(´・ω・`) ホムンクルスは生きるようです
525名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 19:29:56 ID:BKkRiilc0












13 ホムンクルスと同盟の条件

526名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 19:32:22 ID:BKkRiilc0

セント領主家の東側にあたる、クナド領主家。
領地は狭く、暮らしている民のほとんどは農民である。

領主のクナド氏が錬金術を用いて改良した、
新種の野菜や麦を育てることで暮らしていた。

交易のために整備された場所に、侍の工房はあるそうだ。
そこで今後の策を練るため、僕らは広い道を歩いていた。

(´・ω・`) 「いい所ですね」

〔 !゚ U゚!〕 「そうだろう? かなり気に入っている。傭兵として色々な領主に雇われてきたが、
        この土地にだけは刀を向けたことがない」

(´・ω・`) 「工房まではあとどのくらいですか?」

廃村にあった教会を発って既に五日。
最も近い村まで徒歩で歩き、そこから馬を使ったが予想以上に時間がかかっていた。
一頭だけ連れていた馬は、教会の町に入ろうとすると暴れて手に負えなかったため、
逃がしてしまっていたからだ。

無理をしてでも近くに繋いでおければよかった。
男二人ではスピードは出せないだろうけど、徒歩よりはずっと早い。

527名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 19:34:47 ID:BKkRiilc0

歩いている間も戦争の準備がされていると思うと、焦りが生まれてくる。

〔 !゚ U゚!〕 「落ちつけ、青年。戦争はまだ起こらないよ。
        セント領主家が兵を集めるためには、それなりに時間が必要だからな」

侍はそんな気持ちを簡単に見抜いてくる。
傭兵というのは、こうも鋭いものなのか。

(´・ω・`) 「僕らも準備が必要です。兵を起こされたら二人では戦えませんし」

〔 !゚ U゚!〕 「騎士教会には予め連絡をしてある。教会に行く前にな」

(´・ω・`) 「実際戦争になったら勝てると思いますか?」

騎士教会の戦力は各地に散らばっているせいで、大きいとはいえない。
錬金術師との共同戦線はそれを補って余りあるはずだ。

だけど、大規模な戦争を経験したことのない騎士も多く、
実際の所、どうなのだろうか。

僕自身も戦争に関しての知識は本で読んだ程度しかない。
役に立つかどうか危ういところだ。

528名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 19:38:12 ID:BKkRiilc0

〔 !゚ U゚!〕 「厳しいだろうな。普通の人間相手の戦争ならばともかく、
        あの状態の戦士に勝てるとは思えない」

あの状態とは、三日前に教会で戦った狂戦士達のこと。
錬金術による細胞の活性化、変化、強化を受けていた。

(´・ω・`) 「あの状態で連携が取れるのだとすれば相当厄介ですね」

教会での四人……いや、四体は協力するようなそぶりは見せていなった。
現段階では、力を与える代わりに思考力を奪うのではないかと予測している。

〔 !゚ U゚!〕 「あくまで、騎士だけだったらの話だ。
        実際の戦争は、傭兵や各領地の正規兵も参加するだろうし、
        天候や地形、戦術にもよって変わってくる。
        少し、この辺の話をしようか」


北側が海に面したセント領主家の周りは様々な国家に囲まれている。

と、ハートクラフトは話を始めた。

529名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 19:41:17 ID:BKkRiilc0

東の北側は小さなクナド領主家。
面積でいえばセント領主家の5分の1ほど。
常備軍はおらず、領内の安全維持は騎士教会から派遣された百余名が行っている。


東の南側にはオラト領主家。
クナド領主家と同じ大きさ程度しかなく、同様に農耕が盛んだ。
昔は同じ国だったこともあり、交流は盛んに行われている。


南に面するのはセント領主家ほどではないが、それなりに大きいグラント王侯領。
王侯貴族が暮らす由緒正しき土地で、周囲の国の中では最も大きい常備軍を誇る。

そのさらに南は深い森と、いくつもの山に遮られて交流がほとんどない。


西に集まっているのが、数十年前に圧制から解放されたクルラシア自治区。
今はほとんど分裂してしまい、各地域や村単位で存続している。
代表者達が集まって何とか国としてまとまっているってところだ。


(´・ω・`) 「それならば、他国と協力して、セント領主家を抑え込むのがいいですね」

大雑把ではあったが、おかげでこの辺りの国の状況を知ることができた。
隠れ里で調べてくればよかったのだが、そこまで気が回らなかった。

530名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 19:43:27 ID:BKkRiilc0

〔 !゚ U゚!〕 「そうだろうな。海に面したあの国は逃げ道もない。
        拙者はこの後、協力を求めに行くつもりだが……」

(´・ω・`) 「協力を求めるのは他の兵士にさせて、直接城に行くべきでは?」

〔 !゚ U゚!〕 「戦争の同盟を申し入れるのに、そこらの人間をやるのでは信頼に欠ける。
        それにな、王侯領は自分達だけで戦えると信じている。
        彼らは拙者達の協力を断るつもりで話を進めるはずだ」

グラント王侯領の頭の固い貴族達は、
錬金術を忌避し領内での錬金術を禁じている。

それでは、セント領主家の軍に対抗できないだろう。

〔 !゚ U゚!〕 「彼らの目を覚まさせてやり、同盟を組まなければならない」

以前、僕は何の気なしに使った錬金術で、数週間を牢に繋がれることになった。
その時に軽く暴れたのもあり、できれば行きたくない。
僕を覚えているものはもういないだろうけど。

531名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 19:47:32 ID:BKkRiilc0

(´・ω・`) 「だったら、僕一人で……」

〔 !゚ U゚!〕 「いや、それは駄目だ。その話はもうしたはずだぞ」

(´・ω・`) 「僕にどうしろと言うんですか……」

〔 !゚ U゚!〕 「拙者と一緒に三国を回り、同盟を作る」

(´・ω・`) 「そんな時間があるのですか? モララルドを早く助けないと……」

王侯領の貴族達と交渉できる余地があるとは思わないし、
クルラシアは自由な民の集まりで、各地域の代表による合議制のはずだ。

解放を指揮した女性が絶対的権力を持っているとの噂もあるが、
所詮噂の域を出ない。

〔 !゚ U゚!〕 「セントショルジアト城には兵も詰めている。
        普通に正面から行くことは不可能だよ、青年」

(´・ω・`) 「わかっていますが……」

〔 !゚ U゚!〕 「いいか? 同盟成立後、クルラシアからセント領主家に向かう。
        その頃には恐らく兵力が集中されているだろう。
        海沿いにあるセントショルジアト城からは兵力が離れるはずだ。
        その隙に乗り込み、領主を捕らえればいい」

