- 20 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/02/20(日) 20:36:51 ID:xjlGxIHwO
- ***
第二話 「二子厨の庄と銭」
***
またも取り乱し始めたブーンを、渚本介が落ち着かせた。
とりあえずは宿だ、宿を探して話を整理しよう。ということで、二人は城下町に降りた。
渚本介の話によると、この町は二子厨の庄と呼ばれており、二子堂城にはその二子厨一族の頭(かしら)が住んでいるらしい。
小さな庄で人は少ないが、景気のいい町としてこの近辺では有名な土地らしい。
(;^ω^)「……」
<南蛮人かしら… ヒソヒソ
<きっとそうよ…あんな妙な衣は見たことないわ… ヒソヒソ
(;^ω^)「……」
<なんだぁ?あいつが持ってるあの道具は
<シッ!声がでけぇよ!ありゃ南蛮の農具だろうよ… ヒソヒソ
- 21 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/02/20(日) 20:37:43 ID:xjlGxIHwO
-
ずんずんと進んでいく渚本介と、その後ろをコソコソ歩くブーン。
しかし、町の人間は皆ブーンという奇妙な人間に注目していた。
それが恥ずかしいやら腹立たしいやらで、ブーンは顔を下に向けながら歩き続けた。
(;^ω^)(ギターを農具だと…包茎共め)
(´・ω・`)「どうした?」
(;^ω^)「い、いえ何も」
(´・ω・`)「ふむ、着いたぞ。ここが宿場だな」
( ^ω^)「お?」
渚本介が向いている先を見上げると、そこには周りに比べて少し大きな、二階建ての家があった。
入り口には三十路に達したばかりのような、若い男が座っている。
- 22 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/02/20(日) 20:39:10 ID:xjlGxIHwO
-
(´・ω・`)「ご主人、一部屋貸してくれんかね」
( ゚∀゚)「あいよ。そっちの南蛮人は…まいいや、一部屋五百文で」
(´・ω・`)「おいおい、高すぎやしないか」
( ゚∀゚)「わりぃが旦那、ここは宿場町ではないんでね。実のところこれでもウチは危ねぇんだ」
まいったな、と渚本介が呟き、懐から小銭入れを取り出す。
すると、何かに気付くように顔を上げ、突然ブーンの方を向いた。
(´・ω・`)「そういえばブーン、お前は銭を持ってるのか」
(;^ω^)「え?ああはい…」
間違いなくブーンのいた時代とは違うお金が流通している。しかしブーンは反射的にジーンズから財布を取り出した。
財布の中身を確かめるブーンを、渚本介と宿屋の主人が不思議そうに見つめる。
(;^ω^)(マジかよ…469円て……)
(;^ω^)(…あ、そうだ)
(;^ω^)「ご主人、五百文は無いけど、変わりにいいものがあるお」
( ゚∀゚)「あん?」
- 23 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/02/20(日) 20:40:21 ID:xjlGxIHwO
-
(;^ω^)「これだお」
ブーンは財布の中から五円玉を1枚取り出し、主人に渡した。
(;^ω^)「これは金を細かく加工したものだお」
(;゚∀゚)「き、金!?」
(;´・ω・`)「なんと…」
(;^ω^)「こいつ一枚で二貫文の価値があるお。どうかこれで泊めてほしいお」
高校のときの日本史の授業で、お金に関する勉強を少しだけやった覚えがあった。
確か、一貫文が1000文で、一両は四貫文だったか。
つまり、ブーンは五円玉で四部屋分の価値があることにしようとしているのだ。
心臓が激しく動くブーンの目の前で、主人が目を輝かせて五円玉を見つめている。
- 24 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/02/20(日) 20:41:26 ID:xjlGxIHwO
-
もともと嘘をつくのが大の苦手だったブーン。
上手くいってくれ、と心の中で手を合わせる。
(;゚∀゚)「………おい…」
(;^ω^)「はい…」
(;゚∀゚)「おい、おま、これ」
(;^ω^)「……はい…」
(*゚∀゚)「ほ、本当に貰っていいのか!?」
(;^ω^)「!」
( ^ω^)「もちろんですお!」
(*゚∀゚)「いやっほぅ!!好きな部屋に泊まってくれ!酒もつけてやる!!」
