(´・ω・`)は偽りの香りを見抜くようです

420 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 17:12:05 ID:eSssrWHUO
 


10章「偽りを見抜く」


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421 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 17:23:05 ID:eSssrWHUO
 


警部の推理は大凡が正しかった。
確かに「死体を入れ替えた」と考えれば、犯人は、でぃさんしか考えられなかった。
告発され、どうすることもできないと察したのか
でぃさんは、姿も、口調も、なにもかもが豹変した。


興奮しきっている。いつ暴れ出すかわからない。
ワカッテマスさんが彼女を抑えようと腕を掴むも、
なんと恐るべき剛力か、あの巨漢のワカッテマスさんが細身の彼女に力負けしている。
その間警部は、ただ、まいったとばかり言っていた。


(゚、゚;トソン「警部、なにか証拠はないんですか!?」

(;´・_ゝ・`)「警部さん、はやくしてくれ! オフ会に行かずして死にたくないんだ!」

(゚、゚;トソン「黙れ!」



数少ない常識人である盛岡さんも、やはり警部に事件解決を願った。
いや、常識を持ち併せていようが、腕を振り回す馬鹿だろうが、誰しもが、最後に行き着く考えは一緒だろう。
「犯人をはやく捕まえてほしい」と。


それに応えるよう、警部が更なる追究を

(;´・ω・`)「くそっ……早かった、のか…?」


しなかった。
オーバーなリアクションはしないも、なにやらぶつぶつ呟いている。
警部はでぃさんに次なる発言をせず、顎に手を当て、ただ唸っていた。

オワタさんも事の重大さを今更知り、大慌てして手を振り回す。
あ、また壁に打った。


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422 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 17:27:27 ID:eSssrWHUO
 

(#メメ゚ー゚)「あっはははははハハハハハハ!
      またんきを殺した時の話、してあげる!」

(#メメ゚ー゚)「そもそも、またんきは私の知り合いだ!
      最初は誰かわからなかったんだけど、またんきだとわかり、仕事中なのでお話は後で、と断ったら……」

(#メメ;ー;)「いきなり銃を抜きやがった!
      それどころか、安全装置もはずしてあった!」

(#メメ;ー;)「昔からそうだ! なにかに付けて私の存在を脅かす! あいつは私を殺す気だったんだ!」

(#メメ゚ー゚)「だから、即行でそいつを奪って、殺したの。
      パァン、だって、いい音だったぁ!」

(#メメ゚ー゚)「死体を片すのにワゴンの中を使おうとしたんだけど、既になかに“モララー”がいたんだ!」

(#メメ゚ー゚)「驚いたけど、四の五の言ってる暇はない、
      即行で入れ替えた! お茶の異変に気づいて、水もかけた!」

(#メメ゚ー゚)「ワゴンの中に偶然死体があったんだ、だから私はなにもしてない!」


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423 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 17:35:46 ID:eSssrWHUO
 


でぃさんは、警部を挑発するような、嘗めきった口振りでそう言った。
またんき氏を殺害したのは認めるも、もう片方は知らない、そう証言した。

嘘臭い証言だが、今の私に反論できるほどの能力はない。
でも、どこか、信じられなかった。



( <●><●>)「警部、彼女は私が引き受けます。
         はやく……何か手を……」

(´・ω・`)「………」



ワカッテマスさんが、警部に耳打ちをした。
一方その警部は、腕組みをして其処いらをうろちょろしていた。
なにやってんだ、私がそう声をかけようとする頃には、ワカッテマスさんはでぃさんと対峙していた。
目を見る限りは、やる気だ、この2人。


( <●><●>)「今の証言に、嘘偽りはないですね?」

(#メメ゚ー゚)「ないね! 私はまたんきしか殺してない!」

( <●><●>)「………」

(<●><●> )「……見せてあげますよ、“ブラックジャック”が最強である証拠を」

(゚、゚トソン「…え?」


ワカッテマスさんは、私の方を見て、囁いた。
いや、私の方ではない。視線は虚ろで、一点に定まってなかった。


( <●><●>)「椎名でぃ!」

(#メメ゚ー゚)「あんだよ!」

424 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 17:40:27 ID:eSssrWHUO
 


( <●><●>)「あなたは今、当初ワゴンの中にいた死体の事を、はっきりと“モララー”と呼びましたね?」

(#メメ゚ー゚)「それがどうし……」

( <●><●>)「それは、彼の名前ですか?」

(#;メ゚ー゚)「!」



( <●><●>)「確かに、我々は彼に『モラル』という仮名を付けていました」

( <●><●>)「しかし『モララー』ではない」

( <●><●>)「あなた、彼と面識があるんですね?」

(#;メ゚ー゚)「……ない」

( <●><●>)「ここにはもうひとり、刑事がいます。
         彼に頼んで、オオカミ鉄道の方に問い合わせましょうか?」

( <●><●>)「『この列車に、モララーという人が、一号車に乗ってないか』……とか」

(#;メ゚ -゚)「う……!」

(#メメ;ー;)「がァ!」


でぃさんは、伸びきった爪をたて、自分の左腕を引っ掻いた。
手加減など見られず、力いっぱい引っ掻いたように見えた。
それを見て私は、この人は、自身のミスやストレスを自傷することで解決する人物なのだとわかった。


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425 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 17:47:04 ID:eSssrWHUO
 

( <●><●>)「……まだ、観念しません?」

(#メメ゚ー゚)「またんきに聞いたことあるの。
     『俺にそっくりの男がいる。名はモララー』って!」

( <●><●>)「……次です」

(#;メ゚ -゚)「……次?」


( <●><●>)「最初、取調の際から一貫して、あなたはA−5にあった死体をまたんきだと言ってましたね?」

(゚、゚トソン「でも……実際そうじゃないの?」

( <●><●>)「あくまで、身元の特定の根拠は彼女の証言のみです」

(#メメ゚ -゚)「!」

( <●><●>)「ほんとうは、A−5の死体がモララーだったんです。
         それを、彼女は確かに『またんき』と断定した」

(゚、゚トソン「それがなにか?」

( <●><●>)「まだ、わかりませんか?」


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427 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 17:55:46 ID:eSssrWHUO
 