532名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 19:52:04 ID:BKkRiilc0

〔 !゚ U゚!〕 「ああ、見えてきたぞ」

話に夢中になっていたせいか気付かなかった。
いくつもの野営用テントが並び、せわしなく馬と人が行き来している。
クナド領内で最も活気のある場所だそうだ。

〔 !゚ U゚!〕 「ここが俺の工房」

中心部だけは一時凌ぎではない建物があった。
その中の一つで、看板の掲げられていた家の扉を開けた。

どうやら鍵すら閉めていないらしい。

〔 !゚ U゚!〕 「なに、盗むような人間はいない。
        それに……」

(*゚ー゚) 「あ、おかえりなさいお師匠様」

〔 !゚ U゚!〕 「見張りを置いてある」

奥から出てきたのは一人の少女だった。
腰には体格に合わない大きな剣をぶら下げている。

(*゚ー゚) 「お客様ですか?」

〔 !゚ U゚!〕 「ああ、この青年と話がある。奥の部屋を使うがいいか?」

(*゚ー゚) 「ええ、綺麗にしていますので。ごゆっくりどうぞ」

533名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 19:57:15 ID:BKkRiilc0

案内されたのは、工房と繋がっている生活空間だろう。
味気ないテーブルが一つと、椅子が四脚。
二階に上がる階段が部屋の奥にあった。

少女は火のついた暖炉から、お湯を持ってきて茶を入れている。

(´・ω・`) 「少し……意外でした」

〔 !゚ U゚!〕 「少女一人に留守番をさせてたことか? それとも弟子が少女だったことか?」

(´・ω・`) 「両方です」

職人と呼ばれる人間は、疑り深く頑固だというイメージがあった。
僕が長い間旅をしてきた間にできた経験則だ。

この男には、それが何一つ当てはまらない。

〔 !゚ U゚!〕 「んーまぁ、こうみえてしぃの腕はいいからな。錬金術も、剣も。
        結構楽しいもんだぜ、後進の育成。青年ならわかると思うが」

それはモララルドのことを言っているのだろうか……。
彼は僕の弟子ではなかったが、そうは見えただろう。

534名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 19:58:47 ID:BKkRiilc0

〔 !゚ U゚!〕 「おっと……まぁあの少年を助けるためにも、俺達にはやらなきゃいけないことがある」

(´・ω・`) 「……ええ」

〔 !゚ U゚!〕 「これがこのあたりの地図だ」

セント領主家の城がある海に面する所は、切り立った崖の上だ。
これは事前の情報通り。

セント領主家とクルラシア自治領の間には大きな川が流れている。
他はほとんどが平坦な地で、特に障害はない。

グラント王侯領のさらに南は巨大な山脈によって切り離されている。
同じ大陸内とはいえ、行き来している人間はほとんどいないだろう。

(*゚ー゚) 「お師匠様、お手紙が届いています」

〔 !゚ U゚!〕 「ああ、…………ほう!」

中身を流し読みし、こちらに便箋を投げてよこした。
汚い字で非常に読みにくい。

535名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 20:02:22 ID:BKkRiilc0

(´・ω・`) 「セント……領土内に……動き……あり……?」

〔 !゚ U゚!〕 「秘密裏に兵士募集。配分されている武器に異変なし、だと」

(´・ω・`) 「あなたは……教会に行く前から調査を?」

いや、この男は何も知らずに騎士教会から派遣されてきたはずだ。
予め密偵を送れるわけがない。

〔 !゚ U゚!〕 「ああいや……これは、錬金術師からの連絡だ。
        騎士教会からの依頼があったと同時に、隠れ里から連絡が届いた。
        セント領主家の動きに注意しておけ、ってな」

(´・ω・`) (そんなことをするのは……初代か……)

まるで引き合されたかのようだ。
この騒動すら、全てが初代の掌の上な気がしてきた。

流石にそれはあり得ないか……。

〔 !゚ U゚!〕 「まぁ、そういうわけで、動きが大々的になるまではまだ余裕がある。
        どうだ、拙者の案に乗ってくれるか?」

(´・ω・`) 「……わかりました」

〔 !゚ U゚!〕 「まずは、クナド様に話をしに行く。すぐ近くに住んでいるからな、ついてこい」

536名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 20:12:39 ID:BKkRiilc0

思わず飲みかけのお茶を吹きこぼしてしまった。
差し出された布で口周りを拭きながら言う。

(;´・ω・`) 「初対面の僕を連れていくのですか!? それじゃあ話がしにくいでしょう?」

〔 !゚ U゚!〕 「クナド様はそんな狭量な男ではない。それにな、青年が来た方が早いと思うぞ」

(´・ω・`) 「……わかりました、では行きましょうか」

〔 !゚ U゚!〕 「しぃ! また留守を頼む。じきに戻るが」

(*゚ー゚) 「はい、お師匠様。お気をつけて行ってらっしゃいませ」

クナド領主がいるという屋敷は予想以上に近かった。
何せ侍の工房と同じ中央広場に面していたからだ。

屋敷はとても小さく、少し金がある者であれば建てられるほどの大きさしかない。
モララルドの家の半分もなかった。

(´・ω・`) 「ここが……?」

〔 !゚ U゚!〕 「ああ、入るぞ」


540名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 21:17:18 ID:BKkRiilc0

侍は二度のノックをするだけで返答も聞かず中に入っていく。
玄関で待っているわけにはいかず、その後に続いた。

クナ ゚-ド 「久し振りじゃのぉ、ハートクラフト」

〔 !゚ U゚!〕 「クナド様もお元気なようですね」

クナ ゚-ド 「いやぁ……最近は腰が言うことをきかなくなってきてなぁ。
       様はつけんでよい。して、後ろの男はだれじゃ?」

(´・ω・`) 「お初お目にかかります、錬金術師のショボンと言う者です」

一人この場で浮いている空気を感じつつも、片膝を立てて頭を下げた。
領主に対する挨拶はどの国でもこれで、文句を言われたことはほとんどない。

クナ ゚-ド 「おいおい、頭なんか下げるなよ。堅苦しくせんでよい。錬金術師! これはまた! 
       いい客を連れてきてくれたものじゃ、」

(;´・ω・`) 「はい…………」

かつて会ってきた領主達とは似ても似つかない。
この土地で、僕の価値観は二度も大きく破壊された。

541名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 21:19:13 ID:BKkRiilc0

クナ ゚-ド 「どのような研究をしておるのじゃ?」

(´・ω・`) 「ほとんどです。ほぼすべての分野の錬金術を修めています」

胡散臭い話だが、事実なのでしょうがない。
この言葉を信じない支配者たちに、今まで何度実演をさせられたか。

クナ ゚-ド 「ほう! ほう! それでは作物に関する錬金術も知っているということか?」

(´・ω・`) 「はい、ある程度は」

クナ ゚-ド 「それはいい! 是非話を聞かせてほしいものじゃ」

そういえば、領主もまた錬金術師だったということを思い出す。
この人は、きっと惜しむことなく自分の研究をさらしてきたのだろう。
警備の緩やかなところを見ても、民衆に支持されているに違いない。

〔 !゚ U゚!〕 「それなのですが、またの機会にしていただきたいのです」

クナ ゚-ド 「なぜじゃ?」

〔 !゚ U゚!〕 「セント領主家が戦争の準備をしているとの情報を得ました。
        今より、周辺国オラト、グラント、クルラシアの三国に同盟を結びに行きたいと思います」

