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 00:18:25 ID:i0AdbL6w0
('A`)「…………」
手元に起こる何かをつぶすような感触。
それは手の中に残こるひとつの物が、人と人の快楽を共有できる代物だということ。
('A`)「初めて触ったなぁ、コレ」
こんな小さなもので、こんな薄いもので。人は色々とできるのだなと、少し感銘を受ける。
ただ、どうでもいいことだけど。
('A`)「…………」
握り締めたままのコンドームを、制服のポケットに入れ、気もそぞろに僕は歩きだした。
高校の登校までの時間はまだある、──……ために早く出てきたのだから。
('A`)「今日も普通でありますように」
僕はただただ、そう考えるばかりだった。
- 7 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 00:19:31 ID:i0AdbL6w0
- 〜〜〜〜〜
それから、一週間後。
あの男女二人が行方不明になったということが、朝のHRで先生から告げられた。
( ´ー`)「警察が順次、捜索中らしいモナ。君らも見かけたら、学校か警察に届け出るように」
簡素的に、義務的に伝えられたその先生の言葉に、まるでテレビで告げられるニュースのような気がした。
伝えることだけを伝え、報じることだけを報じる。そんな即席な声色に、僕は少し悲しくなる。
('A`)「…………」
人がいなくなったのだ。しかも僕が知っている人が。
教室には、何時も通りにあいている席があった。隣の教室にも、同じような席がひとつあるだろう。
だが、今回は意味が違う。単純に誰かが学校をさぼった結果ではなく、行方不明という形で人がいないのだ。
何かしらの事件性の匂いを感じさせた。
( ^ω^)「どくおー」
そんな風に呆けていれば、前方の席に座っていた友人が振り向きざまに話しかけてきた。
この高校に入学してから知り合い、二年となった今でも話程度まではする人間関係。
だが気さくな性格の彼は、卑屈な考えを持つ僕にも、親しげな態度を示してくる。
- 8 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 00:20:26 ID:i0AdbL6w0
- 僕の高校生活にとって、貴重な話相手だ。
('A`)「どうした、ブーン」
( ^ω^)「さっきの話、聞いてたかお? クラスの人がいなくなったってやつだお」
もちろん聞いていた。
だが露骨に反応するのもなんだと思い、軽く頷くように返す。
周りもさっきの先生の話に、大して大きな反応を持った様子もなかったからだ。
起こる空気と違った反応を示せば、浮いてしまう。それをどうしても僕は避けたかった。
( ^ω^)「そうかお……なんというか、怖いおね。人がいなくなるって」
('A`)「そうか? 今のご時世、なにがあってもおかしくないだろ」
( ^ω^)「ドクオは淡白だお。もっと重要に思うべきだお」
('A`)「俺だけじゃないだろ、周りだってそうじゃねぇか。大してなにも思っちゃいねぇ……特にあの不登校気味だった二人だったしな」
それが現実だ。
区切るようにして言い切る僕は、心の中で事実だからしょうがないと思っていた。
- 9 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 00:22:42 ID:i0AdbL6w0
- 長い間、ずっと不登校気味だった二人。今更ながら居なくなったとしても反応が薄い。
現在では大して真実も分かっていない今の現状に、周りの人間も露骨な反応もできやしないだろう。
( ^ω^)「そんなもんかお?」
('A`)「そんなもんだ。だからさ、そんなことよりも次の授業の課題プリント見せてくれ」
( ^ω^)「またかお……」
そんな僕の言葉にあきれ顔をする友人。その表情を見て、僕は心の底からほっとする。
──今日も普通でいられた、そんな安堵感。通常の人と同じように話をし、他人から通常の反応をされる。
それが僕は、心底うれしく思えた。
('A`)「………」
通常一般的な人は、こんな会話程度で何も思うことはないだろう。だが、自分はダメだった。
自分は壊れている。それが大きく自分を圧迫する。
('A`)「はぁ……」
なにも思わない日々が続くことは、決してないのだろうか。
悩み続ける日常が、とても僕は怖かった。
- 10 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 00:24:30 ID:i0AdbL6w0
- 〜〜〜〜−
母親から作ってもらった弁当を取り出すと、僕は机の上にそれを取り出した。
朝早くからわざわざ作ってもらった弁当に、僕は心から母親に感謝する。
('A`)「いただきます、っと……」
自分のような親不孝者に、こんな暖かい弁当を作ってもらうことなんておこがましいにも程がある。
だからこそ、一口一口かみしめるようにして、中身を口に運んでいった。
('A`)もぐもぐ……
それがたとえ冷凍食品だらけだとしても、作ってもらうことに感謝をしなければならない。
自分が学生という身分である限り、それが絶対な現実だ。
「毒尾」
そうやってもそもそと食べていると、前方のドア付近で僕の名前を呼ぶ声が響いた。
( ´ー`)
先生が僕を呼んでいた。
わりかし前方に位置する席に座る僕は、それだけで先生と会話できる距離だった。
( ´∀`)「ちょっとくるモナ」
('A`)「え、はい……」
何かしらの裏を感じる言葉に、僕の心臓は一瞬、どきりと跳ね上がる。
──まさか、ウソだろう。そんな筈は無い。
ボロボロと溢れだす感情を必死に抑え、僕は弁当のふたを閉じ、先生へと近づいた。
- 11 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 00:25:52 ID:i0AdbL6w0
- 教室を出ると、足早に歩いていく先生の背を追いかけていく。
着いた所は職員室で、先生は自分の専用の椅子へと近寄り、それに深く座り込んだ。
ぎしりと、古臭い回転いすが悲鳴を上げる。
( ´ー`)「用件はわかるモナか?」
('A`)「………あの、」
( ´ー`)「今朝の事モナ」
僕の会話を遮るようにして、先生は言葉を続ける。
どうやら僕には発言権は無いようだ、一方的に事を伝えたいらしい。
( ´ー`)「行方不明になった男子生徒の方、毒尾……お前は友人だったらしいな」
友人。
その言葉が刃の無いナイフとなって、心臓を突きさした。
痛みは無いが、刺されるという現実が心を脅かす。
( ´ー`)「行方不明になる前、その男子生徒と会ったりしたか?」
その言葉に、今朝の報告の内容が頭をよぎる。
──一週間前に、とある男女が行方不明になった。最後の姿はホテル街だそうだ。
('A`)「………喋っては無いです。それに、友人だったのは中学生までだったので……」
僕は、なにも思わずに口を開いた。
出てきた言葉は、なんの色も持たずに空気へと散っていく。
- 12 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 00:27:30 ID:i0AdbL6w0
- 無音の空気。なにも起こらない無意味な時間が過ぎていく。
( ´∀`)「そうかモナ、時間を取らせてすまなかった」
('A`)「いえ……もう、行っても良いですか」
軽くうなづかれ、それから視線を外される。
もう僕には用は無いのだろう、僕もゆっくりとその場から歩き去った。
('A`)「…………」
職員室のドアを閉め、僕は足早に廊下を歩いていく。
途中で誰かとぶつかりそうになっても、それに何か言うことも出来ず、すぐさま教室ではなくトイレへと駆け込んだ。
(;'A`)「ハァッ……ッ……!!」
個室へと入り、後ろ手でカギを閉めた。
ここには誰もいないと分かった瞬間、身体が奥底から脱力した。
(;'A`)「ッ……かはっ……」
胃の中がぐるぐると流動をし始める。緊張が身体を蝕むようにしびれを起こし、眼の端に涙が浮かんできた。
どうしよう、僕はウソをついてしまった。先生に、人に、……世界に嘘をついてしまった。
(;'A`)「でも、どうしろっていうんだ僕に……ッ」
手の甲で浮かんだ涙を拭きとり、トイレの壁を伝いながら、床へとへたり込む。
床の汚さを感じる暇もなく、僕はこの世の現実に、心から嘆いた。
- 13 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 00:28:34 ID:i0AdbL6w0
- 〜〜〜〜-
学校が終わり、僕は帰宅するだけとなった。
部活もやっていない僕は、陸上部の友人の背中を見届けて、教室から出ていく。
('A`)「…………」
──人知れず、僕の足取りは重くなっていた。
それは学生カバンに入っている食べかけの弁当のせいかもしれない。
……それとも、もうひとつかばんに入っている。あるもののせいかもしれない。
('A`)「…………」
見慣れた帰宅路の景色を視界に納めながら、僕は歩いていく。
ぬるく湿った六月の空は、肌に感じる全てが水気を帯びているようで、風が吹くたびに濡らされている気分だった。
('A`)「……」
──だが、そんな空の下のもと。僕は見慣れた風景から、少し離れた道へと進んでいく。
普段から感じ慣れたものから、がらりと変わる風景。人気が少なくなり、住宅街から外れるその地域。
やがて訪れたのは、とある工場だった。
- 14 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 00:30:07 ID:i0AdbL6w0
- 学校の帰宅路のルートから大幅にずれた、この工業地域。
一昔は大分栄えた所だったらしいが、今では錆ついた倉庫が立ち並ぶ場所になり果てていた。
そんな人気が少ないここでは、よく金髪に染めた若い連中が集団でいるらしい。だが、それでもあまり人が寄り付かない所だった。
('A`)「…………」
そんな場所で、ひとつの倉庫へと近づいていく。
ほとんどの倉庫には鍵がかけられているのだが、この倉庫だけはそうじゃないらしい。
大きく引き戸式のドアには、引掻き傷に似た跡が、いくつも残っていた。なにかしら固いものでカギをこじ開けたのだろう。
そのドアに手をかけて、力を込める。腕に血管が浮き出て、頭の血が上っていく。
('A`)「っ………」
ドアは最後まで開かれることなく、なんとか入れるスペースまで開くと、そこに捻じ込むようにして身体を入れ込んだ。
中は暗く、埃っぽい匂いが鼻を突く。あらかじめ持っていたペンライトを取り出し、足を進める。
('A`)「…」
埃かぶった何かしらの機材を光に照らしながら、先へと進んでいく。
目隠しされているかのように、乱雑に置かれた木材や機材などを避けながら、奥へと進んだ。
- 15 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 00:31:01 ID:i0AdbL6w0
('A`)「…………」
──そうして、辿り着いた。
この場所、この光景、そしてこの臭い。
埃っぽい油のにおいが残った工場の中で、それを押し切るかのような酷い臭いを放つ──物体=B
('A`)「……確かにもう、これは物体だよな」
元は形を持ったものだったかもしれない。だが、この光景をみる人はそうだと思えないかもしれない。
そこまでの現状、常識も現実も、全てが軽くなってしまうような光景だった。
('A`)「酷い有様だ」
雪崩れるような流形を持った、赤黒い物体。
('A`)「臭いも酷いし」
乱雑に散らばったものは、あれは髪の毛だろうか。キラキラと手に持つライトの光で、輝いて見える。
('A`)「どうやって、こんな風になるのか……他人が見たらわかんないだろうな」
色々なモノが散らばるこの場所で、その中央に位置するのは……見慣れた、その顔。
('A`)「なぁ、ギコ……どうしてそうなったんだ」
動かしたライトの先に照らされるのは、二人の死体だ。
一人が一人に覆いかぶさるようにして、背中を見せている死体だった。
- 16 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 00:31:50 ID:i0AdbL6w0
- 見える背中は、鋭い物で一突きされでもしたのか浅黒い肌に赤い穴が出来ていた。
そこからは白っぽい脂肪らしきものが覗いていて、ぼろぼろとその穴から零れおちていた。
そうやって血の塊と一緒に地面に小さな山を作っている。
見れば脇腹も開かれているようで、赤黒く長細いモノが、腹を巻くようにして此方側に、その切り口を見せていた。
('A`)「………」
そんな死体に、ゆっくりと近づく。
きつくなる臭いに心を揺り動かされることなく、視線はひとつに前に向いていた。
('A`)「…………」
そっと覗きこむようにして、覆いかぶされていた人間の方へと視線を寄せた。
当然のようにそれは女の方で、肩まで伸びていた髪の毛は、乱暴に抜かれでもしたのか所々にしか頭部には生えていなかった。
頭部の肌には血が滲み、毛穴のようにぽつぽつと血の塊が所狭しと頭部を彩っていた。
その顔は驚愕の色を浮かべ、もしくは苦痛にゆがんだものだったかもしれない。もしかしたら生きたまま髪の毛を抜かれたのかもしれない。
- 17 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 00:33:33 ID:i0AdbL6w0
- だが。
元の女の方の表情を良く知らないので、そんなことどうでもいいことだった。
('A`)「よっこらせ……っと」
そんな二人の死体に手をかけ、引き離すようにして男の方の肉塊を女から離そうと試みる。
べりべりと何かがはがれるような音をたてて、男の方の肉塊は、どさりと背中から倒れた。
('A`)「…………」
むわっと広がる、血の匂い。そして嗅ぎなれたようで、そうでもない糞尿の臭い。
