- 45 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/07/02(月) 23:05:17 ID:qj6LnV4.0
背の高い木々が茂る、深い森を駆けていた。
新緑の固い葉が体に当たり、いちいち汁をひっつけてくるのが鬱陶しかった。
「ぎががががががががが」
「がががががががが」
「ごごごごごごごごごごご」
lw´‐ _‐ノv「ずばばばばばば!」
('、`*川「対抗しなくてもいい」
数十匹にも上るクモのような獣に追われ続け、半日が経つ。
方位磁石の感覚が体に宿っているので、森の中で迷っている訳ではないが、
森は何処までも行っても森だった。
- 46 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/07/02(月) 23:10:42 ID:qj6LnV4.0
森さえ抜ければスパイスクロウたちの手から逃げられるはずだが、
振り切れる相手ではなさそうだった。
ペニサスは足を止め、剣を抜きながら振り返った。
('、`*川「"落ちよ雷の滴"」
天に向かってかざした剣に、黄色い閃光がばちばちと光る。
('、`*川「"鳴けよ雷鳴の声"」
剣を構えると、光は一層強くなり、周りの木々が焦げ付いた。
('、`*川「"死ねクソ野郎共"」
「ぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼ」
横一文字に振るった剣から、轟音と共に雷撃の波紋が拡がった。
地面がえぐれ、周りの木々が薙ぎ倒れた。
- 49 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/07/02(月) 23:16:11 ID:qj6LnV4.0
雷撃は閃光を伴い、放射線状に拡散する。
スパイスクロウの群れを大きく呑み込み、やがて全て消し去った。
lw´‐ _‐ノv「環境破壊は駄目! シューちゃんとのお約束だよ!」
('、`*川「だから今の今まで使わなかったんだよ」
腰布に付けた革袋に剣を収め、フードを被る。
局地的に荒廃した森を背に、また木々の海に身を投じた。
走るのやめて、歩き続けた。
途中、ウサギを数匹と、蛇を十数匹、木の実を食べて、消費した魔力を補充した。
森には食べられるものが多いので、空腹になることはなかった。
- 50 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/07/02(月) 23:22:55 ID:qj6LnV4.0
森に入ってから十日が過ぎようとしていた。
小さな街道が見つかったので、北に沿って道を歩いた。
一度行商人と出会ったので、浄粉とソープの類を買った。
('、`*川「一応、私も女だし」
lw´‐ _‐ノv「え、聞いてませんけど」
('、`*川「むかつく」
街道を丸一日歩いた先に、ぼろの山小屋と、数人の兵士たちを見つけた。
彼らはペニサスを一瞥すると、顔を見合わせ何か話し合ったあと、
彼女の元へ近づいてきた。
- 51 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/07/02(月) 23:27:55 ID:qj6LnV4.0
兵士たちはテルミナから来たと名乗った。
道中、モンスターに襲われ、地図を無くしたから困っているのだという。
ペニサスは麻袋から地図を丸めたものを取り出し、
('、`*川「200リンで売るけど」
兵士たちは苦い顔をした。
いくらか負けてもらえないかとの申し出をことごとく断り、
結局兵士たちはペニサスから、定価の五倍で地図を買った。
('、`*川「何処まで行くつもりなの?」
- 52 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/07/02(月) 23:31:35 ID:qj6LnV4.0
( ・∀・)「エンドヘヴンだ」
('、`*川「遠いわね。何かのハント?」
( ・∀・)「まあな」
あまり込み入ったことは教えてくれなさそうな空気を感じた。
強引に聞きたいほど興味も無かった。
('、`*川「そこの山小屋、使ってもいい?」
日はまだ高いが、このところ歩き通しだったので、床に寝転がって眠りたかった。
( ・∀・)「ちょっと待ってくれ。隊長に聞いてくる」
兵士の一人が山小屋まで走っていく。
王国の兵士というと傲慢な者が多い印象だが、テルミナが小国だからか、
彼の対応は丁寧だった。
- 53 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/07/02(月) 23:34:58 ID:qj6LnV4.0
兵士が山小屋から出てくると、一回り大きい兵士が、
上半身に何も身につけていない状態で山小屋から這い出てきた。
かなり背が大きく、たくわえたヒゲの似合う中年の兵士だった。
