- 11 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/09/25(日) 01:43:34 ID:vLPayP9s0
- 歌音つーは一人だった。
いつ如何なる時も。
誰も助けてくれる人なんていないし、ましてや。
彼女を気にかける人すらいなかった。
教室の隅で、ぼうっと虚空を眺めているような特徴のない生徒。
それが教師間の認識であった。
しかし、彼女はそれを苦痛に思う事はない。
すべてが事実であり、当たり前の事。
それに対して、苦痛を持つほうがどうかしている。
そんなスタンスを貫いてきていたからだ。
他人と関わらず、一人で時間を無為に過ごす。
そんな生徒は当然、奇異の目で見られる。
こんな、お嬢様学校では特に。
自然と、彼女を排斥する行為が行われるようになる。
- 12 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/09/25(日) 01:44:45 ID:vLPayP9s0
- 放課後、誰もいない教室で歌音つーは、またかという面持ちで自分の机を眺めていた。
切り刻まれた鞄。至る所に、落書きが施された教科書。画鋲の張り付いた椅子。
何度目だろう。指を折り、両手で足りなくなったところで数えるのを止めた。
どうでもいい。
ぼう、と一人で立っているところに声がかかった。
「何をしてるの?」
(*゚∀゚)「別に、何も」
何もしていない。何も。
「そ、じゃあ、それは?」
声が言うそれは、目の前の惨状のことだろうか。
(*゚∀゚)「いつものことだよ」
「へえ」
- 13 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/09/25(日) 01:45:30 ID:vLPayP9s0
- まるで興味がないと言った口振り。
珍しい、そう思った。
だから。
(*゚∀゚)「あんた、誰」
名前なんかを尋ねていた。
自分に、無関心な人間がまだいたのか、と。
「私?私は」
(*゚ー゚)「為人しぃ」
(*゚ー゚)「貴女は?」
生気のない声色。透明な揺らぎの音。
(*゚∀゚)「歌音つー」
こうして、彼女と出会った。
と、言っても会うのは放課後だけといった、希薄な関係。
- 14 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/09/25(日) 01:46:19 ID:vLPayP9s0
為人しぃと出会い、数ヶ月が経とうとしていた。
(*゚ー゚)「今日は何があったの?」
気遣うようではなく、かといって嘲笑うようでもない。
(*゚∀゚)「なんにも」
泥だらけのジャージと、生ゴミを滴らせた上履き。水着で包まれた、汚物の塊。
引き裂かれたスカートには、ペンキがこぼしてあった。
だけど。
(*゚∀゚)「なんにもない」
何もなかった。当たり前の事。
(*゚ー゚)「そう」
心底どうでもいい、為人しぃは何にも興味が無い。
(*゚ー゚)「ねえ、お願いがあるんだけど」
彼女はまた、無関心に言う。
(*゚∀゚)「お願い?」
珍しい事だ。
- 15 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/09/25(日) 01:47:01 ID:vLPayP9s0
(*゚ー゚)「私の為に死んでくれない?」
.
- 16 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/09/25(日) 01:47:43 ID:vLPayP9s0
- (*゚∀゚)「別に?いいけど?」
(*゚ー゚)「ありがと。じゃあ、屋上に行きましょ」
そう言って、為人しぃは手を引き屋上へ向かった。
(*゚ー゚)「これ、持っていって」
手渡されたのは一枚の紙。
何の変哲も無い。
(*゚∀゚)「なに、これ」
(*゚ー゚)「お守り。地獄行きのね」
(*゚∀゚)「へえ」
それをくしゃりと丸め、ポケットに押し込んだ。
フェンスの向こうの地面が、やけに近く見える。
(*゚ー゚)「貴女はここから、飛び降りるの」
(*゚ー゚)「それで、終わり。何もかも」
運動神経は悪くない。
ひょいと、乗り越えたフェンスの先で、歌音つーは最後を聞いた。
(*゚ー゚)「じゃあね、ばいばい。大嫌いだったよ」
(*゚∀゚)「ああ、あたしも嫌いだったよ」
そして、踏み出す。
最初で最後の一歩を。
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