('A`)ドクオと見えない敵のようです

5 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 19:44:10.92 ID:3l7o05tbO
今日もまた、任務だ。

ここに来て何度目となるか分からない任務だ。

今回の目標は、俺達にとっては数知れぬ敵の内の一人にすぎない。
ニューソクには敵が多いのだ。

だから俺達のような人間が必要になる。
だから俺達のような人知れず戦う人間が必要になる。
だから俺達は敵共と戦い続けている。

だから、今回の任務も大丈夫だろう。

相手はラドン。相手はテロリスト。

俺達にとっては平凡な敵でしかない。

だから、大丈夫だ。

大丈夫。

何事もなく何時も通り任務を遂行し、
渋澤のオッサンとイヨウの仇を討つだけだ。
トソンはイヨウの死に少なからずショックを受けていたようだが――大丈夫かね。

まぁ、アイツも、感情を抑える術ぐらいは持っているんだ。だから、大丈夫だろう。

目標はラドンのボス、フォックス、その拘束。場合によっては殺害も許可。
……そんじゃ、気を引き締めて行きますかね。

6 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 19:45:16.72 ID:3l7o05tbO


         ('A`) ドクオと見えない敵のようです



               Phase.4 潜入


7 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 19:47:13.52 ID:3l7o05tbO
******

ニューソク国防情報局、第三課。

その秘匿部隊“IEU”を乗せた小型潜水艇は、
カナソク南部の海岸に上陸した。

武器や装備を持って潜水艇から降り、
ドクオ達はカナソク領土の土を踏み締める。

ニューソクとは時差があるので、カナソクは既に深夜を迎えており、
周囲は真っ暗闇となっていた。

闇の中をライトも無しに歩き続ける彼らは、
砂利道に停車している一台のトラックを発見した。

近づいていくと、向こうも気付いたようで、
助手席から男が一人降りてきた。

(`・ω・´) 「待っていた。コンテナで装甲服を装着後、目的地へと向かう」

その男は、大柄で体格の良い、ID392、シャキンであった。
IEUのメンバーはトラックの荷台にあるコンテナの中へと入って行き、
それぞれ手に持っていたケースを開けると、装甲服を手に取った。

8 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 19:48:49.22 ID:3l7o05tbO
装甲服。

これは防刃、防弾性能の優れた繊維で作られた防弾衣に、
装甲を覆わせることによって高い防護性能を持たせ、
更にアクチュエーターを搭載させて身体能力を強化する、
ニューソクの高度な技術力によって制作された最先端の戦闘用スーツだ。

もっとも、最先端というのは他国に比べればという話で、
ニューソクでは十年ほど前から実戦で配備されている。

今、彼らが装着しようとしているのは特殊部隊など、
精密な動作や静音性に優れる軽装甲服というものに分類されるもので、
それを更に改良し、より柔軟性に優れた動作を行えるようにした特注品だ。

IEU式装甲服。

それは、強化骨格スーツと呼ばれる防護スーツにも扱われている、
ゴムにも似た防護繊維を使用し、軽装甲を加えた、精密性、動作性に優れた逸品だ。

通常の軽装甲服よりも防護性に優れており、装甲服にもその性能は劣らない。

(`・ω・´) 「……よし」

手を握り、開き、ゴム繊維のフィット感を確かめると、
シャキンはそう呟き、助手席へと向かう。

部隊章の付いていない、黒い装甲服を纏った彼らIEUを乗せたトラックは、
エンジンを震わせ、ラドン達のアジトへと向かって走りだす。

9 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 19:50:35.22 ID:3l7o05tbO
******

(’e’) 「では、私はここで待機しています―――幸運を」

目的地から500mほど離れた所に到着すると、
運転席に座る諜報員が言った。

392、シャキンは頷いてみせるとドアを開いて降車する。

車の交通の為に舗装された道に足を着け、前方を見据えると、
その先には煙突がいくつか立つ巨大な廃工場があった。
今、夜空には排気の煙は昇っておらず、稼働は停止しているようだ。

一見したシャキンはトラックの後部へと進み、コンテナをノック。

すると、僅かの間の後に扉が開き、月明かりが差すことで、
暗闇から武装したIEUの面々が現れる。

('、`*川 「はい、アンタの分」

ヘルメットを被った装甲服姿のペニサスが先に降り、
シャキンにアサルトライフル―――カスタムパーツ、
アンダーバレルグレネードランチャーにサプレッサー、
そしてスコープが取りつけられたM4A1と、バックパックを手渡した。

10 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 19:54:13.60 ID:3l7o05tbO
(`・ω・´) 「すまない」

受け取った彼はそれを装着し、
続々とコンテナから隊員達が降りてくるのを確認し、
最後の一人がコンテナから出てくると、口を開いた。

(`・ω・)σ 「現在、我々は目標地点の500mほど西に位置している。
        見えるとは思うが、アレが目標であるラドンのアジトだ」

人差し指を立てて廃工場へと向けて彼は語りだす。

(`・ω・´) 「あそこは見ての通り廃工場だ。
        カナソクが石油資源の発掘に熱を入れていた時代に作られ、
        爆発事故を起こしたことで廃棄された場所だ」

(`・ω・´) 「一応、修理は行われていたようだが、その間に、
        世の中は石油エネルギーから電気エネルギーへと流れが変わってしまっており、
        カナソクも遅れを取るわけにはいかないと、ここをすっぱり切ったわけだ」

(`・ω・´) 「爆発事故が起きた為に、地元住民はここに近づこうとはしないらしい。
        ―――アジトにしては目立つが、条件としては充分だろう」

11 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 19:55:26.61 ID:3l7o05tbO
ミ,,゚Д゚彡 「あの中を捜索するのか、少々骨が折れそうだな」

('、`*川 「まぁ、人数は20名強でしょ? 片っぱしから潰してけば楽なもんよ」

(`-ω-´) 「だといいがな。情報通りであればいいが」

ミ,,゚Д゚彡 「不安要素とすれば、カナソク軍か」

川 ゚ -゚) 「カナソク軍、か。カナソクはラドンを支援しているようだからな。
       あり得ない話では無いかもしれん」
  _
( ゚∀゚) 「その場合、どうすんだ? 俺達の戦力じゃ、相手しきれないぜ?」

(`-ω-´) 「“モラル”はカナソク軍との戦闘について、
        何も言及はしていなかったが――――」
  _
( ゚∀゚) 「おいおい、ぶち当たってからじゃ遅いんだぜ?」

(`・ω・´) 「あぁ、その通りだ。“モラル”は、手は打ってあると言っていた。
        何か圧力をかけてあるのかもしれん」

12 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 19:57:09.52 ID:3l7o05tbO
もし、とシャキンが続けて、

