ミセ*゚ー゚)リ 怪異の由々しき問題集のようです
- 423 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2013/07/27(土) 21:00:51 ID:ENCj2HLk0
落書き。
益体もない些細な出来事。
「でぃの一日 平日編」
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- 424 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2013/07/27(土) 21:02:02 ID:ENCj2HLk0
- 【―― 0 ――】
「―――この日常が一番大切だー、って言うケド、そんなの当たり前だよね」
会長にしては珍しく普通のことを言ったなあ。
そんな風に思う私を後目に彼女は続けた。
「どんな非日常であっても続いていけば日常になる――だとしたら、『日常』は人生を形作る一番の要素で、それが大切じゃないわけがない」
ミセ*゚ -゚)リ「え……あ、確かにそうですね」
と思ったら、やはり会長は会長で、普通のことなんて言わなかった。
でも言われて見れば確かにそうなのだ。
『日常』と言った場合に、私が思い浮かべるのは学校に行ったり帰って遊んだりする日々だけど、人によって『日常』なんて違う。
何処かに旅行に行く度に事件に遭遇する漫画の探偵みたいな人がいたとしてもその人にとってはそんな日々が『日常』だ。
私は誰かが誰かを殺したり、殺されたりするような『日常』は素直に嫌だと思う。
そういうのは漫画の中だけで十分だ。
- 425 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2013/07/27(土) 21:03:02 ID:ENCj2HLk0
だけど、例えば殺人事件を捜査する刑事さんにとっては死んだ人と殺した人に出会い続けるのが『日常』で。
私なんかは『日常』と聞いて沢山の退屈と少々の刺激を連想して、そしてそれが嫌いじゃないんだけど、そんな人ばかりじゃないんだ。
毎日のように誰かから蔑まれるいじめられっ子の日常は――『日常』であり同時に『地獄』だ。
そんな『日常』に帰りたいなんて思えるはずがないし、私のように安心するとかなんて、いやポジティブな印象なんて何一つも抱けないだろう。
……そう言えば、あのライトノベルの変わった名前の主人公もそんなことを言われていた気がする。
どんなに稀有で貴重な『非日常』だって、続いていけば、それはその人にとっての『日常』へと変わってしまうのだと。
ミセ*-ー-)リ「だとしたら『日常が一番大切だ』なんてぶっちゃけ勝ち組の台詞なんですね」
結局のところ「日常って大切だなあ」と言えた二次元の登場人物達は皆幸せだった。
幸せだった間には、日常に浸っている頃には気付けなかっただけで。
「日常が大切だ」という台詞は、とても遠回しな勝ち組宣言でもあるのだろう。
辛く苦しい日々が『日常』だった人々も存在するのだから。
そして会長が言ったことで何より最悪なのが、どんな『日常』であれ大切だということだ。
『日常』の大切さには幸不幸は全く関係ないと彼女は言っている。
残酷なほどに美しく、嘲笑するように笑いながら。
- 426 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2013/07/27(土) 21:04:04 ID:ENCj2HLk0
私達は、一瞬一秒の積み重ね。
それまでの日々の集大成として現在の私達が存在する。
だったら私達を構成する必要不可欠な要素は『日常(過去)』で――それが大切でないわけがない。
ミセ*゚ー゚)リ「望むと望まないに関わらず、幸不幸なんて関係なく、『日常』は大切なモノ」
「『日常』を大切に思えない人間は二種類しかいないと僕は思うよ。一つは、そんなことにも気付かないお馬鹿さんじゃないかな」
……学生の身には心に刺さる言葉だった。
いや分かってるんですよ?
