('A`)ドクオが騎士になったようです

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/12(日) 19:38:12.27 ID:AzEtj/og0



【第二話 〜勲章〜】



65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/12(日) 19:39:26.47 ID:AzEtj/og0

('A`)「……」

重たい体を起こし、磯臭い布団を跳ね除けた。
上のベッドではまだプギャーの寝息が聞こえる。
カーテンを開き、窓を開けた。
部屋のよどんだ空気と入れ替わりに、外の冷たい空気が流れ込んでくる。

ふと、部屋の端に目をやった。
昨日はなかった大きな箱が、さりげなく置かれている。

( ^Д^)「寒ぃよ…」

プギャーがベッドの上からのっそりと顔を出した。
ドクオを見、そして部屋の隅の箱を見る。

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/12(日) 19:41:35.64 ID:AzEtj/og0

( ^Д^)「ああ…それな、お前の鎧と騎士剣だってよ」

寝ぼけ顔で、プギャーが上のベッドから降りてきた。

('A`)「へぇ…」

箱を開く。
鉛色の鎧が顔を出した。

( ^Д^)「ちょっと着てみたらどうだ?
     どうせ勲章授与で着なきゃいけないんだしな」

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/12(日) 19:43:55.87 ID:AzEtj/og0

下着をつけ、鎧を着る。
具足を履いて、ガントレットをつけた。
鉄の冷たさが全身に染み渡る。

( ^Д^)「おう、様になってるじゃねーか」

('A`)「……」

想像していたより、鎧はずっと軽かった。

鞘から剣を抜いてみる。
薄い青色の刀身、刃は鋭く研ぎ澄まされていた。
これが、騎士の剣か。

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/12(日) 19:46:40.94 ID:AzEtj/og0

( ^Д^)「うん、いい感じだと思うぞ。」

(*^Д^)「いやぁ、懐かしいなぁ…。
     なんか新人の面倒見るって楽しいなぁ!」

満面の笑みを浮かべながら、軽くガッツポーズをするプギャー。
俺は楽しくないけどな、と言いたくなる口を無理やり苦笑いの形にした。

( ^Д^)「授与式、もうすぐだな。
     会場は屋外の練武場だけど、案内してやろうか?」

('A`)「…自分で、行きます…」

(;^Д^)「ああ、そう…」

残念そうな顔をしているプギャーを横目に、ドクオは部屋を後にした。

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/12(日) 19:49:01.07 ID:AzEtj/og0

練武場には既にたくさんの新成員たちが集っている。
皆一様に笑顔で、騎士になる喜びをかみしめているようだった。

「あれ、お前いたっけ?」と絡まれるのを防ぐため、人混みから少し離れた所にあったベンチに座った。

( ・∀・)「よぅ」

(;'A`)「うひゃっ!?」

我ながら素っ頓狂な声を上げてしまった。
慌てて振り返ると、ニヤニヤしながらモララーが立っていた。

( ・∀・)「そんなに驚かれると傷つくからな。
     ていうか結構大きい声も出るんだな」

(;'A`)「よ、余計なお世話だ…」

( ・∀・)「ま、そう言うなって。
     隣、座らせてもらうからな」

返答を聞かずに、モララーはドクオの隣にドカッと座った。
赤い鎧が、日光に照らされて淡い光を帯びている。

と、誰かが走りよってきた。

76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/12(日) 19:52:13.56 ID:AzEtj/og0

(*><)「あ、あのぅ…モララー、団長ですよね」

まだ、あどけなさの残る子供のような青年。
小柄な体に、どことなく鎧が不釣合いに見えた。

( ・∀・)「そうだけど?」

(*><)「わ、私はビロード=アメレールっていいます!
     モララー団長に憧れてて、騎士になろうと思ったんです!
     よ、よろしくお願いしますです!」

それだけ言い切り、ビロードは大きく一礼をすると真っ赤な顔をして走り去っていった。
こんな男に、憧れか。
バカな奴もいたものだ。

78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/12(日) 19:54:46.89 ID:AzEtj/og0

