- 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/24(金) 14:00:01.91 ID:fel6q8yh0
■■■■■■■■■■□■
( ∵)<ジュブナイル の ヨウデス ダイニワ
「ピコピコ」
□□□□□□□□□□■□
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/24(金) 14:04:06.31 ID:fel6q8yh0
(*'∀`)「うおおおおお?! すげー! 何か、……受信?! 受信したぞおい!」
(* ^ω^)「おおおおお!!」
(;´・ω・`)「えっちょ、何? ねぇ何?」
(*'∀`)「うわぁあ、すっげ、何? 何て言ってた今! もっかいもっかい!」
(* ^ω^)「おおおお、おっおおお!」
(;´・ω・`)「え、ねぇ何、何なの、おいってば!」
ドクオ兄ちゃんが銀玉に組み付いて、覗き込む。ぴこぴこ、青い光が兄ちゃんの眼に反射している。
右耳からは蝉の声。左耳からは雑音混じりの機械音。
゚゙+ ピカピカッ
( ∵z〜
『ナゼナラバ、我々は、ビコーズ、五時間前にスリープモードから復帰シた。受信でハない。この音声は我々がハッしている』
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/24(金) 14:07:17.59 ID:fel6q8yh0
(* ^ω^)「……お?」
(*'∀`)「やだ、何コレ格好良い!」
(;´・ω・`)「何だよ、ぼくにも聞かせろよ、おい!」
( ^ω^)「ちょっ、落ち着くお、兄ちゃん達」
ドクオ兄ちゃんの襟首を掴んで揺さぶるショボ兄ちゃんと、眼をきらきらさせながら揺さぶられるドクオ兄ちゃんに呼びかけ、黙らせる。
ぴこぴこと眼(?)を光らせていた銀玉が『じぃい』とゲームをロードする時のような音を出した。
ドクオ兄ちゃんとショボ兄ちゃんは一つのヘッドフォンに頭を寄せている。
+゚ ピカピカッ
( ∵z〜
『ナゼナラバ、我々は、ビコーズ。制作ナンバー2ノ、ワタナベ・タカオカ博士による作品である』
('A`)「……誰? てかどっちが名字?」
『我々は、とあるプログラムと同時に起動するヨうに設定されていた。
そのプログラムが今日の正午、起動された。よって、我々は、ビコーズ、そのプログラムの成すこトを阻止せねばならない』
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/24(金) 14:11:01.64 ID:fel6q8yh0
ぎっ、と庭木にとまった蝉が悲鳴をあげた。
兄ちゃんたちは表情が抜けた顔で銀色の玉を見つめている。
三回瞬きをしてから、僕は銀玉に手を伸ばした。
きゅいん、と銀玉の一部が開き、細っこいマジックハンドが飛び出す。
ドクオ兄ちゃんが黄色い悲鳴をあげて、ショボ兄ちゃんに殴られた。
『だがシカシ、その任務ノ達成は、我々単独では成し得ない。よって、貴方方ニ協力を仰ぎたイ』
( ^ω^)「あ、あの、ちょ、待ってお。聞こえるかお?」
『集音マイクは搭載してイる。そのまマ言葉をハッしてもらって構わない』
( ^ω^)「おまえは、何なんだお?」
*゚ ピカピカッ
( ∵z〜
『ナゼナラバ、我々は、ビコーズ。ワタナベ・タカオカ博士の作品である。彼女は我々のことを"世界を助ける機械"と言った』
『ナゼナラバ、我々は、ビコーズ。成長すル機械である』
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/24(金) 14:16:06.65 ID:fel6q8yh0
世界中の機械は特殊なネットワークで繋がっている。人はインターネットを介してそのネットワークに接続することが出来るようになった。
僕は機械に興味が無いから、『出かけ先からでも携帯からの一報でご飯が炊ける』だとか、そういう利用法しかしらないのだけど。
そのネットワークのおかげで数十年前から比べるともの凄く便利な世の中となったらしい。
どんな機械にも絶対組み込まれている、小さな小さな機械。それを発明したのが、ハインリヒ・タカオカ。高岡ハインリヒ博士。
今日一緒に帰った、ツンのおじいちゃんだ。
『ハインリヒ博士は世界中の機械へ意志を組み込むコトに成功した。世界中の機械は人に反乱をするコとをプログラムされテいる』
(;´・ω・`)「……?」
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/24(金) 14:20:12.90 ID:fel6q8yh0
『そのプログラムが完全に起動するニは期間が必要にナる。
ハインリヒ博士がハンドメイドしたチップからその後量産されたチップに対しテの汚染のたメに僅かながら時間を要するタメである』
『反乱が起きた場合、どんな結果がもたラされるかのシミュレーションは行われてイないが、
現在の人類社会が崩壊するでアロうことは明らかであるとワタナベ博士は言っていタ』
('A`)「……あの、」
ドクオ兄ちゃんが銀玉、もといビコーズ(?)に呼びかけた。『じぃい』という音で返事をする。
('A`)「何、えっと、要するに何、産業で」
『産業?』
('A`)「あ、はい、うん……いいわ……」
『ナゼナラバ、我々は、ビコーズ。世界を救わなければならないのだ』
('A`)「……」
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/24(金) 14:24:37.08 ID:fel6q8yh0
世界を救う。世界を救う。世界を救う。
ゲームやマンガやアニメや映画の中でしか聞いた事の無い言葉。
心臓がぐつぐつと沸き立つ。ほっぺたがじんと熱くなった。頭の真ん中がしびれる。
見ると、ショボ兄ちゃんは瞳を見開いて瞬きを繰り返していた。
"*+゚ ピカッ
( ∵z〜
(´・ω・`)「えっと、ビコー、ズ? でいいのか?」
『我々ハ、ビコーズ』
(´・ω・`)「そ、それってほんとなのか。機械が反乱する? って」
『我々は貴方方の信用ヲ要する』
ビコーズの合成音声は旧世代のの堅苦しいもので。
でもだからこその真実味があった。
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/24(金) 14:29:07.25 ID:fel6q8yh0
ビコーズの声は合成音声の堅苦しいもので。でもだからこそ真実味があった。
( ^ω^)「ド、ドクオ兄ちゃん! 凄いお! どうするお?!」
どうしよう、という不安。じんるいしゃかいがほうかいする。
その言葉の意味が理解出来ない程僕は幼くなんてない。人類社会が崩壊したら? 機械が人に逆らったら?
