- 2 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2011/06/11(土) 22:34:28 ID:cM2vo0ws0
- 登場人物紹介
( ^ω^) 人型兵器SAの搭乗員。ごく普通の高校生であったが、戦火に巻き込まれ、戦う事になる。
搭乗機であるSA07・シュトルヒは元は輸送任務用の設計であった。大刀・ヴェノムを主武装とする。
_
( ゚∀゚) SAの搭乗員。長距離トラックの運転手だったが、VIP島に帰郷中、フェイスの侵攻に遭遇し、SAに乗る。
搭乗機であるSA02・シュヴァルベは強襲、偵察任務用の設計。2枚の羽を主武装とし、高速戦闘を得意とする。
从 ゚∀从 SAの搭乗員。兄であるジョルジュと共にVIP島に帰郷中であったが、兄と同じくしてSAに乗る。
搭乗機であるSA03・レルヒェは狙撃、後方支援任務用の設計。主武装はライフル。大出力のランチャーとの換装も可能。
(*゚ー゚) SAの搭乗員。数少ない職業軍人。極秘裏に開発されたVIP島基地へ駐屯中にフェイスの侵攻に遭遇する。
搭乗機であるSA06・ナハティガルは通信任務用の設計。主武装は防御壁であるフィールドとチェーンソー。
('A`) 人型兵器SAの搭乗員。元引き篭もり。本土から逃げる際に数奇な縁でSAに乗る。巨大フェイスとの戦いで生命を落とす。
搭乗機であるSA05・クレーエは隠密任務用の設計。主武装は両手のブレード、ワイヤー、霍乱用の防護壁であるミラージュ。
(,,゚Д゚) 人型兵器SAの搭乗員。職業軍人。しぃと同じく任務中にフェイスの侵攻に遭遇。フェイスとの戦いで生命を落とす。
搭乗機であるSA01・アードラーは汎用機の設計。主武装はアックス、ライフル。
- 3 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2011/06/11(土) 22:34:50 ID:cM2vo0ws0
( ゚д゚ ) VIP島基地司令。元は国会議員であったが、軍人達が放棄した基地を使い、島を守ることを決意し、その任に着く。
( <●><●>) VIP島基地副司令。元は厚生省勤務。ミルナと考えを同じくし、島を守る為に基地の運営を一手に引き受ける。
ξ゚听)ξ ミルナの娘で、内藤の幼馴染。コンピュータの扱いには一角の知識があり、SAのAIの整備等を担当している。
( ´_ゝ`) 開発部主任。ロボットアニメ好きで陽気な性格。
(´<_` ) 整備部主任。兄者の双子の弟で、落ち着いた性格の常識人。
('、`*川 チーフオペーレーター。多少がさつだが、面倒見の良い性格。料理が上手い。
(゚、゚トソン オペーレーター。冷静で物静かな性格。内藤達の学校の先生でもある。
ミセ*゚ー゚)リ オペーレーター。陽気で賑やかな、言い過ぎればお調子者な性格。
(´・ω・`) 内藤の同級生で、内藤が行きつけの食堂を週に数回手伝ったり、兄者と弟者から色々と学んでいる。
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 22:35:31 ID:cM2vo0ws0
-
空は灰の色を湛え、静かに島を包んでいる。
いつかは訪れるはずの日が、今日という日に重なった今、島を捨てる悲しみと、未来への希望が合わさった
複雑な思いを抱え、人々はこの島からの脱出する船に乗り込む。
(゚、゚トソン「資材の確認済みました。搭乗の進度はどうですか?」
普段とは違いブリッジではなく、格納庫のモニターから目を離し、自分の背後にいるはずの弟者に問い掛ける。
(´<_` )「搭乗予定の非戦闘員は粗方乗ったよ」
フェイスの進攻は停止しているとはいえ、そう遠くない位置に巨大フェイスとその一群がいる。
全員が乗り込んだ所で急襲されては防ぎ様がないので、内藤達SA搭乗者やブリッジクルー、それに格納庫の
整備班の人間などは、まだほとんど脱出艇には乗り込んでいない。
(´<_` )「後は順に乗り込んで行きたい所だが……」
(゚、゚トソン「今朝から少し不穏な動きがありますからね……」
そう言ってトソンは、再びモニターの方へ向き直り、画面を切り替える。
偵察用に設置してあるブイからの映像は、今朝からずっと真っ白な霧のようなものを映すだけで、状況を把握する
事が出来ないでいる。
(´<_` )「ジョルジュ、そっちからはどうだ?」
_
( ゚∀゚)「──v-同じだ。何もわかんねーな-vw─」
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 22:35:52 ID:cM2vo0ws0
巨大フェイスの不穏な動きに備え、SAは全機は島の周辺の警備に当たっている。
予定外の状況ではあるが、このまま何事もなく脱出出来る等と甘い事を考えていた人間は誰もいないのがせめてもの救いだ。
( ^ω^)「──v-北側も状況は変わりませんお─vv─」
内藤達は残った巨大フェイスがいる方角、北側と南西側に別れて出撃している。
そのどちらの巨大フェイスも白い霧状のものに包まれて、状況は不明だ。
_
( ゚∀゚)「──v-もう、めんどくせえから側まで行って見て来ようぜ?─vv─」
从 ゚∀从「─vv-止めとけ、馬鹿。下手に刺激しないって決めたばっかだろうが-vw─」
_
( ゚∀゚)「──v-けどよ、このまま黙って見てたって、ずるずると脱出の機会を失っていきそうじゃねーか?─v─」
(´<_` )「お前にしちゃ正論だが、心配するな。脱出は予定通り進めるよ。まずは開発部の──」
弟者がそう言いかけた所で、突然警報が鳴り響く。
トソンはすぐさま回線をブリッジに繋げ、状況を尋ねる。
(゚、゚;トソン「ブリッジ、状況は!?」
('、`*川「巨大フェイスに動きありよ!」
(´<_` )「どっちだ?」
('、`*川「両方! 各機、警戒態勢を取って!」
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 22:36:29 ID:cM2vo0ws0
从 ゚∀从「──v-ああ、こっちもキャッチしたぜ-vw─」
_
( ゚∀゚)「─vv-ったく、結局こうなるなら、最初っから俺に偵察に行かせろと-vw─」
(*゚ぺ)「─vv-無駄話はあとあと! そっちは2人に任せたからね? 内藤君!」
( ^ω^)「──v-対象の熱量増加中─v-やばげな感じですお──wv─」
出来ればこのまま何事もなく終わって欲しいと皆は思っていたが、そうは問屋が卸さないらしい。
想定の範囲内の事態とはいえ、訪れた切迫した事態にトソンの頬を汗が伝う。
(゚、゚;トソン「やはり来るべくして、といった所でしょうか……」
(´<_` )「ああ、全く最後くらい見逃して欲しいもんだ。おい、搭乗は一旦中止だ。全員配置に着け!」
トソンは立ち上がり、弟者に一礼してブリッジに戻るためエレベーターへ向かう。
弟者は声を張り上げ、開発部と整備部全員に声をかける。
(´<_` )「これが正念場ってやつかな……」
(´<_` )「使わずに済めばと思っていたが……あれの準備だけはしておくか」
全員が作業を始めたのを見届けた弟者はそう呟くと、1人格納庫の奥に向かう。
こういう状況を想定して準備しておいて良かったと思うと同時に、一抹の寂しさが浮かぶ。
しかしそれでも、島を守る為に自分が出来る事をしようと弟者は心を決めた。
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 22:36:49 ID:cM2vo0ws0
-
_
( ゚∀゚)「ここで見てても埒が明ねえ」
从;゚∀从「待ちやがれ。まだ距離はある。あの巨大フェイスの速度なら到達前に逃げ切れる可能性が高い」
今すぐにでも飛び出して行きそうなジョルジュを制し、ハインリッヒはブリッジからの分析結果を待つ。
先に述べた様に、たとえ巨大フェイスが再度侵攻を始めても、巨大フェイスのあの速度なら脱出を優先させた方が良いはずだ。
特にハインリッヒ達がいるのは島の南西側で、東側に抜ける予定の脱出ルートにも影響がない。
从 ゚∀从「どうだ? 出たか?」
ミセ;゚ぺ)リ「まだだよ。ってか、熱量が上がっている以外はよくわかんない」
. _,
从 ゚∀从「んだよ、そりゃ? しっかりしやがれ」
ミセリからの分析の結果が思った以上に芳しくない。
しかし、これといった変化がないならそのまま無視して脱出作業に戻るべきだろうが、警戒を緩める材料としては少し弱い。
やはり何かしらの確証を得てからでないと、多くの人々を危険に晒す可能性がある。
_
( ゚∀゚)「だから俺が見て来た方が早くねえか?」
从;゚∀从「今、単機突出は止めてくれ」
これといった打開策がない今、ジョルジュの意見を採用するのが理に叶っている気もするが、リスクも高い。
現状維持に務めるのが最善だと考えるハインリッヒだが、ジョルジュはなおも主張する。
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 22:37:37 ID:cM2vo0ws0
このままだとジョルジュに押し切られ、偵察に向かう羽目になるかと思った瞬間、突如としてそれは起こった。
ミセ;゚д゚)リ「熱量、さらに増大!」
从;゚∀从「何!?」
ミセ;゚д゚)リ「いや、違う、こっちじゃない!」
从;゚∀从「は?」
一瞬弛緩した気持ちが声に出てしまい、間の抜けた呟きを発したハインリッヒだが、それを掻き消す様な大声が
コックピット内に響く。
('、`;川「反対側! 北よ! 熱量なおも増大中!」
_
( ゚∀゚)「内藤! しぃさん!」
(*゚д゚)「わかってる。内藤君!」
(;^ω^)「何か来ます! いや、これは──」
ジョルジュの通信を聞くまでもなく、北側に配備されていた内藤としぃは状況の変化に気付いていた。
白い霧よりもさらに白い、おびただしい量の光が一点に集まっている。
(;^ω^)「あれは……セイクリッドの光……!?」
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 22:37:55 ID:cM2vo0ws0
思わず漏れた内藤の声を認識するよりも先に、灰の空は白に包まれたかの様に見えた。
轟音と共に長大な光の帯がシュトルヒとナハティガルの下、島の上を通り過ぎる。
(;*゚д゚)「くぅッ!? 今のは!?」
(;^ω^)「砲撃……!?」
辛くも機体を上昇させ、恐らく巨大フェイスから放たれたのであろう一撃をかわした2人は身を乗り出すように
モニターを覗き込む。
('、`;川「霧が晴れるわ!」
(゚、゚;トソン「映像、出ます!」
先の一撃によって霧散させられたかの様に、北側の巨大フェイス周辺を覆っていた白い霧が晴れる。
そこには無数のフェイスを周囲に従えた巨大フェイスの姿があった。
ミセ;゚д゚)リ「何よ、あれ……?」
. _
(;゚∀゚)「巨大フェイスなのか、あれは?」
本来、海月に似た形状を持つフェイスだが、巨大フェイスも通常のフェイスを巨大化させた同じ様な姿形をしている。
しかし、今見えているそれは、明らかに今までのどのフェイスとも異なる形状をしていた。
(´<_`:)「─vv-砲台……か?─vv─vv-」
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 22:38:43 ID:cM2vo0ws0
格納庫のモニターから見ていた弟者が呟いた様に、巨大フェイスは身体を前傾させ、その手を海中に根を張らす様に
伸ばして固定させている。
その頭頂部分が大きく穴が空き、そこから先ほどの一撃の残滓であるセイクリッドの白い光がわずかに立ち上っている。
从;゚∀从「セイクリッド・ランチャーかよ……」
ハインリッヒが言う様に、先の一撃は高出力のセイクリッドを射出する兵器、セイクリッド・ランチャーそのものだ。
しかしながら砲身の差か、射程も威力も向こうの方がその何倍も上の様だが。
(*゚д゚)「内藤君!」
( ^ω^)「把握!」
いち早く自分達のやるべき事に気付いたしぃが、内藤に声をかけながら巨大フェイス目掛けて機体を飛ばす。
内藤もしぃの声を聞くよりも早く、シュトルヒを加速させていた。
_
( ゚∀゚)「ハイン! 俺らも──」
ミセ;゚д゚)リ「熱量増大!」
. _
(;゚∀゚)「ちぃッ! もう二射目が──」
('、`;川「違う! 今度はその反対!」
从;゚∀从「こっちだ、兄貴!」
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 22:39:00 ID:cM2vo0ws0
内藤達の援護に向かおうとしたジョルジュだが、オペレーター達とハインリッヒの声に機体を反転させ、南西の
巨大フェイスの方に向ける。
北側と同じく、白い霧の奥で巨大フェイスが動き出したのは理解出来た。
しかしながらそれがどういった動きを見せるかは未知数だ。
北側と違い、こちらは2匹の巨大フェイスが合流したのだから。
_
( ゚∀゚)「ハイン!」
从 ゚∀从「……しゃーねえ、行け、兄貴」
この状況下で取れる最善の策は、巨大フェイスが動く前に叩く、そう判断したジョルジュは怒鳴るようにハインの名を呼ぶ。
その意図を察したハインリッヒは、ジョルジュをバックアップする様に後に続く。
北側をしばらく2人で持ちこたえてもらい、南西の巨大フェイスを撃破した後、速やかに北の援護に回る。
それがジョルジュ達が下した答えだ。
('、`*川「2人とも、気を付けなさいよ!」
熱量の増大はあれど、北の様には砲撃を仕掛けて来る気配もないまま、ゆっくりと白い霧が晴れていく。
シュヴァルベが辿り着くより早く、うっすらと残る霧の中にそれは姿を現した。
_
( ゚∀゚)「!」
从;゚∀从「なッ!?」
ミセ;゚д゚)リ「あ、あれって……」
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 22:39:41 ID:cM2vo0ws0
センサーが示す熱源の中央に位置する何か。
状況からするに、考えるまでもなくそれがフェイスである事はわかりきっている。
しかし……
ミセ;゚д゚)リ「人型……?」
透明な身体に赤黒く光る2つのコアを持つ外見は、紛れもなくフェイスのそれだが、触手状だった手足は、人間と酷似した
物に変わっている。
ミセリは人型と称したが、よく見るとそれは多少異なり、2つの頭と4本の腕が備わっていた。
さらに言えば、人間より細部の凹凸がはっきりとディフォルメされ、より機能的な構造をしている。
从;゚∀从「いや、あれは……」
. _
(;゚∀゚)「SA……」
SA搭乗者であるハインリッヒとジョルジュの2人は、すぐにあの巨大フェイスの形状が何を模した物であるかに気付いた。
これまでの戦いから見て取れたフェイスの進化は、ここに来て人類にとって最強の兵器を人類自身が戦わねばならないという、
最悪の場面を作り出した。
('、`;川「そんなのって……」
ミセ;゚ー゚)リ「ど、どうすれば……」
絶望の色が居並ぶ面々の顔を塗り潰す。
予想だにしない脅威の存在に、人々の心はいともたやすく手折られそうになる。
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 22:39:54 ID:cM2vo0ws0