( <●><●>)「もしほんとうに、彼女がモララー氏の殺害に無関係で、且つ彼ら2人と顔見知りなら」

( <●><●>)「最初から『彼はモララーです』と言うはずなんですよ」

(゚、゚トソン「……あ」

( <●><●>)「まして、我々警察を前に、身元の偽証なんてするはずがない。
         ……たまたま、両者とも身元を特定するものがなかったんですけどね」

( <●><●>)「そんなリスクを踏まえての偽証は……」

(#;メ゚ -゚)「ま、間違えたんです」

( <●><●>)+「……ほう」


ワカッテマスさんは不敵な笑みを浮かべた。
目を光らせ、でぃさんを視界の中心に据えて。


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428 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 18:00:00 ID:eSssrWHUO
 

( <●><●>)「第一、両者の存在を知ってても、だ。
         あなたといいシャキーンさんといい、死人の2人、皆、何度も入れ替わっている関係だ、
         それでも尚、あなたが殺したのがまたんき氏だ、と断定できるのは?」

(#メメ゚ー゚)「さっき言ったでしょ、最初に話してきたんだ向こうから!
      だからこっちがまたんき、その後、当初ワゴンで眠っていた方がモララーってわかったんだ!」

( <●><●>)「尚更おかしい!」

(#;メ゚ー゚) そ


ワカッテマスさんは、いきなり腹の底から大声を出した。
私も、でぃさんも驚き、戦いた。
私は身が竦んだが、でぃさんはそれでも食ってかかる。
とはいっても、ワカッテマスさんも手加減している様子は見られない。



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429 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 18:04:01 ID:eSssrWHUO
 

( <●><●>)「今の話で言うと、事件後、捜査段階ではあなたはモララーとまたんきの見分けがついていた、
         だから捜査段階にて、A−5にはまたんきがいた、なんて言うはずないんですよ!」

( <●><●>)「……ほんとうに、モララー氏の殺害に無関係なら」

彼は、半ばにやにやして言った。
警部なら相手をからかい、バカにするところだろうが
ワカッテマスさんの場合だと、このように優越感に入り浸るようだ。


(#メメ゚ー゚)「……う」

(#メメ;へ;)「あがガガ!」ビリッ


今度は、右腕、二の腕の部分を服の上から噛みちぎった。
なんという顎の力、その部分だけ、肌が見える。そこもやはり傷が見えていた。
だが、尚もそれに臆することなく、ワカッテマスさんは更に攻め立てた。


( <●><●>)「あなたは考えたはずだ、ここでA−5の死体が
         またんきだという事にしておけば、捜査を攪乱でき」

(#メメ;ー;)「違います! 素で間違えたんです!」

( <●><●>)「……次だ」

(#メメ;ー;)「まだあるの!?」


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430 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 18:05:46 ID:eSssrWHUO
 

彼女は泣き声になり、発狂時と同じように顔をかきむしり、ワカッテマスさんの追撃を拒んだ。
まあ、そんな足掻き程度で、あの鬼畜ワカッテマス刑事が手を休める筈がない。


( <●><●>)「ワゴンの中から取り出したんですよね、この遺体は」

(#メメ;ー;)「そうだって!」

( <●><●>)「じゃあ、なんで服に血が付いてない?」

(#メメ;ー;)「………?」

( <●><●>)「もし、殺害当時に止血などせず、すぐにワゴンに放り込んだら、大量にワゴン内部に血が付く」

( <●><●>)「ところが、そのワゴン内部から取り出した死体の衣服は、あまりにきれいだ」

(#メメ;ー;)「……ひぐっ…うッ………!」


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431 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 18:08:33 ID:eSssrWHUO
 

ついに、でぃさんは嗚咽を漏らすようにまでなった。
依然攻撃的な姿勢は解かないも、心は正直だったようだ。


鼻を啜る音、涙が地に墜ちた音、
嗚咽を漏らす際の声、どれもが、彼女の精神状態を表している。


( <●><●>)「入れ替えた際に着替えさせる余裕はない。
         なら、このワゴン内部の血は、いつ付いたのか」

( <●><●>)「言うまでもない、入れ替えた際、あなたが殺した、またんき氏の血だ」

(#メメ;ー;)「それがどうしたのよ!」

( <●><●>)「……問題は、シャキーンさんの証言だ」

(`・ω・´)「え?」


じっと、でぃさんをガン見していたシャキーンさんが、そんな声をあげた。
おそらくは、まさか味方(であるはず)のワカッテマスさんから話を振られるとは、思いもしなかったのだろう。



( <●><●>)「彼の証言を思い出してください」


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432 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 18:10:09 ID:eSssrWHUO
 


 (´・ω・`)『その時、ぱるふぁ……香水の匂いはした?』

 (`・ω・´)『男である私に香水の区別がつくとでも?』

 (´・ω・`)『これは失礼。しかし、なにか香りませんでした?』

 (`・ω・´)『……………。
       香水はわからん。私のまわりには血の匂いが残ってたんだ、嗅ぎ分けることなどできん』

 (´・ω・`)『それはご自分の?』

 (`・ω・´)『そりゃ、交戦して血を拭いたりしたし、まず私からも流血されていたからな。おかしくはないだろう?』




(#メメ゚ー゚)「……?」

(`・ω・´)「確かに、言ったが……」

( <●><●>)「血の香りがしたから、香水など嗅ぎ分けれない、ということですかね?」

(`・ω・´)「まあ……俺の右腕からも血が流れたしな」

(#;メ゚ー゚)