542名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 21:25:12 ID:BKkRiilc0

クナ ゚-ド 「その情報は確かなのじゃな?」

〔 !゚ U゚!〕 「間違いありません」

クナ ゚-ド 「ならばに任せる。儂にできるせめてものこととして、親書を用意する。少し待て」

侍は領主より相当の信頼を得ているのだ。
だからこそ、話はこれほどまでに進む。

出来過ぎた偶然だが、おかげで僕は助かった。
ならば、この運の良さを享受すればいい。

クナ ゚-ド 「これでよいか?」

手渡されたのは三枚の手紙。
親書だという証拠に、王印で封をされている。

〔 !゚ U゚!〕 「ありがとうございます。それでは行ってきます」

クナ ゚-ド 「うむ、気をつけていくように。こちらもできることはさせてもらう」

〔 !゚ U゚!〕 「それでは」

(´・ω・`) 「失礼します」

僕らは領主の前から退出した。
一つ扉を開ければ、すぐ日の光を浴びることになる。

543名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 21:27:07 ID:BKkRiilc0

〔 !゚ U゚!〕 「準備は整った。それでは一旦工房に帰って物を取りに行く。
        何か必要なものがあれば青年、やるが。
        この先武器が必要になってくるだろうからな、一本くらいなら好きなのをやろう」

(´・ω・`) 「いえ……特には」

〔 !゚ U゚!〕 「遠慮しなくてもいいが……まぁ要らんと言うならいらんのだろう」

侍は工房の奥へと進み、旅の支度を整えていた。
剣こそいらないが、僕もいくつかしておくべきことがある。

(´・ω・`) 「えっと……しいちゃん? 便りを書きたいんだけれど」

(*゚ー゚) 「しぃって呼んでください。そちらの方が慣れてますので。
      急ぎの手紙ですか?」

(´・ω・`) 「いや、届けばいい、くらいかな」

(*゚ー゚) 「それでしたら、私に預けてください。
      本職の方にお渡ししておきます」

国境を超える手紙のやり取りは、それを専門に配達する職業がある。
理論上は、お金を払えばどこまでも届けてくれることになっているが……。

544名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 21:29:26 ID:BKkRiilc0

(´・ω・`) 「隠れ里には届くのかな?」

(*゚ー゚) 「うーん……ちょっとわからないです」

それもそうか。
錬金術師しか入れないのだから、一般の配達人では無理だろう。

(*゚ー゚) 「あ、でも、錬金術師でも手の空いている方はいるでしょうし、お願いしておきますよ」

(´・ω・`) 「それは助かる。これは代金ね。お釣りが出たら貰っておいていいよ」

足りないことが無いように、かなり多めに渡す。
それを受け取ってしぃは随分驚いていた。
普段はお金の管理をしていないのだろう。

(;゚ー゚) 「こ、こんなにもらえません。半分でも足りると思います……」

(´・ω・`) 「気にしないで。気持ちの分も入ってるから」

(*゚ー゚) 「ありがとうございますっ!」

(´・ω・`) 「紙とペンはあるかい?」

545名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 21:30:51 ID:BKkRiilc0

しぃに渡された紙に思いついたことを書き込んでいく。
手紙と言うよりは定時連絡になるだろうけど、それでも構わないだろう。

僕の言いたいことは伝わるはずだ。

   「  ブーンへ 

      鍛冶錬金術師の人と合流することに成功した。
      二人でオラト、グラント、クルラシアの三国を周り、
      オラトを含む四国同盟を成立させることに決まった。
      鍛冶錬金術師の話によると、セントの兵配備はまだ始まったばかりで、
      時間はあるとのことだ。配給されている武装も通常のものらしい。
      最悪の時は頼んだよ。それじゃあ、また。
                                                    」

(´・ω・`) 「それじゃ、これをお願い」

(*゚ー゚) 「はい、確かにお預かりいたしました」

〔 !゚ U゚!〕 「ショボン、準備はできたか?」

奥から出てきたハートクラフトは装備を少し変えていた。
それに加えて、布でまかれた長物を持っている。

546名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 21:34:14 ID:BKkRiilc0

〔 !゚ U゚!〕 「ん、これか」

そちらを見ていることに気付かれた。
戦うには大きすぎるが、それ以外の用途があるとも思えない。

〔 !゚ U゚!〕 「まぁ、あとで教えてやる。
        それより出発しようか。時間があるとはいえ無駄にするのは惜しいしな。
        ああそうだ、それとしぃ」

(*゚ー゚) 「はい、お師匠様」

〔 !゚ U゚!〕 「彼らに連絡を取っておいてくれ。もしからしたら力を借りることになるかもしれん」

(´・ω・`) 「彼らとは?」

〔 !゚ U゚!〕 「傭兵仲間のことだ。戦争が起こるかもしれないんだ。
        備えておくに越したことはない。さぁ、行こうか」

(´・ω・`) 「はい」

後は馬を手に入れるだけだ。
安くはないが、毎回馬を買っては捨て置いているので、だんだん感覚が鈍ってきた。

(´・ω・`) (何かあっては逃がしてばっかりだからなぁ……)

547名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 21:36:26 ID:BKkRiilc0

そろそろお気に入りの馬でも連れてみようか。
錬金術で肉体強化を施して……。

人体禁術はあくまで人間に対してだけだから、問題はないだろう。
もっとも、考えてみるだけで実行する気はさらさらないが。

体の大きな哺乳類となると、やはり抵抗を感じる。

(´・ω・`) 「さぁ、買いますか」

〔 !゚ U゚!〕 「かっはっは、金を工房に忘れてきた。後で返すから済まんが出しといてくれ」

傭兵業でかなり稼いでいるはずだ。
その言葉に嘘はないだろうし、馬二頭程度の出費なら大した問題ではない。

厩舎で馬を二頭買い、町の外に向かって走る。

(´・ω・`) 「向かう先は?」

〔 !゚ U゚!〕 「オラト領主家だ」

地図を思い出しながら、整備された広い街道を並走する。
このまま道沿いに進めば、オラト領に入ることができたはずだ。

548名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 21:38:52 ID:BKkRiilc0


〔 !゚ U゚!〕 「領主がいるのはちょうどクナドとグラントの間ぐらいだ。
        馬で飛ばせば一日ほどで着く」

(´・ω・`) 「急ぎましょう……」

〔 !゚ U゚!〕 「馬をつぶさない程度に、だ」

僕らはオラト領に向けて風のように馬を走らせた。



・  ・  ・  ・  ・  ・

549名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 21:42:19 ID:BKkRiilc0

ただひたすらに南進していた。
半日ほどの時間が経ち、日が落ちて行く。
月夜は明るく、障害物もないためまだ進めるはずだ。
そんなことを考えていると、一歩前をいく侍から声がかけられた。

〔 !゚ U゚!〕 「そろそろオラト領に入る。先程簡単な説明をしたが、もう少し詳しく話しておく。
        こことクナドは元は同じ国だった。
        別れた原因はある日の喧嘩だったそうだ」

