( ^ω^)は島を守るようです

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 21:37:05.62 ID:FcCK4TkJO
 
(゚、゚;トソン「フェイス反応……いえ、クラック反応確認!」
 
( ゚д゚ )「クラック反応だと!? 位置はどこだ?」
 
(゚、゚トソン「正面第二次防衛ライン手前です」
 
ミルナの問いに既にきっちりとしたスーツに着替えているトソンが答える。
丁度ペニサスと交替してブリッジに詰めた矢先だった。
 
( ゚д゚ )「近いな……。フェイスはどの程度出ている?」
 
(゚、゚;トソン「それが……今の所ゼロです」
 
( ゚д゚ )「ゼロ? どういうことだ?」
 
これまでなら、クラックの出現と同時にフェイスを生み出し、その反応によってフェイスの襲来を知っていた。
いくらレーダー精度が上がったとはいえ、真っ先にクラックを見つけられたのは今回が初めてだ。
 
( <●><●>)「どうやらまた色々と前例にない動きを見せているようですね……」
 
トソンと同じく、きっちりとしたスーツに身を包んだワカッテマスが静かに言う。
 
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 21:39:09.05 ID:FcCK4TkJO
 
先ほどまで、実行委員として盆踊りのやぐらの上にいた様な気もしたが、いつの間に戻って来たのかと
ミルナは少し驚かされた。
 
( <●><●>)「ああ、他の人に運んでもらいましたので」
 
その疑問に気付いたのか、ワカッテマスはミルナにそう答える。
同じ祭りの実行委員の整備士達に、背負って運んでもらったのだと言う。
 
(;゚д゚ )「そうか。まあ、君がそんなに早く走れるはずもないからな」
 
( <●><●>)「助かりました」
 
(;゚д゚ )「……それは兎も角、ちょっと着替えてきていいかな?」
 
1人ラフなアロハのままのミルナがそう提案するが、それを遮る様にトソンが状況の詳細を告げる。
 
(゚、゚トソン「その他、全方位共にクラック、及び無し。あるのは前方の6だけです。

(;゚д゚ )「6……多いな」
 
( <●><●>)「ですね。しかし、フェイスが出て来ていないならば、今の内に叩くべきでしょう」
 
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 21:41:10.66 ID:FcCK4TkJO
 
今までとの違いはあるが、どの道クラックを破壊しなければいずれフェイスが生み出される可能性が大きい。
ここで様子見をするのは得策ではないだろう。
 
( ゚д゚ )「SA部隊の状況は?」
 
(゚、゚トソン「クレーエが間もなく出撃可能です。他の各機も既に搭乗済みです」
 
( ゚д゚ )「うむ。ならばレルヒェ、シュヴァルベにより射撃、シュトルヒは万が一の為の次弾として同位置に待機」
 
クレーエは接近して状況監視と、ミルナは各機に作戦を告げる。
クラックの数は多いが、密集しているのは幸いかもしれない。
6つが円を描くように配置されている。
 
( <●><●>)「何事もなく片付けばいいのですが……」
 
( ゚д゚ )「ここで悩んでいても仕方がないさ。最善を尽くす。自分達に出来るのはそれだけだ」
 
ペニサス、ミセリといった面々も到着し、ブリッジはほぼ体制が整った。
先行したクレーエからの映像がブリッジに届く。
 
('A`)「動きはない。仕掛けるか?」
 
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 21:43:34.30 ID:FcCK4TkJO
 
从 ゚∀从「もう射撃位置に着いた。下がってろ、ドクオ。」
 
ブリッジが答えるよりも早く、レルヒェのハインリッヒからの通信が入る。
距離が近い事もあり、最初からランチャーとの換装は果たしたままで出撃している。
 
从 ゚∀从「随分と大胆な出方をしやがったな……」
 
( ^ω^)「こんなに近くに出現したのは初めてですお」
  _
( ゚∀゚)「お陰で発見も早く、破壊も楽に済みそうだ。考え様によっちゃあ、ラッキーだったんじゃね?」
 
それほど楽観的には考えられないが、これまでのセオリー通り戦って行くしか手はない。
ハインリッヒはランチャーの照準をクラックの中心に合わせる。
正面のモニター端のセイクリッド・ランチャーへのエネルギー供給状態のインジケーターは30%を示している。
 
ミセ;゚ー゚)リ「ちょっとこれ、何か変じゃない?」
 
('、`*川「何よ急に? これ……クラック? 何か震えてるわね……」
 
突如素っ頓狂な声を上げたミセリが指指した先、クレーエから送られてきたクラックの映像を
ペニサスは目を凝らして覗き込む。

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 21:45:28.88 ID:FcCK4TkJO
 
確かに変だ。
 
これまでのクラックは、フェイスを生み出す時でも微動だにしていなかったはずだ。
 
( <●><●>)「何が……?」
 
从 ゚∀从「んな細かい事は気にしてもしょうがねえ。第一射はこのまま行く!」
 
動揺が走るブリッジにハインリッヒの一喝が響く。
クラックがどうであれ、現時点での最大攻撃手段であるセイクリッド・ランチャーを撃つ事が最も有効な
攻撃手段である事には違いないのだとハインリッヒは言う。
 