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433 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 18:12:39 ID:eSssrWHUO
 

面目なさそうに、シャキーンさんが頭を下げ、ぼそっと詫びた。
でぃさんは固まっていた。
そして、ワカッテマスさんはちいさく笑った。


( <●><●>)「ばかな。怪我は大袈裟だが、トイレットペーパーで完全に拭き取れる程度の出血で、
         あんな高濃度なパルファンがかき消されるわけがない」

(`・ω・´)「でも……」

( <●><●>)「ワゴン付近、もとい乗務員室付近では、ほかに血が流れたんだ」

( <●><●>)「シャキーンさんのでもなく、モララー氏のでもなく……」

(#メメ;ー;)「や…めて……ょぅ………」

( <●><●>)「……」




(#メメ;ー;)「そこまで言うなら、示してもらおうじゃない!」

(#メメ;ー;)「誰の血!?」

( <●><●>)「…………」



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434 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 18:15:21 ID:eSssrWHUO
 



( <●><●>)「あなただ、椎名でぃ」




(#メメ;ー;)

(;`゚ω゚´) そ

Σ (゚、゚トソン

(;´・_ゝ・`) そ


ワカッテマスさんの衝撃の発言に、このバトルを傍観していた
私、盛岡さん、そしてシャキーンさんが仰天した。
いきなり、でぃさんも血を流した、なんて言われれば、驚くほかなかろう。



だって、彼女は。
どこにも、流血の痕なんて、ない。



(#メメ;ー;)



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435 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 18:19:45 ID:eSssrWHUO
 



(;´゚ω゚`)「っ!」


そのとき、一号車の扉が、凄まじい金属音とともに開かれた。
その音に、車内にいる皆が反応して振り返った。

なかでも、特に警部は飛び跳ねて、すぐさま扉の向こうから来た人物をとっつかまえた。
そこには、ひとりの男が、否




( ><)「不肖ワカンナインデス、ただいま帰還しました!」

(; <●><●>)「9ッ!!」

(;´・ω・`)「おいバカ、どうしてもっと早く来ないんだ!」

( ><)「え、だって…」


すっかり存在を忘れていた、ワカンナインデス刑事が立っていた。
低身長で女顔、柔らかい物腰で刑事など無縁であるかのような見て呉れの彼が、扉の向こうからやってきた。
このワカンナインデス刑事、常に頼りなく、常に役立たずだが、
時にキーマンとなると聞く彼の噂、ここで本当かどうか、是非見てみたい。


(;´・ω・`)「どうだったんだって!」

( ><)「言われた通り、大量の血液反応が発見できました!」


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436 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 18:21:32 ID:eSssrWHUO
 


( <●><●>)「! まさか、警部……」

(゚、゚トソン「刑事に捜査をさせた場所って……」



(´・ω・`)「トイレ前のスペース、トイレ及び、乗務員室内。
      ……この列車の各車両、すべての、だ」

(゚、゚トソン「やっぱり!」

(゚、゚トソン「(多い! 割と捜査の量多い!)」


(#メメ;ー;)「!!」

(; <●><●>)「9、報告しろ!」

(*><)「はい!」



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437 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 18:22:55 ID:eSssrWHUO
 


(#メメ;ー;)「どーして! 捜査禁止って言ったじゃん!」

(´・ω・`)「こいつに常識は通じないんだ」

(゚、゚トソン「(ひどい! 自分で指示しといて扱いひどい!)」


ワカンナインデスさんは、持っていた捜査道具一式を床に置いた。
指紋を検出するアルミ粉にルミノール試薬と書かれたスプレーなど、様々だった。


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438 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 18:25:25 ID:eSssrWHUO
 


( ><)「二−三号車間からは、鑑識課もびっくりしそうなほどの、大量でした!」

(;´・ω・`)「具体的には?」

( ><)「まずトイレ、ドアノブからたらーっと、血が垂れているのを確認」


手帳を見ながら、彼は言った。
そして、同時に、どこかからか取り出した写真も、皆に見えるように掲げ、見せた。
見た感じは全面真っ赤で、ドアノブからその下まで一直線の青白い線、
そして地で溜まっている、青白い水溜まりが見て取れた。



( <●><●>)「カメラ持ってたのか!?」

( ><)「たまたま僕のポッケに入ってたんです」

(#´゚ω゚`)「バッキャロめがァァァァッァア!!」

( ><)「ふぇー?」

(#´゚ω゚`)「あンならそれを早く……」

( <●><●>)「警部、まずは報告です!」


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439 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 18:27:11 ID:eSssrWHUO
 


怒りに震える警部を、ワカッテマスさんが正論を言った上で落ち着かせた。
警部が「あとで覚えてろ」とぼやきつつ、ワカンナインデスさんはおどおどしながら続けた。


( ><)「そして、トイレ前には点々と血の痕が……」

(`・ω・´)「………あの時のだ」


どうやら、シャキーンさんの証言は、どれも正しかったらしい。
確かに扉には血が垂れていて、トイレ前には交戦時に付いたと思われる血の痕が見られた。
そのまま、ワカンナインデスさんは手早く次の写真を見せてくる。


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440 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 18:29:35 ID:eSssrWHUO
 


(´・ω・`)「これは……」

( ><)「トイレです! 床に大量の血が……」

(;` ω・´)「………俺、だ…」


私も一度訪れた、洋式トイレの床、便器に座って目の前には青白い液体の、ちいさな水溜まりがあった。
トイレットペーパーが設置されている金具にも、手の跡と一緒に微かな血が見える。
おそらく、シャキーンさんはここで、アーボンオレンジを使って応急処置をしたのだろう。


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441 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 18:34:06 ID:eSssrWHUO
 