よく見れば、両方の死体は──股下から胸にかけての肌が、切り取られていたようだった。
それを二人して合わせるようにして、身体の中に詰まった内臓を零さない様、工夫されていた。
だが、それを僕が開いてしまったため、二人の内臓は空気にさらされる。時期に腐っていくに違いない。
男の方は、地面に倒れた衝撃で、詰まっていた切り刻まれた内臓を周囲にぶちまけていた。
('A`)「…」
──そうして、目的の物を見つける。
('A`)「………」
曝け出された二人の死体、肌が楕円形に切り取られた内に含まれる、その内臓部分。
- 18 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 00:34:55 ID:i0AdbL6w0
- 元は生きたまま本当につながっていたはずの、その部分。
('A`)「……」
一般的に見ることなど出来やしない、断面図。女性が持つ子宮。
丁寧に切り取られた子宮が、他の内臓の上へと乗っかるようにして姿を現していた。
そして子宮には切り口のようなものが真っ直ぐ引かれており、その中を光で照らすと、小さな固まりが膣の中に展示していた。
それはピンク色のゴムを被り、男性が持つ陰茎だったものに違いなかった。
('A`)「これがセックスというものか……」
初めて見る、その行為。
だが興奮を覚えることは無く、ただただ感覚的に思えるのは、なんだこれはという簡素な感想だった。
物体が物体の中にあるだけであり、それがどのような経緯で行われたのかなんてのは、心底どうでもよかった。
('A`)「……まぁ、満足したわ」
かちり、とペンライトのスイッチを切る。暗闇に目が慣れてきたようだった。
- 19 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 00:36:46 ID:i0AdbL6w0
- ぼんやりと視界に映る二つの死体に、ただ立ち尽くす。
言葉が出ないというのは、こういう時に使うのだろうか。よくわからない。
(;'A`)「……ッ」
──突然、ぶるりと寒気が背中に走った。それを期に、身体が痙攣し始めた。
がくがくと震え続ける身体を抑えるようにして、両腕で身体を抱き締める。
納まることのない寒気と痙攣。はびこる恐怖が身体を蝕む。
(; A )「う、うわぁああああああああ!!!」
耐えきれずに、声を荒げて叫んだ。喉が悲鳴を上げ、息を吸い込むとねばりつくような空気が、喉元にからみつく。
(; A`)「はぁっ……はぁっ……」
乾いた口内になんとか唾液を絞り出し、口を潤す。
なにをしている──僕は。ここで何をしているんだ。
(;'A`)「だめだろ……もう、ここに来ては…ダメだったはずだろ!?」
誰もいない倉庫に、自分の叱咤する声が鳴り響く。
そうだ、僕はここにきては駄目なのだ。けっして、ここにきてはいけなかったんだ。
- 20 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 00:37:54 ID:i0AdbL6w0
- 嘘をついたのだ。
人に、知らないのだと。奴らは知らないのだと、僕は嘘をついてしまっていたのだ。
なのに、それなのに僕は。こうやって嘘をついた場所へと訪れてしまっている現実が、ここにはある。
それは駄目なのだ、常識的に考えて、そう。それはいけないことなのだから。
(;'A`)「くそっ……もう、これも置いていこう……」
僕はカバンの中から、あるもの取りだそうとする。
それは最初にこの二人を死体を見つけた──一週間前の時だ。
初めてその時、二人の無残な死体を目の前にして。その足元に鳴り響く男の方の携帯が、今でも耳に残っている。
(;'A`)「そ、そうだよっ……俺はそれをここに持ってきたんだ…ッ!!そう、ただ返しに来ただけなんだ……!」
なにも考えることのできなかった僕は、その鳴り響く男の携帯を拾って、家へと帰宅したんだ。
……だって、自分の着信履歴が残ったものを、どうして残せるだろうか。そうしたならば、そうしたらならば……自分が疑われてしまうかもしれない。
それに、それに
('A`)「あ、あれ……?」
カバンの中で空を切る手。
そこにあったはずの物が、
- 21 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 00:38:53 ID:i0AdbL6w0
- 男の携帯が、そこには無かった。
('A`)「…」
息が止まりそうになる、頭が真っ白になり、なにがなんだか分からなくなる。
ぐるぐると思考が廻り、冷たい息を吐いているような感覚が身を引き裂く。
('A`)「…」
よくよく思い返してみれば、僕は男の携帯をカバンに入れただろうか。
違うような気がする。……そうだ、僕は自分の制服のポケットに入れたはずだ。
('A`)「……」
ゆっくりとポケットに手を入れる。
探るようにして、指先で伝いながら全てのポケットをあさくる。
('A`)「──無い」
それはそうだ、そんなもの入れていたら重さでわかるはずだ。
でも、それでも。
僕はとあることを思い返していた。
('A`)「人にぶつかりそうになった……」
──職員室から、帰る途中。トイレに駆け込む前に、人にぶつかりそうになった時。
('A`)「誰かに、拾われた……?」
- 22 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 00:39:55 ID:i0AdbL6w0
- 意外にも冷静に思考する頭は、その時の光景を鮮明に頭に映し出した。
川 )『───……』
それは髪の長い、黒い色の女子生徒。
川 - )『──………』
口元は薄く、綺麗に整った形で。
川 ゚ -゚)『─…………』
瞳の色は、この世のすべてに興味がないような感情を思わせる。
川 ゚ -゚)「……………」
そう、それは確かに。
('A`)「同じクラスの、森野 空───」
とある人物が、思い返された。
- 23 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 00:40:57 ID:i0AdbL6w0
- 〜〜〜〜〜
今朝から空気が重く感じた。
教室の窓から見える今日の空は、六月には珍しく晴れ渡っているのに。
僕の周りだけは湿気が多い空間が出来あがってそうだった。
('A`)「…………」
──でも、そんなことは当たり前なのだ。
決して僕の心は、そんな空程度と同じく晴れ渡ることはできないだろう。
('A`)「………はぁ」
僕は堪えず溜息を零し、視線を少し先の方へとやった。
窓際の前方に位置する、その席には──とある女子生徒が椅子に座っていた。
川 ゚ -゚)
──深く腰掛けず伸ばした背中に、まっすぐ椅子に座る綺麗な姿勢。
肩から背中に伸びる直毛の黒髪は、その滑らかさを表すかのように、窓から射しこむ陽によってキラキラと輝いて見えた。
そして髪の切れ目から見える、薄く開かれたその瞳は、机に置かれた文庫本らしきものの文字を追っていた。
('A`)「…………」
そんな風に。最近の女子高生にしては珍しい、純和風で大人しそうな雰囲気を感じる容姿だった。
- 24 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 00:41:54 ID:i0AdbL6w0
- ('A`)「……………」
──だが、そんな印象を受ける彼女でも、あるもの≠見たら決してそうでもなくなるだろう。
だからこそあの女子生徒には……誰もが寄り付かなく、そしてこの学校で有名なのだった。
('A`)「………リストカット」
一枚、めくられた文庫本。その仕草で少し、女子生徒の制服の袖が手前にずれた。
そして隠されていた手首の肌が露見し──そこにはミミズ腫れに似た傷跡が表に現した。
彼女の白い陶器のような肌色持つ中で、そこだけ手首を断裂するかのように醜くはっきりと傷跡が斜め横に斬りこまれている。
──そんな、ピンク色の、盛り上がった傷跡、傷跡。
('A`)「……………」
どのような経緯で、そのような傷跡を負ったのかなんてのは女子生徒に聞くまでもなく。
それに普段からの周りに対する女子生徒の対応も態度が酷く、口を開けば露骨に現した嫌悪と邪険な物言いに、先生もクラスメイトも彼女を持てあましていた。
- 25 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 00:42:59 ID:i0AdbL6w0
- 自分も大して良くは無いコミュ力だが、あの女子生徒はそれを上回るというか、同じ次元に居ないというか。
人を寄せ付けない空気を、態度を、入学当初から醸し出し続ける彼女に、その傷跡にたして詳細に聞ける者は一人もいなかったようだった。
('A`)「…………はぁ」
今日何度目かのため息が、口から零れおちる。
ああ、僕は、もう駄目なのかもしれない──机の上に両肘を着き、手の平で視界を遮るようにして頭を抱えた。
「なんだおーさっきから。今日はため息ばっかだお」
そんな風にしていれば、前方から声が耳に届いた。
ちらりと指の間から覗くと、前の席に座る友人が笑みを浮かべて此方を見つめていることに気付く。
('A`)「……ブーン」
( ^ω^)「どうしたんだお。今日は元気ないお? まぁいつも顔色悪いけども」
('A`)「うるせぇよ……大きなお世話だよ……」
友人の軽口に、緊張する心臓を抑えつけて、僕は口を開いた。
大丈夫だ、コイツには知られてない。だから落ち着け、そうやって怯える自分に言い聞かせる。
- 26 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 00:44:55 ID:i0AdbL6w0
- 〜〜〜〜
( ^ω^)「───森野、空……?」
友人は僕がそれとなく出した人の名前を、口の中で転がすように呟いた。
('A`)「あ、ああ……森野 空。知ってるだろ?」
( ^ω^)「当たり前だお。あの女子を知らないやつなんているのかお」
だよな、と呟いて僕は沈黙する。そうだ。知らないやつなどいない、それほどまであの女子生徒は有名だった。
……そのような人物を僕が口にすること自体が、普通じゃないということは分かっていたが、それでも聞いておきたかったことがあった。
('A`)「それでさ、ブーンお前って……森野 空とも喋れんの?」
( ^ω^)「? どういう意味だお?」
('A`)「だってさ……お前って誰とでも会話できるじゃん、それでさ、ちょっと頼みごとをしたいんだよ……」
恐る恐る僕は口を切った。
単純でどうでもいいことのように聞こえるよう、言葉を続ける。
- 27 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 00:46:01 ID:i0AdbL6w0
('A`)「俺さ……携帯なくしちまってさ、とりあえず身に覚えがあること思い出そうとしたんだが……」
( ^ω^)「うんうん」
──それから自分がトイレに駆け込もうとした時に、誰かにぶつかりそうになった経緯を友人に話した。
多少の嘘を交え、申し訳ないと思いつつも、だからといって本当のことをいえるわけもなく。
それが自分のケータイだと言い切ることにして、全てを話しきった。
( ^ω^)「……なるほどだお、つまりはぶつかった相手が森野 空だった可能性があると」
('A`)「そうなんだよ……でもさ、森野ってちょっと話しかけにくいじゃん?」
( ^ω^)「それは気にし過ぎだお。ちゃんと会話もできる、良い子だお?」
('A`)「いや、そう思えるのってお前だけだよ……すげーな本当にブーンは」
正直に感嘆する思いしか浮かばない。
可能性で相談したものだったが、もうすでに友人は彼女と話した経緯があるらしかった。
('A`)「お前ってば本当に誰とでも会話できるんだな……」
( ^ω^)「でも、ほとんどが挨拶ぐらいで……なんの会話の発展もありゃしないお」
ま、いってくるお。と陽気に友人は言い、腰かけていた椅子から腰を上げ、彼女の方へと歩いて行った。
- 28 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 00:47:05 ID:i0AdbL6w0
- ('A`)「…………」
その後ろ姿を見つめ、なにやら大きく見える友人の背中に、僕の心に少しの余裕が生まれる。
これでどうにかならないか、そんな小さな淡い期待しか浮かばないけれど、それでもそれに僕は縋るしかない。
我ながら自分の度胸の小ささに、悲しみを覚える。
('A`)「…………」
──でも、それはいつからだったのだろうか。
僕の心の弱さが露骨になったのは。我が身からはみでる許容範囲を超える出来事を、遠ざけるようになったのは。
('A`)「……わかんねぇや」
そんなの、どうでもいいことだろう。
そうやって生きてきたのだ、変わることが全て悪いことじゃない。自分が望んで生きることに、何が悪いことがあるだろうか。
( ^ω^)「───」
川 ゚ -゚)「────」
──そう自分を問いただしていれば、視界前方では二人の会話姿が捉えることができた。
友人が相も変わらず笑顔を浮かべ、彼女に気さくに話しかけている。
どのような会話が行われているかは、ここにいる僕の耳まで届きはしなかったが、どうやら友人が彼女に問いかけていることは分かった。
- 29 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 00:47:54 ID:i0AdbL6w0
- ここから分かるのは二人の表情だけだった。
良くも悪くも変わらない二人の表情に、僕の心臓は一呼吸ごとにペースを速めていく。
(;'A`)「………」
どうなのだろうか。答えは、自分にとって良い答えはくるだろうか。
……いや、どうなのだろう。自分にとって良い答えとは一体何だろうか。
拾われたことだろうか?それともそんな携帯は知らないと言われることだろうか?