( ・∀・)「照れちゃうね、本当に。
     最近、魔法騎士の希望者も減ってきてるから有難いけどな」

('A`)「魔法騎士…って?」

(;・∀・)「……いくら優遇されて来たからって、それは無いんでないの?
     騎士ってのは各団ごとに役割があるんだよ。
     お前、騎士になる上での一般常識だぞ?」

('A`)「へぇ……」

(;・∀・)「へぇ、ってお前なぁ…」

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/12(日) 19:57:08.56 ID:AzEtj/og0

( ・∀・)「しょうがねーな。
     このモララー様が説明してやるよ」

('A`)「いや、別に聞きたくな( ・∀・)「黙って聞け」

溜息をついて、うつむく。
この男には何を言っても無駄、か。
騎士になる上での一般常識なら、知っていても何の価値も無い。
別に、騎士になりたくてなったわけでもないのだから。

( ・∀・)「まず騎士団は5つ、ある」

指を五本、ずいとドクオの目の前に突き出した。

83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/12(日) 19:59:42.38 ID:AzEtj/og0

( ・∀・)「一つは白い鎧の『聖騎士団』
     王室の警護とか、お偉い方が遠征するときの警護とかが仕事だな。
     団長はモナー殿だ、優しい人だぞ」

('A`)「はぁ……」

返事だけ、しておいた。
話を聞く価値など、無い。

( ・∀・)「それと、翡翠色の鎧の『竜騎士団』
     竜騎士っていっても、本当に竜に乗れる奴は少ないぞ。
     主に城下町の見回りが仕事だ。
     団長はギコ殿、厳ついんだよな…個人的には苦手だ」

84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/12(日) 20:02:22.89 ID:AzEtj/og0

( ・∀・)「そんで…あ、蒼い鎧の『癒術騎士団』
     回復魔法が使える・・・ってそれしか使えないんだけどな。
     城下の病院と、外壁の外の警備担当だな。
     団長はイヨゥさんだ」

誰も聞いていないのに、よく話す男だ。

( ・∀・)「んで、赤い鎧の『魔法騎士団』
     宮廷魔道士と連携して魔法の研究とか、地方の警備とかが仕事だな。
     団長は、このモララー様だ」

( ・∀・)「最後に、黒い鎧の『暗黒騎士団』だ。
     仕事の内容は…民間の戦士ギルドと提携して、魔物とか賊の征伐だな。
     団長はジョルジュ殿、ちなみにお前の親父さんもこの暗黒騎士だったらしいぞ」

あんな男の話など、聞きたくないのだが。
また溜息を吐き出す。

溜息を吐くと幸せが逃げる、というが本当なのだろうか。
まぁ本当だとしても、関係ないが。

( ・∀・)「さっきから、溜息多いな」

誰のせいだと思ってるんだ?

86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/12(日) 20:04:10.90 ID:AzEtj/og0

('A`)「ていうか、なんでいるんだ…ですか」

(;・∀・)「敬語使ったと思ったら結局失礼なこと聞くんだな…。
     各騎士団長は授与式に出席しなきゃいけねぇんだよ、めんどくせーが」

('A`)「ふーん…」

適当に返事を返し、空を眺める。
その後もモララーが何か言っていたが、耳に入らなかった。

暗黒騎士…か。

( ・∀・)「…と、もうそろそろ始まる、か。
     お前も整列しといたほうがいいぞ」

89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/12(日) 20:07:58.69 ID:AzEtj/og0

そう言いながら、モララーは練武場の中心を指差した。
先ほどまで騒がしかった新成員たちが、たどたどしい動きで整列を始めていた。

( ・∀・)「俺ももう行くわ、そんじゃーな」

そういうと、モララーはまたニヤニヤと笑いながら去っていった。
やっと五月蝿いのが消えた。

ドクオものろのろと立ち上がり、人混みの中へ入っていく。

ふと、欠伸が漏れた。

92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/12(日) 20:11:51.66 ID:AzEtj/og0

練武場の中心に設けられた台の前に、新成員たちが整然と並んでいた。
適当に列の後ろにくっつく。

と、前の男がドクオの足を踏んだ。
チクリとした痛みが爪先に走る。
舌打ちして、歯を軽く食いしばり痛みを堪えた。

(;><)「あ、ごめんなさいです」

振り返って、ペコリと頭を下げられる。
上がった顔を見ると先ほどの青年だった。
ドクオの顔を見て、ビロードはパッと顔を明るくしている。

また、面倒な奴に捕まってしまったようだ。

95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/12(日) 20:14:53.81 ID:AzEtj/og0

