(´・ω・`) ホムンクルスは生きるようです
- 93 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 17:38:35 ID:JA8mU53Y0
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4 ホムンクルスは救うようです
- 94 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 17:39:41 ID:JA8mU53Y0
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(´・ω・`) 「久々に来るな……」
僕は幾つかの山を抜け、やっとたどり着いた。
山の合間にある小さな村。
十年ほど前に来てから、どうなったのかが知りたかった。
(´・ω・`) 「顔を隠さないといけないな……」
僕を知っている人間はまだ生きているだろう。
顔を見られて騒がれるわけにはいかない。
持参した布を頭から被る。
目的さえ果たせればすぐに去るつもりだ。
背の低い樹木をくぐれば村の入り口のはずだ。
記憶の通り、背の低い柱が二つ地面にさっている。
(´・ω・`) 「倒れてるかと思ったけど、まだ立っていたか」
村は相変わらず寂れてる。
いつ人がいなくなってもおかしくない。
太陽が昇っているのに、人の姿が見えない理由はすぐに分かった。
入口から入ってますぐ進んだところに村人が集まっている。
- 95 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 17:47:33 ID:JA8mU53Y0
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そこにはこの村に無くてはならない自然のダムがあるはずだった。
(´・ω・`) (水が……)
かつて僕が来た時と全く同じ状況だった。
(´・ω・`) (なんのために僕が……)
以前訪ねた時も同じようにダムには水が無い。
できる限り水を手に入れる方法を教えて村を出たつもりだったのに、
それはどうやら実行されていないようだ。
(´・ω・`) (ってことは……)
村人をかき分けて奥まで進むと、そこには見覚えのある二人がいた。
一人はこの村の村長。
人間にしては恐ろしく長く生きている。
そして、もう一人は娘。
昔の面影が僅かに残っている。
(´・ω・`) 「やめろっ!」
僕は思わず声を張り上げてしまった。
村人全員の視線が突き刺さる。
- 96 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 17:55:31 ID:JA8mU53Y0
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/ ,' 3 「なんじゃ、ほまえは?」
l从・∀・ノ!リ人 「!?」
村人は皆、僕を訝しがるように見ている。
村の重要な儀式を、突然現れた見ず知らずのしかも怪しい恰好をした男に止められたのだ。
その反応は当然と言えた。
ただ一人を除いて。
村人のなかで、少女だけが僕の存在に気づいていた。
l从・∀・ノ!リ人 「ショボン先生……ですか?」
姿を明かすつもりはなかった。
ただ彼女が無事に生きていることを知りたかっただけだったのだ。
(´・ω・`) 「そうだよ」
でも、ばれてしまったのなら隠す必要はない。
そう判断して、僕は被っていた布を外した。
村人たちが動揺しているのが手に取るように分かる。
十年前に突然やってきた男が、その時と全く同じ顔で戻ってきたのだから。
(´-ω-`) 「まだ、こんなことをやっているのか」
僕はゆっくりと目を閉じて、過去を思い出す。
この村で、命を一つ救った時のことを。
小さな少女の、小さな笑顔を。
- 98 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 18:13:59 ID:JA8mU53Y0
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■■■■■■■■十年前■■■■■■■■
(´・ω・`) 「おなか減ったな……」
たった一つ山を越えるつもりが、どうやら山岳地帯に迷い込んでしまったようだ。
行けども行けども緑しか見えなから、嫌になる。
食事はほとんどが果実や野草。
動物を調理する腕はあるけれども、捕まえる武器がない。
(´・ω・`) 「種火はあるんだけどな……」
旅をする錬金術師は意外と多い。
その土地の人に嫌われたり、領主に追い出されたりすることはよくある。
旅の必須アイテムは幾つかあるけれども、錬金術師ならば誰もが【種火】を持ち歩く。
特殊な液体を調合した後に、珪藻土に染み込ませたもの。
それに改良を加えて、威力を落としたのが種火だ。
旅先で火をつけるのに重宝する。
(´・ω・`) (でもま、調理するものがないと意味ないよね……)
足を引っ掛けて頭から地面に突っ伏してしまった。
(´・ω・`) (ん?)