(`・ω・´) 「カナソク軍らしき戦力と戦闘になったら、速やかに撤退しろ。
        我々では太刀打ち出来ん。私達は正体不明の部隊なのだ、
        せっかくの好機ではあるが、死亡して正体を晒すよりは国益の為になる」

そう繋げた。その言葉にIEUの隊員達は「了解」と応える。

ミ,,゚Д゚彡 「では、作戦通り二手に分かれよう」

フサギコの言葉に反応した隊員達は、
前に進む者と工場の東側へ回って行く者に分かれた。

前方へと向かう者達はジョルジュ、クー、ドクオ、トソン、ブーンといった、
比較的、三課の諜報員となって日の浅いメンバーで、
東側、裏口に向かって進んでいくはシャキン、ペニサス、フサギコの、
390番台の経験が豊富なベテランメンバーだ。

シャキン達をAチーム、ジョルジュ達をBチームとし、彼らIEUはミッションを開始した。

13 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 19:58:36.16 ID:3l7o05tbO
******

Bチーム、400番台の隊員達は廃工場を正面から進んでいく。

姿勢を低くし、足音を立てないように歩く彼らは、
工場の敷地内へと入りこんだ。

アスファルトで舗装された道を音もなく移動し、周囲を警戒。
どこで敵とはち合わせるかも分からない。
細心の注意を払う必要がある。

散開し、タンクやパイプ、機材などの物影を伝いながら、
彼らは工場内にそびえるビルの入り口へと向かう。

('A`) 「………」

錆の浮いたトラックの陰に隠れたドクオは、
補修工事が途中で切り上げられたことで、
ビルには所々剥き出しとなっている鉄骨があり、そこを眺める。

……狙撃するには、絶好のポイントだ。
見晴らしがよく、下からは人の姿を確認し難い。
見張りを置くにはうってつけの場所だ。

凝視するが、月明かりだけではその深くまでは見通せず、
ドクオはそこから狙撃されぬよう、死角に回って進んでいく。

14 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 20:00:33.28 ID:3l7o05tbO
人が潜んでいるにしては、ここはあまりにも静かすぎる。
人らしき物の気配は一切感じられず、誰もいないかのようだ。

そこで、体内通信が電波を受信した。
伝えられる声は分隊長であるジョルジュのものだ。
  _
( ゚∀゚) 『おかしい……敵の姿が確認できない。
      各位、その場で待機しろ』

『了解』と返答をした隊員達は、物影に隠れたままそれぞれ立ち止まる。
すると、ドクオの背後を歩いていたクールが、彼の肩に手を置いた。

川 ゚ -゚) 「様子がおかしいな、誤情報か?」

小声で語りかけてきた彼女に、ドクオは同じく小声で返す。

('A`) 「いや、そのはずはない」

川 ゚ -゚) 「ならば、逃げられたか」

15 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 20:02:32.18 ID:3l7o05tbO

('A`) 「……罠?」

川 ゚ -゚) 「……」

無言になったクールは、無表情のまま視線をビルの端へとやって、

川 ゚ -゚) 「403」

小さく、彼の暗号名を呼ぶ。

川 ゚ -゚) 「裏切り者が、内通者がいるかもしれない、と、
      IEUの隊員なら“モラル”から聞いているな?」

('A`) 「あぁ……」

川 ゚ -゚) 「もし、この情報がその者に流された、偽物だとしたら、
      ―――私達はまんまと一杯食わされたことになるのではないか?」

('A`) 「……まだ分からない」

川 ゚ -゚) 「あぁ、そうだな……」

とにかく、と繋げて、クールは言う。

川 ゚ -゚) 「死ぬなよ」

16 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 20:04:50.61 ID:3l7o05tbO
('A`) 「……了解」

ドクオはビルの隙間へと寄せていた視線を、
入口の大型シャッターと扉へと向ける。

周囲を見渡し、やはり敵がいないのを確認すると、
  _
( ゚∀゚) 『内部へ突入する。各位、扉から侵入するぞ。
      トラップに留意。Aチームの分の敵を引き付けるぞ』

『了解』と再び声が返り、彼らは入口へと向かい歩を進めて行く、

が、

そこで、大量の銃声が裏口から響き渡った。
突如発生した轟音に、動き始めようとしていた隊員達は足を止める。

遅れて、体内通信が繋がった。

(;`・ω・´) 『こちら392、敵の待ち伏せを受けた。
         数が多い、救援を頼む』

……バレていたのか!?
頭の内に悪態を吐いて、ドクオはジョルジュの応答を待つ。

17 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 20:06:31.60 ID:3l7o05tbO
  _
(;゚∀゚) 『待ち伏せ!? 至急、そちらに救援を送る。
      到着まで何とか―――』

そこで、ジョルジュは言葉を作れなくなってしまった。
突然、地震が起きて彼は体勢を崩し、
転倒しそうになってしまったのだ。

一歩を後ろに引いて、震源を彼らは確認した。

目前には何かが落下したことで砂煙が舞っており、
それのシルエットは微かにしか分からない。

しかし、反射的にそれに銃を向けて発砲したのは、
今までに訓練を積み重ねてきた為に出来たことであった。

五つの銃火が砂煙を貫いてそれへと降り注ぐ。

着弾し、赤い飛沫が大量に散った。

砂煙が風に流れて晴れていき、姿が露わとなっていく。

18 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 20:07:36.44 ID:3l7o05tbO

( ゚∋゚) 「……」

それは、身の丈4メートルはあるであろう、
人の形をした巨大な生物であった。

筋骨隆々とし、先程の銃撃でも傷一つ付かなかった、
堅い表皮を持つそれは、
巨人は血の如く赤い双眸をドクオ達に向けて―――

(#゚∋゚) 「――――ッ!!」

咆哮した。

人の形こそしてはいるが、人ではない、獣の雄叫び。
耳をつんざく大音を鼓膜に叩きつけられた隊員達は、
本能的に巨人から距離を取った。

得体の知れないものと相対する、恐怖から。

19 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 20:10:14.54 ID:3l7o05tbO
しかし、

(;^ω^) 「ッ!?」

その時、406、ブーンの装甲服の肩に、火花が一つ散った。

衝撃を受け、火花の散り方から弾丸の軌道を割り出し、
射手の位置を彼は察知する。

上だ。

先程から、ドクオが気にかけていたビルの隙間からだ。

(;^ω^) 「じょ、上方に注意!!」

叫び、ブーンは鉄骨の積まれた場所へと向かって駆けていく。
トソンとジョルジュは、威嚇射撃を行いながら同じく走って行く。

すると、敵の一名がビルから落下し、アスファルトに激突して死亡した。
後退を始めていたクールに撃ち抜かれたのだ。
射線が一つ減ったことで銃火が緩んだ。

これを好機としてクールは一気に距離を取ろうとするが―――

( ゚∋゚) 「――――ッ!!」

巨人が吠え、クールへと向かって突進していく。
長く太い両の腕で彼女を捉えながら、
猪が如き勢いを以って猛進する。

20 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 20:12:17.42 ID:3l7o05tbO
川;゚ -゚) 「なっ!?」

