(´・ω・`)は偽りの香りを見抜くようです

495 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/17(木) 23:21:44 ID:w4/uVoaMO
 


11章「忌まわしき過去」


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496 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/17(木) 23:23:56 ID:w4/uVoaMO
 


(;`゚ω゚´)



(; <○><○>)



(´ ゚_ゝ゚`)



( ><)



川 ゜々゚)



(;´゚ω゚`)




(#メメ;□;)


最初見たときには、紅潮していた右頬が、確かに見られた。
その時から、顔にいくつかの絆創膏はあったのだが、左右ともに、頬には、絆創膏はおろか、傷痕なんてなかった。
次に見たときには、右頬にだけ、おおきな絆創膏が貼っていたのだ。
左頬には貼ってない、しかし右には、あった。
しかし、もともと、彼女の顔には多くの絆創膏や、古い傷が目立っていたので、ぜんぜん気にならなかった。


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497 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/17(木) 23:25:34 ID:w4/uVoaMO
 


 (((#メメ;□;)っ「ガキぃぃェァァァ!!」

≡( 、 ;トソン「きゃっ!」


(((; <●><●>)「……警部! こいつをおさえてください!」


彼女は、もう口が裂けんばかりに、喉の奥まで見えるほどに開き、私を凝視して飛びかかろうとした。
ワカッテマスさんが必死で抑えるも、彼女の馬鹿力には到底及ばず、
ワカッテマスさんを引きずったまま、徐々にこちらに向かってきている。


(`・ω・´)「手を貸すぞ」

( <●><●>)「! 左腕を抑えてください!」


もう私の前1メートルにまで迫っていた彼女を、横からシャキーンさんが来て、左腕を肩から抑え込んだ。
2人によって両腕は封じられたが、それでも、脚をじたばたさせ、私を攻撃しようとしている。


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498 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/17(木) 23:29:07 ID:w4/uVoaMO
 


(;´・_ゝ・`)「脚なら持ちますよ!」

(#メメ;ー;)「変態! 変態! 離せエロガキ!」

(;*´・_ゝ・`)「変態じゃない、紳士だ!」


次に、数少ない常識人(だと思っていた)盛岡さんがやってきて、右足を両手で包むようにしてつかみ、持ち上げた。
転けそうな体勢になったが、彼女は、それでも必死に抵抗している。
ただ、私のみを視界に捕らえているのが、よくわかる。
だからこそ、彼女が怖かったし、彼女をおさえる彼らが、とても心強く思えた。


≡\( ^o^)/「面白そうじゃねーか。俺も参加するぜぃ!」

(#メメ;ー;)「やッ……そんなとこまで持つな!」


たとえバカでもだ。
しかし、彼がおさえると、限りなく、頼りなく見えた。


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499 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/17(木) 23:30:43 ID:w4/uVoaMO
 


こうして、動こうにも動けない姿になった彼女は、大声でひたすら、言葉にもならない声を発していた。
警部がのしのしと歩み寄り、彼女の崩れきった顔を、じろじろ舐めまわすように、凝視した。
右頬に貼られた絆創膏は、床に散らばっているほかのと比べ大きく、
入念に貼られたであろうことが予測できるほど、丁寧に貼られていた。


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500 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/17(木) 23:35:24 ID:w4/uVoaMO
 

(´・ω・`)「……トソンちゃん、ほんとうに、ここ?」

(゚、゚トソン「…………はい」

私は、警部の確認に肯いた。
しかし、首を前に倒そうとすると、身体が硬いことに気がついた。


(´・ω・`)「でぃさん、この絆創膏、はがしていい?」

(#メメ;□;)「だ……ァめぇ! だ、だめ……ァァァァ!」

(; <●><●>)「はやくしてください。こいつの力が尋常ないのです」


四肢を塞がれつつもなお、彼女は持ち前の怪力を用いて、彼ら大の男4人を、引っ剥がそうとすら企むのだ。
その獰猛さ、畏怖を通り越して、滑稽にすら思えると、警部は感じているに違いない。
向こう見ずな彼女に、飄々とした警部は、いつもの皮肉った口振りで、言った。