(´・ω・`) 「領主の相続でもめたのですか?」

よくある話だ。優秀な兄弟を持ち上げようとした家臣団がいたり、
愚者を祭り上げて都合よく支配しようとしたり。

〔 !゚ U゚!〕 「いや、父と母の喧嘩だ。父は優しい兄に、母は賢い弟にそれぞれ領土を継がせようとした。
        家臣団も両者に分かれて内乱直前までいったそうだ。
        そこで弟が分割統治を提案し、兄がそれを承諾した」

(´・ω・`) 「それは……不運な兄弟でしたね」

〔 !゚ U゚!〕 「今では仲を戻しているが、国としてうまくまとまっているのでそのままにしているそうだ。
        おそらく、協力を申し出るのは容易いことだと思うが……」

国境だと言われた場所は、柵一つすらなく、境界線だとは俄かに思えない。
国としての雰囲気も同質なものを感じる。

550名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 21:43:51 ID:BKkRiilc0
(´・ω・`) 「領主の居場所まではどのくらいですか?」

〔 !゚ U゚!〕 「もう少し走れば小さな城が見えてくるはず」

昼間に飛ばしたおかげで、予定よりも早くつくことができそうだ。
話をできるのは早い方がいい。

(´・ω・`) 「謁見は翌朝になりますか?」

〔 !゚ U゚!〕 「いや、夜にはできると思う。弟も高名な錬金術師でな、研究内容は金属関係だ」

(´・ω・`) 「金属ですか。兄が品種を改良し弟が道具を作る。
       なかなか息のそろった兄弟ですね」

行き来の自由にできる国境は、交流を容易にし、お互いを発展させる。
二つの国に分かれたままであれば、競争を煽れるだろうし、
意外といい統治のしかたなのかもしれない。

〔 !゚ U゚!〕 「あれが城だ」

小高い丘の上に小さな古城と、その周りに城下町と呼べる程度の家が広がっている。
元は戦争の拠点だったのか、朽ちた高い外壁が残っていた。

城の周りには篝火が焚かれ、警備の兵もいるようだ。

〔 !゚ U゚!〕 「……クナド国からの遣いだ!」

大声で兵の注目を集める。
そうすることで、敵と味方の区別をつけているのだろう。

551名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 21:45:47 ID:BKkRiilc0

「お久しぶりです、ハートクラフト様」

〔 !゚ U゚!〕 「ああ、オラト様に話が合って来た。通してもらえるか?」

「ええ、すぐに」

そのまま街の中に通された。
寝静まった家の間を、馬を降りて歩く。

城下では、許可を得たもの以外馬に乗ることを禁止しているそうだ。
城門に着いた時、そこで先程の男が待っていた。

「お会いくださるそうです。どうぞ、そのまま中にお進みください」

ゆっくりと、城門が開かれていく。
金属の錬金術を研究しているとの話通り、門は見たことのない素材でできている。

大まかな予測はつくが、黙っていた方がいいだろうな。
余計なことをいって機嫌を損ねるわけにはいかない。

正面階段を上って、そこに飾りたてのされていない玉座があった
そこにクナド王と重なる容姿の老人が座っている。

〔 !゚ U゚!〕 「お久しぶりです、オラト様」

オラ ゚-ト 「よく来てくれた、今日は何の用だ?」

552名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 21:46:49 ID:BKkRiilc0

〔 !゚ U゚!〕 「少々込み入ったお話になるので、人払いをお願いしたいのですが」

オラ ゚-ト 「よい、下がれ」

家臣団は不平のひとつも言わず、奥の部屋に下がっていった。
それだけ信頼が厚い領主なのだろう。

ハートクラフトに対する信頼も言わずもがな。

〔 !゚ U゚!〕 「セント領主家が侵略戦争を起こすつもりのようです」

オラ ゚-ト 「ほう……その情報はどこから?」

〔 !゚ U゚!〕 「ここにいる錬金術師が証明できます」

オラ ゚-ト 「其の方か」

クナド王と違い喋り方には重みがある。
厳しさではなく、見定めている、といった感じか。

(´・ω・`) 「お初お目にかかります。錬金術師のショボンと言います」

オラ ゚-ト 「ふむ……どの分野を研究している?」

(´・ω・`) 「広範囲にわたって研究しています。特定の分野に傾倒しているわけではありません。
       必要でしたら、お見せいたしますが」

553名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 21:48:17 ID:BKkRiilc0

オラ ゚-ト 「……よい。セント領主家との話を聞かせよ」

それは面倒はなくていい。
僕は事件の概要を簡潔に伝えた。

オラ ゚-ト 「ふむ……信じよう。して、同盟か」

〔 !゚ U゚!〕 「はい、こちらがクナド様からの親書になります。どうでしょうか?」

侍が差し出した親書を受け取る。
一目見ただけで、内容を理解したようて、手紙は隅の机の上に置かれた。

オラ ゚-ト 「確かに兄上の文字だ。……結論から言うと、同盟の話を受けてもよい。
       だが、条件がある」

〔 !゚ U゚!〕 「条件ですか?」

オラ ゚-ト 「もしセント領主家が本気なら、我々二国だけではいとも容易く負けてしまう。
       一つ目はグラント王侯領、クルラシア自治区とも協定を結ぶこと。
       二つ目は勝利した際、セント領主家の領地を王侯領が支配せぬこと」

(´・ω・`) 「それは……」

かなり厳しい条件になる。
戦勝国は敗戦国の領地を支配することが常道だ。

同盟があれば、協議により国境を策定する。
それを与えるななどとは無茶だ。

554名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 21:51:13 ID:BKkRiilc0

オラ ゚-ト 「それが納得できぬのなら、同盟はなかったこととする。
       我々はセント領主家と組み、グラント王侯領を侵攻する」

〔 !゚ U゚!〕 「わかりました……おって書簡で連絡させていただきます」

オラ ゚-ト 「うむ、これでもお主をたてておることはわかっておろう。
       今日はもう遅い。城内で休んでいくがよい」

〔 !゚ U゚!〕 「ありがとうございます」

オラト領主が二度、手を叩いた。
近くで待機していたのだろうか、現れた家臣の一人に客室へ案内された。

〔 !゚ U゚!〕 「ふむ……」

(´・ω・`) 「どうしてオラト領主はあのような条件を出したのですか?」

〔 !゚ U゚!〕 「ああ、話をしていなかったな。すまない。
        オラト国とグラント国は国境で小競り合いをしている。
        拙者も何度か参戦したことはあるがな」

なるほど……。
となるとこの同盟の鍵はグラント王侯領というわけか。

555名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 21:52:20 ID:BKkRiilc0

オラトへの侵攻を止めてもらい、なおかつ同盟を結ばなければいけない。
難しい説得になるだろう。

〔 !゚ U゚!〕 「クナドは陰ながらオラトを支援しているが、やはり大国。
        この国は徐々に疲弊してきている」

(´・ω・`) 「王侯領を説得する方法はあるのですか?」

〔 !゚ U゚!〕 「無いことは……無い……が、運次第だろうな。
        それがこれだ」

白い布にくるまれた細長い荷物を指さした。
クナドを出る前に、工房で準備していたものだろう。

(´・ω・`) 「なんですか、これ」

〔 !゚ U゚!〕 「見てみるか?」

ハートクラフトは細紐をほどき、布を取り払う。
中から現れたのは、古めかしい槍。

長さは両手を上に伸ばした僕よりわずかに長く、
柄には精巧な彫刻が彫ってあった。

〔 !゚ U゚!〕 「グラント王侯領は、宗教国だ。そのために、錬金術が嫌われている。
        この武器を神代のものとして献上し、一時の協力を取り付けるつもりだ」

