- 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 21:54:14.67 ID:xz9LVA/10
-
空を覆う無数のフェイスを、内藤の乗るシュトルヒがその手のにあるセイクリッド・ブレードを振るい次々と霧散させる。
( ^ω^)「ドクオさん! クラックは!?」
通信機に向かい問いかけるも返事はない。
ドクオが乗るクレーエがミラージュと呼ばれる防御システムを展開していれば通信は届かないはずだ。
その所為で返事がないだけで、ドクオが墜とされてわけではないと内藤は判断する。
(#^ω^)「ああっ、クソッ! 多過ぎんだお!」
内藤はシュトルヒを急加速させ、一気に前方のフェイスまでの距離を詰める。
先ほどまでシュトルヒがいた地点を無数の触手が薙ぐ。
(#^ω^)「邪魔だおッ!」
ブレードでフェイスのコアを一突き、眼前のフェイスは透明な煌きを残し空に消える。
島全体のセイクリッドの供給量の増産により、シュトルヒの手にあるブレードの出力も向上し、その威力は増加している。
( ^ω^)「クラックはまだ先かお?」
内藤はシュトルヒのブレードを横に構え、斬り進む。
威力だけでなくブレードの刀身自体が以前より長くなっている。
出力を上げたことで、この長さでも威力を落とさずに高周波ブレードとしての機能を果たす事が出来るようになったからだ。
- 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 21:56:12.21 ID:xz9LVA/10
-
( ^ω^)「やっぱこの位の方が扱いやすいお」
内藤はブレードで触手を斬り払い、周囲のフェイスを一掃させる。
幼い頃、育ての親代わりだった祖父に習った剣術が少なからずシュトルヒの操縦に生かされている。
ミセ*゚ー゚)リ「──vw─SA07─vv─SA07、聞こえますか?──vw─」
通信機から響く若い女性の声と共にオペレーターであるミセリの顔が映し出される。
しかしそれとほぼ同時にレーダーに浮かんだ、黄色いクラックを表すマークに内藤の目は釘付けされる。
( ^ω^)「ドクオさん、ナイス!」
ミセ*゚ー゚)リ「──vw─あー、SA07?─v─聞こえてます?──vw─」
内藤はクラックの位置を確認する。
島の北西側、第二次防衛ライン近辺に二つのマーカーが表示されている。
(;^ω^)「今回も複数かお……」
あの日以来三週間ぶりの戦闘だが、前回よりは少ないものの今回もまたクラック・ポイントが複数出現している。
その基準はわからないが、今後も同じ様に複数を相手にする事がこれで確約されたようなものだ。
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 21:57:58.98 ID:xz9LVA/10
-
ミセ;゚д゚)リ「──vwvw─おい、こら、聞いてんの?──vw─」
(;^ω^)「ハインさんは気付いて──って、おお!? どうしましかたかお、ミセリさん?」
ミセ;゚д゚)リ「─v─どうしたじゃねーよ!!!─wwヘ√レwv───」
ようやく自分の存在に気づいた内藤にミセリは罵声を浴びせ、指示を告げる。
クラック・ポイントの発見により、作戦は次の段階に移行する。
ミセ*゚ー゚)リ「ミッションD、ポイント検索をジョルジュさんが遂行中です」
(;^ω^)「え? ジョルジュさんに射撃ポイント探させてるんですかお?」
ミセ*゚ー゚)リ「─v─そうですけ──あ……─vw─」
内藤の言わんとするところがわかったミセリは、慌てて通信を切る。
大雑把かつ、方向感覚が適当なジョルジュに狙撃位置の特定は無理ではないかと内藤は思う。
さらに言えば、ジョルジュのシュヴァルベには、このミッションの核であるハインリッヒのレルヒェに随行してサポートする
という任務がある。
(;^ω^)「あれでよく配達の仕事出来てたおね……」
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 21:59:35.23 ID:xz9LVA/10
-
('、`*川「─vw─それには同意するわね─ww─」
内藤の呟きに答えるかの様に、モニターにペニサスの顔が映し出される。
ペニサスは内藤に新たな指示を告げた。
('、`*川「─vv─ターゲットは第二次防衛ライン近辺。狙撃位置は大体この辺りになると予想されるわ─v─」
シュトルヒのレーダーにペニサスが示唆するポイントが赤く点滅して映し出される。
クラック・ポイントの南方、クラック・ポイントと島を直線で結ぶこの場所は、当然大量のフェイスが侵攻して来ている場所だ。
( ^ω^)「──という事は僕の任務は当然……」
('、`*川「─wv─ええ、この場所の露払いよ──vvv─」
正確な射撃位置の特定は射手本人が行うとペニサスは内藤に伝えた。
( ^ω^)「了解! それじゃ、ひとっ走り行って来ますお」
('、`*川「─wwv─ええ、よろしくね──v─それと、気を付けてね──vw─」
内藤はシュトルヒを加速させ、戦場の空を駆ける。
セイクリッドが放つ白い光の帯を蒼い空に描き、フェイスを斬り墜としながら目的地へ向かう。
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 22:01:51.21 ID:xz9LVA/10
-
( ^ω^)「……ほぼぶつけだけど、行けるのかお?」
つい先日完成したばかりの新装備の数々。
現在シュトルヒの手にあるセイクリッド・ブレードを始め、各種装備が新調された。
今の所、ブレードは問題なくその性能を発揮している。
これは多少の改造、主に出力と刀身の調整だったからさほど難しくはなかった様だが、問題は件の高出力射撃武器だ。
テストでは問題なかったとはいえ、今回が初の実戦投入だ。
( ^ω^)「効かなかったら洒落にならんお」
テストで上手く行った所で実戦で失敗すれば意味がない。
失敗すればそれは即、この島の防衛が危うい事態に陥る事になる。
頭をよぎった悪い予感を振り払うように内藤は頭を振る。
( ^ω^)「信じるしかないお」
この三週間、ずっと開発に掛かり切りだった兄者と弟者、それに開発部と整備部の皆を信じるしかない。
その上で自分はミッションの遂行に妨げとなる障害を排除するだけだ。
( ^ω^)「やってやるお!」
内藤はシュトルヒをフェイスの集団の中へ飛び込ませた。
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 22:03:27.29 ID:xz9LVA/10
-
从 ゚∀从「こちらSA03。換装ポイントに到着。いつでもいいぜ?」
ハインリッヒはレルヒェを島近辺の上空に待機させる。
装備の換装、このミッションで使用する武器はこの場で受け取る手筈になっている。
(゚、゚トソン「こちら司令部。了解しました。只今よりセイクリッド・ランチャーの射出に移ります」
高出力射撃武器、セイクリッド・ランチャーはそれ自体に推進機能を備え、基地から射出後、空中でレルヒェに装着される。
ハインリッヒは一旦基地に戻ってもそう大差はないのではないかと思いもしたが、開発部の強固な主張によりこの形が
取られる事になった。
. _,