(´・ω・`)「もしただの傷だったら、隠す必要はない。ただの傷だったら慰謝料払うよ」

(#メメ;□;)「い゙い゙! 慰謝料な゙んかいら゙ない゙から!」

(´・ω・`)っ#「……よっと」


警部が、なんの躊躇いもなく、でぃさんの絆創膏をはがした。
随分濡れていたのか、呆気なくそれははがれた。


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501 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/17(木) 23:38:11 ID:w4/uVoaMO
 

(;´゚ω゚`)「!!」

(;ー;トソン「ギエアァァァァッァア!」


そっと絆創膏の端をつまみ、一気に引き剥がした。
粘着力はきれてきたのか、あっさりとそれは剥がれたのだが、
そこには、明らかに「ただの傷」ではないものが広がっていた。

その傷を見て、私は、理性もへったくれも関係ないと思えるほど、絶叫した。
私が腹の底から大声を出したのは、いつぶりだったか。
絹を裂くような、と言う言葉は、不適当ではあるが、ほかに適当な言葉が見あたらない。
とにかく、絶叫せざるを、得なかった。


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502 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/17(木) 23:39:57 ID:w4/uVoaMO
 


(Tメメ;ー;)

絆創膏と思ったそれは、よく見ると、ガーゼの部分が非常に分厚く、医療用の特別なものであることが、のちにわかった。
その証拠に、絆創膏をとった瞬間、右の頬骨の箇所から、割とすごい勢いで、血が垂れていった。
そして、私は、人の顔に穴が空いた姿など、見たくもなかった。
瘡蓋もできているのか、肉まではさすがに見えず、どす黒い血の塊が見えた程度だったが、それでもだ。


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503 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/17(木) 23:42:05 ID:w4/uVoaMO
 

その流血を見た、彼女を支えていた男4人が、一斉に彼女を離して、距離を置いた。
推理上当然の結末なのだが、やはり、誰しもが、その現実を受け入れられる訳がなかった。
彼女を離したことにより、ワカッテマスさんがすぐに危機を感じ、彼女をおさえ込もうとしようとしたが、同時に
このままでは、彼女が危篤に陥るのではないかと、不安の念も抱いた。

しかし、ワカッテマスさんは動かなかった。
でぃさんは特に抵抗しなかったからだ。



(∩メ;ー;)

彼女はそっと右手を傷口にあて、血が流れるのを抑えようとした。
しかし、指と指の隙間から、まだ少し血が流れている。
彼女はそれを気にせず、そのまま、へなへなと、地に跪き、そっと涙を流した。


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506 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/17(木) 23:49:04 ID:w4/uVoaMO
 

( <●><●>)

(´・_ゝ・`)

(`・ω・´)

( ><)

川 ゜々゚)

(´・ω・`)

(゚、゚トソン

从*ノ -ノリ ~゚



(∩メ;ー;)「………」


誰一人、口を開こうとしなかった。
先程までの、焦りや怒りを感じさせてきた、皆の表情が一変、同情の色を帯びたものとなっていた。
そして、いくら残酷な殺人を犯したからといって、誰も、彼女を非難することはなかった。
なぜか、私たちが彼女を咎めるのは、立場上、そして倫理上、不可能な気がしたからだ。


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507 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/17(木) 23:51:13 ID:w4/uVoaMO
 


(∩メ;ー;)「………けいぶさん」

(´・ω・`)「?」

彼女の、すっかり力の取り払われた声を、警部は聞き逃さなかった。
列車の、轟音に呑まれそうな声を、この場にいる皆は、決して聞き逃さすことはなかった。


(∩メ;ー;)「聞いてくれますか? ばかなオンナの一生涯を……」
(´・ω・`)「……」

(´-ω-`)「話したければ、勝手に言えばいい」

(´・ω・`)「責任を持って、聞き届けてやる」



こくんと肯いて、彼女は、ぽつぽつ、弱く語り始めた。
最初に、自分とは、いかに醜く出来の悪い人間であるかから、話の始まりとなった。


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508 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/17(木) 23:54:31 ID:w4/uVoaMO
 