兵士から隊長と呼ばれた男は、ペニサスの足下からさっと視線を這わせた。
値踏みするようないやらしさを感じた。
( ・∀・)「いいらしい。我々も泊まるから狭くなるかもしれんが、
五、六人程度なら寝られないことは無いだろう」
('、`*川「悪いわね」
自分に視線が集まるのを感じた。
心の中を読む魔法は知らないが、彼らが何を考えているか、見当が付かないほど鈍感でもなかった。
- 55 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/07/02(月) 23:39:01 ID:qj6LnV4.0
山小屋につくと、湿気臭さに混じり、男特有の臭気が鼻についた。
外で寝るよりはましだと考え、荷物を部屋の隅に降ろした。
lw´‐ _‐ノv「ペニサスってさあ」
('、`*川「何よ」
lw´‐ _‐ノv「セックスしたことある?」
('、`*川「……無いけど。だから?」
lw´‐ _‐ノv「チャンスじゃーん! 今夜、イケイケの野郎共六人とパーティだよ!」
山小屋の外で、ぼそぼそと話をしている声が聞こえる。
('、`*川「ええ。楽しみだわ」
- 78 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/07/03(火) 00:33:08 ID:jeDx/Cck0
第二話「獣の小屋」
- 56 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/07/02(月) 23:41:47 ID:qj6LnV4.0
近くで蛇を二匹捕まえ、山小屋に戻ってきた頃には、火が暮れていた。
山小屋の前で兵士たちがたき火を囲んでいる。
酒瓶がすでに、転がっていた。
('、`*川「これ、焼いてもいい?」
( ・∀・)「お前が捕まえたのか? 見かけによらず、たくましいんだな。
一人で旅をしているのなら、当たり前のことなのか?」
('、`*川「さあ?」
昼間、話をした兵士が場所を譲ってくれたので、そこに腰を下ろした。
木の枝に突き刺した蛇を軽くあぶり、一度皮を剥ぎ取ってから、
たき火の傍に枝を突き刺し、火に当て続けた。
- 57 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/07/02(月) 23:43:51 ID:qj6LnV4.0
こつは、焼かないことだ。
焼くのではなく、あぶることで、蛇の脂が適度に落とせる。
( ・∀・)「なあ、名前は何て言うんだ?」
('、`*川「ペニサス。あんたは?」
( ・∀・)「モララーだ」
モララーは若く、気さくな男だった。
他の兵士のような堅さや無骨さは感じない。
逆に言えば、兵士としては少し幼い印象である。
( ・∀・)「ペニサスはどうして旅をしてるんだ?」
('、`*川「師匠を捜してる」
- 58 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/07/02(月) 23:46:51 ID:qj6LnV4.0
( ・∀・)「師匠って」
ペニサスの隣に置いてある、剣の収まった革袋をモララーが見つける。
( ・∀・)「剣の師匠か?」
('、`*川「剣は我流」
( ・∀・)「じゃあ……狩りの師匠?」
lw´‐ _‐ノv「料理の師匠だよね!」
('、`*川「殺しの師匠」
モララーが一瞬息を呑んだのがわかったが、すぐに彼は破顔した。
( ・∀・)「ははは。そりゃいいや」
- 59 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/07/02(月) 23:49:41 ID:qj6LnV4.0
('、`*川「何が?」
( ・∀・)「じゃああんたは殺しのプロか?」
('、`*川「そうかもね」
( ・∀・)「今まで何人殺したんだ」
('、`*川「数えてないけど、二百人くらいじゃないかな」
モララーはもう一度笑った。
よく笑う男だと思った。
蛇を食べ終えた頃、兵士たちの隊長から酒を勧められた。
断ると、今度はモララーの方へ向き直った。
薪が足りなくなったから、探してこいと命令を出す。
モララーは渋々といった様子で、たき火から離れていった。
- 60 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/07/02(月) 23:52:14 ID:qj6LnV4.0
モララーの姿が闇夜に消えると、場の空気が変わったのがわかった。
酒を飲んでいる者、肉に食らいついてる者、皆ペニサスの方をちらちらと見ていた。
ローブから伸びる白い足に、視線が纏わり付く。
lw´‐ _‐ノv「こいつらじゃ、駄目だなあ」
隊長が立ち上がり、ペニサスの後ろに立った。
('、`*川「何?」
彼は何も言わず、ペニサスの髪の毛を掴むと、その場に押し倒した。
それを合図に、周りに座っていた兵士たちが立ち上がり、ペニサスを囲む。
