- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/19(月) 00:37:17.09 ID:3rihzcBm0
- view.( ^ω^) Horizon Naito.
あれから一日ほどだろうか。飛行機械の窓から、シベリアが見えるところまで来ていた。
ξ゚听)ξ「わ、見てホライゾン!地面が白いわよ!」
御嬢様はいつものように興奮気味だ。
飛行機械に乗っていたシベリアの兵たちは、その様子におかしそうに笑っていた。
ξ#゚听)ξ「な、何よ!珍しいものを見て喜んで何が悪いのよ!」
(51 0w0)「ハハハ!嬢ちゃん!あれは"雪"って言ってな!シベリアじゃ普通なんだよ!
まあ、そっちの地方でも解りやすいように言うと……カキ氷が空から降ってくるようなもんか!?」
ξ*゚听)ξ「じゃ、じゃああれ全部カキ氷なの?」
(51 0w0)「ま、語弊はあるがそんなもんだろうな。ちなみに食うのは止めといた方がいいぜ。ハラ壊したくなかったらな!」
(52 0w0)「おいおい"51"!それァ昔のお前だろーがよ!そこのお嬢さんはそこまでバカじゃねーよ!」
(51 0w0)「ハハハハ!違いねぇ!」
合わせて二日ほどか、シベリアの兵達(っつうかこいつらオメガさんにそっくりだお)と一緒に生活してきて解った事がある。
彼らは、非常にテンションが高い。
敗走直後で(しかも獅子王も死んだ)テンションがた落ちのマーシィ軍のこともお構い無しだ。
一部のマーシィ兵は彼らに元気付けられたのか、輪の中に入ってバカ話に興じているのもある。
まあ、大体のマーシィ兵は塞ぎこんでシベリア兵から離れた場所に移動して行ったのだが。
ジョルジュさんと、あの金髪の女の子もそうだ。
シベリア兵の陣取る後ろと、マーシィ兵の陣取る前のほうでは、空気の温度差がかなり激しい。
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/19(月) 00:39:06.56 ID:3rihzcBm0
- (;^ω^)「……さむ」
精神的な"空気"の温度ではない。物理的に、だ。
雪が積もっている事からも判るとおり、シベリアは寒い。
その温度が、飛行機械の外装越しに中の空気を冷やしている。
中に居るうちはまだいい。暫くすればドクオさんが空調を利かせてくれるだろう。
問題は、降りてからだ。あの雪が一年中融けないって言うんだから、外は相当なもんだろう。
もし太陽が存在していたら、この雪も解けることを知っていたのだろうか。
(51 0w0)「『白銀の世界 シベリア』とはよく言ったもんだがよ、俺から言わせて貰えば『新緑の世界 それ以外』だよなあ!」
(52 0w0)「本当だぜ!年がら年中白いモン見てたらさすがに俺等も飽きが来るってんだ!
サファイアの月光に夜露を浮かばす新緑ってモンを俺たちも見てみたいもんだな!」
がたん、と一度機体が揺れる。
(;^ω^)「うお!な、何だお?」
(52 0w0)「着地に入ったな!ようこそ白銀の世界へ、って奴だ!」
(;^ω^)「白銀……防寒、大丈夫でしょうかお?」
御嬢様は殺された時と変わりない肩と胸元の開いた白のドレスでふわふわと宙を漂っている。
あんな格好を見ていたら僕も寒くなってくる。否、彼女は霊体。温度なんて感じて無いだろうが――
ξ><)ξ「へっくし!さ、寒い……!」
(;^ω^)(え……えぇー?)
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/19(月) 00:40:32.04 ID:3rihzcBm0
- 『全く不便ね、この体も!』
(;^ω^)『いや、着替えられないんですかおそれ?っつうかマジ寒いお……』
白銀の大地・シベリアに降り立った僕達は現在、飛行機械の発着広場からシベリア城まで徒歩で移動中だ。
今は特に積雪がキツイらしく、馬車や走行機械の類は使えないらしい。
(52 0w0)「まー一時間も歩けば到着する!大したことねーって!」
(;^ω^)「そう言われましても……ねぇ?」
御嬢様のより露出は少ないが、その分薄手のドレスを着たデレ様、タシロ島の温暖な気候に合わせた薄手のワンピースを着た金髪の少女。
加えてスカートは腿までしか覆っていない上に上も半袖の給仕服を着たミセリさん――否、彼女はこの土地の出身なのに何でそんな薄着を?
(ミセリさんを除く)彼女らは非常に寒そうだ。見てるこっちも寒い。っつうか凍死するぞ?
(53 0w0)「足踏みをするんだ!体温をマジで上げろ!」
ζ(゚ー゚;ζ「はっ……はっ……でもこれ、体力が無くなったらどうなるんでしょう?」
(54 0w0)「城にたどり着けなければ凍死だろうな!俺達でもそれは同じさ!」
(;^ω^)「あんたらとんでもない事を清清しく口にするの止めろよ……」
ミセ*゚ー゚)リ「あっ……見えて、来ましたよ……?」
僕らの前を悠々と歩くミセリさんが、やや上空を指差す。
左右の林を掻き分けて、重厚感のある巨大な城が城壁に囲まれ建っているのが見える。
_
(;゚∀゚)「マーシィ城は窓がいっぱいついてて通気性が良かったんだがな……。やっぱ土地柄ってのが窺えるな」
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/19(月) 00:42:59.56 ID:3rihzcBm0
- 城門の前には二人の番兵が立っている。
退屈そうに門に寄りかかっていた彼らは此方に気づくなり片手を上げて挨拶を示した。
(83 0w0)「お、お戻りかい50ナンバーズ!きっちりエスコートしてきたな二国の姫君!将来が楽しみだ!」
(52 0w0)「いやもう一人居るんだがなァ!寒くてお下がりになったよ!
