- 292 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/24(木) 22:14:39 ID:MY5i2l3gO
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第九話 「戦には獣」
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徐々に近づいてくる地鳴り、怒号。
そして殺気。
何の準備も出来なかった二茶根瑠勢に、天野勢が獣の如く向かってくる。
(;`゚∽゚)「臆するでない!一番槍隊、密集せよ!!盾の用意だ!」
浮き足立つ兵達に、何とか統率を計る将。
この男の信頼がよほど高いのか。兵達の目が、ようやく戦のそれに変わった。
(#`゚∽゚)「我ら泉槍衆は最強の前衛部隊!!天野のうつけ共を、いざ蹴散らさん!!」
- 293 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/24(木) 22:15:53 ID:MY5i2l3gO
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根十城の前で構える泉槍衆を統率する男──泉は、自らは一番隊の後ろに付き、前方を睨みながら叫び続けた。
その視線の先には、鬼の如く駈けてくる天野勢の槍騎兵隊、およそ千。
(#`゚∽゚)「蛮族よ!前方を揃えただけの陣で、我らにかかる気か!」
兵力戦では、兵の数が勝敗を決定的にしてしまう。
泉が見る限り、天野の軍は特にこれといった陣形はとっておらず、兵の数で押してくるようだった。
しかし、泉率いる槍隊はこういった兵数の差には慣れていた。
というのも、もともと百人程度の槍隊を更に五番隊まで分けていたので、常に少人数で戦ってきた経験があるのだ。
今回も相手が兵数で押してくるに違いない。泉槍衆が最も得意とする形だ。
敵の槍騎兵隊は、真っ直ぐ此方に向かって突進してきた。
(#`゚∽゚)「──え?」
はずだった。
- 294 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/24(木) 22:16:44 ID:MY5i2l3gO
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「分かれェェェイ!!!」
(;`゚∽゚)「!?」
途端、目の前で天野勢の槍騎兵隊が二方向に分かれた。
挟み撃ちをするわけでもなく、分かれた部隊はそのまま城を回るように、見当違いの方へ駈けていく。
上の弓隊もこれは予想外だったらしく、第一射だけで攻撃を一旦止めた。
(;`゚∽゚)「どういうつもりだ…!?」
目の前の敵が取る不可解な行動に、暫し困惑する泉。
しかし、天野勢の取るその行動の意味を理解するのに、さほど時間はかからなかった。
(;`゚∽゚)「しまった……弓隊下がれェェ!!!」
- 295 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/24(木) 22:17:55 ID:MY5i2l3gO
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しかし、もう手遅れだった。
天野の槍騎兵隊が二手に分かれ、その後方が完全に見えたその時。
耳をつんざくような爆音が、辺りに響いた。
(;`゚∽゚)「クソったれ!!鉄砲隊か!」
そう、その後ろに構えていたのは、強大な攻撃力を誇る天野の鉄砲軍団。
この鉄砲隊をなるべく城に近付ける為に、天野勢は槍騎兵隊でフェイクをかけたのだ。
そして、その鉄砲隊が弾を放った先は、城内上部の弓隊。
城に敵を近寄らせない為の弓隊は、いとも簡単に壊滅した。
- 296 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/24(木) 22:18:52 ID:MY5i2l3gO
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そして、更なる悲劇が泉槍衆を襲う。
(;`゚∽゚)「泉槍衆全隊!一番槍隊の周りにつけ!!」
敵の策略がわかってしまった泉は、焦りに焦った。
時間がない。早く陣形を整えなければ──
(;`゚∽゚)「我ら泉槍衆が…こんな…」
否、もう体勢を立て直すまでもなかった。
泉槍衆の全隊、百人の兵達は、あっという間に天野の槍騎兵隊に吹き飛ばされていった。
そう、最初に槍騎兵隊を二手に分かれさせたのは、単なるフェイクではなかった。
二手に分かれた後は、鉄砲隊が弓隊を撃墜している間に城を外周し、今度はそのまま泉槍衆を挟み撃ちに行ったのだ。