- _
( ∀ )「……形だけ」
从;゚∀从「兄貴?」
_
(#゚∀゚)「形だけの猿真似野郎に何が出来るってんだよ!!!」
誰もが自分がどうするべきか戸惑う中、ジョルジュだけが怒声を上げ、SAを模した巨大フェイスへ全速力で機体を飛ばす。
ハインリッヒがそれを制する暇もなく、シュヴァルベが巨大フェイスに斬りかかった。
_
(#゚∀゚)「墜ちろぉぉぉぉッ!!!」
从;゚−从「!?」
シュヴァルベの翼が巨大フェイスと重なったと思えた瞬間、巨大フェイスの姿がモニターから消えた。
状況を考えれば、シュヴァルベの翼が巨大フェイスを霧散させたとも見えはするが、あまりに呆気なく、どこか不自然だ。
从;゚д从「兄貴!」
_
(#゚∀゚)「ちぃッ!」
いち早くその状況に気付いたハインリッヒが叫ぶより早く、ジョルジュはシュヴァルベを再び急加速させ、機体を右に飛ばす。
間髪をいれずシュヴァルベが元いた地点を上方からの触手の群れが襲った。
_
(#゚∀゚)「ふざけやがって、クソが」
ジョルジュはシュヴァルベを旋回させ、視線を上空に向ける。
そこには既に巨大フェイスの姿はない。
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 22:40:47 ID:cM2vo0ws0
ミセ;゚д゚)リ「速い!」
既に巨大と呼べるほどの大きさはない人型のフェイスではあるが、それでもSAよりは二回りほど大きい。
しかしながらその速度は、SAに勝るとも劣らない様だ。
从;゚∀从「このッ!」
センサーの反応を頼りにセイクリッド・ライフルを掃射させるハインリッヒだが、弾は虚空に消えていく。
从;゚∀从「クソ、はええな、おい」
レルヒェの射撃をかわした人型フェイスは、足を止め、まるでこちらの出方を伺っているかのように静止している。
从 ゚∀从「……随分と余裕かましてやがるな」
こちらが動揺している隙に仕掛けてくれば、自分かジョルジュのどちらかは墜とせていただろうにと、ハインリッヒはぼやく。
しかしながら、フェイスにそんな知性があるはずもないと思い返し、仕掛けて来ない意味を探ろうとした。
从 ゚∀从(何らかに行動の制約があるのか、それとも……)
一時的とはいえ、隊を預かる身にあったハインリッヒは、既に冷静さを取り戻し、状況を打破する最善策を考慮する
比較論だが、北側の砲台型のフェイスに比べると、こちらの人型のフェイスの方が島に対しての脅威としては小さい。
それに一機突出したこちらの方が、強固な迎撃体制を敷いた向こうより倒しやすいはずだ。
ハインリッヒは再びセイクリッド・ライフルを構え、照準を人型フェイスに合わせた。
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 22:41:01 ID:cM2vo0ws0
从 ゚∀从「早いとここいつを墜として、向こうの援護に向かわないと……」
セイクリッド・ライフルの引き鉄を引こうとした瞬間、何者かが射線上に躍り出る。
言わずもがなこの場にいるもう一機、ジョルジュのシュヴァルベだ。
_
(#゚∀゚)「この野郎がッ!」
从;゚∀从「馬ッ……」
ハインリッヒは銃口を上げ、セイクリッド・ライフルの引き鉄から手を離す。
そんなハインリッヒを意に介す事もなく、シュヴァルベは一直線に人型フェイスに向かう。
2機が交錯したかに見えた瞬間、先ほどと同じ様に人型フェイスの姿が消える。
_
(#゚∀゚)「舐めんな!」
人型フェイスをすり抜けたシュヴァルベは最高速のまま、機体を旋回させ、急上昇をかける。
上空から襲い来る触手の群れを翼で切り裂きながら、再度人型フェイスに特攻した。
. _
(;゚∀゚)「ぐっ……!?」
再び2機が交錯した瞬間、シュヴァルベがたたらを踏んだようによろける。
勢い余っただけかのように見えたが、シュヴァルベの肩の装甲がわずかに飛び散った。
どうやら人型フェイスはかわすと同時に攻撃を仕掛けていた様だ。
. _
(;゚∀゚)「味な真似しやがって」
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 22:41:48 ID:cM2vo0ws0
从;゚∀从「ジョルジュ、落ち着け! 闇雲に仕掛けても……」
_
(#゚∀゚)「うるせえ! お前は黙ってそいつを構えてろ!」
そいつ、とジョルジュはシュヴァルベの右手の指を銃の形にして見せ、すぐさま人型フェイスを追う。
頭に血は上っていても、ジョルジュはジョルジュなりに状況の打破を考えての行動だ。
自分が追い詰め、人型フェイスの足を止めさせた所にレルヒェに狙撃させる。
それが最善かどうか、悩んでいる暇など今はない。
从;゚∀从「無茶は……クッ、了解!」
ジョルジュが考える意図をすぐさま察せられたのは、2人の兄妹としての長い付き合いのお陰かもしれない。
憎まれ口を叩き合っていても、互いを理解し、信頼しているからこそ2人はこの空で戦い抜いて来れたのだ。
_
(#゚∀゚)「最速の翼を舐めんじゃねえぞ、この猿真似クラゲ野郎ッ!」
从;゚∀从(兄貴……死ぬんじゃねえぞ……)
悲痛な思いを胸に兄の背を見送るハインリッヒ。
戦いの空で、いつも自分の前にあったシュヴァルベの背中が何故だか遠く、霞んだ様に見えた。
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 22:42:20 ID:cM2vo0ws0
-
(゚、゚;トソン「二射目、来ます!」
(;*゚ー゚)「内藤君! 高度上げて!」
(;^ω^)「お!?」
しぃの声に弾かれた様に、半ば反射でシュトルヒを急上昇させる。
その遥か下を白い長大な光の帯が全てを薙ぎ払った。
(*゚д゚)「島を狙わせないように、少し高度を上げるよ!」
( ^ω^)「はいですお!」
如何に強大な威力を誇る砲撃とはいえ、出所はわかっている。SAの機動力を持ってすれば回避は難しくない。
そう考えていた内藤だが、しぃの言葉が意図する所を察し、自分が背に抱えているものを改めて深く認識する。
最悪の場合、シュトルヒを盾にしても島だけは守らねばならぬと内藤は決意した。
(*゚ー゚)「これまでの通りなら、恐らくセイクリッド目当てに仕掛けて来るだろうからね」
( ^ω^)「こっちの出力を上げていれば、狙って来ますおね」
普通に考えれば、如何に出力が高いとはいえSAよりは基地のセイクリッド反応の方が強い。
しかし現在は脱出の為、基地の一部の設備しか稼動していない。
脱出艇のエンジンも止めてあるので、現状で狙われるのは出力が高く、この空域にいる内藤達2機であろう。
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 22:44:24 ID:cM2vo0ws0
(;^ω^)「しかし、このままだと船も動かせませんおね」
(*゚ぺ)「早いとこあれをどうにかして、ジョルジュ君達の援護に向かわないと」
ジョルジュ達の方、南西側の巨大フェイスの状況も、ブリッジからの伝達によって把握はしている。
SAに酷似するという、驚くべき姿に変わった巨大フェイスは、既に手の内を見せて来たこちら側と違い、
未だその力は未知数だ。
早急にこちらを片付けて援護に向かわなければとしぃは思う。
( ^ω^)「ですおね。もたもたしている場合じゃないですお」
内藤はしぃの言葉に頷き、シュトルヒを前進させる。
しかし、すぐさま無数のフェイスがシュトルヒに向かって飛んで来る。
( ^ω^)「またかお! ウゼえ」
内藤はヴェノムは用いず、セイクリッド・ブレードで、向かって来るフェイスを斬り裂いて行く。
フェイス1匹1匹はかなり脆いが、向かって来る数が尋常ではない。
(*゚ー゚)「物量作戦で足止め、そこを後方から大出力の兵器で射撃か。随分と理に適った戦術を取ってくるわね」
しぃはシュトルヒの若干後方からセイクリッド・ガンでフェイスを撃ち墜としていく。
フェイスはこれまでも固体単位での進化という形で、こちらの戦術を凌駕するような変化を見せたことはあったが、ここまで
組織だった行動を見せた事はなかった。
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 22:44:38 ID:cM2vo0ws0
逆に南西側のフェイスは、人型フェイスを単機で突出させ、他のフェイスは後方に待機している。
この時点では内藤達は南西側の状況を把握はしていないが、いずれにせよ、北側も南西側も明らかにこれまでとは違う
動きを見せていることには変わりはない。
( ^ω^)「足止めされたとこを狙われると厄介ですおね」
(*゚ー゚)「そうね、セイクリッド・フィールドでも防ぎ切れるかどうか……」
( ^ω^)「状況を考えると、一気に強襲をかけて、短期決戦に持ち込みたいとこですお」
内藤としぃは、襲い来る無数のフェイスを墜としながら作戦を練る。
これだけ無尽蔵に思えるかの如くフェイスが湧き出ている事を考慮すると、時間を掛けるのは好ましくない。
しかしながら、シュトルヒとナハティガルの2機で一気に距離を詰め、強襲するのも厳しいものがある。
搭載兵器の性質上、ナハティガルは守備を得意とする機体だ。
防御壁であるセイクリッド・フィールドを張りつつ、フェイスを射撃兵器で撃ち墜としながら徐々に戦線を上げるといった
戦い方の方が現実的だ。
加えて、現在射撃兵器を全くといっていいほど搭載していないシュトルヒとの相性も良くない。
シュトルヒを守りながら戦う事は容易だが、それではシュトルヒの攻撃力を殺してしまう。
(*゚ぺ)「どうしたものかしらね……」
(;^ω^)「ああ、クソ! 数が多過ぎんだお!」
レーダーにアラートを示すマーカーが無数に浮かび上がる。
フェイスによる触手の攻撃が、津波の様にシュトルヒに襲い掛かる。
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 22:45:12 ID:cM2vo0ws0
(*゚д゚)「ナハティガルの後方に隠れて! フィールドを張るわ!」
(;^ω^)「大丈夫! 行けますお!」
内藤はしぃの言葉を振り切り、さらにシュトルヒを前進させる。
無謀としか思えない内藤の行動に、しぃは肝を冷やしたが、そんなしぃの心配を余所に内藤のシュトルヒは触手の攻撃を
難なく掻い潜る。
( ^ω^)「当ったらねーお!」
触手を伸ばし切り、無防備になったフェイスに肉薄し、一撃で斬り捨てる。
後には無数の透明の煌きが灰の空に輝く。
そこに北からの砲台型フェイスの射撃が撃ち込まれるが、内藤は既にシュトルヒを上昇させ、その一撃を難なくかわしていた。
(*゚ー゚)「やるじゃん。腕を上げたねぇ」
( ^ω^)「今日はいつも以上に調子がいいんですお」
シュトルヒを旋回させ、また別のフェイスを斬り墜とす内藤。
曲りなりに1年以上戦い抜いた腕は伊達ではない。
( ^ω^)「それに機体の、特にAIの反応もいつも以上にいいですお」
そう言って内藤はちらりと後方に目を向ける。
内藤が座る座席の背後には、金属製の大きな機器が据え付けられている。
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 22:45:33 ID:cM2vo0ws0
出撃前、弟者からAI及びサポート機器のバージョンアップと説明されたもので、内藤自身はよく理解していなかったが、
その働きは期待以上のものだと内藤は笑顔を見せた。
(*^ー^)「そっか、そっか、それはツンちゃんに感謝しないといけないね」
内藤の言葉に笑顔を返すしぃ。
内藤がよく理解していない、シュトルヒの座席の後ろの機器の事を、しぃは理解している。
あの機器の中に、ツンが乗り込んでいる事を。
ξ゚听)ξ
というより、戦闘に携わっている人間で理解していないのは内藤1人だ。
聞けば絶対に反対しそうだと思われていたミルナでさえそれを知っている。
最初、弟者達から話を聞かされた時、無茶にもほどがあるとしぃは考えたが、現在の島の状況を考えればどこにいても
危険な事には変わりはない。
ツンが乗る事でシュトルヒの運用に悪い影響が出るなら取れない案だが、AIからの情報をツンが処理し、内藤に対して最適化して
送る事が出来るなら、それはシュトルヒの性能を伸ばす事に繋がるだろう。
ならばいっそ、本人の希望通りにさせてあげた方がいいのではないか。
何より自分がツンの立場なら、きっと同じ事をしたはずだからとしぃは思い、諸手を挙げて賛成した。
(*゚ー゚)(それにきっと、ブーン君が守ってくれる……)
今はまだ、ツンの事を知らない内藤ではあるが、その事を知らせればきっとツンを守ってくれるだろう。
ずるい考え方ではあるが、同時に内藤自身が生命を粗末にしない為の重石にもなるだろうとしぃは考えていた。
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 22:46:09 ID:cM2vo0ws0
ツンの父であるミルナも、自分と似たような考えに至ったからこそ、この件を認めたのではないかとしぃは思っている。
(*゚ー゚)(問題はツンちゃんの体力だけど……)
自分で操縦しないとはいえ、SAに乗り慣れないツンの体力が気がかりではあるが、無理な時は主導の制御を切ってAIに任せるように
言い含めてある。
ツンが処理するより多少、性能は落ちはするが、それでもツンが乗る以前と同じレベルでの運用は出来る。
(*- -)「でも、きっとやりぬくだろうけどね」
覚悟を決めた女は強いのだと、しぃは思う。
( ^ω^)「何の話ですかお?」
(*^ー^)「ううん、何でもない」
思わず漏れた呟きに反応した内藤への答えをぼかし、しぃは戦闘に集中する。
ツンと同じ様に、しぃ自身もこの戦いに確固たる思いを抱き、臨んでいる。
(*゚ー゚)「それより内藤君、こちらで取得した情報を送るから最適進路、弾き出せる?」
( ^ω^)「やってみますお、ってかAIがやってくれるんですけども」
索敵範囲の広いナハティガルからの情報を受け取り、内藤はそれを分析する。
内藤自身が言うように実際に分析するのはAIとツンではあるが。
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 22:46:23 ID:cM2vo0ws0
( ^ω^)「出ましたお。左、11時、高度このままですお!」
(*゚ー゚)「了解!」
2機はほぼ同時に加速をかけ、フェイスの群れの中に突っ込んだ。
鎧袖一触とも言わんばかりの勢いで、2機はフェイスを霧散させながら前進していく。
( ^ω^)「ルートもいい感じですお」
(*゚ー゚)「ホント、ツンちゃんのお陰ね」
( ^ω^)「ツン、愛してるおー!」
しぃの言葉に大きく頷き、戦闘の高揚感からか、内藤は普段なら決して言わないであろう言葉をおちゃらけた様に叫ぶ。
既に脱出艇に乗り込んでるでいるはずであろうツンには、決して届かないから大丈夫だと思い込んでの事だ。
ξ///)ξ
ドカッ!
(;^ω^)「お?」
後方から何かぶつかった様な音がした聞こえた気がしたが、内藤は深く気にする事無くシュトルヒの速度をさらに上げる。
( ^ω^)(このまま……行けるお!)