姫君たちを早く暖めてやりたいから、残りの話は後でにしようか!城門、開けてくれや!」
(82 0w0)「おうよ!シュー様も首を長くしてお待ちだ!さっさと行ってやんな!」
門の左右に取り付けられた二つのスイッチ。
番兵が同時にそれを押すと、門は巨大な手に押されたかのように開いた。
(;^ω^)「うひょー……間近で見るとさらにでっけーお……」
マーシィ城は上空からしか見ていないが、それのおおよそ三倍の横幅はあるのではないか。
横長の建築ではあるが、縦幅もマーシィ城に劣っては居ない。
昇りきった青の月すら、欠けて見える大きさ。
それはどちらかと言うと、城というより超巨大な石造りの屋敷だった。
『これは……うちの屋敷が庭園含めて5つ位は軽く入っちゃうんじゃない?』
広大な庭を見回していると、御嬢様の声がそう言う。
『残念よねぇ。こんなに広いのに、真っ白じゃない』
( ^ω^)『フフフ驚きたまえフロイライン、これ全部カキ氷なんですお?』
『後で覚えてなさい』
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/19(月) 00:44:31.51 ID:3rihzcBm0
- 広大な白を割るように敷かれた石畳を歩くと、巨大な木の扉まで到達する。
"51"の腕章をつけた兵士がその中央にはめられた金具に触れると、扉は真ん中から割れるように横滑りし、開いた。
踏み込む。暖かい空気が、凍えた僕の耳をくすぐった。
(51 0w0)「帰ってきたぞ我が家シベリア―――!」
広大な石造りの空間。その広さの証明とでも言うように彼の声は反響する。
等間隔に浮かぶ発光球の暖色系の灯りが、凍えを視覚的に和らげる。
横幅おおよそ十人分の紅のカーペット。それを先行する"51"に、僕達は続いた。
(;0w0)「はー、間に合った間に合った」
( ^ω^)「お?オメガさん、何だか久しぶりな気がするお」
(;0w0)「そうでもないと信じたいな、俺は。
フォックスの旦那が居ないから、代わりに俺がシュー様に状況を説明しないといけねえ」
( ^ω^)「そういやフォックスさん、都合とか言ってたけど何だったんだお?」
( 0w0)「そこン所は俺も詳しくは知らねーんだが……さっき手紙を受け取った。あと一日もすればここに着くらしい。
出来れば今着いてくれるとありがたかったんだがなぁ……あんな悲惨な負け戦、俺の口からは語りたくねぇし、語らせたくもねぇよ」
(51 0w0)「本当、兄貴は偉いくせに損な役回りが多いよなぁ!」
(52 0w0)「出番も少ねーしな!」
(;0w0)「うるせぇやい」
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/19(月) 00:47:07.11 ID:3rihzcBm0
- ( 0w0)「この時間だと……シュー様は自室かな」
巨大な階段を上れば、ドアの並ぶ廊下にたどり着く。
その最も奥の、最も大きな扉の前でオメガさんは止まった。
(51 0w0)「ほんじゃ、俺達は失礼するわ」
(52 0w0)「シュー様は怒らないだろうが、あんま大人数で乙女の部屋に押しかけるのもあれだしな!」
50番台の腕章をつけた兵達は足早にここを去っていく。
残ったのは僕とオメガさんにデレ様と、彼女にぴったり寄り添ったミセリさん。それとジョルジュさんと金髪の少女だ。
これでも十分大人数だと思うが……
( 0w0)「よし、開けるぞ……」
厳かに言うとオメガさんはドアノブに手をかける。
それを回し、ゆっくりと押す。
僅かに明るく差した光。その先に見えたのは……
ベッドに腰掛け、互いの両手を胸の前で握りながら、今まさに濃厚な口付けを交わそうとしていた女性二人だった。
(;^ω^)(ハァーーー?何だよこれ……常識の差を感じたわ)
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/19(月) 00:48:23.33 ID:3rihzcBm0
- 構図で言えば、背の高い方が俯きがちになり差し出して、低いほうが上向き気味で受け取るような感じだ。
背の高い方はちらっとこちらを見るが、構わんといった様子で唇を差し出す作業に戻る。
(;0w0)「あー……失礼した。俺達は暫く待ってるんで、事が済み次第声かけてください」
川 ゚ -゚) 「全くムードを読めない奴だな。まあいい。シュー、構わず続け――」
lw´‐ _‐ノv「えい」
ばし。
川 ゚ -゚) 「ちょ、おま……」
背の低い……或いは少女と呼べる容姿の女性が背の高い方の女性を軽く殴ると、殴られた女性は消えてしまった。
効果音にするならば――ぷつん、と言うのが適当だろうか。
lw´‐ _‐ノv「ごめんねオメガ君。姉さまの誘惑に勝てなかった私を許して。
タシロ島の皆さんとあとフォックス君の言ってた……ラウンジの皆さんも一緒でしょ?入って」
言葉に従ったオメガさんに続き、僕達もぞろぞろとその部屋に入った。
中央に大きな丸い机を備え、部屋の端には天蓋つきの大きなベッド。
全体を白と縁取りの金で統一したその部屋は、ティーカップを連想させる。
lw´‐ _‐ノv「ごめんね、座る所無くて。本来、こういう事に使う場所じゃないから」
ζ(゚ー゚;ζ「あ、いえ……お気になさらず」
彼女はベッドから立ち上がると、僕らの前に歩み寄った。
そしていったん静止すると深々とお辞儀。僕らもそれを返す。
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/19(月) 00:49:46.99 ID:3rihzcBm0
- lw´‐ _‐ノv「えっと……シベリアの王やってます、シュール・シベリアです。
君たちの事……ラウンジの皆さんの事はフォックス君から大体聞いてます。
貴方がホライゾン・内藤君。貴女がデレ・ラウンジさん。後見えないけど、内藤君の霊装、ツンデレ・ラウンジさん」
ξ゚听)ξ「光栄に御座います、シュール王」
僕の隣に実体化した御嬢様が、深々とお辞儀をする。中々新鮮な光景だ。こう思うのもある意味不謹慎だが。
lw´‐ _‐ノv「いんや、私のことはシューで良いですよ?後そんなに堅苦しくしなくてもよいです。
それで……申し訳無いんだが、タシロ島の皆さんは、私よく知りませんで……お名前を窺っても宜しいですかな」
_
( ゚∀゚)「ジョルジュ・長岡だ……こっちは杉浦・・」
ジョルジュさんの隣の少女……・ちゃんは軽く頭を下げる。
lw´‐ _‐ノv「うん……長岡騎士団の団長と、獅子王の身内さんか……。ところで、獅子王……ロマネスク殿は何処に?」
沈黙。
す、と息を深く吸う音がする。
