とある島のようです

10 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 20:33:15.16 ID:hyEdt1jF0

( ・∀・)「ふんふんふーん♪」

モララーはご機嫌鼻歌を歌いながら、区画の裏通りを歩いていた。
人の通りが疎らなこの道は、モララーが近道としても使う便利な道でもある。

( ・∀・)「およ?」

しばらく歩くと、何やら女性の声が聞こえてきた。
何か揉めているのか、複数の男の声も聞こえている。

( ・∀・)「何か…楽しそうな匂いだ!」

モララーは気が向くままに声が聞こえる方へと進んでいく。
その声は少しずつ近づき、モララーはその方向へとどんどんと進む。
そして、後は曲がり角を曲がるだけと言うところで、モララーは見知らぬ少女とぶつかった。

l从>∀<ノ!リ人「あうっ!」

( ・∀・)「おっ?」

ぶつかった衝撃でしりもちを着く少女。
顔を摩りながら涙目で痛がる少女に声をかけるモララー。

( ・∀・)「大丈夫かい?」

その一言に、ハッとした表情でモララーの顔を見つめる少女。


11 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 20:34:00.67 ID:hyEdt1jF0

l从・∀・;ノ!リ人「た、助けてなのじゃ!」

そうモララーに助けを求める少女、しかし、彼は状況を把握できず困惑していた。

(;・∀・)「助けてって言われても─────」

「待てゴルァ!」

「逃げ切れると思ってんじゃねぇぞ!」

その少女を追うようにドスの聞いた声で柄の悪い二人組が現れる。
その二人を見るなり少女はモララーの後ろに隠れてしまった。

l从>∀<;ノ!リ人「た、助けて欲しいのじゃ!」

「おいてめぇ! そいつを渡せや!」

「早くしねぇとてめぇをあの世送るぞゴルァ!」

(;・∀・)(参ったなぁ、楽しそうな匂いがしたんだけどはずれだなぁ……)

(;・∀・)(この性格は改める必要がるよなまったく)

(;・∀・)(と言うかなんでこんなに運が無いんだろうか…)


13 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 20:35:23.59 ID:hyEdt1jF0

「おい! きいてんのかてめぇ!?」

(;・∀・)「え? 何?」

「調子に乗りやがって! 死にさらせええええええ!」

手に持っていたナイフを突き刺そうと、男はモララー目掛けて突撃する。

l从>∀<;ノ!リ人「きゃっ!」

少女の体はモララーに抱かれて宙を舞った。

そして、男達の頭上を一回転して飛び越え着地する。

「は?」

モララーの人間離れした動きに、脳の理解が追いつかず素っ頓狂な声を出す男。

( ・∀・)「いきなり突き刺そうとするのはやめてよね全く」

「え?」

ナイフ片手に刺突をした男も同様に、目の前で起きた事を理解出来ず間抜けな声が漏れる。


14 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 20:36:30.55 ID:hyEdt1jF0

( ・∀・)「大丈夫?」

抱きかかえた少女に問いかけるモララー。
少女は驚いた表情を見せながらも、こくりと頷いた。

( ・∀・)「そう、だったら安心だよ」

そう言うと、ゆっくりと少女を下ろす。
くるりと振り返り、改めてチンピラ二人組と対峙するモララー。

( ・∀・)「先に攻撃をしたのはそっちだから、これで正当防衛だよね?」

「え?」

その時、モララーにナイフを突き刺そうとした男の右手の親指が切れ落ちた。

「ぎゃあああああああ!!!」

モララーの左手にはドクオが投擲した時のナイフが握られていた。

( ・∀・)「指ってねぇ、神経がいっぱい詰まってるから、切られると痛いんだよねぇ」

男は手を押さえ、無くなった部分から溢れ出る血液と激痛に声を上げる。
それを見ている片割れは、未だに起こった状況を把握出来ずにいた。

名も知らぬ少女はそれを見てただ震えるだけだった。

15 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 20:37:33.76 ID:hyEdt1jF0

( ・∀・)「さてと」

「覚えてろよ! この優男!」

そう叫ぶと、片割れの男は慌てて、手を痛がる連れを引っ張りながら走り去って行く。

( ・∀・)「大丈夫?」

二度目のその問いかけに、少女はびくりと体を震わせる。

( ・∀・)「あー…そのー…怖がらせてごめん」

何も言わず、ただ俯いているだけの少女。

( ・∀・)「………」

かけるべき言葉が浮かばないモララーは、黙ってその場を離れようと考えた。
そしてすぐに行動に移し、すたすたと歩き去ろうとする。

l从・∀・*ノ!リ人「あ、ありがとうなのじゃ!」

そう、少女の優しくも気持ちの篭った感謝の声が聞こえてきた。
一瞬ぴたりと立ち止まるが、振り返ることはせず、モララーは何も言わずただ右手をひらひらと振るだけ。

l从・∀・*ノ!リ人「かっこいいのじゃー……」

一人残った少女はそう呟いた。
去って行くモララー自身も己の行動のカッコよさに酔いながらその場を離れていった。

16 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 20:39:08.85 ID:hyEdt1jF0










とある島のようです

         第二話「島と自由な男と南東会談」








                         ※本作品は元ネタ有作品です
                         元ネタ:成田良悟氏作 「がるぐる!」


18 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 20:40:14.87 ID:hyEdt1jF0

( ・∀・)「おー、見えてきた見えてきた」

先ほどのいざこざから数十分。
モララーは一軒の店を目指して歩いていた。
その店も目視出来るほどの距離にまで縮まり、彼の思考は何を食べようかと言うことに切り替わる。

( ・∀・)(うーん、この前は豚骨ラーメンだったし、同じのは無いなぁ)

( ・∀・)(と来れば、辛味噌ラーメンとかも良いなぁ)

( ・∀・)(ん? 別にラーメンにこだわる必要も無いのかな?)