燃料タンクを乗せられたトラックへと走っていた彼女が、
背後に迫る巨大な手に気付いた時には、
既に後数センチというとこまで近づいていた。

急いで銃を構え、巨人の赤い眼へと照準し引き金を引こうとするが、遅い。
視界を塞ぐ大きな手は彼女を掴もうと掌を握っていき、

(メ*∋゚) 「ギャアアァァァァァァァッ!!」

右目に血潮を立ち昇らせて、手は離されていった。
続いて顔面を集中的に弾丸が抉っていき、
赤く染まっていった。

その火線の元を辿れば、ドクオが居た。

彼はいつの間にか二名の敵を仕留めており、
ビルの上部からは死角となっている、入口のすぐ傍に移動していた。

片目を抑えて化物は苦しみ、膝を突いて上半身をくねらせる。

すると、体内通信が入って、

('A`) 『あの生物兵器は俺が引き受ける。ビルに隠れた敵を頼む』

ドクオの声で、隊員達にそう伝えた。

22 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 20:14:09.49 ID:3l7o05tbO
  _
( ゚∀゚) 『やれるか?』

('A`)『時間は稼ぐ』

短い言葉で行われた会話だが、
たったそれだけのやり取りをしてる間に、
生物兵器は、巨人は立ち直り、ドクオへと突進していく。

撃たれた顔面には傷一つ残っておらず、
潰れた筈の眼球は再生され、赤い眼にはドクオが映っている。
眼は、怒り狂ったかのように鋭く変形していた。
  _
(;゚∀゚)川;゚ -゚) 「……ッ!?」(^ω^;) (゚、゚:トソン

その様を見たIEUの隊員達は戦慄する。

そして疑問に思う。

こんな物を倒せるのか、と。

しかし、無表情を崩さず、ドクオは冷徹に行動を開始する。
M4A1のサプレッサーの付いた銃口が、巨人の顔を捉える。
照準を定めた彼は即座に引き金を引き絞った。

向かってくる巨体に弾雨が降り注ぐ。

23 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 20:16:44.60 ID:3l7o05tbO
が、

顔の前に丸太のような右腕をかざして、巨人は弾丸を防いでみせた。

硬質な表皮に火花となって弾雨は散っていき、
ドクオの目前までそれは迫ってきた。

2m程に間合いを詰めた途端、巨人は眼前にかざした腕を振るい、
ドクオを薙ぎ払おうとする。

大木の如く巨大なそれは素早く迫り、
腰を深く落として身を屈めることで彼は避けてみせる。

頭上で巨大な風の塊が通過していき、その威力の高さが窺え、
背筋に凍りつくような感触が走っていった。
すかさずドクオは銃を構え、顔面を狙う。

しかし、

(#゚∋゚) 「――――ッ!!」

もう一撃が、振り下ろしの一撃が放たれようとしていた。

24 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 20:18:25.18 ID:3l7o05tbO
('A`) 「……!」

身を右へと投げ出して飛び、
片手を突いて宙で一回転をすると、
ドクオは巨人から見て左側に着地した。

だが、ほんの少し遅れて巨人が構えていた左腕が地面に叩き込まれると、

(;'A`) 「なっ……」

地響きが起こり、思わずドクオは体勢を崩してしまう。
巨人が再び攻撃を仕掛けてくる前に距離を取らねばと思うが、
足元がふらつくせいで思うように走ることが出来ない。

よろけながら何とか走るも、すぐに巨人が彼へと振り向く。

振動が徐々に治まり、ドクオは少しずつ疾走の速度を上げていく。

速度が、彼のトップスピードに乗り始めるか否かというところで、
巨人はドクオへと向けて突進を始めた。

足を一歩踏み出すと、それだけで彼の10歩分ほどは進み、
突進が速度を上げ始めた頃にはドクオとの距離を三分の二までに縮めていた。

25 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 20:19:43.89 ID:3l7o05tbO
激突。

その寸前にドクオは横転をし、足を化物の胴に掠めかける。
回転をしたまま銃を突きつけて発砲。

右頬と首筋に食らいついた弾丸は確かに肉を削った。
散っていく肉と血液を視界に収め、
ドクオは遠くに聞こえる銃声と呻き声を耳にする。

仲間が交戦し、敵を排除したのだろうと思い、
もう少し時間を稼がねばと奮起。

突進の勢いを殺せず、そのまま巨大なタンクへと突っ込んだ巨人は、
煙突もタンクも全て粉砕していった。

轟音が鳴り、錆の混じった粉塵が周囲を覆い、
金属片をまともに食らったそれは、
身体中を血塗れにしながらもドクオを振り向く。

その様を眺めつつも彼はリロードを行い、

('A`) 「……いい加減くたばれ」

M4A1の銃口の下、アンダーバレルグレネードランチャーの口を突きつける。
そして左手で引き金を引くことで、榴弾が巨体へと発射された。

27 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 20:21:05.31 ID:3l7o05tbO
着弾。

胴に衝突し、破片をばら撒いて爆発していく。
タンクの中に微かに石油が残っていたのか、
巨人の全身には炎が覆われていった。

膝を突き、身を振りまわしてのたうち回る化物。
その巨体で暴れられたら敵わないと、ドクオは更に距離を取り、
トラックの蔭へと隠れて行く。

グレネードランチャーの弾薬を詰め、
険しい目つきで炎に飲まれた巨人を注視する。

やがて暴れ回っていた巨人も動きを止めてその場に倒れた。

……やった。

ドクオは、そう確信するが―――

(# ∋) 「グゥウゥゥゥゥッ!!」

腹の奥底に響くような、鈍い唸り声を上げて、
炎を纏ったまま立ちあがった巨人は、
力強く身を振りまわすことで身にまとった炎を振り払っていく。

28 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 20:23:03.55 ID:3l7o05tbO
('A`) 「……まだ駄目か」

呟き、リロードの済んだ銃を再び構える。

顔面をよく狙って、セミオートで二発銃弾を放つ。
一発目は右目の下の頬を削り、二発目は眼球を撃ち抜いた。

構わず、巨人はドクオへと突進を開始するが、
一歩を踏み出そうとすると、一瞬、足をふらつかせた。

……効いている?
疑問符を浮かべ、化物の行動を注意深く観察しながら、
ドクオはもう一度引き金を引く。

が、化物は先程よりも素早くドクオへ向かって突っ込んできた。

辛うじてそれをかわした彼は、反撃をしようと再び銃を構えるが、
化物は目前にあったトラックを両腕で掴み取り、
豪快にそれを振りまわした。

たまらず、ドクオは銃を片手に持ち替えて全力でその場を離れる。

しかし、トラックと長く大きな腕のリーチは凄まじく、
装甲服の背に掠めて火花が散った。

29 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 20:25:38.19 ID:3l7o05tbO
前へと、一歩を踏み出す。

