( ^ω^)戦国を歩くギタリストのようです

141 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/02(水) 11:59:53 ID:Vx0gVzAYO
***
第五話 「愛と幸福は大きく違う」

***
 

(;´∀`)「…こ、ここまで来れば大丈夫だモナ」

(゚、゚;トソン「本当ですか?」

(;´∀`)「とにかく中に入るモナ」
 
 
 白昼にも関わらず、森の中は異様に薄暗かった。
 森には古い廃寺があり、薄暗い森の陰気な空気を更に助長している。

 その廃寺に、武士の格好をした男と、遊女のような格好をした女が駆け込んできた。
 

(;´∀`)「追っ手は…見当たらないモナ」

(゚、゚;トソン「良かった…」

142 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/02(水) 12:00:44 ID:Vx0gVzAYO
 
 武士の格好をした男、模那(もな)が本堂の扉を閉めた。

( ´∀`)「これで暫くは安心できるモナ」

(゚、゚トソン「……」
 

 笑顔をこぼす模那に対し、遊女の格好をした女──十遜(とそん)は、暗い顔を下に向けたままだ。

 どうした?と聞くまでも無かった。
 十遜が心配していることなど、模那はとっくにわかっているからだ。
 
 
( ´∀`)「…拙者は、何も後悔しておらんモナ」

(゚、゚トソン「私もです」

( ´∀`)「なれば顔を上げるモナ。他に何の心配があるんだモナ」

(゚、゚トソン「……怖いのです」

143 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/02(水) 12:01:35 ID:Vx0gVzAYO
 
 顔を下に向けたまま、十遜がぽつぽつと呟いた。
 

(゚、゚トソン「これからの生活が、果たしてまともにいくのか…貴方様が無事に生きていけるか」

(゚、゚トソン「そう考えると、怖くなってしまうのです」

( ´∀`)「……」
 

 なんて優しい、なんて人思いな女なんだ。
 そうとわかっているのに、何も答えられない。口が開かない。

 模那は十遜のもとに歩み寄り、そっと抱き締めた。
 

(゚、゚トソン「……」

( ´∀`)「お前が心配することなんて何もないモナ。拙者の傍らで、今を生きていてほしいモナ」

(゚、゚*トソン「…はい」

 
 甘い空気が二人を包む。
 このまま時間が止まればいい。甘美な時を二人だけで味わえていれば、それでいい。
 そう感じていた矢先、本堂の外から何か音が聞こえた。

144 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/02(水) 12:02:38 ID:Vx0gVzAYO
 
( ´∀`)(゚、゚トソン「!」
 

 一気に体を離し、刀に手をかける模那。
 その後ろで、怯えた目を音の方に向ける十遜。

 音の正体は、人間の話し声であることがわかった。
 男の声だ。恐らく二人の男が此方に向かってきている。
 

(;´∀`)「……」

(゚、゚;トソン「……」
 
 
 刀を握る手に力が入る。
 模那の真剣な眼差しの先で、本堂の扉が勢いよく開いた。
 
 
( ^ω^)「でも渚本介さん、こんな廃寺も意外と未来には残っているもんですお。復興修r」

(;´∀`)「でやァァァ!!」

(;^ω^)「うおおおお!!?」

145 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/02(水) 12:03:31 ID:Vx0gVzAYO
 
 扉が開いた途端、模那は刀を振り上げてきた。
 腰を抜かすブーンの横で、渚本介が素早く虎恍丸を抜き、模那の刀を止めた。

 力を込めて刃で押し合いを続けるなか、模那が口を開く。
 

(;´∀`)「き、貴様ら誰だモナ!!」

(´・ω・`)「こっちの台詞だ。見たところ武士のようだが、何故このような廃寺にいるのだ」

(;´∀`)「うるさいモナ!さっさと立ち去れモナ!!」

(´・ω・`)「…まあ、それは構わぬが」
 
 
 突然、渚本介が体を上手く使いながら刀を持つ手の力を極端に緩めた。
 刀に体重をかけていた模那が、一気に前へよろける。

146 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/02(水) 12:04:35 ID:Vx0gVzAYO
 
 その後ろ首に、渚本介が虎恍丸の刃を当てた。
 

(゚、゚;トソン「模那様!!」

(;^ω^)(女…?)