それは意を決す為の行為だったのか。オメガさんが一歩前に出て、口を重そうに開く。
( 0w0)「その事については……俺から説明させてください」
・ ・ ・
lw´‐ _‐ノv「成程……此方の不備の所為で、そんなに被害が……」
マーシィ軍・長岡騎士団2000の内、1000がロマネスクと共にタシロ島に残り、半数がここ、シベリア城に居る。
タシロ島のほうは……恐らく生きてはいない。数字で見れば半分の損失だ。
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/19(月) 00:51:13.28 ID:3rihzcBm0
- lw´‐ _‐ノv「許して欲しい、長岡殿、杉浦殿。私の飛行機械が間に合わなかったばかりに……」
_
( -∀-)「いや、頭を上げてくださいシュー様。
俺達の身に降りかかった不幸を、他人の所為にするなんて出来ませんよ」
深々と頭を下げるシュー様を、ジョルジュさんが諭す。
頭を上げたシュー様は、部屋の奥の窓のほうへ行くと、そこから何かを見上げる。
恐らくは、月。
lw´‐ _‐ノv「狂王ギコ・アスキー。元ニーソク王国の政権転覆の首謀者。
たった一晩で10000の兵を全てその手で葬った狂戦士。今では旧ニーソク……アスキー王国の国王として君臨し、圧政を敷いている。
……理由としては十分だね、アスキーを、"ニーソクが"取り戻すのは」
この場の全員―オメガさんとミセリさんを除いて―は困惑する。
彼女は今何て言った?"ニーソク"?
lw´‐ _‐ノv「ニーソクの王族がね、いるんだよ。ギコ・アスキーに殺された先代ニーソク王の一人息子が、この国に」
曰く、ギコ・アスキーによる政権転覆の際、先代ニーソク王は息子と妻を逃がし、伝書鳩をシベリアに飛ばした。
それを受け取ったシベリア王が、逃亡中であった息子と妻を保護したらしい。
lw´‐ _‐ノv「幸いにも……民も狂王もその臣下も、この世界の誰もニーソク王家の血が途絶えていない事を知らない。
ただ、シベリアの上層部と、君たちを除いて、ね。
"彼"がニーソクを取り戻したいと願うなら、私達がアスキーと戦う為に必要な物のうちの一つ……大義名分が出来上がる」
( ^ω^)「攻める……つもりですかお?アスキーを」
lw´‐ _‐ノv「ううん、まだそれはできない。私達に足りない物は、いくつもある」
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/19(月) 00:52:48.66 ID:3rihzcBm0
- lw´‐ _‐ノv「アスキーのような兵力も無い。ラウンジのように魔術……と言うか死霊術に長けている訳でもない。
厨房を属領としている手前、技術力だけはあるけど……"夜を統べる国"シベリアは、もう存在しない。他の国が、強くなりすぎた」
_
( ゚∀゚)「それじゃあ……何も出来ないじゃねえかよ……」
lw´‐ _‐ノv「勘違いしないで、まだ諦めると言ったわけじゃないよ」
やや口調を強めて言い放つ。
窓に向けていた顔を、体ごとこちらに向けて彼女は歩み寄る。
lw´‐ _‐ノv「足りないならば……増やすか、相手を減らせば良い。シベリアは"夜を管理する国"になる。
例えば、アスキー本国の兵力が多いとしても、そうじゃない所……タシロ島のアスキー軍はどうだい?
本国よりも割合は非常に少ない。加えて、"狂王"ギコ・アスキーやその他将兵がそちらに居る。
その将兵……特にギコ・アスキーを潰す事ができれば、アスキー全土の戦闘力は著しく低下する」
上層部を失った軍隊の弱さは、ラウンジに仕えていた時に当主から何度も教わった。
『殺したければ頭を潰せ、人であっても百獣であっても、軍隊であっても、だ』は、彼の口癖だった。
それが"国王"ともなれば……与える効果は計り知れない。
lw´‐ _‐ノv「こっちの兵力の問題。これの解決で一番簡単なのは唯の兵を集めるより機械技術や魔術を利用できる兵を養成することかな。
ま、まだタシロ島全土が落ちたワケじゃないから、残された時間で養成する事は一応は可能だね。
……やっぱ一番面倒なのは、タシロ島で勝った後のこと。戦争しかける大義名分である一人息子を引っ張り出してくること、かな……」
(;^ω^)「は……?」
lw´‐ _‐ノv「いや、彼が『僕も貴族なんだから屋敷くらい欲しいなぁ〜☆』とか言ってたもんだから買ってあげたんだけど、
そしたら彼屋敷から出てこなくなるし私が訪問していっても門すら開けてもらえないし……もしかして私、嫌われてる?」
「いやぁ〜急いだ急いだ。予定より一日早くついちまった」
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/19(月) 00:53:44.42 ID:3rihzcBm0
- がちゃ、と扉を開ける音と共に現れたのはフォックスさん。彼にしては普通な登場の仕方だ。
そしてその隣には――
( ^ω^)「渋沢さん……?」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「……俺も、お前達の仲間に入れて貰うとした」
爪'ー`)y‐「と言うかそこは僕の心配なんじゃないの?何で明日にならないと来れなかったのに今ここに居るのって?ねぇ!」
lw´‐ _‐ノv「あれ……フォックス君。いないと思ってたら、どこほっつき歩いてたの?」
( 0w0)「旦那よ、良い意味でも悪い意味でもアンタの心配をする奴は居ないと思うぞ」
オーマイガッ!と(非常に演技くさく)頭を抱えて膝を床に落とすフォックスさんを無視して、シュー様は渋沢さんに問う。
lw´‐ _‐ノv「えっと……渋沢君、だっけ?フォックス君からの手紙で君の事は知ってる。
私はシベリア王・シュール。シューで良いよ。とりあえず厨房で何があったのか、君から聞かせて貰えないかな?」
_、_
(;,_ノ` )y━・~「俺から……?」
lw´‐ _‐ノv「うん」
と頷くと、シュー様は地面に蹲るまでに至ったフォックスさんを指差す。
lw´‐ _‐ノv「あれは暫く使えそうに無いから」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「そうか……ならば俺の口から語れることだけ、語ろう」
(;^ω^)(渋沢さんもフォックスさんの取り扱いに慣れてきてるよなぁ)
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/19(月) 00:56:51.96 ID:3rihzcBm0
- _、_
view.( ,_ノ` )y━・~ Shibusawa Takuro.