( ・∀・)(うどんや蕎麦も捨てがたい…店主に言えば出してくれるかな……)

そうこう考えているうちに店は既に目前となり、そこでモララーは一つの結論に達して店内へと入る。
そして、入店するなりこう叫んだ。

( ・∀・)「うどん蕎麦ラーメン!」

(´・ω・`)「そんな品用意してないっての。ようこそバーボンハウスへ」

( ・∀・)「えー、無いのー?」

まるで子供のようにそう言いながら手近な席に座るモララー。

(`・ω・´)「生憎だが、そんな無茶な麺料理は無理だ。はい、これサービスのお茶」

( ・∀・)「ありがとう!」

19 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 20:41:03.80 ID:hyEdt1jF0

このバーボンハウスは島有数の有名料理店である。
独特の味に心打たれ、その味を忘れられない奴がこの店をまた訪れる。
この店は北区画の管理下におかれている為、幹部連中にもこの店に足を運ぶ者も多い。

バーボンハウスは和洋中と様々なジャンルの料理を双子の店主が作ってくれる。
味は店主曰く『オリジナル調味料』を使って料理すれば、どんな不味い飯も上手くなるという程だった。
値段も安く良心的で、それが人気を集めている一つの要因となっている。

( ・∀・)「じゃあ月見きつね天ぷら蕎麦うどん!」

(´・ω・`)「どっちかにしろ、混ぜるな危険って奴だ」

( ・∀・)「じゃあきつね天ぷらうどんラーメン!」

(;`・ω・´)「なんつー思考回路しとんのじゃ」

(´・ω・`)「はいはい、きつねうどんと天ぷら蕎麦一つずつね、ちょっと待ってな」

厨房に向かって天蕎麦ときつねうどん一つと叫ぶと威勢の良い返事が返ってきた。


20 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 20:41:53.64 ID:hyEdt1jF0

( ・∀・)「相変わらず盛況な店だねー」

店内を見渡しながらそう呟くモララー。
店内のあちらこちらから注文を頼む声や料理を食べる音、お肉を焼く音などが聞こえてくる。

(´・ω・`)「ま、そうじゃないとやってやれないでしょ、この島じゃ」

(`・ω・´)「へい、お待ち! 天蕎麦一丁!」

( ・∀・)「おー! いつもより早いねー!」

(`・ω・´)「厨房の源さんが頗る調子が良いらしくてね。今日は何品でもいけるらしいよ」

( ・∀・)「ズルズルふぇー! ズルズルしょれは ズルズルたにょもしいねー!」

(;´・ω・`)「口に食べ物含みながら喋るなよ……」

そう言うと、店に皿が割れる音が響き渡った。

「てめぇ、言いたい放題言いやがって!」

「あ!? 非はそっちにあるんだから逆ギレしてんじゃねーぞコラ!」

「調子のんなカス! いつも失敗ばかりの駄目男がいい気になってんじゃねーぞ!」

店内の人間の視線を集める二人の男。
激しく言い合う二人はまさに一瞬即発と言った状況だった。


21 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 20:43:44.04 ID:hyEdt1jF0

「ぶっ殺す!」

やがて顔真っ赤にした一人の男が勢いよく相手の顔を拳で殴りつける。
やられた相手は勢いよく吹っ飛び、近くの客のテーブルをなぎ倒していた。

それから、店内に怒号と悲鳴が交差する。取っ組み合って殴りあう二人。
もっとやれと野次を飛ばす者、笑いながら二人を見ている者、賭けを始める者。
そしてあっという間に二人を中心に囲いが出来てしまう。

それを二人の店主は呆れた様に見ていた。
モララーは何かわくわくした様子でそれを眺めていた。

(;´・ω・`)「あーあ、あの皿高いんだよぉ?」

(;`・ω・´)「まったくだ。あー! 机ぶっ壊したー!」

( *・∀・)「ちょっと待ってて、止めてくるから!」

(;`・ω・´)「あ、良いよお客さん。自分達で止めてくるから」

そう言うと、眉を吊り上げた方の店主は拳をポキポキとならしていた。
そして、ゆっくりと喧嘩をする二人の周囲の人だかり割り込みながら進んでいく。

(´・ω・`)「久々に腕がなるなぁ」

そう言うと、眉を垂らした店主は後からついて行く様に群集へと進んでいった。


数十分後、店の裏には顔が見事に腫れ上がった二人の男がぐったりとゴミ山に混じるように倒れていた。

22 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 20:44:51.86 ID:hyEdt1jF0

( *・∀・)「いやー、あの店主は強いね! いつか手合わせ願いたいよ!」

良い物が見れたと言う事でご機嫌なモララー。
店を後にして西区画付近へと移動していた。

移動していくにつれて、モララーは人気のない路地にどんどんと入っていく。
そこは世界に自分だけしかいないようにも感じさせるほどだった。

( ・∀・)「世界が自分だけだったらどうなるんだろうなー」

そんな事を呟き、その状況を考えながら歩いているとあっという間に目的地に到着していた。

( ・∀・)「おおぅここだここだ、危ない危ないっと」

そこは小さなビルだった。
しかし、周りに比べると少し綺麗なだけで、人気は全く感じられない。

その無人ビルと思われる建物の入り口をモララーは3回ノックした。

( ・∀・)「…………」

扉がゆっくりと開かれる。中は暗く様子は全く分からない。
その暗闇から男の声が聞こえてくる。

「ゆっくりと、入って来い」

少ししわがれた声。しかし、何処か拒否権を与えない力強さがある。
その指示に従い、ゆっくり、静かに入っていく。
やがて後ろから扉の閉まる音が聞こえ、暗闇と無音がモララーを包み込む。