(´・ω・`)「その前にわけを聞かせてくれないか。…と言っても、あの遊女を見れば大方想像はつくがな」

(;´∀`)「……」
 

 観念したかのように、模那が刀を鞘にしまった。
 渚本介も虎恍丸をしまい、ブーンと渚本介は模那に付いて本堂の中へと入っていった。
 
 
 
──

147 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/02(水) 12:05:32 ID:Vx0gVzAYO
──
 

( ^ω^)「駆け落ち、ですかお」

( ´∀`)「……」

(゚、゚トソン「……」

(´・ω・`)「武士と遊女…どちらも厳しい世界だ。覚悟はあるのか」

( ´∀`)「覚悟なしに、此処まで逃げはせんモナ」

(´・ω・`)「それもそうだな」
 
 
 模那と十遜の二人がこの廃寺まで逃げてきた経緯はこうだ。

 模那が何気なしに寄った夜の店に、十遜が遊女として働いていた。
 模那は十遜に惚れたが、互いに身分が大きく違う。
 そこで模那は十遜に相談し、この駆け落ちを決行したというのだ。

148 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/02(水) 12:06:35 ID:Vx0gVzAYO
 
( ´∀`)「……仕方無かったんだモナ」
 
 
 武士らしく姿勢良く座っているものの、模那の顔は下を向いていた。
 隣で心配そうに十遜が見つめるなか、模那は続けた。
 

( ´∀`)「十遜には一目で惚れたモナ。その途端、今まで拙者や先代らが築いてきた地位や栄光なんてどうでもよくなったんだモナ」

( ´∀`)「武家の魂と血を引き換えにしても、この女が欲しかったモナ。それほどまでに、拙者はこの女に惚れたモナ」

(゚、゚トソン「模那様……」
 
 
 人は、どうしようもないほどに人を愛してしまう時がある。
 何もかもを捨ててでも、愛した人だけを求めてしまう時がある。

 愛の亡者だ。愛してしまったばかりに、盲目になってしまった男が、目の前にいる。
 ブーンはこの二人がかなり哀れに思えた。

149 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/02(水) 12:08:04 ID:Vx0gVzAYO
 
 自由にできず、幸せになれない恋愛なんて、ただ虚しいだけだ。
 この二人は愛し合っている。しかし、身分という理由だけで、幸せとは言えない愛を育んでいる。
 
 
(´・ω・`)「…ブーン、一つ聞いてみたいのだが」

(;^ω^)「あ、はい」

 急に話しかけられ、少し驚いたブーン。
 渚本介は気にすることなくブーンに尋ねてみた。

 
(´・ω・`)「お前のいた時代に、身分による結婚の禁止はあるのか」

( ´∀`)(゚、゚トソン「?」

( ^ω^)「…たぶん無いですお。基本的に、誰でも自由に恋愛ができますお」

(´・ω・`)「ならば、お前はこの二人をどう思う」

(;^ω^)「!」

150 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/02(水) 12:09:00 ID:Vx0gVzAYO
 
 珍しく、やけに答えづらい質問をする渚本介。

 はっきり言って、哀れな二人だと思う。
 しかし、恋愛とはそう簡単に崩れるものではないと信じている。
 だって。


( ^ω^)「僕童貞だし…」

(´・ω・`)「え?」

(;^ω^)「いや何でもないです…とりあえず、僕は二人にはこのまま愛し合っていてほしいですお」

(゚、゚トソン「……」

( ´∀`)「何故?」
 

 今の言葉が嬉しかったのか。
 十遜は少し顔を上げ、模那は身を乗り出した。

151 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/02(水) 12:09:57 ID:Vx0gVzAYO
 