556名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 21:55:50 ID:BKkRiilc0

金属の錆び具合や、刃が欠けているところまでよく再現したものだ。
数百年前のものだと言われても、違和感は感じない。

(´・ω・`) 「確かに、並の錬金術師では気づかないでしょうね。
       ただでさえあの国に錬金術師はいませんし。
       ですが、それだけで騙せるでしょうか?」

〔 !゚ U゚!〕 「ただ見かけだけでは駄目だろうな。だから、こいつには一工夫してある。
        持ってみろ」

渡された槍を持ってみると、すぐにわかった。

(´・ω・`) (……軽い)

これほどの長さがあるのに、その重さは短い木の棒ぐらいではないだろうか。
そして、欠けているはずの刃の切れ味は全く衰えていない。

〔 !゚ U゚!〕 「振ってみてくれ」

言われたとおりに穂先を上下に軽く振る。
それによって、室内の空気が僅かに揺らいだ。

(´・ω・`) 「……?」

〔 !゚ U゚!〕 「別に当たらなければ構わない。もっと思いっきり振ってみてくれ」

557名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 21:56:41 ID:BKkRiilc0

上段まで振りかぶり、地面寸前まで振り下ろした。
その瞬間、室内に突風が吹き荒れる。

埃が舞い上がり、窓は激しく揺れた。
逃げ場のなかった風の塊が、室内を好きなだけ暴れる。

それが収まるのに数秒もかかった。

(;´・ω・`) 「…………」

〔; !゚ U゚!〕 「ふむ……室内で使うものではなかったな」

説明してくれれば、わざわざ実演するまでもなかったんじゃないか。
そうすれば部屋が荒れることはなく、片づけをする必要もなかった。

散らばった備品を元の場所に戻しながら思う。

この槍は振った速度に応じて風を巻き起こすのか。
その力に殺傷力はないが、普通の武器の範疇を逸している、それで十分。

教会にいた銀髪の男のレイピアは、同じような力を持ってはいたが、その”鋭さ”が重要視されていた。
これは、より大きな出力を持つようにと造られているのだろう。

信仰心の篤いグラント王侯領の人間には、神の奇跡に映って見えるはずだ。


これが"鍛冶錬金術"というものか……。

558名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 21:59:24 ID:BKkRiilc0

(´・ω・`) 「これでも、加減しているんですよね?」

クナドと仲がよいオラトに敵対するグラント王侯領。
その国に戦力となる武器を差し出すわけにはいかないだろうから。

〔 !゚ U゚!〕 「いや、まぁ……突き詰めたが、
        風圧を維持したまま人を傷つけるだけの鋭さは生み出せなかった。
        もっと大きくて重い武器なら可能だろうがな」

(´・ω・`) 「あなたがセント領主家の人間でなくてよかったですよ……」

人体を強化し、本来以上の力を生み出す薬。
それによって生み出された人外に、この男の武器が与えられていれば、
戦争を防ぐことも難しかったかもしれない。

〔 !゚ U゚!〕 「拙者はクナドの人間だからなぁ。セントには協力せん。
        まぁ、機会があれば他の武器も見せよう」

(´・ω・`) 「あなたから学ぶことは多くありそうですね」

559名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 22:01:23 ID:BKkRiilc0

錬金術の知識はほとんどすべて知っていると思っていた。
少なくとも、見ればどのようなものかはわかるほどには。

この侍の"鍛冶錬金術"は、僕にも全く仕組みがわからない。
本質を教えてもらえるとは思わないが、少しくらいなら答えてくれるだろう。

この戦いが終われば、男の工房に入り浸るのも悪くない。

(´・ω・`) 「後はちょうどよい伝説などがあればいいのですが……」

グラント王侯領の人間が信じる宗教にも、様々な逸話があろう。
それと同じ能力を持っていれば、信じてもらえる可能性が高くなるはずだ。

〔 !゚ U゚!〕 「ん? それなら当然ある。当たり前だ。神話をもとにして作らねば意味がない」

(´・ω・`) 「そうなんですか? 僕は聞いたことがありませんけど……」

グラント王侯領の国教はこの大陸では数少ないものだ。
それが気になって昔侵入したのだが。


561名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 22:24:00 ID:BKkRiilc0

神は人々の中に隠れて生活しており、その暮らしを見守っている。
それゆえ、他者を苦しめる行為をしてはならない。

神は天上から全てを見降ろし、その暮らしを見守っている。
それゆえ、人の目がないからといって悪い行いをしてはならない。

永遠に存在するのは神だけであり、神こそが絶対的な規範である。
その領域を侵すものがあれば、全てを剥奪される。


たしか、そんな教義だった気がする。

〔 !゚ U゚!〕 「大まかにはあっている。同教徒には決して武力を用いず、異教徒は打ち滅ぼしてよい、
        としている自分勝手な宗教だ。
        そしてその中の逸話の一つにな、同教徒の戦になろうとした時、
        それを止めた神がいた、というものがある。
        空から両軍の間に落ちてきた槍は、雲り空を一瞬で晴れ渡らせた、とな」

(´・ω・`) 「なるほど……」

〔 !゚ U゚!〕 「名を"雲居抜き"と呼ばれる武器は、空の雲と同時に人々の不満を払ったとされる」

その伝説が真実にしろ、創られたものにしろ、
風を生み出すこの武器の能力は、それに近いものがある。

562失礼、食事してました:2012/11/26(月) 22:25:47 ID:BKkRiilc0

(´・ω・`) 「教えていただきありがとうございます」

〔 !゚ U゚!〕 「なに、知っておいてくれた方がいい。さて、明日も早いぞ
        今日はもう寝ておけ」

(´・ω・`) 「そうですね」

僕らは床に着いた。
隣からはすぐに寝息が聞こえてくる。

グラント王侯領のことを考えていたが、頭の中の情報を整理できた程度で、
特に何も思いつくことはない。
僕は諦めて目を閉じた。



・  ・  ・  ・  ・  ・

563名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 22:26:51 ID:BKkRiilc0

〔 !゚ U゚!〕 「それでは行ってまいります」

オラ ゚-ト 「うむ、良い答えを期待しておる」

朝、僕らはオラト領主に挨拶をし、城を出発した。

小雨の降る静かな朝だった。


昼頃には本格的に降り始め、僕らは休憩を余儀なくされる。
道中にあった村で雨宿りをしていた。

(´・ω・`) 「なかなかやみそうにありませんね」

〔 !゚ U゚!〕 「なかなか降らないが、振り始めると長い、そんな雨だからな。
        長い時で一週間は振り続ける。
        しばらく様子を見て、変わり無いようであれば雨の中を行くしかない」