( ゚д゚ )「……だな。内藤君、すぐにジョルジュ君と交替できる準備はしておいてくれ」
 
( ^ω^)「了解ですお」
  _
( ゚∀゚)「てか、司令は何でアロハなんだ?」
 
ランチャーのエネルギー供給インジケーターが60%を越える。
クラックの動きに変化はない。
 
('A`)「……震動が?」
 
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 21:47:06.11 ID:FcCK4TkJO
 
从 ゚∀从「おい、あんま近付くんじゃねえぞ?」
 
クレーエがランチャーの射線上にかかっている気付いたハインリッヒが怒鳴る。
ドクオは意に介さず、さらにクラックに接近した。
 
(゚、゚トソン「振幅が大きくなっています」
 
送られていた来た映像を分析していたトソンが言う。
ブリッジが再びざわめくが、またもハインリッヒの怒号で掻き消される。
 
从 ゚∀从「ドクオ!」
 
('A`)「わかってる。離脱する」
 
ドクオはクレーエを反転させ、クラック近辺から離脱する。
ランチャーのエネルギー供給インジケーターが90%を越え、ハインリッヒはトリガーに手をかけた。
 
从 ゚∀从「……ん?」
 
クラックが震動した。
それは報告で聞いている。
しかし、今の震動は肉眼で確認出来た。
 
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 21:49:06.37 ID:FcCK4TkJO
 
先ほどの映像とは異なり、相応に離れたこの場所から。
 
ミセ;゚д゚)リ「な、何これ!?」
 
(゚、゚;トソン「振幅さらに上昇! 並びに、中央に高エネルギー反応が生成されていきます」
 
驚愕を抑えきれないオペレーター達の声が機体内に響く。
ハインリッヒにもその異質さは十分伝わっているが、自分の役割はこれを撃ち、クラックを破壊する事だ。
 
从;゚∀从「3%……2%……1──」
 
(;^ω^)「お……」
  _
(#゚∀゚)「行け、ハイン!」
 
不安そうな内藤の声、高らかに吼えるジョルジュの声。
その声も次の瞬間、セイクリッド・ランチャーの射出の轟音で掻き消される。
 
从#゚∀从「セイクリッド・ランチャー、発射ァァァァッ!!!」
 
レルヒエの肩口から伸びた二対の砲門から撃ち出された光の帯が漆黒の夜空を切り裂く。
光は一直線に伸び、6つのクラックを白く包み込んだ。
 
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 21:51:24.46 ID:FcCK4TkJO
 
(;'A`)「痛ッ!」
 
クラックが光に包まれる瞬間、震動が膨れ上がり、奇妙な音が耳を衝いた。
クラックから最も近い位置いたドクオは、光の中に浮かぶ巨大なシルエットの存在にいち早く気付いていた。
 
(゚、゚トソン「クラックの消失を確に──」
 
('A`)「まだだ! ハイン、第二射の用意!」
 
光が消え、再び闇が空を支配したその時、クラックの消失を確認したトソンの報告を遮り、ドクオは目標位置に
突貫する。
 
('、`;川「ドクオ!?」
 
从#゚∀从「コネクト・パージ! 内藤!」
 
照準を覗き込んでいたハインリッヒもその状況に気付いていた。
シュヴァルベを切り離し、シュトルヒとの接続を開始する。
 
(;^ω^)「な、何だお、あれ……?」
 
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 21:53:31.59 ID:FcCK4TkJO
 
内藤の呟きに促される様に、皆の視線が一点に集まる。
セイクリッド・ランチャーの光が晴れた先。
 
クラックポイントより若干後方、夜の闇に浮かぶ巨大なシルエット。
 
(゚、゚;トソン「フェ……イス……?」
 
ミセ;゚д゚)リ「フェイス反応確認! ドックン、気を付けて!」
 
('A`)「ドックン言うな!」
 
普段冷静なトソンを始め、皆が茫然自失とする中、いち早く今やるべき事に気付いたミセリが計器を覗き、情報を伝える。
その言葉に弾かれる様にブリッジスタッフは自分を取り戻す。
 
( <●><●>)「あれは間違いなくフェイスなのですか?」
 
(゚、゚;トソン「は、反応上は間違いなく……」
 
未だ己が目を疑わんばかりの光景の中、幾分落ち着きを取り戻したトソンがワカッテマスに答える。
 
('、`;川「あれがフェイス? 冗談きついわ……」

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 21:57:25.64 ID:FcCK4TkJO
 
ペニサスの言葉に誰も答える者はいない。
事実は既にブリッジのコンピュータにより示されている。
あれがフェイスなのは変わり様の無い事実だ。
 
ミセ;゚ー゚)リ「デカ過ぎでしょ……」
 
光が完全に晴れ、モニター上にフェイスの全貌が映し出される。
うっすらと判別出来る外見こそこれまでのフェイスと大差なく、目立つ差といえば2本であった大き目の触手状の腕が
4本見られる事ぐらいだ。
 
海月に似た外観は変わらず、無数の細い触手状の腕でも見られる。
 
しかし、その大きさはこれまでのフェイスと比べ物にならない。
 
これまでのフェイスは巨大なものでも精々SAの2カラ倍といった所だった。
 
だが、このフェイスは──
 
(゚、゚;トソン「ざっと見積もっても20倍はあります」
 
ミセ;゚ー゚)リ「20倍!? そんなのに──」
 
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 22:00:13.21 ID:FcCK4TkJO
 
从#゚∀从「ごちゃごちゃうるせー! 相手が何であれ、やるしかねーんだよ!」
 
(#^ω^)「接続完了! セイクリッド供給開始!」
 
ミセリの声をハインリッヒの怒声が遮る。
相手がフェイスなら、これまで通りの対処をするだけだとハインリッヒは言う。
 
( <●><●>)「お待ちください。先ほどの第一射を防いだ手段がわからない状態で2射を放つのは無謀です」
 
从 ゚∀从「んなこたわかってる! さっきの一射目の分析は出来ねえんだろ?」
 
ハインリッヒの問いにブリッジからの返答はイエス。
観測はしていたが手段の判別にまでは至っていない。
 
从 ゚∀从「こいつも捨て駒、勝負は三射目だ」
 
しっかり見てろとブリッジを怒鳴りつける。
 
現状でセイクリッド・ランチャーが撃てるのは最大3発。
シュヴァルベ、シュトルヒ、クレーエ、そしてレルヒェ自体ののセイクリッドを使えば4発だが、4発目は砲身が
持たないと計算では出ている。
 