シュトルヒとナハティガル、それぞれの思いを乗せた2機は白い軌跡を灰の空に描いて行く。
共に抱く唯一つの願いの為に。島を、皆を守る為に。
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 22:47:18 ID:cM2vo0ws0
-
('、`*川「ほら、あんた達もさっさと乗りなさいよ」
人々のざわめく声に溢れながらも、どこか静かな緊張感に満ちた格納庫に、ペニサスの声が響く。
ペニサスは急かす様に2人の後輩オペレーターの背を押した。
ミセ*゚д゚)リ「ちょ、わかってますから押さないでくださいよ」
(゚、゚トソン「しかし、よろしいのでしょうか……」
押されるままに歩き出したミセリとトソンだったが、途中でトソンが足を止め、ペニサスの方を振り向いて呟くように言った。
ミセ*゚ー゚)リ「大丈夫だって、脱出艇の方からの通信も出来るって話でしょ?」
返事はペニサスからではなく、トソンの前を行くミセリの方から返る。
トソンは再び振り向き、ミセリの方に視線を向けた。
(゚、゚トソン「それはわかっていますが……脱出艇の設備では十分な支援も出来るかどうか」
('、`*川「……」
脱出の準備は着々と進み、格納庫やブリッジの人員も脱出艇に乗り込む段階に来ていた。
機体の補修や燃料補給などの事態に備えて、格納庫にはまだ何人か残すが、管制機能はブリッジから脱出艇に移す。
しかしながらトソンが言う様に、脱出艇の機能ではブリッジに比べると数段劣る戦闘支援しか出来ない。
この状況でブリッジを放棄して良いものか、トソンは未だに躊躇っていた。
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 22:47:34 ID:cM2vo0ws0
(゚、゚トソン「せめてあの2匹を撃破するまではブリッジに──」
('、`*川「いいから乗る!」
(゚、゚;トソン「え、あ、はい……」
有無を言わせぬペニサスの強い物言いに、トソンは気圧されるように頷いた。
どちらかと言えば普段から怒りっぽいペニサスではあるが、それとはどこか違う、ただならぬ響きがあった。
ミセ*゚ー゚)リ「んじゃ、さっさと乗って準備しますかね」
空気を察したのかどうかは定かではないが、足の止まったトソンを引きずるようにして、ミセリは脱出艇に向かう。
トソンの言い分もわかるが、脱出の準備を進めることも重要な事だと理解もしている。
ミセリとトソンが脱出艇に乗り込んだのを確認したペニサスは、視線を後方に向けた。
そこには2人の男が並んで立ち、その様子を眺めていた。
( ゚д゚ )「これでブリッジクルーは全員乗ったようだね」
( <●><●>)「後はペニサスさんだけですね」
( ゚д゚ )「君も早く乗り込みたまえ」
( <●><●>)「司令からお先にどうぞ」
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 22:48:42 ID:cM2vo0ws0
( ゚д゚ )「……」
( <●><●>)「……」
わずかな沈黙の後、互いに視線を合わす事無く2人はほぼ同時に、ゆっくりと足を踏み出す。
相手を見ずに、しかし不自然なぐらいお互いを意識した歩みで、2人はペニサスの側まで辿り着いた。
('、`*川「……」
( <●><●>)「司令」
( ゚д゚ )「何だね、副司令」
2人は同時に足を止め、視線は前に向けたままで言葉を発した。
揺らがぬ様に背けたままで、己の思いを口にする。
( <●><●>)「私はここに残ります」
( ゚д゚ )「駄目だ」
まるでワカッテマスが何を言い出すかわかっていたかのように、ミルナは間髪入れずその言葉を否定した。
ワカッテマス自身もそれがわかっていたのか、動じる事無く同じ口調で続ける。
( <●><●>)「言い方を変えましょう。私がここに残りますから、司令は船に乗ってください」
( ゚д゚ )「……やはり気付いていたのかね」
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 22:48:56 ID:cM2vo0ws0
( <●><●>)「ええ」
( -д- )「……流石に君は欺けんか」
ミルナは目を閉じ、軽く首を振って吐き出す様に言う。
基地の運営の中心にいて、事細かな事まで把握していたワカッテマスが、自分が仕掛けていたものに気付いても不思議はない。
脱出計画を成功させる為、島を囮にする。
その為の準備は既に整っている。
( ゚д゚ )「ひょっとしたら、使わずに済むかもしれないと、わずかには期待していたのだがね」
自嘲気味に呟くミルナを見る事無く、ワカッテマスは自分のスーツの胸元に手を入れた。
( <●><●>)「はい、ですから、それは私の役目です」
( ゚д゚ )「君はこれからも続くフェイスとの戦いで必要な人間だ」
( <●><●>)「いえ、私よりあなたの方が必要とされます」
( ゚д゚ )「島民全ての事を把握し、皆を支えられるのは君しかいない」
( <●><●>)「あなたは島民全ての心の拠り所です。指導者として、そして父として」
( ゚д゚ )「……」
ワカッテマスの言葉に、少しだけミルナの表情が歪む。
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 22:49:44 ID:cM2vo0ws0
自身の覚悟は出来ている。こうする事に何の躊躇いもない。
しかし、1人残してしまう事になるツンの事や、共に生き残ると約束した内藤の事を思うと、心が揺らぐ自分がいる事にも
気付いていた。
( <●><●>)「私はもう、身寄りも何もないのです。だから私が──」
( ゚д゚ )「君はまだ若い。君はまだ生きるべきだ」
揺らぐ心を抑え、しっかりとワカッテマスを見据えるミルナ。
どちらも自分から折れる気は全く見受けられない。
( <-><->)「……きっとこうなるであろう事はわかっていました」
( ゚д゚ )「平行線か……」
( <●><●>)「いえ、申し訳ありませんが、無理やりにでも折れてもらいます」
そう言ってワカッテマスは胸元から手を引き抜いた。
( ゚д゚ )「何のつもりかね?」
( <●><●>)「そう簡単に納得して頂けるとは思っていませんでしたので」
ワカッテマスは引き抜いた手をそのまま隣のミルナの方に身体ごと向ける。
その手に握られた、一丁の拳銃と共に。
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 22:49:59 ID:cM2vo0ws0
( ゚д゚ )「君にしては随分とスマートではないね」
( <●><●>)「私に撃てるはずがないとお考えですか?」
ワカッテマスの言葉にミルナは深く頷き、右手を差し出す。
ミルナは拳銃を渡すように促すが、ワカッテマスは向けたままの銃口を下げずに言う。
( <●><●>)「船に乗ってください」
( ゚д゚ )「銃など使った事はないだろう? それにこんな不合理な事、君は好まないはずだ?」
( <●><●>)「確かにあなたを撃つのは本末転倒ですが、今後に影響でない程度に足を撃つ位なら私にも出来ます」
視線を逸らす事無く、まっすぐに自分を見詰めているワカッテマスに向かい、ミルナはゆっくりと首を振る。
如何に覚悟を決めようと、引き鉄を引くには、彼は優しすぎるのだから。
( ゚д゚ )「……君に、私は撃てないよ」
( <●><●>)「……かもしれません」
ミルナの諭すような言葉を、ワカッテマスは否定しない。
しかし、銃口は未だミルナに向けたままだ。
( ゚д゚ )「だから──」
( <●><●>)「だからもう1つ、別の手を準備しました」
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 22:51:03 ID:cM2vo0ws0
ワカッテマスは首を回し、これまでずっと黙ってこのやり取りを見守っていたペニサスの方に向ける。
それが合図になったかの様に、ペニサスは2人の方に歩み寄る。
( ゚д゚ )「ペニサス君」
('、`*川「やはり、こうなってしまうのですね……」
( <●><●>)「……」
島の東側の巨大フェイス掃討戦の前日、ワカッテマスはこの日の為に、自分の考えをペニサスに打ち明けていた。
簡単には納得してもらえはしなかったが、最終的には首を縦に振ってくれた。
自分に協力して、ミルナを脱出艇に乗せると。
('、`*川「……」
( ゚д゚ )「……」
見詰め合う2人の姿に、ワカッテマスはわずかに罪悪感を覚えた。
ペニサスが自分の申し出を受け入れてくれたのは、ミルナを生かしたいからだ。
それは今後の皆の為などではなく、他ならぬペニサス自身がそう望むだろうと、ワカッテマスは理解していて
その気持ちを利用したようなものだと思っていた。
('、`*川「すみません……」
ペニサスが一礼をし、さらに足を踏み出す。
ミルナではなく、ワカッテマスの方へ。
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 22:51:21 ID:cM2vo0ws0
('、`*川「……副司令」
( <○><○>)「な……」
鈍い音が頭の後ろから聞こえた気がした。
同時に突き出していた右手が軽くなる。
自分が殴られたのだと気付いた時には、既にワカッテマスの意識は混濁し、闇に染まりつつあった。
( ゚д゚ )「すまない、ペニサス君……なるべく穏便に事を運びたかったのだが……」
('、`*川「仕方ないですよ。副司令はこうと決めたら梃子でも動きませんからね」
('ー`*川「司令と同じ様に」
( ゚д゚ )「ハハ、それは手厳しいな……」
ミルナはワカッテマスの手から落ちた拳銃をスーツのポケットに仕舞う。
ワカッテマスの事だ、確認するまでもなく弾は入っていないのであろう。
ミルナはしゃがみ込み、ワカッテマスを肩に担ぐ。
( ゚д゚ )「軽いな……。ちゃんと食事を取っていたのやら」
('、`*川「食事に関しては、司令も他人の事を言えないと思いますが」
ワカッテマスの反対側の肩を担ぎ、ペニサスがわずかに微笑みながら言う。
ミルナもそれに釣られる様に笑顔を見せていた。
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 22:51:55 ID:cM2vo0ws0
(´<_` )「話し合いは終わったんですか?」
('、`*川「ええ、極めて平和裏にね」
脱出艇の側まで辿り着くと、入り口にはいつの間にか弟者が立っていた。
恐らく一部始終を見ていたのであろう弟者に、ペニサスはしれっとした口調で答え、ワカッテマスを預ける。
( ゚д゚ )「重ね重ねすまないな」
ペニサスと弟者に頭を下げ、謝罪するミルナ。
('、`*川「謝らないでください。私も納得した上でのことなんですから」
ペニサスはすぐにミルナに頭を上げるように頼む。
あの日、ワカッテマスから計画を打ち明けられた時には既に、ミルナから同じ話を持ちかけられていたのだ。
タッチの差でミルナの方が早かったが、その内容も意図も、寸分違わないと言っていいほど同じものであった。
( ゚д゚ )「うん、ありがとう」
ミルナはペニサスを、次いで弟者を見る。
最後のわがままを聞いてくれた2人に、感謝の気持ちを込めて。
( ゚д゚ )「それじゃあ、後の事は頼んだよ」
('、`*川「え?」
(´<_` )「え?」
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 22:52:15 ID:cM2vo0ws0
( ゚д゚ )「え?」
恐らく今生の別れになるであろう2人に、別れの言葉を告げようとしたミルナだが、2人の不思議そうな反応に、
ミルナ自身も不思議そうな表情を浮かべていた。
('、`*川「私も残りますよ?」
( ゚д゚ )「は?」
(´<_` )「俺も残ります。そちらとは別件ですが」
( ゚д゚ )「はぁ?」
(;゚д゚ )「いや、残るって……、君らは私のしようとしている事をわかっているんだよね?」
('、`*川「そりゃ勿論」
(´<_` )「俺らに説明した事を忘れるほどボケましたか?」
2人の言葉に、露骨に狼狽するミルナ。
島に残るという選択肢が、どういうことに繋がるかを考えれば、それも無理のない事だろう。
(;゚д゚ )「いやいやいや、ボケたとかそういう話じゃなくて……」
そんなミルナの言葉を遮るように、脱出艇から出て来たショボンが弟者に声をかける。
(´・ω・`)「弟者さん……っと、すみません、お話中でしたか?」
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 22:53:06 ID:cM2vo0ws0
(;゚д゚ )「い、いや、続けてくれてかまわないよ」
焦ってはいたが、子供の前でしていい話とそうでない話の分別はつく。
ミルナはひとまず自分の話を打ち切り、ショボンに続きを話すように促した。
(´・ω・`)「脱出艇の発進の準備は整いました。後はまだ来てない人達を待つだけです」
(´<_` )「そうか、ご苦労さん」
弟者はショボンに労いの言葉をかけながら、共に脱出艇の方に向かう。
ミルナ達に軽く一礼をし、もう話すことはないというような態度で。
( ゚д゚ )「弟者君」
(´<_` )「……まあ、最後くらいは自分に素直になってもいいんじゃないんですかね、皆」
ミルナは立ち去る弟者を呼び止めるが、弟者は振り向きもせず、呟くように言うとショボンと共に脱出艇に乗り込んだ。
後に残されたミルナとペニサスはお互いに顔を見合わせる。
( ゚д゚ )「自分に素直に……か……」
ミルナは弟者の言葉の意図を、正しく理解出来たかどうかわからなかった。
しかしながら、言わんとせん事はおぼろげながら理解出来たと思った。
('、`*川「兄者君も残るんですよね、きっと」
( ゚д゚ )「兄者君も……?」
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 22:53:25 ID:cM2vo0ws0
('、`*川「渡辺のおばあちゃん達も……」
( ゚д゚ )「そうか……そうだったな……」
自分達は生きる為に島を捨てる事を選んだ。
しかしながら、生きる事の意味がこの島に生きる事である人達もいた。
あの公民館での会議の日、渡辺を始めとした島の老人達から、希望するものは島に残らせて欲しいとの提案があった。
無論、島に残るという事がどういう事に繋がるかを考えれば、それは許可できるものではない。
しかし、老人達の中には生まれてから何十年、この島を一度も離れた事のない人もいる。
この島に並々ならぬ愛着があり、そして島を離れる事への不安もある。
右も左もわからぬ異国の地で残り少ない人生を生き、果たして安らかに死ねるだろうか。
そんな老人達の切々たる思いを、ミルナは生き残る為だからと強引に納得させる事は出来なかった。
( ゚д゚ )「最後ぐらいは自分に素直に……わがままにかな」
異国で生きる事と島で死ぬ事。
どちらがより生きたと思えるのか、それは本人にしかわからないのだろう。
('、`*川「しかし、内藤君が聞いてなくて良かったと思いますね」
( ゚д゚ )「絶対に反対しただろうな」
あの日、途中で会議を抜けた内藤はこの話を知らない。
知っていれば皆を意地でも連れて行こうとするか、自分も残ると言い出しかねなかっただろうとミルナは思う。
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 22:54:44 ID:cM2vo0ws0
同時に、内藤はそれでいいのだとも思う。
どうかこのまま、まっすぐに育って欲しいとミルナは願う。
( ゚д゚ )「さて、あまりのんびりもしていられないな」
('、`*川「司令……よろしいのですか?」
( ゚д゚ )「……私には、誰の考え方が正しいとは言い切ることは出来ない」
( ゚д゚ )「自分の不甲斐なさがこの事態に繋がった事もわかっている」
( ゚д゚ )「だから、私は最後ぐらい自分のわがままを通す。それだけだよ」
ミルナは自分の胸の内を語り、ペニサスを見詰める。
出来れば彼女はこのまま脱出艇に乗り、生き延びて欲しいという願いを込めて。
