(*゚∀゚)想いの重さのようです

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/21(水) 02:41:10.75 ID:Qd8Q4Uhb0


現実の同性愛なんて、物語にあるような甘いものじゃない

甘いのなんか一瞬で 他は苦く苦しいものばかりで

最期は必ず悲恋が残るだけなんだ



3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/21(水) 02:41:37.13 ID:Qd8Q4Uhb0


(*゚∀゚)想いの重さのようです



4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/21(水) 02:42:08.55 ID:Qd8Q4Uhb0

七月某日

( ゚д゚)「……気持ち悪いぞ」

自分でも理解できないくらい気分は高揚し、明日に備えていた

(*゚∀゚)(しぃに会える! 四ヶ月ぶりにしぃに会える!!)

そう、しぃに会えるのだ
高揚しないはずがなかった

メールでのしぃは比較的冷静で、自分のように浮かれているようにはまず見えない
しぃは絵文字を使わない
時折顔文字が混ざる程度の淡白なメールが殆どだった

内容も2・3行 と、わりと寂しいものだが、それすらしぃらしいと思えた


5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/21(水) 02:43:26.15 ID:Qd8Q4Uhb0

(*゚∀゚)「兄貴ぃ!!どっちのがいいと思う!?」

ベッドの上に二種類の服装一式を並べ、部屋に籠っていた兄をひっぱり出してきた

(; ゚д゚)「俺に聞くな 好きな方にしろ」

(*゚∀゚)「どっちも好きだから迷ってんだよこの馬鹿!」

( ゚д゚)「ばっ……」

(*゚∀゚)「兄貴なら、どんな格好の子とデートしたい!?」

( ゚д゚)「お前明日一緒に出掛けるのはしぃなんだろう」

(*゚∀゚)「しぃだからだよ!!このにぶちん!!」

(# ゚д゚)「にっ……」

(*゚∀゚)「兄貴なら、どっちの格好した子と歩きたい?女の子視点で!!」

( ゚д゚)「…………女心は解らん 好きにしろ」

兄は掴んでいた手を振り払って部屋に戻ってしまった
妹の為に少しは協力してやろうとかそういう気持ちはないのか
あの堅物の兄貴に限って、そんなことを期待する方が間違っているだろうか


6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/21(水) 02:45:02.78 ID:Qd8Q4Uhb0

十数分後、兄と遊びに来たという名目でモララーが我が家を訪れたので、
そのモララーを部屋に引き込み、モララーに意見を聞くことにした

( ・∀・)「しぃちゃんがどんな服を好むかはわからないけど……こっちの方がつーちゃんらしいかな」

そう言って選ばれた服は、白の柄物のタンクトップに、サイズの大きい半袖の黒のパーカー ジッパーは二つ
パーカーに隠れてしまう程短いデニムのパンツに、黒のニーソ
赤チェックのコンバースとゴツめのアクセサリーが黒を飾る形になっている
短めのウルフカットにアシメという髪型にも、よく合っている
前髪に赤いピンを二本刺すことも決めた
鞄は黒の、少し大きめのポーチで、表には白と黒の市松模様がプリントされているそこに大きな安全ピンをいくつか付けた

(;・∀・)「……って、だいぶパンクっぽくなっちゃったな……もう少しソフトでもいいかも……」

(*゚∀゚)「ですか?あたしこれ好きですけど」

モララーと相談(ほぼ押し切る形だが)した結果、このままで行くことに決まった
モララーに礼を言って解放した


7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/21(水) 02:46:08.52 ID:Qd8Q4Uhb0

***

ミルナの部屋

二度のノックの後、モララーが入ってきた
ドアが開いたせいで、光が差し込む

( ・∀・)「暗い部屋だなぁ……相変わらず」

自分は頭を抱えるようにしてベッドに身を投げていた
モララーが勝手に遮光カーテンを開けたが、雨戸が閉まっているので問題はなかった

モララーの溜息が聞こえる
聞こえるようについたのだろう

( ・∀・)「ミルナ― せっかくの夏だよ?」

( ゚д゚)「目に痛いんだ」


8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/21(水) 02:47:11.49 ID:Qd8Q4Uhb0