いつの間にか、都村の背後に女性が現れていた。
背丈は都村よりやや低い位、青の和装の袖は長く、指先すら見えない。
彼女は、宙に浮く事で頭を都村と並べている。
川д川「……呼んだ?トソン」
(゚、゚トソン「御仁御二方、地獄へ案内して差し上げますわよ」
川д川「ん。串刺しでいいよね?」
両腕を突き出す形で此方へ向ける。
余った袖は垂れて手先を隠しているが、その形から見て指をピンと伸ばしているようだ。
川д川「行くよ……舞えよ氷柱よ……砕け散るまで輝き踊れ……」
瞬間、その腕を囲むように氷柱八本、両方で計十六本が現れる。
(゚、゚トソン「踊りなさい、焔が如く。
踊って踊って、尽きなさい」
放った。十六本の切っ先はすべて俺に向っている。
俺が息絶えれば彼女は重圧の魔術が使えるので、当然といえば当然だ。だが――
_、_
( ,_ノ` )y━・~「美和の遺した命の焔……そう簡単に絶えはせん!」
真紅の刀に、炎が宿る。上段に構え、やや右上に振りかぶり――
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/19(月) 00:57:42.83 ID:3rihzcBm0
- _、_
(#,_ノ` )y━・~「はあぁぁ―――ッ!!」
袈裟の一閃。軌道をなぞる様に、炎が踊る。
氷柱はその炎の舞踊に着弾すると、弾ける音と共に霧散する。
十六の霧散を聴いて、俺は都村に跳びかかった。
_、_
(#,_ノ` )y━・~「都村・トソン……!覚悟……ッ!」
対する都村は、全く微笑の表情を崩す事無く、
(゚、゚トソン「あらら、でも元気な御仁は嫌いでは御座いませんよ?」
上段から、頭を割る一撃。
それを横に構えた深蒼の刀で容易く受け止める。
きん、と予想以上に澄んだ音が響いた。
都村がその構えを徐々に縦に降ろしていく事で、戦いは鍔迫り合いに移行する。
(゚、゚トソン「おやおや、商人の出と窺っておりましたが……中々お強いのですね?」
_、_
(#,_ノ` )y━・~「今だ、フォックス殿!殺れ……!」
相手の目が俺にしか向いていない、今が好機。
爪'ー`)y‐「任せなよ、仕留めてやるさぁ」
空を切る音を、背後に聴く。
(゚、゚トソン「お強い御仁は好きですけど……私、愛を抱くまでには至りませんの」
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/19(月) 00:58:53.55 ID:3rihzcBm0
- (゚、゚トソン「だって」
腹部に、固い感触を覚えた。
_、_
(;,_ノ` )y━・~(脚……!?)
見れば、都村の右脚が、俺の腹に突きつけられている。
(゚、゚トソン「そんな御仁より強い私と、私より強い貞子に……惚れてしまうんですもの」
_、_
(;,_ノ` )y━・~「がっ――!?」
蹴りが入った。俺の体がいとも簡単に宙に浮いて、飛ばされてしまうほどの強さ。
加えて都村は刀を振り下ろす事により半ば浮いた俺のバランスをさらに崩す。
その刀を素早く持ち上げ、横に向けると、その刃に当たった何かが弾けて見当外れの方向に跳ねる。
それは距離を飛ぶと空間に波紋を残すように魔術陣を展開、しかしすぐ消えてしまう。
(゚、゚トソン「いかがで御座いましょう、私の武……美しいでしょう?」
爪'ー`)y‐「あーはいはい美しい美しい。ほれっちまァよ」
(゚、゚トソン「私への求愛は、私を押し倒してからして頂きたいものですね」
爪'ー`)y‐「なーに言ってやがる和製美人。僕は極東人には興味ねーんだ!