今勉教しないと、受験の時に困るって。
ミセ*゚ー゚)リ「ちなみにもう一種類は? もう一つの方はなんなんですかぁ?」
その事実から目を逸らすかのように私は訊いた。
会長はなんてことはないように答えた。
- 427 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2013/07/27(土) 21:05:05 ID:ENCj2HLk0
その――悲しい事実を。
「この日々の積み重ねが自分になると理解しながら大切に思えないんだから、結局、自分のことが大切じゃない人でしょ」
……なるほど。
道理だ。
そしてこれはこれで心に突き刺さる言葉だった。
だとしたら私は幸福なのだろう。
毎日がそれなりに楽しく、でぃちゃんに出逢って変化した日常も好きだと言える私はきっと。
ミセ*-3-)リ「会長や……それにでぃちゃんの『日常』は、どうなんでしょうね。会長はどう思っていますか?」
「決まってるじゃん。僕は僕のこと好きだから、毎日が大切だよ。君の友達に関しては僕以上に決まってるじゃん」
そうして会長は屈託なく笑って言った。
「あの二人は今、幸せな『非日常』にいるんだから」
- 428 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2013/07/27(土) 21:06:04 ID:ENCj2HLk0
- 【―― 1 ――】
―――午前六時過ぎ
カーテンの隙間から溢れる光が朝を知らせる。
そろそろ起きないと、と比較的真面目な自分が思う一方で心の奥の甘えた私は「起きたくない」と駄々を捏ねている。
理由は二つある。
一つは単純に私が朝が苦手だから。
もう一つは、今日は自分の部屋で寝ているからだ。
私の部屋とご主人様の部屋は分かれている。
この少し手狭な一室は勉強机や制服が置かれた私の私室。
ご主人様の部屋には、彼が仕事をする為の机や、大きなベッドなどが置かれている。
二人が一緒に寝るのは次の日が休みである時や行為に及んだ後。
普段は、こうして別々の部屋で寝ている。
ここに住み始めることになった際、私は同じ部屋が良いと言ったのだが、スペースの関係や「女の子なんだから私室くらい必要」という彼の意見や諸々で、今のようになってしまった。
要らない気遣いなのにと当初は思っていたが、実際に住み始めてみると別の部屋で良かったかもしれないと考えることもある。
ご主人様には絶対に見せたくないような行為――例えばお化粧などをしている時には特にそう思う。
- 429 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2013/07/27(土) 21:07:04 ID:ENCj2HLk0
けど、それでも。
(# ;;-)「…………寂しい」
甘えたくなるような匂いや。
僅かに聞こえる心臓の音や。
抱かれると心地良い体温が。
感じられないということ。
あの人が近くにいないことが堪らなく、寂しい。
こうして一人で眠る度にそう思ってしまう私はきっと我が儘なのだ。
(# ;;-)「私は、我が儘なのです……」
でも。
我が儘な子だと思われても良いから。
一緒に眠りたいと、思う。
私が「今日は一緒に寝たい」と言っても、きっと勝手に布団に潜り込んでも、ご主人様は怒らない。
だけどそういう我が儘ができないのはそれ以上に嫌われたくないと思っているからだ。
- 430 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2013/07/27(土) 21:08:18 ID:ENCj2HLk0
我が儘な子だと思われても良いから、一緒に寝て、抱き締めて、愛して欲しい。
でも、それ以上に――嫌われるのは嫌だから。
だけど。
(# ;;-)「今夜は……一緒に寝たいのです……」
目覚めたばかりなのに夜が暮れてからのことを思ってしまう自分がちょっと可笑しい。
本当に私は、寝ても覚めても、考えるのはご主人様のことばかり。
あの人の方もそうだったら、嬉しい。
今日は勇気を出してお願いしてみようと考えて、笑ってしまう。
……私は馬鹿だ。
(* ;;-)「…………早く起きれば、それだけすぐにご主人様に会えるのです」
どうやら少し、寝惚けていたようだ。
- 431 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2013/07/27(土) 21:09:18 ID:ENCj2HLk0