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 22:02:15.80 ID:FcCK4TkJO
 
( ゚д゚ )「……それしかないだろうな。了解した」
 
ミルナも既に同じ結論に達していたのか、取り急ぎ指示を出す。
ありとあらゆる観測手段を想定し、偵察用の小型ポッドを海上に射出する。
 
('、`;川「バカ! 無茶すんじゃないわよ!」
 
(#'A`)「おぉぉぉぉッ!!!」
 
ペニサスの叫びとドクオの咆哮が重なる。
ドクオのクレーエは既に巨大フェイスの射程圏内に入っている。
 
迫るクレーエに向け、巨大フェイスがその右の触手を振るう。
その触手の幅で既にクレーエを凌駕している大きさだ。
掠っただけで腕の1、2本は持っていかれるだろう。
 
(#'A`)「当たらねえよ!」
 
かわすクレーエの進む先に今度は体の下部に密集する細い触手が群れを成して迫る。
空を覆わんばかりの触手の数に、ドクオは息を呑む。
 
23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 22:04:48.47 ID:FcCK4TkJO
 
(#'A`)「上等! こちとら弾幕シューティングは得意分野なんだよ」
 
クレーエを旋回させ斜めに上昇しつつ触手をかわす。
その尽きる事のない猛攻をかわし切るのは到底不可能に見える。
 
('、`;川「ドクオ! 一旦下がりなさい!」
 
(#'A`)「分析すんだろ!? 映像、音声は送る。いいから撃て、ハイン!」
 
从 ゚∀从「わかってる! あと30、ちゃんと避けろよ?」
 
ハインリッヒを始め、ドクオと何度も戦場を共にしたSA搭乗者達はドクオの意図を理解していた。
 
現在欲しいのは情報。
接近した所であわよくば撃墜も考えたが、あの触手を掻い潜ってコアに辿り着くのは単機ではほぼ不可能だ。
 
故にフェイスの行動を間近で見える地点にドクオはクレーエを接近させた。
 
( ´_ゝ`)「こちらも観測準備オーケーだ」
 
(´<_` )「外すなよ?」
 
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 22:07:15.14 ID:FcCK4TkJO
 
从#゚∀从「ったり前だ! 誰に物言ってんだ?」
 
ブリッジ経由で格納庫の開発部にも情報が送られる。
それ以外にもポッドの情報は開発部の方で直接受信する。
 
その背後で、給油に戻ったジョルジュの怒鳴り声も聞こえる。
どうせあと一射しか出来ないのだから燃料は半分でいいと、すぐにでも再出撃するつもりだ。
 
ミセ;゚ー゚)リ「うひぇ……」
 
ブリッジのモニターにクレーエのメインカメラの映像が映し出される。
その全てを覆わんばかりの触手の海。
あまり気持ちのいい光景ではない。
 
しかし、一体どうやってこの数を避けているのかこんな時ながらもミセリはドクオの腕に感嘆していた。
 
ミセ;゚ー゚)リ「あれで顔が残念賞でなければ……」
 
(゚、゚;トソン「真面目にやってください!」
 
(#'A`)「っらぁぁぁぁッ!!!」
 
そんなやり取りが聞こえるべくもないドクオはクレーエの両手のブレードを振るい、眼前に迫る触手を斬り墜とす。
とてもじゃないが全てを斬る事は不可能で、自然と回避中心になるが、観測目的もある為あまり距離を
空けるわけにもいかない。
 
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/11/03(火) 22:10:04.21 ID:FcCK4TkJO
 
再び巨大な触手がクレーエの元に迫る。
今度は2本、わずかな時間差をつけた波状攻撃。
 
(#'A`)「ちぃッ!」
 
クレーエを横に倒し、1本目の触手をギリギリでかわすがその風圧で機体のバランスがわずかに崩れる。
その眼前に2本目の触手が迫る。
 
ミセ;゚Д゚)リ「ドックン!?」
 
(゚、゚;トソン「──!」
 
('、`;川「ドクオ!?」
 
ブリッジのモニターを巨大な触手が埋め尽くす。
クレーエからの映像に悲痛な声を上げる3人のオペレーター達。
 
(#'A`)「ドックンと呼ぶなとッ!」
 
クレーエの右手を振り上げ、巨大な触手にブレードを突き当てる。
ぶつかり合った瞬間、鈍い金属音と共にクレーエの右腕が根元から弾け飛ぶ。


29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 22:13:07.46 ID:FcCK4TkJO
 
その衝撃を利用して、ドクオはクレーエを急降下させ、触手の直撃を避けた。
 
从#゚∀从「どいてろ、ドクオッ!」
 
(#'A`)「わかってる!」
 
降下する機体にブレーキをかけ、一気に上昇をする。
その衝撃で戻しそうになるのに耐え、ドクオは夜空を駆ける。
 
セイクリッドの強い光が、島の方から広がっていくのが見えた。
 
(;'A`)「痛ッ! ──またか!?」
 
視界が白に埋め尽くされた瞬間、耳に痛みが走った。
最初の一撃の時と同じく、頭の奥を突き刺すような鋭い音──
 
(;'A`)「音響壁か!?」
 
セイクリッド・ランチャーの軌道がフェイスに沿う様にわずかにそらされている。
震える何かに遮られるかの様にフェイス本体には届いていないのがドクオの位置から辛うじて判別出来た。

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 22:16:06.27 ID:FcCK4TkJO
 
('、`;川「音の障壁だっていうの!?」
 
耳を押さえる3人のオペレータにもドクオの呟きは届いた。
視覚、及び聴覚を集中させ、観測していたペニサス達も耳に痛みを覚えていた。
 
从;゚∀从「ドクオ、いったん退がれ!」
 
巨大フェイスが健在なのは、照準を覗いていたハインリッヒは当然気付いている。
三射目を撃つにはもうしばらく時間がいる。
それまで片腕のクレーエで張り付いているのは厳しいものがある。
 
最も、現状で三射目を撃った所で効果はないに等しいとハインリッヒも気付いている。
  _
(#゚∀゚)「持ちこたえろよ!」
 
給油を終えたジョルジュのシュヴァルベが島から飛び立つ。
ハインリッヒのレルヒェも三射目を捨て、ジョルジュの後を追う。
 
(;'A`)「クソッ!」
 
ほんの数秒前までクレーエが存在していた空間を無数の触手が薙ぐ。
被弾すれば確実にその装甲を貫く勢いで無数の触手が次々とクレーエを襲う。

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 22:18:39.19 ID:FcCK4TkJO
 
('、`;川「ドクオ、逃げて!」
 
必死にかわすドクオの背後に触手が迫る。
健在の左手を振るい、触手を斬り払う。
 
(;'A`)「おまけだ!」
 
返す腕でワイヤーを放つ。
狙いはフェイス本体、弱点であるコアに飛ばした。
しかしわずかに逸れ、身体の一部をかすめたに過ぎない。
 
(;'A`)「──やべ!?」
 
攻撃に転じたドクオを、再び触手の群れが襲う。
セイクリッドの光を追い、確実に狙って来る。
  _
(#゚∀゚)「何やってんだよ!!!」
 
咆哮と共にジョルジュのシュヴァルベが漆黒の空を薙ぐ。
無数の触手が翼のはためきに斬り墜とされる。

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 22:20:07.02 ID:FcCK4TkJO
 
从#゚∀从「今の内に下がれ!」
 
速射モードに切り替えたレルヒェのセイクリッド・ライフルが弾幕を張る。
その隙にクレーエとシュヴァルベは巨大フェイスとの距離を離す事に成功した。
 
(;'A`)「サンキュー、助かった」
  _
( ゚∀゚)「礼を言うのはまだはえーよ」
 
从 ゚∀从「あのデカブツを墜としてからだ」
 
体勢を整える3機だが、現状では明らかに部が悪い。
特に片腕のクレーエは下がって修理する必要がある。
  _
( ゚∀゚)「……俺が行く」
 
('A`)「アホか。単機で行っても死にに行くだけだ」
  _
( ゚∀゚)「その腕じゃお前は行けねーだろが。ハインは援護、頼むぜ」
 
('A`)「死に急ぐな、バカたれ。内藤の補給が終わるまで防衛ライン死守、その後……」

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 22:23:13.86 ID:FcCK4TkJO
  _
( ゚∀゚)「その後どうする? ……突っ込むしかねーだろ?」
 