時代はやっぱりチャンネル系!僕はシルバーブロンドが好みだね!」
(゚、゚;トソン「仰っている事が、だいぶ違うようですが……」
爪'ー`)y‐「知るかタコ!ほんじゃ出番だハローさん!和製美人をぶっ潰し奉れ!」
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/19(月) 01:00:33.95 ID:3rihzcBm0
- 「了解致しました、マスター」
その澄んだ少女の声が聞こえたのと、漆黒の闇を二筋の銀が駆け抜けたのは同時。
その銀は都村の背後より出でて、襲い掛かる。
(゚、゚トソン「お喋りは、迂闊で御座いましたね」
都村は振り向きもせず、ただ一言、貞子、と名を告げる。
それに応じるように彼女の背後より氷の柱がせり上がる。
それを以って、銀の刃の投擲の防御と為した。
爪'ー`)y‐「前を見ないのは迂闊も迂闊!」
鉄の扉を殴りつける音にも似た発砲の連続、それは俺の後ろより響いた。
右寄りに三回、左寄りに三回、締めに両側から二回響いたそれは、都村の前面にせり上がった氷柱を穿ち、上部を砕く。
爪'ー`)y‐「技術部から貰った新型拳銃"HS-L6 ピンク・ローズ"……
いや、クソ重いねこれは。常人がぶっ放せるシロモンじゃないよ。っつーわけで、はい」
フォックス殿は両手に持ったそれを前に放り投げた。
くるくると緩やかな円運動を描くそれを空中で掴んだのは、
ハハ ロ -ロ)ハ「了解しました、マスター」
群青のドレスに、質量過多な白いフリルを覗かせた少女だった。
掴み、その銃口を向ける先は――都村の頭上。
フォックス殿の時とは比べようも無い速度での連続。
前後を自らの氷柱で塞いでしまっていた都村の逃げる先は、左右にしか無い。都村は左を選んだ。
上空より連続する銃弾の打撃が氷柱を叩き穿ち削り砕き散らす。かちかちと言う弾切れの音が、都村の命を救ったように見えた。
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/19(月) 01:02:10.23 ID:3rihzcBm0
- 少女は優雅に着地した。それこそ音も立てず、着衣も乱さず、だ。
恐らく彼女こそが――
爪'ー`)y‐「如何かな、僕の霊装」
(゚、゚トソン「成程。確かにチャンネル系で御座いますね。おおよそフォックス殿の趣味の結晶と御見受け致します。
恐らく……ホムンクルスか生体科学による人造人間の類。それも極めて、上等な」
爪'ー`)y‐「人を物みたいに判断するな、殺すぞ」
(゚、゚トソン「ともあれ……私の方の不利は否めない状況に御座いますね。
霊装使い一人に死霊術士一人、それに人造人間が一人の計三人。私には手に余る相手に御座います。然れど……」
都村の指運一つで、立ち上がることを忘れていた俺の上に六つの氷柱が生まれる。
冷気すら感じる距離。素早く横に転がり回避を試みるが、僅かばかり遅かった。
_、_
(;,_ノ` )y━・~「が……あああああッ!!!!!!!!」
右腕を一本が穿つ。正確には半分を削がれた、と言うべきか。
氷の持つ冷気と傷口の持つ熱気が交互に神経を殴打する感覚。
蹂躙される脳は何とか理性を保っている。
辛うじて腕を失う事態は避けたものの、利き腕にこの損傷。
転がりの勢いで立ち上がるが、刀を握る手もいまや震え、持ち上がらない。
着物の裾から垂れる血が、真紅の刃を伝い地に花を咲かす。
刃に、輝きを見た。
『拓郎殿……私如きの為にこのような……』
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/19(月) 01:04:08.42 ID:3rihzcBm0
- それは、懐かしい声。やわらかく包み込むような響き。
その感覚を、損傷した腕もまた覚える。
脈打つ熱気が退いている。見れば、包帯でも巻いたかのように薄紅い光の帯が幾重にも傷を包んでいた。
_、_
(;,_ノ` )y━・~「お……」
頬を伝うのは涙か。はてまた汗か。
『またお会いできて、嬉しゅう御座います、拓郎殿……』
_、_
(;,_ノ` )y━・~「お……お……」
瞼から熱い何かが溢れる感触を覚える。
ふと、後ろから何かに抱きつかれる。暖かい。
『御呼び下さい、私の名を……』
耳元で囁く声。
間違いない。
間違うはずも無い。
呼んだ。俺の婚約者、"舞巫女"の名を。
_、_
(;,_ノ` )y━・~「美和……。高崎美和……!」
彼女はにこりと微笑んだ。
顔を見なくても判る。雰囲気がそう告げている。
「お会いしとう御座いました、拓郎殿」
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/19(月) 01:08:11.23 ID:3rihzcBm0
- 右肩に置かれる手。それに俺の左手を重ねる。そこから、熱い何かが俺に流れ込んで来る。
刀を握る右腕が、持ち上がる。それにより縦に二分された世界。向こうに佇む都村を、睨み付けた。
_、_
( ,_ノ` )y━・~「本番はここからだ……都村トソン!」
その返しに、何と彼女はその深蒼の刀を鞘に戻した。
この戦いの中、一度も崩さなかった笑みをそのままに彼女は口を開く。
(゚、゚トソン「私の方の目的は十分に果たしました。四者……の相手は、確実に私の手に余る代物。
悔しけれども、ここは退かせて頂きます――たかし殿!」
(^p^)「おごっwwwwwwwにっぺりあまぐぇーwwwwwwwww」
まるで暗幕を剥がしたかのように、都村の背後から一人の男が現れた。
その男、無手なれども――凄まじい狂気を放っていた。
素人の俺にもわかるその狂気、それを察しての事か。ハロー殿、フォックス殿も共に動かず。
(^p^)「ぱしへろんだすwwwwwwwぼきはてんすwwwwwwwwwww」
刹那――男の背に光が生まれた。
蛹の背を破る蝶の如く、その光は広がりを見せ、巨大な二対四枚の翼を形作った。
男は都村を羽交い絞めにする。
(゚、゚トソン「それでは御機嫌よう。縁が有りましたら、またお会い致しましょう」
(^p^)「おっぎゃwwwwwwおうちにかえるのれすwwwwwwwwwww」
翼の運び一つだけで、彼は飛翔する。
天に昇る流星の如き速度を以って、夜を切り裂く光の翼。
予想を上回る出来事に呆然とした俺は、ただ立ちすくんで呆然としている事しかできなかった。
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/19(月) 01:10:44.58 ID:3rihzcBm0
- view.( ^ω^) Horizon Naito.
(;^ω^)「ありえねえお……」
特に何だ最後の件。無手の男からいきなり翼が生えて飛んでった?