('、`*川「では、行きましょうか」
その目をまっすぐに見詰め返し、ペニサスはきっぱりとした口調で言い切る。
そこには何者の意思も割り込める余地は見当たらなかった。
( ゚д゚ )「……君には、娘の事を頼みたかったのだがな」
('、`*川「娘さんからは、お父さんの事を頼まれてますので」
2人は軽く微笑み、ブリッジに向かう。
島を、皆を守る為に、自分が生きる場所へと歩き出した。
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 22:54:58 ID:cM2vo0ws0
-
(;´・ω・`)「納得出来る分けないでしょ?」
船内にショボンの驚きと怒りの混じった声が響く。
向かい合う弟者は、声のトーンを落とせと両手を下に向けた。
(´<_` )「お前ならあっさり納得してくれると思ったんだが……すまん、お前もブーンと同い年だったな」
(;´・ω・`)「ブーンは関係ないでしょ? 誰だって反対しますよ!」
未だ興奮状態ではあるものの、声量を落とし、ショボンは弟者に抗議する。
普段の弟者の言う事は概ね利に適い、反対する事はなずなかったが、今の言葉だけは決して聞けない。
(;´・ω・`)「渡辺さん達が島に残るって、どういう事です?」
(´<_` )「お前もあの会議の席にいただろ? 本人達の希望だよ」
(;´・ω・`)「いましたけど、あれは後で話し合うって……」
(´<_` )「そう、話し合った結果だよ」
(;´・ω・`)「そんな……無茶苦茶だ」
ショボンは頭を抱えるようにして俯く。
あの申し出は驚いたが、絶対に許可はされないだろうと今の今まで気にしていなかった。
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 22:55:51 ID:cM2vo0ws0
そんなショボンに、弟者はミルナがした様な話を聞かせる。
(;´・ω・`)「言っている事の意味はわかりますよ。理解も出来ます。でも……」
(´<_` )「死ぬとわかっている選択肢を選ばせるわけにはいかない。生きてこそ人だ」
弟者の言葉にショボンはゆっくりと頷く。
それがわかっていて、島に残る事を認める弟者の考えがショボンには理解出来なかった。
(´<_` )「これは決定事項だ。今更変えられる状況じゃない事もわかっているだろ?」
(;´・ω・`)「だからって……」
(´<_` )「無理に連れて行こうとしていたら、出発前に多数の自殺者が出ただけだ」
(;´・ω・`)「……」
人それぞれに理由がある。お前にもいずれわかる日が来る等と言われた所で、わかりたいとも思わない。
弟者の言っていることがあながち間違いではない事は、今の自分にも気付けていた。
だからといって簡単に納得出来る話ではない。
自分の手には余る大きな問題、現実を突き付けられたショボンは、恨みがましい目で弟者を見る。
(´<_` )「……それと、これを渡しておく」
(´・ω・`)「それは?」
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 22:56:19 ID:cM2vo0ws0
(´<_` )「俺の私用パソコンの起動キーだ。まだ形になっていない、研究途中の資料なんかが入っている」
既に運用可能な物等、これまでの研究の成果は整備部のハードディスクにまとめて格納してあるが、途中の物は
ここにしかないと弟者は説明する。
弟者は一通り説明を終えると、小さな金属製の鍵をショボンの手に握らせる。
冷たい金属の感触が、ショボンを少し冷静にさせた。
(´・ω・`)「あなたも残るつもりなんですね?」
(´<_` )「流石、察しがいいな」
(´・ω・`)「……」
(´<_` )「……」
しばし無言で見詰め合う。
聞きたい事は山ほどあったが、渡辺さん達の話を聞いた後ではどれも答えは聞くだけ無駄な気がしていた。
人それぞれに、自分には窺い知れない理由があるのだと、答えは既に告げられているのだから。
(´・ω・`)「……どうして僕に?」
(´<_` )「お前なら、有効に活用してくれると思ったからさ」
(´-ω-`)「……何を言っても無駄なのでしょうね」
ショボンの確信めいた呟きに、弟者は謝罪の言葉と共に頷く。
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 22:57:26 ID:cM2vo0ws0
(´・ω・`)「兄者さんも残られるんですね?」
(´<_` )「ああ、惚れた女が残るからな」
(´・ω・`)「弟者さんは?」
(´<_` )「……ただのわがまま、かな?」
(´-ω-`)「敢えては聞きませんよ」
(´<_` )「……察しが良過ぎるというのも考え物か。ああ、そうしてくれると助かる」
弟者はくるりと振り向き、ショボンに片手を挙げ、別れを告げ、歩き出す。
双子の兄弟は最後まで似たもの同士なのだと、ショボンは2人の決意を察することが出来た。
ショボンはその背に向かい、呟くように声をかける。
(´・ω・`)「……僕も、飛びたいと思っていましたから。僕自身のわがままで」
(´<_` )「……そうか」
弟者は歩みを止める事無く、同じく呟くように答えた。
最後のわがままを通す為、守りたいものを守る為、弟者はその手で扉を開けた。
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 22:58:01 ID:cM2vo0ws0
. _
(;゚∀゚)「ハイン!」
从#゚∀从「食らえッ!」
ジョルジュが叫んだ時には既に、ハインリッヒはセイクリッド・ライフルの引き鉄を引いていた。
セイクリッド・ライフルから射出された白い弾丸は、一直線にシュヴァルベの前方、ジョルジュが追い込んだ
人型フェイスに向かう。
ミセ*゚д゚)リ「─vv-ナイスヒット!ヘ√レ─-」
既に脱出艇に乗り込み、そこからサポートをするミセリの声がセイクリッド・ライフルが命中をしたことを伝えて来る。
弾丸は、人型フェイスの足に直撃した。
ジョルジュが追い込み、ハインリッヒがそれを狙撃するという連携は、一見上手くいっているかの様に見えた。
ミセ;゚д゚)リ「─vw-熱源反応有り!ヘ√レwv─」
弾丸を食らったはずの人型フェイスの背から触手が伸び、シュヴァルベへと襲い掛かる。
それを予測していたのか、既にシュヴァルベは回避行動に移っていた。
_
( ゚∀゚)「ちぃッ、やっぱ効いてやがらねえ」
从;゚∀从「ライフルじゃ威力が足りねえか……」
かなり小型化したものの、元の巨大フェイスの装甲を流用しているのか、生半可な攻撃は通さない様だ。
ジョルジュ達はその速度に翻弄されながらも、何度か攻撃を当てる事は出来ていたが、今度はその硬度に苦戦していた。
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 22:58:47 ID:cM2vo0ws0
ミセ;゚д゚)リ「─vw-どうしよ?─ヘ√レwv─どうしよ?─wvv-ねえ、どうしよ?─vv-」
从 ゚∀从「うるせえよ。つーか、バックアップがそんなんでどうすんだよ」
ミセリを一喝し、ハインリッヒはライフルを構える。
既にジョルジュは人型フェイスを追い掛けている。
从;゚−从(しかし、どうするかな……)
隊長という立場上、慌てふためく姿を晒すわけにはいかないが、内心はミセリとそう変わらない心境だ。
このまま同じ戦法を続けていても埒が開かない。
内藤達が合流して来るまで粘るという手もありはするが、こちら以上に向こうも苦戦しているはずのこの状況で、
そんな甘い事を考えるわけにはいかない。
从;゚−从(けど、このままじゃ……)
. _
(;゚д゚)「ぐっ……ッ」
人型フェイスの伸ばした触手がシュヴァルベの脇を掠る。
ジョルジュは呻き声を飲み込み、シュヴァルベの速度を上げ、人型フェイスに肉薄する。
_
(#゚∀゚)「調子こいてんじゃねぇぇぇッ!」
シュヴァルベの翼が人型フェイスを斬り裂いたかの様に見えたが、またも人型フェイスはその一撃を苦も無くかわす。
从 ゚∀从「そこッ!」
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 22:59:00 ID:cM2vo0ws0
再びハインリッヒはセイクリッド・ライフルを人型フェイスに命中させるが、人型フェイスは何事も無かったかの様に
触手を伸ばし、シュヴァルベを攻撃する。
ミセ;゚д゚)リ「─vwヘ√レ-うっはぁー-wv─全然効かないよ─wv─」
从;゚∀从「クソッ!」
先ほどの狙撃は足に当たったが、今回は胸のコア付近に命中した。
しかしながら結果は変わらず、人型フェイスにダメージを与えた形跡は見られない。
从;゚∀从「仕方ねえ、奴との距離を詰めるしかねえな」
ハインリッヒはレルヒェを前進させ、人型フェイスに近付く。
現状でもレルヒェのセイクリッド・ライフルの有効射程範囲内ではあるが、対象との距離を詰めれば、ある程度までは
威力は上がる。
ハインリッヒはレルヒェのスロットルレパー握る手に力を込めた。
_
(#゚∀゚)「それ以上前に出るんじゃねぇ!」
从;゚−从「──ッ!?」
ハインリッヒはジョルジュの怒声に思わず、手の力を緩め、レルヒェの前進を止める。
何故だと問おうとするよりも早く、続けざまにジョルジュの怒声が通信機越しに届く。
_
( ゚∀゚)「これ以上お前が前に出たら、お前が狙われるだろうが」
そうなったら、相手の動きが予測し辛くなり、今の様には追い込めなくなるとジョルジュは言う。
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:00:39 ID:cM2vo0ws0
从 ゚∀从「けど、今のままじゃあいつは倒せねえだろうが」
それならば今の様な戦術が取れなくなっても問題はない。
むしろ、こちらに肉薄してくれた方が至近距離から当て易くなる。
从 ゚∀从(とは言っても、あの速さに簡単に当てられるとは思っちゃいねえがな)
レルヒェに圧倒的勝る速度を誇るシュヴァルベがまともに追いつけない相手に、レルヒェ単体で攻撃を当てるのは
相当至難の技だとハインリッヒも理解している。
从 -∀从(だが……)
从 ゚∀从(何としてでも止める)
从 ゚∀从(止めさえすれば、至近距離からの射撃で人型フェイスを打ち抜く事が出来るはずだ)
从 ゚∀从(その為には……)
从 ゚∀从「ジョルジュ──」
ハインリッヒは覚悟を決め、再度前進するとジョルジュに告げようとする。
しかしながらそれは、ジョルジュの言葉により、掻き消される事になる。
_
( ゚∀゚)「ハイン、セイクリッド・ランチャーを準備しろ!」
. _,
从 ゚∀从「はぁ?」
ジョルジュの突拍子もない言葉に、ハインリッヒは戦闘中に似つかわしくない間の抜けた声を上げる。
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:00:55 ID:cM2vo0ws0
- _
( ゚∀゚)「聞こえなかったか? セイクリッド・ランチャーと換装しろって言ったんだよ」
从;゚∀从「いや、それは聞こえたけどさ……」
高出力かつ、広範囲の射撃兵器、セイクリッド・ランチャー。
確かにあれならば、威力不足という問題は解消出来るだろう。
しかしながら、あれを高速で動き回る目標を対象に撃つのは無理があり過ぎるとハインリッヒは思う。
从 ゚∀从「無茶だ。出力、射撃までの時間、目標の速度と、どう考えても……」
_
( ゚∀゚)「……ハイン」
从;゚∀从「な、なんだよ……」
ゆっくりと、そして力強く自分を呼ぶ兄の声に、ハインリッヒは口をつぐみ、兄の横顔が映し出されているモニターを
注視する。
この間も人型フェイスとの攻防は続いており、兄の目はモニターを、自分の方を直視する事はない。
しかし兄の目はしっかりと自分の方に向けられているとハインリッヒにはわかる。
普段はおちゃらけた態度で、いい加減な風を装う兄が、本当は責任感の強い、思慮深い人間だということは妹である
ハインリッヒはよく知っている。
_
( ゚∀゚)「俺を信じろ」
从 ゚−从「……」
_
( ゚∀゚)「俺が必ず、奴の動きを止める」
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:02:17 ID:cM2vo0ws0
- _
( ゚∀゚)「だからお前は、そこで奴を撃ち抜く事に専念するんだ」
从 ゚∀从「兄貴……」
シュヴァルベと人型フェイス、これまでの攻防から見て取れる性能の差を考えれば、それは不可能に近い。
レルヒェとの連携を主眼に置いているとはいえ、未だシュヴァルベは人型フェイスに一撃すらも与えられていない。
しかし……
_
( ゚∀゚)「ハインリッヒ」
从 ゚∀从「……」
自分の名を呼ぶ兄の声には、妹である自分にしかわからないものを感じ取れた。
そこにあるもの、それは……
从 ゚∀从「……ああ」
ハインリッヒはモニター中の兄をまっすぐに見詰め、頷いた。
時にいい加減な態度を見せる兄ではあるが、いい加減な人間でないことはよくわかっている。
その兄が言う言葉だ。そこにはきっと確かなものがある。
从 ゚∀从「一つだけ言っておくぜ」
_
( ゚∀゚)「おう」
- 48 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:02:38 ID:cM2vo0ws0
从 ゚∀从「兄貴諸共というのは勘弁してくれよ」
_
( ゚∀゚)「わかってるさ。んな馬鹿なことはしねえよ」
从 ゚∀从「……わかった。一旦戻るからここは頼むぜ?」
普段ならセイクリッド・ランチャーを射出してもらい、空中で換装すれば済む話だが、既に脱出艇への搭乗作業は済んでいて、
格納庫に人はいないはずだ。
_
( ゚∀゚)「おう、任せろ」
(´<_` )「─vv-セイクリッド・ランチャー射出準備-vw─」
从;゚д从「は?」
ジョルジュの声に頷き、人型フェイスの方を向いたまま、後退を始めたハインリッヒのもとに、弟者の声が飛び込んで来る。
想定外の事態にハインリッヒは目を丸くして、またも間の抜けた声を上げた。
('、`*川「進路クリア、発進どうぞ」
( ゚д゚ )「うむ、セイクリッド・ランチャー、射出!」
从;゚д从「いやいやいや、あんたら何やってんだよ!?」
ブリッジと格納庫、本来なら既に人がいないはずの2ヶ所から届く通信に、ハインリッヒは思わずつっこんでしまっていた。
- 49 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:03:40 ID:cM2vo0ws0
('、`*川「何って……戦闘支援でしょ」
从;゚д从「そういう話じゃなくて! 何でそこにいるんだって話だよ!」
(´<_` )「─vw─おい、ハイン─ヘ√レwv─」
从;゚д从「お前も何でそこに──」
(´<_` )「─vv-ランチャーいったぞ?─wv─」
从;゚д从「あ? っとヤバ!?」
気付けば既にセイクリッド・ランチャーがレルヒェの間近に飛来している。
ハインリッヒは慌てて位置を合わせ、セイクリッド・ランチャーを迎え入れ、換装を果たす。
从 ゚∀从「装着完了……でだな、お前ら?」
_
(#゚∀゚)「合体の決めポーズはどうしたぁぁぁぁっ!」
从#゚∀从「いちいちうるせえ! 話の邪魔すんな!」
(´<_` )「─vv-説明は後だ。今はそんな余裕ないだろ?─vv─」
从 ゚−从「チッ……」
弟者の言葉に舌打ちで答えるハインリッヒだが、現状を考えれば弟者の言う通りだ。
あの人型フェイスを放置して、のんびり会話している暇などない。
- 50 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:04:06 ID:cM2vo0ws0
从 ゚∀从「あとでちゃんと納得のいく説明しやがれよ?」
(´<_` )「─ヘ√レwv-ああ、後でな─wv─」
ハインリッヒは軽く首を振り、気持ちを切り替えて視線を人型フェイスの方に向ける。
从 ゚∀从「兄貴、こっちは準備完了だ!」
_
( ゚∀゚)「ああ、そこでランチャー構えて待ってろよ。すぐに俺が見せ場を作ってやる」
从 ゚∀从「充填時間も考えろよ?」
_
( ゚∀゚)「レルヒェの燃料使うしかねえんだから、いつもよか早いよな?」