( ><)「次は……これです」

(゚、゚トソン「乗務員室の手前に、血だまり…?」


ワゴンがない以外は、乗車時私が見たまんまの乗務員室の光景が、そこには写ってあった。
車販準備室と兼ねているというだけあり、なにやら冷蔵庫らしきものなどいろいろあった。
その入り口付近に、やはり大量の血があった。


(´・ω・`)「!」

( ><)「これの血の量も、びっくりしたんですが、これの方がヤバいです」




そう言って最後の写真、全面が、やはり真っ赤なそれを提示し、刑事は言った。


( ><)「度肝抜きましたよ、まだあったんですから、乗務員室内に反応が」


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442 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 18:39:09 ID:eSssrWHUO
 


(´・ω・`)「……?」

(゚、゚トソン「! ワゴンがあったところのすぐ横に……」

(`・ω・´)「……血」


もともと、ワゴンは、乗務員室内部、向かって奥の壁から1メートルほど離され、右の壁から30センチほどの場所に置かれていた。
持ち手の部分、そして、ワゴン内部への入り口がその奥の壁と面するような形で、だ。


血はぽつぽつとそこに写っていて、一見するとただの鼻血に見える。
しかし、鼻血にしては、これは少し量が多すぎる。
かといってここで銃殺の事件があったなら、もっと血が多いはず。
コレを見て私がそう考えていると、警部は、声高らかに言った。


(´・ω・`)「やはり!」

(´・ω・`)「この血は、モラル……モララー?氏の殺害時についた血ではない」


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444 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 18:44:09 ID:eSssrWHUO
 

(゚、゚トソン「え……なんで?」

(´・ω・`)「モララー殺害のは、さっきの写真にあった、乗務員室手前の血、これだ」

(#メメ; -;)


そう言って、警部は乗務員室の手前に見える血だまりを指した。


(´・ω・`)「ワゴンの関係上、モララー氏が殺されたのは乗務員室内部で間違いない。
      しかし、銃殺し、その上犯人はご丁寧に止血まで施している以上は……」

最後の写真を指して、警部は眉を顰めた。


(´・ω・`)「こっちの出血の量だと、さすがに釣り合わない。これは、別の事件のものだ」

(゚、゚トソン「別の……!」


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445 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 18:50:35 ID:eSssrWHUO
 


(´・ω・`)「血は、4度に渡って流された」

(´・ω・`)「しかも、全員別人ときた」

( <●><●>)「トイレ前がまたんき氏、トイレ内部がシャキーンさん、
         乗務員室手前にモララー氏、そして乗務員室内のワゴン横にある謎の血……」

( <●><●>)「なんの因果でしょうかね」



(´・ω・`)「……まあ、これで、事件が解決したな」

(; <●><●>)「な…… しかし!」

(´・ω・`)「推理ショーの再開と洒落込もうではないか」



ワカッテマスさんは、先程でぃさんを追いつめ、なんとかモララー氏とでぃさんを結びつけようとしていた。
いいところまではいくも、ワカンナインデスさんの登場で結果は有耶無耶、そのままわからず仕舞いだった。


そのことを言おうとしたがったワカッテマスさんを宥め、持っていた写真をワカンナインデスさんに押しつけた。
そして警部は再び真剣な顔つきになり、すっかり豹変してしまったでぃさんと向き合った。
彼女は、大分回復してるとは言え、また今にでも発狂しそうな雰囲気を醸し出している。


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446 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 18:53:36 ID:eSssrWHUO
 


(´・ω・`)「まず、12分に“1度目”の発砲事件があった」

( <●><●>)「今の写真の時、ですかね」

(´・ω・`)「そう。当然撃たれた側はすぐに止血に取り掛かり、且つ血を拭く」

( <●><●>)「なぜ、当時撃った人は、とどめを刺したりしなかったのですか?」

(´・ω・`)「殺しては致命的な人だからだ。あとで触れるから、続けさせろ」

( <●><●>)「……失礼」


彼は身を退いて、少し頭を下げた。
特に咎める様子もなく、警部は推理ショーを続行した。


(´・ω・`)「撃った人は逃げた。撃たれた人が血を拭き、止血した」

(´・ω・`)「その時乗務員室を訪れたのが、モララーだ」

(#メメ;ー;)「……!」


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447 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 19:01:47 ID:eSssrWHUO
 


( <●><●>)「ではその、発砲した人と被弾者とは…?」

(´・ω・`)「撃った人はともかく……さ。
      撃たれた人は、この流れでわかるだろう」

( <●><●>)「……犯人!」


ちいさく、こもった声でワカッテマスさんはその存在を言った。
一度目の発砲事件の次に、その場にモララー氏が居合わせた以上、残った被害者が彼と対峙することになる。
犯人はモララー氏とまたんき氏の両者を殺害した、と仮定している以上は、これ以上簡単な話はない。

その場に残った被弾者――犯人が、やってきたモララー氏と鉢合わせ。




(´・ω・`)「ここで、ひとつおかしなことが起こる。今し方発砲した人物は、銃を落としていった」

(`・ω・´)「……………」

( <●><●>)「なぜです?」

(´・ω・`)「それ以外には、どんな推理をしても当てはまらないからだ。
      持ち帰ったなら、銃器がない以上モララー殺害は不可能となる。
      しかしそれだと辻褄が合わないからな」


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448 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 19:04:26 ID:eSssrWHUO
 


( <●><●>)「……ふむ。続きをどうぞ」

(´・ω・`)「銃を落としていったのだが、モララーは、それを拾った」



(´・ω・`)「そして、撃とうとした」

( <●><●>)「ちょっと待ってください。
         撃とうとしながら、なぜ彼は殺されたのか謎です」

(´・ω・`)「いいか、モララーと向き合った犯人は、一度発砲されている」

(´・ω・`)「モララーは威嚇射撃でもしようとしただろうが、それより前に、
      また撃たれる…! と恐れた犯人が、奪った」

(´・ω・`)「焦ったモララーは逃げようとするが、咄嗟にナイフで追撃した」

( <●><●>)「……おかしい、せっかく奪ったならその銃で……」

(´・ω・`)「通路に出ちまうだろ、血といい、モララーといい。犯人は、それを恐れた」

( <●><●>)「しかし、ナイフなんてそう都合よく……」

(´・ω・`)「思い出せ、現場がどういう場所なのか」


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450 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 19:08:54 ID:eSssrWHUO
 