- 【―― 2 ――】
―――午前六時二十分
私は毎朝シャワーを浴びることにしている。
目が覚めるし、何よりご主人様とは綺麗な姿で会いたいから。
……一度怠ったことがあったのだが、寝癖が付いたままになっていた。
朝食の時に非常に恥ずかしい思いをした。
同じ轍を踏むまいと、それ以降は毎朝ちゃんとお風呂へ行くことにしている。
もう今となっては日課の一つだ。
(* ;;-)「ん……」
風呂場から出て、タオルで髪の水分を拭き取る。
昔は髪が長くなかったので手入れも楽だったが今は少し大変だ。
さらさらした髪を維持するのは手間がかかる。
でも、私を抱き寄せて頭を撫でる度に「気持ち良い」や「綺麗だよ」とご主人様が褒めてくださるので、暫くは長いままにしようと思っている。
- 432 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2013/07/27(土) 21:10:20 ID:ENCj2HLk0
でも、と脱衣所の鏡の前で思案を巡らす。
折角ここまで伸びたのだから、ポニーテール以外にも何か別の髪型にしてみても良いかもしれない。
ミセリさんに訊いてみようかな。
ファッションのことにはかなり詳しいそうだから。
一方で私は流行りには疎い。
一応女子高生なのに。
それでも、毎朝毎晩自分の体重を計るくらいの女の子らしさは持っている。
(;#゚;;-゚)「……行きます」
少し前からちょっとずつ体重が増えてきているので、体重計には声に出して自分を鼓舞しないと乗れない。
身体に巻いているバスタオルを取るかどうかで悩むくらいだ。
そうして私が意を決して足を踏み出した瞬間。
(,,-Д-)「…………あ、」
(#// -/)「ひ――ゃぁぁぁあっ!!」
- 433 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2013/07/27(土) 21:11:04 ID:ENCj2HLk0
脱衣所のもう一つの扉、廊下へと通じるドアがスライドして開かれた。
入って来たのは勿論、私のご主人様だ。
あんなにも会いたかった人なのに、今ばかりは勘弁して欲しい。
幸運にもご主人様は私が何をしようとしていたかは気付かなかったらしい。
はしたない叫び声を風呂上りを見られて驚いたと解釈したようで「ごめんね、でぃちゃん」と謝ってくる。
裸なんて何度も見せているから今更なのに、こういうとぼけたところは昔と変わらない。
(;-Д-)「いきなり、ごめんね……」
(#゚;;-゚)「大丈夫です。気にしないで欲しいのです」
( * Д)「ごめん……」
と。
私の身体を隠していたタオルが落ちた。
後ろからご主人様に抱き締められたことで結び目が解けてしまったようだ。
(#// -/)「ん……。どうし、たのですか……?」
- 434 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2013/07/27(土) 21:12:03 ID:ENCj2HLk0
ああ。
駄目だ。
さっきは「裸なんて何度も見せている」と言ったけど、やっぱり……恥ずかしい。
目の前の鏡には生まれたままの姿の私と、それを後ろから抱き締めるご主人様が映っている。
こうして見ると、濡れた髪も、雫が滴る胸も、上気した頬も、何もかもがいやらしく感じてしまう。
まるで――こうされる為の下準備としてお風呂に入ったみたいだと。
(;* Д)「最近、でぃちゃんがどんどん可愛くなってて……。いや前から可愛かったんだけどさ……」
私を抱く力が少し増した。
耳元で囁かれると、それだけで気持ち良い。
(;* Д)「可愛いなって思って……。ねぇ、でぃちゃん」
(#// -/)「なんですか……?」
心臓の鼓動が、おかしくなっている。
- 435 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2013/07/27(土) 21:13:04 ID:ENCj2HLk0
壊れてしまいそうなほど早く脈動している。
好き、好き、好き。
そんな言葉を繰り返してるみたいに。
ご主人様は言う。
(;* Д)「チューしても、いい……?」
こういうところは草食系で、気を使ってばかりだ。
だから私はいつものようにこう返す。
(#// -/)「……勿論です。私は、あなた専用なのですから……」
(;* Д)「ありがとう。好きだよ」
そうして、ご主人様は私の頬に口付けた。
唇じゃないのですか?