( ^ω^)「愛というものはどこにでも生まれ、何にでも育てられるもんですお。たとえ武士と遊女の間でも」

( ^ω^)「だから二人には頑張ってほしいんですお。社会に打ち勝つ愛の形を示してほしいんですお!」

(#^ω^)「駆け落ちだってきっと上手くいきますお!!だから頑張って愛し合っていてくださいお!!」

(#^ω^)「かくいう私は童貞ですけどね!!!」

(;´・ω・`)「おい落ち着け、何を怒ってるんだ」

(;^ω^)「あ、すみませんお…」

(゚、゚トソン「……プッ」

( ´∀`)「アッハハ!そうかそうか、ありがとうブーン殿!」

(;^ω^)「え、はい、どうも…」

152 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/02(水) 12:11:18 ID:Vx0gVzAYO
 
 十遜が可愛らしく小さく笑い、模那が大きく笑った。
 思えば、この二人は暫く笑っていないのかもしれない。
 心なしか、二人の顔が少し明るくなった気がする。

 
(´・ω・`)「まあ、俺も駆け落ち自体は否定しない」

 
 今度は渚本介が二人に意見し始めた。
 先ほどとは随分違った、軽い雰囲気が4人の間を流れていく。

(´・ω・`)「しかしお前ら二人が世から追い出されるべき状況にあるのも確かだ」

(´・ω・`)「だから二人は──」
 

 途端、渚本介は話を切り、本堂の壁をキョロキョロと見渡し始めた。

( ^ω^)「?」

( ´∀`)「どうなされた?」

153 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/02(水) 12:11:59 ID:Vx0gVzAYO
 
 そのうち、渚本介はある一点を見つめて動かなくなった。
 その視線の先には、本堂の入り口が佇んでいる。
 渚本介が小さく呟いた。
 
 
(´・ω・`)「…誰か来る」

(;´∀`)(゚、゚;トソン「!?」

(;^ω^)「なんでわかるんですかお?」

(´・ω・`)「殺気だ。お前ら、ずっと追っ手に追われていたのか」

(;´∀`)「ああ…」

 
 渚本介が静かに立ち上がり、虎恍丸に手をかけた。
 その後ろで、三人が小さく固まる。

(´・ω・`)「………」


155 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/02(水) 12:13:10 ID:Vx0gVzAYO
 
 向こうもこの廃寺の本堂に人がいるのはわかったようだ。
 扉の向こうで、明らかに気配が変わった。

 
(´・ω・`)(……来る!)

(#∂A∂)「行けい!!」
(<#`θ´)「おおおおお!!」
 
 
 大柄な二人の男が、本堂の扉を蹴破ってきた。
 あっという間に中に入り、虎恍丸を抜いた渚本介と対峙する。
 しかし、二人の視線は別の人間を捕らえていた。
 

(#∂A∂)「やはりここに居たか…濱田模那よ」

(<#`θ´)「武士の心を排し、遊女なんかと駆け落ちするなど、大層な御身分だな!」

(;´∀`)「う、うるさいモナ!貴様らには関係ないモナ!」

156 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/02(水) 12:13:57 ID:Vx0gVzAYO
 
(#∂A∂)「その上、見知らぬ刀持ちに用心棒をさせるのか?つくづく武士の恥曝しだな」

(<#`θ´)「…なれば、この用心棒を斬るのみ」

 二人の目が、渚本介を向いた。
 既に刀は渚本介の方に構えられている。
 

(´・ω・`)「…やってみろ」

 
 渚本介が挑発をかけた途端。
 二人が、動いた。
 

(#∂A∂)「ハァッ!」
(<#`θ´)「オラァッ!」

 一人の男が斜めから小さく刀を振り下ろし、そのまま渚本介の胸を目掛けて突いてきた。
 それを紙一重でかわし、そのまま虎恍丸を払う。
 しかし、その払いの一手はもう一方の男の刀に阻まれた。

157 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/02(水) 12:18:53 ID:Vx0gVzAYO
 
(´・ω・`)(チッ…)

 仕方なく、渚本介は阻んできた男の手首を蹴り上げた。
 隙のできた男の腹に虎恍丸を伸ばす。
 しかし、今度はもう一方の刀に弾かれた。
 そのまま刀の届かない所に回りこみ、渚本介は二人と距離を取った。