そこは、乗務員室。

兼、車販準備室だったはずだ。
ワゴンの搬入、乗務員の雑務、その他もろもろ。
車販準備室というだけあって、キッチンでも搭載してそうなものだ。
そうでなくとも、そこがどういう場所なのかを考えるだけで、自ずと答えはでた。


(´・ω・`)「包丁なり、フルーツナイフなり、カッターなり。
      刃物なんぞそこらにある。それを使って、攻撃した!」

(´・ω・`)「このとき、傷はコートには付かなかったという事になるな」

(`・ω・´)「……そうか」

(´・ω・`)「人、走って逃げると、コートは風につられて、浮かぶものだ。
      そこを斬って、もし運よく気絶させたなら、どうする?」

( <●><●>)「……」




(; <●><●>)「…………銃、殺……」

(; <●><●>)「しかし、銃声は……」

(´・ω・`)「ただでさえ煩いのに、更に連結器の部分でがたがた煩い。
      犯人は、乗務員室付近でなら銃声が漏れないのを知ってた人物となる」

(#メメ゚ -゚)「……」


.

451 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 19:11:57 ID:eSssrWHUO
 

(´・ω・`)「そして、流れる血を拭き去った、その時に犯人がとった行動は?」

( <●><●>)「……ワゴン内部に、死体を突っ込んだ」

(´・ω・`)「つまり、犯人は『乗務員室の特性をよく知っていて』『ワゴンの秘密を知っている』人物となる」

(#メメ -゚)「………」


警部はここで、おおきく息を吸い込んだ。
でぃさんの様子を窺うこともなく、彼は目を細めた。
彼の仕草のひとつひとつに、苛立ちが感じ取れた。


(´・ω・`)「……ここで犯人がワゴンにモララーを押し込んだ時、別の事件が起こったんだ」

(`・ω・´)「! まさか……」

(´・ω・`)「トイレから出てきたシャキーンさんとまたんき氏が出くわし、ナイフで争う、という事件が起こった」


警部はそう言って、ワカンナインデスさんから、一枚の写真を取った、いや、ひったくった。
トイレ前のスペースにて、血が点々と付いているのがわかる、写真だった。


.

452 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 19:15:24 ID:eSssrWHUO
 

(´・ω・`)「犯人と違い、シャキーンさんは、相手を仕留め損ねた。
      が、シャキーンさんも腕に負ったおおきな傷があったから、追撃できずに、トイレに再び籠もった。
      それがこの写真だ」


今度は、トイレ内部を写した写真を手にとって、そう言った。
結構多くのの血が流れてあり、見るのに少し抵抗を感じた。


(´・ω・`)「幸いここはトイレだ、水も、拭き取る紙もある。
      彼はアーボンオレンジを使って、手当てをすると同時に、血も拭き取った」

(´・ω・`)「……そして、シャキーンさんは、乗務員室に向かった」

(;`・ω・´)「!」

(´・ω・`)「血の臭いを感じ取ったか、偶然なのかはわからないけど、な」



( <●><●>)「では、その時犯人は?」

(´・ω・`)「その場を離れたとしか言いようがない」

( <●><●>)「それでは推理に穴が……」

(´・ω・`)「お菓子に血が付いたのだからな」

(; <●><●>)「……あぁ!」


.

453 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 19:19:53 ID:eSssrWHUO
 

(´・ω・`)「袋菓子は拭けばかろうじて大丈夫だ。
      しかし紙パッケージのものは……」

( <●><●>)「………それらの手続きを?」

(´・ω・`)「ああ」





(゚、゚;トソン「ちょちょ、待ってください!」


私は、思わず声を張り上げた。
その私の声に驚いた、警部やワカッテマスさんといった皆が、こっちを見た。

私が推理を中断させたのはなぜかというと、今の話だと犯人の顔が
彼らの間で、既に定まっているような口振りに聞こえたからだ。


(゚、゚トソン「今の話だと……犯人、でぃさんで決まってますよね……」



(#メメ - )



(´・ω・`)「…………最初から、そう言ってる」

(゚、゚トソン「でも証拠が……」

(´・ω・`)「彼女の話では、またんき氏は殺した、そう言っている」

(゚、゚トソン「………」

(´・ω・`)「つまり、またんき氏の方は決まりだ。一方モララーの方だが……
      彼女以外に犯人候補がいない」

(´・ω・`)「その証明を、だな……」


.

454 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 19:24:00 ID:eSssrWHUO
 


(゚、゚トソン「でも……」


私は、「決めつけるのはどうかと思います!」と言おうと
思ったのだけど、緊張しているのかうまく言葉にできなかった。






(#メメ - )「……待」

( ><)「待ったァァァァッァア!」

(#メメ゚ -゚)「!」




( <●><●>)「はい?」

(´・ω・`)「なんだよ」

( ><)「この……」


突然叫びだしたワカンナインデスさんは、
警部が持っている、乗務員室内部の写真を指さした。


( ><)「確かに僕、ここに血を見つけました。
      そして、今の推理が、筋が通ってるのもわかります」

( ><)「でも今の推理だと、犯人は一度被弾して、血を流したんですよね?」

(´・ω・`)「ああ」


.