そんな風に言い掛けていた唇をご主人様の唇が塞いだ。
- 436 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2013/07/27(土) 21:14:11 ID:ENCj2HLk0
- 【―― 3 ――】
―――午前七時
……ああいう時のご主人様の自制心は心から尊敬する。
とても男の方とは思えない。
ご主人様は優しく甘く長いキスを終えて、「朝からごめんね」と恥ずかしそうに脱衣所を出て行ってしまった。
今日は平日なので学校へ行かなければならない私を気遣ってくれたのだろう。
ありがたいけれど、衝動に任せて滅茶苦茶にして欲しかったとも思ってしまうはしたない私も心にはいて。
それよりも二人きりで、お風呂上りで、裸で……そんな状態で自制されてしまうと、女として少し自信を失ってしまう。
(#゚;;-゚)「(昔からそうなので気にしませんが。いつものことなのです)」
トーストにバターを塗りながら自分を納得させる。
色っぽい展開にはならないまま、いつも通りの朝食風景だ。
ミセリさんには以前に意外と言われたが、私達の朝は大抵パンとサラダだ。
- 437 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2013/07/27(土) 21:15:05 ID:ENCj2HLk0
私もご主人様も日本的な朝ご飯を作れるのだが、どちらも朝は苦手だ。
それにどちらもこうしてゆっくり過ごす方が好きなので比較的簡単な食事になることが多い。
学校へ持って行くお弁当は昨日の内に大体作ってある。
どちらが準備するとは特に決まっていないので早く起きた方が朝食の支度をすることになっている。
今日は、私が着替えている間にご主人様が準備してくださっていた。
そのご主人様は、今は小さく切ったトーストを口に運びながらニュースを見ている。
この人は昔からパンを千切って食べる癖があり、これはその名残りらしい。
沢山の月日が流れて、変わったことも沢山あるけれど、それでも昔と変わらない部分が残っているのは何処か微笑ましい。
(,,゚Д゚)「……ん。どうしたの、でぃちゃん」
(* ;;-)「いえ」
少し悩んで私は言った。
(* ;;-)「ご主人様も……カッコ良くなられました。そう思っただけなのです」
- 438 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2013/07/27(土) 21:16:08 ID:ENCj2HLk0
- 【―― 4 ――】
―――午前八時前後
朝の心地良い空気を楽しみつつ自転車を漕ぎ、学校に辿り着くのは毎朝大体八時前くらい。
昼間の喧騒が嘘のように静かな校内を歩いて二年文系進学科十一組の教室へと向かう。
とは言っても、昼間よりも静かなだけ。
練習を行っている部活も多いので、何処か遠く、中庭辺りからサックスの音が届いたりもする。
校内を大きく回るように走っているのはバスケットボール部だろうか。
そんなことを考えながら私達の教室がある校舎へと入り、階段へと向かう。
(#゚;;-゚)「(今日もいらっしゃるのです)」
そこで、いつものように階段を上り降りする人影を見つけた。
最初は驚いたが、毎朝のことなのでもう慣れっこだ。
その二人は階段を走ったり、一段ずつ飛ばして上ったり、一歩一歩確かめるように下りたりしている。
- 439 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2013/07/27(土) 21:17:02 ID:ENCj2HLk0
何か部活の練習かと思っていたが、そうではないと最近分かった。
一人は学校していのジャージにシャツ姿で、もう一人は普通の制服だからだ。
服装に統一感もなく、号令に合わせて行っているわけでもなさそうなので個人的な訓練なのだろう。
制服姿の一年生が長袖を腕捲りして階段を軽快に上って行く。
その場に残ったラフな格好の一年生に私は挨拶をする。
(#゚;;-゚)「おはようございます」
( ・ω・)「おはようございます。いつも邪魔して申し訳ないです」
(#゚;;-゚)「いえ、邪魔になってなどいません。そんなことはないのです。ところでいつも何をなされているのですか?」
なんとなく、訊ねてみる。
つぶらな瞳をした濃い焦げ茶色の髪の少年は答える。
( ・ω・)「インターバルトレーニングです。足腰……特に爪先を鍛える為に。本当は砂浜や山地が良いんですけど」
(#゚;;-゚)「そうですか。通りで……」
- 440 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2013/07/27(土) 21:18:03 ID:ENCj2HLk0
パッと見ではただ育ちの良さそうなだけに見えるが、よく観察すると相当に鍛錬していることが分かる。
ただ筋力がある、脚が速いというのではなく、何か一つの為に練り上げられた強さ。
とても静かで大人しいが――その下には鋭い剣気が伺える。
多分、この人は私と同じ。
刀を使う人間だ。