23 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 20:45:52.28 ID:hyEdt1jF0

( ・∀・)「………」

何も言葉を発しないモララー。
やがて、その暗闇の静寂を破る存在が現れる。

/ ,' 3 「ん、なんじゃお主か」

その声の主はモララーの背後に立っていた。
モララーはその気配を察知する事が出来なかった。
暗闇において五感が研ぎ澄まされているにも関わらず、だ。

( ・∀・)「相変わらず爺さんやるなぁ」

その言葉は、モララーが相手を褒め称えるには十分すぎる言葉だった。

/ ,' 3 「ほっほっほ、お主の倍は生きとるからの……」

意味深な発言、それはモララーには挑戦状のようにも聞こえた。
お前のような若造に負けるはずなどない、と。

手を出してしまいそうになる衝動を抑え、耐えるモララー。
そうするのが、まるで当然であるように、その年老いた翁は彼をじっくりと観察していた。

/ ,' 3 「自分の部屋に異常は無いかの?」

年老いた翁はこの建物の管理人であった。
しかし、入居者はモララーのみと言う経営が成り立つはずの無い建物。

( ・∀・)「そうだなー、シャワーの調子が悪いんだよねぇ」

25 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 20:47:15.29 ID:hyEdt1jF0

その言葉に翁はふむぅと唸る。

/ ,' 3 「シャワーか…分かった…今度業者を呼んでおくかの」

( ・∀・)「うん、よろしく頼むよ」

/ ,' 3 「他は大丈夫かの?」

( ・∀・)「大丈夫だ、問題無い」

/ ,' 3 「明日帰る頃には直ってるじゃろうて」

( ・∀・)「シャワー直るぞ、ひゃっほーい!」

まるで子供がプレゼントを与えられて喜んでいるような声を上げ、モララーは自室へと向かう。
年老いた翁は黙ってその背を見送った。

部屋に向かい、鍵を開けるとまっさきに寝室へと向かうモララー。

( ・∀・)「I can fly!」

そう叫びながらベッドへとダイブする。

( ・∀・)「今日も楽しかったなぁ!」

おやすみ!誰に対してかそう言うと、モララーは目を瞑り、数分後にはすぅすぅ寝息を立てて眠っていた。
夢の世界でも彼は彼らしく自由気ままに遊んでいるに違いない。


26 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 20:48:34.61 ID:hyEdt1jF0

一方その頃、東区画と南区画の境では、一瞬触発と言った状況となっていた。

( ФωФ)「ふむ、どういう事か説明して欲しいのである」

周りを見渡すロマネスク。
彼とミセリを含む10人足らずの南の一行は周囲を包囲されていた。

東の私兵は手に各々の武器を持ち、殺気立っている。
あたりのビルからはロマネスク一行に向けられている銃口。

( ゚∋゚)「この人数で宣戦布告してくるたぁ、大した度胸だな。ロマネスク」

東の都武覇隊、切り込み隊長のクックルがロマネスク一行を歓迎する。

( ФωФ)「こちらはその気など毛頭無いのである。ドクオに話が合って来ただけである」

( ゚∋゚)「生憎俺はそんな話は聞いてねぇ。だから、ここでお前らは殺しても後でどうと出来る」

ミセ*゚ー゚)リ「あーやだやだ、これだから脳筋は頭が悪いから嫌なのよ!」

ジロリとミセリを睨み付けるクックル。
ミセリはそれをそ知らぬ顔で受け流す。

( ФωФ)「……………」

何も言わずおもむろに歩を進めるロマネスク。
クックルは身構え、いつでも攻撃できる態勢へと入る。彼の私兵にも緊張が走る。
ロマネスクが懐に手を伸ばし、出てきたのは彼の愛用する一つの銃だった。

27 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 20:49:19.16 ID:hyEdt1jF0

( ゚∋゚)「それがお前の答えか? ロマネスク」

( ФωФ)「そうだ、これが我輩の答えである」

ガシャン

あたりに響き渡る音。

それは、ロマネスクが銃を捨てた音。

( ゚∋゚)「……何の真似だ」

( ФωФ)「何って、敵意無しとアピールしているのである」

お前達も武器を捨てるのである、とミセリ及び私兵に伝える。
それに従う私兵達。だが、ミセリだけは武器を捨てようとしない。

ミセ*゚ー゚)リ「…………」

( ФωФ)「どうしたミセリ、早く武器を捨てるのである」

普段は忠実な部下が指示に従わない事を不審に思い、もう一度声を掛けようとしたその時だった。


28 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 20:50:16.18 ID:hyEdt1jF0

ミセリは突然駆け出して、少し離れた位置に立っていたロマネスクを抱き抱えるように押し倒す。
倒された際に彼への衝撃を押し殺す工夫も忘れてはいない。
彼は突然の事ながらも慌てた表情は見せていなかった。

そして、一発の銃声が響きロマネスクが立っていた場所、更に彼の頭部であった場所を銃弾が突き抜ける。

ミセ;゚ー゚)リ「くっ!」

慌てて起き上がり狙撃してきたであろうビルの窓に向かい応戦する。

ミセ;゚ー゚)リ「追え! 早く!」

私兵達にそう叫ぶと数人の私兵が隠し持っていた別の銃を取り出しながらビルへと走る。

ミセ;゚ー゚)リ「大丈夫ですか? 大将?」

( ФωФ)「うむ、大丈夫である。お主の胸は気持ち良かったのである」

ミセ;゚ー゚)リ「折角助けたのに何か複雑な気分になりますよ……」

立ち上がりながら服についた汚れをはたき落とすロマネスク。
見据える先にはクックルがいた。

( ФωФ)「とは言え……、どういう事か説明してもらおうか? クックルよ」

その声は、先ほどとはうって変わって南の大将としての名に恥じない、威厳のある声だった。


29 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 20:51:38.21 ID:hyEdt1jF0