(∩メ;ー;)「………昔から、恋人なんていない。顔も悪い。天才の姉がいて、比べ地味な私。
      頭も悪くて、逆に、オンナのくせにスポーツが出来過ぎて、気味悪がられたこともあった。
      趣味も特になくて、暇な日は、一日中、自分の存在する意味を考えていた。
      そして、はじめて手首を切ったのは高校の時だった。
      気がつけば、事ある毎に自傷してしまう、ばかばかしいオンナになっちゃって……
      で、高校、大学とでて、就いたのが、オオカミ鉄道。
      それからは、仕事が生き甲斐だった。はじめて打ち込めることができたんだ。
      仕事をしている間が一番輝いている。……間違いなく、そう実感できていた。
      少しして、町のちいさな食堂で、すてきなヒトとも巡り会えた」


最後の2項目を言うあたりから、徐々に彼女はほがらかになってきていた。
しかし、すぐに、声のトーンは落ちた。

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509 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/17(木) 23:57:46 ID:w4/uVoaMO
 

( <●><●>)「……もしかして、その食堂は?」

ワカッテマスさんは、心当たりがあった。
ワカッテマスさんが、というより、もはや、皆が、だった。
でぃさんは肯いた。

(∩メ;ー;)「そうです。かつて、ウララーが立ち上げた、食堂です。偶然、ここで二代目に会ったわけだけど……」

( <●><●>)「なんという……運命の、イタズラなんだ」

(∩メ;ー;)「この列車で、二代目に会った瞬間、殺意が、芽生えた」

( <●><●>)「その、殺意にいたるまでの、話を聞かせていただけませんか?」

(`・ω・´)「………」


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510 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/17(木) 23:59:25 ID:w4/uVoaMO
 

(∩メ;ー;)「私が、店長のウララーさんと仲良くなる頃、グルメライターの目にとまったのが、チーズおにぎり、だっけ」

(; <●><●>)「ち、チーズ……?」

(∩メ;ー;)「私の案。店長に、提案したんだ。
      バカ売れして、私はうれしくなっちゃって、それからも訪れた。
      でも、ある日、店は改装工事、またチェーン展開をはじめたり、冷凍食品化に勤めたり……
      町角のちいさな食堂、そんな店だったから好きだったのに、
      瞬く間に、私の尊敬していたウララーさんは、私の知らないウララーになっていた。
      まあ、少しして殺されちゃったんだけどね。あはは……
      で、次のまたんき社長……こいつが、サイッテーな男だった」

( <●><●>)「………」

(∩メ;ー;)「ある日、チーズおにぎりが食べたくって、店に訪れると、偶然社長と鉢合わせした。
      あの時、会わなかったら……私は、きっと……」




.

511 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/18(金) 00:01:24 ID:mEkcAgWAO
 




―――某日



ドンッ

(*メ゚ー゚)「あ、スミマセン……」

(・∀ ・)「痛ェな……」

(・∀ ・)「んん!? もしかして、あなた、椎名でぃさんですか!?」

(*メ゚ー゚)「私を知っているのですか?」

(・∀ ・)「親父から聞いてるよ。常連さんだったって。
     チーズおにぎりの件、ほんとうに感謝してた」

(*メ゚ー゚)「あはは………」

(・∀ ・)「まあここじゃなんだし、ウチ来て話さない? ご馳走するよ」

(*メ゚ー゚)「じゃ、お言葉に甘えて……」

(・∀ ・)「死んだ親父も喜ぶよ」


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512 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/18(金) 00:02:42 ID:mEkcAgWAO
 