从 ゚∀从「そうだが、それでも120秒はかかるぞ」
_
( ゚∀゚)「把握!」
ジョルジュは人型フェイスと対峙しながらハインリッヒに答える。
向こうの速度にも慣れ、動きのパターンらしきものも掴み掛けてはいたが、如何せん速度で劣っている分、人型フェイスの
動きを止めるのは至難の業であろう。
_
( ゚∀゚)(悔しいが向こうの方が速いのは認めざるを得ねえ)
_
( ゚∀゚)(……今のままならな)
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:04:53 ID:cM2vo0ws0
襲い掛かる触手の群れを苦もなくかわし、シュヴァルベの高度を上げる。
人型フェイスとレルヒェとの距離が空くように大きく旋回しながら回り込んだ。
_
( ゚∀゚)「んじゃ、行くかね」
上空から人型フェイスを見下ろし、ジョルジュは一つ深呼吸をする。
スペックの差を考えると、我ながら無謀な策だとわかってはいるが、不思議とジョルジュの中には不安は無かった。
_
( ゚∀゚)「アーマーパージ!」
ジョルジュの大きな掛け声と共に、シュヴァルベからいくつかのパーツが剥がれ落ちていく。
元々装甲の薄いシュヴァルベではあるが、その少ない装甲をそぎ落とし、フォルムが更に鋭角になる。
_
( ゚∀゚)「行くぜ──っと!?」
足を止めていたシュヴァルベの元に、人型フェイスからの攻撃が襲い掛かる。
しかしジョルジュは既に回避行動を終えていた。
. _
(;゚∀゚)「おいおい、ヒーローが変身中は待つのが悪役の礼儀だろうが」
从#゚∀从「アホな事言ってないで真面目にやれ!」
_
( ゚∀゚)「わーってるって、んじゃ改めて……」
- 52 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:05:15 ID:cM2vo0ws0
- _
( ゚∀゚)「行くぜ、セイクリッド・ドリルッ!」
シュヴァルベの両手を交差させ、横っ腹に添えるような姿勢を取る。
引き抜いて高々と挙げられたその両手には、螺旋状の尖角、ドリルが装着されていた。
从;゚∀从「ここでそいつかよ……行けるのか?」
(´<_` )「─vv-設計上は問題ない。後はやってみるまでわからんさ─wv─」
从;゚∀从「適当だな。やってみて駄目でしたが通る場面じゃねえぞ?」
_
( ゚∀゚)「ハイン!」
从;゚∀从「!」
_
( ゚∀゚)「こいつを作った兄者と弟者を信じろ! そして──」
_
( ゚ー゚)「お前の兄、この俺を信じろ!」
从 ゚∀从「兄貴……」
何の根拠も無い自信だ。
いつもこの兄は何一つ確かなものが無くても、自信に満ちた顔で自分に笑いかける。
そしていつも、言葉通りの事をやってのけて来た。
モニターに映る見慣れた兄の笑顔に、ハインリッヒも自然に笑みを浮かべていた。
- 53 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:06:10 ID:cM2vo0ws0
从 ゚ー从「今更言われなくても、アタシはいつでも兄貴を信じてるよ」
_
( ゚∀゚)「……ああ」
_
( ゚∀゚)「んじゃ、改めて行くぜ」
再度襲い掛かる人型フェイスの触手をかわし、高度を保ったままシュヴァルベを移動させた。
何かを見計らうかのように、ジョルジュは人型フェイスと距離を保ったまま、攻撃をかわし続ける。
_
( ゚∀゚)(……確かにてめえは速い。それは認めてやる)
_
( ゚∀゚)「だが!」
ジョルジュはシュヴァルベの動きを止め、これまでかわし続けていた触手に正面から立ち向かう。
从;゚∀从「兄貴!?」
_
( ゚∀゚)「動きが単調なんだよ!」
シュヴァルベの向きを変え、触手を後方に受け流すように避ける。
そのままシュヴァルベの両手を挙げ、ドリルを回転させた。
_
( ゚∀゚)「100万パワー+100万パワーで200万パワー、いつのも2倍のジャンプが──」
从#゚皿从「真面目にやりやがれぇぇぇぇ!!!」
(´<_` )「─vv-お前、そのネタわかるんだな-vv─w─」
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:06:35 ID:cM2vo0ws0
- _
( ゚∀゚)「遊びは終わりだ! 食らえッ!」
挙げた両手を合わせ、ドリルの回転に合わせるように機体その物を回転させ、弧を描くように機体を上昇させた。
ジョルジュがここで仕掛ける事を理解したハインリッヒは、セイクリッド・ランチャーの充填を始める。
从 ゚∀从「セイクリッド・ランチャー、充填開始!」
破壊されず、残った触手を引き戻す人型フェイスに向け、ジョルジュはシュヴァルベを一気に急降下させる。
その様に反応したのか、人型フェイスは触手を戻しながら回避行動に移ろうとした。
_
(#゚∀゚)「スパイラル・ドリルゥゥゥッッ!!!」
1本の真紅の矢と化したシュヴァルベが、避ける人型フェイスを追尾するような形で迫る。
刹那、2機が交錯した。
- 55 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:07:19 ID:cM2vo0ws0
从;゚−从「!?」
(´<_` )「……」
粉砕された無数の触手片を撒き散らし、人型フェイスはシュヴァルベの一撃をかろうじてかわす。
从;゚д从「外した!?」
_
(#゚∀゚)「まだだッ!」
避けられた直後、ジョルジュはシュヴァルベに急制動をかけ、トンボ返りをさせる。
機体の耐用限界を超えた操縦に、機体、搭乗者共に甚大な負荷がかかるが、ジョルジュはそのまま上空から人型フェイスへ
雪崩れかかるようにシュヴァルベをぶつける。
歪な金属音を響かせ、そのまま2機はもつれ合うように着水した。
从;゚д从「兄貴!?」
落下の勢いそのままに、2機は海底まで到達する。
从;゚−从「チッ、砂埃で見えねえ」
2機が海底に到達したのは熱源反応で確認出来たが、撒き上がる海底の砂が2機を覆い、状況がわからない。
焦れるハインリッヒの視界に、セイクリッドランチャーの充填完了の表示が映る。
从;゚−从「兄貴、状況を──」
- 56 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:07:35 ID:cM2vo0ws0
- _
(#゚∀゚)「撃て! ハイン!」
確認の通信を取ろうとするハインリッヒの元に、ジョルジュの怒号が響く。
次第に収まる砂埃の中、両のドリルで人型フェイスを海底に固定したシュヴァルベの姿がハインリッヒにも見て取れた。
从;゚д从「まだ兄貴が!?」
_
(#゚∀゚)「いいから撃て! チャンスは今しかない!」
从;゚д从「けど──!?」
_
( ゚ー゚)「俺を信じろ」
从;゚−从「!」
切迫した状況の中で、兄が見せた穏やかな笑み。
それは妹を、これまでずっと支えになって来たものだ。
それは今も、そしてこれからも。
从; ∀从「セイクリッド・ランチャーッ!」
从#゚∀从「発射ァァァァッ!!!」
轟音と共に広がる光の帯が海を貫く。
わずかに遅れて上がる巨大な水飛沫が、一つの戦いの終わりを告げた。
- 57 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:08:47 ID:cM2vo0ws0
-
(;^ω^)「だっしゃぁぁぁぁッ!?」
シュトルヒの下方が白で埋め尽くされる。
砲台型フェイスからの一撃を辛くもかわした内藤はそのままさらに高度を上げる。
(;*゚ー゚)「内藤君! 回避は大き目に!」
砲台型フェイスに近付くにつれ、発射から射撃が届くまでの時間が短くなるのは当然だ。
それはそのまま回避が難しくなることを示す。
(;^ω^)「わかってますお! けど、避けてばっかじゃ!」
回避したシュトルヒに群がる無数のフェイス達。
内藤は怒鳴りながらそれらをセイクリッド・ブレードで一薙ぎにする。
(;*゚ー゚)「気持ちはわかるけど、焦りは禁物だよ」
(;^ω^)「了解ですお」
しぃの言葉に素直に従い、内藤は一旦距離を取り、後方に下がる。
その間にも砲台型フェイスがエネルギーの充填を続けているのを内藤は忌々しく睨み付ける。
( ^ω^)「やっぱ二手に別れますかお?」
(*゚ー゚)「駄目よ、それだとこのフェイスの囲みを突破出来ないから」
- 58 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:09:02 ID:cM2vo0ws0
当初は散開して左右から別々に攻めかかろうとした内藤達だが、群がる大量のフェイス達に行く手を阻まれ、
ろくに前進もままならなかった。
加えて砲台型フェイスの稼動範囲も広く、意外に回転速度も速いことから簡単に各個撃破されそうだと踏んで
内藤達はここまで共に行動していた。
( ^ω^)「最初よりはだいぶ近づいてますし、この辺から仕掛けてみてはどうでしょうかお?」
(*゚ー゚)「さっきも言ったけど、焦りは禁物。まだ賭けに出るような状況じゃないよ」
( ^ω^)「ですけど……わかりましたお」
未だ何か言いたげな内藤であったが、それを押し止め、肯定の意を返した。
しぃが言っている事が正しいのはわかっている。
しかしながら、南西側のジョルジュ達、そして脱出艇の事を考えると短期決戦で片付けたいと思ってしまう。
(*゚ー゚)「とにかく今は確実に砲台型フェイスに接近する事を優先しましょう」
( ^ω^)「はいですお」
内藤は素直に頷き、シュトルヒを前進させる。
しかしそこで、新たな懸念が頭をよぎる。
( ^ω^)「接近した後はどうしますかお? やっぱヴェノムを使うしかないですおね」
接近すると決めたはいいが、接近できた後の砲台型フェイスへの攻撃手段が少し心許無いと内藤は思う。
威力に関してはヴェノムなら問題ないとは思うのだが、問題はそれを振るうチャンスだ。
- 59 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:09:54 ID:cM2vo0ws0
これまでの巨大フェイスとの戦いは、皆が敵を引き付けている間に仕掛けたりと、速いとは言い難いヴェノムでの
攻撃をサポートしてくれていた。
しかしながら今回は、サポート要員はナハティガル1機のみだ。
ナハティガルが防御面に特化した機体とはいえ、下手すれば近づいた所で防戦一方の展開になりかねない。
(*゚ー゚)「それも考えているから大丈夫。だから、今は近づくことだけを考えて、ね?」
( ^ω^)「わかりましたお」
自信ありげに答えるにしぃに、内藤は笑顔を返す。
内藤が頼りになる先輩の言葉を、何の疑いも無く受け入れた事を誰が責められようか。
( ^ω^)「進路、2時! 突貫しますお!」
(*゚ー゚)「了解!」
シュトルヒを加速させ、内藤はフェイスの群れの只中を突き進む。
砲台型フェイスに近付くにつれ、フェイスの数は増大していくが、ただのフェイスに遅れをとるほど今の内藤の腕は
稚拙ではない。
( ^ω^)「流石に数が多いお。そろそろこいつを使うかお」
( ^ω^)「ヴェノム!」
大音声と共にその背に背負った大刀、ヴェノムを稼動させ、右手に納める。
ほぼAI任せの操作だが、やはり普段よりスムーズに動くことに内藤は満足していた。
- 60 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:10:12 ID:cM2vo0ws0
(#^ω^)「どけおッ!」
前進速度を落とすことなく、逆手に持ったヴェノムを横に薙ぎ払う。
音もなく砕け散るフェイスの透明なきらめきが灰の空にいくつも舞った。
(#^ω^)「もう一丁!」
順手に持ち替え、前進しながら今度は逆方向へとなぎ払う。
無限とも思しき勢いで湧き続ける有象無象のフェイスをものともせず、2機は砲台型フェイスの元へ向かう。
(*゚ー゚)「トソンちゃん、避難状況は?」
(゚、゚トソン「─vv-ほぼ完了しておりますヘ√レ─-件の方々以外は─vv-」
まだ詳細を知らされていない内藤を慮ってか、トソンはわずかに言葉を濁す。
件の方々、この島に残ると決めた人間以外は全て乗り終わっているということだ。
(*- -)「そう……」
(*゚ー゚)「じゃあ、私達が北側のこいつを片付けたら、すぐにエンジンをかけて出発して」
(゚、゚トソン「─vv-南西側の撃退を待たずに大丈夫でしょうか?─wv-」
(*゚ー゚)「状況的に向こうは超長距離兵器は持ってなさそうだし、あの2人が足止めしてくれるだろうからね」
まず脱出艇の人々の安全を確保することが最優先だからとしぃは言う。
- 61 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:10:58 ID:cM2vo0ws0
(゚、゚トソン「─vv-わかりました、司令にその旨を……」
(゚、゚;トソン「─vw-え? 弟者さん? それに副司令も……どうして副司令は気絶してヘ√レ─-」
(゚、゚;トソン「─vv-後は頼むってどういうことですか?-ヘ√レ─--弟者さん? ちょっと─vv─」
(*゚−゚)(……やっぱり、そうするんだね)
しぃは取り乱したトソンの様子から、そこで何が起こっているのかを察することが出来た。
弟者の行動、そして恐らく同じように行動を起こすであろうミルナ達の事を理解していた。
相談されたわけではない。しかし、恐らくそうするであろうことをしぃは察していた。
(*゚−゚)(止めるべき……だったのかな……)
彼らの行動を理解していたのなら、生命を投げ打とうとする彼らを止めるべきだったのだろう。
しかし、彼らがそうせざるを得ない状況も、そして島に残ることを決めた人々の心情も、しぃは理解出来た。
(*゚−゚)(それも生きるという事なのかな、ギコ君……)
最後まで自分らしく生きることで、死が生になる。
馬鹿らしいと、生きてこその生命だと、それを止める事はしぃには出来なかった。
(#^ω^)「このぉぉぉぉッ!」
(*゚ー゚)「内藤君、速度上げ過ぎ! 一旦引いてこっちと合流!」
しぃは軽く首を振り、眼前の戦闘に集中し直す。
今は考えてる時ではなく、今更考えても仕方のない事だ。
- 62 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:11:12 ID:cM2vo0ws0
(*゚ー゚)「しばらく私が持ち堪えるから、進路計算よろしく」
( ^ω^)「了解!」
(*゚д゚)「フィールド展開!」
シュトルヒが後退したのを確認すると、しぃはセイクリッド・フィールドを展開する。
あの砲台型フェイスの射撃以外の攻撃なら、全てを防ぎ切るだろう。
( ^ω^)「計算完了! 進路、11時に行くお!」
(*゚ー゚)「了解!」
しぃの返事を待たずに飛び出す内藤の背後をナハティガルが追随する。
砲台型フェイスの射撃をかわし、フェイスの包囲網を潜り抜け、2機はようやく砲台型フェイスに辿り着いた。
( ^ω^)「目標を肉眼で確認! つーか、やっぱデケえな。けど、このまま一気に──」
(*゚д゚)「駄目ッ! 下がって──」
(;^ω^)「んなッ!?」
勢いをそのままに、砲台型フェイスへ特攻をしかけたシュトルヒの頭上に、砲台型フェイスの大腕が振り下ろされる。
予期せぬ攻撃に内藤はヴェノムを掲げ、辛くもそれを逸らす。
(;^ω^)「クッ、腕は残ってたのかお!?」
- 63 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:11:48 ID:cM2vo0ws0
形状を変え、砲台化した巨大フェイスは一見してあの特長的な大腕は備わってない様に見えた。
しかしそれは内藤達の勝手な判断に過ぎず、単に収納されていただけの様だ。
(;*゚ー゚)「内藤君!」
(;^ω^)「チィッ!」
連なる2本の大腕が続けざまにシュトルヒを襲う。
一撃目で体勢を崩されたシュトルヒはそれを受けきれず、振り下ろされた大腕に弾き飛ばされ、着水する。
(;^ω^)「ぐっ……」
ξ; )ξ「くぅッ……」
(;*゚ー゚)「内藤君! 大丈夫!?」
(;^ω^)「だ、大丈夫ですお。ちょっとやばかったですけど」
(;^ω^)(あれ? 今何か声が聞こえたような……?)