クックルは目の前の状況を理解するのに時間が掛かった。
何も命令を出していないのにも関わらず、私兵が勝手に行動をした。

(;゚∋゚)「……………」

そして、先の一言を発してからはこちらを見据えたまま黙っている南区画"黄泉衆"を束ねるロマネスク。
ただ黙って此方を見ているだけだが、他を圧倒するその"威圧感"は凄まじい。
それは先ほどまでのロマネスクとは全くの別人。

しかし、その気に圧されては、東の名が廃る。
彼の強いプライドが彼自身をそう励まし続ける。

( ゚∋゚)「生憎だが、俺は何もしていない」

その一言にロマネスクの護衛であるミセリが反応した。

ミセ*゚ー゚)リ「分かってる。さっき撃って来たのは恐らく西の私兵ね」

( ゚∋゚)「仮に俺がそう命令をしていた、とすれば?」

その言葉にもミセリはあっさりと返答した。

ミセ*゚ー゚)リ「そう言う話をするって事は、貴方じゃないって言う証拠ね。
      貴方はそう言った面倒事は嫌いな性分だし」

その返答に、クックルはもう黙るしかなかった。


32 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 20:54:25.41 ID:hyEdt1jF0

二人の会話が終わるのを見計らってロマネスクが切り出した。

( ФωФ)「クックル、今回の事は見逃すのである。ドクオに会わせて欲しいのである」

( ゚∋゚)「……分かった、俺も男だ。今回の件についてはこっちの不手際だった事は認める」

( ФωФ)「流石は東の一幹部。賢明な判断なのである」

( ゚∋゚)「ただし、護衛は一人だけだ。手持ちの武器もすべて渡して貰う。他の奴らは全員待機所へ連れていく」

( ФωФ)「分かったのである。ではミセリを連れて行くのである」

近くの私兵に、南の護衛を別の場所へ案内するように伝えるクックル。
私兵が案内していくのを見届けるとクックル達は東の本部へと歩き出した。

先頭を歩くクックルと彼を守る役割の私兵。後から続くロマネスクとミセリの二人。
ミセリがこっそりとロマネスクへと話しかける。

ミセ*゚ー゚)リ「先の狙撃、先ほども言いましたが、高確率で西の差し金かと思われます」

( ФωФ)「……その根拠は?」

ミセ*゚ー゚)リ「うちにドクオが来た事を知っているのは西の弟者だけです。
      それを考慮すると、南は誰か東へ使いを出すはずだと考えます」

( ФωФ)「ふむ……」

ミセ*゚ー゚)リ「その逆であれば、恐らくうちの区画にも狙撃手が紛れ込んでいたはずです。
      使いの幹部を一人を狙撃し、南と東の抗争を狙う。西が考えそうな事ですよ」

33 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 20:56:55.89 ID:hyEdt1jF0

( ФωФ)「頭の良い部下がいるのは助かるのである」

ミセ*゚ー゚)リ「今回の件はボーナスとして何かくださいね?」

(;ФωФ)「分かってはいるが、はっきりと物を言いすぎである」

そう苦言を呈すロマネスク。
しかし、その一言にもミセリは屈託の無い笑顔ではっきりと言った。

ミセ*^ー^)リ「これが私の性分ですから」

それを聞き、少しため息をつくロマネスク。

うちの区画には彼女と言いフォックスと言いはっきり物を言う人間が多すぎる。
そう思いながらも、有事にはその力を存分に発揮してくれる可愛い部下達。

他の区画に比べ、私兵の数は少々劣るが、優秀な幹部達のお陰でこの区画を守ってこれた。
その事は紛れも無い事実。それを考えるとやはり、持つべきは良き部下だと思う。

( ФωФ)「……これからも頼りにしているのである」

ミセ*゚ー゚)リ「任せてください」

その返事を聞き、やはり頼もしき部下だと改めてそう思うロマネスクだった。


34 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 20:59:36.59 ID:hyEdt1jF0

クックルに案内されてやってきたのは周りのビルに比べると少し朽ち果てた古いビルの中の一室だった。

( ゚∋゚)「……ここだ。あけるぞ」

そう言うとドアを開けるクックルだったが、部屋の中には異様な光景が広がっていた。

(メ^ω^)「…………」

('A`)「…………」

( ><)「…………」

( <●><●>)「…………」

机を挟み、椅子に腰掛ける四人の男。
一人はロマネスクへの会談をする予定のドクオ。一人は、東区画の若手出世頭のビロード。一人は東区画の情報部のワカッテマス。
そしてもう一人は、東を束ねるリーダー、内藤ホライゾン。

誰も一言も発さず、四人の見つめる視線の先には、内藤とドクオの前に置かれた二枚のカード。
誰も微動だにせず部屋には時計の針の音だけが響く。ただ時だけが流れていく。

( ФωФ)「……………」

ミセ*゚ー゚)リ「……………」

( ゚∋゚)「……………」

ロマネスクとミセリはその二人をただ、黙って見つめている。
そしてクックルも黙ってそれを見つめていた。

35 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 21:00:28.90 ID:hyEdt1jF0