よほど強力な魔術士か死霊術士か、はてまた霊装使いか。
そうであったならば……僕達には二人の霊装使いが敵として、居る訳か。
爪'ー`)y‐「ま、僕達は四人居るけどね」
立ち上がり、服から埃を払いながらフォックスさんが言う。
四人とは、僕と渋沢さんとフォックスさんと……後は?
lw´‐ _‐ノv「私」
え?とシベリア勢除く全員がシュー様に注目する。
ふふふ、とシュー様は面白そうに笑うと、一つ指を鳴らす。
すると、その背後に立体映像の如く女性が現れた。
あ、彼女さっきシュー様を襲おうとしてた……
川 ゚ -゚) 「クー・シベリア。結構前のシベリア王だったがわけあって今はこんな姿になっちまった」
lw´‐ _‐ノv「その割には楽しそうだよね。着せ替え自由とか言って毎日一人部屋でコスプレ大会したり。
と言うかそういう話じゃないんだけど今。姉さまちょっと自重してよ」
川 ゚ -゚) 「いや、どう考えてもお前が勝手に話を膨らませ――」
lw´‐ _‐ノv「えい」
ばし。
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/19(月) 01:19:42.95 ID:3rihzcBm0
- ξ゚听)ξ「成程。彼女もセカンドライフをエンジョイしているようね。
今度衣装の換え方とか教えてもらわなきゃ……」
(;^ω^)「そういう話じゃないだろ、今」
lw´‐ _‐ノv「それで……どう言う話だったっけ……?
ああ、思い出した。引き篭もりのニーソク王子を引っ張り出すのが難しいって話ね。
……ちょうどいいからフォックス君、ちょっと行って来てくれね?」
爪'ー`)y‐「ちょーっと待ったシュー様、幾ら俺が優秀だからって一人でやるわけには」
くず折れたまま腕の力だけでトリプルアクセルを決め華麗に立ち上がったフォックスさんが、シュー様に待ったをかけた。
ξ゚听)ξ「待ちなさいよ」
その言葉に食いついたのは、御嬢様だ。
ξ゚听)ξ「引き篭もりを引っ張り出してくるの位、一人でも出来るでしょ?」
爪'ー`)y‐「ところがどっこい、それが駄目なんだなぁ。
あのニーソク王子、厨房を丸ごとひっくるめても敵わないほどの機械技術を持っていてね、屋敷をトンデモに改造しやがった。
数日前に説得に出かけた兵が突然シベリア城の庭に落ちてきたとか、よくある事だよ」
ξ;゚听)ξ「は……何それ?そんな事、可能なの?」
爪'ー`)y‐「行って見てみればわかるさ。死にはしないだろうからレジャー気分で、どう?」
フォックスさんは右手中指に光を宿らせた。
そしてその光をインクに、空に『Fox』の名を描く。その下には『Horizon Naito』の『H』までを既に記していた。
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/19(月) 01:25:35.17 ID:3rihzcBm0
- (;^ω^)「え、ちょっと待って……僕今凄いおなかが痛くて」
ξ゚听)ξ「面白そうじゃない。行くわよホライゾン。フォックス、一名様ご案内よ」
爪'ー`)y‐「畏まりました、っと」
彼は止まっていた指で、一気に続け字を描く。
"Horizon Naito"の表記が出来上がるのに、一秒かからなかった。
_
( ゚∀゚)「おーし。じゃあ俺も行ってみるか。体動かしてたほうが、余計な事考えないで済みそうだしな」
爪'ー`)y‐「続けて一名、ごあんなーい」
さらに走らせる。
"George Nagaoka"が、僕の名前の下に描かれた。
爪'ー`)y‐「他にはー?シブタク君とかどうよ?」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「いや……俺は、この城のものに稽古をつけて貰いたいと思ってな……。
いずれ戦いになるなら、俺も力を貸さねばならんだろう」
爪'ー`)y‐「そうか。じゃあ頑張ってくれな。
……ちくしょー。一番いじめ甲斐のある奴が来ないとはねぇ」
ふと渋沢さんを見てみると、ホッと胸をなでおろしていた。
数日共に行動していた成果、扱いにはある程度慣れてきているようだったが、フォックスさんから見ればまだ遊び道具同然らしい。
爪'ー`)y‐「じゃあ大穴狙いで……シュー様、行く?」
lw´‐ _‐ノv「私が行きたくないからあんたに頼んでるんだけど……」
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/19(月) 01:35:12.02 ID:3rihzcBm0
- 爪'ー`)y‐「参った。女の子が一人もいないとか場が華やがないじゃない……」
ξ゚听)ξ『ねえホライゾンこいつ殺していい?殺していいよね?』
(;^ω^)『どうどう。落ち着いてくれお御嬢様』
lw´‐ _‐ノv「そもそもあそこに女の子を行かせることが間違ってるから……もう危険すぎて、ね?
……霊装のツンちゃんは死なないからいいとして」
最後の一言は此方をチラ見して付け加えたものであった。
中指立てて敵意をあらわにしていた御嬢様への配慮であったと思いたい。
爪'ー`)y‐「ほんじゃ、パシリは忙しいだろうから男で固めるとしたらこのメンバーで決定だね」
フォックスさんが指を一つ鳴らすと、空に光で書かれていた文字が消滅した。
lw´‐ _‐ノv「それじゃあ、いつ行く?私としてはあいつから機械技術搾取したいから出来るだけ急いで欲しいんだけど」
爪'ー`)y‐「下心丸見えな台詞は置いといて僕は今凄い疲れてるからそうだね……明日でいいかな」
(;^ω^)「え?明日ってお前……」
一応僕も今日この城に入ったばかりなんだけど……
まあ確かに三日位ずっと飛行機械の中で寝たりシベリア兵とカード遊びしたりしてただけだけど――フォックスさんはどうなんだ?