从 ゚∀从「強固っつーか、何かよくわからん狂信的なもんだったよな……」
ハイリンリッヒは最も強く最後まで主張していた、顔を真っ赤にした兄者の事を思い出していた。
「違ーうッ!!! そんな淡々とじゃなくだな──」
_,
从 -∀从「……噂をすればというやつか」
通信機から聞こえてきた兄者の声にハインリッヒは眉をひそめる。
声からして、どうやら兄者はブリッジまで乗り込んでいる様だ。
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 22:06:03.88 ID:xz9LVA/10
-
(゚、゚;トソン「えっと……兄者さん? 今の手順に何か問題が……」
「いや、手順自体に問題はないんだ、トソンさん。でも、足りないものがあるんだ」
モニターに映っているトソンの顔は明らかに困惑の表情を浮かべている。
対して兄者はトソンの背後にでもいるのか、モニターにこそ映ってはいないがその声の調子からしてだいぶヒートアップしている。
(゚、゚;トソン「足りないものですか? それはどんな……」
「熱さだよ! 熱さ!」
(゚、゚;トソン「あつ……さ……?」
さらに困惑を深めるトソンの顔を見て、ハインリッヒは助け舟を出すつもりでランチャーの射出を再度促す。
_,
从 -∀从「おいおい、早くしてくれよ。こちとら遊んでる時間はねーんだ」
(゚、゚;トソン「す、すみません、今すぐ……」
「だーかーらー、そうじゃなくて、ほら、例えばこのボタン、こう、おずおずと押すんじゃなくてだね……」
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 22:09:15.89 ID:xz9LVA/10
- _,
从 -∀从「……」
「セイクリッド・ランチャー、射出!!! と叫びながらボタンを強く拳で叩く!」
(゚、゚;トソン「え? 拳で? 叩くんですか? ……何の意味が──」
「意味などないッ!!!」
(゚、゚;トソン「ええー!? じゃあ、なんで──」
_,
从#-∀从「……」
「トソンさんは浪漫に意味を求めるのか? 求めないだろ?」
(゚、゚;トソン「え、いや、普通に求めるんじゃないかと──」
「そこにボタンがあるから叩く! それだけなんだ!!!」
(゚、゚;トソン「それだけって……普通に押しても結果は──」
_,
从#゚∀从「てめえらいい加減にしやが──」
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 22:11:43.79 ID:xz9LVA/10
-
ハインリッヒの怒号が響き渡ろうとした瞬間、同時に鈍い音が通信機から届く。
そして先ほどとよく似た、しかし落ち着いた声が通信機から響く。
「すみません、うちの愚兄がご迷惑をおかけしました。すぐミッション再開させますので」
从 ゚∀从「……ちゃんとそいつ抑えとけよ」
ハインリッヒは弟者の声に応じ、ランチャーの受け取り態勢を整える。
(゚、゚;トソン「すみません、すぐに射出します」
从 ゚∀从「ドンマイ。てめえはまあ、悪くない。ただ、時には強く出る事も覚えろよ」
ハインリッヒは申し訳なさ気な顔をするトソンに言う。
几帳面で人の良過ぎるきらいのあるトソンが、常日頃から自分一人で他の人の分まで仕事を補おうとするのを
やんわりと諌めたつもりだった。
(゚、゚トソン「……強くですか」
从 ゚∀从「事務はバカのミセリにもやらせろってこった」
「今なんかバカって──」
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 22:14:29.46 ID:xz9LVA/10
-
トソンの背後から怒った様な声が聞こえてきたが、すぐに鈍い音ともに聞こえなくなった。
持ち場を離れたバカに、お局様からのきつい一撃が飛んだのだろう。
(゚ー゚トソン「……そうですね」
从 ゚∀从「てなわけで、よろしく!」
ハインリッヒは表情を引き締め、ランチャーの射出を待つ。
自分に与えられた任務の重要さは誰よりも理解している。
効く効かないの段階では、こちらの力ではどうにも出来ない事だが、当てられるかどうかは全て自分の腕次第だ。
外しただけなら再装填後、次弾に賭ける事も出来るが、到達までにランチャー自体を破損させられたりしたら、
その時点でミッションは遅延、最悪の場合失敗だ。
自分がこなすべき役割は途轍もなく大きいのだ。
从 -∀从「さて……」
ハインリッヒは目を閉じ、呼吸を整える。
自分の前方を飛ぶジョルジュが、この辺りのフェイスを一掃してくれている。
まずはランチャーを守りつつ射撃地点に到達する事に全力を尽くす。
ハインリッヒは決意を固め、目を開く。
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 22:18:09.57 ID:xz9LVA/10
-
从 ゚∀从「来い、トソン!」
(゚、゚トソン「セイクリッド・ランチャー、射出ッ!!!」
普段ではまず聞く事の出来ない大音声と共に、トソンの拳が力強くボタンを叩く。
その瞬間、カタパルトからセイクリッド・ランチャーが空に舞い上がり、レルヒェの元に一直線に飛ぶ。
从;゚∀从「結局やるのかよ!?」
d(゚、゚トソン「強く行ってみました」
トソンの行動に思わずつっこんでしまったハインリッヒに、トソンが人差し指を立てて応じる。
ハインリッヒは思わず噴出してしまい、笑顔で首を振った。
背後からトソンを褒め称える兄者の声がやかましく響き渡る。
从 ゚∀从「やれやれ、緊張感を台無しにしてくれる」
だが悪くない。
非情な戦いの空で、笑える自分がいる事は悪くないとハインリッヒは思う。
从 ゚∀从「軸合わせ、オッケー。ランチャーさん、いらっしゃい!」
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 22:22:40.96 ID:xz9LVA/10
-
レルヒェの背後で速度を落としたランチャーが、姿勢を垂直に保ち、中央から左右に広がる。
飛行機状だったランチャーの機首部分が直角に曲がり、レルヒェの両肩に装着され、ランチャー本体を
背負う形で固定される。
从 ゚∀从「セイクリッド・ランチャー・システム、オールグリーン。うッし、装着完了」
テストで数回試みているとはいえ、レルヒェの空中換装を実戦で行うのはこれが初めてだ。
思った以上に滞りなくこなせたのは、先ほどのバカなやり取りのお陰かもしれないとハインリッヒは思う。
从 ゚∀从「んじゃ、行くぜ! ジョルジュッ!」
. _
(#゚∀゚)「ポーズはどうしたぁぁぁぁ!?」
. _,
从 ゚∀从「あ?」
. _
(#゚∀゚)「普通、合体したらあるだろ? こう、決めポーズ的によぉ?」
通信機から響くジョルジュの怒声。
群がるフェイスの中で奇妙なポーズを取るシュヴァルベの姿がモニターに映る。
それが先程の兄者の主張と変わりないものだと気付くのにさしたる時間は必要としなかった。
_,
从#゚∀从「おめえもかよ! ふざけんな! 真面目にやれ!」
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 22:27:22.37 ID:xz9LVA/10
- . _
(#゚∀゚)「俺は真面目だ!」