(;'A`)「っ……」
拾われていれば、中身をみない道理は無い。しかし、拾われてなければまた最初から考えなければならない。
憤る感情は僕のの小さな脳を圧迫し始める。答えは、その答えはなんなんだ。
( ^ω^)「──ドクオ?」
(;'A`)「えっ!?」
驚いて声を上げれば、友人の顔が近くにあることに気付く。
どうやら会話はとうに終わっていたらしい。視界の端では、最初から変わってなかったかのように黒髪の女子生徒は本を読んでいた。
( ^ω^)「大丈夫かお? なんか本当に顔色悪くなってるお?」
(;'A`)「だ、大丈夫だ……そ、それで!? 森野はなんていっていた!?」
僕は気を取り直し、友人へと答えを求める。彼女は、どのように返事を返したのだろうか。
- 30 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 00:48:53 ID:i0AdbL6w0
- 収まることなく激しく波立つ心臓を堪え、震える喉に力を込め、つばを飲み込む。
( ^ω^)「………」
(;'A`)「ブ、ブーン……? どうしたんだよ、早く答えてくれよ」
( ^ω^)「……すまんお、どうやらドクオが求める答えは得られなかったみたいだお」
(; A )「っ……!」
友人が発した言葉に、脳がダイレクトに衝撃を受けた。
……知らない、そういう意味合いで言った友人の答え。
それが彼女が僕のケータイ……つまりは男子生徒の携帯を拾って無いということだ。
(; A )「そ、そうか……ありがとな、ブーン……時間を取らせちまって」
( ^ω^)「別にかまわないお。というか、本当に大丈夫なのかお。顔全体に広がる絶望感がハンパないお?」
なんかすっげーエロ動画でも拾って保存してたのかお?
と心配顔で聞いてくる友人を無視し、僕は顔を手のひらに埋めた。
指先に感じるのは大量の汗、ねばっこく絡みつくような触り心地は触れていて不快だった。
- 31 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 00:49:57 ID:i0AdbL6w0
- まいってしまった。これは本当にまいってしまった。
これではふりだしに戻ってしまう。たとえ求める答えが二通りあったとしても、どちらかが本当に求めていたものだとしても。
(;'A`)「…………」
出来ればまだ、彼女が携帯を拾い所持していたほうが希望はあった。
目標に出来る行動範囲が考え得れた。でも、現実はそうじゃない。
(;'A`)「どうすれば──……」
──ふと、そこで何かに気付いた。
まるで何かに見られているような、観察をされているような不気味な気配。
影から自分の姿を暗く見つめ、その細部まで見破ろうとしているかのような冷たい視線。
(;'A`)「っ!?」
川 ゚ -゚)
──彼女が、僕を見つめていた。じっと、その感情を含ませない黒い瞳が僕を見つめていた。
髪をかきあげ、横顔から流し目で見る様は、その視線の冷却度に僕の心臓を急速に冷やしていく。
(;'A`)「っ……な、なんで……」
なんで、此方を見つめるのだ。
その無色透明な瞳で、その人間じゃないような瞳で僕を。
- 32 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 00:50:58 ID:i0AdbL6w0
- (;'A`)「くっ………」
──でも、冷静に考えるんだ。あれは僕が友人に携帯を知らないかと聞いたわけであり。
それに伴って、彼女が僕の方へと興味を寄せただけという可能性もある。
だからあのような、全てを見透かしているような瞳をしているのも、ただ単なる僕の考えすぎであって。
元から何の意味もない彼女の気まぐれであり、自分が勝手に印象を過大表現しているだけなのだ。
(;'A`)「…………ふぅ」
ひとつため息をつき、どうにか自分を落ち着かせた。
なにを卑屈になっている、彼女はもう関係のない人間なのだから気にはしなくていいのだ。
じきに彼女も僕いへと興味が失せ、視線を外すだろう。そこまで気にせずに待てばいいのだ。
だから、僕は最後に彼女の表情を見て。彼女から意識を外そうと思い───
川 ゚ -゚)
川 ゚ー゚)
──そして、最後に、その表情を。
僕は、はっきりと見てしまった。
彼女が楽しそうに、僕を見て笑う顔を。
- 33 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 00:51:55 ID:i0AdbL6w0
- ミ川 ゚) クル…
そうして視線は外され、元の読書する彼女へとなった。
一瞬浮かんだ笑みはとうに消え失せ、そこにはいつもと変わりない無表情が張り付いている。
(;'A`)「…………」
──なんだっただろうか、あの彼女の笑みは。
楽しそうに、本当に楽しそうに笑ったあの笑みは。
まるでこちらのあがき様に、焦りようを見て笑っているような。上者としての余裕の頬笑みのような。
( ^ω^)「……ドクオ、さっきから何を放心してるんだお?」
(;'A`)「…………」
心配そうな友人の問いかけにも答えられず、僕はただただ口を閉ざす。
頭の回転がおかしい今、あることが僕の頭の中で点滅する………もしくは答えは───
(;'A`)「…………っ」
──もう一つの可能性のほう、だということを。
- 34 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 00:53:09 ID:i0AdbL6w0
- 〜〜〜〜
「合計で450円だよ〜」
('A`)「…………」
購買部の人からパンを受け取り、差し出された手のひらにお金を渡す。
すぐさまそこから離れ、自分の後方に立ち並ぶ列から離れていく。
長く行列ができる廊下を人にぶつからないように歩きながら、教室へと向かった。
('A`)「負けたんなら仕方ない……」
今現在、自分の手に持つのは、購買部で売っているパンだった。
昼休みに入った直後に始まったパシリジャンケンに、見事友人に負けた僕は、両手で持てない三つのパンを胸に抱えて先を急いだ。
('A`)「…………」
自分の教室へと向かう階段をのぼり、ひとつめの踊り場へとたどり着く。
('A`)「あっ……」
そこで思い出す、もうひとつの用件。
そういえば飲み物も欲しいと言っていた気がする。
陸上部である友人が、部活で使う飲み物を飲みほしてしまったのだと言っていた。
- 35 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 00:53:55 ID:i0AdbL6w0
- ('A`)「金はもらってるし……買いに行くか」
自販機は確か、校舎の外にあった。それを求めて、僕は後ろへと振り返る。
時間はまだあるため、ゆっくり向かっても間に合うだろう。
('A`)「えっ……?」
だが一歩踏み出したその先に、
川 ゚ -゚)「…………」
──今日、一番見たくない顔がそこにはあった。階段の踊り場にいる僕から見て、一段下にいる彼女。
黒い髪を垂れ流し、白い肌はまるで幽霊かと見間違うかのように、とても気配が薄い彼女。
('A`)「っ…………」
僕は一瞬戸惑い、そして考える。ここは無視して通った方がいいのかもしれない。
色々と考えるべきことはあるだろうが、それでも今は安直な行動は避けたかった。
- 36 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 00:55:52 ID:i0AdbL6w0
- ('A`)「急いでるから……」
僕は突っ立っている彼女の横を、通り過ぎようとする。
階段だけを見つめ、なにも感情を浮かばせないように努力をしながら足を進めた。
川 ゚ -゚)「待って」
だが。その勢いを、一つの声に止められる。
川 ゚ -゚)「私は、貴方の携帯を知ってるわ」
さらっと言い放った、僕に衝撃を与える言葉に足が止まった。
指先に挟んだパンが、その止まった勢いで手から離れ落ち、重力に任せて階段を転がっていく。
('A`)「今、なんていった……?」
確かめる様にして、その横顔を見つめる。
まるでカーテンのように顔を隠す髪は、その女子生徒の表情をいとも簡単に隠していた。
だが、それでも言葉は伝わってくる。
川 ゚ -゚)「私は、貴方が探している′g帯を……知っていると言ったの」
妙にアクセントを入れた物言いに、僕は思考が止まりそうになる。
何が言いたいんだ、こいつは。
- 37 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 00:56:58 ID:i0AdbL6w0
- そんな彼女の歯がゆい感覚に身をかき切りそうになるを堪え、なんとか僕は口を切った。
('A`)「じゃあ、なんであの時……嘘をついたんだ」
川 ゚ -゚)「詳しい話は、後に話す」
僕の様子も気にすることもなく、切るようにして僕の言葉を遮ると、彼女はゆっくりと足を踏み出した。
一段一段、階段を下りていき、所彼処に転がったパンを全て拾い上げると、呆然と立ち尽くす僕の方へ戻ってくる。
川 ゚ -゚)「これ、落としたわよ」
白い指先でつままれたパンを、僕は震える手で受け取った。
その時、手首にある傷がちらりと見えた。
('A`)「え、ああ……ありがとうよ…」
川 ゚ -゚)「…………」
('A`)「な、なんだよ……」
川 ゚ -゚)「なんでもないわ。驚かせてごめんなさい」
決して本心で謝ってないだろう小さく会釈をすると、彼女はゆっくりと階段を下りて行った。
そしてその姿が見えなくなるまで、僕は状況が判断できずに、その影が消えていった廊下の角をただただ見つめるばかり。
- 38 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 00:58:07 ID:i0AdbL6w0
- ('A`)「………」
どのような目的で、彼女が自分にこのように近づいてきたのかが一切分からなかった。
ただただた言いたいことだけを言い、去って行った彼女を僕はどう思えばいいのだろうか。
('A`)「………」
だが、わかったこともある。
それは彼女がやはり携帯を拾っていたということだ。それが分かっただけでも良かったと思えた。
これから先のことを、考える余裕が出来た。後はどうやって返してもらうかが重要なのだが……
('A`)「ん?」
ふと、彼女に拾ってもらったパンのひとつに。
袋に一枚のメモ用紙が貼られていることに気付いた。値札だと思ったが、紙に書かれたモノを読み。
('A`)「……どういうことだ」
僕の思考は停止する。
そのメモ用紙に書かれていたことは簡易的に一文と、小さく乱雑に表記された名前だけだった。
『放課後、西公園で待つ 森野 空』
('A`)「…………」
どうやら僕は、彼女に呼ばれているらしい。
二人だけで話をするべき内容を、彼女は持っているらしかった。
- 39 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 00:58:58 ID:i0AdbL6w0
- 〜〜〜〜
放課後、僕は見慣れた帰宅路に着いていた。
上空を仰げば夕焼け色に染まる空が、まるで血のように紅色の雲を垂れ流しているかのように見えて。
これから先に向かう場所の不安を、あおるようなシチュエーションに心が萎えていきそうだった。
('A`)「ここで、あってるよな……」
歩いて着いた所は、住宅街に囲まれた小さな公園だった。
園内に足を踏み入れると、とってつけたかのような簡素な遊具が、風にゆらゆらと揺れていた。
('A`)「……いた」
そのひとつに、ブランコへと腰かけていた一人の女子生徒を見つける。
夏も近いというのに、未だに長袖物の冬服を着こんだ彼女。
川 ゚ -゚)「やっと来たわね」
入り口近くに立ちつくす僕の姿を確認するや否や、ブランコから立ち上がると、足音をさせずにこちらへと近づいてくる。
川 ゚ -゚)「待ってたわ。じゃあ」
余計な言葉はいらないわよね、と続けていい。
肩にかけた学生カバンから、とあるものを取り出した。
- 40 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 01:00:10 ID:i0AdbL6w0
- 白い指先に挟まれているのは、灰色の若干古いタイプである折りたたみ式の携帯電話だった。
('A`)「……」
──その見覚えのある色合いに、僕は口を閉ざす。
川 ゚ -゚)「お探しの物、それともどうしても欲しかった物とは……これのことかしら?」
ゆらゆらと見せつけるかのように、指先で携帯を揺らす彼女。
……確かに、それは僕が求めていた答え。そして物だった。
('A`)「…そうだ、それが俺が探してた……俺の携帯だ」
──はやる気持ちを抑え、僕は言葉を発する。
そうだ、それが僕が欲しいもの。なくしてはならない、けっして他人に渡してはいけない。
大事な大事な、自分の物だ。
('A`)「ありがとうよ、わざわざ呼び出してまで持ってきてくれて。んじゃあ……そろそろ、それ返してくれ」
さりげない態度を装い、手を差し出す。
手に入りすれば、自分の手に入りすればもう、どうとでもない。だから早く、それを返せ。
川 ゚ -゚)「…………」
だが差し出した手に、何時まで経っても携帯が置かれることは無く。
やがて揺らされていた携帯も、動きを止めていた。
- 41 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 01:01:14 ID:i0AdbL6w0
- ('A`)「…どうしたんだ? はやく返してくれよ。何をもったいぶってんだ」
川 ゚ -゚)「証拠を見せてほしい」
('A`)「……は?」
突然の言葉に、僕の頭は熱を冷ます。
いま、彼女はなんていった。
川 ゚ -゚)「この携帯……本当に貴方のなのか。その証拠が知りたいの」
(;'A`)「な、何を言ってるんだ……ブーンからも聞いただろ? 俺が詳細に携帯の形を言っていたって。
だったら証拠なんてものは必要──」
川 ゚ -゚)「暗証番号は?」
(;'A`)「……っ!?」
その流れる様に言われた単語に、一瞬何を言われたのかがわからなかった。
だが、ゆっくりとその言葉が頭に浸透するにつれて、事の重大さが大きく自分にふりかかってくる。
川 ゚ -゚)「この携帯の持ち主であるのなら、暗証番号は知っててもおかしくはないわよね」
(;'A`)「あ、暗証番号……」
呆然とする僕を尻目に、彼女は指先で携帯を操り、僕の眼下へと携帯の画面を見せつけてくる。
川 ゚ -゚)「電源が落ちているのよ。充電はしておいた、でも暗証番号がわからなくて困ってたの」
- 42 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 01:02:14 ID:i0AdbL6w0