「旅のお客様ですか? もしや、グラント王侯領へ?」

(´・ω・`) 「はい、そうですけど」

軽い食事をとっている時に、店主が話しかけてきた。
僕の返答を聞いた後、彼は顔を歪めた。

564名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 22:29:02 ID:BKkRiilc0

この辺りはまだオラト領なのだから、それも仕方のないことか。
そう思っていたが、面倒な事実を知ることになる。

「オラトとグラントの国境は、今多くの兵が集まっています。
 旅の方でもそこを抜けるのは難しいかと思いますが……」

(´・ω・`) 「兵が?」

〔 !゚ U゚!〕 「グラントが侵略の準備をしているってことか」

「はい。今までのような小競り合いではなく、本格的な進行をするつもりのようです。
 私らもそろそろ避難をしようかと考えています」

店主の話によると、およそ100人の部隊が最低でも15用意されているらしい。
1500人もの戦力に攻められては、オラト城を護りきれるかどうか……。

同盟の交渉が行われる前にオラトが陥落してしまっては意味がない。

(´・ω・`) 「厳しいですね……」

〔 !゚ U゚!〕 「前回、100人隊を3つほど、30人ほどの傭兵部隊で蹴散らしたのがまずかったな。
        今回はあちらも本気の様だ」

(;´・ω・`) 「……よく勝てましたね」

十分の一の戦力で野戦を行えば、普通は全滅する。
それを生き残るどころか、追い払ったのだと言うのだから脅威だ。

565名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 22:32:03 ID:BKkRiilc0

〔 !゚ U゚!〕 「傭兵達には勿論、拙者の武器を使わせたがな。
        仲のいい者には個人的に用意しているし。
        相手の司令官の戦略が悪かったのも大きい。
        兵が混乱して陣の組み替えもできてなかったからな……そうなるように仕向けたんだが」

(´・ω・`) 「僕らはすぐに出たほうがいいんじゃないでしょうか」

〔 !゚ U゚!〕 「そのようだ。クナドを出るとき、念のため傭兵達に連絡をしておいたが……。
        間に合うかどうかわからないし、交渉をする上では戦わないほうがいい」