だが、トラックは既に振られており、ドクオの体を捉えている。
当たれば一たまりもなく、幾ら装甲服といえども、
無事でいられるわけもない。良くて重傷、悪ければ即死だ。

トラックが、空を薙いだ。

ドクオが巨人の視界から突然消えたのだ。

(メ゚∋゚) 「?」

疑問符を浮かべると、巨人は身体の違和感にすぐに気付いた。

(メ゚∋゚) 「!!」

ドクオは、巨大な肩の上に乗っかっていた。

彼は踏み出した一歩を前方に大きく蹴り、
瞬時に巨人の股を抜けて背に登っていたのだ。
装甲服のパワーアシストを受けているが故に得た、
驚異的な身体能力を武器として。

肩に登っていたドクオはそのまま頭上へと進み、

('A`) 「……っ!!」

鉄の無骨なサバイバルナイフの刃を掲げ、巨人の左目へと突き刺す。
血飛沫があがり、肉を裂く気味の悪い音が鳴った。

30 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 20:29:18.00 ID:3l7o05tbO
痛みに電流が走ったように反応した化物は左目を左で押さえ、
ドクオを右手で払い除けようとする。

咄嗟に彼はその場から離れようとするが遅く、
巨大な手の甲によって吹き飛ばされてしまった。

しかし、何のことは無く空中で姿勢を整え、
数メートルほど後方へと滑り、地面に火花の尾を引きながらも着地してみせる。
装甲服の耐衝撃能力のおかげで、彼は衝撃をほぼ0にすることが出来たのだ。

突き刺さったナイフの痛みに悶え、苦しんでいる巨人は片目でドクオを捉え、
思いきり力を込めて突進しようと足を踏み締める。

左の足が前へと突きだされ、地面に着くが早いか、

('A`) 「……!?」

(メメ∋メ) 「――――――っ!!」

残る右目に血の花が咲き、巨人は痛みに絶叫する。
誰かの援護射撃、そう判断したドクオは膝を突いた化物の懐へ一気に突っ込んでいく。
次いで、疾走の勢いと全身の力全てを込めたアッパーカットを巨人の鳩尾へとぶちかました。

衝撃が肺を突きぬけて脳天にまで達し、化物は身をくの字に折った。
瞬間、黒の装甲服を着た者が身を独楽の如く回転させて頭へ回し蹴りを叩き込む。
側頭部に極まった一撃は脳を揺さぶり、その機を逃さずドクオが追撃。

31 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 20:30:39.62 ID:3l7o05tbO
右の爪先に全力を込めて鳩尾へ再び叩き込むと、
内蔵が破壊されたのか、巨人は口から巨大な血の塊を吐きだした。
瞬時にもう一撃が加えられ、踵落としが頭頂部に叩き込まれる。

すると、骨の砕ける鈍い音が工場に響き、
脳が破壊されたのか潰れた両の目から更に血を噴出させた。

着地した装甲服姿はクールの物であり、
ドクオと同じく銃を構えると――――

川 ゚ -゚) 「排除する」('A`)

引き金をほぼ同時に引き絞り、左胸に弾雨を浴びせた。
二人の集中砲火を受けて胸の肉がどんどん抉られていき、
やがてそれは骨にまで達した。

瞬間、二人はグレネードランチャーの引き金を引き、
榴弾を心臓に直撃させた。

二つは重なり合って一つの炎と轟音となり、
火球が胸に生まれ、爆発は骨を破壊し心臓を焼き尽くした。

巨体が地面にゆっくりと伏していき、アスファルトに肉がぶつかる音が轟いた。

32 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 20:33:59.50 ID:3l7o05tbO
再生するのではないかと二人は警戒したが、
起き上がってくる様子は無く、化物は完全に死亡したようであった。
巨人を倒した。これで大きな障害は一つ取り除けた。

そう判断をしたドクオは次に、
クールが負傷していないかを確かめる為、振り返る。

すると彼の目に映ったものは、

(゚A`) 「……!」

川 ∀) 「………」

血に濡れた顔に、口端を大きく歪めて笑みを浮かべていたクールだ。
死体を見つめるその目は妖しく輝いており、
血に塗れながらもその笑みは不気味に浮かんでおり、どこか恍惚そうに見えた。

('A`) 「……大丈夫か?」

クールの笑みに、何か得体の知れない物を―――忘れかけていた何かを、
感じ取ったドクオは不意にそう尋ねた。

33 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 20:37:43.84 ID:3l7o05tbO
川 ゚ -゚) 「あぁ、大丈夫だ。お前は?」

自分のほうへと振り返ったクールの顔は、何時もの無表情なものだった。

……錯覚か。
疑問に思うが深くは考えず、
任務を果たすことを優先としたドクオは短く応えた。

('A`) 「あぁ……」

応えつつ、体内通信を開き、

('A`) 『401、生体兵器は排除した。指示を』

遅れて返答が来た。
  _
( ゚∀゚) 『やったのか!? 周辺の敵はだいぶ片づけた。
      お前はこっちに合流してくれ。406と402はAチームの救援を。
      俺達はビル内部に突入し、内部から敵を排除しつつ目標を捜索する』

『了解』と通信を聞いていた皆はそう答えて、行動を起こした。

35 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 20:39:36.89 ID:3l7o05tbO
******

裏口のドアへと向かったIEUのAチームは、苦戦を強いられていた。

待ち伏せを受けて損害を被ってしまったが、
装甲服を着ていた彼らは軽傷で済み、物影へと隠れて応戦。

ビル内に隠れたテロリスト達の数は多く、銃火が激しく降り注いでくる。

休憩を取る為に置かれた小屋の陰に隠れたペニサスとフサギコは、
続々と殺到してくる弾丸を前に、反撃できずにいた。
その反対方向、シャキンはビル上部からは死角となる、ビルの壁に張り付いていた。

だが、裏口から出てきたテロリスト達にとっては、良い標的にしかすぎない。

敵の一人が、シャキンへとサブマシンガンの銃口を突きつける。
彼はそれに気付かず、ずっとビルと鉄骨の隙間に隠れた敵へと視線を向けていた。
引き金が絞られ、銃声が鳴るよりも早く、ペニサスが放った銃弾が敵を撃ち抜いた。

敵の放った弾はあらぬ方向へと飛んでいき、ビルの上部に隠れた敵は、
小屋から身を乗り出したペニサスを狙う。
しかし、照準することすらままならずに彼はシャキンに撃ち抜かれて落下していく。