(メ^ω^)「…………」

ピクリと内藤の手が動く、その動きにやや、体が硬直するドクオ。

ゆっくりと手を伸ばし、一枚のカードへと手を伸ばす。
ドクオはそれを黙って見つめていた。

(メ^ω^)「…………」

カードを捲る前に、ちらりとドクオは内藤の顔を見た。

(;'A`)「……………」

その表情に、一瞬焦りの顔が浮かんでいるのを、内藤は見逃さなかった。

(メ^ω^)ニヤリ

薄っすらと笑みを浮かべ、そして、一気にカードを捲る。
表にされた一枚のカード、それを見て内藤とドクオの二人の顔ははっきりと"対照的"に二つの表情を浮かべた。

( *^ω^)「ひゃっほおおおおい!!!」

('A`)「……………」

( ><)「あちゃー! ドクオさん負けちゃったんです!」

( <●><●>)「ドクオさんが勝つと思ってたんですけどねー」

先ほどの異様な雰囲気は一蹴され、ほのぼのとした空気が室内を瞬く間に覆う。

36 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 21:01:19.31 ID:hyEdt1jF0

('A`)「ほら…俺、寝起きだから……」

(*^ω^)「またまたー! 町に出て帰ってきてすぐのくせに何言ってんだお!」

('A`)「ほら…俺、疲れてるから……」

(*^ω^)「またまたー! やる前は全然疲れてねぇよって言ってたくせに!」

('A`)「ほら…俺、ミセ*゚ー゚)リ「いつまで待たせる気なの?」

少し苛立ちの混じったミセリの声が二人のくだらないやりとりを遮る。

その声に椅子に腰掛けた4人は入り口に立つ三人に視線を向ける。

(メ^ω^)「……………」

( ФωФ)「……………」

そして、見つめあう二人の区画の代表。
先に声を出したのは内藤だった。


38 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 21:02:28.43 ID:hyEdt1jF0

( ;゚ω゚)「な、何でろろろろ、ロマ、ロマネスクがここにいるんだお!?」

( ФωФ)「何でってド( ;゚ω゚)「まさか大将自ら攻めて来るとは思わなかったお!?」」

(;ФωФ)「……………え?」

( メ;ω;)「ワカにビロ! ぼさっとしてないで早く応戦すr('A`)「うるせぇ黙れ腐れ豚」

そう言うと手加減もなしに思いっきり内藤のみぞおちを殴るドクオ。
綺麗に決まったその一発に内藤は崩れ落ちた。

(;><)「……………」

(;<●><●>)「……………」

ミセ;゚ー゚)リ「……………」

(;ФωФ)「……………」

気まずそうに頭をかきながらビロとワカに寝室に運んどけと言うと、ミセリとロマネスクの二人に向き合った。

('A`)「うん、その、あれだ……悪かったわ」

('A`)「とりあえず別室用意してるからそっちで話そう」


40 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 21:04:49.61 ID:hyEdt1jF0

('A`)「うん、まぁ狭い部屋だけど我慢してくれや」

ミセ*゚ー゚)リ「あら、うちの会議室と変わらないくらいじゃないかしら」

(;ФωФ)「それはフォローしてるのか……?」

やがて三人がそれぞれの席に着く。
そして、会議の開催者であるドクオが話を始める。

('A`)「あー……ぶっちゃけると……だな、"姫"を迎えに行こうかなと考えてるんだ」

( ФωФ)「ほう、それは骨が折れるな……」

ミセ*゚ー゚)リ「以外ね。てっきり"月"が欲しいと思ってたのに」

('A`)「最初は俺もその考えだったんだがな、どうも相手の方が一枚も二枚も上手でどうにもならん」

( ФωФ)「だからと言って"姫"を選ぶ、というのは危険…いや、無謀にも聞こえるが?」

('A`)「俺らだけではな……。そこで、わざわざ俺自身が出向いてあんたらに協力を要請する予定だったんだが」

ミセ*゚ー゚)リ「まぁ色々あって今は私達が出向いてきてこうなってる…と?」

('A`)「そういう事だ……」

41 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 21:07:14.11 ID:hyEdt1jF0

( ФωФ)「しかし、ドクオだけの考えで東は纏まるのであるか?」

('A`)「根回しは済んでる。後はリーダーを、内藤を説得すれば完了だ。
    まぁ、言えばあいつが一番乗り気になるんだろうな……戦馬鹿だし……」

('A`)「と言うか俺だけの考えってバレバレなんだな……」

( ФωФ)「こっちにも情報網があるのである」

('A`)「じゃあ皆まで言う必要もねぇのな………」

そこまで話すと、ドクオは胸ポケットから煙草を取り出し、慣れた動作で口に咥えて火を付ける。

('A`)y-~~「ふー……」

そして、ロマネスクを見つめ、一つの問いを投げかける。

('A`)「ぶっちゃけて聞こう、作戦や軍資金云々は後回しだ。南の代表は、いや、黄泉衆は都武覇隊に協力するや否や?」

ミセ*゚ー゚)リ「勝算はあr────」

ミセ;゚ー゚)リ「ッ!」

座った態勢からドクオはミセリ目がけて仕込みナイフを投擲する。
しかし、ナイフはミセリに当る事は無く、ミセリの後ろの壁へと突き刺さった。

('A`)「護衛は黙ってろ。俺は今な、"ロマネスク"に聞いてるんだ。お前じゃあ無いんだよ」

ミセ;゚ー゚)リ「……………」

43 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 21:10:14.02 ID:hyEdt1jF0

その威圧感にミセリは黙りこむしか無かった。
一瞬だが、ドクオから向けられた殺気に、ミセリは圧倒されてしまったのだ。

( ФωФ)「ふむ……」

ロマネスクは空を見つめ、ドクオの問いの答えを考えていた。
今、この場で返事を言えば、それが南の総意となる。

('A`)y-~~「…………」

ドクオは煙草をふかしながら、ロマネスクの返答を待つ。

( ФωФ)「…………」

ロマネスクは思考を張り巡らせ、ドクオの期待するであろう返答を予測する。

ミセ;゚ー゚)リ「……………」

ミセリは不安げに、己の大将の行動を見つめていた。

( ФωФ)(難しいのである……)