「そうだそうだ!」
ジョルジュの声と同時に再び兄者の声が届く。
だから三次元の女はダメなんだとか何とか聞こえたが今は無視する事に決めた。
_,
从#゚∀从「お前らバカ兄コンビは帰ってから磨り潰すとしてだ……」
ハインリッヒはそこで言葉を切り、努めて普段の調子で言葉を継ぐ。
从 ゚∀从「行くぞ。ここからは遊びなしだ。あの二人はもう戦ってんだからな」
_
( ゚∀゚)「わーってるよ。……まあ、俺は真面目に言ってたんだが」
ジョルジュが少々納得がいかないという顔をしながらも、同じように表情を引き締め、ハインリッヒに応じる。
_
( ゚∀゚)「俺が道を開く。お前はぜってー被弾しねー様に気を付けろよ?」
从 ゚∀从「全部兄貴が撃ち墜とせば済む事さ」
_
( ゚∀゚)「……フッ、それもそうか」
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 22:30:57.73 ID:xz9LVA/10
-
妹の言葉に兄は不敵に微笑み、最速の機体、シュヴァルベを一気に加速させる。
. _
(#゚∀゚)「んじゃ、下がってな! 俺様の力、見せてやらぁぁぁぁッ!!!」
シュヴァルベの翼が、無数のフェイスを斬り裂く。
今回の改造で、シュヴァルベは出力自体の増加、それにより加速力の増加とさらに速度を出せるようになっていた。
当然その分搭乗者に掛かる負担も増すが、ジョルジュはそれをものともせず、シュヴァルベを自在に駆る。
. _
(#゚∀゚)「どきやがれぇぇぇぇッ!!!」
テールノズルが描く白い軌跡が縦横無尽に空を埋め尽くす。
シュヴァルベの翼に触れたフェイスは跡形もなく空に消えて逝く。
从 ゚∀从「上出来、上出来」
ハインリッヒはそう呟きながら、セイクリッド・ライフルを構える。
本体のエネルギーは使わず、ライフル自体のエネルギーを使いシュヴァルベから遠いフェイスを次々と撃ち抜いていく。
. _
(#゚∀゚)「──って、おい!? お前は防御に徹してろよ?」
从 ゚∀从「何言ってやがる。攻撃は最大の防御だ。これも防御の内さ」
二機は目標地点を目指し、順調に歩を進めて行く。
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 22:33:37.71 ID:xz9LVA/10
-
('A`)「んで、あの眉毛兄妹はまだなのか?」
ドクオはクレーエの中で相変わらずの陰鬱な表情を浮かべ、通信機に問いかける。
今回の装備開発、改造の折に通信機の質の向上も図られたので、以前よりはフェイスからのジャミングに対応出来る様になった。
('、`*川「─v─もう間もなくよ─vw──それまでによろしく─vヘ√レ───」
モニターに映るペニサスは、先程のハインリッヒ達のやり取りは全て把握はしているが、結果だけをドクオに伝え、それまでに
近辺のフェイスの掃討を促す。
('A`)「わかってるさ……それが俺の役目だ──」
伏し目がちの視線を上げ、ドクオは前方を見据える。
いつの間にか自分より後方にいたはずの内藤が、右前方のフェイスの群れの中で奮闘している。
('A`)「張り切ってやがんな……」
クレーエを左に向け、内藤とは別のフェイスの群れにドクオは狙いを定める。
すぐさま飛んでくる複数のフェイスの触手をクレーエの両腕に備わるブレードで切り裂く。
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 22:38:30.54 ID:xz9LVA/10
-
('A`)「──んで、こっちか!」
クレーエの両腕の内側にあったブレードを畳み、収納する。
それと同時に以前より一回り太くなったクレーエの両腕を左右に広げた。
その瞬間、左右に集まりつつあった複数のフェイスが弾ける様に空に消える。
('A`)「使い勝手はまあまあかな……」
クレーエの両腕、ブレードとは反対側である手の外側に二本のワイヤーが収納されていく。
ドクオはクレーエの両腕を広げると同時にワイヤーを射出、鞭の様にしならせて左右のフェイスを粉砕した。
('A`)「次──」
ワイヤーの収納が終わるとすぐさまブレードを再展開。
ドクオは速度を緩めることなく前方のフェイスの群れに飛び込む。
瞬く間に無数のフェイスが斬り裂かれ、透明な煌きを空に振り撒く。
ドクオはただ無心でブレードを振るい、全てのフェイスをこの場から消し去る為に戦い続ける。
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 22:43:15.65 ID:xz9LVA/10
-
( ^ω^)「ドクオさん、こっち終わりですお!」
('A`)「こっちもこれで終わりだ」
再びワイヤーを展開させ、前方に固まるフェイスを一薙ぎし、ドクオはフェイスの掃討を完了させた。
( ^ω^)「あとはハインさん達を待つだけですお」
('A`)「ああ、だがすぐ後続が来る。……あの眉毛兄妹は何やってんだ?」
从#゚∀从「誰が眉毛だ。バカ兄貴と一緒にすんな!」
ドクオの呟きにハインリッヒの怒声が割り込む。
レーダーを見るとレルヒェを示す紫のマーカーとシュヴァルベの赤のマーカーが高速で接近してくるのがわかる。
_
( ゚∀゚)「眉毛は俺のチャームポイントだ。褒めてくれてありがとう」
陽気な声と共にジョルジュのシュヴァルベがシュトルヒの傍を通り抜け、前方に飛び出す。
从#゚∀从「褒められてねーだろ! ってか、突出すんなよ。お前はアタシの後ろだろうが」
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 22:47:44.78 ID:xz9LVA/10
-
('A`)「来たか、ダブル眉毛」
_,
从#゚∀从「だから眉毛じゃねーっつってんだろ!!!」
( ^ω^)(眉毛が……)
_
( ゚∀゚)「いいじゃん、眉毛? 俺ら兄妹の素敵ポイントだろ?」
自分の役割を思い出したのか、素直にシュヴァルベを下がらせながらジョルジュはハインリッヒをなだめるように言う。
しかしそれは、どう考えても逆効果だろうと以前にあった眉毛事件を知る内藤は思う。
_,
从#゚∀从「うるせーよ! 素敵要素一個もねーから」
尚も言い争いを続ける兄妹を余所に、内藤は通信機に呼びかける。
( ^ω^)「狙撃位置の特定は?」
('、`*川「─vv─最終的にはSA03まかせね─v─不安だろうけど─vv─」
先程よりさらに絞り込まれた範囲がレーダーに映し出される。
現地点からさらに前進する必要があるようだ。
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 22:52:03.30 ID:xz9LVA/10
-
( ^ω^)「了解しましたお。……まあ、ハインさんなら大丈夫ですお」
内藤はそう言ってペニサスに笑い掛ける。
気休めではなく、内藤はこれまで共に戦い続けてきた仲間の腕を信じている。
('、`*川「─vv─フォローはしてあげてね──vw─」
内藤はペニサスの言葉に大きく頷き、ハインリッヒに向け交信する。
( ^ω^)「ハインさん!」
_,
从#゚∀从「何だよ、このピザまん!」
( ^ω^)
从;゚−从「あ……」
('A`)(あーあ……)
_
( ゚∀゚)「おお、地雷踏んだ」