( ^ω^)「ありがとうございますお!」
(;´・ω・`)「ブーン…お前は何者なんだ……」
(*゚∀゚)「ささ、部屋は二階だ!上がってくれ!」
──
- 25 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/02/20(日) 20:44:14 ID:xjlGxIHwO
- ──
上手くいくもんだな、という感想と、主人への罪悪感とで、ブーンは複雑な表情を浮かべていた。
部屋を選び、ようやく腰を下ろしたというところで、まずは渚本介が口を開いた。
(´・ω・`)「ブーン、改めて聞きたいんだが」
( ^ω^)「なんですかお?」
(´・ω・`)「お前は一体、何者なんだ?どこから来た?」
真っ直ぐにブーンの目を見つめる渚本介。
先程よりは随分と落ち着いたブーンが、それに答えた。
( ^ω^)「とりあえず僕が今わかってることをお話しますお…信じてくれますかお?」
(´・ω・`)「ああ、言ってくれ」
空気が張り詰めていく。
渚本介が唾を飲み込み、ブーンが話し始めた。
( ^ω^)「僕は…未来の日本から来たんですお」
(´・ω・`)「………」
(;´・ω・`)「…えっ」
( ^ω^)「たぶん、四百年か五百年くらい先の日本からですお」
- 26 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/02/20(日) 20:45:43 ID:xjlGxIHwO
-
(;´・ω・`)「…本当か?」
( ^ω^)「僕も未だに信じられませんお…でも確かなんですお」
(;´・ω・`)「ううむ…」
事実を知って、今度は渚本介の方が狼狽する番だった。
渚本介は暫く考えるように黙りこむと、ブーンの格好や持ち物をまじまじと見始めた。
(;´・ω・`)「…お前は、何か目的があってこの時代に来たのか?」
(;^ω^)「い、いや何もないですお。ギター弾いてたら突然、こんなところに飛ばされたんですお」
(´・ω・`)「………」
(´・ω・`)「…わかった、信じよう」
( ^ω^)「!」
- 27 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/02/20(日) 20:46:15 ID:xjlGxIHwO
-
( ^ω^)「本当ですかお!?」
(´・ω・`)「ああ、お前の目を見ればわかる。さっきみたいに嘘をつく時の目じゃない」
(;^ω^)「あ…バレてたんですかお」
(´・ω・`)「当たり前だ。お前は嘘をつくのが苦手なようだな。思わず驚いたフリをしてしまった」
( ^ω^)「へへ、ありがとうございますお」
(´・ω・`)「ははは、もう少し嘘をつくのを上手にしろよ」
( ^ω^)「ごもっともですお」
二人が出会って数時間。
ようやく、心から打ち解けて、笑い合えた。
ブーンにとっては、これ以上ないくらい幸せな出来事だった。
- 28 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/02/20(日) 20:48:10 ID:xjlGxIHwO
-
(´・ω・`)「ところでブーン」
( ^ω^)「なんですかお?」
(´・ω・`)「ぎたーに挟んでるそれ…一体なんだ?」
渚本介が指したのは、この時代に飛ばされる前に自室で拾った変な物体だった。
( ^ω^)「ああこれ……」
( ゚ω゚)「ああああ!!」
(;´・ω・`)「うわっ、今度はなんだ」
なんということだ、すっかり忘れていた。
何も焦ることはないじゃないか。どうして、今まで考えつかなかったのだろう。
( ^ω^)「思い出しましたお!!僕はこれでギターを鳴らしたら、この時代に飛ばされたんですお!」
(´・ω・`)「おお、ということは」
( ^ω^)「もっかい鳴らせば、元の時代に帰れるかも!」
- 29 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/02/20(日) 20:50:10 ID:xjlGxIHwO
-
そう、ブーンがタイムスリップした原因は、紛れもなくこの物体のせいだ。
これでギターを鳴らした途端、ブーンはこの時代に飛ばされたのだ。
ブーンは急いでギターを手に取り、膝の上に構えた。
( ^ω^)「それでは渚本介さん、短い間だったけど楽しかったですお。ありがとうございました」
(´・ω・`)「ああ、達者でな…」
( ^ω^)「ていっ!」