被弾したというよりは、正面から受け止めたまま押し出されたようなものなので、機体自体には大きなダメージはない。
すぐにシュトルヒを浮上させ、砲台型フェイスと距離を取る。
(;^ω^)「さて、どうしたものかお……」
内藤は油断していたつもりは毛頭ないが、焦っていた事はよくわかっている。
この砲台型フェイスを倒さぬ限り島を脱出する事は叶わないのだ。
- 64 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:12:05 ID:cM2vo0ws0
( ^ω^)(脱出……か……)
この期に及んで島を捨てる事に納得がいっていないわけではない。
脱出を決めた皆の言葉の正しさは、実際に戦っている内藤自身がよくわかっている。
このままでは戦力を消耗する一方なのだ。
残存勢力を集め、反撃の手段を講じる事が生きる為の最善の手段だと。
( ^ω^)「結局は、僕自身の気持ちの問題だけなんだおね……」
思わず漏れた言葉に気付いた内藤は、軽く首を振り雑念を払う。
今は感傷に浸っている場合ではないのだ。
この砲台型フェイスを倒し、皆を守り切ってからまた改めて考えようと、内藤は意識を戦闘に集中させる。
( ^ω^)「しぃさん、どうしますかお? 今回はこないだみたく、あの大腕切ってる時間はなさそうですおね」
(*゚−゚)「そうだね……」
( ^ω^)「となるとやっぱり一点突破、コアへの強襲を仕掛けるしか──」
(*゚−゚)「……大丈夫、私に策があるから」
( ^ω^)「お? 策……ですかお? それはどういう……」
(*゚д゚)「説明は後! まずは私があいつに取り付くから、内藤君は援護して!」
(;^ω^)「り、了解!」
- 65 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:13:00 ID:cM2vo0ws0
強い口調で質問を遮られた内藤は、素直にしぃの言葉に従い、シュトルヒをナハティガルの前方へ進ませる。
( ^ω^)「さあ、こっちだお。どんどん来やがれお!」
内藤の声に応えたわけではないだろうが、前に出たシュトルヒの動きに釣られるように、砲台型フェイスの攻撃が集中する。
振り下ろされる大腕をかわし、群がるフェイスを斬り裂き、砲台型フェイスとの距離を付かず離れず保つ。
( ^ω^)「その程度の攻撃に当たってやるかお」
強気な発言をする内藤ではあるが、実際はそれほど余裕があるわけでもない。
今の所、回避に専念しているので何とか凌げているが、このままでは攻撃に移れるチャンスが一向に訪れはしない。
内心は焦りつつも、今はしぃの言う策を待つしかないのが現状だ。
(;^ω^)「クッ──! またかお!?」
幾度となく振り下ろされる砲台型フェイスの大腕。
正面から受け止めれば先のように弾き飛ばされるのは目に見えている。
とはいえ、何度となく見た攻撃だ。
回避するだけなら容易い。
そう判断した心のどこかに油断があった。
(;^ω^)「避け──下ッ!?」
シュトルヒの下方から水飛沫と共に振り上げられる、鞭の様な砲台型フェイスの大腕。
振り下ろされる事しかなかった大腕の攻撃に、下からの攻撃という意識が内藤の頭になかった。
- 66 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:13:16 ID:cM2vo0ws0
(;^ω^)「だぁらぁぁぁぁぁぁッ!!!」
シュトルヒを斜めに急上昇させ、機体を錐揉みするように旋回させて強引に軌道を変える。
その刹那、シュトルヒがいた空間を大腕が薙ぎ払う。
辛くも回避に成功した内藤が見た光景は、砲台型フェイスの砲身から白い光が溢れ出す瞬間だった。
(;゚ω゚)「この位置から──!?」
それを知覚するよりも早く、内藤はシュトルヒのスロットルを全開に押し込むが、急回避を終えたばかりの機体は慣性に流され、
反応が遅れる。
(;゚ω゚)「しッ──!」
迫り来る白い光の奔流が、スローモーションの様に見える。
訪れる死の足音が耳に響き、内藤は親しき人達の笑顔が見えた気がした。
共に戦い、この空に生命を散らした精悍な笑顔が。
共に生き、この島で帰りを待つ優しい笑顔が。
守りたかったもの、託された思い、守るべきもの、自分の思い。
まだ自分は──
(#゚ω゚)「死んでたまるかおッ!!!」
- 67 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:16:53 ID:cM2vo0ws0
(#^ω^)「ヴェノムッ!!!」
右手の大刀、ヴェノムを横殴りに振り回し、砲撃へ叩き付ける。
そのまま爆散するヴェノムの反動で、無理矢理シュトルヒを砲撃の斜線上から逸らした。
(#^ω^)「クッ……、ミスったお」
辛くも回避に成功はしたが、最大の攻撃手段であるヴェノムを失ってしまった事は痛い。
この失態で、しぃの策にも悪い影響を及ぼすかもしれない。
内藤はすぐさま腰のセイクリッド・ブレードを抜き放ち、しぃの姿を探す。
(;^ω^)「しぃさん!?」
(*゚ー゚)「陽動ありがとう。準備は整ったわ」
先の砲撃の隙にであろうか、ナハティガルは砲台型フェイスの下方に密接せんばかりに位置取っている。
あの位置ならば砲撃は勿論、大腕の攻撃も当たらない。
( ^ω^)「それで、次はどうしますかお?」
襲い来るフェイスを斬り落としながら、内藤はしぃに次の指示を仰ぐ。
そこから考え得る手は内藤にもいくつか思い浮かんだが、どれはヴェノムがないと厳しいかもしれないと改めて思う。
(;^ω^)「すみません、僕のミスでヴェノムを破壊されてしまいましたお。その策ってのはいけそうですかお?」
(*゚ー゚)「大丈夫よ、もう策は成功だから」
- 68 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:17:12 ID:cM2vo0ws0
( ^ω^)「お? どういうことですかお?」
(*゚ー゚)「セイクリッド・サークルを使うわ」
( ^ω^)「は……?」
(*゚ー゚)「ここまで島から離れれば島に被害を及ぼすこともないし、後方のクラックも巻き込めるわ」
いつも通りの口調でしぃの発せられた言葉に、内藤は思わず間の抜けた言葉を漏らしてしまう。
その言葉の意味が内藤の中で正しく線を結んだ瞬間、噛み付かんばかりの勢いで内藤が叫ぶ。
(;゚ω゚)「な、何を言ってるんですかお!? 冗談きついですお!」
(*゚ー゚)「冗談なんかじゃないわ。これが一番確実な方法よ」
セイクリッド・サークル、発動点から半径約20kmにも及ぶ爆発を引き起こす強大な兵器。
しかしながらそれは諸刃の剣。機体のオーバーロードさせ、爆発させる言うなれば単なる自爆だ。
そしてセイクリッド・サークルは、かつてしぃの恋人であるギコが生命を散らした兵器でもある。
(;゚ω゚)「か、確実かもしれませんが、そんなの駄目ですお! 間違ってますお!」
(*゚−゚)「聞いて、内藤君」
なおも食い下がる内藤に、しぃは淡々と現状の戦況を論理的に解説する。
- 69 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:20:07 ID:cM2vo0ws0
現在の2機の武装では、砲台型フェイスを倒せない事を。
自らの失態で、一縷の望みであったヴェノムを失った内藤は唇を噛み締め、押し黙る。
(;^ω^)「けど、まだ手は……、ジョルジュさん達を待つとかありますお」
(*゚−゚)「向こうもそんな余裕がないのは、内藤君もわかってるでしょ?」
ジョルジュ達の状況は、オペレーターを通して聞いている。
セイクリッド・ランチャーを持ち出し、無茶な賭けに出ようとしている事も。
(; ω )「けど……でも……それは……それは駄目ですお!」
(;^ω^)「な、なら僕が、僕がセイクリッド・サークルを使いますお!」
(*゚−゚)「それは駄目よ」
(;^ω^)「戦況を考えるなら、これ以降の脱出艇の防衛任務に関してはシュトルヒよりはナハティガルの方が──」
(*゚−゚)「そういう事じゃないの」
(;^ω^)「どうしてですかお! 今更僕がまだ子供だからなんて理由は持ち出させませんお!」
共に島を守ってきた仲間に、そんな理由で特別扱いされるのは納得いかないと内藤は言う。
しかし、しぃはゆっくりと首を振り、答える。
(*゚−゚)「ええ、私達の生命は対等よ。あなたを特別視はしない。……でもね」
- 70 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:20:23 ID:cM2vo0ws0
(*゚−゚)「あなたともう1人の生命まで犠牲にするわけにはいかないの」
(;^ω^)「え……?」
もう1人、その言葉の意味が内藤にはわからず、疑問の声を漏らすが、それを遮るように通信が割って入る。
ξ;゚听)ξ「しぃさん! あなた最初っから──!」
(;^ω^)「ツン!? 何でシュトルヒに?」
通信の出所を知り、内藤は驚愕する。何故、という疑問が頭を支配し、思わず背後を振り返った。
そんな内藤を余所に、しぃはツンに笑顔を向ける。
(*゚ー゚)「ごめんね、ツンちゃん。……メインエンジン、ロック解除、コントロールをセミオートからマニュアルに」
ξ;゚听)ξ「しぃさん!」
(;^ω^)「何で、何でッ!?」
『照合── Accept ──』
しぃの声に呼応し、機械的な音声と共にナハティガルのコンソールからキーボードが迫り出して来る。
内藤とツンの叫びに応じることなく、しぃは淡々と最後の作業を進めていく。
(*゚д゚)「SA07、この場より急速離脱!」
(;^ω^)「しぃさん!」
- 71 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:21:00 ID:cM2vo0ws0
(*゚д゚)「聞こえなかった? 離脱よ、内藤君!」
(;^ω^)「けどッ!!!」
(*- -)「ごめんね、ブーン君」
(;^ω^)「しぃさん……」
(*- -)「私はね、やっぱり憎いんだ。……ギコ君を殺したフェイスが」
(*- -)「そして寂しいの。ギコ君がいないこの世界は」
(;^ω^)「……」
(*- -)「私はずっとギコ君の所へ行きたかったんだ。ごめんね、折角助けてもらったのにね」
(; ω )「そんなの……そんなの……」
間違っている。
そう叫びたいはずの内藤の口は、何故かそれ以上開かれる事はなく、固く結ばれたままだった。
ξ;凵G)ξ「しぃさん! どうして!? どうして──」
(*- -)「ごめんね、ツンちゃん。あなたをブーン君を生かすための出しにしちゃって」
- 72 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:21:15 ID:cM2vo0ws0
(*゚д゚)「再度通達します! SA07、この場より急速離脱!」
ξ;凵G)ξ「しぃさん! 待って! こんなの駄目! 止めてよ、ブーン! しぃさんを止めて!」
(; ω )(ツン……僕は……)
(*゚д゚)「内藤君!」
(; ω )「……SA07……了解」
ξ;д;)ξ「ブーン!?」
( ;ω;)「この場から急速離脱します!」
(*゚ー゚)「ありがとう、私のわがまま聞いてくれて……皆をよろしく頼むわね」
(; ω )「────!!!」
声にならない叫びと共に、空に白い軌跡を描きながらシュトルヒは島に向かい飛び去る。
しぃはそれをどこか満ち足りた様な笑顔で見送った。
- 73 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:23:23 ID:cM2vo0ws0
(*゚ー゚)「最終コード確認」
『入力スタンバイ── CODE? ・・・ ──CODE── Accept ──』
機械的な言葉と共に、ナハティガルのメインエンジンが臨界点を無視し、活性化を促す。
その間にもフェイスが攻撃を仕掛けるが、砲台型フェイスを背に、セイクリッド・フィールドを展開するナハティガルには届かない。
(*゚ー゚)「……これで良かったのかな?」
振動音と共に、機体温度が上昇し、全身が白い光に包まれる。
(*- -)「やっぱりギコ君に怒られるかな、こんな事しちゃって……」
(* ー )「ごめんね、でも、私は──」
しぃの最後の呟きは誰にも届く事はなく消える。
その刹那、空が白一色に染まり、轟音とともにもう一つの戦いの終わりを告げた。
- 74 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:23:38 ID:cM2vo0ws0
-
( ´_ゝ`)「あー、こちら兄者。弟者、聞こえてる?」
(´<_` )「こちら弟者、聞こえてるよ、兄者」
( ´_ゝ`)「んじゃ、用件だけ簡潔に。全ての火入れは終わった」
(´<_` )「了解。ご苦労様」
ごく短いやり取りは終わり、通信機を切ろうとした弟者だが、そこに残る息遣いを自分から遮断する事は出来なかった。
同様に兄者の方から通信機が切られる事もなく、息遣いとわずかな風の音がずっと弟者の耳に届いていた。
兄者は今、島の西端辺りを自転車で走っていた。
自身が作ったセイクリッド永久機関テスト用の自転車だ。
それに乗り、兄者は島の各所にある主要な施設を回って来た。
( ´_ゝ`)「……もう、何も言う事はないはずなんだけどな」
(´<_` )「そうだな。俺達は存分に話したし、話さずともわかっていた」
沈黙を破ったのは兄者の方だった。
兄としての責任感なのか、それともただせっかちなだけなのかはわからない。
兄者と弟者、共にこの島に残ると決めたのは自分自身だ。
互いに同じ理由で、自分自身の為にこの島に残ると決めたのだ。
- 75 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:25:39 ID:cM2vo0ws0
( ´_ゝ`)「やっぱり綺麗だな、この島」
(´<_` )「そうか」
もう飽きるほど見慣れた島で、何もない所だと兄者は思う。
しかし、そこには多くの人間が生きようとした証が今も残る、綺麗な世界だとも思う。
( ´_ゝ`)「これで見納めだと思うと、より一層な」
(´<_` )「……いつか、またあいつらがこの景色を取り戻してくれるさ」
( ´_ゝ`)「そうだな」
再び沈黙が訪れる。
生まれた時からここまでずっと共に育った兄弟だ。
互いの道を行くと決めはしたが、名残は尽きないものがある。
( ´_ゝ`)「それじゃあ、俺は行くわ」
またも兄者の方が沈黙を破る。
辛い言葉を先に口にするのは、弟思いの兄であるからか。
(´<_` )「ああ、渡辺さんによろしくな」
( ´_ゝ`)「お前もちゃんと……いや、それを言うのも野暮ってもんか」
(´<_` )「ああそうだな、この野暮天め」
- 76 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:26:00 ID:cM2vo0ws0
2人から同時に笑いが漏れる。
2人にとってはごく当たり前のそれが、最後の言葉の契機となった。
( ´_ゝ`)「じゃあな、弟者」
(´<_` )「じゃあな、兄者」
2人はわずかに微笑み、同じ言葉を口にする。
恐らく、今生の別れになるはずだが、2人の口調は軽く、極めていつも通りだ。
( ´_ゝ`)「さて、行くか」
誰に言うでもなく放たれた呟きと共に、兄者が乗る自転車は軽快に道を走る。
自分に残された最後の勤め、自分が島に残った理由を果たす為、兄者は一心に自転車を漕いだ。
(;´_ゝ`)「ふぅ……上り坂は疲れるねぇ」
ぼやきながらも足は止めず、そのまま坂を一気に上り切る。
上った先に見える一軒の家、その側に立つ姿を見付け、兄者の顔には穏やかな笑みが浮かんだ。
( ´_ゝ`)「ただいま」
从'ー'从「おかえりなさい」
2人は寄り添うように並んで家の中へ消えていった。
やがて来る最後の時を、安らぎと共に静かに待つ為に。
- 77 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:29:27 ID:cM2vo0ws0
-
ほぼ同時に、2つの轟音が鳴り響いた。
砲撃した姿勢のまま立ち尽くすレルヒェの眼前の水飛沫が収まり、視界がクリアになる。
从 -∀从「ッ……」
从 ゚∀从「……おい、バカ兄貴、返事しやがれ」
役目を終えたセイクリッド・ランチャーをパージし、ジョルジュのシュヴァルベの反応を探る。
程なくして、サブモニターに映る赤のマーカー、シュヴァルベの反応にハインリッヒは胸を撫で下ろした。
_
( メ∀゚)「素敵なお兄様って呼んでくれないかね、妹よ」
从 ゚∀从「うっせえ、馬鹿。……無茶しやがって」
ハインリッヒはぼやきながら、レルヒェの視線を上空に向ける。
そこには両腕を失いながらも健在な、シュヴァルベの真紅の機体がある。
ジョルジュ自身も先の一撃で負傷したようだが、見た目の傷ほどは大した事ないと言う。
_
( メ∀゚)「なーに、想定の範囲内さ」
そううそぶくジョルジュだが、あながち嘘というわけでもない。
極限までの軽量化を突き詰めた結果、主武装である翼があればシュヴァルベは戦えるということで、両腕と両足はパージ出来る様、
兄者達による改造が施されていた。
- 78 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:30:04 ID:cM2vo0ws0
それを念頭に置いての行動ではあったが、一歩間違えれば自分も巻き込まれていたほどの危ういタイミングであったことも否めない。
从 -∀从「それを先に言っとけよ……全く……」
_
( メ∀゚)「心配したか?」
从*-∀从「してねーよ、馬鹿」
_
( メ∀゚)「悪かっ──ハインッ!!!」
从;゚−从「!?」
ジョルジュの怒号が届くとほぼ同時に、ハインリッヒはモニターに映るアラートを示すマーカーに気付いた。
モニターの中央、マーカーに重なるようにレルヒェの正面に浮かぶ一つの人型の姿。
. _
(;メ∀゚)「クッ、仕留め損なったか!?」
从;゚∀从「そ、そんなはずは……」
あの一撃が避けられたはずがないと、ハインリッヒは目を疑うが、現前に存在するそれは紛れもなく人型フェイスだ。
よくよく観察すれば、一回り小さくなった様にも見え、頭や手の数が減った事でより人に近い形状になっている。
- 79 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:30:37 ID:cM2vo0ws0
ハインリッヒはすぐさまセイクリッド・ライフルを構え、引き鉄を引く。
. _
(;メ∀゚)「下がれハイン! もうレルヒェに燃料は残ってねえだろうが!」
从;゚∀从「この状況で逃げられるかよ。……どの道、逃げる分の燃料もねえ」
ライフルの射撃を難なくかわし、高速移動に移る人型フェイス。
再度ハインリッヒがその姿を捕らえた時には、既にレルヒェとの距離は限りなく詰められていた。
从;゚∀从「クッ──速──」
. _
(;メ∀゚)「ハインッ!!!」
ジョルジュの絶叫と共に上空から急降下するシュヴァルベだが、それはあまりにも遅過ぎた。
レルヒェの紫の機体に向け、右手の触手を突き出す人型フェイス。
透明な輝きは一直線にレルヒェのコックピットに肉薄し──
从;゚−从「!?」
.