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 22:57:38.48 ID:xz9LVA/10
-
( ^ω^)
从;゚−从「あ、いや、その……」
先ほどまでの激昂はどこへやら、ハインリッヒは慌てて内藤に弁明をしようとするが、内藤は無言でじっと見詰めるだけだ。
いつも通りの温厚な顔が逆に得体の知れない恐怖を感じさせる。
从;゚−从「パ、ピ、ピ、プ……じゃなくて、その……えっと……」
( ^ω^)「真面目にやれお。…………毟るぞ、眉毛兄妹」
从;゚−从「はい、すんません」
_
(;゚∀゚)「何で俺まで……」
('A`)「ほれ、敵さんお出ましだ。先行くぜ」
そういい残し、ドクオはクレーエを前方から近寄って来るフェイスに向け加速させる。
それを受け内藤も同じく前方、ドクオが左寄りに流れるのを確認しシュトルヒを右側へ飛ばす。
_
( ゚∀゚)「ほれ、俺らは狙撃地点の確保だ」
从;゚д从「ああ、わかってる。……しかし、ああいう時の内藤こえーなー」
_
(;゚∀゚)「お前がいらん事言うからだ。大人しいやつは切れさせちゃダメだろ」
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 23:00:13.23 ID:xz9LVA/10
-
从 ゚∀从「わかってるよ。あとでドクオをシメとく」
元々の発端はドクオの所為だよなという若干理不尽な責任の擦り付けを決め、ハインリッヒは狙撃ポイントの割り出しに入る。
目標となるクラック・ポイントは2つ。
その2つを同時に撃ち抜ける場所に位置を取る必要がある。
_
( ゚∀゚)「まあ、2つなら大して時間はかかんねーだろ?」
ジョルジュはレルヒェの前に出てかばいながらハインリッヒに声を掛ける。
最も、シュトルヒとクレーエが近付くフェイスをことごとく撃ち墜としているのでジョルジュの出番はなさそうだ。
从 ゚∀从「ああ、見付けたぜ」
各機のレーダーに狙撃ポイントの詳細が表示される。
それぞれから了承の返事が届き、各機がその地点に向けて移動を始める。
('A`)「このままのフォーメーションで行くぞ?」
( ^ω^)「了解ですお」
_
( ゚∀゚)「ちっとはこっちにも働かせろよ」
从 ゚∀从「おめえは燃料タンクの自覚を持て」
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 23:01:17.90 ID:xz9LVA/10
-
現地点より右上空、内藤達は足並みを揃え狙撃位置に向かう。
これといって意識することなく自然に歩調が合うのは、これまで共に戦って来た経験のなせる業か。
从 ゚∀从「こちらSA03、目標地点に到達。オッケー、ばっちりだ。この位置ならいける」
照準を覗くハインリッヒからは一直線に並ぶクラック・ポイントが見て取れる。
この距離ならば大量に湧くフェイスが一気に押し寄せてくる前に狙撃出来る。
从 ゚∀从(ま、あとは威力の問題だけだが……)
それは今更考えても仕方のない話だ。
これまで通り、信じるしかないとハインリッヒは思う。
このセイクリッド・ランチャーを開発したスタッフ達を、ずっと後方で支えて来てくれた仲間達を。
从 ゚∀从「ジョルジュッ!」
_
( ゚∀゚)「あいよッ!」
ハインリッヒの呼びかけに応え、ジョルジュのシュヴァルベがレルヒェの後方に移動する。
二機は背中合わせに向かい合い、その距離を詰める。
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 23:02:28.09 ID:xz9LVA/10
- _
( ゚∀゚)「コネクト・システム展開!」
シュヴァルベの翼が競り上がり、背面部に設置された連結部が露出する。
そのままさらに距離を詰め、レルヒェの背面から伸びたケーブルが接続される。
从;゚∀从「いちいち叫ぶ必要あるのかよ?」
. _
(#゚∀゚)「あるに決まってんだろーがッ!!!」
気分的に、とジョルジュは主張するが、当然の事ながら叫ぶ事に意味はない。
先の兄者もそうだったが、男とはどうしてこうもバカなのかと呆れながらもハインリッヒは作業を続ける。
从 ゚∀从「接続完了。セイクリッド・ランチャー、充填開始」
. _
(#゚∀゚)「もっと気合を込めて!」
从#゚∀从「うるせーよ!!!」
正面のモニターの端に、セイクリッド・ランチャーへのエネルギー供給状態のインジケーターが表示されている。
数値は順調に上昇し、80%を越えた。
从;゚∀从「あと20……」
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 23:05:11.88 ID:xz9LVA/10
-
ハインリッヒは照準を細かく調整し、狙いを定める。
的も大きく、弾幅も大きいセイクリッド・ランチャーなら外す事はないとわかってはいる。
しかし、いざ撃つとなるとやはり得体の知れない不安が頭をよぎる。
从;゚−从(……当たるさ。そしてちゃんと墜とせる。大丈夫、効くはずだ)
外せば、効かなければまた何かを失うかもしれない。
引き金を引くその手に掛かる重圧は途轍もなく重い。
_
( ゚∀゚)「おい、ハイン」
从;゚∀从「あと10……なんだよ!?」
モニターと照準を交互に忙しなく見ていたハインリッヒは、若干上擦った声でジョルジュに答える。
_
( ゚∀゚)「大丈夫だ。お前ならやれる」
从;゚−从「!?」
_
( ゚∀゚)「んで、仲間を信じろ。あいつらならやってくれる」
从;゚−从「……」
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 23:06:48.44 ID:xz9LVA/10
- _
( ゚∀゚)「それでもダメなときゃ、俺が何とかする」
从; −从「……あ」
_
( ゚∀゚)「気楽に撃てよ。お前なら出来るさ」
从 ゚∀从「当たり前だ。何の心配もしちゃいねーよ」
ハインリッヒは静かな声音でジョルジュに応える。
ジョルジュは無言で口の端を吊り上げ、通信を終える。
从 -∀从(やれやれ……)
先ほどまでの焦燥がウソの様に落ち付いた。
伊達に付き合いが長いだけはではないとハインリッヒは苦笑いを浮かべた。
普段はどうしようもないバカ兄貴だが、最終的に自分にとっては一番頼りになる存在なのだと改めて思う。
从 ゚∀从「残り……5%……4%……3……SA05、07、射程範囲から離脱しろッ!」
('A`)「了解」
( ^ω^)「了解だお!」
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 23:09:19.75 ID:xz9LVA/10
-
クレーエは下降し、水中に突入する。
シュトルヒは上昇し、一気に上空に舞い上がる。
レルヒェの眼前には、大量のフェイスとクラック・ポイントだけが残された。
从 ゚∀从「1……0……!」
. _
(#゚∀゚)「いっけぇぇぇぇッ、ハイィィィィンッ!!!」
从#゚∀从「セイクリッド・ランチャー、発射ァァァァッ!!!」
ジョルジュとハインリッヒの絶叫が重なり、レルヒェの両肩から伸びたセイクリッド・ランチャーの銃口に
白い光が大きく膨れ上がる。
その刹那、二本の長大な光の帯が蒼穹を貫く。
轟音の中、無数のフェイスが光と共に空に消えた。