(;'A`)「しかし……」
 
最大の威力を誇るセイクリッド・ランチャーの一撃は通用しない。
あの音響壁の性質はよくわからないし、まだ使用可能なのか等の細かい情報はわからないが、あのフェイスの周りの
空が全体的に揺れている様に見える事を考えれば、まだ健在と判断するしかない。
 
となればあの音響壁を掻い潜り、コアに直接攻撃を仕掛けるしかないが、そもそもこの機体で音響壁を突破出来るか
どうかも不明だ。
 
判断を下すには情報が少な過ぎる。
しかし、敵はもう目の前だ。
自分達の後ろには守るべき島がある。
 
この場を放棄するわけには行かない。
  _
(#゚∀゚)「しかしもヘチマも──」
 
从#゚∀从「待て、兄貴!」
 
激昂するジョルジュを同じく激昂した声でハインリッヒが止める。
しかし、すぐさまハインリッヒは落ち着いた声でフェイスを指差す。

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 22:25:08.78 ID:FcCK4TkJO
 
从 ゚∀从「あいつを見ろ」
  _
( ゚∀゚)「あ?」
 
(;'A`)「ん……? あれ?」
 
距離を取ったとはいえ、再度攻撃を仕掛けるのにそう時間がかかる位置まで下がったわけではない。
防衛ラインを下げれば、それだけ島に累が及ぶ。
 
だのに、巨大フェイスは一向に攻撃を仕掛けて来る様子はない。
それどころか──
 
(;'A`)「近付いてこない?」
 
从 ゚∀从「ああ……」
 
予想していなかった事実の判明に、弛緩しかけた空気を切り裂くように別の通信が届く。
 
(´<_` )「正確には、移動速度が極端に遅いだけの様だがな」
 
( ´_ゝ`)「全員一旦戻れ。作戦タイムだ」

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 22:27:29.68 ID:FcCK4TkJO
 
全機がこの場を離れ島に戻るのに若干の抵抗はあったが、兄者達の観測の結果、巨大フェイスは出現からずっと
前進し続けているが未だにあの位置である事から、あれ以上の速度は出せないと見なし、全機帰投した。
 
ξ゚听)ξ「お疲れ様」
 
('A`)「ああ……」
 
帰投した3人を迎えたツンが、ドリンクを手渡す。
憔悴したドクオ、何かを考えるハインリッヒ、そして忙しなく動き回るジョルジュ。
  _
( ゚∀゚)「サンキュー、んで、どうするんだ」
 
( ´_ゝ`)「15分後にブリーフィングルーム、そこで話す」
 
(´<_` )「こっちだこっち、まずは腕周りのチェックからだ!」
 
急かすジョルジュに兄者が今後の予定を告げる。
弟者はクレーエの状況の確認に走る。
  _
( ゚∀゚)「ブーンは?」
 
42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 22:30:02.25 ID:FcCK4TkJO
 
ξ゚听)ξ「司令の所よ」
 
('A`)「司令の?」
 
人一倍仲間思いの内藤の事だ。
てっきり格納庫で待っていると思ったのだが姿が見えない事にドクオは少々腑に落ちない気分になった。
 
ξ゚听)ξ「何か、作戦があるとか行って走ってたけど──」
 
ツンの言葉に弾かれた様にドクオ達3人は駆け出す。
内藤が言う作戦に、戦闘に出ていないツンが気付かなかったのは無理がない。
しかし3人は、すぐさまその可能性に思い当たった。
  _
(#゚∀゚)「あのバカ──」
 
何故なら、自分達もその手しかないと考えていたのだから。
 
从#゚−从「……チッ」
 
最上階にあるエレベーターに業を煮やし、3人は階段を駆け上がる。
戦闘で消耗した身での全力疾走は身体に堪えたはずだが、3人は一気に階段を駆け上がり、司令室に飛び込んだ。
 
44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 22:33:04.04 ID:FcCK4TkJO
 
( ゚д゚ )「駄目だ、許可は出来ない」
 
(;^ω^)「し、しかし時間が──お?」
  _
(#゚∀゚)「うおりゃぁぁぁぁッ!」
 
真っ先にジョルジュが内藤に飛び付き、頭部に右手を巻きつけ引きずり倒す。
さらに仰向けに倒れた内藤の胸に、ハインリッヒの体重を乗せた肘が落とされる。
 
(;゚ω゚)「おぉぉぉぉ……!?」
 
('A`)「何やってんだ、このバカ。……司令?」
 
ドクオは内藤を一瞥し、ミルナの方に視線を向ける。
ミルナは首を振り、あれは使わせないと力強く宣言した。
 
('A`)「ありがとうございます」
 
( ゚д゚ )「礼を言われる話ではない。あんなもの、本来なら外すべき装置なのだ」
 
公には存在しない、SA最大の威力を誇る兵器、セイクリッド・サークル。
公然の秘密という形で黙認してしまっているこちらが謝るべき話なのだとミルナは言う。
 
45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 22:35:13.72 ID:FcCK4TkJO
 
(;^ω^)「でも、それ以外に方法は……」
 
从#゚∀从「まだ言うのか、このバカは?」
 
ハインリッヒが振り上げた足を内藤の股間めがけて振り下ろそうとしたが、それは流石にヤバいとジョルジュが
抱き付いて止める。
  _
( ゚∀゚)「どの道、タイムオーバーだ」
 
今の位置関係じゃ、島を巻き込む可能性が高いとジョルジュは内藤をなだめる。
最も、他に手段がなくても内藤には使わせないというジョルジュの呟きはハインリッヒにだけ聞こえた。
 