顔に影がかかったのに気づいて見上げる。
- 99 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 18:22:10 ID:JA8mU53Y0
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l从・∀・ノ!リ人 「大丈夫……ですか?」
小さな少女が覗きこんでいた。
胸元が若干はだけ、僅かな膨らみを持つ柔肌が目に入った。
僕はあの豚とは違うので、それに見とれたりはしないが。
少し見えただけだ。少しだけ。
(´・ω・`) 「どうも、この辺に村でもあるのかい?」
l从・∀・ノ!リ人 「わからないのじゃ」
こんな山の中に十にも満たなそうな少女が一人歩いているのは驚きだった。
しかも、近くに村があるかどうかわからないという。
とりあえず、食料を持っているかどうか聞くべきか。
頭が働かない。
(´・ω・`) 「ところで、食べ物あるかい」
l从・∀・ノ!リ人 「ある……けど……」
少女の動きにつられて、その後ろを見る。
そこには巨大なイノシシが死んでいた。
- 100 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 18:31:52 ID:JA8mU53Y0
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(´・ω・`) 「君が殺したの……?」
少女が無手でイノシシを殺せるはずもない。
我ながら阿呆な質問だと思ったが、つい聞いてしまった。
l从・∀・ノ!リ人 「違うのじゃ。追いかけられて、木の上に登ったら、ぶつかって死んだのじゃ。
でも生ではたべられん。 調理も出来ぬし」
なんとタイミングのいいことか。
僕は勝手ながら神様とやらに感謝することにした。
(´・ω・`) 「ああ……それなら僕に任せてくれないか」
腰から剣を引き抜き、イノシシの首に振り下ろす。
数十回の行為の末、首を落とすことに成功した。
次は内臓を引き出し、肉と骨を切り分けていく。
こういうことは何度もやっているから、それなりに得意だ。
l从・∀・ノ!リ人 「すごいのじゃ……」
(´・ω・`) 「さて、次は調理か」
血で汚れた両手を洗うために、荷物から蛇口を取り出す。
掌より少し大きいくらいの金属製の筒で、
片方は薄く広がっていて、反対側は丸くなっている。
これも錬金術師の旅の必需品。
- 101 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 18:39:26 ID:JA8mU53Y0
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大樹に切り傷をつけ、薄っぺらい方をそこにねじ込む。
水を呼ぶ特殊な金属を用いているから、木の水分を吸いだしてくれる。
ちょろちょろと流れ出る水で手を洗い、種火を使って火をおこす。
(´・ω・`) 「さて、焼き加減はどのくらいかな?」
l从・∀・ノ!リ人 「その水はどうなってるのじゃ? 教えてほしいのじゃ!」
僕の話は聞いてなくて、どうやら蛇口に夢中のようだ。
それもそうだろう。
こんな技術が山奥の国にあるわけがない。
(´・ω・`) 「その水、飲めるよ」
l从・∀・ノ!リ人 「飲んでもいいのか?」
(´・ω・`) 「勿論」
僕の蛇口はひときわ優れものだ。
出てくる水を可能な限り濾過し、そのまま飲めるようにしている。
他の錬金術師が作れば、木の中の水分が出てくるだけだ。
身体に毒な物を含んだままね。
l从・∀・ノ!リ人 「美味しいのじゃ」
- 102 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 18:45:30 ID:JA8mU53Y0
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l从・∀・ノ!リ人 「これさえあれば……村も……」
(´・ω・`) 「どうしたの?」
少女の声は小さすぎてうまく聞き取れなかった。
肉から滴る脂が火の中で弾ける。
外側はこんがり茶色に焼き、中まで火も十分に通す。
(´・ω・`) 「できたよ」
小さい目の欠片を少女に渡し、自分の分を取った。
齧ると中から肉汁がしみだしてくる。
臭みはなく、硬めの外側と中の柔らかな部分が絶妙に舌を刺激する。
(´・ω・`) 「うん、丁度いい焼き加減だ」
l从・∀・ノ!リ人 「こんなのおいしいの初めて食べたのじゃ!」
少女はびっくりするくらいよく食べた。
残っていた肉を燻製にするために、丁度いい木の枝と草を探す。
それらはすぐに見つかった。