姫を迎えに行く。つまり、ドクオはツンの"北区画が欲しい"と言う事。
ドクオには全く勝算が無いと言う訳ではないだろう。
でなければこんな話を持ちかけて来るはずが無い。

44 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 21:12:23.23 ID:hyEdt1jF0

( ФωФ)(ドクオの考える勝算と言うのが我輩の考えと同じであれば……)

その結論に、ロマネスクは思わず笑みを浮かべた。
それを見ても、ドクオはまだロマネスクの返答を待っている。

( ФωФ)「ふふ…ドクオよ。我輩の腹は決まったのである」

('A`)y-~~「…………」

( ФωФ)「お主の案に乗ろう。これはな、ただの口約束ではないのである」

ロマネスクはドクオの眼を見つめたまま、はっきりと言葉を紡ぐ。

( ФωФ)「南の、いや、"黄泉衆"を率いる代表としての総意なのである」

('A`)y-~~「………」

ドクオはそれに対しての返事はしなかった。
まるで、そうなる事は分かっていたと言わんばかりに。

( ФωФ)「ミセリ、用件は済んだ。帰るぞ」

ロマネスクはそう言うと、席を立つ。
そして、会議室の扉を開けて、出て行こうとする。

ミセ;゚ー゚)リ「あ、大将待ってください!」

慌てて後を追うミセリ。
バタンと音を立てて、会議室に残されたのはドクオただ一人のみ。

48 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 21:19:53.60 ID:hyEdt1jF0

('A`)「サンキュー、ロマネスク……」

そう呟くと、天井を見上げ、煙草の煙を思いきり吐く。
しばらくドクオは、天井を見上げたまま、ただ一人、会議室に残っていた。

('A`)「黄泉衆は船に乗った。後は漕ぎ手と波次第…か」

その表情はいつもと変わらぬクール、いや、無表情だった。
しかし、その眼にははっきりと内なる闘志の輝きがあった。

('A`)「イレギュラーさえ無ければ…ツン…お前の区画はもう終わりだ」

今一度ドクオは自身の考えあげた策を一つ一つ確認していく。
兵の動き、幹部達の配属、侵攻ルートの再確認。

全てにおいて、完璧。
これ以上は無いと言う策をドクオは考えていた。

('A`)(後は…仕掛けるタイミング次第だが…大した問題じゃあないか……)

黄泉衆の協力無しではこの作戦の実行は不可欠だった。
ロマネスクがこの作戦の真意を何処まで汲み取ったかは定かではない。

だが、黄泉衆は、ロマネスクは策に乗った。
交渉前から、ドクオには必ずやロマネスクは乗ってくると言う自信があった。

万事上手くいく。
ドクオはそう思うと、一人にやりと笑みを浮かべた。

49 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 21:20:57.80 ID:hyEdt1jF0

東の事務所を後にしたロマネスクとミセリは、部下を待たせている待機所へと向かっていた。

ミセ;゚ー゚)リ「あの、大将…質問しても良いですか?」

( ФωФ)「うむ、なんであるか?」

ミセ;゚ー゚)リ「あの時、なんで大将は笑ったんですか?」

( ФωФ)「何、考えれば考えるほど、ドクオの考えに笑ってしまったのである」

ミセ;゚ー゚)リ「ドクオの考え……?」

( ФωФ)「お主が聞こうとした、ドクオの勝算なのである」

そこでロマネスクは思い出したかのように、ミセリへと話を続ける。

( ФωФ)「そうそう、ミセリは命拾いをしたのである」

( ФωФ)「我輩がいなかったらドクオは間違いなくお前を"殺して"いたのである」

ミセ;゚ー゚)リ「じょ、冗談ですよね……?」

( ФωФ)「お前も感じたのであろう? ドクオがお前に対して向けた殺気を……」

( ФωФ)「あの殺気を感じた時、あの瞬間だけは、ドクオは間違いなく我輩を殺す事も容易だったのである」

その言葉を聞いた時、ミセリは思わず身震いをした。
ドクオは一幹部でありながら、黄泉衆を纏める大将にここまで言わせると言うその実力に。

50 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 21:21:48.20 ID:hyEdt1jF0

( ФωФ)「まぁ、流石に我輩も簡単には殺されたくないのである」

ミセ;゚ー゚)リ「……………」

( ФωФ)「で、話は戻して、ドクオの考える勝算とは一体何かなのであるが」

ミセ;゚ー゚)リ「はい」

ドクオのあの自信のありようから、きっと何か凄い勝算となりえる切り札があるのだろうと考えるミセリ。
しかし、それが何かなのかは全く見当がつかなかった。

( ФωФ)「我々なのである」

ミセ;゚□゚)リ「は?」

その答えにミセリは思わず間抜けな声をだしてしまう。

(;ФωФ)「いや、だから"我々"なのである」

ミセ;゚□゚)リ「いや、え? 我々…?」

(;ФωФ)「つ、つまり黄泉衆の事である」

ミセ;゚□゚)リ「……………」

ミセ;゚□゚)リ「ええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!」

後にミセリのその叫びは、東の区画中に響き渡っていたと東の私兵達が証言している。

51 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 21:22:35.07 ID:hyEdt1jF0