- 80 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:31:54 ID:cM2vo0ws0
空を切った。
「ふぅ、間一髪だったな……」
どうして自分が助かったのかわからず、呆然と虚空を見詰めるハインリッヒの耳に届く声。
モニターに映る片腕の漆黒の機体に、ハインリッヒの目は更に驚愕に見開かれる。
从;゚∀从「クレーエ!? 何で……」
(´<_` )「俺は一応、整備部の主任なんだ。ドクオほどではなくとも、動かすぐらいはな」
ハインリッヒの問いに、レルヒェを引きずり倒したクレーエの搭乗者、弟者がいつもの落ち着いた声で答える。
浮かぶ疑問や言いたい事は多々あったが、すぐさま状況を理解したハインリッヒは機体を起こす。
从 ゚∀从「とにかく助かったぜ。けど……」
(´<_` )「ああ、無駄話は後だ」
その言葉を言い終わる前に、機体を左右に散開させる両機。
先ほどまで2機がいた地点を人型フェイスの触手が撃つ。
_
( メ∀゚)「この、くたばり損ないがぁぁぁッ!」
上空からのシュヴァルベの一撃に、今度は人型フェイスが飛び退る。
伸ばしきっていた触手のが翼に斬り裂かれる。
- 81 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:32:07 ID:cM2vo0ws0
- _
( メ∀゚)「おせえ!!」
降下の勢いをほとんど殺さず、水面ぎりぎりで水飛沫を上げながらシュヴァルベの機首を上げ、人型フェイスを追尾する。
再び迫るシュヴァルベを、人型フェイスは既の所で右にかわす。
从 ゚∀从「動きが鈍い……?」
避けた地点をセイクリッド・ライフルで狙撃したハインリッヒは、人型フェイスの様子がおかしい事に気付く。
開戦当初より明からに回避が遅い。
(´<_` )「その様だな。流石にあれを無傷でとはいかなかったらしいな。見ろ」
弟者が分析した人型フェイスの映像がレルヒェのサブモニターに届く。
拡大されたその映像で、ハインリッヒはある事に気付いた。
从 ゚∀从「コアが1つしかない」
(´<_` )「その通り」
2匹の巨大フェイスが融合した人型フェイスは、その胸部に2つのコアを有していた。
しかし、今は1つしかない。状況から考えるに、先のセイクリッド・ランチャーによる攻撃で1つ失われたと見るべきだろう。
コアが1つ失われたことで、出力が低下しているのだろうと弟者は言う。
(´<_` )「お前の一撃はちゃんと効いていたってことだな」
- 82 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:32:53 ID:cM2vo0ws0
从 ゚∀从「アタシがあの距離から外すかよ」
何を当たり前の事をと、不機嫌そうな口ぶり返すハインリッヒではあるが、その顔にはどことなく安堵の色が浮かんでいた。
果たすべき役割を果たせたことに対する満足感がそうさせたのだろう。
从 ゚∀从「けど、奴を墜とせたわけじゃねえ。追撃するぜ!」
(´<_` )「了解……と言いたいとこだが、お前のその機体じゃ無理だろ」
本来は機体を2機繋げて、もう一方の機体のエネルギーを使って撃つセイクリッド・ランチャーだ。
レルヒェ単独でも撃つ事は出来るが、その場合はほぼ機体のエネルギーを使い切ってしまう。
从;゚∀从「クソッ、一旦補給に戻るしか……って、もう整備の奴らは脱出艇か」
(´<_` )「ああ、俺以外はな」
从 ゚∀从「そういやお前、何でここにいるんだよ」
弟者だけじゃない、ミルナやペニサスも何故まだ島にいるのだとハインリッヒは問う。
(´<_` )「話は後って言わなかったか? それより機体を島に降ろしてハッチを開けろ」
从 ゚∀从「あ? 何をするんだよ」
(´<_` )「どうせ俺の腕じゃ奴には敵わん。こいつのエネルギーをレルヒェに移す。……ジョルジュ」
_
( メ∀゚)「あいつは俺1人で十分だ……が、わかってる」
- 83 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:33:06 ID:cM2vo0ws0
一瞬、弟者とジョルジュの視線が交わった。
ほんのわずかの沈黙が、両者の間に流れる。
(´<_` )「頼んだぞ」
_
( メ∀゚)「そっちには近付けさせねえよ」
从 ゚∀从「任せたぜ、兄貴」
_
( メ∀゚)「ああ、任された。……お前も頼むぜ」
从 ゚∀从「おう、すぐ行くから待ってろ」
頼む、その言葉にジョルジュがどんな思いを込めていたのか、この時のハインリッヒが気付かなくても仕方のない話だ。
兄妹が交わす最後の言葉を、弟者はただ無言で見守っていた。
(´<_` )「よし、一旦機体から降りてくれ。作業は俺がやるからちょっと休んでろ」
从 ゚∀从「ん? 降りる必要あんのか?」
(´<_` )「ちょっと中も弄らせてもらう。すぐ済むから心配するな」
2機は島の海岸の砂浜に着陸する。
ハインリッヒは首を傾げながらも、整備士として信頼を置いている弟者の言葉に従い、機体を前屈させ、砂浜に降り立つ。
- 84 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:33:44 ID:cM2vo0ws0
从 ゚∀从「何か手伝う事あるか?」
(´<_` )「休んでろと言っただろ。ほれ、これでも飲んで待ってろ」
そう言って手に持つドリンクをハインリッヒの方に向ける弟者。
ハインリッヒは不服そうな顔を見せるが、軽く首を振った後に了解の意を返し、弟者の方に歩み寄る 。
从 ゚∀从「まあ、仕方ねえか。けど、手早く頼むぜ」
(´<_` )「ああ、わかってるさ」
ぶっきらぼうに言い放つハインリッヒに軽い笑みを浮かべて弟者は答える。
慈しむ様な弟者の目は、どこか兄に似ているとハインリッヒは不意にそう感じた。
从 ゚∀从「……」
(´<_` )「……どうした?」
从 ゚∀从「……いや、何でもねえ。ただ……」
(´<_` )「ただ?」
从 -∀从「お前の方が兄者より兄貴っぽいよなって思っただけさ」
(´<_` )「……どうだろうな」
突然のハインリッヒの言葉に戸惑う弟者だが、彼女の境遇を考えると、それは喜んでいいものではないかと思う。
同時に自分の選択が間違っていなかったと改めて思う事が出来た。
- 85 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:34:04 ID:cM2vo0ws0
从 ゚∀从「んじゃ、任せたぜ、弟者」
ハインリッヒはドリンクを受け取り、弟者に背を向ける。
(´<_` )「ああ、ハイン?」
从 ゚∀从「何──!?」
短く鈍い音が響く。
弟者の手刀が、振り向こうとしたハインリッヒの首筋を殴打した。
从 ∀从「で──」
(´<_` )「すまない」
何が起きたかわからぬまま、ハインリッヒの意識は闇に沈んでいった。
弟者は崩れ落ちるハインリッヒを抱き止め、その背に背負う。
(´<_` )「本当にすまない。……けど、俺は……君を……」
誰も答えてくれぬ思いを告げ、弟者は歩く。
その重みを忘れぬ様、一歩一歩を踏みしめる様に。
- 86 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:35:47 ID:cM2vo0ws0
-
ξ )ξ( ω )
全てが白に包まれた。
灰の空も、青い海も、透明なフェイスも、そして緑の島も。
程なくして視界を覆う白い光は消え、世界を元の姿に戻す。
消して戻らぬ生命をだけをそのままに。
('、`*川「内藤君……大丈夫?」
( ω )「……て……さい……」
('、`*川「え? 何?-」
( ω )「教えてください……何が起こったのかを」
('、`*川「……」
内藤が言う漠然とした言葉の意味を、ペニサスは感覚的に理解出来た。
ペニサスは自分がここにいることや、ツンがシュトルヒにいること等、内藤が聞かされていなかった事を1つ1つ淡々と述べていく。
( ω )「島に残る人もいるのですかお……」
('、`*川「死に場所……ううん、生きる場所は自分で選ぶ権利があるからね……」
- 87 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:36:02 ID:cM2vo0ws0
( ω )「ならどうして──!」
ならどうして、自分は選ばせてもらえなかったのかと内藤は歯噛みする。
自分だってこの島で、最後まで戦って死ぬ道を選びたかったのだから。
('、`*川「わがままよ。私達、島の皆のね」
( ω )「わがまま……?」
('、`*川「そう、わがままよ」
内藤はわがままという言葉を頭の中で反芻する。
曖昧な言葉ではあるが、内藤にはペニサスが言うわがままの意味を理解出来た。
同時に、きっと自分が思うこの気持ちもわがままなのだなと理解した。
( ω )「……皆勝手だお」
('、`*川「大人は時として子供に理不尽を押し付けるものなのよ」
自分はまっすぐにわがままを通そうとしたが、ペニサスがいう所の大人は自分に隠れてわがままを通した。
してやられたと思う。内藤は自分はやはりまだ子供なのだと泣きたいような笑いたいような気持ちになった。
( ^ω^)「大人はずるいお」
('、`*川「ホホホ、悔しかったら長生きして人生経験を積みなさいな」
ペニサスの芝居がかった物言いに、内藤は思わず吹き出してしまう。
大人はいつもこうやって、自分を支えようとしてくれるのだなと内藤は心の中で感謝した。
- 89 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:39:26 ID:cM2vo0ws0
悔しいと思う。
守れなかったものの大きさが。
悲しいと思う。
失ったもののに重さが。
けれど自分は生きねばならない。
彼女が言うわがまま、皆の願いを叶える為に。
残された意味を、託された意思を伝える為にも。
( ^ω^)「うっせえババァ」
('、`#川「おい、ちょっと面貸せや、コラ」
( ^ω^)「だが断るお。……脱出艇の状況は?」
('、`*川「巨大フェイス2匹の撃破確認直後に出航してるわ。護衛よろしくね」
( ^ω^)「了解だお」
通信を切り、進路を島から変更する。
完全に割り切れたわけではない。ほんの少し、気持ちの整理が出来ただけだ。
けれど今は、悩んでいる時間ではない。
今自分に出来る事を全部終わらせてから、悩み苦しもうと内藤は思う。
- 90 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:39:45 ID:cM2vo0ws0
( ^ω^)「ツン、フェイスの進行状況を頼むお」
ξ )ξ「……」
( ^ω^)「ツン?」
ξ )ξ「……ごめんね、ブーン。私が……私が……」
弱々しい声が背後から響く。
通信は通さず、直接声が届いている様だ。
内藤はこの距離で気付かなかった自分の鈍さに、改めて頭を抱えそうになる。
( ^ω^)「不思議だおね」
ξ )ξ「え……?」
( ^ω^)「これまで皆、島の為、皆の為って協力してやって来てたのに」
( ^ω^)「いざ最後になると、皆、自分のわがままばっかで」
ξ )ξ「……」
( ^ω^)「でも、わかってるお。それがわがままで、わがままじゃない事も」
( ^ω^)「最後になっても、結局誰かの為のわがままなんだおね」
ξ )ξ「……」
- 91 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:41:13 ID:cM2vo0ws0
( ^ω^)「何も言わなくていいお。わかってる、これがツンのわがまま、願いだって事」
ξ )ξ「ブーン……」
( ^ω^)「ありがとうツン、僕を助けてくれて」
ξ;凵G)ξ「……うん」
( ^ω^)「まあ、でも、僕は最後にする気はさらさらないお。だから──」
ξう凵G)ξ「うん、サポートは任せて!」
( ^ω^)「よし、行くお!」
内藤はスロットルレパーを強く握り締める。
モニターには早速ツンからの残存フェイスの状況が映し出される。
(´<_` )「ああ、すまん、ちょっといいか?」
( ^ω^)「お?」
ξ゚听)ξ「弟者さん? どうしました?」
シュトルヒが速度を上げようとした直後、弟者から通信が入った。
若干、空気読めよとの思いを抱きつつも、内藤は弟者の通信に耳を傾ける。
- 92 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:41:30 ID:cM2vo0ws0
(´<_` )「なに、俺もお前さんが言う所のわがままを押し付けたくてな」
( ^ω^)「おー?」
弟者の言葉に内藤は首を傾げる。
傾けた視線の先、モニターに映る島の地図の上に新たに紫の点が光った。
(´<_` )「今送った地点に置いてきたものを速やかに回収してくれないか」
( ^ω^)「わかりましたお」
(´<_` )「……何も聞かないのか?」
( ^ω^)「聞いて欲しいんですかお?」
(´<_` )「いや、すまない。頼む」
( ^ω^)「なら、急ぎますお。……弟者さんも自分のわがままを通すんですおね」
(´<_` )「ああ、重ね重ねすまないな」
弟者の心底すまなそうな言葉に、内藤はゆっくりと首を振ってみせる。
弟者が自分で決めた生きる場所に、自分が口を出す筋合いはないと。
(´<_` )「強くなったな」
( ^ω^)「落ち着いたら、きっと泣くだろうし、すごく悔やむと思いますお」
- 93 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:43:16 ID:cM2vo0ws0
(´<_` )「それでも、お前は生きていけるさ。きっとな」
内藤は力強く頷き、弟者をまっすぐに見詰める。
その瞳に弟者は満足そうな笑みを浮かべた。
(´<_` )「じゃあな」
( ^ω^)「さようならですお」
ξう -゚)ξ「さようなら……」
互いが告げる別れの言葉。
再会の約束はない。
自分の道を決めた今、空虚な慰めの言葉は足す必要もない。
それでもやはり悲しいと思う。
操縦に集中することで悲しみを抑える内藤。
歯を食いしばり、零れ落ちそうになる涙を堪えるツン。
( ^ω^)「回収地点はこの辺だおね?」
ξ゚听)ξ「この位置だと恐らく、海岸沿いの道路辺りだと思う」
( ^ω^)「んじゃ、そこの砂浜に降りるお」
ξ;゚听)ξ「待って! 後方からフェイスの一群──あ……」
- 94 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:43:46 ID:cM2vo0ws0
ツンが急速接近するフェイスの群れに気付き、内藤に警戒を呼びかけようとするが、瞬く間にフェイスを示すマーカーが
モニターから消えていく。
代わりに赤と黒の2つのSAのマーカーが表示される。
( ^ω^)「あっちは任せても大丈夫だお」
ξ゚听)ξ「うん……降りましょう」
内藤はシュトルヒを地上に降ろし、ハッチを開けた。
冬の海際にしては弱い風が頬をなでる。
( ^ω^)「お?」
ξ゚听)ξ「あ……」
2人の視界を何かが掠めた。
灰色の空からひらひらと舞い降りるそれは……
ξ゚听)ξ「雪……」
ツンは後部座席から立ち上がり、内藤の横に並ぶように立つ。
そして、手の平を上にして両手を目の前に掲げた。
その手にいくつもの雪が降り注ぐ。
( ^ω^)「まさか本当に降るとは……」
何日か前に、ツンとそんな話をしていた事を内藤は思い出していた。
- 95 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:48:09 ID:cM2vo0ws0
内藤が知る限り、温暖なこの島に雪が降ったのは初めての事だ。
戦闘中にも関わらず、思わず見とれてしまった2人を責められるものではない。
ξ゚听)ξ「綺麗……」
ツンの呟きがすぐ側に立つ内藤の耳をくすぐる。
視線を傾ければ、1年あまり共に生き抜いて来た幼馴染の横顔がある。
( ^ω^)「綺麗だおね……」
自然と口をついた言葉。
頷き返すツンの仕草を、内藤は穏やかな気持ちで見続けていた。
ξ゚听)ξ「さて、流石にのんびりしてる場合じゃないわ」
ツンは両手をはたいて雪を払う。
乾いた音が耳に響き、内藤は幻想的な世界から現実に引き戻されたような気がした。
この景色を閉ざしてしまうのは、後ろ髪惹かれる思いがあった。