腕の隙間からモララーを見上げ、言い訳がましい言葉を口にする
眉間に皺が寄っていたのだろう モララーが苦笑いを拳で隠した

実際 四年前くらい前から唐突に日の光が苦手になった
中学に上がり、やんちゃさが抜け、インドアになりがちになったせいだと思った
丁度『食事』が始まった辺りだったとも思う

日差しが苦手と言っても、日常生活に支障はない
登下校も窓から差し込む光も、我慢できる範囲内だった
ただ家に居てまで我慢する必要はない

( ゚д゚)「肌も、チクチクと痛む  休みの日くらいはいいだろう」

( ・∀・)「ミルナってアレルギー?そういうアレルギーあったよね あんま日光に触れちゃいけない奴」

( ゚д゚)「肌が弱いんだろうな」

( ・∀・)「だからいつまでたっても生っ白いんだ」


9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/21(水) 02:48:27.31 ID:Qd8Q4Uhb0

( ゚д゚)「元々色素が薄いお前やジョルジュには負けるがな」

モララーとジョルジュは色素が薄い
肌も白く、瞳の色も明るい  髪の毛も明るい為、先天性だと学校にも申請書を出してある
なんど焼いても赤くなるだけで、黒くはならないらしい
純粋な日本人としては羨ましい限りだ

( ゚д゚)「……と、そんなことより」

ベッドから起き上がり、そのまま胡坐をかく

( ゚д゚)「……度々ツーが…すまんな」

( ・∀・)「いーってことさ 同じ同性愛者同士、先輩として出来ることはしてあげたいしね」

( ゚д゚)「…………」


10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/21(水) 02:49:15.27 ID:Qd8Q4Uhb0

ミルナの表情は硬い
少しだけ俯いてしまった
やはりミルナにも、多少なりと抵抗があるのだろう
ましてや可愛い妹がだ
心配する気持ちも理解出来なくはなかった

( ・∀・)「やっぱ、抵抗ある?大丈夫だよ 女の子ってのは、思春期に一度同性を意識する生き物だから」


( ゚д゚)「そうなのか?」

( ・∀・)「16歳でビアンを名乗る子が一番多いね そのあと段々に落ち着いていくんだ」

( ゚д゚)「じゃあ……つーもそのうち戻るのか?」

( ・∀・)「……さぁね それは、あの子次第だから」

( ・∀・)(でも小学校からしぃちゃんだけに庇護欲もってるからなぁ…………どうなんだろう)

モララーもベッドに腰掛け、ごろりと寝転がった

( ・∀・)(この間の話が、きちんと理解できてればいいなぁ……)


11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/21(水) 03:00:34.50 ID:Qd8Q4Uhb0

( ・∀・)「…………ミルナは、やっぱり抵抗あんの?」

( ゚д゚)「…………嫌悪とかではないが、やはり な」

天井は、暗い
ころりと寝返りを打ち、ミルナに背を向ける

( ・∀・)「…………俺の事、気持ち悪い……?」

( ゚д゚)「……そんなこと、ないさ」

( ・∀・)「…………」

( ゚д゚)「お前も、自己犠牲か」

( ・∀・)「?」

( ゚д゚)「想いを伝えないまま、ギコを守りたい
     立派な自己犠牲だ」


12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/21(水) 03:08:45.90 ID:Qd8Q4Uhb0

( ・∀・)「…………そうかも、しんないね」

( ゚д゚)「自己を犠牲にしてまで助けられても、本当は何も嬉しくないんだぞ」

ミルナの声のトーンが下がる

( ゚д゚)「…………ギコがお前の存在意義に気付いた時、ギコは失望するだろう」

( ・∀・)「…………」

( ゚д゚)「……気付けなかった己に」

ミルナもまた寝ころび、背を向ける
お互い、顔も見えない
暗い空間が、少しだけ心地良かった

( ゚д゚)「…………俺は、自分が大嫌いだ」


13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/21(水) 03:13:46.72 ID:Qd8Q4Uhb0

