('A`)ドクオが騎士になったようです

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 18:58:24.68 ID:5xpfqlPI0



【〜第三話 強制〜】



6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 18:59:49.05 ID:5xpfqlPI0

('A`)「……」

無言で、剣を振るう。
訓練といったって大したことは無い。

騎士とはこの程度なのか、とまた思った。

手を止め、空に向かって伸びをする。

今日で、騎士になってから三日目。
毎日訓練ばかりだが。
コキコキと首の骨を鳴らすと、いっしょに鎧も音を立てた。

( `o´)「よし、これまで! 集合!」

周りの連中も剣を振るのをやめた。
剣を鞘に収め、教官の下へと向かう。

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 19:00:53.00 ID:5xpfqlPI0

( `o´)「今日の訓練は以上…だが、連絡事項だ」

集団がざわつく。
なんだか知らないが、とにかく早くしてほしい。

( `o´)「騎士団の編成の話だが…」

なるほどね、と頷くドクオ。
そろそろかとは思ってはいたが…。

( `o´)「後で、各々の部屋に書類を回す。
     希望する団を書いて明日、提出すること。
     何か質問は?」

静寂。

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 19:02:30.24 ID:5xpfqlPI0

と、後ろが少しざわつく。
振り返ると、集団の中からニュッと腕が上がっていた。

誰だか知らないが、余計なことをするな。

(;><)「あのぅ…」

お前か。
初対面からお節介な奴だとは思ってはいたが。

( `o´)「なんだ?」

(;><)「その…団の希望っていうのは、希望通りにならないこともあるんですか?」

また、ざわめき。
俺に希望する団なんて無いし、どうでもいい。
付け加えると、モララーのいる魔法騎士団と暗黒騎士団とやら以外なら。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 19:06:31.42 ID:5xpfqlPI0

(#`o´)「煩いぞ!」

教官の一喝で、一瞬で集団は静まった。

風が吹いた。
身を震わせ、軽く舌打ちする。
なんでもいいから早くしてくれ。

( `o´)「希望通りにならないこともあるが、稀だ。
     安心してもらっていい」

集団の空気が緩むのを感じた。

( `o´)「それでは、解散」

希望の欄を白紙で出したらどうなるんだろうな、と思ってみた。
それも面白そうだ、と鼻で笑う。

ふと、顔を上げると太陽が地平線に沈もうとしていた。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 19:08:26.51 ID:5xpfqlPI0

******************************

部屋に入ると、プギャーが本を読みながら椅子に座っていた。

( ^Д^)「おう、お疲れ」

本を置き、こちらに視線を向けて笑顔で言う。
悪い奴ではないのだろうが、やはりこの男は好きになれそうに無い。

('A`)「…どうも」

軽く頭を下げ、鎧を脱ぐ。
ガントレットと具足を外し、箱の上に置いておいた。

( ^Д^)「どうよ、訓練は?」

('A`)「…別に」

(;^Д^)「…冷てー」

プギャーの発言を無視し、騎士剣を壁に立てかける。
腕を組んで、伸びをする。
背骨がポキポキと鳴るのが少し心地よい。

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 19:11:06.12 ID:5xpfqlPI0

と、ドアがトントンと鳴った。
誰かがノックをしている。

( ^Д^)「んあ? こんな時間に誰だよ」

プギャーがドアの取っ手に手をかける。

( ・∀・)「おう、邪魔するからな」

ドアが開く。
ミシッ、という鈍い音とともにプギャーが扉の裏に消える。
モララーは一瞬横目で扉の裏を確認したが、何事も無かったかのような顔をしてドクオに向かって歩いてきた。

( ・∀・)「遊びに来たからな!」

満面の笑みで、モララーが言った。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 19:14:15.34 ID:5xpfqlPI0

('A`)「…本当の用事は?」

( ・∀・)「手厳しいねぇ…ま、勧誘だ」

('A`)「…はぁ?」

頭の上に疑問符がポカン、と出たような気がした。
と、プギャーがドアの裏から這い蹲りながら出てきた。

(;^Д^)「いてぇ…団長、ちゃんと確認して開けてくださいよ!」

顔を抑えながら、プギャーが言う。

( ・∀・)「直ぐにノックに応えないお前が悪いんだからな!」

くだらない寸劇を見ている必要は、無い。
舌打ちして、モララーを睨みつけた。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 19:19:23.27 ID:5xpfqlPI0