( ・ω・)「……良かったら、朝比奈先輩もご一緒にどうですか?」
(#゚;;-゚)「いえ。申し出は嬉しいですが、遠慮させて頂くのです」
これでも飛んだり跳ねたりは得意なのです。
半分は猫ですから。
そう返そうかと考えて、やめておく。
ただの冗談。
ごく普通に別れを告げて階段を普通に上り始めた。
それにしても、この学校には才能や能力を持った人間が多い。
私も一度、剣道部の方々に稽古を付けてもらうと勉強になるかもしれないと思った。
- 441 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2013/07/27(土) 21:19:02 ID:ENCj2HLk0
- 【―― 5 ――】
―――午前中
早めに教室に入り自主勉強を行ったり手記を付けてたりしていると、やがて皆さんが登校し始めてくる。
二年十一組の皆さんは、表面上は仲良しだが、明確な『自分』を持っている人が多いような印象をいつも受ける。
連帯感はあるが、同じではない感じ。
私のような客観的に見て「変わった子」も馴染めているのはそういう理由が大きい。
他の学級には強いカリスマやリーダーシップを持つ中心人物が存在することもあるようだが、このクラスに中心はない。
そういうところが私は気に入っていた。
だから授業開始前の一時を取ってもそれぞれだ。
私と同じくらい早く登校して勉学に励んでいる方もいれば、鞄だけが置かれたままになっており始業の寸前にやっと戻ってくる方もいる。
中にはミセリさんのように気紛れに遅刻したり早退したりする方もいる。
(#゚;;-゚)「(それでもミセリさんの成績は、私よりもずっと良い)」
総合では私の方が少し上だろうが、文系科目では全く敵わない。
特に現代文や古文漢文は全校単位で見ても上位に食い込む。
- 442 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2013/07/27(土) 21:20:03 ID:ENCj2HLk0
受験の心配をしていらっしゃるようだが今の調子ならば英国社の三教科受験でなら大抵の大学に合格できるだろう。
何処か行きたい学校があるのだろうか。
あるいは、特定の誰かと一緒に行きたいのかもしれない。
そんなことを考えてながら、朝の挨拶をクラスメイトの皆さんと交わし合っている内に始業の時間となる。
今日はミセリさんも遅刻をすることなく私の隣の席に座っている。
ミセ*-3-)リ「朝から現国だからねぇ」
他のクラスメイトから「今日は早いね」と声を掛けられて、ミセリさんはそう答えた。
ミセ*^ー^)リ「私はこの授業中に、教科書に載ってるお話を読むのが好きなんだー」
どうやら。
出席している際もあまり真面目には授業を受けていらっしゃらないようだった。
ノートは取っているが話は聞いていないらしい。
この人は本当に凄い。
何度目か分からないけれど私はそう思った。
- 443 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2013/07/27(土) 21:21:14 ID:ENCj2HLk0
- 【―― 6 ――】
―――午後
昼食後の授業は、私は少し、眠くなってしまう。
それは皆さんも同じようで午後は全体的に元気がない。
これが体育があった日などだと半数が夢現だ。
体育と言えば、そろそろ水泳の授業が始まる季節だ。
以前家で着た際には少しサイズが合わなくなっているように感じたので新しいものを買いに行かなければならない。
ミセ*-ー-)リ「…………ん」
教科書を読んでいるフリをしながらお昼寝を取っていたミセリさんが、目を覚ます。
黒板の上に設置された時計を見て、あと数分で授業が終わることに満足気だ。
狙って起きたのだとすれば、つくづく凄いと感じてしまう。
何かと器用な方だ。
数学の時間に寝ているから余計に苦手になってしまうのだと思うが、でも少しだけ尊敬してしまう。
- 444 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2013/07/27(土) 21:22:59 ID:ENCj2HLk0
思えば、ミセリさんは週何回かスポーツクラブに通って泳いでいると聞いている。
私は水泳が苦手なので教えて頂けるよう頼んでみようか。
少し体重が増えてきて、このままではご主人様に持ち上げてもらえなくなるので身体を絞る目的も兼ねて。
そうして恙なく授業が終わり、クラスメイトの皆さんは帰り支度を始める。
部活の為に教室を飛び出していく方、遊びに行く為にさっさと教室を後にする方、また仲良しな友人と談笑を始める方、様々だ。
ミセ*^ー^)リ「じゃ、またねー!」
ミセリさんは今日はこれからデートらしく、簡単に挨拶をすると些か上機嫌に教室を出て行ってしまう。
先ほどまで睡眠を取っていたのは遊ぶ為の元気を貯めていたのかもしれない。
余談ではあるが、ミセリさんは「またね」とは言うものの「また明日」とは滅多に口にしない。
明日は学校に来ないかもしれないからだろう。
彼女も彼女で、まるで猫のように気紛れな方だった。