(;-ω+)「ミセリ、落ち着けなのである」

ミセ;゚□゚)リ「……………」

ミセ;゚△゚)リ「はっ!」

ミセ;゚ー゚)リ「た、他力本願も良いところじゃないですか!」

(;ФωФ)「だから分かった時に笑ったのである」

ミセ;゚ー゚)リ「メリットなんて全然無いじゃないですか!」

(;ФωФ)「メリット、デメリットなんかじゃないのである……」

ミセ;゚ー゚)リ「じゃあ何なんですか!」

(;ФωФ)「こう、男同志の…熱い…約束的…な…?」

ミセ;゚ー゚)リ「大将って馬鹿だったんですね……」

(;ФωФ)「ミセリ? 間違ってもお前の上司と言うかリーダーなんであるが……?」

ミセ*;ー;)リ「知ってますよ! 馬鹿!」

(;ФωФ)「えぇぇぇ………」

叫びだすわ泣き出すわで、すっかり困惑してしまった南の大将ロマネスク。
彼はここで最後の切り札を使う。

53 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 21:24:18.35 ID:hyEdt1jF0

(;ФωФ)「分かった。この件に関しては"ボーナス"も増やすし、"給料"も増やすのである……」

ミセ* ー )リ「……………」

その一言に、ミセリはピタリと泣くのを止めて、静かになる。

(;ФωФ)「…ミセリ?」

ミセ*^ヮ^)リ「えへへー流石は大将です! ミセリも頑張ります!」

そこにはさっきまで泣きじゃくっていたミセリの姿は無く、明るく笑う可憐な少女の姿があった。

(;ФωФ)「……………」





(;ФωФ)( 嵌 め ら れ た の で あ る )





ミセ*^ヮ^)リ「さぁ大将! 早くみんなを連れて帰って作戦会議ですよ!」

(;ФωФ)「わ、分かったのである……」

引き受けない方が良かった気がしたと思うロマネスクであった。

55 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 21:25:53.54 ID:hyEdt1jF0
少し時間を遡って、一人会議室に残ったドクオ。
しばらくすると、会議室のドアをノックする音が聞こえた。

('A`)y-~~「おう……」

失礼しますの一声が扉越しに聞こえ、その声で誰かを判別するドクオ。

('A`)y-~~「どうした、ワカッテマス」

( <●><●>)「いえ、彼らは帰ったのに一向に部屋から出て来られないものですから」

('A`)y-~~「何、ちょっと考え事してただけだ」

( <●><●>)「考え事…ですか……」

('A`)y-~~「あぁ、そうだ。ワカッテマス、とりあえず幹部を全員集めてくれ」

( <●><●>)「それはドクオさんが話した例の件の事ですね? すぐに準備しますので」

('A`)y-~~「察しが良くて助かるよ。それまでまた休ませてくれ」

そして数時間後、東の会議室には幹部全員が集い、その視線はすべてドクオに向けられていた。

( ゚∋゚)「……………」

(´-_ゝ-`)「……………zzz」

('_L')「……………」

【+  】ゞ゚)「……………」

57 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 21:27:05.90 ID:hyEdt1jF0

そのドクオはと言うと煙草をふかして天井を見つめるばかり。
やがて、内藤がドクオに声をかける事から、会議室の空気は変わった。

(メ^ω^)「ドクオ、全員揃ってるお。緊急招集の話を聞かせて欲しいお」

ブーンの言葉を聞き煙草の火を消し、腕を組み、椅子の背もたれへと背を預ける。
その椅子がぎしりと音を立て、ドクオは話を始めた。

('A`)「感の良い奴は薄々気づいてるだろうが」

そこで一つ間をあけるドクオ。一つ息をついて、また話始める。

('A`)「単刀直入に言うと、黄泉衆と共に北区画、美夜守を攻める事にした」

その言葉に多少のざわめきが起こるだろうと考えていたドクオだったが、誰一人として言葉を発する事は無かった。

('A`)「で、もう武器などはワカッテマスに秘密裏に用意させてある」

('A`)「ま、この会議で決めるのは後はいつ攻めるかって言うところだよな」

その言葉にブーンは反応した。

(メ^ω^)「昔から戦は天の時、地の利、人の和の3つが揃えば必ず勝てると言うお」

(メ^ω^)「全部揃わずとも、どれか一つだけでもあれば勝機は見いだせるお。今この時、間違いなく天の時は得たお」

(メ^ω^)「思い立ったが吉日とも言うお。幸いにも他幹部にはドクオが根回しをして各々用意は周到ときてるお」


58 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 21:30:10.18 ID:hyEdt1jF0
そう言うと各幹部を見渡す内藤。
それに応える様に各幹部は縦に首を振った。

('A`)「で、いつやるんだ?」

その一言に内藤はニヤリと笑みを浮かべた。

(メ^ω^)「今が夕時。日付が変わると同時に"決行"だお」

その一言に幹部全員の目つきが変わる。

(メ^ω^)「ワカッテマス、黄泉衆に連絡するお。恐らく向こうもある程度の用意はしている筈だお」

( <●><●>)「分かりました、すぐに連絡します」

(メ^ω^)「作戦はもちろん考えてるお?」

その一言に、今度はドクオがニヤリと笑みを浮かべた。

('∀`)「もちのろんだぜ、ブーン」

そして、幹部全員にドクオは告げる。

('A`)「と言う訳で今から作戦を説明する。ちょっと西の連中まで巻き込むからちょいと大きな戦いになるぞ」

( ゚∋゚)「なに、ちょっとぐらい大きな戦の方が盛り上がるってもんだ」

(メ^ω^)「クックルはいつでも戦場で盛り上がってるお」

('A`)「とか言いつつお前が一番楽しんでるんだよな。まぁ良いや、作戦はだな──────」

59 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 21:31:34.83 ID:hyEdt1jF0