36 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 20:42:01.24 ID:3l7o05tbO
互いが互いに作用し、自分が倒せる敵を倒し、倒せない者は仲間に任せる。
長年の経験と信頼がなせる、息のピッタリ合った連携であった。

それでも、その連携も圧倒的物量の差に押されていってしまうことになる。
上から降り注いでくる火線が増加し、攻撃の手が強まったのだ。
裏口から敵の増援が押し寄せ、更にその手を強化しようとする、

が、

フサギコが身を伏せたまま小屋から身を乗り出し、
アサルトライフルに取り付けられたグレネードランチャーの銃口をそこへと向け、発射。

空中に弧を描いて飛んでゆく榴弾は、敵達の足元に衝突すると爆発し、
爆炎と強烈な風を巻き起こして敵を吹き飛ばしていった。
直撃を食らった者たちは即死、運が良くとも戦闘不能となり、
爆破範囲の近くにいた者たちは破片を食らって負傷した。

フサギコは発砲と同時に身を転がして小屋の陰へと隠れていく。

ペニサスはそれと入れ替わるように腕を陰から突きだし、
銃口を裏口へと向けて弾丸をばら撒いた。

しかし、それでも尚敵の攻撃の手が緩む気配は無い。

37 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 20:48:16.69 ID:3l7o05tbO
フサギコはリロードをしながら体内通信を繋ぎ、

ミ,,゚Д゚彡 『援軍はまだか!?』

(`・ω・´) 『402と406がこちらへと向かっている。
        Bチームは内部に侵入し敵と交戦中とのことだ』

('、`*川 『はっ、あっちが陽動する予定だったのに、
      とんだ外れクジを引いたもんね』

ビル上部の敵を撃つ為に仰け反らした身を、シャキンは元に戻す。
ついで、腰のバックパックからグレネードを取り出し、裏口の中へと放り込んだ。

コロン、と金属音が響いたのが聞こえ、その後には悲鳴と轟音が広がった。
ドアを構成していた強化ガラスが粒子となって散り、裏口は完全に吹き抜けとなった。
そこへとシャキンは鋭い視線と銃口を向けて警戒。

(`・ω・´) 『予定との違いはあるが、それぞれがそれぞれ役割を果たしていることに変わりない。
        私達が陽動を行うことになったのならば、任務遂行の為にそうするだけだ』

『以上』シャキンはそう締めくくって通信を切る。

敵が一名、裏口から身を乗り出し、シャキンの銃口はそれを捉えていた。
引き金を一度絞ると、頭から血を立ち昇らせて敵は死亡した。

次いで銃身を上に振ると、こちらへとグレネードを放ろうとしている腕を視界に収める。
手首を反して拳大の球体を放ろうとしていた手を、
シャキンは即座に照準し、小さい的ではあるが難無く撃ち抜いてみせた。

39 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 20:52:47.26 ID:3l7o05tbO
アサルトライフルで、しかも戦場の混乱の中で瞬時に行われた、神業じみた射撃。

撃ち抜かれたグレネードは破片をばら撒いて爆発を起こした。
ペニサス達は裏口の敵を牽制。

すると、突然として銃声と攻撃の手が、弱まってきた。

……撤退を始めたか?
と、疑問符を浮かべるシャキンの耳に、声が届く。

川 ゚ -゚) 『こちら402、406と共にビル内を移動し、裏口へ到着。敵を挟撃するぞ』

(`・ω・´) 『了解、突入を開始する』

遅れて、ビル上部の敵が一名落下してきた。
ビル内に銃声が響き、やがて沈静化していくのを聞くと、
  _
( ゚∀゚) 『こちらAチームリーダー、現在敵を殲滅しつつ三階を移動中。
      上階の敵はこちらに任せろ』

……やっと着たか。
安堵の息を吐き、シャキンはマガジンを交換する。
そして、ビル内の銃声が一層激しくなっていくのを聞き、

40 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 20:56:46.90 ID:3l7o05tbO

(`・ω・´) 『GO AHEAD!!』

体内通信でペニサスとフサギコへと呼びかけて、ビル内へと突入していく。
内部に侵入すると、思いのほか敵の人数は少ない物となっていた。

遮蔽物となる柱などを伝いながらシャキン達は進み、敵と交戦。

殲滅するのに、1分も掛かりやしなかった。
402と406に合流した三人は、上階へと向かう為に階段へと進む。

階段を目前に控えた、その時、

上から何かが落下してきた。

それは人型をしていた。

空中で一回転をし、片膝を突いて着地。

青色の強化骨格スーツに身を包み、日本刀、
機械剣の内の一振りである、No.9“無音”を右手に構えたそれが立ち上がる。
忍者の頭巾にも似たバイザーをした強化骨格の男、
忍者は、階段の前に仁王の如く立ち塞がった。

|/゚U゚| 「目標確認、排除開始」

赤き双眸が、シャキン達をギロリ、と睨みつける。

41 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 21:00:08.45 ID:3l7o05tbO
(`・ω・´) 「……っ!!」

反射的に彼らは引き金を引いた。

五つの銃火がほぼ同時に忍者へと降り注ぎ、彼はハチの巣となる。

そのはずだった。

忍者は迫りくる五つの弾雨を無音によって弾いてみせたのだ。
高速を以ってそれは行われ、彼らにはその手元の動きが見えなかった。

風を切る音と弾丸を往なす音が鋭く鼓膜に突き刺さり、
火花が鮮やかに咲き乱れる。

(`・ω・´) 「……ちッ!」

舌打ちと共に、シャキンはグレネードを放った。
連射される銃弾に紛れて、弧を描いて飛来する榴弾の軌道を完全に見切り、
忍者はそれを真っ二つに切り裂いた。

彼の後方で二つの小さな爆発が起こり、黒煙が立つ。

次いで、忍者は身を踊るように回して弾丸を弾きながらシャキンへと接近し、

42 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 21:01:09.53 ID:3l7o05tbO

(;`・ω・´) 「―――――なっ!?」

胴を切りつけた。

彼は身を逸らして確かにかわしたはずだ、と思っていた。
しかし、彼が身を逸らすよりも早く刃は装甲服を切り裂き、
シャキンの胴に大きな切創を作った。

血飛沫が舞い、シャキンは膝を突いて倒れていく。

だが、冷静な隊員達は慌てずに行動を起こし、
倒れて行くシャキンの背後には既に、ブーンが回り込んで銃を構えていた。
引き金を引き、弾丸は発射されるが弾かれ、
忍者の脇腹に回ったペニサスから次いで銃弾が放たれる。