 息の荒くなった二人と、涼しい顔の渚本介が、静かに睨み合う。

 
(<;`θ´)「我ら二人を相手にここまでとは…」

(;∂A∂)「お主、何奴」

 
 予想外の強さに焦る二人。
 虎恍丸をゆっくりと構え直しながら、渚本介が答える。

 
(´・ω・`)「…太田渚本介」

(;∂A∂)「!!貴様、あの"戦魔"か!?」

(<;`θ´)「死んだはずでは…」

158 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/02(水) 12:19:54 ID:Vx0gVzAYO
 
(´・ω・`)「そう簡単に死ねるものではない。さあ、行くぞ」

(;∂A∂)(<;`θ´)「っ…!」

 
 渚本介の名を聞いて、明らかに動揺した二人。
 集中力の欠けた二人に、渚本介が一気に攻めこむ。

 
(;∂A∂)「く…うおおおお!!」

 真正面から踏み込んできた渚本介に、刀を横に薙ぎ払う。
 しかし、渚本介は瞬時に膝を90度近くまで曲げて上体を逸らし、刀をかわした。
 渚本介のあまりにも無茶な体制に、一瞬の隙が生まれた男。
 その喉を、虎恍丸が貫いた。
 

(<;`θ´)「クソッ…死ねェ!!」

 もう一方の男が、渚本介の正中線を目掛けて小刻みに突いてきた。
 かわしにくく、殺傷力の高いその攻撃を、回るように避ける。
 そのまま渚本介は男の首を斬った。

159 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/02(水) 12:20:54 ID:Vx0gVzAYO
 
(´・ω・`)「ふん」

 大きく痙攣しながら、ゆっくりと崩れ落ちる二人。
 渚本介は虎恍丸を鞘に戻し、三人の方を向いた。
 

(;^ω^)(つ、強ぇぇぇ!!)

(;´∀`)「なんとお礼を申し上げたらいいのやら…面目ない」

(゚、゚;トソン「……」

(´・ω・`)「おい」

 
 安堵の声を上げる模那に、渚本介は早足で近づいた。
 その表情は少しだけ怒りに染まっている。
 渚本介は模那の目の前まで来ると、胸元を掴んで持ち上げた。
 

(;^ω^)「ちょ、何してんすか渚本介さん!」

(゚、゚;トソン「や…やめてください!」

(;´∀`)「何するんだ…離せモナ!」

(´・ω・`)「……」

160 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/02(水) 12:21:57 ID:Vx0gVzAYO
 
 ブーンと十遜の制止を聞かず、模那を締め上げ続ける渚本介。
 渚本介にしては少し大きな声が、本堂に響いた。

 
(´・ω・`)「武士の心を拝するも結構。武家の血を切ってでも女を愛するも結構」

(´・ω・`)「だがな、その愛した女を守ろうとせず、刀を抜くこともしないとは何事だ。最初にブーンを斬ろうとした威勢と覚悟はどうした!」

(;´∀`)「……」

(´・ω・`)「駆け落ちなんてそんなものだ。愛に溺れてしまえば、人は野兎の如く落ちぶれる。半端な覚悟ならやめてしまえ」
 

 締め上げていた手を離し、模那を落とした渚本介。
 尻餅をついて咳き込む模那に、まるで関係ないかのように背を向ける。

161 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/02(水) 12:23:06 ID:Vx0gVzAYO
 
(´・ω・`)「ブーン、行くぞ」

(;^ω^)「は、はい…」
 

 背を向けて普通に歩き行く渚本介と、何度か振り返ってぺこぺこと頭を下げるブーン。
 渚本介が本堂の扉に手をかけた途端、廃寺が揺れそうなほどの怒声が本堂に響いた。

 
(#´∀`)「太田渚本介ェェェ!!!!」

(;^ω^)「うおっ!?」

(゚、゚;トソン「!?」

(´・ω・`)「……」
 
 
 声の方を振り向く。
 そこには、刀を抜いた模那が此方を睨んでいる姿があった。

162 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/02(水) 12:24:21 ID:Vx0gVzAYO
 