このとき、彼は、好青年だな、というのが第一印象だった。
ウララーと一緒で、気さくで、怒りっぽい反面人情に脆い、昭和のヒトみたいなイメージだ。
彼の好意をありがたく受け取り、招かれるがまま、見たこともない高級車に乗った。

どこかからか、飴色の瓶のなかで輝く、黄色のラベルに外国語が並んだ、それはそれは高そうなワインを取り出した。
グラスに注ぎ、私に押しつけてきて。

あれを、飲まなきゃよかった。



(・∀ ・)「はいどうぞ」

(*メ゚ー゚)「え、いいんですか?」

(・∀ ・)「客人はもてなせ、これ親父の口癖なんだ」

(*メ゚ー゚)「あはは、確かに。じゃあ遠慮なく……」

(*・∀ ・)「…………乾杯♪」


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513 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/18(金) 00:03:57 ID:mEkcAgWAO
 

お酒は、仕事帰りにたまに飲んだりしていた。
でも、ほんとうにたまで、それもアルコール度数が二桁を上回ることはなかった。
市販のチューハイを飲んで、その日を振り返って、寝る。
そんなふうに、チューハイと同じノリで飲んだのが、間違いだった。
別に睡眠薬などが入っていたわけではない、歴とした、ビンテージ物。
アルコール度数は―――


(*メ´ー`)「はらほれ……」

(・∀ ・)「あ、寝ちゃった」

(・∀ ・)「しょーがないなぁ、俺のプライベートルームに招くわけにもいかないし……」

(*・∀ ・)「……」

(*・∀ ・)「おい」

(゚┏┓゚ )「はい」

(*・∀ ・)「進路方向を変えろ」

(゚┏┓゚ )「かしこまりました」


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514 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/18(金) 00:05:29 ID:mEkcAgWAO
 

どれくらい車に揺られていたのか、わからない。
でも、酔って寝ちゃったのだけは、わかった。頭が痛い。
とは言っても、またんき社長の前だ、失礼をしてはならない。
起きて、またんき社長を探した。


(*メぅー゚)「はッ!」

(*メ゚ー゚)「……ここ、どこ? もう着いたの?」

(・∀ ・)「オッ起きたか」

(*メ゚ -゚)「あ! スミマセン、あんな高級ワインなんてはじめてでして……」

(・∀ ・)「いいさいいさ」

(*メ゚ー゚)「………で、どうしたんですか、バスローブなんか着て」

(・∀ ・)「朝っぱらからチェーン店舗まわってたから、汗かいてたんだ」


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515 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/18(金) 00:06:38 ID:mEkcAgWAO
 

(*メ゚ー゚)「それと、ここ、どこです? 社長の家ですか?」

(・∀ ・)「すまない、さすがに俺のプライベートルームに
     呼ぶわけにはいかなかったから、近いホテルに寄っただけだよ」

(*メ゚ -゚)「ご、ゴメンナサイ……」

(・∀ ・)「気にしないでいいよ、俺も親父の話聞きたかったんだ」



それからは、長い間話していた。
私が常連になるまでの経緯、店長ウララーとの会話、彼のおちゃめなミス、チーズおにぎり、と。
話すと、またんき社長は案外面白く、時間が過ぎるのが早く感じられた。

しかし、ビジネスホテルって、こんなに設備が充実しているものだったんだ、って思っていた。


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516 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/18(金) 00:09:14 ID:mEkcAgWAO
 

(・∀ ・)「え、オオカミ鉄道?」

(*メ゚ー゚)「はい。後輩もできて、楽しい毎日です」

(・∀ ・)「あそこ、うちが買収しようか、という話もしてたんだ」

(*メ゚ -゚)「えっ」

(・∀ ・)「向こうのフォックス総裁が『それだけは困る』って
     泣きついてきてさぁ。面倒だし、そろそろ交渉も終わらせないと」

(*メ゚ -゚)「社長、なんとか穏便なままでいくのは無理なんですか?」

(・∀ ・)「無理だ。ウチの会社の方でも話が進んでるんだから」

(*メ゚ -゚)「オオカミ鉄道がオオカミじゃなくなったら、なんか寂しいです」

(・∀ ・)「一社員として、そう思うのは仕方ないさ」


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517 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/18(金) 00:10:48 ID:mEkcAgWAO
 