( ・∀・)「そう怒るなよ、騎士は落ち着きが必要だからな」

ヘラヘラと笑いながら、言い放つ。

落ち着きの無い奴が何を言ってるんだ。
口から流れ出そうになった言葉を飲み込み、溜息を吐き出す。
モララーはニヤニヤと笑いながら、一枚の紙を差し出してきた。

( ・∀・)「話は聞いたと思うが…騎士団の配属を決める書類だ。
     単刀直入に言おう、ドクオ。
     俺は魔法騎士団にお前を入団させに来たんだ」

そういう事か、と心の中で頷く。
モララーから書類を受け取り、答えを返す。
考える必要など、無い。

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 19:21:54.95 ID:5xpfqlPI0

('A`)「…え( ^Д^)「すげぇじゃねぇか、ドクオ!」

プギャーを睨みつけた。
が、プギャーはドクオの視線には気づかずに、自分のことのように喜んでいる。

( ^Д^)「団長直々の入団要請なんて…試験免除といい、羨ましいぞコイツぅ!」

プギャーに軽く肩を小突かれた。
本人に聞こえるように大きく舌打ちし、モララーから受け取った書類を見つめる。

( ・∀・)「…嫌そうな顔をしてんな、ドクオ」

明るい声ではあったが、若干の不快さが溶け込んでいるような気がした。
考えを見透かされて、いい気分はしない。
奥歯を噛み締めて、モララーの顔を見つめる。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 19:24:53.73 ID:5xpfqlPI0

( ・∀・)「ま、予想はしてたからな。
     別に、いい」

ニコリと笑顔を向けられた。
唾を飲み込み、軽く頷く。
何故か安心している自分がいるのに気がつき、少し嫌な気分になった。

( ^Д^)「ば…馬鹿かドクオ!
     団長直々の勧誘なんだぞ!」

ドクオを見、驚きの声を上げるプギャー。
嫌なものは嫌なのだ、しょうがないだろうが。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 19:28:30.27 ID:5xpfqlPI0

( ・∀・)「少し黙れ、プギャー」

静かな声で、言い放った。
プギャーはまだ何か言いたげな顔で視線を落とし、「はい」と小さな声で言った。

部屋の中の空気が一気に冷えた、気がする。
体が震えるのを止めようと、全身に力を入れる。

( ・∀・)「ま、これはついでみたいなもんだから別にいい。
     さて、本題に入るぞ」

本題?

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 19:29:51.45 ID:5xpfqlPI0

( ・∀・)「ドクオ、お前をジョルジュ殿が自分の団に欲しがっている」

ジョルジュ。
数日前にモララーから聞いた話と直ぐに結びついた。
暗黒騎士団の団長、ジョルジュか。

('A`)「……」

( ・∀・)「俺のような『勧誘』とは違う。
     団長自らが『欲しい』と言ってるんだ。
     意味が分かるか?」

( ^Д^)「……」

部屋の中に沈黙が流れる。
団長が自ら名指しで『欲しい』と言っている。
恐らく、ドクオが他の団を希望したとしても強制的に暗黒騎士団に入団させられるだろう。

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 19:32:22.29 ID:5xpfqlPI0

( ・∀・)「選択権は無い、ってことだ。
     正直、俺はお前を本当に魔法騎士団に欲しかったんだけどな」

モララーが舌打ちしながら、視線をそらした。
きっと、モララーは本当のことを言っている、そう思った。

( ・∀・)「別にあの人が悪い、って言ってるわけじゃねーんだ。
     ただあそこの団は城内、城下での評判があまりよくねーからな…」

それは、知っている。
ビロードが教えてくれたり、他の仲間から嫌というほど聞いた。

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 19:34:19.64 ID:5xpfqlPI0

『暗黒騎士団だけは止めておけ』と。
理由は多々あったが、『死人が多い』というのが一番の理由だろう。

魔物や賊の討伐をする仕事柄、殉職するというのは分かる。
が、それよりも黒い噂を聞いた。

『ジョルジュの機嫌を損ねると、消される』

暗殺されるのか、遠征先で背後から…かどうかは分からないが。
とにかく、騎士団の中でも特に悪評の多い団というのは知っていた。

( ・∀・)「とりあえず、お前はもう暗黒騎士団に入団がほぼ決定しているってことだ」

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 19:36:12.10 ID:5xpfqlPI0

('A`)「……」

正直、嫌だった。
悪評が高い、というのもあった。
それよりも、自分の父が暗黒騎士だったから。

( ・∀・)「俺はそれを伝えに来ただけだからな。
     …と、そろそろ飯の時間だな、食堂行くか」

モララーが部屋を後にした。
続いて無言でプギャーが部屋を出て行った。

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 19:37:21.78 ID:5xpfqlPI0

('A`)「…糞」

一人部屋に残されたドクオ。

拳を握り締め、書類を潰した。
そのまま、壁を殴りつける。
鈍い痛みと、壁の冷たさが腕の先を包んだ。

外は、もう暗い。
空は勲章授与式のときに見た、暗黒騎士団長の鎧のような色だった。

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 19:38:06.05 ID:5xpfqlPI0



〜第三話 END〜




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