内藤はそんな気持ちをおくびにも出さず、シュトルヒから島に降り立つ。
ツンの誘導で島の中の方に向かうと、道路に横たわる人影を見付けた。
( ^ω^)「回収物発見したお。回収するお」
ξ゚听)ξ「了解」
( ^ω^)「つーかどうやって運ぼうかお。……背負うしかなさそうだおね」
- 96 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:48:26 ID:cM2vo0ws0
内藤はため息と共に疲労した身体を曲げ、回収物、昏倒したハインリッヒを背負う。
(;^ω^)「重過ぎ、ワロタ」
ξ--)ξ「後で殺されるわよ?」
実際の所、内藤よりはハインリッヒの体重はかなり軽い。
しかしながら長時間の戦闘で疲弊している内藤が、それを重く感じても仕方のない話ともいえる。
( ^ω^)「ツンが言わなきゃばれないお」
ξ--)ξ「戦闘中よ? 交信記録取ってるわよ?」
( ^ω^)「すっげえ軽い! まるで羽のようだお!」
ξ゚听)ξ「馬鹿言ってないで早く戻って」
脱出艇は現在フェイスの確認されていない北側に進路をとってはいるが、南と西から大量のフェイスが押し寄せている。
いずれシュヴァルベとクレーエの防衛網をすり抜けて来るであろう。
程なくしてシュトルヒに戻り、ツンと協力してハインリッヒをコックピットの隅に押し込む。
元々は余裕のあったシュトルヒのコックピットではあるが、現在はツンが乗るAI制御用のシステムが積んであるので、
乗せるのには苦労した。
( ^ω^)「フェイスの状況は?」
ξ゚听)ξ「ちょっとまずいわね。南西方向を基点として左右に大きく広がってきてるわ」
- 97 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:51:17 ID:cM2vo0ws0
( ^ω^)「弟者さんのクレーエに片側を任せるのは厳しいおね」
ξ゚听)ξ「けど、あんたが行ったらその隙に中央を突破される可能性もあるわ」
内藤は顔をしかめ、モニターを見詰める。
現状のフェイスの展開状況を隅々まで眺め、打開策を探る。
( ^ω^)「うん、やっぱ中央よりのこの地点のフェイスを殲滅してから護衛任務に向かうお」
( ゚д゚ )「その必要はない」
(;^ω^)「うお!? こっちみんな……じゃなかった、司令?」
モニターに顔を寄せ気味であった内藤は、突然眼前に映し出されたミルナの顔に仰け反る。
若干強面かつ眼光鋭いミルナの顔が急に出て来たら、驚くのは致し方ない事ではある。
ξ゚听)ξ「急に出て来ないでよ。お父さんの顔、直視し難いんだから」
(;^ω^)「それは言い過ぎだお。……つーか司令、落ち込んでないで話の続きをお願いしますお」
(;゚д゚ )「あー……うん、そうだね、うん、その……ごめんね、驚かせて」
いささか消沈した様子を見せながらも、ミルナは内藤達にすぐに脱出艇の方へ向かう様に告げた。
それに対し疑問をぶつけるツンに、もう1つ備えがあることを説明する。
ξ゚听)ξ「備えって、もうSAも何も残ってないでしょ?」
( ゚д゚ )「説明するより見てもらった方が早いな」
- 98 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:52:46 ID:cM2vo0ws0
その言葉が終わるや否や、低い音が辺りに響く。
異変の出所をいち早く見付けたツンが、メインモニターの映像を切り替えた。
ξ゚听)ξ「あれよ、あの砂浜」
( ^ω^)「あれって、発進口? あんなとこにあったっけかお?」
ξ゚听)ξ「あったけど、使われてなかったやつよ。ほら、作業用のあれが置いてあって……あ!」
( ^ω^)「作業用……あ!」
内藤とツンはほぼ同時に同じ答えにたどり着く。
ミルナが言う備えの正体。
灰色の巨大なシルエットが割れた砂浜からゆっくりと姿を表す。
( ゚д゚ )「SA00、シュペヒト。こいつでお前達を守る」
他のSAより数段大きく、四角を組み合わせた様な無骨な姿を見せるシュペヒト。
その重厚な威圧感はまるで鋼鉄の壁の様だ。
(;^ω^)「……って、無茶ですお! シュペヒトは戦闘用じゃないですお!?」
ξ;゚听)ξ「おまけに動かすのがお父さんだなんて」
内藤の言う通り、シュペヒトは本来作業用の機体だ。
この基地が作られた際に使用され、そのまま置いてあったに過ぎない。
戦闘用に使えるのであれば、この状況に至るまでに既に使用されているはずだ。
- 99 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:54:06 ID:cM2vo0ws0
( ゚д゚ )「わかっているさ。だが、壁ぐらいにはなる。装甲は少し心許無いが、出力は他のSAより高いしな」
フェイスはセイクリッドを求め、侵攻して来る。
それならば確かに、ミルナが言うようにシュペヒトは壁代わりにはなるという事だ。
一部の兵装も備え付けられている所を見ると、だいぶ前から想定されていた事なのだと内藤は気付いた。
( ゚д゚ )「私の腕は君に到底及ぶものではないが、なに、大丈夫さ。備えはこれだけじゃない」
( ^ω^)「……司令」
( -д- )「……すまない。ずるい大人で本当にすまないと思う」
( ^ω^)「……それと似たような話はもう、他の人からも聞きましたお」
(;゚д゚ )「あ、そう。ごめんね、話の引き出し少なくて」
( ^ω^)「だから、わかってますお。僕は何も言いませんお。……でも」
内藤は押し黙り、顔を軽く後方に向ける。
その意を察したミルナは、内藤に頷き返した。
ξ゚−゚)ξ「……」
( ゚д゚ )「私は駄目な父親だったな」
ξ゚−゚)ξ「うん……」
( ゚д゚ )「すまない」
- 100 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:55:43 ID:cM2vo0ws0
ξ゚−゚)ξ「ううん……駄目な父親だったけど、立派な人だったよ」
( -д- )「ありがとう……」
ξ- -)ξ「……」
ツンは何も言わず目を伏せた。
口を開けば漏れるであろう、決して言ってはいけない言葉を必死に抑える為に。
( ゚д゚ )「それじゃあ、後の事は頼む」
( ^ω^)「了解ですお」
ξ゚听)ξ「了解です」
短い返事を残し、シュトルヒは島の東に向かって飛び立つ。
呆気なさ過ぎる別離は、救いようのない現実に感覚が麻痺した所為なのかもしれない。
けれどそれは、人それぞれの意思を受け止めた結果なのだとも思いたい。
( ^ω^)「あれだけで良かったのかお?」
ξ゚−゚)ξ「ええ……昨日までに沢山話したから」
( ^ω^)「司令はこうなる事を伝えてたのかお?」
内藤の問いにツンは首を振る。
何があってもいいように、ちゃんと話すべき事は話しただけだとツンは言う。
- 101 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:56:26 ID:cM2vo0ws0
( ^ω^)(僕は誰ともそんな話してない件)
一瞬、そんな考えが内藤の頭をよぎったが、単に必要なかったからだろうと考え直す。
これまで共に過ごし、伝えられるべき事は既に伝わっている。彼らのわがままを理解出来る事がその証拠だ。
そして自分が誰かに伝える事はない。
正しくは、今でなくて良いという事なのだが。
ξ゚听)ξ「まさかここまで無茶やるとは思わなかったけどね」
( ^ω^)「……だおね、司令に限らずだけど。あーあ、綺麗に騙されたお。我ながら情けねえお」
( <●><●>)「-ヘ√レ─-では、騙されたもの同士、仲良くやりましょうか─vv-」
( ^ω^)「副司令。……どうやらお互いしてやられたみたいですおね」
内藤の言葉に、ワカッテマスは苦い表情を浮かべて頷く。
その胸中を推し量ることは出来ないが、恐らく自分と同じで無理矢理にでも納得させ、自分がやるべき事を
果たそうとしているのだろう。
( <●><●>)「─vv-速やかに脱出艇の後部から、SA07を乗せてください─vv-」
(;^ω^)「お? 護衛はどうするんですかお?」
( <●><●>)「─wvv-しばらくは必要ありませんヘ√レ-全速力でこの海域を離脱します──vw-」
内藤はわけがわからず、頭にはてなマークを浮かべてワカッテマスを凝視するが、ツンがその答えをモニターに
映し出してくれた。
この近辺のセイクリッド反応を示す地図が、現在島で起こっている事を内藤に理解させた。
- 102 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:57:16 ID:cM2vo0ws0
(; ω )「……そういう事ですかお」
( <●><●>)「─vw-あれならば向こうに釣られるでしょう─wvw-その間にセイクリッドで距離を稼ぎます─vv-」
ξ--)ξ「用意周到な事ですね……」
沈痛な面持ちで呟いたツンの言葉に、ワカッテマスは短く謝罪の言葉を述べる。
副司令という立場にあるワカッテマスなら、全てわかっていたのだろうとツンは思う。
同時に、ミルナ達を残していく事がどれだけ彼を苦しめているのかも。
( ^ω^)「着艦しますお」
( 、 トソン「─vw-後部ハッチ開きます─wvw-SA07、着艦どうぞ─vw─」
( <●><●>)「─wvw-SA07着艦後、本艦は再度潜航─ヘ√レ─そのまま西海岸まで全速前進─vw─」
ミセ* − )リ「─vw-SA07、着艦確認vヘ√レ─後部ハッチ閉門後、潜航します─vw─」
淡々と響くオペレータの声を聞きながら、内藤はシュトルヒの操縦桿に突っ伏す。
若干の安堵と、膨大な自責の念に心を軋ませながらも、再び顔を上げる。
( ^ω^)「ツン、ハインさんを降ろすの手伝ってくれお」
ξ゚听)ξ「うん、先に誰か呼んでおく?」
( ^ω^)「頼むお」
内藤はツンに手を借り、ハインリッヒを肩に乗せ、その生命の重みを感じながらシュトルヒから降り立った。
- 103 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:58:58 ID:cM2vo0ws0
-
(゚、゚トソン「内藤君、ツンさん、ハインさんの無事を確認しました」
ミセ*゚−゚)リ「本艦へ接近するフェイスは今の所ありません」
( <●><●>)「このまま最大船速で前進」
脱出艇のブリッジでは、誰もが努めて事務的に仕事をこなしている。
一瞬でも気を緩めれば泣き叫びそうになる心を抑えて。
(゚、゚トソン「VIP島基地、もう間もなくセイクリッドの臨界点に達すると思われます」
ミセ*゚−゚)リ「本艦の出力切り替え準備は完了しています」
( <●><●>)「し……対象の消失と共に出力切り替え、以降、通常速度での航行」
ミセ* − )リ( 、 トソン「了解」
ただ静かに、その時を待った。
誰もが一様に押し黙り、計器の音だけが響き渡る。
- 104 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/11(土) 23:59:48 ID:cM2vo0ws0
-
( ^ω^)「……」
ξ゚听)ξ「……」
内藤とツンの2人も、格納庫のモニターを無言で見詰めていた。
灰色の空の下、降り注ぐ白い雪の中、青い海に浮かぶ島の姿を。
2人はずっと見詰めていた。
やがて訪れる、島の最後の時まで。
ξ゚听)ξ「あ……」
( ^ω^)
その刹那、視界の全てが白に包まれた。
膨大なセイクリッドの奔流が全てを覆った。
- 105 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/12(日) 00:00:52 ID:.7.sWpeQ0
ξ )ξ「ああ……」
ξう凵G)ξ「あああああぁぁぁぁッ!!!」
あらん限りの感情を爆発させ、泣き崩れるツン。
内藤は直立不動の姿勢で、敬礼を捧げた。
( ^ω^)ゝ
彼らが生命を賭して繋げた未来。
その未来を必ず守り通すとの誓いを胸に、内藤はまっすぐに白一色に染まったモニターを見詰める。
ただ、まっすぐに。
( ^ω^)は島を守るようです 後々々々々々編 終わり
- 106 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/12(日) 00:01:39 ID:.7.sWpeQ0
-
〜 一年後 〜
.
- 107 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/12(日) 00:02:40 ID:.7.sWpeQ0
〜 カリフォルニア・バークレー基地 〜
ミセ*゚д゚)リ「─vw─スクランブル発令!─vw─第1から第3小隊、緊急発進!─wvw─」
(゚、゚トソン「─-w─目標、本隊の防衛網を突破して沿岸部に接近中─vw─」
<_プー゚)フ「─wv─おいおい─vw─本隊は何やってたんだよ─ww─」
( ・3・)「─vwv─どうせ簡単に突破されたんでShow。中央の連中は未だ物見遊山の気分だYO─vw─」
<_プー゚)フ「─vw─ちげーねえ─vw─HAHA─wvw─」
ミセ*゚д゚)リ「─vw─無駄口叩いてないでさっさと出る! おk?─wvw─」
<_プー゚)フ「─vvw─任せておきな、子猫ちゃん─vw─」
(’e’)「─wwv─Soon に Destroy で Return ね─ww─」
ミセ;゚ー゚)リ「──v-うざッ!─wvw─」
(゚、゚トソン「─vw─第1小隊─ww─発進どうぞ─vw─」
(´・ω・`)「エクスト隊は発進したみたいだよ」
ξ--)ξ「相変わらずおちゃらけた連中よね」
( ^ω^)「でも腕は確かだお」
- 108 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/12(日) 00:05:06 ID:.7.sWpeQ0
(゚、゚トソン「─vw─第2小隊─vww─発進準備─vw─」
( ^ω^)「んじゃ、僕も出るお。ショボン、整備は終わってるおね?」
(´・ω・`)「誰に物を言ってるんだい? 頭の先から爪先まできっちり磨き上げてるよ」
( ^ω^)「流石だお」
(´・ω・`)b「ああ、僕は流石なものだからね」
ξ゚听)ξ「AIの効率は30%ほど上がってるから、反応遅れるんじゃないわよ」
( ^ω^)「把握。それじゃ行って来るお」
(゚、゚トソン「─vw─第3小隊─vww─発進準備─vw─」
( ^ω^)「─vv─SA07R・シュトルヒ改vヘ√レ─出るお!─v─v─」
ミセ*゚ー゚)リ「─vw─SA07R、発進オッケー!─vw─気を付けてね─vw─」
( ^ω^)b
少年は再び戦いの空を舞う。託された想いを胸に、この世界に生きる為に。
いつかまた、あの穏やかな日々が訪れる事を信じて、少年は島を、皆を守り抜く。
( ^ω^)は島を守るようです 終わり
- 109 名前:あとがき的な[sage] 投稿日:2011/06/12(日) 00:19:06 ID:.7.sWpeQ0
以上でこの話はおしまいです。
こっちは実験作かつ練習作のつもりでしたが、実験はどうでもよくなって、練習は途中で見切り付けた感じです。
実験の話は自分でもよくわからなくなったので置いておいて、練習は三人称と厨二でした。
どっちもこれ以外書いたことなかったし、今でもこれ以外書いてないと思います。
つまりは練習したけど、正直向いてないと見切りを付けた感じですね。
書いてて窮屈だし、伝え切れてないし、途中で一人称に変えようと何度思ったか。
本当は練習が終わったら、これより先に考えてたメカ物をやろうと思ってたのですが、保留ってか取り止めかなと。
それの為の練習でもあったのですが、書いてみて向いてないなと実感しましたし。
こっちも当初の予定よりだいぶ長くなりました。
話の分け方でわかるように、本来は前中後の3話、長くても4話の予定でしたが、終わってみればこの有様。
投下期間も含めて、色々とひどいものです。
間が空いた理由は向こうと同じ+書き辛かったからですかね。
あと、こっちからは同時投下してたもう一方との連動が全くわからないですね。
本当は世界を見てる向こうの主人公が、こっちの世界に干渉して、気絶した( ^ω^)を起こすとかあったのですが、丸々カット。
なんにせよ、読んでいただいて感謝です。
ありがとうございました。
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