( ゚д゚ )「手段はこれからこちらが考える。君達はその手段を確実にこなすことだけを考え、今は休んでおいてくれ」
 
そう説得し、全員を休ませようとしたミルナだが、流石に何の対抗策も練らないままでは気になって休まるものも
休まらないと4人は主張する。
 
( ゚д゚ )「それもそうか。では、ブリーフィングには参加してもらおう」
 
ミルナ達5人はそろって階下へ向かう。

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 22:37:44.17 ID:FcCK4TkJO
 
ξ゚听)ξ「話は終わったの?」
 
( ^ω^)「……うんお」
 
ブリーフィングルームで出迎えたツンに、内藤は表情を変えずに答える。
親しい幼馴染に自分の覚悟を悟らせなかった内藤の強さに、ジョルジュ達はチクリと胸が痛むのを感じた。
 
( ゚д゚ )「適当に座ってくれ。ツン、彼らに飲み物を」
 
ξ゚听)ξ「さっきも……って、何でそんなに汗だくなのよ」
 
('A`)「夏だから暑いんだよ」
 
基地内はクーラーが効いているし、ドクオはあまり汗はかかない方だ。
多少不審に思いはしたものの、4人とも疲れているのには変わりないだろうとツンはブリーフィングルームを出る。
 
('A`)「……お前は絶対に生き残ることを考えろよ」
 
( ^ω^)「……皆もだお」
 
ぼそりと呟くドクオに、内藤も小声で返す。
全員が無言で頷き、この話はそこでお仕舞いになった様だ。

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 22:40:30.93 ID:FcCK4TkJO
 
ほどなくしてブリッジクルーやワカッテマス、兄者とブリーフィングに参加するメンバーが集まってくる。
最後に整備指示を終えた弟者がブリーフィングルームに駆け込んで来て、全員が揃った。
 
( ´_ゝ`)「まず最初に、あいつの島への到達予測時間だが……」
 
部屋の明かりが消され、正面のモニターに現状が映し出される。
OHPというわけでもないのだから、明かりは消さなくても見えるはずだが、例によって兄者の気分的なものだろう。
 
( ´_ゝ`)「今から15時間後、明日の午後4時頃だ」
 
兄者の言葉に全員が息を呑む。
15時間を多いと見るか少ないと見るか、人によって意見は分かれるかもしれないが、少なくとも、全く歯が立たない
敵を前にした現状では、ほぼ全員が少ないと見るだろう。
 
( ´_ゝ`)「さらに言えばこれは、あのデカブツが島を射程範囲内に捉える時間だ」
 
食い止めるならそれ以前が望ましいと兄者は続け、全員が頷く。
  _
( ゚∀゚)「それで、具体的な手段は?」
 
今から悠長に考えるのかと、ジョルジュは兄者に聞く。
肯定の答えを返すと、今にも飛び出して行きそうな勢いだと兄者は内心苦笑していた。

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 22:43:03.13 ID:FcCK4TkJO
 
( ´_ゝ`)「手段は既に考えてある」
 
ざわめく皆を制すように手を広げ、兄者はモニターを切り替える。
 
( ´_ゝ`)「まず、あのデカブツのバリアみたいなやつ、あれはドクオの見立て通り音を使ったものと見るしかない」
 
画面に映る巨大フェイスの一部が拡大される。
ドクオが見た、セイクリッド・ランチャーが逸らされる場面、ランチャーの光とフェイス本体との間に空間が出来ていた。
 
( ´_ゝ`)「恐らく、セイクリッドを遠距離から撃ち込む様な攻撃は全て防がれると見るべきだろうな」
 
その言葉に、ハインリッヒは表情を硬くする。
兄者はその後も淡々と説明を続け、技術的、科学的な側面から自論の正当性を説く。
しかし、弟者に促され、説明を途中で切り上げた。
 
( ´_ゝ`)「……とまあ、この辺の話はいいよな。結果が全てだ。
 
(´<_` )「それで、対抗策だが……ドクオ、ナイスだった」
 
('A`)「は?」

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 22:46:21.16 ID:FcCK4TkJO
 
話を引き継いだ弟者に突然褒められ、ドクオは思わず間の抜けた声を上げてしまった。
弟者はモニターを切り替え、再びフェイスの全体像を映し出す。
 
(´<_` )「お前が撃ったワイヤーだ。あれ、どうなった?」
 
('A`)「ワイヤー……? コアを狙ったが外して……掠っただけで……」
 
そこで何かに気づき、はっとした顔で弟者を見上げる。
弟者は頷き、説明を始める。
 
(´<_` )「セイクリッドを纏わない、物理的な攻撃はあの壁を通す」
 
仕組みを詳しく調べている時間はないが、あれは恐らくセイクリッドだけを防ぐ為の障壁なのだろうと弟者は言う。
  _
( ゚∀゚)「んじゃ、接近してぶん殴れば済むんだな」
 
(´<_` )「まあ、そうなるな。しかし……」
 
从 ゚∀从「しかし……何だ?」

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 22:49:11.30 ID:FcCK4TkJO
 
ハインリッヒに促され、言い淀んだ現状の問題点を弟者は挙げていく。
 
あの波状攻撃の中、接近すること自体が難しいこと。
コアはあるが、体内の深い位置にあり、セイクリッドを纏わない武器でそこまで刃が届くかということ。
 
ξ゚听)ξ「セイクリッドを防ぐのはあの音の障壁だけなんでしょ?」
 
肉薄したら、セイクリッド兵器に切り替えればとツンは言う。
 
( ´_ゝ`)「流石、鋭いな。その通り、そこまでは想定してある……が」
 
今度は兄者が、その場合の問題点を挙げていく。
 
セイクリッドを使うにしても、高出力のものでなければコアまで到達できず阻まれる可能性が高いこと。
威力を上げる為には、何かしらバックパック的なものを取り付ける必要があり、その分機動力が落ちるであろうこと。
 