455 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 19:25:08 ID:eSssrWHUO
 

(#メメ゚ -゚)

( ><)「彼女……どこにも、弾痕なんてないんです」





(´・ω・`)



( <●><●>)



(゚、゚トソン



(#メメ゚ー゚)




でぃさんが、はじめて、嗤った。
満面の笑みで、警部に、一瞥を与えた。


.

456 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 19:29:00 ID:eSssrWHUO
 


ふと、私はでぃさんの全身を見渡した。
顔には右頬のおおきな絆創膏、そして多く刻まれた古傷。
破けた服から見える傷も、細く引き締まった脚も、
被弾の有無で言うなれば、彼女はいたって健康体だった。



( <●><●>)「……あ」

(; <○><○>)「あああああああああッ! 確かに!」




(;´・ω・`)「こ……こんのヤロー……」

( ;><)「ひィ!」


警部が、今までにない、おっかない形相でワカンナインデスさんを睨みつけた。
思わず彼は、情けない声をあげた。
しかし、それを止めたのは、でぃさんだった。


(#メメ゚ー゚)「警部さん、彼の言うとおりです。
      今の推理に欠かせないもの、それは“犯人の被弾”です」

(;´・ω・`)「……」

(#メメ゚ー゚)「私、引っ掻き傷はたくさんあります。
      でも、弾痕なんて大層な傷、ありませんよ」

(;´・ω・`)「…………!」


.

457 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 19:33:05 ID:eSssrWHUO
 


(#メメ゚ー゚)「つまり、あなたの推理は、ぜーんぶ、偽り!」

(#メメ゚ー゚)「歪んだ推理で私を逮捕? ばかばかしい!」

(#メメ゚ー゚)「あなたが、あなたが、偽りを生もうとしてるんだ!」


でぃさんは、ひとり、ただ警部に吠え続けた。
屈することなく、警部はワカッテマスさんに向けてちいさくこう言った。

(;´・ω・`)「………この問題を解決するには、ひとり、解明しなければならない人物がいる」

( <●><●>)「え?」

(´・ω・`)「“1度目”の発砲時、撃たれたのはでぃさんで間違いない。では……」

(´・ω・`)「撃ったのは、誰なんだ?」

( <●><●>)「……………あ」



.

458 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 19:36:05 ID:eSssrWHUO
 

(´・ω・`)「しかし、このとき撃たれた銃が、A−5とB−7、どっちにあるものだったのか。
      それを考えれば自ずと見えてくる」

(´・ω・`)「ワカッテマス、どっちだと思う?」


( <●><●>)「確か、彼女曰く、またんき氏に関してはA−5の銃を奪って銃殺とのことであり、
         A−5からは合計一発しか撃たれていない……つまり、
         またんき氏が殺されるまではA−5の銃は6弾装備してたわけだから……」

(´・ω・`)「モララー殺害に使われた銃はB−7だ。
      そして、のちにその席に着いたのは……」



警部は、ちらっと、B−7に座っていた人物――シャキーンさんを見た。
彼が、今までにないくらい、そわそわとしているのを確認し、警部は確信を持って、言った。


.

459 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 19:39:27 ID:eSssrWHUO
 



(´・ω・`)「でぃさんを撃ったのは、シャキーンさんだ」



(#メメ゚ -゚)

(;;`・ω・´)

(; <○><○>)「!」



(; <●><●>)「なぜ! 動機がない!」

(´・ω・`)「動機は、事件解決時に聞くさ。
      それよりも、シャキーンさん……」

(;;`・ω・´)「………」



シャキーンさんはそっと俯いて、広げた自分の両手を見た。
それを見ているうちに、手から身体と、徐々に全身が震えてきて、最終的に、シャキーンさんは豹変(かわ)った。


.

460 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 19:40:44 ID:eSssrWHUO
 



(;;` ω ´)「………どうして」


漢が、哮った。






(#`;ω;´)「どーしてなにもかもバレちまうんだよゴルァァァァァァぁぁぁぁぁァァッァアアアアア!!」




.

461 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 19:42:22 ID:eSssrWHUO
 


( <●><●>)「! 認めるのですね!」

(#;メ゚ー゚)「シャッ君、冗談……やめて? ね?」

(#`;ω;´)「警部の言う通りだ!
       12分、揺れたとき、俺とでぃは、対峙していた!」

(#;メ゚ー゚)「シャッ君、止して? なにかの勘違いだって……」



たとえるなら、荒ぶる虎、巨漢シャキーンが、明らかに壊れていた。
眉間にはひび割れそうなほどにしわが入っていて、
両手で握り拳をつくり、めいっぱい力を込めている。


発達した腕、服の上からでも、その筋肉の量が窺えた。
必死で落ち着かせようとするでぃさんの説得空しく、
シャキーンさんは、ぽつりぽつりと全てを話し始めた。



.

462 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 19:43:59 ID:eSssrWHUO
 


(#`;ω;´)「列車に乗った時、まず俺は自分の席のA−5に荷物を置いた。
       そして出発後、急に催してきたからトイレに向かったら、でぃがいた!」

(#`・ω・´)「話した、語った。そこまではいい、問題はその後だ」

(#`;ω;´)「でぃは銃を抜きやがった!」



(; <●><●>)「!?」

(#;メ゚ー゚)「ちょ……」



(#`;ω;´)「命の危機を感じたから、すぐにタックルを決めて銃を奪い取った。
       そしてすぐに奴から離れ、銃を構えた」

(#メメ; -;)「………!!」



(#`・ω・´)「でも、俺は、撃つつもりはなかった。ただ構えてみせて、
       返り討ちに遭わないようにしていただけなんだよ、信じてくれ!」

( <●><●>)「……撃ったのですか?」


.