- 61 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/07/02(月) 23:59:07 ID:qj6LnV4.0
隊長はローブに手をかけ、強引に前開きを開いた。
ローブの下は、薄いキルティしか着ておらず、乳頭の部分がそのままの形になって露出した。
誰も喋らなかった。
隊長はキルティの上からペニサスの胸を鷲づかみし、彼女の首元に舌を這わせている。
他の者は、ペニサスの太ももや、下着だけの尻に手を伸ばしていた。
隊長は薄桃色の乳頭が見えるまでキルティをまくし上げ、
つばをたっぷり含んだ舌でなめ回した。
その間、ペニサスはずっと無言だった。
死神は、無表情のまま、ことの成り行きをただ眺めていた。
腕にかかっていただけのローブが投げ捨てられ、
キルティも剥ぎ取られた。
白い体がたき火の光に映し出され、胸の凹凸が影となって地面に伸びた。
- 63 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/07/03(火) 00:04:15 ID:jeDx/Cck0
下着一枚になったペニサスは、夜空を見上げて、薄く微笑んだ。
('、`*川「"闇よ闇"」
後ろから羽交い締めにされ、胸を乱暴に揉みし抱かれる。
隊長の手が下着に滑り込み、薄い陰毛を撫でた。
('、`*川「"闇に浮かぶは悪魔の嘆き"」
指が膣穴を探っている。
('、`*川「"闇に消えるは人の邪気"」
下着に手がかかり、膝までずらされた。
('、`*川「"揃いも揃ってクズばかり"」
ペニサスの瞳が、黒く覆われていくのを、一人の兵士が気がついた。
- 65 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/07/03(火) 00:08:05 ID:jeDx/Cck0
('、`*川「"闇に散りゆく屑ばかり"」
全裸になったペニサスの体から、黒い煙が立ち上り、一瞬にして辺りを覆った。
兵士たちは声を上げる間もなく、黒い煙に飲まれていった。
数秒ほどで煙が晴れると、そこには誰もいなかった。
たき火だけが、変わらず燃え続けていた。
lw´‐ _‐ノv「どうしてすぐに殺さなかったの?」
('、`*川「楽しいかなあって思って。セックス」
lw´‐ _‐ノv「あのさあ、ペニサス。セックスってのは、好きな人とするから楽しいんだよ」
('、`*川「じゃあ、下手したら一生できないじゃない」
lw´‐ _‐ノv「うーん、ペニサスの性格を考えると、確かに難しいかもしれんね……」
- 67 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/07/03(火) 00:10:03 ID:jeDx/Cck0
足首までずれたをはき直そうと、手を伸ばしたときだった。
背後の茂みが揺れ、音を鳴らした。
( ;・∀・)「うわ! ごめん!」
('、`*川「え?」
lw´‐ _‐ノv「あ」
モララーが帰ってきた。
裸を見ないようにしているのか、こちらに背を向けて、しきりに謝っている。
下着をなおし、キルティを身につけ、ローブを羽織ってから、モララーに声をかけた。
( ;・∀・)「驚いた。何で脱いでるんだよ」
- 69 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/07/03(火) 00:13:27 ID:jeDx/Cck0
('、`*川「好きで脱いだ訳じゃない」
( ・∀・)「他のみんなは?」
lw´‐ _‐ノv「消滅したよ!」
('、`*川「さあ?」
モララーは地面に黒ずんだ染みが五つあるのを見つけた。
見ようによっては、人の形に見えそうだった。
( ;・∀・)「本当に……知らないのか?」
('、`*川「たぶん死んだよ。でも本当は知らない。あれはそういう"もの"だから」
モララーが剣を引き抜いたのを、音だけで確認した。
- 71 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/07/03(火) 00:15:40 ID:jeDx/Cck0
( ;・∀・)「お前、魔女、なのか」
('、`*川「ええ」
( ;・∀・)「みんなを殺したな!」
('、`*川「ええ。まあ。たぶん」
( ;・∀・)「何故!?」
理由を聞いてくることに、少し驚いた。
兵士というのは、こういうとき問答無用で斬りかかってくるものだと考えていた。
やはりモララーという男は、兵士らしくない。
('、`*川「私のことを襲ったの。私が、女だから」
( ;・∀・)「女? あ……でも、そんな、まさか」
- 72 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/07/03(火) 00:19:58 ID:jeDx/Cck0
('、`*川「どうして信じられないの?」
( ;・∀・)「俺たちは王国の兵士だ! 誇り高きテルミナの兵士!