準備を済ませ、少女に話しかけえる。
(´・ω・`) 「さて、君を村まで送っていこうと思うのだけれど」
l从・∀・ノ!リ人 「その必要はないのじゃ」
- 103 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 18:55:54 ID:JA8mU53Y0
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少女は頑なに僕の申し出を断る。
とはいえ、こんなところに置いていけるはずもなかった。
(´・ω・`) (埒が明かないな……)
(´・ω・`) 「君、名前は」
l从・∀・ノ!リ人 「イモジャと呼んでくれればいいのじゃ。お主は?」
(´・ω・`) 「僕はショボン。錬金術師のショボンだ」
そもそも錬金術を知っているとは思えなかったが、
何も言わないよりは分かり安いだろうと思ってつけ足した。
l从・∀・ノ!リ人 「れんきんじゅつし? よくわかんのじゃが、偉い人?」
(´・ω・`) 「まぁ、そんなものかな」
その解釈には甚だ問題があったが、その程度の理解で十分だった。
村まで送り届けた後には別れるのだ。
l从・∀・ノ!リ人 「じゃあ先生なのじゃ! ショボン先生!」
(´・ω・`) 「ははは……」
先生という言葉が出てきたことにむしろ驚いた。
山奥のコミュニティーに学校があるとは思えなかったからだ。
- 104 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 19:02:10 ID:JA8mU53Y0
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l从・∀・ノ!リ人 「先生、それが欲しいのじゃ」
イモジャが指差すのは僕特製の【蛇口】。
(´・ω・`) 「んーでも、これは僕の旅に必要だからな……。
どうしてこれが欲しいの?」
l从・∀・ノ!リ人 「……村に、水が必要なのじゃ」
(´・ω・`) 「どういうこ……」
草むらをかき分ける音が聞こえてきた。
遠くから名前を呼んでいる声も。
(´・ω・`) 「呼ばれてるよね」
l从・∀・ノ!リ人 「……そうなのじゃ。イモジャは人柱じゃから。みんな探してるのじゃ」
(´・ω・`) 「どういうこと?」
下を向きながら少女は話す。
l从・∀・ノ!リ人 「……水がないのじゃ。水を神様にお願いするのに、イモジャを使うのじゃ
誇らしいことじゃと、パパたママは泣いていたのじゃ」
- 105 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 19:15:40 ID:JA8mU53Y0
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隔離された村にはよくあることだ。
今まで何度も見てきた。
その時の理由が不作や災害などの違いはあるものの、
そういった儀式はどこでも行われていた。
何の解決策にもならないのに。
(´・ω・`) 「……村に、案内してくれないか?」
l从;∀;ノ!リ人 「死にたくないのじゃ! イモジャを連れて逃げてほしいのじゃ!」
(´・ω・`) 「それはできないよ。君は僕についてこれない。
僕なら、君の村を変えることができるかもしれない」
「いたぞ!」
「捕まえろ!」
(´・ω・`) 「信じてくれ」
僕は、現れた男達に連れらて村に辿り着いた。
少女は隣で、ずっとすすり泣いていた。
- 106 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 19:25:55 ID:JA8mU53Y0
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/ ,' 3 「そのほとこはだれだ?」
「イモジャと一緒にいたので連れてきました。
先生様に用があるそうです」
なるほど、この村では年長者のことを先生と呼ぶのか。
それとも、長老の意で使っているのだろうか。
そんなことを考えながら、僕は年寄りと相対した。
(´・ω・`) 「初めまして。旅の錬金術師です」
/ ,' 3 「んほ?」
間の抜けた返事をする老人だが、村人たちが気づかないほど小さく反応した。
儀式が行われる背景には、二つの理由がある。
一つは、遥か昔から続いている例。
もう一つは、知識のある人間が悪用する例。
(´・ω・`) (後者だな)
錬金術師という言葉に反応した。
この村の誰もが首をかしげる中、この老人だけが。
僕の前では呆けたふりをしているのだろう。
目的は、おそらく……。