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 23:11:10.72 ID:xz9LVA/10
-
(゚、゚トソン「──wwヘ√レwv─ランチャー・システム、オールグリーン─vv─目標の消滅を確認しました─wv─」
空が晴れるとほぼ同時に、作戦の成功を伝えるトソンの声が通信機から響く。
その声に、未だ引き金に手を掛けたままだったハインリッヒは安堵のため息を漏らした。
从;゚ー从「……ぃよッし!」
( ^ω^)「ナイスですお! ハインさん!」
('A`)「SA07、俺らは残りの殲滅戦だ」
( ^ω^)「おっと……了解ですお!」
喜色満面の内藤とは対照的に、普段通りの顔を見せるドクオ。
二人は残りのフェイスの掃討を開始したが、元を断った今なら大して問題はなく遂行出来るだろう。
_
( ゚∀゚)「お疲れさん」
从 -∀从「……大したことねーよ」
疲れてるのは前線で戦い続けた内藤達だとハインリッヒは言う。
从 ゚∀从「シュヴァルベは帰投分の燃料しか残ってねーんだろ? こいつを抱えて先に戻っててくれ」
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 23:12:34.68 ID:xz9LVA/10
-
ハインリッヒはレルヒェからセイクリッド・ランチャーを切り離した。
既に結合を解いていたシュヴァルベはそれを両手で抱える。
从 ゚∀从「アタシももう一働きして来るわ」
_
( ゚∀゚)「おう、無茶すんなよ」
ハインリッヒは内藤達の方が疲れていると言ったが、ジョルジュから見れば今回の戦闘で一番疲れているのは
ハインリッヒだと判断している。
ハインリッヒにはクラック・ポイントの狙撃という任務に加え、ギコから託された皆のまとめ役という
もう一つの役目があった。
年齢から言えば、ジョルジュやドクオの方がハインリッヒより上だが、性格や能力から見ればハインリッヒが
リーダーに向いているとジョルジュは思う。
一見がさつに見えて実際がさつだが、戦況を見渡す目は自分達の中で一番広い。
だが意外に真面目で、気負いすぎる部分もあるとジョルジュは見ている。
_
( -∀-)(ま、そういうとこを俺らがフォローしてやらなきゃいけねーんだがな……)
仲間として、そして兄として、ジョルジュが戦う一番の動機はそこにあるのだから。
そんな思いと共に、セイクリッド切れで速度の出ないシュヴァルベに、もどかしさを抱きながらジョルジュは島に帰投した。
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 23:17:49.03 ID:xz9LVA/10
-
( <●><●>)「失礼します」
明けて翌日、いつもの様にワカッテマスはミルナの部屋に報告書を携えて訪れた。
先日の戦闘の被害が軽度だった事で、無表情ながらもワカッテマスは少し楽な気分で被害報告を行う。
( ゚д゚ )「うん、作戦は上手くいったな。皆に感謝だ」
基地司令であるミルナも同じく、前回よりは明るい表情で報告を聞く事が出来た。
昨夜はこの部屋に泊まらず、今朝早く出勤した事が糊の利いたシャツでよくわかる。
( <●><●>)「ええ、本当に。皆さんがんばってくれました」
これでしばらくは凌げるはずだとワカッテマスは考える。
しかし、あくまでしばらくの話だ。
いずれフェイスは進化し、こちらの策を凌駕してくると考えておくべきだ。
( <●><●>)「出現頻度も高まる可能性が考えられますしね」
( ゚д゚ )「増産の影響か……致し方ないさ」
セイクリッド・ランチャーシステムを始め、各機の出力増加により島のセイクリッド供給量をかなり増産させた。
その結果セイクリッドの光を求めるフェイスが、より多いセイクリッドを保有するこの島に集まってくる事は
避けられない話だ。
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 23:22:25.99 ID:xz9LVA/10
-
( ゚д゚ )「我々はセイクリッドと共に生きると決めたのだ。今更変えられんさ」
( <●><●>)「ええ、しかし……」
ワカッテマスはそこで良い淀む。
いつも理路整然と流暢に話すワカッテマスにしては珍しい事だとミルナは思う。
( ゚д゚ )「しかし……何だね?」
ミルナは言葉の続きを促す。
ワカッテマスはその黒目がちの瞳でミルナを見つめ、意を決した様に口を開く。
( <●><●>)「我々はセイクリッドと共に生きる決意はしました。しかし、セイクリッドと共に死ぬつもりはないです」
( ゚д゚ )「脱出計画……か?」
ミルナの返答にゆっくりと頷くワカッテマス。
戦闘が激化するに連れ、過去に何度も議論されて来た話だ。
それに現在──
( ゚д゚ )「その話はしぃ君が戻って来てからでも遅くはないと思うが」
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 23:27:22.85 ID:xz9LVA/10
-
( <●><●>)「……戻ってくるとお考えですか?」
( ゚д゚ )「……来るさ、必ずね」
迷いなく答えるミルナに、ワカッテマスは両目を閉じ、少しうな垂れた。
自分も信じられるものなら信じたい。
しかし、既に3ヶ月以上経過している。
ワカッテマスは帰還どころか生存さえ危ぶんでしまっている。
( ゚д゚ )「君がいつも最悪の事まで想定して手を尽くしてくれているのはわかっているさ」
だから私はただ信じているだけでいい。
この基地の司令として皆を信じ、不安を取り除く必要があるのだとミルナは言う。
( ゚д゚ )「汚れ役を押し付けている様ですまないな……」
( <●><●>)「いえ、本来組織はそうあるべきものですから」
ワカッテマスは一礼し、部屋を辞す事にした。
進める事は進めておきますと一言断って。
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 23:32:19.75 ID:xz9LVA/10
-
( ゚д゚ )「任せるよ……。そうそう、君も祭りに顔ぐらいは出してくれよ」
( <●><●>)「はは……善処しますよ」
ワカッテマスは笑みを浮かべ、もう一度一礼して司令室を出る。
これからブリッジに向かい、通常の執務を行うつもりだ。
( <●><●>)(……計画だけは進めておく必要はありそうですね)
ワカッテマスは先のミルナとのやり取りを反芻する。
この島からの脱出。
恐らく、現在この島に住む人間の誰からも反対される計画だ。
この島で生きると決め、既に十一ヶ月あまり戦い続けてきたのだ。
今更この島を捨てる事など考えはしないだろう。
それでなくとも、この島にいる人間の大半はこの島の生まれで、島自体に愛着があるのだ。
特にお年寄りは絶対に首を縦に振らないだろう。
それこそ──
- 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 23:37:30.41 ID:xz9LVA/10
-
( <●><●>)(島と共に死ぬ事を選ぶか……)
それを間違いだと一概に否定する事はワカッテマスには出来ない。