ドクオ兄ちゃんなら、と思って僕は兄ちゃんを振り仰ぐ。
兄ちゃんなら、面白いことが大好きな兄ちゃんなら、きっと笑って、
('A`)「……ホライゾン」
あのきらきらした目では無くて、嬉しそうな顔でも無くて、堅く表情を濁らせたドクオ兄ちゃんが、居た。
そして僕が首を傾げると、何かをこらえるような、苦しそうな声で言うのだ。
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/24(金) 14:33:07.07 ID:fel6q8yh0
('A`)「警察に、言わなきゃ」
( ^ω^)「……お?」
('A`)「大人に言わなきゃ、駄目だろ、これは」
それは、『内藤ドクオが言わなさそうな言葉ランキング』があったなら、かなり良い所までいけそうな言葉だった。
ドクオ兄ちゃんは、僕の自慢の兄ちゃんだ。
ショボ兄ちゃんだって、嫌っているように振る舞っているけれど、本当の本当はドクオ兄ちゃんの事を尊敬している。
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/24(金) 14:36:58.13 ID:fel6q8yh0
('A`)『バレンタインとかまじ滅べばいいのにー、と、昨日思った』
(#'A`)『だから滅ぼしてみようと思いますッ!!』
( ´_ゝ`)『非モテじゃー!! 非モテ様のお通りじゃー!!』
バレンタインに学校を占拠したり、
('A`)『赤組とか白組とかそんな枠組みに囚われてんじゃねぇよ!』
川 ゚ -゚)『此処に、二年合同、ピンク組の設立を申し立てるっ!!』
_
( ゚∀゚)『べっ、別にピンクだからってエロい意味じゃないんだからねっ!!』
lw´‐ _‐ノv『そうよっ! ただ単に白と赤を混ぜただけなんだからっ!』
運動会でレジスタンスを結成したり、
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/24(金) 14:40:48.50 ID:fel6q8yh0
('A`)『かーぎやー』
川 ゚ -゚)『たーまやー』
( ´_ゝ`)『おーれやー』
打ち上げ花火を自作して打ち上げたりする人なんて
('A`)『よしっ! 総員撤収! 捕まっても名前は出すなよ!!』
( ´_ゝ`)川 ゚ -゚)『イッー!!』
この世にドクオ兄ちゃん達くらいしか居ないに決まってる。
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/24(金) 14:43:21.43 ID:fel6q8yh0
勉強が出来なくても、顔が格好よく無くても、彼女が居なくても。
何時でも友達と一緒に下らない事を全力でやってる兄ちゃんは格好良いのだ。
けれどおとうさんはそんな兄ちゃんを『ぼんくら』と言って責める。
『お前達は、ああは成るなよ』とショボ兄ちゃんと僕に言う。
その時の汚いものを見るようなショボ兄ちゃんの顔や、何だか泣きたくなるような気持ちは苦手で、だから僕はそう言われると逃げ出したくなる。
その日。
ドクオ兄ちゃん達が学校を占拠して、しこたま絞られて帰ってきた日の晩ご飯は、カレーだった。
( ФωФ)『お前達はああは成るなよ。きちんと勉強して、きちんとした大人になりなさい』
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/24(金) 14:46:36.31 ID:fel6q8yh0
兄ちゃんがご飯を食べ終わって部屋に戻り、お母さんが台所で片づけ始めた後、ダイニングに残った僕とショボ兄ちゃんにお父さんはそう言った。
ショボ兄ちゃんは、『またか』とでも言うように垂れた眉を盛大にしかめて、うつむいたままからお父さんの事を睨んでいた。
( ФωФ)『あんなぼんくらになられちゃ、困るんだ。俺の、あいつの所為でお前達までぼんくらになったら、俺は母さんに顔が立たないよ』
( ^ω^)『ぼんくら……?』
聞き慣れない言葉に僕が首を傾げていると、お父さんは胸の奥の奥から振り絞ったようなため息を吐いて、ダイニングを出て行ってしまう。
残され、まだ首を傾げる僕にショボ兄ちゃんはちょっと笑い、こう耳打ちした。
(´・ω・`)『……ぼんくらって言うのは、褒め言葉だよ。格好良い奴って意味だ』
( ^ω^)『お?』
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/24(金) 14:49:23.82 ID:fel6q8yh0
本当はそれが褒め言葉じゃないのくらい、僕にだってわかる。