合戦開始、僅か数十分。
根十城の外守りは、いともあっさり破られた。
──
- 297 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/24(木) 22:20:11 ID:MY5i2l3gO
- ──
二茶根瑠勢が信頼を置いていた泉槍衆が、粘る間もなく全滅してしまった。それも弓隊ごとだ。
他の隊を出そうにも、もう遅い。
すぐに根十城内部に天野勢が進入し、乱戦が巻き起こった。
(;´・ω・`)「くっ…!」
根十城内部に待機していた渚本介も、乱戦に巻き込まれた一人だった。
襲ってくる槍や刀をかわし、止め、反撃を繰り返す。
(;´・ω・`)(キリがない…)
正直なことを言うと、もう根十城は陥落すると見ていた。
大した策も出来ないうちに、ただ大軍に押し寄せられる。
それだけでも、勝敗はもう決まったようなものだった。
- 298 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/24(木) 22:21:29 ID:MY5i2l3gO
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(;´・ω・`)(…仕方ない)
途端、渚本介は踵を返し、馬小屋の方へと走り出した。
渚本介と刃を合わせていた何人かが追いかけてきたが、すぐに乱戦に巻き込まれていった。
途中で敵を何度も斬り伏せながら、全力で走り続ける渚本介。
暫く走ると、ようやく兵士宿舎に辿り着いた。
このあたりには誰もいないようだ。
宿舎から長刀を取り、隣接する馬小屋で適当な馬に跨る。
馬に乗った渚本介は、そのまま元来た道を戻るように走り出した。
狙いは、城外に待機しているであろう天野勢の本隊。
- 299 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/24(木) 22:22:24 ID:MY5i2l3gO
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(´・ω・`)「ハッ!」
虎恍丸を鞘に戻し、長刀を構えながら、城内を馬で駈けていく。
渚本介の姿を見た味方は驚いて身を引き、敵は刃を向けてきた。
長刀を両手に構え、まずは数の多い槍を払う。
(#´・ω・`)「ふんッ!!」
渚本介の払った一刀は、槍を向けていた五人の敵兵を一気に吹き飛ばした。
渚本介の存在と、馬上刀の予想外の力に、思わず固まる敵兵達。
恐怖の色が見えた天野勢を、渚本介が止まることなく長刀で斬り倒していく。
その姿に勇気付けられたのか。
乱戦に疲れ始めていた二茶根瑠勢の兵達は、新たに雄叫びを上げながら、渚本介の後に続くように敵軍に攻めていった。
──
- 300 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/24(木) 22:23:49 ID:MY5i2l3gO
- ──
城外に待機する天野軍本隊。
そこに、一人の伝令が慌てた様子で走り込んできた。
(;・*・)「も、申し上げます!!」
伝令が膝を付いた先、そこには天野勢の大将が落ち着いた様子で馬に跨っている。
(,,゚Д゚)「…何だ」
"剛拳"こと、天野擬古成。
斬馬刀を背負い、足下の伝令を睨む姿は、周りの兵達も息を飲むほどだ。
伝令は顔を伏せたまま、大声で用件を言い始めた。
- 301 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/24(木) 22:25:01 ID:MY5i2l3gO
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(;・*・)「はっ!根十城内部、我が軍は未だ一階に留まり候!」
(,,゚Д゚)「…なんだと?」
(;・*・)「乱戦の中、一騎の兵が我が軍を混乱に陥れている様子!」
(,,゚Д゚)「一騎?一体誰だそいつは」
(;・*・)「はっ!恐らくは、彼の太田渚本介でございます!」
(,,゚Д゚)「!!」
伝令の話が終わり、重苦しい空気が流れる。
擬古成は少し考えるように地面を睨むと、そのまま口を開いた。
(,,゚Д゚)「…奴は恐らく本隊を目掛けている。乱戦を突破するくらい、奴には容易いはずだ」
(,,゚Д゚)「奴が本隊にやってくる前に、俺らは城内に入ったほうがいいな。その方が簡単に二茶根瑠巳留那の首も取れよう」
- 302 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/24(木) 22:25:54 ID:MY5i2l3gO