(´・ω・`) 「そうですね。情報ありがとうございます、店主も気をつけてください」

「ええ、旅のお方も」

礼代わりに多めに金貨を置いていく。
オラトで貰ったコートを頭から被り、馬を走らせる。

目指す国境まではまだ距離がある。
だがそれは、相手にとっても同じことだ。

歩兵が主な部隊では進行速度が遅くなるし、人数が多ければそれだけで軍は鈍重になる。

まだ僕らに利があった。

566名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 22:37:12 ID:BKkRiilc0

無言で草原を駆け抜ける。
地平線の先は雨で見えない。

焦るあまり、つい強く手綱を引いてしまう。
後ろから侍に声を掛けられて、そのことに気付いた。

〔 !゚ U゚!〕 「まだ時間はかかる、あまり急ぎ過ぎるなショボン」

(;´・ω・`) 「ええ……わかってます……」

地面の悪い雨の中では馬の体力消耗も激しくなる。
もし馬を失うことになれば、取り返しがつかない。

少しだけペースを落とし、侍と並ぶ。

〔 !゚ U゚!〕 「そろそろ着くはずだ」

グラント領にはまだかかるはずだ。
何処に、と聞き返そうと思ったが、すぐに理解した。

地平線上に突然現れた黒い壁。

等間隔で高い塔が空に伸びている。

オラト領の防衛ラインだ。

567名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 22:37:52 ID:BKkRiilc0

〔 !゚ U゚!〕 「ここまで押し込まれていたのか……」

地図で見たオラトとグラントの国境はまだまだ先にある。
それなのに、ここの防壁では兵士たちが慌ただしく動き回っている。

〔 !゚ U゚!〕 「である、オラト領主、オラト ・ ヴィナ氏の命によりグラント領に向かっている
        道を開けてくれ!」

侍を見た兵士たちの顔が次々と変化していく。
暗く絶望していた表情が僅かな微笑みに変わる。

ハートクラフトは期待に応えるように何度か手をあげて挨拶をしていた。
防衛壁の前まで来て、門を開けるように指示する。

意外にも返ってきた答えはNOであった。

なぜか、そう問いただす手間は省けた。
壁の向こうから、いくつもの足音が大地を揺らしている。

敵は目前まで来ていたのだ。

〔 !゚ U゚!〕 「いい、開けろ! 二人が通った後は閉めて二度と開けなくていい」

「ですが、ハートクラフト様。すぐそこに敵が迫っています!」

568名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 22:38:36 ID:BKkRiilc0

〔 !゚ U゚!〕 「わかって言っている! 頼む、一瞬でもいいから開けてくれ」

将軍は躊躇っていたが、の勢いに押され門に人が通れるだけの隙間を開けてくれた。
僕らはその間を通り抜け、敵陣へとまっすぐに進んでいく。

背後で鉄の合わさる音がした。

逃げ道はない。

今は、速く前に進むだけだ。


軍隊が、黒い塊となって列をなしていた。
僕らの登場に多少の動揺が見える。

その隙を突くように、傭兵は戦場に響き渡る声で叫んだ。

〔 !゚ U゚!〕 「グラント王侯領の指揮官と話がしたい!
        オラト国及びクナド国の代表として、傭兵ハートクラフトが二騎で来た!」

続けて言う。

〔 !゚ U゚!〕 「この地域の、ひいては大陸の未来に関わる内容である!
        偉大なるグラント王侯領の指揮官様にお知らせしたい!」

569名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 22:39:23 ID:BKkRiilc0

「通せ!」


低い、大地を揺るがすような声が返ってきた。
目の前の軍隊が二つに割れ、奥への道を作り出す。

僕らはその間を抜け、一つの陣に辿り着いた。

「話を聞かせて貰おうか、傭兵」

そこにいたのは、侍よりもさらに二周り大きい男。
手には巨大な斧を持っている。

何かあればすぐに対応できるよう、僕らを囲う十数人の部下は槍を構えていた。
その猛獣の口の中で、敵意がないことを示すため、僕らは馬を下りる。

〔 !゚ U゚!〕 「まずは、通していただきありがとうございます」

「前口上はいい。時間稼ぎとみればすぐに攻めるぞ」

〔 !゚ U゚!〕 「はい。それでは単刀直入に。セント領主家が侵略の準備をしています。
        今、二国で争っているべきではなく、共に戦うべきです」

570名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 22:40:04 ID:BKkRiilc0

「ふん、セント領主家のことえお我が国が知らんと思ったか?
 傭兵、その程度のことであったと言うならば帰れ。正々堂々と戦ってやろう」

〔 !゚ U゚!〕 「……セント領主家は錬金術の禁忌を犯し、戦力を───」

「錬金術! その名をもう一度口にしてみろ。今この場で貴様の胸に風穴をあけてやる」

指揮官は最初から話を聞くつもりが無いようだ。
これでは説得に入ることすらできない。

〔 !゚ U゚!〕 「申し訳ありません……それでは、こちらを。私がとある場所で見つけたものです」

侍は、持参した白い包みを差し出した。
それは部下の手に渡され、指揮官のもとに届く。

ゆっくりと包帯が解かれていき、その全容が明らかになる。

「これは……」

〔 !゚ U゚!〕 「以前、貴国の傭兵として戦った時に聞きました話から察するに、
        それは大事なものではないでしょうか?」

「……確かに、聖書に書かれた神代の武器に造詣が似ているが……しかし……。
 これをどこで見つけた」

571名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 22:40:54 ID:BKkRiilc0

〔 !゚ U゚!〕 「はい、オラト国から南に下って山二つを超えました森の中に。
        それが地面に突き刺さっていました」

このあたりの話は全て侍の創作だ。
事前に地図の中から、最も適した場所を選んである。

用意してきた話は、そうそう綻びはしないはずだ。

それならば、これは十分に伝説として通じるはずだと、
男の次の一言を聞くまで、僕はそう思っていた。


「なぜ……なぜ"雲居抜き"が二本もある」


〔; !゚ U゚!〕 (;´・ω・`) 「!!」


「……これは私だけでは判断できぬ。傭兵、王城までついてこい。
 その間、開戦は待ってやる」

僕らは平静を装い、頭を下げた。

〔 !゚ U゚!〕 「ありがとうございます」

572名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 22:41:38 ID:BKkRiilc0

「その男は何者だ」

〔 !゚ U゚!〕 「我が傭兵仲間の腕きき、元セント領主家の兵、ショボンです。
        私の護衛に連れてまいりました。
        彼も城へ連れて行ってよろしいでしょうか?」

「構わん、たった二人で暴れようとは思うなよ」

当初の予定とは違ったが、戦争は一時的に止まり、
僕らはグラント王侯領の城に行くことになった。

うまくいっているはずなのに、どうしてか嫌な予感がする。
あまり当てにはならないが、気をつけるに越したことはない。

僕は腰の薬品をさり気なく確認し、指揮官を待つ。


しばらくして、指揮官は数十人の護衛と一緒に馬に乗って現れた。

「それでは我が王城"アルグラント"に案内しよう」

573名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 22:42:20 ID:BKkRiilc0

彼らに連れられて、馬を走らせること五日。
僕らは巨大な城塞都市に来ていた。

人よりも数倍高い塀で、都市全体が囲まれている。
灰色の城塞とは対照的に、城は光り輝くような白色。
十二の尖塔を持ち、四の別棟を擁するグラント領最大の城。



"アルグラント"



グラントの全てを統べるという意味に相応しい建物だ。


「王に失礼のないように。必要なものはすべて部屋の中にある」

城の中に通され、身なりを整えるように言われた。
用意された部屋の中で、僕らは旅の汚れを落とし、
この国特有のゆったりとしたローブを着る。

白を基調とし、金色の刺繍がそで口についているこれは、
客人用のものだろうか。

(´・ω・`) (以前来た時は招かれざる客だったからな……)

574名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 22:43:17 ID:BKkRiilc0

「準備はできたか?」

小一時間ほど経ってから、男は戻ってきた。

「貴様らは王の質問に答えよ。余計な事を話せば命はないと思え」

男が前に、その数歩後ろに僕らが続く形で謁見がかなった。

玉座の間には、百人ほどの重騎士兵が四列で両側に並び立っている。
剣を抜こうものなら一瞬で叩き斬られるだろう。

その中を僕らは前に進み、王座の前に傅いた。

「面をあげよ」

玉座に座っているのはまだ若い青年だった。
二十と少しほどだろうか。

紅いマントと、白の王冠が短い金髪によく似合っている。

「グラント軍第三指揮官、大位貴族ソラリス ・ ナハカルア。
 お前にはオラト攻略を命じたはずだ。それがなぜ、ここにいる?」

575名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 22:44:01 ID:BKkRiilc0

「はっ、我が王。先の戦で我らに与した傭兵が、"雲居抜き"を持ってまいりました」

「"雲居抜き"だと? 見間違いではなかろうな?」

「見たところかなり古く、私には判断しかねますので、王城へ持ち帰った次第であります」

男は自らの手に持ってきた槍を王に向けて差し出した。
近くに待機していた重騎士の一人が、それを受け取り、王に届ける。

「ふん……なるほど、よくできている」

王はそれを立ち上がって掴み、二、三度振りまわした。
その度に玉座の間を突風が吹きぬけて行く。

待機していた重臣達は驚きの声を洩らす。
当然だ。この僕ですら見たことはないものなのだから。

「そこの傭兵。正直に答えよ。これはどこで見つけた?」

〔 !゚ U゚!〕 「オラト領から南に山二つを超えた森の中にありました」

先日司令官にしたのと同じ話を繰り返す。
王は口を挟むことなく、それを黙って聞いていた。

「面白い……実に面白いものだが……残念だ、その二人は牢に閉じ込めておけ!」

576名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 22:45:21 ID:BKkRiilc0

(;´・ω・`) 「なっ!?」

「非常によくできた偽物だ。どうやって作ったのかは知らんがな」

僕らが持ってきた槍を床に落とし、王は腰から長剣を抜く。
それは鍔が無く、剣と言うにはあまりに不格好だ。

そして柄の中心に向かって、振り下ろした。


甲高い金属音がして、贋作は真っ二つに折れた。
まるで閉じ込められていものが逃げだすかのように、強い風が吹き荒れる。

それが収まった時に王は言った。

「雲居抜きは槍だと、聖書には記述されている。だがな、長い年月の末に槍は壊れたのだ。
 柄の部分が根元から折れ、今は槍としては機能していない」

王がこちらに見せた剣は、柄の底が割れていた。

「わかるか? 何代もグラント王に引き継がれてきたこれこそが、"雲居抜き"なのだ」

〔 !゚ U゚!〕 「私の見つけたものは、偽物だったのですか。
        大変なご迷惑をおかけして申し訳ありません」

すぐに取り繕うように侍が答えた。
驚き、何も言えなかった僕と違い、彼はこの可能性すら考えていたのかもしれない。

577名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 22:46:15 ID:BKkRiilc0

「……戦争を遅らせた罪は、お前が我が国の傭兵として戦ってくれるのなら不問にしよう」

〔 !゚ U゚!〕 「申し訳ございませんが、それは無理なお話です。
        セント領主家が戦争をするつもりでいるため、今ここで戦力を使うべきではないかと」

「判断するのは俺だ。だが、セント領主家が兵を集中し始めたのは知っている。
 東側に向けて、な」

(;´・ω・`) (東……弱者から狙う気か……。
        くそっ……クナドが危険だ……オラトも挟撃される恐れがある……)

状況は最悪と言っていい。
僕らはこの城に閉じ込められて動けず、
今にもグラント国の攻撃が始まろうとしている。

〔 !゚ U゚!〕 「それでは王、この国がセント国に滅ぼされてもよいと?」

侍がとった手段は挑発だった。
怒りを隠しもせず、王は答える。

「戯言を。何をもってあのような国に我が国が滅ぼされると言うか」

〔 !゚ U゚!〕 「セント領主家の戦力は確かに貴国より小さいでしょう。
        ですが、兵は恐ろしく強い。一人一人が、私が苦戦するほどの力を持っています」