(・∀ ・)「……尤も、現状維持のまま話を進めることもできるけどね」

(*メ゚ー゚)「え、ほんとうですか!?」

(・∀ ・)「そうだなぁ……」


(・∀ ・)「………よし、キミ次第で契約は考えようかな!」

(*メ゚ー゚)「やった……って、私、次第?」

(・∀ ・)「あくまで、適性かどうかの判断として、でぃちゃんを代表に見立てるだけだよ」

(*・∀ ・)「………おっとごめん、手がすべった」

(;メ - )「きゃっ!」


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518 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/18(金) 00:13:21 ID:mEkcAgWAO
 


私は、ふとまたんきに押された。
最初は、暴力や虐めから耐える試験か、そう思ったが、
それが違うとわかったのに、そう時間はかからなかった。

だって、後ろは、ベッドだったのだから。
私は、自然と、押し倒されたカタチになっていた。
のしのしと近寄り、私の身体に手を伸ばす、またんき。
彼がいやらしい笑みを浮かべているのを見て、
私は、今から起こる出来事が安易に予測がつき、恐怖に戦くことしかできなかった。



――――。


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519 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/18(金) 00:15:54 ID:mEkcAgWAO
 


話し終えて、でぃさんは、いつの間にか鼻をすすっていた。
ワカッテマスさんは、苦い顔をした。


(; <●><●>)「なんと……!」

(∩メ;ー;)「それから、会う度に私の貞操は汚されていった。
      いくら拒んでも、拒否するとオオカミ鉄道を潰すって脅されて……
      オオカミ鉄道の総裁からも懇願され、私は、首を縦にしか振れなくなっていた」

(゚、゚;トソン「そんな……」

(∩メ;ー;)「人生最初で最後の彼氏に、相談したよ、そりゃ。
      そしたら、怒られて、そのまま、捨てられた。
      当然よね、ハジメテ、とられたし。あのゲスに」

(;`・ω・´)「…………」

(∩メ;ー;)「またんきに会う日の前日、会いたくなくて、胸が苦しかった。
      何度も吐いた。
      顔にたくさん傷ができたのも、この頃からだった。
      寝られず、怖くて、ただ震えるしかできなかった」


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520 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/18(金) 00:17:31 ID:mEkcAgWAO
 


(∩メ;ー;)「一度警察にも相談した。
      警察がまたんきを問い詰めると、彼は『合意のもとだ』とかほざきだした。
      そして、あの時見たまたんきの目つき、怖かった……怖かった!
      警察も、あのアンモラルを敵にまわしたくなかったのか、すぐ帰ったし。
      次の日から地獄だった。仕事終わり、またんきが仕事や疲れで無理な日以外は、毎日、汚されたなぁ。
      殴られもしたけど、黙って股を開くと、暴力もおさまった。
      こうでしか自分を護れない、自分が情けなかった。
      彼を殴り殺そうと思えばできたはずなのに、なぜか怖くて、できなかった。
      中学の頃には、既におとうさんにも腕相撲で負けなかったのに」

( <●><●>)「それでも、あなたの怪力は未だ健在なんだ。
         いざとなれば、彼を逆に追いつめて……」


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521 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/18(金) 00:19:29 ID:mEkcAgWAO
 


(∩メ;ー;)「できないよ……… あいつ、こうも言ったんだもの」

(∩メ;ー;)「私の姉、有名な歌手なんだけど、事務所がアンモラルの網にかかってて、
      『もし次にふざけた真似をしたら、姉を消す』とか言ってきたんだもん……」



(゚、゚トソン「もしかしてその歌手って、あのしぃちゃん?」

(´・_ゝ・`)「え! ……しぃちゃんって言えば、こないだのシングルの初動売上が100万枚突破したとか言う、大物じゃないか」

(∩メ;ー;)「さすがに嘘だ、って思ったんだけど、次の日、おねえちゃんから電話がきて……」





  ―――でぃ、助けて!