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擬古成は一旦話を止めると、横に並ぶ大男に目を向けた。
(,,゚Д゚)「狗久流(くくる)よ。俺らが根十城に入る為に、彼の"戦魔"の足止めを頼みたい」
( ゚∋゚)「御意に」
狗久流と呼ばれた大男は、低く唸るような声で擬古成に返した。
狗久流は他の兵達よりも頭二つ分ほど背が高く、その体躯は野獣のように大きい。
巨大な甲冑を身につけるその姿は、まさに"鬼"の様である。
擬古成が狗久流に頷き、いざ走り出そうとした途端。
何やら、城門のほうが騒がしくなってきた。
- 303 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/24(木) 22:27:11 ID:MY5i2l3gO
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何事だ、と聞くまでもなかった。
城門のあたりを騒がせている原因は、すぐに擬古成の視界に飛び込んできたからだ。
(#´・ω・`)「ハァッ!!」
(,,゚Д゚)「戦魔…!」
馬上にて長刀を振り回し、天野勢をことごとく蹴散らしている。
まさに魔物のような戦いぶり。"戦魔"の名に相応しく、渚本介が本隊を目掛けながら天野の兵を斬り伏せていく。
(#´・ω・`)「擬古成!!」
(,,゚Д゚)「ムッ…!」
とうとう城門の包囲網を切り抜け、本隊に一気に向かってきた渚本介。
その中心にいる擬古成を睨みながら、更に怒号を上げる。
- 304 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/24(木) 22:29:34 ID:MY5i2l3gO
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(#´・ω・`)「出あえッ!!この太田渚本介、今度こそ貴様の首を頂戴する!」
( ゚∋゚)「そうはいかぬ」
(#´・ω・`)「!!」
本隊に切り込む直前。
渚本介と本隊の間に、見覚えのある大男が入り込んできた。
(;´・ω・`)(アイツは…)
(#゚∋゚)「せいやァッ!!」
渚本介の前に立ちはだかった大男、狗久流。
両手に握った武器を、渚本介の乗る馬を目掛けて薙ぎ払う。
- 305 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/24(木) 22:30:23 ID:MY5i2l3gO
-
(;´・ω・`)「!?」
何の武器かはよく見えなかった。
しかし、危険を察知した渚本介は、狗久流の攻撃が馬を捕らえる前に飛び降りた。
直後、渚本介の乗っていた馬が、十メートル近く吹き飛ばされた。
(;´・ω・`)「なっ…!」
( ゚∋゚)「ふん、勘は鋭いようだな」
信じられない光景だった。
人間五人分の重さと言われる馬を、たった一撃で軽々しく吹き飛ばしたのだ。
何が起こったんだ、と相手の武器を見る。
大男の握る武器は、長槍の柄に斧を引っ付けたような、巨大な戦斧だった。
- 306 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/24(木) 22:31:48 ID:MY5i2l3gO
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(´・ω・`)「…そうか、思い出したぞ」
( ゚∋゚)「……」
見覚えのある姿に、見覚えのある特殊な戦斧。
渚本介は記憶を辿りながら、話を続けた。
(´・ω・`)「天野家家臣、堂土狗久流。未だ擬古成の腰巾着を務めているとはな」
( ゚∋゚)「ぬかせ。貴様のような不浄者、我が戦斧の餌食にしてくれん」
( ゚∋゚)「擬古成様!今のうちに根十城へ!」
(,,゚Д゚)「ああ」
(;´・ω・`)「!!」
しまった、と狗久流から目を離す。
しかし、擬古成率いる本隊は、既に根十城へと走り出していた。
- 307 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/24(木) 22:32:52 ID:MY5i2l3gO
-
(´・ω・`)「チッ……」
どうやら、擬古成を討つにはまず狗久流を倒さねばならないようだ。
長刀を投げ捨て、虎恍丸をゆっくりと抜く。
対する狗久流も、両手に構えた戦斧を渚本介に向ける。
( ゚∋゚)「これも武功の為。擬古成様を喜ばせる為……堂土狗久流、参る!」
(#゚∋゚)「せいッ!!」
(´・ω・`)「!!」
腰を低く落とし、戦斧を横に払う狗久流。
あまりにもリーチの長いその攻撃を、更に低い姿勢でかわす。
(´・ω・`)(…今だ!)