ブーンは渚本介に挨拶を済ませ、躊躇いなくギターを鳴らした。
( ^ω^)「……」
(´・ω・`)「……」
不細工な音が、部屋の中に鳴り響いた。
(;´・ω・`)「……達者に生きような」
(;^ω^)「…そうですね……ハハ…」
( ;ω;)「僕はどうすりゃいいんだおおおおお!!!」
(;´・ω・`)「な、泣くな!必ず何か方法はあるはずだ!」
- 30 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/02/20(日) 20:51:33 ID:xjlGxIHwO
-
( ゚∀゚)「旦那方、夕飯でっせ!酒も…」
(;゚∀゚)「…ってどうしたんだ」
(;´・ω・`)「あ、いや気にするな…飯はそこに置いてくれ」
( ;ω;)「おーんおーん」
(;゚∀゚)「ああ、まあ酒飲んで元気になってくれよな」
主人は部屋の入り口に膳と酒を置くと、そそくさと帰っていった。
ブーンが号泣する理由に首を突っ込まないでいてくれたのはありがたいが、これはしばらく収まりそうにない。
(;´・ω・`)「まいったな…とりあえず飯を食おう。腹が空いてるから涙も出るもんだ」
( ;ω;)「わ、わかったお…いただきますお…」
主人が用意してくれた夕飯に、ブーンが手をつけ始めた。
しかし、渚本介は箸を取って膳を見つめたまま動かない。
- 31 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/02/20(日) 20:53:03 ID:xjlGxIHwO
-
まるで、何か深いところにあるものを探すような。
重く澄んだ目で夕飯を見つめる。
( ;ω;)「渚本介さん…?」
(´・ω・`)「…ん?」
ハッと我に帰る。
目の前には、涙と鼻水を流しながら夕飯を頬張るブーンが、不思議そうにこっちを見ていた。
(´・ω・`)「…ああ、じゃあ俺も頂こうかな」
( ;ω;)「お、美味しいですおこれうふぐうっ」
(;´・ω・`)「無理に喋らなくていいぞ」
──
- 32 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/02/20(日) 20:54:21 ID:xjlGxIHwO
- ──
夜。
酒も飲み干し、主人が膳を片付けたところで、渚本介はブーンに話しかけた。
(´・ω・`)「なあ、さっきお前がぎたーを鳴らしたあの物体、もう一度見せてはくれないか」
(*^ω^)「うーい…はいですお〜」
顔を赤くしてニヤニヤしているブーンは、その物体を渚本介に手渡した。
(´・ω・`)「これは…琴爪か?」
(*^ω^)「なんですかお〜?」
(´・ω・`)「ブーン、これは琴爪だ。琴を弾く際に指に付けるものだ」
(*^ω^)「え〜?僕は琴を弾いたことないのに、なんで部屋にあったんですかお〜」
(´・ω・`)「随分と酒が弱いんだな…ん?」
- 33 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/02/20(日) 20:55:35 ID:xjlGxIHwO
-
よく見ると、琴爪には小さく文字が刻まれていた。
目を細めながら、渚本介がそれを読み上げる。
(´・ω・`)「ええと…"尾付家出麗琴爪"…」
(;´・ω・`)「な…じゃああの琴の名手、尾付の出麗のものなのか?」
(;´・ω・`)「おいブーン、大変なことに…」
(*ーωー)スピー
(´・ω・`)「……まあいいか」
渚本介はギターに琴爪を挟むと、今度は自らの刀を手にした。
静かな夜の町、物音一つしないこの宿屋。
寝息を立てるブーンを見下ろし、刀の柄に触れた。
(´・ω・`)「…そろそろだな」
──
- 34 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/02/20(日) 20:57:13 ID:xjlGxIHwO
- ──
月が上ってどれだけの時間が経っただろうか。
今は、この町にいる人間は全て眠りについている頃だろう。
ただ一人、この男を除いて。
( ゚∀゚)「……」
一切の物音も立てず、一切の気配も見せず、宿屋の主人は階段を上っていく。
目指すは、ブーンと渚本介の寝ている部屋。
静かに、ゆっくりと襖を開ける。
部屋の中に入ると、そこは予想通りの光景だった。二人の客人が、酒の臭いを散らしながら寝ている姿がある。