***

駅前でしぃを待った
時計は、約束の十分前を示している
空は気持ちがいいほどの快晴で、雲一つない

真夏日和だった


(*゚ー゚)「ツーぅっちゃんっ!!」

(*;゚∀゚)「おふっ!!」

後ろから飛びついてきたのはしぃ
短く小さい両の手で、ぎゅうと抱き締められる
自分の頭は、軽く混乱した

しぃを乗せたバスは、五分後に来るはずだった


15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/21(水) 03:18:46.88 ID:Qd8Q4Uhb0

(*;゚∀゚)「え?え?」

自分を解放したしぃは、前に回り込んできて見上げるように目を覗いてきた

(*゚ー゚)「ツーちゃんを驚かそうと思って、一本前のバスで来たの!☆」

一本前のバス
こんな田舎では、バスはそう頻繁には来ない

(*;゚∀゚)「…………一時間も此処にいたのか?」

(*゚ー゚)「うん。駅前のパン屋さんで朝ごはんして、ツーちゃんが来るのを虎視眈々と狙ってたの」

悪戯が成功したしぃは満足気に微笑んでいる
反対に自分は、複雑だった


(* ∀ )(もっと早く会えるなら、その方が良かったな)

しぃがそれを知ることはない


17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/21(水) 03:24:44.02 ID:Qd8Q4Uhb0

しぃは「どうしよっか」などといってふらふらと歩きだす
慌ててそれを追い、半歩後ろで歩き出した
しぃの無計画はよくあることだ
宛てもなくよく歩く
自分はその後ろで、まだ治まらない心臓を握り潰さんばかりに鷲摑みにしていた

突然抱き締められた
中学の頃なら、ままあることではあった
自分含め、色んな人と
いまそのしぃは、自分が独占している

二人だけ

その響きが快感だった
モララーの言葉を思いだし自分を諌めようとするも、目の前のしぃを見ると、どうにも止まりそうにない

栗色の、肩までの髪が 風に攫われてさらりと揺れていた


21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[全28の短編です] 投稿日:2011/09/21(水) 03:28:27.25 ID:Qd8Q4Uhb0

しぃは今日も、可愛かった
丸襟の白いブラウスに、モスグリーンのカーディガン
胸には直径2p前後のオルゴールボール ―― 鈴のようだな と思った ――
黒いショートパンツ 足は黒いストッキングに覆われていて、小さな黒のパンプスを履いていた
鞄は少し大きめのトートバッグで、レースで飾られていた

このまま瓶詰にして森を背景にすれば、さぞ絵になるだろう
そう思った
何故瓶詰なのかは自分でもわからないが、きっと自分の趣味なのだろう

(*゚∀゚)(…………襲いてぇ……)

兄の友達の、凛々しい眉を持った誰かさんのような思考には気付かない

無警戒な背中に 小さく振られる手に さらさらの髪に
しぃに、触れたいと思った

赤ずきんの狼は、きっとこんなふうに思っていたのだろう


24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/21(水) 03:32:09.33 ID:Qd8Q4Uhb0

しぃと電車に乗った
地元は田舎なので、県庁所在地まで行かないとロクなものは手に入らないのだ

今日は、画材を買いに出た
趣味の範囲でだが、しぃも自分も、絵を描くことは好きなのだ
しぃは紙の材質に拘る
自分はペンに拘る
画材専門店に行く必要があった

電車に乗り、しぃを手摺の近くに追いやる
その後ろに、自分が立った
今日は少し、人が多いからだ

目の前の髪を指で梳いた

(*゚ー゚)「なぁに?」

(*゚∀゚)「…………なんでもない」


25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/21(水) 03:33:00.17 ID:Qd8Q4Uhb0