長い武器を振った後は、必ず大きな隙ができる。
それを狙って一気に飛び込む渚本介。
しかしその攻撃を読んでいたかのように、狗久流が戦斧を短く持ち、柄の部分を振り回してきた。
- 308 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/24(木) 22:33:57 ID:MY5i2l3gO
-
(;´・ω・`)「くっ…」
その攻撃を虎恍丸の刃で止める渚本介。
しかし、その一撃のあまりの強さに、バランスを崩してしまった。
(#゚∋゚)「でいっ!!」
(;´・ω・`)「!!」
この好機を見逃すまいと、戦斧の返し手が渚本介に迫る。
咄嗟に飛び上がり、その一振りを避ける。
そのまま上段から虎恍丸を振り下ろすも、戦斧の柄に防御されてしまった。
(´・ω・`)(クソっ…)
(#゚∋゚)「隙ありィッ!!」
(;´・ω・`)「!?」
速い。
あまりにも速い狗久流の四振目が、渚本介の胴に迫る。
- 309 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/24(木) 22:35:03 ID:MY5i2l3gO
-
なんとか虎恍丸をその攻撃に合わせ、防御することができた。
しかし。
(;´・ω・`)「がはッ…!!」
( ゚∋゚)「フン」
虎恍丸越しとはいえ、馬を吹き飛ばす程の攻撃を受けてしまった渚本介。
体は勢い良く弾かれ、先程の馬以上に飛ばされてしまった。
よろよろと立ち上がり、涼しい顔で近づいてくる狗久流を睨みながら、虎恍丸を構え直す。
(;´・ω・`)(堂土狗久流…まさかここまでとは…)
( ゚∋゚)「どうした"戦魔"。口ほどにもなし」
(;´・ω・`)「……」
あれほど柄の長い戦斧を簡単に操り、近付きすらさせない技術。
どうすれば勝てるのか、とにかく思案を巡らせる。
- 310 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/24(木) 22:36:30 ID:MY5i2l3gO
-
ふと、渚本介は自らの足元に何か武器が落ちていることに気付いた。
長刀だ。先程渚本介が投げ捨てた長刀が転がっている。
(´・ω・`)(…なるほどな)
一つ不敵な笑みを見せ、その長刀を拾い上げる。
虎恍丸をしまって長刀を構えると、渚本介は自信の籠もった声を狗久流に向けた。
(´・ω・`)「わかったぞ、貴様を倒す術が」
( ゚∋゚)「ふん、刀が長刀になったくらいで何が変わるというのだ。…さあ、行くぞ!」
- 311 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/24(木) 22:37:38 ID:MY5i2l3gO
-
先程と同じように、まずは狗久流がそのリーチを生かして戦斧を降ってきた。
渚本介もまたも低い姿勢でかわし、同じように狗久流に飛び込んでいく。
(#゚∋゚)「何度同じ手を使おうと、俺には効かぬ!」
今度はすぐに狗久流が返し手の攻撃を向ける。
渚本介は、またもその攻撃を飛び越え、上段から長刀を振り下ろしてきた。
(#゚∋゚)「効かぬと言っとろうが!!」
先程と同じように、柄を上に向けて防ごうとする狗久流。
しかし、そこに渚本介の姿は無かった。
持ち主のいなくなった長刀だけが、落ち際にコツンと戦斧の柄に触れた。
- 312 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/24(木) 22:39:34 ID:MY5i2l3gO
-
(;゚∋゚)「──え?」
(´・ω・`)「手強かったぞ、堂土狗久流」
狗久流の理解が追いつかないうちに、低い位置にいた渚本介の虎恍丸が、狗久流の腹を切り裂いた。
膝をつき、戦斧を落とし、震える声で狗久流が尋ねる。
(;゚∋゚)「な…何をした…貴様……」
(´・ω・`)「"形"が欲しかったのだ。その戦斧が追いつかないほどの、絶対的な隙の形が」
(;゚∋゚)「…形……?」
(; ∋ )「……そうか…そういうことか…」
- 313 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/24(木) 22:41:11 ID:MY5i2l3gO