(*><)「さっき、モララー団長と一緒にいた人ですよね」

('A`)「あぁ…まぁ…」

だからなんだ、と言ってやりたくなった。
が、ビロードの顔を見ると言葉が出てこなくなってしまった。

(*><)「なんて名前なんですか?」

('A`)「…ドクオ=ジルベルスタイン」

(*><)「あ、あのジルベルスタイン将軍の息子さんですか!
     お会いできるなんて光栄なんです!」

96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/12(日) 20:16:54.51 ID:AzEtj/og0

また、その反応か。
差し出された握手に応えながらそう思った。

ふと、顔を上げると壇上に白銀色の鎧をつけた男が立っていた。
周りには黒、白、紅、青、翠の色の鎧を着た男たち。
ドクオが見ていることに気づいたのか、モララーがひらひらとこちらに手を振った。

( ><)「あ、そろそろ始まるみたいです!」

('A`)「ああ…」

いよいよ騎士、か。

(´・ω・`)「それではこれから勲章授与式を始める」

男が壇上で叫んだ。
先ほどのモララーの話どおりなら、聖騎士団の一員なのだろうか。
空気が張り詰めるのが感じられた。

(´・ω・`)「申し送れた、私はヴィップ帝国騎士団将軍のショボン=ラグレーンだ」

集団がどよめいた。

98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/12(日) 20:18:57.16 ID:AzEtj/og0

(;><)「ショボン将軍って…ヴィップ帝国軍部の総司令官がなんでこんな所に…?」

周りからもざわめきが聞こえた。
「異例だ」とか「なんで?」など。

どうだっていいだろうが、そんなこと。
偉い立場になると一挙一動が注目されるのか。
大変ですね、と目を細めながら思った。

(#・□・)「騒がしいぞ、静かにしろ!」

列の端にいた兵士が大声で怒鳴った。
途端に水を打ったように静かになった。
早くも、従順なものだ。

101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/12(日) 20:21:52.85 ID:AzEtj/og0

(´・ω・`)「すまんな、改めて、授与式を始めようか」

穏やかな口調でショボンは言った。
左隣にいた白い鎧をつけた体格のよい男が前に進み出た。

( ´∀`)「受験番号の若い者から呼名していきます。
      呼ばれた者は壇上に上がってきてください」

先ほどのモララーの話からするとモナー団長、だろうか。

( ´∀`)「それでは・・・受験番号001番、エビシー=デーフジー!」

やっと、授与式が始まった。
とはいっても、ドクオが呼ばれるのは当分先になりそうだが。



>>99
間違った
ビロード、に脳内変換しておいてくれ

102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/12(日) 20:23:38.73 ID:AzEtj/og0

(´・ω・`)「ビロード=アメレール殿、貴君をヴィップ帝国騎士団員と認め、勲章を授ける」

ショボンが勲章を差し出す。
壇上で、ビロードは恭しく勲章を受け取る。

(*><)「あ、ありがとうございますです!」

一礼し、壇上から降りてくるビロード。
すでに新成員のほとんどが勲章を受け取った。
まだ、ドクオの名前は呼ばれていない。

鎧の重みが相まってだんだんと足が痺れてきた。
満面の笑みでこちらに歩いてくるビロードに軽く笑い返しておいた。

104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/12(日) 20:26:59.72 ID:AzEtj/og0

( ´∀`)「次、受験番号470番、クー=ラリュエット!」

川 ゚ -゚)「はい」

進み出たのは、女だった。
長い黒髪を一つに束ね、眼光はしっかりと前を見据えている。

('A`)「女、か」

(;><)「女っていっても、甘く見ないほうがいいです。
     あの人は試験のときに全受験者の中で最速で試験を突破した人なんです」

('A`)「へぇ…見かけによらないな」

108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/12(日) 20:30:05.03 ID:AzEtj/og0
だが、所詮女だ。
どんなに強かろうと、最終的には男に勝つことはできない。