(´<_` )「セイクリッド・ランチャーなら確実だが、あれを接近戦で使うのは無理がある」
 
从 -∀从「時間はかかるし足は止まる、加えて2機分で的はでけえと現実的じゃねーな」
 
音響壁と本体の間の空間も狭いので、まず無理な手段だと弟者は結ぶ。

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 22:52:43.72 ID:FcCK4TkJO
 
( ´_ゝ`)「そこでだ、俺達ははあるものを使うことを考えた」
 
( ^ω^)「あるもの?」
 
兄者の発言に合わせる様に、弟者がモニターの表示を切り替える。
そこには、無骨な外観の金属の棘の様な物が映し出されていた。
 
ミセ;゚ー゚)リ「何、これ……?」
 
(゚、゚トソン「これって、ひょっとして……」
 
( <●><●>)「工事用……ゼロのパーツですか?」
 
ワカッテマスの言葉に、ぽんと両手を合わせ、兄者が愉快そうに答える。
 
( ´_ゝ`)「ご名答、SA00、シュペヒトの杭打ち機だ」
 
現在残されたSAの内、全機中、最大の大きさを誇りながらも唯一戦闘用ではない機体、SA00シュペヒト。
その主な用途は建設用で、この基地を作る時に用いられた物らしい。
 
('、`*川「杭打ちって……工事用で何するつもりなのよ?」

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 22:57:32.00 ID:FcCK4TkJO
 
(´<_` )「無論、武器として使うんだ」
 
そう言って弟者は、画面の中の杭の部分を拡大させる。
 
(´<_` )「打ち出すベースはセイクリッド式だが、こいつ自体は違う。ただの鉄の塊だ」
 
( ´_ゝ`)「このままだとただの杭だが、こいつに手を加え……」
 
(´<_` )「目標に着弾した時点でセイクリッドの爆発を起こさせる様に改造する」
 
代わる代わる説明する兄弟の言葉を、その場にいる皆は神妙な顔で黙って聞いている。
誰の顔にも諦めの色は微塵も見られない。
 
从 ゚∀从「なるほどな……それならば」
 
( ^ω^)「行けるお!」
 
(´<_` )「ああ、計算上は行けるはずだ」
 
先に挙げた問題点は残されている物の、倒す手段として事足りるだけの威力はあると弟者は言う。

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 23:00:09.22 ID:FcCK4TkJO
 
( ´_ゝ`)「名付けて、セイクリッド・ステーク(stake)だ」
 
从 ゚∀从「まあ、名前はどうでもいい──」
  _
(#゚∀゚)(#´_ゝ`)「よくねえ!」
 
(´<_`;)「わかったから落ち着け。……それで、そのステークだが……」
 
先にも挙げた問題点がある以上、打ち込む為には作戦を練る必要がある。
囮が触手を引き付け、その隙に打ち込むというのが最も確実な手段ではないかと弟者は提案する。
 
兄者達の説明が一区切りしたところでミルナが言葉を引き継いだ。
 
( ゚д゚ )「手段、および作戦は皆理解出来たと思う。現在の状況では、それが一番成功率の高い作戦だろう……が」
 
危険度も高いとミルナは続ける。
機動力の落ちた機体で接近するアタッカーもそうだが、囮役の機体もあのフェイスの攻撃範囲内に居続ける必要がある為
かなりの危険を伴う。
  _
( ゚∀゚)「危険つっても、それが一番可能性が高い以上、やるしかねえ。そうだろ?」
 
ジョルジュはがすぐさまそう言って皆を見回す。
視線が合った面々は皆頷いた。

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 23:02:07.11 ID:FcCK4TkJO
 
从 ゚∀从「ま、それしかねーならそれをやるだけだ」
 
(´<_` )「うむ、あれが間に合えば別の手も考え様もあったが、現状ではこれが最も威力の出せる近接様兵器だろうな」
 
ξ゚?゚)ξ「あれって?」
 
( ^ω^)「ひょっとしてあれかお?」
 
( ´_ゝ`)「そう、あれだ」
 
内藤以外、誰も兄者達が言うあれの意味をわからない様で、皆の視線が3人に注がれる。
その空気を察した弟者が、モニターを別の画面に切り替えた。
 
ξ゚听)ξ「これは? 刀?」
 
一見すると単なる鉄の柱の様にも見えるが、無骨な形状ではあるが片刃の剣の様であった。
 
(´<_` )「そう、開発中の武器だ」
 
弟者の肯定の返事に皆は訝しげな表情を見せる。
刀であることはわかったが、それが何故今回の作戦に使えたかもしれない可能性に結びつかない。

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 23:04:13.80 ID:FcCK4TkJO
 
ξ゚听)ξ「随分アンバランスね」
 
ツンが指摘する様に、その刀は柄が短く、刃が広いという不恰好な形状をしていた。
 
(´<_` )「ああ、それは……見せた方が早いか」
 
弟者は再びモニターを切り替え、画面に刀を持ったSAのシミュレートモデルを映し出す。
そこには身の丈ほど長大な刀を構えたSAの姿が映っていた。
 
ミセ;゚д゚)リ「デカッ!」
 
ξ゚听)ξ「そういうことね……しかし、これ、振れるの?」
 
柄が短いわけではなく、刃が規格外に大きいだけだったのかとツンは納得する。
同時に、あんな巨大な武器を振り回すだけの出力とバランスが取れるのか疑問に思う。
 
(´<_` )「だから間に合えば、という話だったのさ」
 
現状、セイクリッド・ランチャーで対応できていたフェイスやクラックにも、いつかまた別の対応策が必要になるかも
しれないと、密かに開発していた武器だと兄者が言う。
奇しくも今、そういった事態が訪れたが、あまりにも早過ぎたので間に合わなかったと弟者が悔しそうに言う。

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 23:06:36.02 ID:FcCK4TkJO
 
( ´_ゝ`)「出力の問題から、こいつを振り回せそうなのはシュトルヒぐらいだからな」
 
内藤には相談して、どんな形状が使いやすいか参考にしていたという。
幼い頃に剣道、というよりは剣術を祖父から教わっていた内藤は、刀剣状の武器が一番馴染みがあるようだ。
 