- だから持ち主が誰か分からなくて困っていたと呟き。
川 ゚ -゚)「だから、教えてほしい。これが貴方の物だということの証明にもなるわ」
一石二鳥ね、と軽快に口を動かす彼女。
それは挨拶でもするかのように単純に口から出したかのような、味気ない声色だった。
(;'A`)「…………」
川 ゚ -゚)「どうしたのかしら? まさか、自分の携帯でありながら暗証番号を知らないとか」
(;'A`)「そ、そんなわけないだろ!? ちゃんとわかる!!」
焦る気持ちを抑えたかったが、煽るような彼女の物言いに自分が惑わされているかのような錯覚に陥りそうになる。
……もしかしたら、彼女は元から自分を疑った方向性で、話を進めているのではないだろうか。
川 ゚ -゚)「……」
なんらかの方法をとって、もう携帯の中身を見てしまっていたのではないか。
いや、でもそれだとなぜわざわざ自分を呼びだすような真似をするのだろうか。
(;'A`)「っ………」
──駄目だ、ここで迷って黙っていては疑われる一方だ。
どうにここは、切りぬけるしかない。
- 43 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 01:04:08 ID:i0AdbL6w0
- (;'A`)「くっ……」
必死に思い返せ。あいつは、あの男はどんな奴だった。
(,,゚Д゚)
単純で馬鹿で、やることは自分がやりたいことばかり。
弱者を弄り、自分との人間的地位の格差に快感を覚える、そんな奴。
(;'A`)「………っ」
携帯を買う時も、僕に聞いてくるほどに機械音痴で。
だからそんな奴に僕も、たいして良くもない機種を進めて……そこで……
(;'A`)「あっ………!」
──そうだ!僕は携帯ショップへと、あいつと二人で行ったんだ。
そこで奴は暗証番号を決める時、あいつは──
(;'A`)「わ、わかった……!!今から言うぞ……!!」
川 ゚ -゚)「わかったわ、ちょっと待ってて」
彼女が僕の声を合図に、携帯の電源を入れる。少しして曲が鳴り、電源が入ったことがわかった。
川 ゚ -゚)「いいわよ。順番にゆっくりと言って」
- 44 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 01:06:02 ID:i0AdbL6w0
- 彼女の言葉耳入れ、記憶の蓋を開いていく。
そう、それはアイツの誕生日──単純で誰もが思いつくものだ。だったら必死に思い返せば、それぐらいは言えることも可能だ。
──だが……
(;'A`)「えーと……」
川 ゚ -゚)「どうしたの、はやくして」
(:'A`)「……0…3……いや、違う…そうじゃなくて……」
……その重要な誕生日が、僕にはどうも思い出せなかった。アイツの誕生日など、僕が祝うこともなかった。
でもここで思い出さなければ、どうにか頭を振りしぼり、ねじ切った先に出る滴のようなものでいい。
正しい答えを、記憶を吐き出してくれ。
(;'A`)「…………」
川 ゚ -゚)「どうしたの?」
突然黙った僕に、彼女が感情のこもらない言葉をぶつけてくる。
僕は俯き、口を開いた。
(;'A`)「0……7、21」
震える声で、確かにそう彼女に伝える。
- 45 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 01:06:59 ID:i0AdbL6w0
- 空気が静まり、自分の呼吸音だけが耳にこだまする。
やがて何かが押されるような音が連続で聞こえ、そして止まる。
川 ゚ -゚)「…………」
(;'A`)「………ど、どうだ?」
僕は顔を上げて、彼女へと視線を送る。
じっと携帯の画面を見つめる彼女は、やがてその視線を此方へと向けた。
川 ゚ -゚)「…………」
そのまま静かに、手に持つ携帯の画面をこちらに向けた。
暗証番号が正しければ待ち受けが。正しくなければ、違うと表示される。
心臓がはち切れるのではないかと思いながらも、僕が見たそこには───
(;'A`)「……あ、あたり……?」
川 ゚ -゚)「…………」
そこには、通常通りの待ち受け画面が表示されていた。
アイツらしく待ち受けには何も張っておらず、デフォルトのままの表示だったが。
(;'∀`)「っ……」
思わず安堵で笑顔が浮かんでしまう。
──よかった、これであっていたんだ。僕は最近見た、その光景を覚えていたことに感謝する。
- 46 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 01:07:58 ID:i0AdbL6w0
- ──それは、最近の二人の死体だった。
暗い倉庫に横たわる二人の死体に着けられていた、あのおそろいの銀色のピアス。
そのピアスの裏側には、とある月と日が彫り込まれていたことを知っていたのだ。
(;'∀`)「ど、どうだ…ちゃんと俺はあてただろう?」
それはつまり、二人にとっての記念すべき日にちだということ。
それをあいつは暗証番号を彼女に変えられていたに違い無いと思い、僕はそれだと思ったのだった。
川 ゚ -゚)「……………」
とんだカンだったが、それでもどうにか切り抜けた。
これでもう彼女に疑われることもないはず───
川 ゚ -゚)「……」
だが、その先にある携帯と彼女の行方が、先ほど何も変わっていない。
そう、何も変わってはいないのだ。
川 ゚ -゚)「……必死に考えた所、悪いのだけれど」
(;'∀`)「え? 急に何を言って……」
はぁ、と彼女はため息をつき。
彼女は衝撃的なことを、またさらっと言い放つ。
川 ゚ -゚)「この携帯、元から暗証番号……設定されてないの」
- 47 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 01:09:18 ID:i0AdbL6w0
- だから。と何が何だか分からなくなっている僕を尻目に話を続ける。
川 ゚ -゚)「答えを聞きたいかしら? なら、答えてあげる」
川 ゚ -゚)「この携帯の本来≠フ持ち主である……桐坂 儀来という人物。最近行方不明になったといういじゃない」
川 ゚ -゚)「そして数日後。この携帯を、自分のだと言い張る人物が……私の所にのこのことやってきた」
川 ゚ -゚)「思わず笑っちゃったわ。これだとただの入れ食いじゃない」
川 ゚ -゚)「……だから、私が貴方をここに呼んだのは、携帯の持ち主を確認したかったんじゃないの」
川 ゚ -゚)「この行方不明になった人物の携帯を、他人に偽り、我が物としようとする人は……」
(; A )
川 ゚ -゚)「……はたして、どんなあがき様をみせてくれのか。なんてね」
──彼女の言葉ひとつひとつが、耳に入り鼓膜を揺らす。
限りなく平坦に近いその声色は、すんなりと心へ響いていく。
- 48 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 01:10:24 ID:i0AdbL6w0
- (; A )「森野……空……」
川 ゚ -゚)「なにかしら」
ぼろぼろと崩れ落ちていく視界の色に、ただ真っ直ぐ伸び行く彼女の姿。
白い肌に黒い制服が目に悪い。
(; A )「お前は……俺に、何をさせたいんだ……」
川 ゚ -゚)「あら、話が早くていいわ」
そう言い、彼女はゆっくりと口を開く。
横に一線、まっすぐゆったりと開くその様子に、僕はまるでこのまま食われてしまうのかと錯覚しかける。
──否、そうじゃない。これはもう、喰われてしまったのだ。この目の前にいる、人の皮を被った──悪魔に。
川 ゚ -゚)「教えてくれないかしら、その全てを」
川 ゚ -゚)「貴方が今、抱えている全ての現況を。苦肉を。暗闇を」
川 ゚ -゚)「貴方が持つ───そのGOTH≠」
- 49 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 01:12:03 ID:i0AdbL6w0
- 〜〜〜〜〜
(;'A`)「…………」
川 ゚ -゚)「どうしたの?」
あれから数秒、僕は黙って彼女の顔を見つめることしかできなかった。
その間、彼女の表情はひとつとして変わることは無く、ただただ無表情という色しか現れてはいない。
(;'A`)「あ、あのさ……」
川 ゚ -゚)「なにかしら」
(;'A`)「…………」
何か彼女にたして言おうとするが、それでも声は喉から発することは出来なかった。
物事を判断する頭が通常に稼働してない。この状況と、彼女の発した言葉の意味が汲み取れていないでいた。
(;'A`)「とりあえず……その、GOTHってのはどういう意味だ」
──だから僕が聞けることは、そんな単純な思いしか口に出すことはできなかった。
もっときかけなれば、問い詰めなければならないことはたくさんあるはずなのに。
- 50 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 01:12:53 ID:i0AdbL6w0
- でも、僕にはどうする事も出来ない。
この場とこの空気は、もう彼女の手の中に握られている。形となって、本当に彼女の手のひらに握られている。
そしてそれをきっかけに、僕がどうこうと言う権利も剥奪されていた。
川 ゚ -゚)「貴方はファッション誌は読まないかしら」
(:'A`)「ふぁ、ふぁっしょんし……?」
思ってもいなかった単語に、一瞬、呆けてしまう。
だがそんな僕の気の抜けた返事も気にせずに、彼女はつづけて口を切る。
川 ゚ -゚)「そう、それにある一種のファッション……それと思想ね。人が根本的に興味を持つ部分の、大きくカテゴリされたものよ」
(;'A`)「す、すまん……もう少しわかりやすく説明してくれ…」
川 ゚ -゚)「……つまりは──暗闇や血、死などのイメージを自ら好き好んで求める。そんな人たちをそう呼ぶの」
(;'A`)「血、死………」
──それがGOTH。彼女が言う、僕に求めるものの意味。
闇、恐怖、血、骸骨、痛み。それらを自ら求め好む意味合い。
そんな暗く悪いイメージしか浮かばない頭を、勢いよく振って気を取り直し、彼女に視線を合わせる。
(;'A`)「で、でもだな……俺にそんなの求めったってどうしよもないだろ?」
- 51 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 01:14:12 ID:i0AdbL6w0
- 恐怖に怯える心臓を感じながら、背筋を伸ばしてなんとか答える。
僕にそんなものがあるわけがない、そう、絶対にそんなことは無いはずなのだ。
川 ゚ -゚)「そうかしら」
だが、言いつけるかのように心の中で呟いていた思いを、ばっさりと切る彼女。
川 ゚ -゚)「貴方は私と同じような……匂いを感じるわ」
(;'A`)「に、匂い……」
川 ゚ -゚)「そう。だってそれは……まぁ、これは二番煎じになるから言わないでおくけれどね」
一瞬、瞳を閉じて。まるで何かを懐古しているかのような表情を作り。
そして、彼女は言葉を続ける。
川 ゚ -゚)「とりあえず、私もそういうのが好きなの。暗闇や血とか、見るのが大好き」
(;'A`)「だ、だがら……俺はそれをどうすればいいんだよ」
川 ゚ -゚)「言いわけなんて、できるわけないはずよ。これを探しているのならば、少しでも行方不明の事件について知っているはず」
ゆらゆらと揺らす、携帯電話。
それは、そう、あの男子生徒のものだ。
- 52 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 01:17:59 ID:i0AdbL6w0
- まるで誘拐犯のようにそれをチラつかせる態度に、身体の奥底から怯えが蔓延ってくる。
あれは確かに男子生徒の物で違いなく、僕が心から欲しているものに違いは無かった。
それを知っているからこそ、彼女は強気に僕に出れる。
(;'A`)「っ………」
──僕が何かを知っているのだと。行方不明のカップルのことについて、詳しく知っているのだと。
僕のあれほどの慌てようを彼女は見たのだ。騙された先の結果だとしても、今の僕にいいわけできることはなかった。
川 ゚ -゚)「さあ、答えなさい。貴方は行方不明の事件の詳細を……知っているの?」
(; A )「…………」
問い詰めるかのような視線が、僕に突き刺さる。
言い訳などできるはずもない、彼女はもう分かった上で聞いている。確認事項なのだこれは。
『言わなければ、これを誰かに教える』
そう空気で伝わってくる。脅しでも何でもない、ただただ結果としてきいてるだけだ。
(; A )「仮にだ……森野。お前はその事件の詳細を知って……どうするんだ?」
素朴な質問。彼女はどう答えるだろうか。
- 53 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 01:19:03 ID:i0AdbL6w0
- どちらにせよ、僕が知っていることを話し彼女がそれを言いふらせば。
僕の疑われる立場になるのは見えている。だからといって言わなかったとしても、同じ結果だ。
……だがどちら両方も、彼女が深く関わりを持つ必要はないように感じた。
川 ゚ -゚)「そうね。それは見てから決めるわ、でも……これだけは言っておく」
(;'A`)「なんだよ……?」
川 ゚ -゚)「私は決して、誰にも貴方のことは言わないわ。もちろん、話してくれたら前提の話だけど」
──だから私はただ、本当に貴方のGOTHを知りたいだけなの。
そう彼女は呟き。僕を真っ直ぐに見詰める。
黒い二つの瞳が、夕焼けに浮き出て暗闇を作る。そろそろ日が暮れるだろう。
('A`)「…………」
──その瞳は、確かに彼女の物であり。
誰かに作られたと言ったふざけたものでもない。本当に彼女の瞳だ。
だからこそ、僕も少しわかる。
('A`)「………わかった、ちょっと案内する所がある」
──壊れた瞳の色というのは、確かああいったものだったな、と。
- 54 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 01:20:21 ID:i0AdbL6w0
- 〜〜〜〜〜
着いた所は見慣れた工場だった。
錆つき潮風に吹かれるこの場所に来るのは、果たして何度めだろうか。思いだせないでいた。
('A`)「…………」
川 ゚ -゚)「…………」
そんな人気のない所を、暗い時間に歩く二人の姿。
ここまで来る間、ずっと無言だった僕らはそのまま目的の場所まで歩いていく。
('A`)「ここだ」
川 ゚ -゚)「……この、倉庫に事件が関係しているの?」
('A`)「そう、だ……だが、本当にいいのか?」
最後として、僕は彼女に問いかける。
この先を行っても良いのか、超える線引きを彼女に託す。
川 ゚ -゚)「いいわ。開けて」
だが躊躇することなく彼女は返答する。なんの躊躇いもない声色に、逆に僕が怯えてしまう。