すっ飛んできた僕達と違って生身でほぼ同時刻にここにたどり着いているわけだから――疲れているか疲れていないかは解らない。
可能性は二つだ。何か良い乗り物を使ってきたかとんでもない魔術を使ったかどっちかだ。前者なら疲れてなくて後者なら疲れてないわけだが
ξ゚听)ξ『落ち着きなさいホライゾン。あんたの考えなんて空回りしてるだけで誰も気にしないし話は勝手に進むわよ』
(#^ω^)『解ってるよ!解ってるけど悲しいから言うなよ!』
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/19(月) 01:42:30.94 ID:3rihzcBm0
- 爪'ー`)y‐「いやーたのしそうだねぇ。というわけであした、おくりはいらないから」
lw´‐ _‐ノv「はいよ。がんばっていってきなフォックス」
(;^ω^)『いや気づいてる。あいつら絶対気づいてる』
ξ゚听)ξ『だーれがあんたの心なんか読めるのよ。気のせい気のせい』
フォックスさんは首だけこっちに振り向いて、満面の笑顔で言った。
爪'ー`)y‐「という訳で明日。とっとと準備しときな」
……僕に自由は与えられていないと、本当にそう思いました。
・ ・ ・
( ´ω`)「なーーーんてこったい……」
シベリアでの生活にと僕に与えられた城内の一室。
倒れこんだ僕をベッドは優しく迎え入れた。
材質がいいのは確かだが、こんな事で癒しを感じられる僕はきっと参っている。
( ´ω`)「なーーんで僕はこんな事に……そもそもなんで僕はここに居るんだお……」
ξ゚听)ξ「だいぶ前のあんた曰く、『御嬢様の為』でしょ?」
( ´ω`)「あーーそうそう。だけど正直この先暫くはラウンジと関与する気が全くしないお……」
ξ゚听)ξ「……本当難儀よね、あんたの人生って」
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/19(月) 01:51:12.14 ID:3rihzcBm0
- (;^ω^)「なななななな何が難儀だお!僕ぁまだ21歳だお!
この先いくらだっていいことはあるに違いないお!」
ξ゚听)ξ「……例えば?」
うっわ。御嬢様が思いっきり僕をジト目で見てくる。
良いだろう。そこまでナメ切っているなら僕のばら色の人生計画を見せ付けてやる。まずは――
( ^ω^)「とりあえずまずはラウンジぶっ潰すだろ」
ξ゚听)ξ「……その時点であんたが何歳になってるか、見ものだわね」
そんな皮肉を華麗にスルー!
( ^ω^)「んで素敵な嫁さん貰って――」
ξ゚听)ξ「……高々女一人娶った所で私があんたを手放"せる"と思う?」
スルー!
( ^ω^)「静かな場所で優雅に老後まで暮らすんだお!」
ξ゚听)ξ「ラウンジ叩き潰したあんたを憎む奴はいくらでもいそうなもんよねぇー。
中には『復讐だーー!』とか言って襲ってくる奴も――」
スルー……
( ゚ω゚)「できるわけねぇだろうがああああちくしょおおおおおおおお!!!!!!!!!!
僕が幸福を求める事の何が悪いんだ言ってみろよ御嬢様アアアアアア!!!!!!!!」
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/19(月) 01:53:26.06 ID:3rihzcBm0
- ξ゚听)ξ「……律儀ねぇ。御嬢様だって」
( ^ω^)「あんたの父親の教育の賜物ですお」
ξ゚听)ξ「……ま、叫んで少しは気分が晴れたんじゃないの?」
(;^ω^)「……いくら気分が晴れたところで現実はそう簡単に変わるもんじゃないと思いますけどね」
はぁ、と御嬢様は溜息。そのまま、彼女は僕の顔に自分の顔を近づける。
鼻先が触れ合いそうな距離で、彼女は顔を止めた。
ξ゚听)ξ「良い?」
『実体を持った霊体』である彼女は、少しも生前と変わらない。
例えば金をそのまま溶かして流したような髪、透き通るほど白い肌。メープル色の瞳。僕の視覚を、彼女が支配する。
ξ゚听)ξ「あんたがうじうじしてると、あんたから離れられないあたしも気分が悪くなるのよ」
( ^ω^)「……その目と耳、塞いで見たらどうですかお?」
ごつん。僕の額が彼女のそれと衝突する。
ぶつけてきたのは彼女。より近くなった目は、微笑みの色を湛えていた。
ξ゚听)ξ「下僕があたしに指図するんじゃないわよ」
いや、僕は一応世話係だったんだが……世間体から見たら大差は無いか。
そう。大差無いんだ。僕が生きていて、やろうとしている事は、殆どが彼女の為なんだから。
だから、はあ、と溜息をついて、表情を和らげ、言葉にした。
( ^ω^)「……ごもっとも、ですお」
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/19(月) 01:59:26.16 ID:3rihzcBm0
- _
view.( ゚∀゚) George Nagaoka.
与えられた個室は、マーシィの俺の部屋の何倍の広さだろうか。
ゆらつく暖炉の火に暖かく照らされた空間が、俺を迎え入れた。
_
( ゚∀゚)「はーーーーーーー」
思わず漏れる長い溜息。
天蓋付きの多きなベッドに倒れこむ。
羽毛の掛け布団に体が沈みこむ。
_
( ゚∀゚)「たまんねぇ……」
今俺は、おおよそ三日ぶりの安らぎを満喫している……!
「やあ長岡君」
突然ベッドの下より響いた、俺を呼ぶ声。
ふとそこを見てみれば、女の生首がベッドの下より覗いていた。
lw´‐ _‐ノv「よう」
_
(;゚∀゚)「シュー様……あんた、どこから出てきたんだ……?」
lw´‐ _‐ノv「いやいや、この城は私のモンですぜ?この程度の芸当、私が出来なくてどうする」
_
(;゚∀゚)「部屋を借りてる身でこれを言うのもなんだが、プライバシーってのを知らないのか?」
lw´‐ _‐ノv「いやいやいや、頼みがあんだよ、あんたにな」
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/19(月) 02:00:35.33 ID:3rihzcBm0
- よっこらせ、と声を漏らしながらシューさんが体をベッドの下より引きずり出す。
床に正座して、ベッドの下に手を伸ばし、板を引きずり出す。
彼女がそれを一つ叩けば、四隅から短い足が伸びる。ひっくり返せば卓袱台の出来上がりだ。
続いてベッドの下に手を伸ばして引きずり出したのは――
lw´‐ _‐ノv「まあ茶でも飲みながら話そうや」
_
(;゚∀゚)「なあ……このベッド、下に何が……?」
lw´‐ _‐ノv「フフフ……世の中にャ、知らねェ方が良ィモンってのがあるんですぜ……?