ワカッテマス自身はこの島と何の所縁もなかったが、今では誰よりもこの島を愛していると思っている。
出来ればこの島で、それこそ死ぬまで過ごしたいと本心では考えている。
だがしかし、それは自分一人の場合の話だ。
島には自分より年若い、内藤の様な若者やもっと幼い子供もいる。
( <●><●>)(島を守り続けられれば問題はないのですが……)
この戦いは消耗戦だ。
それも明らかに分の悪い。
そうなる事は始める前からわかっていた。
無限とも思しき勢いで湧き続けるフェイス。
有限のセイクリッド、兵器、そして人の生命。
( <●><●>)「今更ですね……」
ワカッテマスは首を振り、その件について考える事を一先ず置いておく事にした。
いずれは向き合う必要がある問題だが、それは何らかの光明が見えてからにしたいとも思う。
光が見えなければ、その時は自分で照らすのだと、今は亡きギコの言った言葉が不意に思い出された。
- 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 23:42:31.24 ID:xz9LVA/10
-
ミセ;゚д゚)リ「苦ッ!」
(;'A`)「なん……だと……?」
その日の昼過ぎ、VIP食堂では相変わらずのドクオがその腕を振るっていた。
ようやく前日からの事務から解放されたミセリが訪れた食堂のメニューには、何故か焼きそばしかメニューになく、
止む無くそれを頼んでみたのだが……。
ミセ;゚ー゚)リ「いや、なんだとじゃなくて、これ、あり得ないくらい黒いじゃん?」
最初ソースのかけ過ぎかと思ったが、どうやら純粋に焦がしただけの様子だ。
ミセリはコップの水を流し込み、むせる喉を潤す。
(;'A`)「……ドンマイ、俺」
ミセ;゚д゚)リ「自分で言うなよ! むしろこの惨状を知らずに、ここに食べに来た私がドンマイだよ!」
ξ゚听)ξ「邪魔するわよ」
( ^ω^)「こんちはですお」
(´・ω・`)「こんにち……何か焦げ臭いですね……」
- 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 23:47:21.07 ID:xz9LVA/10
-
騒ぐミセリの背後のドアが開き、学校を終えた内藤達が姿を現す。
事務をミセリにも分担させたお陰で、今日はまともな授業になったようである。
('A`)「来たか暇人ども。焼きそばでいいよな?」
ξ--)ξ「良くはないけど……それしかないんでしょ?」
(´・ω・`)「まあ、それがわかってて来てるからね」
( ^ω^)「僕は大盛りでお願いするお!」
ミセ;゚ー゚)リ「お前らチャレンジャーだな……」
呟くミセリに内藤が首を傾げて応じる。
祭りに備え、ドクオが連日ここで焼きそばを作り続けている事を知っていた内藤達は、その応援の
意味も込めて足繁く通っている。
('A`)「毎日ご苦労なこった。全く……作るの面倒なんだが……」
そう言いつつも足取りは軽く厨房に向かうドクオを見て、内藤達はこっそりと笑みを浮かべる。
ツンだけは呆れた様な表情であったが、それでも毎日の様にここに来ているのだ。
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 23:51:59.09 ID:xz9LVA/10
-
ξ゚听)ξ「と言うか、ミセリ? あんた、ペニサスさんからドクオの練習に付き合う様に言われてたんじゃないの?」
ミセ*゚ー゚)リ「ああ、あれね。言われてたけど、結局ペニサスさんが自分で見に行ってたから私らは行ってなかったね」
ξ゚听)ξ「なるほど……」
面倒見の良いペニサスの性格を考えれば頷ける話である。
それに、傍から見た限りではペニサスはドクオの事を手の掛かる弟の様に扱っている節があるから余計に気にか掛かるのだろう。
ξ゚听)ξ(弟ね……)
そのあたりの認識の差は、当事者同士に有りはすれど仲が良い事には変わりないのだから悪くはない流れだとツンは思う。
想う相手が鈍いという共通の悩みを持つ身としては、ほんの少しドクオに同情的に見ていたりもする。
('A`)「ほれ、出来たぞ」
(´・ω・`)「早いですね」
('A`)「流石に慣れて来たからな」
そう言ってドクオは内藤達の前に焼きそばの皿を三つ並べる。
- 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 23:54:55.16 ID:xz9LVA/10
-
ξ゚听)ξ「あら? 随分とマシな色してるじゃない」
ミセ*゚д゚)リ「うおっ!? 私の時と大違いじゃん? 何、これ?」
ミセリの言葉通り、テーブルの上には一応一目で焼きそばとわかる色をした料理があった。
三人はそれぞれ箸を取り、焼きそばを口に運ぶ。
( ^ω^)「……美味しいお!」
(´・ω・`)「あ、これは今まで一番かも……うん、美味しい」
ξ゚听)ξ「まあまあね。ちょっとキャベツが生っぽいの残ってるし。でも、だいぶマシだわ」
初めてと言っても良いぐらいに3人が3人ともドクオの焼きそばを褒める。
内藤に至っては、先の一言を告げたあとは一心不乱に焼きそばを頬張っている。
(*'A`)「そ、そうか? ま、まあ、たまたま上手くいっただけで、ツンの言う様に少し焼きが甘いとこもあるし……」
まだまだだと言いながらも、ドクオの顔には明らかな喜びの色が見て取れる。
少し注文は付けたものの、その成長振りが如実に見て取れた事にツンは満足そうに笑顔を浮かべる。
- 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 23:58:00.74 ID:xz9LVA/10
-
ξ゚听)ξ「この調子ならあと1週間がんばれば祭りには間に合いそうね」
('A`)「ああ、間に合うと思う。……いや、間に合わせなきゃな」
最初はペニサスに言われて嫌々参加するつもりだった祭りだった。
だがドクオはこれまでの三週間、毎日の様に訪れて試食してくれた内藤達や、食べるだけでなく色々アドバイスもしてくれた
近所のおばさん達、その他自分を応援してくれた人達の為にも必ず成功させたいと思うようになっていた。
('A`)(それに……)
自分が祭りに参加する機会を作ってくれたペニサス。
VIP食堂という自分が働く場所、自分の居場所を作ってくれた彼女がいなければ、自分はきっとここでこんな風に笑う事は
絶対になかったはずだ。
口にこそ出さないが、ドクオはペニサスに感謝している。
そしてそれがドクオの最も守りたいものなのだ。
( ^ω^)「おかわりだお!」
(;´・ω・`)「早!」
ξ゚听)ξ「つーか、太るわよ?」
( ^ω^)
- 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/01(土) 00:00:22.04 ID:l7tjzMkx0
-
ξ゚听)ξ「……何よ?」
( ^ω^)「……僕、太ってるかお?」
('A`)「若いんだから、食える時に食っとけ。大丈夫、ちょっとぽっちゃりなだけだ」
ドクオの言葉に、内藤は笑顔を浮かべ空になった皿を差し出す内藤。
ツンは呆れてため息を吐くが、ドクオが珍しく小声でなだめた。
('A`)「結構気にしてるみたいだからあんまり言ってやるなよ……」
ξ--)ξ「だったら余計に食べさせなきゃいいでしょうに……」