女性を襲うなんてあり得ない!」
lw´‐ _‐ノv「ペニサス。いいこと思いついた。こいつ殺してこいつらの荷物奪おうぜ」
('、`*川「ちょうど同じこと考えてたから、やりたくなくなったわ」
lw´‐ _‐ノv「ちっ」
( ;・∀・)「おい、聞いてるのか!」
('、`*川「私は真実しか言わない」
( ;・∀・)「でも」
('、`*川「でも?」
- 73 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/07/03(火) 00:23:11 ID:jeDx/Cck0
モララーはゆっくりと剣を降ろした。
( ;・∀・)「俺たちは、兄弟みたいに、育った……。
今日の今日まで、同じように剣を振るった仲だ。
隊長は凄く強くて、俺、すげえ尊敬してたし、優しくて、頼りになって……」
('、`*川「だから?」
( ; ∀ )「信じたくねえよ……それが真実でも」
膝から崩れ落ちたモララーは、剣を放り、手をついて頭を項垂れた。
黒い染みとなった仲間の上に、汗と混じった涙が落ちた。
怒りと悲しみ作っていた渦に、落胆の感情が交ざり、どうしようもなく絶望を感じていた。
('、`*川「人ってそういうもんだよ」
( ;・∀・)「俺たちには使命があった。それなのに、どうして」
- 74 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/07/03(火) 00:26:26 ID:jeDx/Cck0
('、`*川「お腹が空いたら食べるし、眠くなったら寝る。人ってそういうもん」
( ;・∀・)「……女がいたら、犯すのか」
('、`*川「それは人によるのかもね。あんたは違うみたいだし」
モララーから殺気が消えたのがわかったので、
ペニサスは後ろ手に持っていた剣を地面に降ろした。
( ・∀・)「腹が減った……」
('、`*川「ん?」
( ・∀・)「俺も食うぞ」
兵士たちが食べ残していた肉に手を伸ばし、がむしゃらに食べる。
途中のどがつまったようで、苦しそうに胸を叩いた。
一心不乱に食べ続けるモララーを見て、ペニサスは鼻を鳴らした。
- 75 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/07/03(火) 00:31:41 ID:jeDx/Cck0
('、`*川「そうそう。それが人間……」
lw´‐ _‐ノv「わー子供みたい。可愛い−。殺したーい」
ぴたっとモララーが食べる手を止め、ペニサスの方を向いた。
('、`*川「そろそろ寝るわ。おやすみ」
立ち上がったペニサスだったが、モララーの視線に体を硬くした。
彼の視線はペニサスではなく、さらに上空の方を向いていた。
( ;・∀・)「だ、誰? その子……」
lw´‐ _‐ノv「え?」
('、`;川「……マジ?」
薪にしていた木がぱちっと弾け、火の粉が宙を舞った。
二人と死神一匹は、互いに顔を見合わせたまま、しばらく動けなかった。
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