463 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 19:45:29 ID:eSssrWHUO
 


隣で制止を要求、否、懇願するでぃさんを無視し、彼は必死に訴えていた。
何度も「撃つつもりはなかった」と、故意でないことを強調させている。
しびれを切らした警部は、ややきつめに、言った。


(´・ω・`)「『つもりはなかった』……つまり、撃っちゃったんだな?」

(`・ω・´)「………」

(´・ω・`)「どうなんだ、答え…」

(`・ω・´)「……それが、よくわからないんだ」

(´・ω・`)「……」


(;´・ω・`)「はァ?」


.

464 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 19:47:50 ID:eSssrWHUO
 


自分の右手を、掌を上に向け、じっとその手を見るシャキーンさん。
徐々にその手は震えてきて、ぽつんぽつんと、涙が掌に落ちては弾けていった。


(`;ω;´)「……あのときでけぇ揺れがきて…
      揺れた瞬間、びっくりして、引き金を引いちまったんだ……」

(`;ω;´)「同時に、とんでもねぇ馬鹿でかい轟音が聞こえて、
      俺は最初、それが銃声だと思って、尻尾巻いて逃げちまったんだ……」

(`;ω;´)「怖くて、銃も落としちまって、すぐにトイレに逃げ込んだ」



(#;メ゚ー゚)「と、トイレにいたの!?」

( <●><●>)「撃ったんですね!」

(´・ω・`)「……で、その弾はどうなったんだ」


.

465 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 19:50:33 ID:eSssrWHUO
 

(`;ω;´)「見てねぇよ! 銃なんざ見るのも怖くて、使うのもはじめてなんだ!
      しかも、結構反動がきたから、手元がぶれて、弾がどこに飛んだのかすら知らねぇよ!」

(`;ω;´)「だから、でぃを撃ったかまでは知らねぇんだよ!」


シャキーンさんは繊細なココロの持ち主で、ナイフは扱えても、
銃なんてカンペキに人殺しな道具を、扱うのは無理だった。


それゆえに生じるココロの動揺、銃の反動で手元がぶれ、
1度目の揺れで構えが崩れ、まして焦点は定まってない、
こんな状態ではさすがに命中するはずはないのだが、それ以上に自分が銃を扱ってしまった、という事実が恐ろしくて、
現実から逃げ出すかのごとく、そこから立ち去り、トイレに籠もったらしい。
だから、でぃさんにそれが被弾したかまではわからない、とのことだ。


.

466 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 19:52:46 ID:eSssrWHUO
 


この証言を聞いて、私はひどく、心を傷めた。
真実がわからないままだから、じゃない。

シャキーンさんが、ここまで真人間で、なのに
今までそれを偽ってきたという、まさに仮面をかぶっていたからだ。





( <●><●>)「警部、ご存じだとは思いますが、ここででぃさんが被弾した、という証拠があれば、
         ロジックは一本に繋がります」

(;´・_ゝ・`)「被弾なんて、見たら一発で判るもんじゃないの!?」

( <●><●>)「そこなんです」

盛岡さんの質疑に、ワカッテマスさんは
でぃさんを指さして、悔しそうに言った。


(#メメ゚ー゚)

彼女は、笑っている。
その表情からは、安堵すらも、感じられる。




( <●><●>)「………弾痕は、未だ見つかっていません」



.

467 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 19:56:55 ID:eSssrWHUO
 



(#メメ゚ー゚)


彼女は、顔には、おそらくストレスの溜まるたびに付けてきたであろ引っ掻き傷が目立つ。
白いシャツの右の袖は先程噛みちぎられたため、そこからも傷が窺えた。
腕も脚も細い、いや細いだけでなく、よく見てみると、
力瘤が目に留まる程度ではないがスポーティに発達していて、引き締まっていた。
ストッキングをはいているが、おそらく素でもきれいなんだろう、と思えた。

そして、何度も全身を見渡してみたが、やはり
彼女の外見に、弾痕なんて、どこにも見られなかった。



(; <●><●>)「警部、彼女はほんとうに被弾したのですか!?」

(;´・ω・`)「そのはずなんだ!
      というより、それ以外には、この一連の事件に説明がつかない!」


.

468 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 19:58:39 ID:eSssrWHUO
 


( ><)「もしかしたら肩とか腿に当たって、それを制服で隠しているのでは?」

( <●><●>)「だとすると、制服には穴が空いているだろ」

( ><)「着替えたかもしれないんです!」

(#メメ゚ー゚)「調べます? 着替えなんてどこにもないですよ」


( ><)「テンさん、調べましょう!」

( <●><●>)「……無駄だ、彼女がそんなヘマをするはずがない」

(#メメ^ー゚)「賢い刑事さんで助かります」



にぃっとでぃさんは笑った。
その笑顔には、悪魔的なものを感じさせられ、私は背筋が凍るのを感じた。
この自信に溢れた言いぐさからすると、おそらく彼女は着替えてなんていない。
つまり、肌が露出しているところに、被弾していて、なおかつ、それを“隠して”いるんだ。


.

469 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 20:00:48 ID:eSssrWHUO
 


(´・ω・`)「そうだ、バカ、現場から銃弾は見つかったのか?」

( ><)「一応、壁から天井から、すべて見たんですけどありませんでした」

(´・ω・`)「……つまり、今、銃弾は、でぃさんの体内にある」

(; <●><●>)「! はやく摘出しないと!」

(#メメ゚ー゚)「だから、被弾なんてしてないですから」


ワカッテマスさんは、悔しそうにB−7の背もたれを後ろから殴った。
思わずシャキーンさんも驚き戦いた。


ふふっと、嫌味な笑いを見せるでぃさんは、口元を一度手で押さえると、
耐えきれなくなったのか、いよいよ吹き出した。



(#メメ;ー;)「あぁーっはははハハハハハッッ!
      推理、崩れ去ったじゃん! ばっかばかしい! ハハハハ!」

(#メメ;ー;)「シャッ君も冗談キツいなぁ! ハハ!」

(#メメ;∀;)「アヒャヒャ……」


.