(∩メ;ー;)「…………あの天才の姉の、悲願に満ちた叫び声なんて、はじめて聞いたよ……
      あんまり話したことすらなかったのに」

(;、;トソン「……ひどいです」


.

522 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/18(金) 00:22:36 ID:mEkcAgWAO
 

黙って聞いていた警部が、はじめて顔をあげた。
でぃさんを追いつめる時の、凛々しい顔や
私をからかう時の、あの嫌みな表情と違い、
ほんとうに、心から彼女に同情しているように見えた。



(´・ω・`)「…………そうか。苦労、したんだな」

(∩メ;ー;)「苦労なんて一言で片付けられるほどの物じゃない!
      仕事一筋で生きてきたのに、その仕事でさえ、潰されたんだから!
      どこで話が漏れたのか、同じ職場の人から、毎日浴びる白い視線。
      せっかく見つけた生き甲斐も、やっと出逢えた彼氏も、私という人格も」



(Tメメ;□;)「あいつは潰したんだァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」



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523 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/18(金) 00:26:08 ID:mEkcAgWAO
 


(´・ω・`)

警部は、静かに、彼女の話を聞いていた。
そして、それについて一言、同情したきり、なにも言わなかった。
彼女を興奮させないためか、将又声をかけるのも酷に思うほど、酷い話だったからか。


鼻をすする音が聞こえる。
しかし、彼女から聞こえるものだけではない。
事の残酷さに、同情し、涙を流す者もいた。
そして警部は、彼女を別段罵ることも、叱ることもしなかった。


大分時間が経った頃、沈黙を破ったのは、ワカッテマスさんだった。



( <●><●>)「……では、今回の殺人とは……」

(∩メ;ー;)「はは。ぜーんぶ、警部さんの言った通り」


.

524 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/18(金) 00:27:58 ID:mEkcAgWAO
 

( <●><●>)「またんきに関しては、動機は充分です。しかし、モララーは……」

(∩メ;ー;)「……あいつは、影武者なんだ」

( <●><●>)「影武者?」


なんのことか、話の内容が掴めずに、彼は聞き返した。
彼女は、ぐちぐち文句を言うでもなく、すんなり話してくれた。

(∩メ;ー;)「前から、あいつからモララーのことは聞いてた。俺の影武者だ、って」

(∩メ;ー;)「最初、顔に弾丸もらったあと、モララーが運悪くそこにきた。
      私は最初、そいつがまたんきだと思った。
      びっくりするほど似てて、しかも向こうもこっちのこと知ってたみたいで……
      なぜか、銃を撃たれそうだったから、すぐに近くにあったナイフで斬りつけて―――殺した。
      それをワゴンのなかにしまって、血を拭いて、私に絆創膏を貼って、
      車内販売に移った時だった」


.

525 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/18(金) 00:28:50 ID:mEkcAgWAO
 


 (;・∀ ・)『んん!? でぃか!? よかった、助けてくれ!』

 (#゚;;-゚)『……はい? 私を知っているのですか?』

 (・∀ ・)『冗談キツいな。俺だよ!』

 (#゚;;-゚)『知らないです……』

 (・∀ ・)『お前なぁ、俺をからかってんのか?』

 (#゚;;-゚)『いやですから……』

 (・∀ ・)『だから俺だって! 覚えてねぇのかよ!』

 (#゚;;-゚)『すみません、存じてません』


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526 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/18(金) 00:30:12 ID:mEkcAgWAO
 