(´・ω・`)「なんだ」

 あくまで冷静にいる渚本介。
 しかし、心なしかその目は少し嬉しそうだった。

 
(#´∀`)「貴様の言う通りだ!!拙者は心の弱い、もとより武士失格の男!!」

(#´∀`)「だからこそ強くなる!十遜を守れる男になってみせん!!」

(#´∀`)「勝負だ渚本介!!刀を抜け!」

(´・ω・`)「…いいだろう」

 
 刀を向ける模那。
 その模那を見つめながら、虎恍丸を抜いて歩み寄る渚本介。

 止めることはできなかった。
 いや、止めてはいけないと感じた。

163 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/02(水) 12:25:23 ID:Vx0gVzAYO
 
 愛した女を守る為に、強くなると決心した男。そして、それに応える男。
 刀を構え、静かに睨み合う。
 
 
(#´∀`)「う…」

(´・ω・`)「……」

(#´∀`)「うわあああああ!!」
 

 勝負が始まった。

 刀を振り上げて走ってくる模那と、攻撃を待つ渚本介。
 決着は、一瞬で決まった。
 

 
(;´∀`)「がはっ…!」

(´・ω・`)「……」
 
 
 渚本介の峰打ちが、模那の腹を捕らえたのだ。

 片膝をつき、腹を押さえる模那。
 両手を添えながら、その様子を心配そうに見つめる十遜。

164 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/02(水) 12:26:52 ID:Vx0gVzAYO
 
 虎恍丸を鞘にしまい、渚本介は模那の前に行ってしゃがみこんだ。
 その目は、先程とは違って優しさに染まっている。
 

(´・ω・`)「確かに、お前は刀術に優れているわけではない。しかし、その精神と愛さえあれば、女一人は守りきれる」

( ´∀`)「……」

(´・ω・`)「いい攻撃だった」

( ´∀`)「…感謝致す…渚本介殿……」

(゚、゚トソン「……」

 
 愛する女を守るのに、喧嘩の強さなんて要らない。
 愛する女を幸せにするのに、刀術なんて必要ない。
 気持ち次第で、男は女を幸せにできるものだ。

 渚本介はそのまま座り込むと、今度はブーンの方を向いた。


166 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/02(水) 12:27:58 ID:Vx0gVzAYO
 
(´・ω・`)「ブーン、ぎたーを弾いてくれ。曲は任せる」

( ^ω^)「了解ですお」
 
 
 背負っていた荷袋からギターを取り出し、三人の前に座って構えるブーン。
 模那と十遜が不思議そうに見つめるなか、ブーンは演奏を始めた。

 曲は福山雅治の「you」のソロギター。
 純情な愛の旋律が、廃寺の本堂に響き渡る。
 
 
( ´∀`)「……」

(゚、゚トソン「……」
 

 愛してしまったのなら、その愛に従えばいい。
 身分の差なんて、二人の生活の中で忘れてしまえばいい。

 ブーンのギターの音色を、二人はずっと、静かに聴き入っていた。
 
 
 
──

167 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/02(水) 12:29:16 ID:Vx0gVzAYO
──
 

 模那と十遜がいつまでも手を振るのを背に、ブーンと渚本介は廃寺から歩き出した。

 駆け落ちの現場を見ること自体ブーンは初めてだったが、そういう愛も悪くないな、と思った。
 あの二人には幸せになってほしい。
 いつまでも一緒にいてほしい。
 ブーンは久しぶりに清々しい気持ちになっていた。
 
 
(´・ω・`)「なんだ、妙に清々しい顔だな」

( ^ω^)「だって久々に良いものが見れたんですお」

(´・ω・`)「はは、そうだな」
 

 良い二人だったな、と渚本介が呟いた。

 十遜を守り、幸せにする為に頑張っていた模那。
 しかし、この二人が今でも充分幸せそうに見えたのは、果たしてブーンの勘違いなのか。
 
 
 
第五話 終

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