本当に何を考えているのかがわからない。だが、僕はその言葉に従うしかなかった。
- 55 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 01:21:52 ID:i0AdbL6w0
- がらりと開けた工場の入り口に、まずは僕が先に入る。
持っていたペンライトを付け、後に入ってきた彼女を照らした。
川 ゚ -゚)「……眩しいわ」
('A`)「す、すまん……」
すぐさま顔から光を下げ、足元に注意してねと僕は口にしながら、足を先に進める。
後ろからついてくる足音を耳にしながら、埃かぶった倉庫の中を進んでいく。
('A`)「……この後ろだ」
乱雑に置かれた機材の中でひときわ大きい物を目の前にして、僕は言う。
川 ゚ -゚)「先に行って」
彼女の言葉にしたがい、先に僕は現場へと入った。
──鼻を刺す異臭。以前よりも酷いその臭いに、僕は少し吐きそうになった。
('A`)「ここだ……」
ペンライトで先を照らす。丸い光の球が地面を舐めるように動き、その物体を照らした。
- 56 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 01:23:36 ID:i0AdbL6w0
- 暗闇の中、小さな光に照らされるのは──二人の死体。
だいぶその原型を持っていない身体に、色々なモノが飛び交っていた。
小さなハエや時折、動物のような鳴き声まで聞こえる。だが、僕らの気配を感じたのか逃げ出していく音が聞こえた。
('A`)「………」
──改めて思う、その酷い現状。
少し腐敗したような臭いを感じつつ、僕は後ろへと振り返った。
('A`)「わかるか森野これが──」
行方不明になった二人の姿だ、と続けようとして。
その言葉が喉もとで詰まった。もとい詳しく言えば、出せなかった。
川 ゚ ゚)
手に持ったライトに照らされる彼女の顔。
その顔に展示する二つの瞳は、まるで虚空のようにまっ黒だった。
色も何もない、黒という色さえもないような、光さえも吸いこんでしまいそうな程に空虚だ。
(;'A`)「も、森野……?」
僕は本当に彼女なのかと、名を問いかける。
- 57 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 01:25:57 ID:i0AdbL6w0
- この倉庫を歩いている間に、他の誰かと入れ変わったのだろうか。そんな気さえしてくる。
確かに彼女の瞳は、感情を表すようなものではないと思っていたが。
──これは異常だった。壊れているなんてもんじゃない、これは──
「だから、眩しいわ」
(:'A`)「えっ……?」
川 ゚ -゚)「眩しい、と言ってるのよ。わかる?」
気付くとずっと僕は、彼女の顔を光で照らし続けていたらしい。
慌てて光を外し、その先を変える。
('A`)「……と、とりあえず…これが事件の真相だと、俺は思うぞ」
急激に鼓動を繰り返す心臓を無視し、僕は口を開く。
('A`)「森野、これで満足したか?」
川 ゚ -゚)「──そうね、確かに。満足いく結果があったわ」
でも、と続けて彼女は言った。
川 ゚ -゚)「貴方に、聞いていいかしら?」
暗闇の中、声だけが響く倉庫に彼女が問いかけてくる。
川 ゚ -゚)「これをやったのは──貴方なの?」
- 58 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 01:26:58 ID:i0AdbL6w0
- 疑うような声色でもなく、ただの質問のように問いかけてくる彼女。
('A`)「っ………」
──そのような質問を、絶対に聞かれるだろうと思っていた。
だからこそ、怯える身体が間違って言い訳らしく言わない様、予め返事を用意していた。
('A`)「──俺じゃない、殺したのは。俺はただ、この二人の死体を見つけただけだ」
川 ゚ -゚)「………」
('A`)「信じろなんて言わないさ。でも、森野が持っているケータイを見れば……アイツからの着信が入ってると思う」
──僕は頭の中に記憶を作りだしていく。
約一週間前、僕は自宅にいると自分の携帯が鳴っていることに気付いた。
みるとそれは、アイツからの電話だった。
('A`)「それで出てみると……アイツは酷く焦った様子で、背中を刺されたと言った」
それから遠くの方で、なにかサイレンに似た音が遠く大きく鳴り響いたのが聞こえた。
そして電話は切れ、それから連絡も何もなかった。
('A`)「……それからちょっと気になって、俺はアイツを探しに行ったんだ」
──仮にも中学の時の友人だったのだ。
それに、自分に助けを求めるアイツの姿が想像もできず、少しの好奇心もあったと今は認める。
- 59 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 01:27:54 ID:i0AdbL6w0
- それから当てもなく探し回り、そして一つのことを思いついたのだった。
('A`)「あっち側でサイレンに似た音が聞こえたって言ったよな……それで港近くじゃないかと、俺は思ったんだ」
すぐさま釣られる様にして、この工場地域もその時、思い出していた。
あの場所は不良どもがよく集まる場所だ、もしかしたらアイツもいるのかもしれない、と。
('A`)「少し怖かったけどよ……それでも、やっぱ気になって行ったんだ」
出かけるときは明るかった空はもう暗くなっていて。
暗闇に落ちた工場は、とても怖かったのを覚えている。
('A`)「それから俺は、ギコのケータイにずっと電話をしづつけた」
かけ続けていれば、どこかでその携帯がなっているかもしれない。
見つけやすくするため、僕はそれを数十回続けてくり返した。
('A`)「そして、この倉庫で鳴っていることがわかった」
実際には、自分の耳にその携帯の音が聞こえたわけじゃなかった。
ただ他の倉庫と比べて、カギが壊されていることが気になり、そこに入ったら聞こえてきたのだった。
- 60 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 01:28:55 ID:i0AdbL6w0
- ('A`)「そして……俺は、この二人の死体を、見つけた」
そうはっきりと、僕は言い切る。予め予想し考えていただけあって、ちゃんと言い切ることが出来た。
深く落ちていた意識を上昇させると、傍にいる彼女が携帯を操っていた。
画面から放たれる光に、彼女の顔が暗闇に浮き出る。
川 ゚ -゚)「……どうやら本当みたいね。着信履歴が沢山残っている」
ちゃんと貴方の名前みたいね。と、続けていい。
ぱたりと携帯を閉じる。
川 ゚ -゚)「よくわかったわ。貴方がなぜ、この携帯を欲していたのか。それと貴方が犯人じゃないということも」
('A`)「ああ、わかってくれたらそれでいい……」
暗闇に慣れてきた視界に、彼女の表情がぼんやりと見えてくる。
ぱちりとペンライトの光を消した。
('A`)「それで……どうなんだ?」
川 ゚ -゚)「どう、とはなにかしら?」
彼女が不思議そうに聞いてくる。
それに僕はため息が出そうになるのを堪え、話を続ける。
- 61 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 01:29:53 ID:i0AdbL6w0
- ('A`)「お前がちゃんと………なんというか、GOTHだっけか? それに満足できたかのかって話だ」
元はそれが彼女の目的だった。
それを僕に求めていたのはわかっていたが、この現状がはたして本当に彼女が求めていたものなのかが心配でならない。
……しかしながら確かに彼女の言う通り、血や死や痛みなどを好きだと公言するほどはあるのか。
こうやって実際に死体を前にしても、彼女は平然としていた。
川 ゚ -゚)「ふむ………そうね、確かに得られたものはよかったわ」
でも、と続け彼女はいう。
川 ゚ -゚)「どうやら私はまだ、満足できてないわ」
('A`)「………」
(;'A`)「はぁ!? どういう意味だそれは………じゃあ、携帯は?」
川 ゚ -゚)「まだ返さない」
(;'A`)「ちょ……!」
慌てる僕にひとつ、彼女から差し出された指先。
その手には何も握られておらず、ただ真っ直ぐに人差し指を僕に向けた。
川 ゚ -゚)「もう少し、この死体を見ていたいの。だって貴方……私が携帯を渡したら、すぐにでも終わらせようとしそうだもの」
- 62 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 01:31:02 ID:i0AdbL6w0
- (;'A`)「っ……」
何をだ、と言いかけて僕は口を閉ざした。
確かに僕は携帯を返してもらった後、この死体をなかったようにするつもりだった。
携帯はどこか深い山奥にでも埋めて、自分がなにも関係がなかったように日常を歩むつもりだった。
川 ゚ -゚)「図星のようね。だから私は、もう少しこの死体と……そしてこの携帯を持っていたいの」
そう彼女は言うと、くるりと機械じみた動きで背を向ける。
川 ゚ -゚)「今日はもう、遅いわ。明日また、ここに来ましょう」
('A`)「え……それ、本気で言ってんのか?」
川 ゚ -゚)「当たり前よ。これでも私はいつも、本気で生きてる」
では、また明日に。
と歩き去りながら彼女は姿を消す。ただひとり、倉庫に残るのは僕と二つの死体だけだ。
('A`)「……」
見事に飼い殺し状態だ。
──だが、それに僕が従うしかないのが、今の現状だった。
- 63 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 01:32:55 ID:i0AdbL6w0
- 〜〜〜〜〜〜〜
それから数日が経った。
色々あるようで、しかし統一的な日々だったと今の僕は思える。
('A`)「ハァ……」
朝早くにきて、教室の椅子に深く腰掛けた僕は、大きく深いため息をついた。
('A`)「………」
気のせいだと思うが、それでも気になってしまう。
今の息はちゃんと無臭だっただろうか、それとも──腐乱した血肉のような臭いはしなかっただろうか。
そこまで心配になるほどに、僕の心は神経質になっていた。
('A`)「どうすっかなぁ……ほんとに」
──あれからたって数日間、僕はあの彼女と、倉庫へ行きつづけた。
死体を見に、そして腐っていく二つの物を二人して確認しに行き続けた。
('A`)「……もう原型もとどめてなかったな、最近の死体」
所彼処に食いちぎられたような無数の穴。切り開かれていたから覗いていた内臓は、綺麗になくなっており。
外に面していた眼球や耳などの器官は、でろりと剥がれおち、水のような液体へと変化していた。
- 64 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 01:33:57 ID:i0AdbL6w0
- そのように酷い有様となっていたが、実は大きな原因があった。
それは勿論のこと、彼女であり。
この数日間に、死体を弄ってみたいと言った辺りで、大きく死体の形が変化をし始めたのだ。
('A`)「なんだよ、死体を弄ってみたいって……」
ため息をつきながらも、僕はここ数日間のことを、少し思い返してみる。
〜〜〜〜〜
川 ゚ -゚)「今日はちょっと死体を触ってみたいわ」
──森野の言った言葉の通り、ふたつの死体に歩み寄ると、予め用意していたのだろうゴム手袋をつけた。
そしてゆっくりと死体をいじくり始める。
何とも言えない音が、少し遠くにいる僕の耳にも届いてきた。
粘着質のある音が鳴り、なにかが引き裂かれるような音も響いた。
('A`)「お、おい……森野。そんないじったら…」
川 ゚ -゚)「────」
だが僕の声は森野に届いてないらしい。
無心に死体を触っているようだった。まるで獲物に群がる獣のような気配を、背中から感じた。
- 65 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 01:34:57 ID:i0AdbL6w0
- そんな背中を見つめていると、ふと何かが鳴り響いていることに気付いた。
('A`)「……?」
ふと足元を見ると、地面に置かれた学生カバンが目に入る。それは森野のカバンだった。
そしてその置かれたカバンの上には、ひとつの携帯が乗っていることに気付いた。
残念ながら僕が欲しているアイツの携帯じゃなかったが、どうやら森野の携帯のようだ。
('A`)「着信か……?」
よく見ると外側に面した画面が、明るい点滅と共に、ぶるぶるとバイブ機能を発していた。
('A`)「おーい、森野……携帯が鳴ってるぞ」
そう呼びかけるが、返事が返ってくることもなく、ただ鳴り響く破壊音。
('A`)「……」
聞こえてないようなので、とりあえずは無視をしておこうと思った矢先。
着信音と同時に鳴り響くバイブ機能で、カバンの上からずり落ちた携帯は地面へと転がり。
その衝撃で携帯が通信中となってしまった。
(;'A`)「っ……」
僕は迷った。
どうするべきか、通信相手の方では小さく呼びかけるような声が耳に入る。
もしかしたら森野が死体を弄っている音が聞こえてしまうかもしれない。
- 66 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 01:36:01 ID:i0AdbL6w0
- とりあえず、その携帯を拾い耳に押し当てる。
('A`)「も、もしもし……?」
一時の間が空いて、そして相手が答えた。
『へっ!? お、男の子が……あ、ごめんなさい! 貴方は空の友達の子?』
驚くような声が伝わってきて、僕は苦笑しかける。
相手の気持ちもよくわかった、森野 空だと思いかけた先が、男が出れば驚くに違いない。
('A`)「どうも……俺、森野さんの……………友人の、毒尾といいます」
『あらあらあらそうなのぉ〜……突然ごめんなさい、私はあの子の母親です。近くに娘はいます?』
母親。そのような人物に僕は驚く。
……そうだ当たり前だ、森野にも母親がいるなんて普通のことだ。
しかしながら、森野と打って変わったようなイメージを取らせる人だ。
('A`)「今はちょっと……森野さんはこの場にいなくて。あの、この電話にも出るつもりなかったんですが
ちょっとした不具合で」
『気にしてくていいのよぉ。あの子、なんにもいわないんだから……まぁでも、こんな風にあの子の友達と
会話するなんて、久しぶりでちょっと感動しちゃうわ』
- 67 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 01:37:00 ID:i0AdbL6w0
- ('A`)「はぁ……」
そんな風に気のない返事を返すが、森野の母親は気にする様子もなく。
『そうねぇ〜……あ、でも。だいぶっていってもそれ程でもないかしら?