ミセ*゚ー゚)リ「私だけ黒焦げは納得いかんから、こっちもおかわり!」
(´・ω・`)「次も上手く行くとは限らないんだけどね」
ドクオは厨房に戻り、他の面々は思い思いにおしゃべりを楽しむ。
美味い物を前にした楽しい一時が、内藤達の顔をほころばせた。
- 62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/01(土) 00:03:12.59 ID:l7tjzMkx0
-
そんな賑やかな空気の中、食堂の入り口の扉が勢いよく開かれる。
('、`*川「いよっ、お揃いで。何か賑やかねー」
ミセ;゚ー゚)リ「あれ? ペニサスさん、何でここに?」
('、`*川「ん? 来たらおかしい?」
ミセ;゚ー゚)リ「え、だって放送──」
('A`)「今日も来やがったか……。待ってろ、今日こそお前を唸らせる焼きそばを食わせてやるからな」
('、`*川「おんや? 今日はえらい自信じゃないの? ……あ、二つね、今日はお客さん
( ゚д゚ )「随分と賑やかだな……。邪魔するよ」
ξ゚听)ξ「お父さん」
ずかずかと遠慮なく入って来るペニサスとは対照的に、ゆっくりとした足取りでミルナが食堂の暖簾をくぐる。
ミルナはペニサスに案内され、内藤達の隣のテーブルにペニサスと向かい合って椅子に座る。
- 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/01(土) 00:05:22.99 ID:l7tjzMkx0
-
ξ゚听)ξ「どうしたの? 基地の方はいいの?」
( ゚д゚ )「うん、まあ、今回は被害も少なかったしな」
昼食を取ろうとした所をペニサスに見つかり、ここまで連れて来られたのだとミルナは説明する。
('、`*川「別に無理にお誘いしたつもりはないんですけどね」
(;゚д゚ )「腕を取られて引っ張って来られたんだが……」
軽いスキンシップだと微笑むペニサスに、ミルナは困った様な顔を浮かべる。
娘の前で情けない姿は見せるべきではないが、どうにもペニサスには頭の上がらない所があるとミルナは自覚していた。
思えば今は亡き、ツンの母もこんなタイプの女性だったとミルナは思い返す。
('A`)「すんませんね、司令。わざわざこんなとこまで」
( ゚д゚ )「いやいや、私も一度ドクオ君の料理を食べてみたかった所だから、気にしないでくれたまえ」
ξ゚听)ξ「……」
( ^ω^)「お? どうしたかお?」
- 64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/01(土) 00:07:18.81 ID:l7tjzMkx0
-
ξ--)ξ「……何でもないわよ」
薄々感付いてはいた。
ペニサスが、ただ鈍いだけでドクオの想いに気付かないだけではないという事を。
その目線、声音、色んな仕草から。
同じく誰かに思いを向ける者として、ツンはペニサスの想いにも気付いていた。
ξ--)ξ(……これじゃ輪を掛けてドクオに申し訳ないわね)
ツンの所為ではないのだが、やはりどちらの想いに気付いた上に当事者の一人である自分の父親は内藤と同じレベルで
鈍いと来ては、どうにも責任を感じずにはいられない。
( ゚д゚ )「私も若い頃は料理を嗜んでてね……」
('、`*川「でも、今はツンちゃんにまかせっきりなんでしょ?」
(; ゚д゚ )「いや、その、まあ……」
('A`)「……」
( ^ω^)「ツン、焼きそば食べないのかお?」
- 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/01(土) 00:09:54.82 ID:l7tjzMkx0
-
ξ゚听)ξ「あんたはそのくらいにしときなさい。ホントにデブるわよ?」
( ^ω^)「……うんお」
全く持って空気を読まない内藤にツンはいささか呆れながらも、内藤自身に罪はないのだと考え直し、まだ残っていた焼きそばを
少し内藤の皿に移した。
(*^ω^)「おー」
('A`)「はい、出来やしたよ」
('、`*川「……」
( ゚д゚ )「……」
目の前に並べられた二つの焼きそばに、思わず言葉を飲み込むミルナとペニサス。
一応は焼きそばらしき体裁は保っているものの、満遍なく黒く焦げたそれは如何にも食欲を削り取る。
('、`#川「おい、こら──」
('A`)「悪ぃ、失敗した」
- 67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/01(土) 00:12:37.85 ID:l7tjzMkx0
-
悪びれた様子もなく言い放つドクオに、掴みかからんばかりの勢いで立ち上がろうとしたペニサスを、ミルナがやんわりと制した。
( ゚д゚ )「料理の腕はまだまだクレーエの操縦の様には行かないという所か」
('、`;川「司令……」
('A`)「そんな感じですね、……すみません」
( ゚д゚ )「自分もそうだったよ。よく焦げた料理を振舞っては妻に叱られてたさ」
そう言ってミルナは笑い、焦げた焼きそばを口に運ぶ。
( ゚д゚ )「味付けは悪くないな。流石に少々苦いが」
普段通りの顔で黙々と箸を動かすミルナに、ドクオは再度謝罪の言葉を述べ、水の入ったコップを差し出す。
それを見たペニサスも、渋々と焼きそばを食べ始める。
ξ--)ξ(……逆効果よ、バカ)
そんな三人の様子を眺めていたツンは心の中でぼやく。
それがわざとだったかどうかはともかく、先ほどのドクオの態度は褒められたものではない。
結果的にミルナをここに連れて来たペニサスに恥をかかせた事になるのだから。
- 68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/01(土) 00:14:39.44 ID:l7tjzMkx0
-
ξ゚听)ξ(子供なのよね、結局……)
相手の気持ちより自分の気持ちを優先させた時点でドクオはまだまだだとツンは思う。
あまり社交的でもなく、恋愛経験も皆無なドクオだから仕方がないのかもしれないが。
(´・ω・`)「そういえば、ミセリさん、さっき言いかけてた放送って何ですか?」
どことなく白けかけた空気を、ショボンが話題を変える事で払おうとした様だ。
ショボンのそういった気配りが出来る所は好ましいとツンは思った。
ミセ*゚ー゚)リ「祭りに関しての連絡とか午後からやる予定だったんだよ、ラジオで」
もう一週間後には祭りだから、宣伝も兼ねてとミセリは続ける。
さほど緊急でもない場合や通常の連絡事項などはラジオが使われる事が多い。
ラジオといってもネットラジオではあるが。
島が基地化された結果、どの家庭にもネット回線は引かれている。
('、`*川「提示連絡みたいなものね。祭りを盛り上げる意味もあるだろうけど」
( ゚д゚ )「まあ、忘れている人はいないと思うがな」
(´・ω・`)「数少ない娯楽ですからね」
- 70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/01(土) 00:19:00.26 ID:l7tjzMkx0
-
( ^ω^)「あれ? 読むのはトソン先生ですかお?」
ミセ;゚ー゚)リ「いや、ペニサスさんの担当だったんだけど……」
現在この場に基地のオペレータの三人のうち、二人がいる。