触ってみて、変化に気付いた
しぃの髪質が、昔と変わっていた

サラサラしていることに変わりはない が、昔のようなするりと消えてしまいそうな感覚がなくなっていた
しぃの髪が好きだっただけに、少しだけ残念だった
生活環境が変わったせいなのだろうか
自分の知らないしぃなど、想像もしたくなかった

そのまま暫く撫で続けていると、不意に肘鉄をくらった
正確に鳩尾を狙った、洗練された鋭い動きで

(*; ∀ )「おふっ!!」

(*゚―゚)「いつまで撫でてんのさ」

(*; ∀ )「……丁度いい高さにあったもので、つい……」

しぃは通常運行だった


26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/21(水) 03:34:18.43 ID:Qd8Q4Uhb0

画材屋には一時間ほど滞在した
狭い店内を、自分が欲しいものの区画だけ真剣に見て回った

しぃとはあえて別行動を取って、買い物をした
しぃはずっとべたべた一緒に居ることを好まない
程よい距離が必要な、繊細な性格の持ち主だ

自分は紙と、小さなスケッチブックと、色塗りに使うマーカーを数本買った
しぃは高そうなスケッチブックを数冊と、油絵具のチューブを数本抱えている

学校の部活で使うらしい
暗い色の、太いチューブだった

自分の描きたい絵を否定されてる とぼやいた時の顔を思い出した
向こうでは、どんな絵を描いているのだろう
自分には、知る術がない
しぃが少しだけ、遠く感じた


27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/21(水) 03:35:44.34 ID:Qd8Q4Uhb0

画材屋を後にし、しぃが勧めたカフェに入った

こじんまりとしたところで、言われなければ気付けなかっただろう
アンティーク調の落ち着いたカフェで、しぃによく似合っていた

客の少ない店内で、ランチセットを頼んで近況を報告し合った
最近は背についてからかわれることにコンプレックスを抱いているらしい

(*゚∀゚)(そこもしぃのかわいいとこのひとつなのに)

口には出さない
気にしている背について触れると、いくら褒めても貶しだと取られるから


しぃは後ろ向きだ
気にしている背も、小さな手も、癖で噛んでしまう丸い爪も、
どれもしぃの魅力なのに
しぃはそれを否定する


28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/21(水) 03:36:39.75 ID:Qd8Q4Uhb0

テーブルの上に置かれた小さな手を取る
しぃが小首を傾げた
あぁ 仕草まで全てが可愛い

(*゚∀゚)「……かわいい手」

(*゚-゚)「可愛くないし どうせちいさいですよーだ」

(*゚∀゚)「俺はこの手が好きなんだ」

(*゚ー゚)「……きもい」

(*;゚∀゚)「ひでぇ……!!でも好きなんだよ。温かい」

(*゚ー゚)「夏真っ盛りなんだから、暑いんじゃない?」

(*゚∀゚)「人の温度は太陽とは違うよ 優しい温かさなんだ」

(*゚ー゚)「……なんかここに、クサい台詞を吐いてる紳士が…」

(*゚∀゚)「何とでも言え」


29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/21(水) 03:37:12.19 ID:Qd8Q4Uhb0

しぃに『好き』を言えるのは、このくらいが限度だ
小さいところでしか伝えられない
伝えきれない『好き』は、また胸の内に仕舞うだけだ


胸の内が苦しい
自分の中の『好き』がどんどん大きくなっていく

触れたい 撫でたい 抱き締めたい    ……愛でたい


心がどす黒い欲で染まっていくのを実感しながら、無理矢理作った笑顔でしぃと雑談をしていた

モララーの言う『見守る愛』は、言う程簡単ではない
心が『庇護愛』の域を超えていく  どうしても、しぃを求めてしまう
目の前で無防備な笑顔でパスタを食べているしぃを、いっそ突き倒して組み敷いてしまいたい程に

この欲は、力いっぱい抱き締めるだけではきっと足りないだろう


31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/21(水) 03:38:24.30 ID:Qd8Q4Uhb0