忍者は身を屈め、銃弾を連射するブーンへと接近。

そして彼の前で倒れていくシャキンの目前で跳躍し、
ブーンの頭上を飛び越えて行く。

彼は振り返ろうとするが、忍者がブーンを見ずに放った蹴りが胴にぶち当たり、
衝撃によって壁まで吹き飛ばされていってしまう。
装甲服の防護性能を以ってしても、その衝撃は軽減しきれなかったようだ。

着地した忍者へと、ペニサスとフサギコは榴弾を放った。
背後と正面から同時に迫る攻撃。
着地時の硬直もあり、対処は不可能かと思われた。

忍者は突然として一回転をした。

43 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 21:02:22.40 ID:3l7o05tbO
独楽のような回転。

強化骨格によって強化された身体能力はたったそれだけの動作でも鋭い風を起こし、
それが終わり忍者が立ち止まった頃には、前後から迫る榴弾は四つに切り捨てられていた。
忍者の周囲を、爆炎と轟音が覆っていく。

爆発に地響きが起こり、空気が震えた。

次いで、火炎の中から青の姿が現われ、フサギコの元へと接近。

ミ,,゚Д゚彡 「くっ……」

日本刀が振りかぶられ、白刃が彼の目前まで迫り、
反射的にM4A1の銃身で受けようとかまえる。

すると、銃身が真っ二つに切り裂かれ、フサギコは衝撃によろけてしまう。
忍者はその隙を逃さず、彼に蹴りを食らわせた。
壁に背から激突したフサギコに、忍者は無音の切っ先を突きつけ―――

|/゚U゚| 「……!?」

弾かれる。

日本刀の刃にはボウイナイフの刃が交わっており、
視界の端からは装甲に覆われた足が飛んできた。

44 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 21:03:40.64 ID:3l7o05tbO
電流が流れたかの如く反応した忍者は、
身を仰け反らせてかわし、一歩を後ろに下げると自分に攻撃してきた者と対峙する。

川 ゚ -゚) 「……」

それは、クールだった。

彼女は右手でボウイナイフの肉厚で鋭い刃を構えており、
刃にも劣らぬ鋭い眼光を忍者へと浴びせている。

|/゚U゚| 「障害……確認」

忍者は無音を構えなおして体勢を整える。
その間に、クールは一気に飛びかかった。

順手で繰り出される右からの一閃。
忍者は無音の刀身でそれを防ぐが、クールに懐へ飛びこまれてしまう。
リーチの長い日本刀とリーチの短いナイフでは、
零距離で使用する場合はナイフのほうが取りまわしやすく有利となる。

クールは、強化骨格にも劣らぬ高速の斬撃をみせた。
疾風のように忍者へと襲いかかる刃は、
強化骨格スーツを次々に切り裂いていった。

45 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 21:04:36.60 ID:3l7o05tbO
ゴムのような布地に刃が走る度に火花が散り、黒い人工血液が舞う。

忍者は、カウンターに膝を突きあげてクールの鳩尾を狙う。
密着した状態で突きだされた膝はほんの少し動きを作るだけで胴へと迫り、

|/゚U゚| 「……ッ!?」

動きを止める。

クールは忍者が突きだした膝と重ねるように、
自分の膝も突きだしてぶつけたのだ。

強化骨格の、人工筋肉によって強化された反応速度。
それについていく彼女は、明らかに異常であった。
衝突しあった膝はそのまま、彼女は空いている片足で忍者の脇腹に蹴りをぶちかました。

|/゚U゚| 「グゥッ……ッ!!」

強化骨格スーツの防護性能でもその衝撃は殺しきれず、
忍者は大きく仰け反った。

その瞬間、クールの突きが忍者の首を狙う。

が、

彼は驚異的な反応速度でバック宙をしてみせ、クールから遠ざかって見せた。
ボウイナイフの切っ先は虚空を貫き、クールは体勢を整える。

47 名前:◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 21:10:36.84 ID:3l7o05tbO
すると、弾丸の如く忍者はクールに切りかかって行き、
彼女が刃を往なしてみせると、腰を深く落として沈みこみ、
ステップを踏んで脇をすり抜けていった。

そして、回転の加わった動きから、唐竹の一撃を彼女の背に見舞う。
背へと迫る刃を振り返らないままナイフで弾き、
クールは忍者へと切りかかった。

忍者はその一撃を防ぎ、後退していく。

その一撃を防がれたクールは、前進して追撃。

遠ざかっていく忍者に銃口を向けていたペニサスは、
クールと共に追って行こうか迷ったが、

(` ω ´) 「……うぅ」

切りつけられ、重傷を負ったシャキンを見て、
彼の応急処置を行うことが先であると判断した。

ミ,,;゚Д゚彡 「ちっ……402の援護を行う。
        406、お前は393と共にここで待機だ」

(;^ω^) 「げほ、けほっ……了解ですお」

せき込みながらも応えたブーンは、クールを追ったフサギコの背中を見送った。

49 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 21:14:24.26 ID:3l7o05tbO
******

窓から銃口を覗かせていた敵がこちらに振り返り、慌てて照準する。

遅く、私はアサルトライフルから弾丸を放ち、
敵の眉間を撃ち抜く。赤い点が出来上がり、
彼は後ろから倒れて行った。

ドクオ君が私を通り過ぎて通路を突っ切って行き、
残存敵がいないか警戒しながら進んでいく。

しかし気配はなく、ビル内は静粛に包まれていた。

私は彼とは反対の方向に視線を浴びせ、警戒。

(゚、゚トソン 「……」

……敵が確認できない。
L字の通路を曲がって行き、私は左、ドクオ君は右に銃口を突きつける。
左右に銃口を振りつつ移動をしていると、不意に音が聞こえてきた。

重く、耳の奥にずしり響いていくような音。
それは何かの駆動音だ。

上からの振動を鼓膜が感じ取り、音源は天井にあるようである。
まさか、と思い、

……屋上!?
瞬時に答えを導き出す。

53 名前:◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 21:20:53.05 ID:3l7o05tbO
(゚、゚トソン 「401、402。屋上からのようですよ」
  _
( ゚∀゚) 「そうみたいだな。各位、屋上へ向かうぞ」

ジョルジュさんの言葉が発されるが早いか、
私達は行動し、屋上へと繋がる階段へと向かう。

ドクオ君がドアを蹴り飛ばして前方を行き、
踊り場を通過して屋上に繋がるドアを開く。

すると、目前にはヘリコプターが置かれていた。

ヘリはプロペラを回転させ始め、空へと飛び立とうとしていた。

そのドアを開き、白い民族衣装を着た初老の男が、
フォックスが――――敵の首領が、

爪'ー`) 「……ふっ」

こちらへと振り返る。

……遅かったな。
そう嘲笑うかのように彼は笑みを作り、
ヘリに足を掛けて中へと入って――――

54 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 21:22:35.51 ID:3l7o05tbO
('A`) 「フォックス!」