-
その場に崩れ落ちながら、狗久流はようやく理解できた。
渚本介の言う"形"とは、狗久流の戦斧の"位置"のことなのだ。
長い戦斧を操るのが人一倍上手い狗久流だ。360度、ほぼどの位置にいても攻撃を喰らってしまう。
しかし、一瞬だけなら、全く攻撃を喰らうことのない条件があった。
それは、「戦斧の位置が横向きに、かつ上段にある場合」だ。
これならばたとえ狗久流でさえも素早い攻撃が出来ない。
これが渚本介の言う"形"の正体なのだ。
渚本介はこの"形"を作らせる為に、狗久流に飛び込み、上段から長刀で攻撃すると見せかけた。
その防御の為に、狗久流は前述した"形"を作らざるを得ない。
狗久流が戦斧をその"形"に構えた時点で、渚本介は長刀を手放し、懐に飛び込み、虎恍丸の居合いを合わせたというわけだ。
- 314 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/24(木) 22:42:06 ID:MY5i2l3gO
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(; ∋ )「…フ……戦魔の名の通りの実力よ……俺の負けだ…」
(´・ω・`)「……」
(; ∋ )「さあ行け……俺に勝っ…た……から……に…は………」
(´・ω・`)「…ああ、わかってる」
虎恍丸を鞘に戻し、冷たくなった狗久流に背を向け、渚本介は根十城へと走り出した。
もう体は疲れきっているが、それでも走らなければならない。
擬古成を討つ為に。そして、ブーンを救う為に。
──
- 315 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/24(木) 22:43:33 ID:MY5i2l3gO
- ──
(;^ω^)「早く上るお!」
ζ(゚ー゚;ζ「ま、待ってよ、ハァ、ハァ…」
根十城最上階、大広間。
長い階段を上りきり、ブーンと出麗の二人は巳留那のもとへ向かっていた。
脱出する前に既に天野勢が来ていたので、脱出は諦め、まずは城主の安全を確保しようと考えたのだ。
大広間の奥に玉座がある。
この緊急事態に巳留那が玉座にいるとは思わなかったが、とにかく冷静な思考が出来ないので、ブーンは出麗の手首を引っ張りながら走っていた。
- 316 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/24(木) 22:44:42 ID:MY5i2l3gO
-
乱暴に玉座への襖を開ける。
そこには、意外にも巳留那が落ち着いた様子で座っていた。
( ゚д゚ )「…無礼者が、何しに来た」
(;^ω^)「巳留那様を連れて逃げる為ですお!てか何で悠々と座ってるんですかお!!」
( ゚д゚ )「勝てぬ戦に慌てる必要などない」
ζ(゚ー゚;ζ「……」
(;^ω^)「勝つか負けるかなんて終わってみなければわからないですお!」
ブーンの剣幕に、全く引く様子のない巳留那。
暫くブーンの方を見ると、目を伏せながら、溜め息を一つ吐いた。
( ゚д゚ )「残念だが、結果がわかってる場合というのもある」
(;^ω^)「ああもう!だから…」
( ゚д゚ )「なれば」
- 317 名前: ◆vVv3HGufzo:2011/03/24(木) 22:47:25 ID:MY5i2l3gO
-
少し声を上げ、ブーンを差し止める。
巳留那は視線をブーンの少し後ろに向け、顎で指した。
( ゚д゚ )「なれば、アレをどう説明する」
( ^ω^)「アレ?」
ゆっくりと振り返る。
途端、ブーンは危うく腰を抜かしそうになった。
(,,゚Д゚)「そいつの言う通りだ南蛮人。抗えない勝敗というのは、確かに在る」
天野擬古成。ブーンにとっては悪魔のような男が、そこにいた。
(;^ω^)「う、嘘だお…こんなに早く…」
(,,゚Д゚)「悪ぃが、俺はせっかちでね」
背中に掛かる大きな鞘から、斬馬刀を抜く擬古成。
その口元が、不気味に歪んだ。
(,,゚Д゚)「全員、死んでもらうぜ」
第九話 終
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