……あら、そういえばちょっと前と声が──』
そこまで聞こえていた声が、衝撃と共に突然遠ざかる。
(;'A`)「あっ……」
川 ゚ -゚)「………」
傍には森野が、携帯を奪い取って無表情に息を切らしてたっていた。
怖い。ものすごく怖かった。
(;'A`)「いや、あの……」
川 ゚ -゚)「黙って」
そう言い放つと、付けていた手袋を外して少し遠くへ歩くと、携帯に耳を付けた。
少し会話した後に、森野から強制的に切られるような仕草がこちらからでも確認できた。
川 ゚ -゚)「……人の携帯に勝手に出るなんて、貴方、最低ね」
(;'A`)「いやだってお前のこと呼んでも無視されたしよ……それに通信も勝手に入っちまってさ…」
そんな風に言い訳にしか聞こえないような口調で弁解するも、どうやら彼女はなっとくしてくれたようで。
川 ゚ -゚)「………まぁいいわ。今日はこれで帰りましょう」
- 68 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 01:37:54 ID:i0AdbL6w0
- そう言って、彼女は持っていたゴム手袋を丸めてポケットに入れた。
('A`)「あ、ああ……それで。死体を弄って何か得られたのかよ?」
帰る支度をしている森野に、僕は問いかける。
視界の端には、結構な割合で崩された死体が二つ転がっていた。
川 ゚ -゚)「全く。これっぽちも」
('A`)「はぁ?」
まさかの返事に、僕は驚く。
あれほどまで無心に弄っていたのに。なにが満足できなかったのだろうか。
川 ゚ -゚)「……そもそも、私は死体を弄る趣味はないの。ただ──」
──ちょっと知りたかっただけ。
と小さくつぶやき、背中を見せて歩き去っていく。
('A`)「……なんなんだ、一体」
よくわからない言葉に、僕は頭を傾げることしかできなかった。
〜〜〜〜〜
そんな感じに、この数日間は過ごされていた。
あれから森野が死体をいじくることはなく、次の日からは観るだけの日々となっていた。
('A`)「……ん…」
ちらりと掛けられた壁時計をみると、そろそろ朝のhrが始まる時間だった。
- 69 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 01:38:45 ID:i0AdbL6w0
- そして気付けば、目の前の席には何時も通り友人が座っていた。
( ^ω^)「おはようだお」
('A`)「……おはよう、ブーン」
気もまばらに挨拶を返す。
そんな様子が気になったのか、友人はこちらへと振り向き会話を続けた。
( ^ω^)「相も変わらずの顔色だお……」
('A`)「うるせぇよ……お前だってちょっと、クマできてんじゃん」
( ^ω^)「え? まじかお?」
確かめる様に目元をこする友人。そこにはうっすらとくまができていた。
('A`)「また色々と無茶したんじゃないのか? お前って熱中する事があるとすぐに自分の世界に入るだろ」
( ^ω^)「…………ま、そうだおね。気をつけるお」
少し考えるような仕草をした後、友人はふと気づいたようにこちらをみた。
('A`)「なんだよ、俺にもクマできてたりするか?」
- 70 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 08:23:26 ID:8.uGJ6zM0
- ( ^ω^)「いや、出来てないお。ただ──」
('A`)「ただ?」
( ^ω^)「なんというか、臭い消しみたいなミントの匂いがするお」
そういった友人の言葉に、僕は心臓が高鳴る。
──実は森野と一緒に死体を見に行き始めてから、自分の匂いもあの場所と同じような気分に囚われていた。
だから普段はつけないような匂いがついたタイプの制汗剤まで使ったりしていた。
('A`)「そ、そうか……?俺は別に気にはしてないけどな…」
( ^ω^)「ほんとうかお? そしたら鼻が悪くなったのかお……」
指先で鼻さきをこする友人を見つめ、高鳴る心臓を言い聞かさせるようにして抑える。
大丈夫だ、決して臭いはしないはずだ。自分が勝手に思い込んでいるだけなのだと。
('A`)「そうだよ、ほら……もうすぐhr始まるぞ」
友人に深く疑いをもたれる前に、前を向くよう促す。
なにか釈然としないまま友人は前を向き、僕はそっと溜息をついた。
- 71 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 08:25:17 ID:8.uGJ6zM0
- ('A`)「…………」
──はたして、僕はいつまで彼女に……森野 空に囚われ続けるのだろう。
このように現実に嘘をつきづけるような生き方を、早くやめたかった。
('A`)「…………」
自分の許容範囲から超えるものは、どうにかしてなくさなければならない。
そんな所まで来てしまってる時点で、もはやどうにかできるのか分からないが。
それでも、僕はやるしかない。
川 ゚ -゚)
あの窓際に座る女子生徒に、僕はどうにか離れなければならない。
このような日常が続く毎日を、すぐさまに。
('A`)「…………」
──だが、少し違う感情が生まれていた。
森野と毎日、死体を見に行く。言葉にすればなんとも言えない気持ちになるが。
それでも何か、違ったものが湧いて出来る。
それがなんなのか、今の僕には理解できないでいた。
- 72 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 08:26:31 ID:8.uGJ6zM0
- 〜〜〜〜〜〜
放課後となった教室。
誰もが我先にと思い思いの行動を取る中、僕─はひとつの合図を待っていた。
('A`)「…………」
──それは森野からのメールだった。
その内容はいたって簡単で、あの場所に行く。といった簡素なものだった。
別になにも彼女に求めてはいないが、それでも女の子ならば絵文字の一つを使うべきだと思う。
……いや、それはやっぱり森野のイメージには合わないから遠慮願おう。
('A`)「………」
とりあえずこうやって待っていれば、彼女からメールがくるのが通常だった。
そうして別々に教室を出て、あの工場地域の倉庫で会う。これが最近の流れだった。
──だが、今日はそれがなかった。
('A`)「ないな……」
何度目かの確認。新着メールは画面には表記されなく、そして問い合わせてもなかった。
今日は無いのだろうか、少しほっとする。……だが同時に、喪失感にも似た感情が心に生まれた。
( ^ω^)「ドクオー」
そんな感情に少し戸惑っていると、放課後になってすぐさま居なくなっていた友人が教室に戻ってきた。
よく見ると、なぜかちょっと嬉しそうに見えるのはなぜだろうか。
- 73 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 08:28:07 ID:8.uGJ6zM0
そんなことを思いつつ、友人の言葉を待つ。
( ^ω^)「ドクオ、今日は暇かお?」
('A`)「……なんで?」
( ^ω^)「あれだお、駅前の商店街でいい雰囲気の喫茶店を見つけたんだお。そこ行こうお!」
なるほどと思った。
どうやら友人はその喫茶店にあるとあるものを求めているに違いないと感付く。
('A`)「お前……それってそこにあるケーキが上手いとかそんなんじゃないのか?」
( ^ω^)「なぜばれたし」
どんぴしゃだったようだ。
('A`)「たいして量も食えない見せかけ体質のクセに……やめとけって」
( ^ω^)「おっおー、そんなこというなお。なんせほら……ちょっとブーン、良い事ある予定なのですお」
なにかを隠すような物言いに、僕は少し気になる。
('A`)「良いことがる予定? ……なんだそりゃ」
だが友人は笑ってスルーするだけで、何も答えなかった。
- 74 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 08:28:56 ID:8.uGJ6zM0
- ('A`)「なんだよ、笑ってないで教えろって」
( ^ω^)「いやだおー。おしえないおー」
とりあえず、先に行って待っててくれお!