名を叫び、アサルトライフルを構えたドクオ君が発砲した。
しかし、プロペラによって起きた風によって弾丸が逸れてしまうのか、
フォックスに命中することは無くヘリに火花が咲いた。

('A`) 「……!」

続け様に彼は弾を放とうとするが、
ジョルジュさんにタックルを食らって引き金を引けなくなってしまう。

(゚、゚;トソン 「なっ!?」

思わぬ行動に虚を突かれ、
思考が停止している間にまた驚かされることが起こり、
私は唖然としてしまう。

ドクオ君を押しのけたジョルジュさんの左肩から血が噴出したのだ。

('A`) 「――――!」

即座にドクオ君はジョルジュさんを左肩で背負い、
片手で銃を構えてヘリへと牽制射撃を加えながら、
こちらに走って引き返してくる。

55 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 21:24:00.43 ID:3l7o05tbO
('A`) 「………」

屋上に再び立つと、ドクオ君は遠ざかって行くヘリを、
相変わらずの無機質な瞳で眺めつつ、

('A`) 「任務失敗か」

ぼそり、とそう呟いた。

(゚、゚トソン 「大丈夫ですか?」
  _
( ゚∀゚) 「あぁ、なんとか。左肩が動かしにくいが、致命傷には程遠い」

('A`) 「これからの行動は?」
  _
( ゚∀゚) 「とりあえず――――」

ジョルジュさんは口を開きかけ、そこで声を止めた。
すると目をひん剥き、口元を引きつらせ、

56 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 21:25:02.33 ID:3l7o05tbO
  _
(;゚∀゚) 「やっべぇ、おいおい!!
      カナソク軍の装甲車がこっちに向かってきてるぞ!!」

屋上の端、その先を彼は指差す。

彼の指の先には、装甲車の車列が出来上がっていた。

それは素早くこちらへと向かってきており、
フォックスがこの場を離れたタイミングから考えて、
敵の増援としてやってきたようだ。

だが、ジョルジュさんは驚愕の表情を掻き消して、
何時も通りの表情へ戻し、指示を出す。
  _
( ゚∀゚) 「撤退だ。Bチームと合流し、撤退するぞ。―――走れ!!」

57 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 21:26:16.23 ID:3l7o05tbO
******

ジョルジュ達は走る。

三階から二階へと突っ走って行き、二階の階段を一気に駆け下りていく。
踊り場に到達し、一階の光景を視界に収めると、
負傷したシャキンと、それに応急手当てを施すペニサスとブーンに出会った。
  _
( ゚∀゚) 「状況は説明したとおりだ。406!
      392を背負って走れ!! 他の奴は周囲を警戒!! 行くぞ!!」

ジョルジュの言葉通りに隊員達は動き、
裏口へと向かって走って行く。

到達し、外へと飛び出した彼らはフサギコと合流した。
彼はあちらこちらに切り傷を作っており、
それが先の戦闘の激しさを物語っていた。
  _
( ゚∀゚) 「402は!?」

ミ,,メ゚Д゚彡 「すまん、見失った」
  _
( ゚∀゚) 「……把握、撤退するぞ」

言葉の後に、ジョルジュ達は再び疾走の動きを作る。

だが、彼らが廃工場の敷地内の端へと到達した頃には、
既にカナソク軍の包囲網が完成してしまっていた。

58 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 21:27:34.83 ID:3l7o05tbO
数多くの兵士達が銃を構えており、それを見たジョルジュは、
  _
( ゚∀゚) 「……散開しろ!!」

そう命じる。

瞬時にドクオとペニサスがスモークグレネードを放り、
コロンと音を発てたそれは白煙を巻いていく。

その隙に物影へと隠れたジョルジュ達は、交戦準備をする。

圧倒的に不利な状況ではあるが、
このまま突っ切るよりは敵の数を減らし、
隙が出来た頃に撤退したほうがまだ確立はある。

IEUの隊員達は膨大な数の敵を前に、極めて冷静に対処する。

弾丸が飛び交い始める。

カナソク軍からは多量の銃声があがるが、
IEU側からはサプレッサーをしている為に銃声は上がらない。
資材の陰に隠れたドクオは、装甲車から身を乗り出した兵士を一名撃ち抜いた。

59 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 21:30:16.08 ID:3l7o05tbO
すると、弾丸が切れてしまい、彼は即座にリロードを行う。

しかし――――

バックパックの中には、弾薬は既に片手で握れる程しか残っていなかった。
別のマガジンを手にするが、そのマガジンにはもう弾丸が籠ってはいない。
残る弾を全て手に掴み、空になったマガジンに込めて行く。

敵の数は少しずつ減ってきてはいるが、
こちらは既に無くなりかけており、苦しい状況だ。

おまけに向こうは無限にも思えるほどの増援がいる。

だが、それでも彼らは戦うしかない。

残る弾薬を全て詰め込んだドクオはマガジンを銃の中に突っ込み、
小気味のいい音を響かせると、
資材から身を乗り出して銃を照準する。

IEUとカナソク軍では、装備の性能に天と地ほどの差がある。
向こうには装甲服のような者は無く、皆生身だ。
最悪、弾丸が切れた場合は装甲服の性能を活かして突っ込んでいき、
近接戦闘を仕掛けて武器を奪えばいい。

そう覚悟を決めたドクオは、引き金を絞る。

60 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 21:32:02.78 ID:3l7o05tbO
が、

「ガアアァァァァァァァァッ!!」

('A`) 「――――!!」

背後から獣の雄叫びが聞こえ、ドクオは即座に振り返る。

すると、

(メ゚∋゚) 「――――――ッ!」

身体中に傷を負った、巨人が目に映った。

(;'A`) 「生きていたのか!」

目前の巨躯へと銃撃を浴びせるが、
全ての弾丸は火花となって弾けて行き、地面へと落ちて行く。

だが、それでもフルオートで弾が連射され続け、巨人の顔を穿つ。
しかし、効いているような様子はない。
巨人は一歩を大きく踏み出し、ドクオへと接近。

連射を切り、セミオートに切り替えたドクオは、
単発で巨人の目を狙う。

61 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 21:32:48.40 ID:3l7o05tbO
引き金が絞られ、弾丸は眼に向かって飛来するが、