(#゚;;-゚)「……私も帰ります。さよならなのです」
さて。
残っていた方々に別れを告げて、そろそろ私も帰路に着くことにしよう。
- 445 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2013/07/27(土) 21:24:07 ID:ENCj2HLk0
- 【―― 7 ――】
―――午後六時
私達の家の夕食は日にもよるが、六時過ぎだ。
職業柄、夜は忙しくなることが多いので早めにご飯を食べておいた方が都合が良い。
夕食の準備も、特に決まっていない。
なので少し帰るのが遅くなるとご主人様が下準備を終えていたりする。
今日は真っ直ぐ帰宅したので時間のある私が作っていた。
こういう日はご主人様は代わりに浴槽を掃除してお風呂を準備してくださる。
あの人は大学生だが、あまり大学に行くことはない。
最近では登校せずとも単位を修得できる制度があるそうで毎日行く必要がないらしい。
でも。
(#゚;;-゚)「(折角学生になられたので、もっと遊んだりして欲しいのです……)」
そんな大学生活は、楽しいのだろうか。
折に触れてふと思ってしまう。
- 446 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2013/07/27(土) 21:25:13 ID:ENCj2HLk0
普通に大学に行けばお友達も沢山できただろうし、楽しいことも沢山あっただろう。
昔は学校でのご友人は少なかったが、今はもう少し大人になったから、上手くやって行けると思う。
通うのは大変だとは思うけれど通うだけの価値はあるはずで。
食卓を囲み。
夕食の席で私がそう問い掛けると、ご主人様はテレビのバラエティを見ながら答える。
(,,^Д^)「なんて言うか、さ。学校もきっと楽しいだろうと思うよ」
でもさ、と続けた。
好物の甘めの玉子焼きを口に運んで、咀嚼して。
目を閉じて、味わって。
(,,-Д-)「こんなに可愛い人が家にいて、こんな美味しい料理があって……。この家にいる方がもっと楽しいんだよね」
(#// -/)「そう、ですか……分かったのです……」
思わず私は赤面してしまって、ご主人様の顔を見れなかった。
彼がこちらを向いていなくて良かったと思う。
- 447 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2013/07/27(土) 21:26:10 ID:ENCj2HLk0
テレビをずっと注視しているのは彼も恥ずかしいから。
頬が少し、紅くなっている。
照れているのだ。
それを誤魔化すようにご主人様は言った。
(,,^Д^)「そう言えばさ、今日手紙が届いたんだよ。高校時代に部活が一緒だった……って、覚えてるよね」
(*゚;;-゚)「そうなのですか。嬉しそうです」
( *-Д-)「うん、凄く嬉しい。でぃちゃんも知らない仲じゃないから嬉しいでしょ?」
冷静に考えれば向こうもパソコンくらいは持っていると思うので、連絡を取りたければいつでも取れる。
この現代で手紙なんて。
だけどそういうことではないのだろう。
何より、ご主人様が嬉しそうだ。
それだけで私は良い。
そんな笑顔を見れるだけで生きている価値があったと――そう思えるのだから。
- 448 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2013/07/27(土) 21:27:12 ID:ENCj2HLk0
- 【―― 8 ――】
―――午後九時
夕食が早いため、お風呂の時間も早めだ。
九時には二人共終わっている。
見たいドラマがあったので、髪を乾かし終えてリビングへと向かう。
二人掛けのソファーではご主人様が本を読んでいた。
昔は本なんてほとんど読まなかったのに変われば変わるものだ。
私も、ご主人様の隣に腰掛ける。
(*゚;;-゚)「あ……」
その瞬間、抱き寄せられた。
そのまま膝枕をするような体勢に移行させられてしまう。
私はされるがまま。
- 449 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2013/07/27(土) 21:28:03 ID:ENCj2HLk0
そうしてご主人様は私の頭や身体をゆっくりと撫で始める。
猫だから。
猫を愛でるように。
( *-Д-)「いい匂い……」
(#// -/)「んっ……ぁ……っ」
髪の感触を楽しむように優しく撫で。
顎から頬を指でつつ、となぞって。
肩や腰にそっと触れて。
猫ならば肉球があるべき手の平を軽く揉んで。
指を絡ませ合って。
その一つ一つで、じんわりと身体が熱を帯びていく。
もどかしくて、心地良くて。
ご主人様は猫に触れているつもりなのかもしれないけれど、私は女として感じてしまっている。
微かに漏れる吐息を隠しつつ私は思った。
これじゃあトリックどころか犯人が誰かさえ頭に入って来ないかもしれない、なんて。
- 450 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2013/07/27(土) 21:29:12 ID:ENCj2HLk0