- 35 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/02/20(日) 20:58:22 ID:xjlGxIHwO
-
主人はブーンのもとへ忍び寄ると、懐から包丁を取り出した。
( ゚∀゚)「……わりぃね旦那…死んでもらうぜ」
(´・ω・`)「そうはいかん」
(;゚∀゚)「──!?」
(´・ω・`)「ふんっ!!」
突如、主人は寝ていたはずの渚本介に脇腹を蹴られた。
壁まで吹っ飛ばされ、鈍い音が辺りに響く。
(;゚∀゚)「かはっ…」
( ^ωー)「うーんあと5分…」
(;^ω^)「ってあれ?何!?なんだお!?」
(´・ω・`)「ブーン、下がってろ」
刀を構え、落ち着いた目で主人を見つめる渚本介。
わけのわからないまま、ブーンは這うように渚本介の後ろへ隠れた。
- 36 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/02/20(日) 20:59:48 ID:xjlGxIHwO
-
渚本介の目線の先で、主人がよろけながら立ち上がった。
(;゚∀゚)「き、貴様…何故……」
(´・ω・`)「最初からわかってた。お前がブーンの銭を偽物だと判断していたのもな」
(;^ω^)「!!」
(;゚∀゚)「……」
(´・ω・`)「お前はあれが偽物だと判断した上で、騙された振りをしていた。何故ならブーンを殺し、珍しい持ち物を全て奪い取る為だ」
(´・ω・`)「だからわざわざ酒も付けたのだろう?俺達を深く眠りにつかせておく為に」
(;^ω^)「ま、マジかお…」
信じられなかった。
人の良いこの主人が、まさか自分を殺そうとしていたのか。
冗談であってほしい。しかし、主人は二人から目を逸らしたまま、冷や汗をかいている。
- 37 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/02/20(日) 21:01:10 ID:xjlGxIHwO
-
(;゚∀゚)「う、うるせェ!!銭が欲しくて何がわりぃんだ!」
(;^ω^)「……」
(´・ω・`)「一体何のわけがあって、お前はこんなことをしようと思ったんだ」
刀を向けながらも、優しい声で尋ねる渚本介。
その口調に流されたのか。主人は、無気力な口で語り始めた。
(;゚∀゚)「…俺、小っせえ頃におっ母が死んじまって、ずっとおっ父とこの宿屋で食っていたんだ」
(; ∀ )「でも…そのうちおっ父が病気で倒れちまって…」
( ∀ )「貧乏だったからさ…薬師に見せるどころか、薬を買う銭すら無くて……そのまま…」
(´・ω・`)「……」
( ^ω^)「……」
- 38 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/02/20(日) 21:02:26 ID:xjlGxIHwO
-
( ∀ )「…後になって向かいの婆さんから聞いたんだ。おっ母が死んだ時も、おっ父が少ない銭持ってそこら中の薬師の家を回って、バカみたいに頭下げて…でも、やっぱり薬すら買えなくて…」
( ;∀;)「…俺、気付いたんだ。世の中銭だ。相当の銭さえ持ってりゃ何でも買えるし、何も無くさねぇで済む」
( ;∀;)「だから…だから……」
ぼろぼろと涙を流し、崩れる主人。
二人は口を開かないまま、泣き崩れる目の前の男を見ていた。
しかし、それは思いのほか長くは続かなかった。
渚本介が、刀を向けたまま主人へと歩き出したのだ。
- 39 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/02/20(日) 21:05:15 ID:xjlGxIHwO
-
ブーンが慌てて渚本介の前に割って入る。
(;^ω^)「ちょ、ちょっと待ってくださいお渚本介さん!何する気ですかお!!」
(´・ω・`)「こいつは人に刃を向けた、立派な罪人だ。同情してはいけない」
( ∀ )「……」
(;^ω^)「だ、だからって殺すことないですお!結局この人は何もしてないんだから!」
(´・ω・`)「何言ってるんだ。お前は自分を殺しかけた男に何も感じないのか」
(;^ω^)「そりゃ感じますお!でも…」
目を合わせて固まる、ブーンと渚本介。
渚本介はため息を一つつくと、観念したように刀を鞘に戻した。
(;^ω^)「良かった……ありがとうございますお」
(´・ω・`)「まあいいだろう。しかしブーン、頼みがあるんだ」
( ^ω^)「なんですかお?」