578名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 22:47:25 ID:BKkRiilc0

ほんの少しだけ、王の表情が変わった。
怒りから、疑問へと興味が移ったのだ。
それはハートクラフトの、傭兵の力を知ってるからだろう。

「……それはどう証明する?」

〔 !゚ U゚!〕 「オラトをさらに北東に向かった地に一つの教会があります。
        その場所での惨状を見ていただければ」

「ならぬ。そこに着くまでに時間がかかりすぎる」

話を区切られ、侍は沈黙した。
もうこれで、僕らには打つ手が無い。

どうやってこの場から脱出しようか考えていた時、
突然、腕を斬り落とされた。

(#´ ω `) 「がぁぁぁっ!?」

〔 !゚ U゚!〕 「この男はかつてセント領主家の一兵士でした。今は拙者の部下にしていますが。
        見ていただければわかるように、人間を通り越した力を持っています。
        彼らは異様な術を使い、兵達に力を与えていました。
        殺すには、首を刎ねる以外にありません」

「なっ!?」



(#´ ω `) 「ってええええ……」

579名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 22:48:27 ID:BKkRiilc0

その場にいる人間が全員息をのんだのがわかる。
僕だって予想外のことで危うく言及しかけた。

〔 !゚ U゚!〕 「どうでしょう、まずはセント領主家を撃ち滅ぼす同盟を」

「……確かに、その男のような敵がいれば脅威だ。
 よい、戦争の勝利後、セント領主家の土地の80%をグラントのものとするのなら、
 同盟してやらないこともない」

多少どころか相当強引であったけれど、同盟の話を引き出すことには成功した。
問題はここからだ。
どう考えても、土地を得ないように説得するのは無理に思える。

〔 !゚ U゚!〕 「セント領主家は独立させ、一つの国として維持させていきたいと考えています」

「ならん。戦いは我ら主導で行い、勝利後の配分は譲れぬ」

(´・ω・`) 「それならば、南への道を作るお手伝いをいたします。
       それでどうでしょうか」

「貴様……黙れ! 王の御前である……」

「よい、続けよ」

(´・ω・`) 「はい」

グラント王侯領がなぜ東を目指して国を拡大するのか。
思い出したことがある。

580名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 22:49:23 ID:BKkRiilc0

グラント国の最南端は高い山々に塞がれ、活路が無い。
西はクルラシア自治区となっており、不安定ながらも、
領土は広大、人口もグラント国よりずっと多い。

戦争になれば両国が疲弊するのは目に見えている。

だからこその東。

領地の小さいクナド、オラト両国しかなく、だがしかし技術は一流。
少ない犠牲で最大の効果を得ることができる。
そのさらに東は国の無い状態だ。

そこまでを治めれば、今以上の大国となることができる。

(´・ω・`) 「南側には、大地がずっと続いています。
       貴国の領土拡大にはちょうど良いかと」

「かの山脈に穴でもあけると言うのか?」

予想通り、話に乗ってきた。
南の山が開ければ、大陸の南側に進行することができると考えているのだろう。

実際はグラントよりも数段大きい国があり、道など作ろうものなら、
この北方の地は逆に侵略されてしまうかもしれないが。

581名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 22:50:57 ID:BKkRiilc0

「面白い。もしそれができるのなら、小さな北の地などいらぬ。
 それをどうやって証明する?」

さて、どうする。
話には出してみたものの、南に抜ける道を作ることはできるだろうか。
少なくとも、できると思わせなければ同盟は無かったことになる。

「言うてみよ」

僕は自らの知識を総動員する。

得意の錬金術を用いることはできない。
天変地異でも起きない限り変化するはずもない山々を、どうやって抜けるのか。

(´・ω・`) 「南の山脈を抜けれない理由は、高い山ではなく、深い森に原因があります。
       植物の成長が異様に早く、伐採してもなかなか進みません」

「そうだ。我が国土で受け止めるだけで手一杯である」

(´・ω・`) 「クナド国では、植物の研究が日夜なされています。
       その知識を用いれば、植物の侵食を止めることはできるでしょう。
       オラト国では、金属の研究が発達しています。
       木々の伐採に有用なものをもっているはずです」

「それでは、最後の山脈はどうする?」

582名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 22:51:56 ID:BKkRiilc0

それが問題だ。
高くはないとはいえ、自然の要塞に穴を開けるのは到底不可能。

(´・ω・`) 「山々の間を通るように道を作ります。
       そのための素材はクルラシア自治区から輸入すればいいでしょう。
       最短経路は僕らが調べることを約束いたします」

地図にあったクルラシア自治区はいくつも鉱山を所持しており、
道を作るために必要なものは揃うはずだ。

緑生い茂る未開の地でも、岩で荒れた隘路でも僕なら抜けていけるはずだ。
時間はかかっても、最短経路を見つけることができる。

「悪くない……。だが、それならば我が国がクナドとオラト両国を取り込んでしまってからでもいいな」

(´・ω・`) 「侵略国に対して、クルラシア自治区が貿易を行うとお考えですか?」

ここは賭けになる。
グラント国王が、どれほど南に行きたいか。
それにかかってくる。

国王が声を発するまで、僕の言葉からおよそ数分かかった。

583名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 22:54:31 ID:BKkRiilc0

「いいだろう、クナド、オラト両国と同盟を結ぶ。
 ただし、クルラシア自治区を必ず同盟に入れろ。
 それが無理であった場合、これを破棄し、両国に侵略を開始する」

(´・ω・`) 「ありがとうございます」

〔 !゚ U゚!〕 「全力を尽くします」

「連絡は……10日以内とする。結果を出して俺に応えろ」

僕らは王との約束を交わし、王城を後にした。
目指すはクルラシア自治国。


行きにかかる時間はおよそ五日。
連絡する時間を考えれば、ギリギリだ。

〔 !゚ U゚!〕 「行くぞ、クルラシアにな」



何とか形だけの同盟を作り上げ、ついに最後の国に向かうことになった。
必ず成功させなければならない。

心に灯をともし、グラント王侯領を出発した。

584名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 22:55:13 ID:BKkRiilc0













13 ホムンクルスと同盟の条件  End

585名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 23:00:41 ID:BKkRiilc0



【時系列】

ホムンクルス生誕
   ↑
   ↓
6 ホムンクルスの忘却と少女の幸福のようです
7 ホムンクルスの罪と少女の難のようです   
8 ホムンクルスと少女のようです
   ↑
   |
   |
   ↓
1 ホムンクルスは戦うようです
   │
2 ホムンクルスは稼ぐようです
   │
3 ホムンクルスは抗うようです
   │
4 ホムンクルスは救うようです
   │
5 ホムンクルスは治すようです
   │
9 ホムンクルスは迷うようです
    |
10 ホムンクルスと動乱の徴候
    |
11 ホムンクルスと幽居の聚落
    │
12 ホムンクルスと異質の傭兵
    │
13 ホムンクルスと同盟の条件


戻る  次へ

inserted by FC2 system