とルンルン気分で去っていく友人を見送り、そうして教室に取り残された。
まだ行くとも返事もしていなかったのだが、友人にとってはもう来ることにされているだろう。
('A`)「まぁ、アイツにも連絡しておくか……」
携帯を開き、新規メールで良く送る先にいる人物に設定を選び、
『今日は喫茶店に行く。駅前の商店街の所』
と送った。返事は無かったが、忙しいのだと割り切り、席を立った。
とりあえず今日はのんびりできそうだと、久しぶりに通常通りの日常を感じつつ、僕は教室の外へと出たのだった。
- 75 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 08:30:01 ID:8.uGJ6zM0
- 〜〜〜〜
だが、それも校舎でる所までだった。
('A`)「………あれは」
何時も通りに正門から出るのだが、今日は商店街に行くということで裏門から帰宅しようとしていた。
そこで体育館の裏側が少し見えるのだが、そこに──
川 )
( )
──見慣れた姿が二つ、並んでいたことに気付いた。
ここからでは遠く、二人の表情までは見えないが、それでもあの見覚えのある髪の色と。
これまた見覚えのある陸上のユニホームを着た友人の姿。
('A`)「なにをしているんだ……?」
気になったが、どうやっても近づいては自分の姿を現すことになってしまう。
なので露骨に近づくことはできなかったが
('A`)「っ………」
それでも、彼女がポケットから出した物を見て、全てが分かった。
あれはどうみても、ラブレターだ。
('A`)「あ、あいつ……森野に告ったのか……?」
なんということだろう。まったくそうだとおもわなかった。
確かに友人は友達も多く、後輩にも慕われる奴だったけれど、まさか森野 空に告白をするとは。
- 76 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 08:30:59 ID:8.uGJ6zM0
- ('A`)「…………」
ここから見えるのは森野が出した小さな手紙。それは下駄箱にでも入ってたのを持ってきたのだろう。
ここからだと微妙にしか見えないが、封筒形式なモノだった。
('A`)「………」
そうして、森野は友人の熱い言葉を聞いているようだ。
その表情はいたって何時も通りの物だったが、それでも少しこわばっても見えた。
('A`)「……」
なにかしらの雰囲気を感じ、それがどのようなものかは僕にはわからないでいた。
──またこの感情だ。理解のできない、範疇を超えた感情。
('A`)「…」
──足を一歩、進める。
そこから離れ、裏門へと足を進めた。どこか足元がとよりない気がした。
でも、でも───
('A`)「初めて見たなぁ……僕、森野の笑顔」
最後の去り際に見えた、森野の笑顔。
まるで花が咲いたかのように見えたその笑顔を思い浮かべながら、家へと帰った。
帰った。帰ったのだった。
- 77 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 08:31:58 ID:8.uGJ6zM0
- 「
生きる価値が、分からない。
固体そのものが生を成し、息を吸って存在する意味がよくわからなかった。
('A`)「…………」
まるで空気のようにそこにあって、まるで風景のように展示する。
そんな人生に、何を感じることがあるだろうか。
('A`)「………はぁ」
この世は色々と窮屈すぎる。変わることのない多色変化が薄い世界に、僕は辟易を覚えた。
('A`)「まぁ、しょうがないけどな」
──だから、僕は自分を隠す。
ここには無いのだと、自分自身を世界から隠す。力あるものから身を守るため、弱い価値を曝け出さないように。
僕は、世界から自分を無くした。 たた。たたたたたたたた。
」
- 78 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 08:33:04 ID:8.uGJ6zM0
- 〜〜〜〜〜〜
夜。何かを感じて起き上がると、枕もとに置いておいた携帯に着信履歴が残っていた。
('A`)「んっ……」
寝ぼけ眼でそれを確認すると、どうやら友人からだった。
それに掛け直すようにして、携帯を操作する。
('A`) prrrrrr
──だが、どれだけまっても出ることは無かった。
ちらりと時間を見ると、十時を回っている。もしかしたらなにかあったのかもしれない。
('A`)「……メールでも送っておくか」
とりあえずメールでどのような用件かを聞いておこうとして、その指が止まる。
……なにか嫌な予感がした。直感でもあり、そして予想でもある。
まるで過去に同じようなことがあったような、似たようなことがあったような。
('A`)「まさ、か……」
アイツの事を思い出す。たしか、こんな時間帯だった。
- 79 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 08:33:48 ID:8.uGJ6zM0
- だが、確証もない。ただの思い過ごしだということもある。
こんな風に以前も着信だけが残っていたことも多々あった。だから今日だけが違うなんて、ありえるわけでもない。
('A`)「…………」
──でも、何かしらを感じるモノがあった。
どうにかしなければならないような、自分がいかなければならないような、そんな予感が。
('A`)「っ……」
僕はベットから立ち上がり、急いで服へと着替える。
携帯を持ち、机の上に置かれた財布を持って外へと向かった。
('A`)「だめだ……やっぱり、気になる……!!」
滑るようにフローリングンの廊下を走り、玄関で靴をはいた。
行先はもちろん、友人の家だ。確か彼は一人暮らしだったはずだ。
自宅の電話にかけても、誰も出はしない。そもそも携帯にも出ないのだ、行くしかない。
('A`)「…………」
高鳴る心臓、頭の中に浮かぶ悪いイメージを振りきり、外へと走り出した。
- 80 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 08:34:46 ID:8.uGJ6zM0
- 夜の暗闇に落ちた見慣れた道を、息を切らしながら走って行く。ぬるい風が頬をなでた。
友人の家は自分の家から近い方だ。でも、それでも足は早く早くと急いでしまう。
(;'A`)「はぁっ……はぁっ……」
悪い予感しかしない。ただただ蔓延る意味の分からない恐怖に、心が竦む。
でも、それでも。足は友人の家へと向かった。
(;'A`)「ここだ……」
──そして無事に友人の家に着いた。
息を切らし膝に手をつけながら見上げると、友人が住むアパートが目に入る。
(;'A`)「………電気、ついてないな」
路面側に面した友人の部屋の窓は、夜のはずなのに中は暗くなっていた。
こんな時間に出かけるような素行の悪い奴じゃない。だからこそ気になった。
(;'A`)「…………」
アパートの敷地内に足を踏み入れ、中へと進んでいく。
- 81 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 08:36:03 ID:8.uGJ6zM0
- そして友人の住む部屋のドアまで歩いてきた。
手をさしのばし、軽く握る。
(;'A`)
軽いノックを数回するが、中からは返事は無かった。ただ無音が返ってくるだけだ。
口内のつばを飲み込み、僕は決心するようにしてドアの取っ手に手をかける。
……がちゃり、と空いたそのドアはカギがかけられてないらしい。
('A`)「……………」
そして、玄関につけられた電気をつける。
そして、念願の友人を見つけた。
(●ω:;/:;:)
玄関先に倒れる友人。周りは赤い液体が飛び散り、酷い惨状となっていた。
その中央にいる友人の体は、この場の何よりも赤く染まっていた。
だがその中で、一番ひどいのは顔だった。
- 82 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 08:36:58 ID:8.uGJ6zM0
- 何度も何度も刃物で刺されたのか、ぐちゃぐちゃに崩れ落ちた顔のパーツ。
口は引き裂かれ耳元まで伸び、鼻はそぎ落とされ骨が見え。
目玉はくり貫かれ、出来た穴に二つの刃物が突き刺さっていた。
耳も同様に矧ぎ落されて、見るとどうやら切り開かれた口の中に詰め込まれているようだった。
('A`)「………おい」
髪は全て燃やされているようで焦げたにおいが鼻を突く。
それと同様に、魚介類に似た匂いが周りに広がっていた。
('A`)「どうして、こうなったんだ」
そのむごたらしい死体へと、僕は近づく。
普段の友人からかけ離れた様子に、僕の心は酷く荒れる。
('A`)「っ?」
──そして、その友人の死体の横に。
なにかが置かれていることに気付いた。
('A`)「携帯、電話……」
それは見慣れた、友人の携帯電話だった。
- 83 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 08:37:45 ID:8.uGJ6zM0
- 血に染まり、いつもの色とは違ったそれをそっと持ちあげる。
開くと画面には自分からの着信履歴が二件残っていた。
('A`)「………っ!!」
──だが、それよりも。
自分の心を深くえぐる物が、そこにはあった。
('A`)「森野、空………」
その携帯の待ち受けには、森野の画像が設定されていた。
どうやら隠し撮りされたような写り具合だったが、それはいい。
('A`)「画面が、割られている……」
その携帯の中央に位置する森野の顔を、狙ったかのように、画面にひびが入っていた。
まるで呪いを込めるかのように。力強く思いをぶつけるかのように。
(;'A`)「ッ!!」
僕は携帯を投げ捨て、玄関から走り去っていく。
(;'A`)「森野がッ……危ない、かもしれない……!!」
それはカンだった。でも、これだけのことがあったんだ。
次に狙われるのは、森野のような気がしてならなかった。
- 84 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 08:39:19 ID:8.uGJ6zM0
- さっきまでの早さと比べ物にならないぐらい早さで、走って行く。
息はまるで喘息のように切れ、呼吸が雑音でも混ざったかのように鳴り響く。
(;'A`)「ぜはっ……ぜはっ……コヒュー……ぐっ……かは……ぜはっ……!」
先を急ぐが、それでも片手に持つ携帯を開く。
番号を選び、そして森野へと電話をかけた。
(;'A`)「たのむ、出て……!!」
願いを込めて携帯を持つ手に力を込めるが、一度、二度、三度……
だが、彼女は出ない。
(;'A`)「くそっ……!!」
今度は初めてだが、森野にメールを送ってみることにする。
いつもは死体を見に行くかどうかを送ってくることだけだったので、送るのはこれが初めてだった。
(;'A`)「っ……!」
出てくれとは言わない。だが、それでも無事かどうかだけは知りたかった。
- 85 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 08:40:06 ID:8.uGJ6zM0
- すると数秒たってメールの返事が来た。
走りながら、それを確認する。
『なんのよう』
そんな短文だけが載せられたメールに、少しの安堵を覚えた。
だがそれでも安心はできない。受信メールを返事する用途で、森野に電話をかけた。
数秒たって、かちゃりとつながる音が耳に響く。
(;'A`)「も、森野か……っ!?」
『……そうよ、なに。こんな時間に』
(;'A`)「気をつけろ……っ!!次に狙われるのは森野かもしれない!!」
『は?』
(;'A`)「だ、だからっ………!!」
動かす口がうまく回らない。焦りだけが先走り、脳が通常通りに動くことができなかった。
まずは落ち着くべき所だろうが、それでも、さっきまでも光景が目に焼きつき、離れない。
──それがもし、森野の身体で同じようになってしまったら、そう思うだけでも背筋に痺れが走る。
- 86 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 08:41:00 ID:8.uGJ6zM0
- (;'A`)「あ、あのだなッ……とりあえず、いま何処にいる……!!」
『何処って……今はコンビニにいるわ』
(;'A`)「外にいるのかっ!?」
恐怖が走る。
その言葉に僕は心臓が跳ねあがった。
『そうよ。それがなにか?』
(;'A`)「だめだ……!!外に出たら、外に出たら……!!」
──駄目だ、言おうとする言葉を口に閉じた。
これを言ったら逆に森野を心配させるかもしれない。
それなら、言わずに僕がまずは彼女の場所を聞き出して、その場所へと急いだ方がいい。
(;'A`)「とりあえず、コンビニから外に出るな……!!」
『…………』
耳音に無音が返ってくる。
とりあえずこれだけは伝えるしかない。口を開き、喉を震わせ言葉を伝える。
- 87 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 08:43:14 ID:8.uGJ6zM0
- (;'A`)「俺がそこに行く、とりあえずコンビニの場所を教えてくれ……!!」
『……よくわからないけれど、わかった。場所は──』
僕の焦った言葉を聞き入れたのか、なんとか答えてくれた森野はコンビニの場所を教えてくれた。
その場所はここから少し遠かった。でも、なんとか自分の足で迎える距離でもあった。
(;'A`)「っ……」
電話を切り、先に視線を向ける。
この先をどれだけ早く進めるかが問題だ。多く森野に伝えることがある。
最重要なことは、まずは森野と会うことだ。急ぐしかない。
(;'A`)「!?」
──そんな風に考えていると、視界の端にとある物が入る。
それはスーパーだった。近所でも有名で、なんでもそろっていることで僕も利用していた。
(;'A`)「…………」
ひとつの提案が頭の中で浮かぶ。
もしかしたら、僕が向かっている途中に……はちあう可能性があるかもしれない。
- 88 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 08:44:31 ID:8.uGJ6zM0
- (;'A`)「なにか、武器になるものを買っていくか……?」
迷う僕。でも、迷って止まっている暇もなかった。
一時も早く、森野のもとへ向かわなければならないのだ。
(;'A`)「………っ」
──だが、足はスーパーへと進んでいた。
急ぐ足は色々のコーナーを進み、色々なモノが視界に入ってくる。
そして目に入ったものを片っ端から手に持っていく。
『──……円になります』
(;'A`)「おつりは良いです、これで……」
『え……でも…』
(;'A`)「いそいでるんで……!!」
店員の停止する言葉を押し切り、僕は走り去っていく。早く向かわなければ。
がちゃがちゃと鳴り響く袋を両手に持ち、暗い道を走って行く。
早く、早く、早く、森野に、森野のもとへ向かわなければ。
- 89 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 08:46:07 ID:8.uGJ6zM0
- 急ぐ足は空回りを繰り返すようにして地面をかく。
思考はもはや走る息に切れ、通常の働きを繰り返してない。
それでも、足は急ぐ。先へ先へと急いで行く。
(; A )「っハ……ッハ……!!」
視界に映るのはひとつの林。
それはひとつの曲がり角で、ここを押し通ればもしくは。
もしくは反対側に面するコンビニに近道になるかもしれないと思った。
(; A )「ッ……!!」
何も考えることなく、その木々を切るようにして進んでいく。
暗い道だったものが更に暗くなる。だが、そんなことを気にしている暇はない。