主人とは少し離れた位置に座り、ブーンを見据える渚本介。
渚本介の意思が、何となくブーンに伝わった。
(´・ω・`)「ぎたーを弾いてくれ。曲は任せる」
- 40 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/02/20(日) 21:06:46 ID:xjlGxIHwO
-
( ^ω^)「わかりましたお」
( ∀ )「……?」
ギターを取り、二人の前に座り込むブーン。
何が始まるんだ、という顔を向ける主人の方を向き、ブーンはギターを構えた。
( ^ω^)「では行きますお」
ピックを持たず、指を弦に置く。
そのままゆっくりと演奏が始まった。
曲はアンドレ・ギャニオンの「愛につつまれて」をギターアレンジしたもの。
優しく、しかし気高い曲調が、部屋の中を流れる。
(´・ω・`)「……」
( ;∀;)「あ…あぁ……」
静かな夜の町に、ギターの音色と主人の嗚咽が、小さく響いた。
──
- 41 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/02/20(日) 21:08:21 ID:xjlGxIHwO
- ──
明くる朝。
主人が二人の部屋のもとに、朝食を持って上がってきた。
(;゚∀゚)「旦那方、朝食でございやす……それと、昨晩はたいへん申し訳ございませんでした」
来て早々、深く土下座をする主人。
そんな主人に、ブーンは笑いかけた。
( ^ω^)「おっお、顔を上げてくれお。もう気にしてないお。ねえ渚本介さん」
(´・ω・`)「ああ。昨日のことは忘れよう」
(;゚∀゚)「本当に申し訳ない…失礼いたしやす」
主人はまた深々と頭を下げると、小さく階段を下りていった。
随分と気持ちのいい朝だ。
既に町は賑わいを見せている。
- 42 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/02/20(日) 21:09:49 ID:xjlGxIHwO
-
(´・ω・`)「さ、飯を食おう。準備が出来たら行くぞ」
( ^ω^)「え?どこにですかお?」
(´・ω・`)「二子堂城さ。俺はそこに用がある。お前もここに止まるだけじゃ、元の時代に帰る手掛かりは見つからないと思うぞ」
確かに、ここにとどまっていても何も進歩はない。
ブーンは少し考えると、渚本介の方に顔を向け、笑顔を見せた。
( ^ω^)「お供しますお。渚本介さん」
(´・ω・`)「はは、よろしくな」
渚本介と旅をしながら、元の時代に戻る方法を探す。
悪くないな、と心の中で呟いた。
窓から見える空は、昨日よりも青く澄んでいた。
──
- 43 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/02/20(日) 21:10:58 ID:xjlGxIHwO
-
──
( ゚∀゚)「お代のほうは入りません。どうも、ありがとうございました」
宿屋の入り口で、深く頭を下げる主人。
道行く人々がブーンと主人を怪訝な顔で見ているが、もう気にならなかった。
( ^ω^)「あ、そうだご主人。これをあげるお」
( ゚∀゚)「?」
ブーンはジーンズのポケットを漁ると、ボールペンを取り出した。
困惑する主人に、それを手渡す。
(;゚∀゚)「旦那様、これは…?」
( ^ω^)「これはペンといって、南蛮の筆みたいなもんだお」
( ^ω^)「売りに出したら高くつくはずだお。だから…」
- 44 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/02/20(日) 21:12:23 ID:xjlGxIHwO
-
ブーンの後ろで、渚本介が小さく笑った。
( ^ω^)「…だから、誰か大切な人を助けたいとき、これを売るといいお。もう後悔なんてしないでくれお」
(;゚∀゚)「そ、そんな!こんな大事なもの…」
( ^ω^)「いいんだお、受け取ってくれお。じゃあご主人、お元気で」
(;゚∀゚)「あ…」
返す間もなく、渚本介と去っていくブーン。
ぎこちなくボールペンを握りしめ、主人はその後ろ姿にもう一度頭を下げた。
( ∀ )「ありがとうございます……ありがとうございます…」
( ∀ )「………」
二人の姿が見えなくなると、主人はようやく顔をあげ、入り口へと戻った。
いくら袖で拭いても、頬を流れる涙は、一向に止まろうとしなかった。
第二話 終
戻る 次へ