- 【―― 9 ――】
―――深夜
身体全体を揺らす振動に目が覚める。
ドラマの終わりは覚えているので十時までは起きていたはずだが、いつの間にか寝てしまっていたらしい。
振動の理由はすぐに分かった。
ご主人様が私を抱いて、階段を上っていた。
お姫様抱っこ。
あんなに頼りなかった彼も今ではもう、私を持ち上げるくらいは容易くできる。
(* ;;-)「(もう少しなら太っても……大丈夫かな)」
今日は増えていなかったが、減ってもいなかった。
けれど、この分だとそこまで気にする必要はないのかもしれない。
少なくともこうして抱かれている内は。
- 451 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2013/07/27(土) 21:30:03 ID:ENCj2HLk0
階段を上り終えたご主人様は私が目を覚ましたことに気付いたらしい。
(,,-Д-)「ごめんね、起こしちゃったね」
(* ;;-)「いえ……。嬉しいです、感謝したいのです」
ああ。
駄目だ。
甘えてしまう。
こんな風に優しくされてしまうと。
もう――我慢なんて、できない。
(* ;;-)「ご主人様……」
(,,-Д-)「何?」
(* ;;-)「今日は一緒に寝たい、です……」
遂に、言ってしまった。
- 452 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2013/07/27(土) 21:31:00 ID:ENCj2HLk0
私は駄目な子だ。
我が儘ばかり。
自分勝手でご主人様がいつも私を見ていないと気が済まない。
好き―――。
もう自分ではどうしようもないくらいに。
( * Д)「うん……」
ご主人様は言う。
( *-Д-)「俺も一緒、だよ。一緒に寝たい……」
(* ;;-)「なら……!」
(;*-Д-)「でもでぃちゃんが同じ布団にいると、我慢できなくなっちゃうんだよね……色々と」
そう。
それもそうだ。
- 453 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2013/07/27(土) 21:32:04 ID:ENCj2HLk0
確かに私達は一度始めてしまうと、お互いにヘトヘトになるまで続けてしまう。
特に私の方は意識が飛んで終わりということがほとんどで次の日も気持ち良くなり過ぎた名残りでふらついている。
平日でそんな風では困る。
分かっている。
けれど。
また私が我が儘を口にする前に、ご主人様が続けた。
( *-Д-)「でも俺も我慢するから――今日は、一緒に寝よう」
(* ;;-)「はい……」
そして私達は唇を合わせた。
最初は啄むように、次は舌を伸ばして絡ませ合い、唾液と体温を交換して。
今日はこれでおあずけだから、いつも以上に。
私は、幸せ。
好きな人からこんな風に愛される日々が続くことが堪らなく幸せ。
そうして私は早く週末にならないかなと思いつつ――彼に全てを委ねて、目を閉じる。
- 454 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2013/07/27(土) 21:33:12 ID:ENCj2HLk0
- 【―― 0 ――】
「―――新婚生活が終わるのは、その『非日常』が『日常』になった時なんだよ。付き合っている時も同じ」
楽しくて楽しくて仕方がないのは始めの数ヶ月だけ。
その続きは、ただの『日常』なんだ。
また知った風に会長は語る。
天使のように蠱惑的なのに色恋沙汰には――いや、天使だからこそ色恋沙汰には縁のなさそうな彼女はそう言った。
私もそれはそうだと思う。
だけど。
ミセ*^ー^)リ「でも、幸せな日々がそのまま『日常』になれば……それが一番ですよね?」
そう。
辛くて苦しい日々が『日常』である人達がいるのだから。
楽しくて仕方ない毎日を『日常』にすることだってできるはず。
付き合い始めてからの特有のドキドキ感がなくなった後でも一緒にいて楽しいかどうか。
良いカップルかどうかはそこで分かれると思う。
- 455 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2013/07/27(土) 21:34:22 ID:ENCj2HLk0
「ミセリちゃんは、この『日常』が好き?」
ミセ*^ー^)リ「はい」
「ならこの『日常』を続けていく為に頑張らないといけないね。その先にある自分の為にも」
ミセ*-ー-)リ「そうですね……」
でも。
私はただ続けるだけじゃなくて、少しずつで良いからもっと楽しい『非日常』を見つけて、それを『日常』に変えていきたい。
そして。
『非日常』も、続いていけばいつかは『日常』になる。
だから、できることならば――非日常に在る恋を日常に在る愛に変えていきたいなと私は思った。
彼女達がそうであれば良いと、私は願った。
【――――落書き、終わり】
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