- 107 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 19:35:09 ID:JA8mU53Y0
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知識のある者が、人の命を使う儀式を行う理由などひとつしかない。
…………肉欲だ。
(´・ω・`) 「どうして人柱がいるのか、教えてもらえますか」
答えたのは長老の隣にいる男だった。
「雨が降らないんだ。見てくれ、ここに溜まっている水は底をつきはじめている」
(´・ω・`) 「なるほど……。それなら、私に任せてください。
人柱など必要ありません。錬金術で解決できます」
村人たちがざわめくのが分かる。
錬金術の存在を知らない彼らは、
きっと僕を神に近しいものと勘違いするだろう。
(´・ω・`) (でも、それでいい。それでこの男の横暴は終わる)
必要なのは時間と労働力だ。
(´・ω・`) 「村の若い者を数人、そして一週間の時間を貰えませんか?」
この村は……イモジャは僕が救う。
- 108 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 19:44:36 ID:JA8mU53Y0
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水が逃げ出さず、集められる構造に。
自然のダムではそこまでできていない。
だからすぐに水が足りなくなる。
僕の錬金術と知識で、解決できる問題だ。
■■■■■■■■現在■■■■■■■■
そして僕は水の抜けにくいダムを完成させ、その翌日に雨が降った。
問題は全て解決されたはずだ。
それなのに……。
(´・ω・`) 「あなたは、どうしてここにいるんですか?」
この老人は追い出したはずだ。
悪事をばらし、村人たちに真実を告げ。
それがなぜ、年月が立って元通りになっている。
なぜ、イモジャがあの場にいる。
/ ,' 3 「ほっほ?」
/ ,' 3 「簡単ななこほ。村人たちが儂にもほめたのは、すぐにいなくなった神ほ代わり。
長老ほしてのまほめ役」
- 109 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 19:55:28 ID:JA8mU53Y0
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l从・∀・ノ!リ人 「お久しぶりです……。先生がいなくなってしまい、やっぱり私達には長が必要だったのです。
この人は村をおさめてくれました」
「そうだ。貴方とは違うんだよ!
知識だけを置いていったあなたとは!」
叫ぶのは村の住民たち。
「今までの全てを覆され、私達には縋るものが必要だった」
l从・∀・ノ!リ人 「今回の儀式は、真に雨を降らすために必要なのです。
紛い物ではありません」
/ ,' 3 「そういうこほじゃ」
(´・ω・`) 「やめろっ……何のために僕は君を助けたんだ!」
荒巻の持つ刀が高々と掲げられる。
その真下には、座り込んだ少女。
立派に育った見目麗しき少女。
(´・ω・`) 「雨はそんなことじゃ降らないっ!」
浴びせられるのは罵倒。
雨は降ると信じてやまない村人達。
- 110 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 20:10:34 ID:JA8mU53Y0
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僕は少女の前に走り込み、振り降ろされた刀を体で受け止めた。
(;´・ω・`) 「っ……」
左肩から骨を砕き、肺を引き裂かれる。
(;´・ω・`) 「……ぼくが、悪かった。
勝手にあなた達の慣習を破壊し、そのまま去ってしまった」
傷は、修復される。
元通りに。
(;´・ω・`) 「知識を授けただけで、自己満足してしまった。
もう失敗はしない。今度は教え、そして導く」
/ ;,' 3 「なっ! 貴様! なにもほだ?」
(´・ω・`) 「僕は…………」
この村を救うには一つしか方法はない。
知識を正しく理解させ、歴史を教え、村を導く。
僕の時間はここでしばらくの間、費やされるだろう。
ただそれは、無限の前では一瞬にすぎない。
たった一人の少女を救うためには割の合わないことかもしれない。
だけど僕は…………人間を……この村の人を……救いたいと思ってしまった。
だから僕は、その一言を口にした。
(´・ω・`) 「……神だ」
4 ホムンクルスは救うようです 終了
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