命の安全は保障しやすから、それでよかったと思え……?」
_
(ii ゚∀゚)(すっげー心配――ッ!)
此方の顔色を知ってか知らずか。卓袱台にクロスを敷き、ポット、ソーサー、カップ、スプーンと、次々とベッドの下から引きずり出し並べていく。
最後に茶葉の入った缶と湯の入った薬缶を引きずり出し、ポットに茶を沸かした。
lw´‐ _‐ノv「とりあえずすわんな」
_
( ゚∀゚)(これはシベリア流の常識これはシベリア流の常識これはシベリア流の常識これはシベリア流の常識これはシベリア流の常識……)
そう自分に言い聞かせ、シュー様が座っているのと向かいに、俺は座った。
茶が差し出される。広口のカップより薫る芳香が鼻腔にくすぐったい。
_
( ゚∀゚)「んで、何なんだい頼みってのは?」
lw´‐ _‐ノv「ああ、簡単な事だよ。なに、君達の為にもなるだろうし、悪い話ではないと思うよ」
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/19(月) 02:01:24.28 ID:3rihzcBm0
- _
( ゚∀゚)「なーるほど……確かにそりゃいい考えだ」
彼女が持ち出してきたのは、兵の訓練を俺に任せるという話だ。
確かに俺は長岡騎士団現団長で、騎士団共々戦争経験者だ。
現在のシベリアに足りていない経験を、俺に求めてきたわけだ。
lw´‐ _‐ノv「何せうちの兵、剣の振り方すらろくに出来てない奴まで居るんだから」
_
(;゚∀゚)「そりゃあまた指導のし甲斐がありそうな……。
明日は何とかとか言うニーソクの王子を引っ張り出すのに行かなきゃならないから、その後になるがな」
lw´‐ _‐ノv「そうだね。まあ時間は結構あると思う。
二年……否、一年。タシロ島の全勢力は耐えてくれるかな?」
_
( ゚∀゚)「どうだかな。確かに俺達はたった一日で負けたが、相手の出方が見えなかったところによるものが大きいな。
特にあの砲撃兵器。迂闊に野戦を仕掛けたら、あれですっ飛ばされるのが関の山だ。
マーシィを獲ったアスキーは北進する心算だろうが、早いところアレを壊されれば、後は凌いでくれれば……一年。
荒巻老が北へ退きながら戦ってくれれば、半年の加算は見込める……かも知れない」
実際、俺の見た限りあの軍で恐ろしいのはギコ・アスキーの戦闘能力と砲撃兵器くらいなものだ。
死霊術士とやらが、ロマが殺したので全部ならば、だが。
マーシィから、タシロ島最北ランナウェイまでの城の数は、五個ほどだったか。
荒巻老がいくつの城を過ぎてしまったかは解らないが、今からでも遅くは無いはずだ。
_
( ゚∀゚)「……今からタシロ島に伝令を送る事は可能か?」
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/19(月) 02:02:05.08 ID:3rihzcBm0
- lw´‐ _‐ノv「向こうに魔術を使える人が居ないなら鳥になるけど。でもどうして?」
_
( ゚∀゚)「荒巻老に働いて貰おう。ついでに向こうの状況も知りたい。
向こうとの定期連絡がつけば、色々と便利だろう」
成程成程、とシュー様は頷く。
茶を啜り、かちゃりとカップをソーサーに下ろす。
lw´‐ _‐ノv「ま、それもやってもらおうとは思っていたけどね」
またまた彼女はベッドの下に手をもぐりこませ、何かを掴み引きずり出す。
卓袱台の真ん中に置かれたのは紙とペン、インクと……
_
( ゚∀゚)「何だこれ……懐中時計か?」
lw´‐ _‐ノv「厨房の技術班が開発した遠隔通信装置とか言う奴。
通信魔術の応用で、これを持っていれば魔術を使えなくても遠くの人と話が出来る」
_
( ゚∀゚)「はぁ……便利になったもんだな」
lw´‐ _‐ノv「ま、とりあえず文章書いて、終わったら通信テストがてらにそれ使って私に教えてよ。
んじゃ、私はこれで帰るね」
カップを一気に傾け、茶を流し込むと、彼女は立ち上がってさっさとドアのほうまで歩く。
ノブに手を伸ばした瞬間、何かを思い出したかのようにあっと声を上げてこちらを向いた。
lw´‐ _‐ノv「それ、終わったら外に出しておけばいいから」
――( ^ω^)常夜の世界のようです opening-4 end.
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/19(月) 02:02:46.33 ID:3rihzcBm0
- _
(;゚∀゚)「あれ?終わり?」
('A`)「どうもそうらしいですね」
ミセ*゚ー゚)リ「それじゃあ恒例の次回予告です……」
白銀の平原に聳え立つ、謎のからくり屋敷!
内藤一行は、そこで恐ろしいものを目にする……!
ケース1.ホライゾン・内藤の場合
(;^ω^)「ちょ……何この部屋、何かマネキンが一杯居るんだけど……」
ケース2.ジョルジュ・長岡の場合
_
( ゚∀゚)「何だこれ?何でそこらじゅうに糸が張ってあるんだ……?」
ケース3.フォックスの場合
爪'ー`)y‐「じゃー僕はみんなの為にスイーツ(笑)でも買ってくるから、ハローちゃん後はお願いね」
ハハ ロ -ロ)ハ「了解しました、マスター」
そして、辿り着いた先で彼らが見たものは一体……!?
「やあ、遠路はるばるご苦労様。僕がこのからくり屋敷の主にして失われしニーソクの正当な王位継承権所持者……ショボン様さ!!!!」
――次回、( ^ω^)常夜の世界のようです 序章五話 『引き篭もりの王子』
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