( <●><●>)「今はその話は置いておきましょう」
 
ない袖は触れないのだからとワカッテマスが話を戻す。
弟者が軽い謝罪の言葉を述べ、モニターを巨大フェイスとその周辺の地形図に切り替える。
 
( ゚д゚ )「では、作戦だが……役割は2つ、これを決めるのが全てとも言えるな」
 
2つの役割、囮と実際にセイクリッド・ステークを用い、攻撃するアタッカーだ。
 
( ゚д゚ )「ステークが1つしかない以上、アタッカーが1人、残りは囮となる。それでアタッカーだが──」
 
ミルナの言葉が終わる前に2つの手がほぼ同時に挙がる。
それから一瞬遅れてさらに2つ手が挙がった。

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 23:08:26.77 ID:FcCK4TkJO
 
('A`)「俺がやる」
  _
( ゚∀゚)「いいや、俺だね」
 
先に挙げた2人、ドクオとジョルジュはお互いに視線を逸らさず見詰め合う。
その目はお互い自分に譲れと訴えかけている様に見える。
 
( ´_ゝ`)「……作戦の性質上、2人のどちらかが望ましいかな」
 
兄者はそう言ってミルナの方を伺う。
ミルナは1つ頷き、内藤とハインリッヒに手を下ろす様に言う。
 
(;^ω^)「お……」
 
从#゚∀从「別にアタシでもいいだろーがよ?」
 
('A`)「機体の向き不向きがある」
  _
( ゚∀゚)「お前ら向きじゃねーんだよ」

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 23:12:00.95 ID:FcCK4TkJO
 
2人が言う様に、今回の作戦に向いているのはドクオのクレーエか、ジョルジュのシュヴァルベだ。
 
クレーエによる、気付かれない様に近付く隠密作戦か、シュヴァルベによる一気に強襲する電撃作戦か。
客観的に見て、どちらが成功率が高いかを論ずるのは難しいとミルナは見ている。
 
( ゚д゚ )「それが妥当なとこだろうな。しかし……」
 
( <●><●>)「どちらが……となると難しい話ですね」
 
クレーエでの隠密作戦の場合、フェイスに気付かれないよう接近するため、途中での戦闘を回避出来、セイクリッド・ステークに
被弾し、作戦が失敗する可能性は下がるがその分時間がかかる。
その場合は残りの囮の負担も大きくなることが予想され、作戦自体も1度しか試す事は出来ないだろう。
 
シュヴァルベでの電撃作戦の場合はその逆だ。
短期決戦、失敗か成功かの結果が早く、失敗の場合に仕切り直せる可能性も高い。
しかしながらシュヴァルベそのものの危険度が高く、最悪、シュヴァルベが撃墜される可能性もある。
  _
( ゚∀゚)「墜とされる可能性はどちらの作戦にもあるさ。だが──」
 
説明するワカッテマスをジョルジュの甲高い声が遮る。
そして居並ぶ面々を見回し、力強く言い放つ。

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 23:14:16.95 ID:FcCK4TkJO
  _
( ゚∀゚)「俺が1発たりとも食らうわきゃねーだろ?」
 
('A`)「可能性の問題なら、作戦そのものの成功率の高い方にかけるべきだろう」
 
だから俺にやらせろというジョルジュに、冷静な声が真っ向から対立する。
会議中ここまでほとんど発言のなかったドクオだが、普段のぼそぼそとした喋りからは考えられないほどはっきりと
その意を告げている。
 
この作戦は自分がやると。
  _
( ゚∀゚)「おいおい、わかってんのか? これは遊びじゃねーんだぜ?」
 
('A`)「当たり前だろ。今更何言ってんだ?」
 
1機が別行動、残りの3機が囮。
どちらの作戦を取ろうとも、この配置は同じだ。
 
さらに言えば、どちらの作戦を取ろうとも単独で行動する側が危険なことも変わりはない。
クレーエでの隠密作戦を取ったとしても、最終的には攻撃の際にセイクリッドの反応で所在が判明してしまう。
  _
( ゚∀゚)「俺がやる。お前じゃ役不足だ」
 
('A`)「誤用乙。客観的に判断するなら俺がやるべきだ」

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 23:16:09.50 ID:FcCK4TkJO
 
(;^ω^)「お……」
 
段々とヒートアップする2人のやり取りに内藤は口を挟むことが出来なかった。
ジョルジュはいつも通りといえばいつも通りの調子だが、ドクオがこうも自分を主張するのは珍しい様にも思える。
 
それでも何か言って2人をなだめるのは、同じSA搭乗者の自分の役割じゃないかと意を決して立ち上がろうとした内藤を
隣に座るハインリッヒが制した。
 
(;^ω^)「ハインさん?」
 
从 ゚−从「……」
 
黙って見ていろ。
無言の眼がそう言っている様に内藤には感じ取れた。
  _
( -∀-)「オーケー、確かに純粋な作戦の成功率だけを見た場合なら隠密作戦の方が高いのは認めよう。しかし──」
 
('A`)「しかし?」
  _
( ゚∀゚)「お前はここ一番での勝負強さに欠ける」
 
押しに弱く、決断力に欠け、プレッシャーに潰されかねないとジョルジュは続ける。
この作戦においてキーとなるポジションを担うには無理があるとジョルジュは言う。

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 23:19:21.23 ID:FcCK4TkJO
 
('A`)「……確かにな」
  _
( ゚∀゚)「だからここは──」
 
('A`)「確かに、今まではそうだった」
  _
( ゚∀゚)「あん?」
 
ドクオはジョルジュを見据え、静かな調子で語り始める。
決して高くはないが、遮ることを憚られる、熱のある重い声だった。
 
('A`)「諦めて投げ出して、色んなものから逃げてた俺は、この島に来た時は何もなかった」
 
('A`)「本当はあったはずなのにそれさえ忘れて、挙句に向かい合うことから逃げ出したものに助けられた」
  _
( ゚∀゚)「……」
 
ドクオを助けたもの、それはドクオが島に逃げる時に亡くした両親の事を言っているのだとジョルジュには理解出来た。
詳しい経緯までは聞いていなかったが、ドクオの両親はドクオだけを逃がし、本土に残ったという話だった。
勿論好きで残ったわけでなく、逃げる手段がなかっただけだ。

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 23:22:19.05 ID:FcCK4TkJO
 
('A`)「……俺は別に死んでもかまわないと思っていた。実際、あれに乗った時は半分以上はそんな気持ちだったし」
 
('A`)「あれに乗っていればいつかは逝ける、そんな気持ちで戦っていた」
 
从 ゚−从「……」
 
('A`)「……なあ、ジョルジュ」
  _
( ゚∀゚)「……んだよ?」
 
('A`)「俺の焼きそば、どうだった?」
  _
( ゚∀゚)「あ? 何だよ、急に? ……美味かったよ、思わず顔が綻ぶくらいには」
 
('A`)「そっか……ありがとう」
  _
( ゚∀゚)「それがどうした? 今はその話は関係ない──」
 
('A`)「俺は──」
 
苛立った様に話を戻そうとしたジョルジュを再びドクオが遮る。
先ほどよりも強い声で、ジョルジュをまっすぐに見詰めて。

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 23:24:15.84 ID:FcCK4TkJO
 
('A`)「俺はやれる」
  _
( ゚∀゚)「……」
 
('A`)「俺はこの島で変わったんだ」
 
('A`)「拗ねて僻んで、全部投げ出していた俺をこの島の皆は受け入れてくれた」
 
('A`)「こんなどうしようもない人間なんか放っておきゃいいのに、どいつもこいつもお人よしばかりでさ」
 
('A`)「この島に来た頃の俺の態度覚えてるか? 無視だぜ、無視。誰が声かけようが全部無視してた」
 
ξ゚听)ξ「……」
 
('A`)「でもさ、そんな俺を怒鳴ったり引っ叩いたり、たまには褒めたりして気にかけてくれるやつもいたり」
 
('、`*川「……」
 
('A`)「無反応なのに勝手に解釈して、懲りずに何度も話しかけてくるやつもいたりさ」
 
( ^ω^)