けれど、僕はそのショボ兄ちゃんの言葉に納得することにした。
僕らのドクオ兄ちゃんは最高の『ぼんくら』なんだ。
最高に格好良いんだ。
そういうことにして、僕とショボ兄ちゃんは笑った。
( ^ω^)『おっ! 兄ちゃん、格好良いお!』
(´・ω・`)『な』
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/24(金) 14:53:04.50 ID:fel6q8yh0
( ^ω^)「ドクオ、兄ちゃん?」
だけど
('A`;)「それって大変な事だろ? 知らせなきゃ。機械が反乱を起こすなんて、」
それは違うだろう。
('A`;)「大人に知らせて、それで、それで」
(´・ω・`)「大人が、そんなの信じるかよ」
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/24(金) 14:57:24.52 ID:fel6q8yh0
ショボ兄ちゃんがその言葉を遮った。
びくっとドクオ兄ちゃんの肩がはねあがる。ショボ兄ちゃんがドクオ兄ちゃんに話しかけたのは、久しぶりだった。
軒先にとまっているらしい蝉が喧しく鳴きだす。
(´・ω・`)「大人は信用なんないって言ったのはあんただろ。そんなの、ぼくだって信じれないのに、大人が信じるワケねぇよ」
吐き捨てるみたいな言葉に、ドクオ兄ちゃんがうつむいた。
なんだよ、おれがまともな事言ってんのに。そんなつぶやきが蝉の声に混じって聞こえた。
畳に置かれたビコーズをひったくるみたいにして持ち上げ、覗き込んで、にらみ付ける。
(´・ω・`)「おい、なぁ、それって本当なんだろ? 手伝って欲しいんだろ?」
『依頼する』
(´・ω・`)「よし、信じる」
兄ちゃんがそうやって言ったのは、もしかしたらドクオ兄ちゃんのあてつけかもしれなかった。
そうしてじろり、と僕に目をやる。垂れた眉のしたの目は、『お前は?』と問いかけていた。
僕は、うなづく。
だってそっちの方が、ずっと楽しそうだから。
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/24(金) 15:01:28.90 ID:fel6q8yh0
(´・ω・`)「ホライゾン。行くぞ、作戦会議だ」
( ^ω^)「おっお!」
そんな僕を見て満足げに息を吐いたショボ兄ちゃんは、僕の手を引いて離れに足を向けた。
後ろを振り向いて、ドクオ兄ちゃんを伺う。北座の畳の上に立ちすくんだ兄ちゃんは、うつむいていた。
本当に、来ないのだろうか。
気になって立ち止まったけれど、ショボ兄ちゃんは構いもせずに僕の手を引く。
子屋に繋がる戸を開けて、
( A ;)「……待て、お前等」
ドクオ兄ちゃんが呼び止めた。
(´・ω・`)「何だよ」
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/24(金) 15:04:36.59 ID:fel6q8yh0
b('∀`)dそ「引率者はいらんかね!」
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/24(金) 15:07:40.95 ID:fel6q8yh0
(´・ω・`)(; ^ω^)「「……」」
b('∀`;)d「……」
+゚ ピカッ
( ∵z〜
びしり、と両手の親指を突き立てたドクオ兄ちゃんは、それから情けなく笑って肩を下ろす。
ぴこっと僕の手の中に戻ってきたビコーズが、一つ電子音をあげた。
それに負けないくらい大きな蝉時雨が開け放した戸越しに聞こえる。
( ∀ ;)「そんな楽しそうな事すんのに、俺を仲間外れにすんなよ……」
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/24(金) 15:11:33.09 ID:fel6q8yh0
ショボン兄ちゃんはぷいとそっぽを向いて、「で」と言った。
ドクオ兄ちゃんからは見えないだろうけれど、その顔はとても嬉しそうに笑っている。
やっぱり、僕よりも誰よりもショボ兄ちゃんはドクオ兄ちゃんの事が好きなのだ。
(´・ω・`)「何をすれば良いんだよ、ぼくらは」
まだ耳に引っかかっていたヘッドホンから、ざらざらした雑音が聞こえて、それは蝉の声にちょっとにていた。
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/24(金) 15:12:56.64 ID:fel6q8yh0
第二話
おわり
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