考えるな。先へ進め。この先に森野が───……
(;'A`)「ッ……!!」
──そう先を急いでいると、足元に何かが引っ掛かった。
その勢いで僕は地面へと転がった。
- 90 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 08:47:09 ID:8.uGJ6zM0
- (;'A`)「くそっ……根っこか何かに引っ掛かったのか……!!」
そうやって自分を叱咤し、起き上がろうとした矢先。
──なにかが勢いよく、自分に押しかかってきた。
(;'A`)「ぐふっ……!!?」
その容赦ない力に、肺に残っていた息が全て吐き出される。
ぴきぴきと鳴り響く骨が折れるような音。激痛は走らないが、それでも苦痛が身体に走る。
(;'A`)「な、なんだ……!?」
「黙れ」
言葉を発しようとし、それが別の声に閉ざされる。
誰か、いる。そして頭が理解した。
僕は今、誰かに押し倒されたのだと。
(;'A`)「だ、だれだよお前……!?」
声を荒げ、その圧し掛かる人物になんとか抵抗しようと試みる。
- 91 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 08:48:34 ID:8.uGJ6zM0
- だが、背中から力強く押し倒され、圧し掛かるようにしてとらえれられている。
この状況だと、どんなに抵抗しても引きはがすことは無理だった。
(;'A`)「お、お前なのか……!!」
押しつぶされ吸えない息を何とか出しきり、僕は声を出す。
(;'A`)「お前が全部の……全部全部の、犯人なのか……!!???」
喉が潰れていも良い。これだけを言いたい。
お前が殺したのか。人を、僕が知り合った人物全員を、全て。
「………何を言ってるんだ?」
だが、そんな僕の言葉にたして何の反応もなく、相手は答える。
「全て、お前がやったことだろう?」
──そう、相手は言った。
- 92 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 08:50:22 ID:8.uGJ6zM0
- 思いもしない言葉に、声が詰まる。
息が滞り、大して吸えもしなかったものがもっと吸えなくなっていく。
(;'A`)「………」
──なにをいっているんだ、こいつは。
俺がやっただと、意味が分からないことを相手は口走った。
「そのような反応をするのなら、本当に忘れてしまってるようだな」
(;'A`)「………」
なにを、なんて聞けることはできなかった。
忘れていることなど、なにもない。そうだ、僕は俺は私はぼくはわすれることなど何もない。
「いいんだ、知っていることだから。俺はなにも気にしない」
「ただ、俺はお前に少し、分からせたいんだ───」
「──あれは、俺の獲物だ。だから手を出すことは許さない」
──そう、圧し掛かる人物は言う。
僕は俺はそれがなにかなのかがわからない。ただただその言葉聞き入れるだけだった。
- 93 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 08:51:27 ID:8.uGJ6zM0
- 「ひとつ、良いものを見せてやろう。これは、とある携帯から移したものだ」
そんな僕の俺の事を無視し、相手は手を伸ばし顔元へと近づけてきた。
それは携帯であり、画面にはとある動画が再生待ちにされていた。
「面白いものが見える。心してみるんだ」
(;'A`)「なにを、」
僕の俺の言葉を無視し、相手は再生ボタンを押す。
始まる映像、そして聞こえてくる音声。
『──……〜〜〜〜……──』
最初はうまく聞き取れず、その録画環境が悪いのだとわかった。
だがじきになって行く先に聞こえるのは、一つの声。
どこか聞きなれたようで、違和感のある声。
『はぁはぁはぁ……』
まるで動物のような、息切れが聞こえ。
そこで何かが急激に動いてることがわかってきた。
『ざまぁみろ…ン…お前、すべて………はぁはぁ…あ、ははははははっはっはっはははっはっはあっはあ』
爆音にも似た笑い声が響き、そして動画は明細にその場の状況を映し、そして現した。
- 94 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 08:53:02 ID:8.uGJ6zM0
- 『ぎこぉ……ケ……いいぞ、僕はもう……う、ふぅ………』
──写るのは指。写るのは固くとがったもの。
そして先にあるのは二つの死体だった。
『………かはは、はははは……やったんだ……僕は最後まで、あはは……やってやったんだ……』
その死体は見慣れたものであって、ここ最近では違ったものでもある。
カップルの死体。生新しい肉の色を保った赤色の身体が、眼にはいる。
『……………』
そして、画面の中でなにかが外されるような動作をおこなわれ───
('A`)「………」
──それがピンク色のコンドームだと気付いた途端。
それが何なのか理解できたとたん、僕の頭一つのことを思い出す。
- 95 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 08:54:03 ID:8.uGJ6zM0
- ('A`)「………もらった奴、おれ、どこにやった?」
アイツからもらった、あのコンドーム。
確かポケットにしまったはずだった、あのコンドーム。いつから、はたしていつからそれがない。
だが、その答えは目の前にある。そう、それこそが僕の答え。
──一瞬引かれる、その場の撮影方法。
その手元が揺れ、撮影者の顔をが映りそこにいたのは
('∀`)
満面な笑みを浮かべる、卑下た笑いをする。
僕の俺の僕の俺の僕の俺の僕の俺の、顔だった。
- 96 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 08:55:08 ID:8.uGJ6zM0
- 「良い表情だろう?全てを壊し、全てを欲にまかせて笑う者だ」
滑稽でもあり、そして強者でもある。
それがいかに嬉しいのかが分かる笑みだ。
('A`)「ちが、う……」
「ん?なにがだ?」
('A`)「おれ、はやってない……」
「──そうだろうな。おまえはやってない、そうお前はやってないだ……」
「だが、これはなんだ?」
暗闇の中、相手がぼくが俺がもつ荷物を矧ぎ取る。
そして、それを逆さにして、中身を地面にぶちまけた。
──がしゃがしゃん。
鳴り響く金属音、地面にあたり飛び跳ねるそれはたちは全て。
刃物だ。
- 97 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 08:56:02 ID:8.uGJ6zM0
- 「これはなんだ?」
「これを買い、持ち、どこにいこうとしていた?」
「お前はその先に待つ物の為に、これを持ちなにをするつもりだった?」
('A`)
──僕は俺は、なにも感じられない。
俺はこれを買いなにをしたかった? 僕はとりあえず殺したかった。
俺は武器を買おうとしたかったんだ。 僕は森野を殺したかったんだ。
俺は森野をまもろうとして。僕は森野を奪いたかった。
そうして、僕は元に戻った。
俺の頭は、僕の頭のへと、元に戻った
('A`)「生きる価値が、分からない。
固体そのものが生を成し、息を吸って存在する意味がよくわからなかった。
まるで空気のようにそこにあって、まるで風景のように展示する。
そんな人生に、何を感じることがあるだろうか。この世は色々と窮屈すぎる。
変わることのない多色変化が薄い世界に、僕は辟易を覚えた。だから、僕は自分を隠す。
ここには無いのだと、自分自身を世界から隠す。力あるものから身を守るため、弱い価値を曝け出さないように。
僕は、世界から自分を無くした」
- 98 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 08:56:58 ID:8.uGJ6zM0
- 頭の中に鳴り響く、僕の俺の声。
だが現実が作り出す答えの先にあるのは、疑いようもない真実。
今の現状にどうすることもできず、それは出来る範疇外のものへと変化した。
幻覚はいま、閉ざされた。もう、僕はこの言葉では戻れない。
「壊れては困る。ただ、もっと教えろ」
('A`)「────」
「お前は何を感じ、何を思って人を殺す?」
('A`)「人が持ってるモノを壊して殺したい」
('A`)「それが……僕の全てだ」
考えることもなく、ただ素直に言葉が口から出る。
確かにそれがただしい、だってぼくなのだから。
- 99 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 08:57:56 ID:8.uGJ6zM0
- もう、偽らなくても良い。それがどれだけ安堵を及ぼすか、何物にも代えられないものだ。
「……そう、か。それがお前の本来の口調であり、そして『僕』か」
彼女に言われてから気付いたが、本当にそうだったとは……と聞こえたが、僕はそれを無視する。
「お前は殺すことに欲情を覚えていた。他人を壊しそれを得ることによって……そして自分を忘れる」
この動画と、今のお前の違いがそれだ。と、相手は言い。
「面白いな。その詞のような物を歌えば、お前は自分を忘れることが出来るのか?」
('A`)「……小さい時から、僕は色々と変だったんだ……他人の物を壊すのが大好きで、なにもかもをこわしてまわった」
('A`)「でも、それがこわかった。だから僕はやめたんだ、でも、どうしても抑えきれなくなった時は」
('A`)「こうやってもう一人のじぶんをだして僕は俺になって色々とわすれて」
('A`)「そのうち母親もぼくをとおざけはじめて……ここまで育ててくれたのはかんしゃするけど…」
でも、でも。
僕はダメだった。範疇外の、そう、僕にとって理解してはいけない、しちゃいけないものを……元から常に求めていたのだから。
- 100 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 08:59:00 ID:8.uGJ6zM0
- 「なるほどな。壊れていることをひた隠しにしていた……だが常に抑制していたために、いざ開放するとこうなるわけか」
あいてはいう。
僕はどうするのだろう、全てを思い出して、僕はどうしたらいいのだろう。
「相手が悪かったと思え。ドクオ、お前はいいものをつくってくれた。それだけが俺の望みだった」
相手はいう。
僕はなにも思えない。いつもの言葉で戻るはずの言葉はもうきかない。
だが、僕はもう、偽らなくていいんだ。
「ただただ──お前は騙され続けていればよかったんだ」
「──お前は、森野 空に手を出すべきではなかった。そうすれば、もう少し生きられたのに」
「だからすまないお。ここで死んでくれ」
僕は、眼を閉じた。
聞きなれた口調と、その言葉を耳にして。
僕は、殺されたのだと理解した。
- 101 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 09:00:09 ID:8.uGJ6zM0
- 〜〜〜〜〜
( ^ω^)「ふぅ……」
腕がどうやら蚊に噛まれたらしい。僕はそれを指先で掻く。
赤くはれた丸い跡は、他にもいっぱいある
それもそうだろう、長い間ずっと林の中にいたんだ。大きな穴を掘るために、例えるなら人一人埋めるぐらいの。
川 ゚ -゚)「どうしたの、その腕」
──ふと視線を上げると、そこには森野の姿があった。
周りには誰もおらず、教室にいるのは僕らだけだった。
( ^ω^)「昨日、ちょっとあって」
川 ゚ -゚)「ふぅーん……そうなの。で、まだその笑顔貼り付けてるのね」
( ^ω^)「はりついてる? ……ああ、意識してなかったから」
川 ゚ -゚)「本当に貴方、他人に見せる笑顔は上手いわね」
( ^ω^)「褒めてるの?」
川 ゚ -゚)「冗談言わないで」
だろうね、と僕はせせ笑う。
- 102 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 09:00:57 ID:8.uGJ6zM0
- それで、と僕はつづけた。
( ^ω^)「あの携帯で……君は楽しめたかい?」
川 ゚ -゚)「……そうね、楽しめたわ。でも居なくなって残念よ」
そうやって僕の後ろの席に目線を移す。
そこには何処かにある席と同じように、空席となっている。
……今の僕には、その表情と声は、もう覚えていなかった。
( ^ω^)「そうか、だったらよかった」
川 ゚ -゚)「そうね、まぁ、それでも……貴方は何処まで私に隠しているの?」
そういう彼女は、どこか怒っているようにも見えた。
いや、なにもしてないさ。ただ一人の男が落とした電話を僕が拾い。
そこに保存されていた動画を抜き取り、自分の携帯に入れ。
それを君に渡して、その男を騙せしてみろと言っただけだ。
( ^ω^)「なにもないさ。ただ、僕も一つのことを満足できただけだ」
- 103 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 09:01:58 ID:8.uGJ6zM0
- 沢山の物が見れた。
沢山の死体が見れた。男を騙して、それを得た。
──GOTH、僕が求めるその真骨頂。我ながら色々と上手く出来たと思った。
……彼女が誰かとぶつかりそうになったとき、その場に僕もいて本当によかった。
( ^ω^)「それと、なんか君色々と笑顔を振りまいてるらしいね」
川 ゚ -゚)「……そうよ、貴方が使えというから。色々な場所で使ってみたの」
失敗もしたけれど。と、なにか悔やんでいるように唇の端を噛んだ。
……ああ、確かに言ったな。彼が森野に携帯のことを聞いてくれと言った時。
僕が去った後、彼に微笑んでみろと。そうしてまた、彼に会いにいけと。そうすれば面白いものが見れると。
( ^ω^)「……ああ、それと君に改めてお礼を言わないといけなかった」
川 ゚ -゚)「お礼? 気持ち悪こと言わないで」
裏を感じることしかできないわ。と一歩僕から距離を取る。
( ^ω^)「本当に感謝しているんだ。
君が……ちゃんと僕が言ったことを実行してくれたことを」
もう顔も声も思いだせない、かつてのクラスメイト。
彼が……森野 空に興味を持つことはあらかじめわかっていた。
- 104 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/24(水) 09:02:54 ID:8.uGJ6zM0
- なぜならば、というのは。今さらながら言うことは無い。
彼女が常日頃から出し続けている──その狂人≠引きつけるフェロモンは、絶対なのだ。
過去に何度、彼女は狂人に攫われ殺されそうになっただろう。数えればきりがない。それと同時に僕は何度、彼女を助けたのだろうか。
( ^ω^)(ま、僕もその一人だということも理解できるけど)
──そのような過去があったからこそ後は、あの彼が森野に興味を持つように仕向けるだけだった。
他人からモノを奪うという、殺して欲を満たすという感情論。その捻り曲がった自己意識に、狙いを付けさせるだけだった。
( ^ω^)「……おっおっお」
川 ゚ -゚)「その気持ち悪い笑い方やめてくれる?」
( ^ω^)「すまない」
──僕はそうやって窓の外を見る。外では部活動生徒が元気にグラウンド走り回っていた。
だがどこか、その雰囲気に活気がない。
( ^ω^)「……ま、彼には悪いことしたな」
川 ゚ -゚)「なに? ……ああ、陸上部の部長かしら。確か名前は──ショボンだったかしら?」
あれ?ちがったかしら? と首をかしげる森野。
それを見ながら、机の中にしまった──偽物のラブレターに触れて、僕はそっとほほ笑んだ。
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