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 23:27:45.60 ID:FcCK4TkJO
 
('A`)「最初は俺があれに乗ってるから、適当におだてて使おうとでもしてんのかと思ってたよ」
 
('A`)「でも違った。本当にどいつもこいつもお人よしだ」
 
('A`)「俺のことを心からに気にかけてくれてるんだって、俺みたいなバカでもすぐ気付いたよ」
 
('A`)「だから、俺は変わった。いや、変われたんだ」
 
('A`)「ジョルジュ」
  _
( ゚∀゚)「……おう」
 
('A`)「あの焼きそばが今の俺だ」
  _
( ゚∀゚)「……」
 
('A`)「この島の皆を笑顔にするのが俺の役割なんだ。だから──」
  _
( -∀-)「あー、はいはい、わかったよ、わかりました」
 
('A`)「俺が──」
  _
( ゚∀゚)「わかったっつってんだろが。……お前に譲るよ」

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 23:30:55.78 ID:FcCK4TkJO
 
('A`)「ジョルジュ」
  _
( ゚∀゚)「皆もそれでいいよな?」
 
( ^ω^)「もちろんですお!」
 
从 ゚∀从「囮は任せな。その代わり……」
 
从 ゚ー从「ヘマすんじゃねーぞ?」
 
('A`)「わーってるよ。……任せろ」
 
訪れる沈黙。
張り詰めた空気が皆の顔に浮かぶ色とともに和らぐのがわかった。
 
まだ作戦が決まっただけで、何の解決には至っていないが、ドクオならやれる、自分達ならやれると不思議と安心感に
包まれる。
 
( ´_ゝ`)「では、作戦はクレーエによる隠密作戦って事でおk?」
 
(´<_` )「兄者よ、空気は読んでくれ」

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 23:33:21.89 ID:FcCK4TkJO
 
弟者に突っ込まれつつも、兄者は作戦の詳細を1つずつ説明していく。
とはいえ作戦自体はシンプルなもので、ほとんど確認事項の様なものだ。
 
( ´_ゝ`)「……てな所だな」
 
( ゚д゚ )「うむ、それでは作戦決行時刻は本日12:00、場所は第四防衛ライン近辺とする」
 
島から約5kmにある第四防衛ライン。
それが突破されればすぐに島に攻撃の手が及ぶ、まさに最終防衛ラインだ。
 
( ゚д゚ )「SA搭乗者各員は作戦決行時間まで休息、鋭気を養っておいてくれ」
  _
( ゚∀゚)从 ゚∀从( ^ω^)('A`)「了解!」
 
( ゚д゚ )「開発部、および整備部は大変だとは思うがこれから急ピッチで仕上げてくれ」
 
( ´_ゝ`)「ま、やるしかないですからね」
 
(´<_` )「急ぎ取り掛かります」
 
ブリーフィングはそこで解散となり、各自がそれぞれの持ち場に向かい別れる。
それぞれが己の役割を果たす為、島を守る為、決戦までのわずかな時間を1秒たりとも無駄に出来ない。

76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 23:37:50.15 ID:FcCK4TkJO
  _
( ゚∀゚)「何だよ?」
 
('A`)「いや、その……」
 
基地内にあるそれぞれの部屋に向かい歩き始めたジョルジュをドクオが呼び止めた。
しかし先ほどまでの饒舌はどこへやら、ドクオは言葉に詰まる。
言いたい事は多々あれど、言うべき事は一言だというのに。
  _
( ゚∀゚)「言っとくが譲ったのは戦略的観点も踏まえてだからな? シュヴァルベの方が囮には向いてるし」
 
('A`)「ああ、うん、そうだな……」
  _
( -∀-)「……チッ」
 
('A`)「あのさ……」
  _
( ゚∀゚)「あーあ、英雄になり損ねたぜ」
 
('A`)「英雄?」
  _
( ゚∀゚)「おうさ、英雄。このかつてないピンチを颯爽と解決すりゃ英雄じゃねーか」
 
('A`)「俺はそんな……英雄とか……」

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 23:42:18.18 ID:FcCK4TkJO
  _
( ゚∀゚)「なれよ、英雄。そうすりゃ振り向いてくれるかもしれんぜ?」
 
('A`)「は……? いや、そういうんじゃ……」
  _
( ゚∀゚)「バーカ、わーってるよ、お前がそんな気持ちで志願したわけじゃないってのは」
 
('A`)「……」
  _
( ゚∀゚)「けどな……必ず帰って来いよ?」
 
('A`)「え……?」
  _
( ゚∀゚)「島の皆の笑顔を曇らせんじゃねーよ」
 
('A`)「……ああ、必ず帰ってくる」
 
それだけだと言ってわずかに笑顔を覗かせたジョルジュは、ドクオに背を向け片手を挙げる。
ドクオはその背を眼で追い、言うべきだった言葉をやっと搾り出せた。

78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/03(火) 23:47:25.15 ID:FcCK4TkJO
 
('A`)「ジョルジュ、……ありがとな」
 
('A`)「お前と一緒にバカやれて楽しかったぜ」
 
('A`)「この作戦が終わったら、また飲もうぜ?」
  _
(   )ノ
 
歩き去るジョルジュを見送り、ドクオもまた歩き出す。
 
難しい作戦だ。
生き残れる保証はどこにもない。
 
それでも、必ず成功させるとドクオは誓う。
自分が生きる為に、そしてこの島を守る為に。
 
('A`)「帰ってくる……必ず……」
 
ドクオは歩き出す。
力強く踏み出したその足には何の迷いも見られない。
 
 
    ( ^ω^)は島を守るようです  中々々々編 終わり


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