壇上から降りてくるクーは凛とした表情で虚空を見つめていた。

また一人、また一人と名前と受験番号を呼ばれる。
皆一様に緊張した面持ちで壇上に上がり、勲章を受け取る。

( ><)「あれ、そういえばドクオ君って試験受けてましたですか?」

('A`)「あぁ…俺は…」

そこまで言いかけて、モナーの声が響いた。

( ´∀`)「最後、受験番号1001番、ドクオ=ジルベルスタイン!」

話を中断して、小走り気味で前に走り出る。
「試験免除です」と得意気に言い切ってやるのも小気味よいが。

壇上に上がる。
新生員たちの視線が背中に突き刺さる。

ショボンの前に立ち、目を見つめた。
薄茶色い瞳に、ドクオの顔が映っている。

(´・ω・`)「ドクオ=ジルベルスタイン殿、貴君をヴィップ帝国騎士団員と認め、勲章を授ける」

何故か、少し息苦しさを感じた。
威圧感、だ。

110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/12(日) 20:31:29.12 ID:AzEtj/og0

心の中で舌打ちして視線を逸らす。
差し出された勲章を受け取り、軽く頭を下げる。

早くこの場から立ち去りたかった。

(´・ω・`)「以上、376名をヴィップ帝国騎士団への入団を認めよう」

背中に、ショボンの声が当たる。
握り締めた手を開くと、ジットリと汗ばんでいた。
気圧されていた、というわけか。
面白くない。

( ><)「ドクオくん、試験免除だったんですね!
     流石です!」

元の位置に戻ると、笑顔のビロードに迎えられた。

('A`)「? …なんで知ってるんだ?」

( ><)「受験番号四桁は試験免除の印なんです!」

なるほどね、と頷く。
自分で伝えてやるのも面白いかと思ったが。
まぁこれはこれでよしとしようか。

112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/12(日) 20:32:46.48 ID:AzEtj/og0

(´・ω・`)「今年は骨のある精鋭が大勢いると聞いた、期待している。
     最近西方の治安が不安定なのでな」

( ><)「西方の治安が不安定ってのは、最近西方の領地に魔物がやたら増えてきてるからなんです」

小声で、ビロードが教えてくれた。

へー、と気の無い返事を返しておいた。
どこの治安が悪かろうと、所詮自分には関係の無い話だ。

113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/12(日) 20:33:42.86 ID:AzEtj/og0

(´・ω・`)「数日後には各騎士団への配属が決まるが…。
     各々、団の違いなど気にせずに助け合ってほしいと思う」

( ><)「団ごとに仲の悪い団があるんです…。
     特に有名なのが聖騎士団と暗黒騎士団なんですよ」

また、小声でビロードが言う。
今度は、無言で返事を返しておいた。
どちらも、特に希望はしていないから問題は無いんだが。
第一、ビロードも魔法騎士を希望しているのだから特に気にすることも無いはずだが。

(;><)「同じ騎士仲間としては悲しい話です…」

仲間、とは言ったって所詮他人だろうが。

116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/12(日) 20:36:48.51 ID:AzEtj/og0

(´・ω・`)「それでは、いつものをやるか」

徐に、ショボンが鞘から剣を抜いた。
空に向かって、剣を掲げる。
周りの騎士団長、兵士たちも剣を掲げる。
新成員たちは、何が始まるのかとざわめいた。

(´・ω・`)「私の真似をしてくれればいい」

ゆっくりと、誰かが同じように。
恐る恐る、剣で空を突く。
次々に、刃が空へと上がっていく。

ドクオもビロードに促されゆっくりと剣を上げた。

やがて、練武場にいる騎士たち全員が剣を掲げた。

ショボンが、叫んだ。

(´・ω・`)「我等、ヴィップ帝国騎士団! 結束は不滅だ!」

団長、兵士たちが大声で咆哮した。
続いて、新成員たちの歓声。
周りの大声に顔をしかめながら、溜息を吐き出した。

日差しが眩しい。
いつの間にか、曇天の空は騎士剣の刃の色のような青空に変わっていた。

117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/12(日) 20:37:39.07 ID:AzEtj/og0



〜第二話 END〜




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