470 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 20:02:27 ID:eSssrWHUO
と、ここで一旦CMで。
三十分ほど席を外します、ごめんなさい!

472 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 20:48:08 ID:eSssrWHUO
 


(・ω・`;)「………」

警部は、荒れに荒れているでぃさんを見つめている。
彼女は、更に、ヒートアップしていた。


(#`・ω・´)「このアマ……………!
       お前が、お前がまたんきもモララーも殺したんだろ!」

(#メメ;∀;)「アヒャヒャヒャ! 違いますー! アヒャッ!
      銃ごときにビビる小心者のくせに!」

(`・ω・´)「………でぃ…?」


シャキーンさんが、あっさり言いくるめられた。
彼は、怒りでも哀れみでもなく、同情の色をした目で、彼女を見つめた。



.

473 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 20:50:14 ID:eSssrWHUO
 


(´・_ゝ・`)「犯人が見つからないと落ち着けないんだ、
      認めてくれないかな……アテンダントさん……」

(#メメ;∀;)「あンだよキモヲタがよぉ!
      犯人はそこの釣り眉毛ですよ! アヒャヒャ!」

(;´・_ゝ・`)「とほほ、キモヲタときたか……」


貶され、とたんに盛岡さんは黙りこくった。
彼も気づいたのだろう、でぃさんは、徐々に、そして確実に狂いはじめていた。


.

474 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 20:52:43 ID:eSssrWHUO
 


川  々 )「……くるう、怖い」

(#メメ;∀;)「おじょーさんは黙ろうねェェェェ! アヒャヒャヒャ!」

川  々 )「………」


嘲られ、彼女は、ただ俯いて肩を震わせた。
でぃさんはもう、前が見えないでいるのだと思った。
とにかく、目の前のありとあらゆる存在を否定することしかできないのだろう。
そっと、彼女、くるうさんは涙を流した。


.

476 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 20:54:24 ID:eSssrWHUO
 


(´・ω・`)「…………トソンちゃん」

(゚、゚トソン「は、はイ!」

(´・ω・`)「君、乗車した時、すぐにでぃさんと会ったね?」

(゚、゚トソン「は、はい」



(゚、゚;トソン「って、なんで知ってるんですか?」

(´・ω・`)「初対面で、アテンダントが客におドジなんて言うはずがないでしょ」

(゚、゚トソン「う……まあ」

(´・ω・`)「………トソンちゃん」

(゚、゚トソン「はい?」


(´-ω-`) …コホン



.

477 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 20:55:26 ID:eSssrWHUO
 


(´・ω・`)「君だけが、このなかで唯一“事件前の”でぃさんに会ったことのある人間なんだ」

(#メメ;ー;)「!!」

(´・ω・`)「話をおさらいしよう」

(´・ω・`)「彼女は、必ず、撃たれた。
      そして、それを証明できれば、彼女が犯人であることに繋がる」

(゚、゚トソン「しかし、見た感じどこも……」




(´・ω・`)「偽ってるんだ」

(゚、゚トソン「偽ってる?」



.

478 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 20:57:18 ID:eSssrWHUO
 


(´・ω・`)「ふつう、撃たれたら、ぱっと見ればどこが撃たれたかわかるもんだよね」

(゚、゚トソン「はい」

(´・ω・`)「でも、見て、わからない」

(゚、゚トソン「……」



(´・ω・`)「つまり、ぱっと見ても怪しく思わないほど、自然に隠してるんだ」

(´・ω・`)「しかし、それは事件後に取り繕われた、《偽り》にすぎない」

(´・ω・`)「その《偽り》は、とてつもなく大規模か、
      若しくは、かなりちっぽけなものか……」

(´・ω・`)「とにかく、それを《見抜く》ことができるのは……
      トソンちゃん、君だけだ」

(´・ω・`)「思い出してくれ、乗車時の、彼女の姿を……」




(´-ω-`)「…………頼む」

(゚、゚;トソン「そんな……」



.

479 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 21:00:05 ID:eSssrWHUO
 


(#メメ;ー;)「がァァ! やめろぉ!」

( <●><●>)「させるか!」

(#メメ;ー;)「離せ! 離せぇぇ!」




(゚、゚トソン

もとは、私が、VIPに在る親の実家に帰ろうとして、この列車に乗ったのが事の始まりだった。
家を出る直前に、あれやこれやと忘れ物を思い出してしまい
それをバッグに詰め込む間に、刻々と時間が過ぎていった。
慌てて家を飛び出し、駅に着いた時には、発車寸前。
全速力で走り、飛び込んだ。


バッグが背中に乗っかり、重たかったが、それ以上に、乗れたことに安堵を感じた。
はやく席に着こう、そして寝よう。
そう思って足早に向かった先が、あの乗務員室だった。
誤って入ってしまって、その時に、はじめて彼女に出会った。



確か、華奢な腕にきれいな脚、制服といい、
なにも今と変わってない気がするのだけど………



.

480 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 21:02:01 ID:eSssrWHUO
 





 (*゚;;-゚)『す、すみません!』
 (゚、゚;トソン『あ、いや、こちらこそ間違えて入って来ちゃって……すみません!』




 (#゚;;-゚)『あのおドジな人!』
 (;、;トソン『おドジ!?』






  (*゚;;-゚)

  (#゚;;-゚)





.

481 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/10/29(土) 21:04:32 ID:eSssrWHUO
 




( 、 ;トソン「―――ッ!――?!」

(゚ー゚;トソン「ああああああああああああああああああああああああああッ!!!」



(;´・ω・`)「! わかったか!?」

(゚、゚;トソン「警部、ほっぺです!」





「右頬に、銃弾が埋まっています!」







 イツワリ警部の事件簿
 File.1

 (´・ω・`)は偽りの香りを見抜くようです

 10章
  「偽りを見抜く」

    おしまい



.


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