( ゚∋゚) 「―――――ッ!!」

巨人は掌をかざすことでそれを防いでみせた。
もう一発を放とうとドクオが続けて引き金を引くが、
カチッ、という金属音が響くだけで弾は発射されない。

('A`) 「……ッ!」

巨人がドクオへと向けて疾走を開始する。

対してドクオは残ったグレネードランチャーの榴弾を放つも、
巨人の顔の目前で空しく爆発する。
一歩を踏み出してきて、巨大な腕が振りかぶられる。
ドクオの頭上を捉えているが、構わず彼はハンドガンを抜いて応戦。
連射し、弾丸が顔面に突き刺さるが巨人は痛がる素振りすら見せない。
拳が握られドクオへと迫る。凄まじい速度で迫るそれはまさに鉄拳だ。
ハンドガンの照星が巨人の眼を捉え、引き金を引く。
9mm弾が眼に突き刺さり血が空中に走る。
だが拳の勢いは止まらず指が千切れんがばかりの力を込めて引き続ける。
二発三発と立て続けに弾丸が突き刺さって行くが拳は止まらず、
ドクオへと振り下ろされ―――――

('A`;) 「く……っ!!」

退避しようとするが、拳はとてつもなく速く、
巨人の拳が数センチまで降ろされた、

62 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 21:33:28.55 ID:3l7o05tbO
その時、

('A゚;) 「な……ッ!?」

巨人の四肢がぶった切られ、拳は細切れに切断され、
頭は真っ二つに切り裂かれた。

ドクオは、巨人を斬った者の姿を瞳に映す。

(,,\::) 「………」

背を向けたその姿は、白の強化骨格スーツに覆われ、
所々に機会が埋め込まれており、人工筋肉が隆起していた。
腰にはハードポイントが設けられており、鞘が装着されている。

右の手は振るわれた後で、
そこには肉厚の方刃を持つ剣があり、刃は赤熱化していた。

一拍の間が空き、その後に巨人の体から炎が上がる。
高温を持つ剣で斬られたことにより、身体が燃え上がったのだろう。

何物も両断する剣、機械剣No.10“ライジングサン”
その試作型を手にした男がドクオへと振り返り、

(,,゚Д゚) 「無事か?」

バイザーを収納し、若者の素顔でそう尋ねたのは、
強化兵士部隊強化骨格チームに所属する、
ギコ・ハニャンだった。

63 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 21:35:36.74 ID:3l7o05tbO
******
  _
(;゚∀゚) 「なっ、強化兵士部隊!? どうしてそんなもんがここに!?」

ジョルジュは突然として現れた、
強化骨格を移植した兵士達の部隊に驚愕する。

上空からいきなり彼らは現われた。

光学迷彩を用いて不可視となったヘリから、
強化兵士達は飛び降り、敵のど真ん中へと着地したのだ。

超人的な身体能力を持ち、兵士30人、
二足歩行戦車AA4機分の力を持つと言われる、
彼らが増援とやってきた時には、勝敗は既に決したような物であった。

続々と降下されてくる強化骨格達に、カナソクの兵士達は蹂躙されていき、
2分と掛からずに撤退を開始し、3分後には殲滅されてしまった。

廃工場へと降り立った者達は全て白い強化骨格スーツを身に纏っており、
彼らは強化骨格チームの中でも精鋭中の精鋭、

 ホワイトグリント
“白い閃光”と呼ばれる者達だった。

彼らホワイトグリントの手にかかれば、
カナソクの兵士達などは物の数では無い。

65 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 21:39:15.47 ID:3l7o05tbO
(,,゚Д゚) 『敵を殲滅した、これより味方の回収を行う』

その内の一人、『白猫』と異名されるギコは体内通信を繋げる。

从 ゚∀从 『了解、フォックスを乗せたヘリはカナソクのS07基地へと向かっている。
      味方を回収後、迅速にそちらへと向かえ』

从 ゚∀从 『カナソクはテロを支援してやがった。証拠を突きつけ、
      ラドン共を引き渡すように要求したが奴らはそいつを突っぱねてきた。
      奴らには、ちっと制裁を加えてやる必要がある』

从 ゚∀从 『経済制裁? 輸出入の制限?――――手緩い』

从 ゚∀从 『テロ教唆の馬鹿共には鉄拳制裁! テロリストに人権は無ぇ!!
      徹底抗戦徹底排除! 奴らに与するカナソクの畜生共を徹底的に叩いて潰せ!!
      アタシ達の力を見せつけ、もう二度と刃向かえ無えようにしてやれ!!』

从 ゚∀从 『こいつはもう、戦争だよ。S07基地の連中全てを、皆殺しにしろ』

ヘリに搭乗した白髪の女性、ハインリッヒはそう命じた。

(,,゚Д゚) 『了解』

そして短くギコは応え、光学迷彩を解き、
着陸したヘリに乗り込んでいくドクオ達を眺めた。

66 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 21:41:32.56 ID:3l7o05tbO

******

ヘリに乗り込んだIEUの隊員達は、体内通信を開いていた。

それはモララーの無線機と繋がっており、
彼らはケースオフィサーの言葉を聞く。

( ・∀・) 『我々ニューソクは、テロリストとは徹底抗戦をする覚悟だ』

( ・∀・) 『例え、一国を敵に回し、滅ぼすことになったとしても』

( ・∀・) 『これより、我が国ニューソクは、カナソクとの戦争を覚悟して作戦を行う』

( ・∀・) 『強化兵士部隊には君達のことは特殊部隊であると説明しており、
       それ以上の情報は公開せず、第三課のことは伝えていない』

( ・∀・) 『君達の正体を知る者は、そこに誰もいないのだ』

( ・∀・) 『幽霊諸君、私は君達に任務の続行を命じる』

( ・∀・) 『これから、君達には強化兵士部隊と共同して作戦を遂行してもらいたい。
       カナソク軍S07基地へ向かったフォックスの追跡を行え』

モララーの命令に、彼らは『了解』と応えた。

通信が切られ、IEUの隊員達は思い思いに束の間の休息を取る。
作戦についての会議が行われるまでの、ほんの少しの間だ。

67 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2009/12/26(土) 21:42:31.49 ID:3l7o05tbO
ドクオはヘリのイスに座り、壁に背を預けたまま、

(` ω ´) 「………」

応急処置を受けた後、イスの上で横になったシャキンを視界に収めた。

機械剣によって切り裂かれた胴には包帯が巻かれており、
その白地の上には血がじわりと滲んでいた。

彼のそんな姿を見て、ドクオは肝が冷える感覚を味わった。

首筋に冷や汗が伝わり、脳裏にはクールの顔が浮かんだ。
クールは、正体不明の強化骨格との戦闘中に行方不明になったと聞いた。
強化骨格を追跡し続けていく内に、フサが強化骨格も彼女も見失ったらしいのだ。

戦闘後、周辺を捜索されたが血痕は見当たりはしたが、
それは途中で切れており、結局クールは見当たらなかった。

('A`) 「………」

ドクオは、行方不明となった彼女のことを、ずっと考えていた。

彼は、心配をしていたのだ。

感情の無いはずの、心を失ったはずの彼は、
頭の内で、大丈夫だろうか、と呟いた。




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