となれば必然的に残った一人が担当となると思われたがどうやら違ったようだ。
('、`*川「ああ、副司令に頼んできたわ」
ミセ;゚д゚)リ「えぇぇぇぇ!?」
('、`;川「何でそんなに驚くのよ? 原稿はトソンが用意したんだし、読むだけなら誰でもいいでしょ?」
ミセ;゚д゚)リ「いや、まあ、そうなんですが……その……」
('A`)「そろそろ時間かな?」
調理を終えたドクオが済みの方の席に腰掛け、ラジオのチャンネルを合わせる。
「あ……テス、テス、本日はお日柄もよく……」
( ^ω^)「お! ワカッテマスさんの声だお!」
- 72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/01(土) 00:23:21.42 ID:l7tjzMkx0
-
ラジオからはひとしきり音声の調整を兼ねたワカッテマスのテスト放送の声が聞こえる。
いつも通り淀みなく、よく通る声だ。
「それでは、放送を始めます」
「お昼はドッキリ! 夏真っ盛り! VIP島らんらん夏祭りスペシャルー!」
( ゚д゚ )
('、` 川
ミセ;゚ー゚)リ
「最近暑いですよねー? そーですね(裏声)。 夏と言えば海! 海と言えばカキ氷!」
ξ゚听)ξ
(´・ω・`)
('A`)
- 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/01(土) 00:27:59.32 ID:l7tjzMkx0
- 「カキ氷と言えば夏祭り! というわけで夏祭り直前、スペシャルでドッキリな夏祭りの解説しちゃうぞー!(笑)」
(;^ω^)「……えっと」
いつも通りの淡々とした口調で、どうにもそれにそぐわない内容を口走るワカッテマスに皆は一様に静まり返る。
恐らく台本をそのまま読んでいるだけなのか、“カッコ笑い”等の言葉まで一言一句違わず読み上げられる。
(;゚д゚ )「……これは?」
ミルナがゆっくりとペニサスの方に視線を向けるが、ペニサスの目はある一人に向けて射抜く様な視線を飛ばしていた。
('、` 川「……お前か?」
ミセ;゚ー゚)リ「え、いや、その……」
('、` 川「お前だな」
ペニサスが立ち上がると同時に、ミセリは脱兎の如く食堂から飛び出した。
ミセ;゚д゚)リ「ごちそうさまでしたーッ!!!」
('、`#川「待て、コラァァァァッ!!!」
ミセリを追い、ペニサスも食堂の外へ飛び出す。
そのまま怒声を撒き散らしながら二人の姿はすぐに見えなくなった。
- 79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/01(土) 01:05:20.83 ID:l7tjzMkx0
-
('A`)「……扉壊すなよ」
ドクオがゆっくりと立ち上がり、食堂の扉を閉めた。
あとに残された皆は、顔を引きつらせたまま微動だにせず放送を聴いている。
('A`)「……止めなくていいんすか?」
尋ねられたミルナがきょとんとした表情をみせたので、ドクオはラジオを指差した。
(;゚д゚ )「ああ、そ、そうだな……うん……」
ミルナが目を閉じ、何かを振り払う様にゆっくりと首を振った。
そして立ち上がり、この場にいる全員分の勘定を払い食堂の入り口に向かう。
( ゚д゚ )「ごちそうさま。本番に期待してるよ」
('A`)「はい」
( ゚д゚ )「あー、ツン? 今日は晩ご飯は……」
ξ゚听)ξ「ここで特訓に付き合うからいいわ」
(;゚д゚ )「そ、そうか……じゃあ、また後で……」
- 81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/01(土) 01:07:29.55 ID:l7tjzMkx0
-
どことなく寂しそうに去って行くミルナの背中を見送り、ドクオは食堂内に戻る。
ラジオからは相変わらずワカッテマスの淡々とした声が響き渡っている。
('A`)「もうちょい親父さんにやさしくしてやれよ」
ξ゚听)ξ「今日のは罰よ……」
別にミルナの事を嫌っているわけではないが、今日の来訪の仕方は少々頂けない。
多少理不尽ではあるが、空気の読めない鈍い大人への罰だとツンは思う。
('A`)「罰?」
ξ゚听)ξ「それはいいから、あんたはちゃんと焼きそば作れるように練習」
そしてドクオにも罰を与えなければならない。
大人気ない振る舞いはどっこいどっこいだ。
理解してようが理解していまいが結果的には大きく減点されてしまったのだ。
ξ゚听)ξ「誰に対してもね」
('A`)「……そうだな」
ドクオはバカではない。
だから、きっとツンが言いたい事の意味はわかっているはずだ。
- 83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/01(土) 01:13:03.12 ID:l7tjzMkx0
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('A`)「さてと、それじゃあ一丁やるかね……」
ドクオは大きく伸びをして、厨房へ向かう。
世話の焼ける事だとツンは呆れながらも、腐らずに前向きに構えるドクオは好ましいと思う。
この島に来た当初の、うじうじと腐った態度はどこにも見当たらない。
ドクオはこの島でちゃんと成長しているのだ。
当たり前の事のようで、でも、これまでのドクオの半生を振り返ればそれは多大な進歩といえる。
('A`)「ブーン、材料代は俺が出すから、お前は試食係な」
(*^ω^)「お! 喜んで!」
ξ--)ξ「これ以上横には成長しないでよね……」
( ^ω^)「お? なんか言ったかお?
ξ゚听)ξ「何でもないわ。さあ、ドクオ、さっさと作りなさいよ」
しかしながら、こうも食べ続けるとなると内藤だけでなく、自分の体重も気にしなければならないと危ぶみながらも、
ツンは内藤の隣の席に着く。
- 84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/01(土) 01:15:22.07 ID:l7tjzMkx0
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「というわけで、お祭りでっス!(はぁと) みんなも参加してね! 以上、司令部よりお届けしました」
ξ;゚听)ξ「結局最後まで乗り切ったわね……」
( ^ω^)「慣れたら結構面白かったお」
(;´・ω・`)「後半は随分ノリノリだったしね」
ラジオの音が途切れ、やかましく鳴くセミの声と厨房から聞こえるフライパンの音がVIP食堂に響き渡る。
この平穏な午後の一時がずっと続けばいいとツンは願い、内藤の顔を覗き見た。
( ^ω^)
穏やかな笑みを湛えた幼馴染が、ただそこにいてくれる事がツンにとってかけがえのない幸せで、守りたい今なのだと
改めて思う。
ξ゚听)ξ(だから……)
自分はここで内藤の日常を守るのだと、ツンは心に固く誓う。
内藤がずっと笑顔でいられるように。
( ^ω^)「ツン、今度のはよく出来てるお! 美味そうだお!」
ξ゚听)ξ「はいはい、あんたは食べ過ぎてお腹壊さないようにね」
( ^ω^)は島を守るようです 中々編 終わり
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