西区画事務所、会長室の会長の椅子に腰掛ける一人の男は、神妙な面もちで電話をしていた。

『ふむ…ふむ…なるほどのぅ…』

年老いて時折しわがれた声の主が持つ受話器からは、彼に比べるとかなり若く聞こえる男の声が漏れている。

《で、決行の時期はいかがされますか?》

『もうすぐ東の連中が動き出す頃。それを利用しない手はあるまいて…』

《東…なるほど…考えられましたね……》

『駒の用意はお主に任せる…うむ…好きにして良い……』

《ふふふ…お互いの利益の為です…多少は盛り上がらなくては……》

『分かっておる…うむ…こちらの駒も存分に使わせてもらおう……』

《では、時間が惜しいのでこの辺で……》

『分かった……任せたぞ……』

そして、受話器を置いて深くため息をつく男。

『くくく…この島がもうすぐわしの物になる…そうなれば楽園の完成も遠くなかろうて……』

『わしが…わしがこの島の王になる……』

『本土の犬共もやがてわしに従わざるを得なくなるだろうて…くくく…楽しみじゃのう……』

60 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 21:32:54.35 ID:hyEdt1jF0

受話器を置き、室内でにやりと笑みを浮かべる男。
部屋には彼以外にも複数の男女が居合わせ、彼に視線を向けている。

「くはは、話は纏まったぜぇ。お前ら、パーティーの準備は出来てんのかよ?」

そう言って全員を見渡す纏め役らしき男。
それに各々が返答する。

「愚問って奴だな」

「全くだ。それにパーティーなんて洒落たもんじゃねぇだろ」

「うふふ、良いじゃない。人生は何事も楽しまなきゃね?」

「くはは、よぉく分かってるじゃねぇか」

背筋が凍りそうなほどに、全員が薄っすらと笑みを浮かべる。
その中でも特に、一人の男が禍々しい笑みを浮かべていた。

「待ってろよ"内藤"よぉ。楽しみだぜぇ、お前とまたやり合えるってのがな」

「くははは、凱旋パーティーだ!」

「お前らぁ、地べた這いずり回って生きてる虫ケラに遅れとんなよぉ?」

61 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 21:34:54.96 ID:hyEdt1jF0

「だぁれに物を言ってやがる。手前の指図はうけねぇよ」

「私はお金が貰えれば、それで良いわ」

「全く持って、同意だね」

「くへへ、まぁ良いさ。島で手前らが好き勝手やるのはかまわねぇ」

「だがよ、内藤に手ぇを出す奴ぁ、この中の人間であろうと俺ぁ容赦しねぇぜ?あいつは俺の獲物だ」

「万が一邪魔立てしてみろ? 手前らの体に小便垂れ流す穴ぁ増やしてやっからな?」

そう言うと男は全員を見渡し、耳まで裂けんばかりにニヤリと笑みを浮かべる。
それを見て彼以外の面子は、面倒には関りあいたくないとばかりに深く溜息を吐いたり首を振ったりする。
            チャイニーズ
「面倒くせぇ事に中国マフィア共が雁首揃えて俺らを後方支援って名目で監視するって手筈らしい」

「失敗すれば金もねぇし、まぁ、連中が俺らを生かす筈もねぇ。後から"ズドン"だろうな」

「まあやばくなったら俺はトンズラするぜ」

「お前らも逃げ時ってぇのはしっかり見極めるこったな。それが、長生きの秘訣だぜ」

「この屑溜りの世界で長生きも糞もねぇ。年中休暇中の神に誓っても良いぜ、この世界は殺るか殺られるかの二つだ」

「くはは、ちげぇねぇぜ、くははははははは」


63 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 21:37:35.09 ID:hyEdt1jF0









とある島のようです

            第二話「島と自由な男と南東会談」
                                    了








.

65 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 21:43:05.21 ID:hyEdt1jF0

第二話終了時点の登場キャラクター一覧

 ミ ヤ ズ
・美夜守隊 <<北区画>>

ξ゚听)ξ ツン    (美夜守隊隊長)
川 ゚ -゚)  素直クール(美夜守隊副隊長)
ノパ听)  素直ヒート
ζ(゚ー゚*ζデレ
从 ゚∀从 ハインリッヒ高岡
(*゚∀゚)   つー


 ツ ム バ
・都武覇隊 <<東区画>>

( ^ω^)  内藤ホライゾン(都武覇隊代表)
('A`)     欝田ドクオ   (都武覇隊副代表)
( ><)  ビロード
( <●><●>)ワカッテマス
( ゚∋゚)   クックル
(´・_ゝ・`)  盛岡デミタス
('_L')     フィレンクト
【+  】ゞ゚) 棺桶死オサム


66 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 21:45:26.91 ID:hyEdt1jF0

 ヨ モ ツ
・黄泉衆   <<南区画>>

( ФωФ)杉浦ロマネスク(黄泉衆大将)
( ´_ゝ`)  流石兄者
ミセ*゚ー゚)リ ミセリ
<ヽ`∀´> ニダー
(-_-)    ヒッキー
爪'ー`)   フォックス


 クニガミ
・国神党   <<西区画>>

(,,゚Д゚)   ギコ   (国神党副会長)
(´<_` ) 流石弟者
ミ,,゚Д゚彡 フサギコ
( ´∀`) モナー
(゚、゚トソン  都村トソン
\(^o^)/ オワタ
( ∵)    ビコーズ
( `ハ´)  シナー


68 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 21:47:54.62 ID:hyEdt1jF0


・所属不明 及び 所属無し

( ・∀・)    モララー(殺人機)
l从・∀・ノ!リ人 流石妹者(北区画在住)
(´・ω・`)    ???(バーボンハウス店長)
(`・ω・´)    ???(バーボンハウス店長)
/ ,' 3      .???(ビル管理人)
???     ロミオ=ジャンヌ(所在不明)


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