しぃと過ごす一日は短い
気付けば時計の針は六時を指していて、しぃのバスの時間を考えるともう帰らなければならない時間だ


この時間が、大嫌いだった
時間なんか止まってしまえばいいのに
電車なんか、バスなんか止まってしまえばいいのに
しぃと一緒に居たい
もっとしぃの傍に居たい
しぃに、少しでも触れたい

願いは何一つ叶わないまま、帰りの時間は過ぎていく

電車に乗り、地元に戻る
バスの時間まで、あと五分

ベンチに座って、待つことにした
無言で近付いてその小さな手を握る
そっと 服や鞄で隠れるようにして


32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/21(水) 03:39:25.26 ID:Qd8Q4Uhb0

(*゚∀゚)「…………あったかい」

(*゚ー゚)「……そう」

俯いていて顔は見えないが、しぃの声は優しかった

指を絡めて吐き出す

(*゚∀゚)「ごめん」

(*゚ー゚)「…………」

拒絶は、しない
ただ無言で、指を絡めて手を繋いでいた

切なかった
切なかったが、その切なさすらも愛おしかった
空間が、愛おしかった


33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/21(水) 03:40:09.30 ID:Qd8Q4Uhb0

途切れる会話
次はいつ会えるかわからない
それでも、それだからこそ、言葉が見つからない

そろそろかな、と言って、しぃはベンチを立つ
絡んだ手は解かれた

(*゚∀゚)「…………」

(*゚ー゚)「…………」

しぃの半歩後ろで、バスを待つ
バスが来たら 次に会うのはいつになるだろう
考えただけで、胸が苦しい

少し視線を下げれば、前を向いているしぃの後姿
抱き締めたい衝動は、抑えておかなければならない

かわりに 頭を撫でた


34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/21(水) 03:41:26.55 ID:Qd8Q4Uhb0

(*゚ー゚)「…………なんですか」

(*゚∀゚)「………なんとなく」

(*゚ー゚)「意味、わかんない」

肘鉄は、飛んでこない

(*゚∀゚)「…………次は、いつ会えるかな」

(*゚ー゚)「……………………わかんない。遠くなければ、九月には一度余裕が出来るはず」

(*゚∀゚)「そっか ………じゃあ、その時まで」

(*゚ー゚)「うん。…………あ、丁度バス来たね」

(*゚∀゚)「…………」

(*゚ー゚)「…………ばいばい」

(*゚∀゚)「また、な」


35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/21(水) 03:42:09.64 ID:Qd8Q4Uhb0

バスに乗り込むしぃの手を、掴みたかった
引き戻して、一度だけでいい
抱き締めたかった

しかし、現実はそうはいかない

バスの中に消えて行くしぃ
動き出すバス

見えなくなるまで見送った後 一人、帰路についた

二人で歩いた道を一人で帰るのは、苦痛でしかなかった

今日の情景が思い出される
嬉しかったこと
楽しかったこと
恥ずかしかったこと

そして溢れ出す、後悔


37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/21(水) 03:43:10.75 ID:Qd8Q4Uhb0

ああ言えばよかった
あれを言いそびれた
最後まで勇気が出ずに、意味もなく頭を撫でた
髪の手触りは 昔とは変わっていた

指を絡めて吐き出す台詞すらも
「ごめんなさい」


何も進歩しない
愛が伝わらない
哀愁しか漂わない

もどかしかった


唇を噛んで、家に帰る


38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/21(水) 03:43:36.84 ID:Qd8Q4Uhb0

モララーが言っていた


現実の同性愛なんて、物語にあるような甘いものじゃない

甘いのなんか一瞬で 他は苦く苦しいものばかりで

最期は必ず悲恋が残るだけなんだ


全くその通りだと思った
胸が、心臓が 握り潰されるように苦しかった


39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/21(水) 03:44:09.70 ID:Qd8Q4Uhb0

(*゚∀゚)想いの重さのようです  第三話 了



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