(∩メ;ー;)「知るはずないよ、私は、そのときまたんきは既に殺したつもりだったんだから」

( <●><●>)「それはわかるのですが……助けてくれ、とは?」


訊かれて、一瞬でぃさんは戸惑った。
どう言えばいいのかわからない、
若しくは、自分でもよくわからない、
そんなところだろう。少し唸るも、答えた。



(∩メ;ー;)「殺し屋に狙われてる……とか」

(; <●><●>)「殺し屋ァ!?」


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527 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/18(金) 00:31:36 ID:mEkcAgWAO
 

(∩メ;ー;)「だから、刑事さんに『殺し屋が潜伏しているかもしれない』って言われた時、抗うことができなかったんです」

(∩メ;ー;)「もしかしてほんとうにいるかもしれない……
      あいつのあの時の顔は、とても冗談を言えるようなものじゃなかった」


それを聞いて、ワカッテマスさんが、後ろの方で、
のほほんとしていたワカンナインデスさんにアイコンタクトを送った。
それは、何かの質問だったと察する。
ワカンナインデスさんが、うーんと唸って、ゆっくり首を傾げたからだ。


.

528 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/18(金) 00:33:16 ID:mEkcAgWAO
 

( <●><●>)「もしかしたら、シャキーンさんを、殺し屋と勘違いしたのかも」

(`・ω・´)「あり得ないな。
      ……俺とまたんきは、知り合いなんだぞ」

( <●><●>)「! じゃあ、彼の言った『殺し屋』とは?」

(∩メ;ー;)「さぁ。ただの戯言でしょ」



長いため息をついたでぃさんが、弾痕を押さえていた手を離して、
そこにべっとりと着いている血を見、ポッケから取り出したハンカチで、それを拭った。
そして、弾痕を隠すために付けていたのと、同じ絆創膏を、ゆっくり貼った。
その上から、絆創膏からはみ出ている血の痕を、拭い、両手を交互にはたいた。


.

529 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/18(金) 00:34:24 ID:mEkcAgWAO
 


(#メメ゜-゚)「………あとは、なにもおかしいことは」

( <●><●>)「……わかりました」

(#メメ゜-゚)「この列車、あと十数分で着きます。そのあと、乗務はどうすれば?」

( <●><●>)「こちらの方で手配しています。
         とにかく、乗客にはパニックを引き起こさないよう、バレなければ」

(#メメ゜-゚)「……」

(#メメ゚ー゚)「………はは」


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530 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/18(金) 00:37:25 ID:mEkcAgWAO
 

束の間の、沈黙の空気が、漂った。
でぃさんは、抵抗する様子も、見られない。
思わぬ形で事件と遭遇し、またその場で解決して
疲れたのか、警部はぐったりとB−6の席に腰掛けた。


(´・ω・`)「……VIPでの解決か。3ヶ月振りだよ、全く」

( ><)「! そういや、そうでした! お久しぶりです!」

(´・ω・`)「ぶち殺すぞ」



そんな二人の光景に、私は、先程まで感じていた恐怖は忘れ、つい微笑んでいた。
ふと、時計に目を遣った。
13時48分。
発車後、大凡2時間で着く当列車は、
様々な事件と多くの悲しみを背負い、敷かれた長いレールの上を走っていた。


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531 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/18(金) 00:38:56 ID:mEkcAgWAO
 


(#メメ゚ー゚)「………」

(#メメ ー )「……さて」

( <●><●>)「?」


彼女は、ふと俯いて、ちいさく息を漏らす。
そして上に向けた首を、左右に数回揺らして、再び、今度は深い息を漏らした。


次の瞬間、視界が反転した。



(#メメ - )「はッ!」

っ( 、 ;トソン≡「!? きゃッ!」



(; <○><○>)「!!」

(;´・ω・`)「なッ!」


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532 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/18(金) 00:40:27 ID:mEkcAgWAO
 

瞬きをした瞬間に、目の前には、鬼のような形相のでぃさんが、眼前15センチの距離にまで迫っていた。
片手で胸ぐらを掴まれて、私を投げ飛ばす勢いで、一気にA−8から引っ張り出された。
そして一気に警部たちと距離をとられ、彼女と私は、前方から2列目に立っていた。

事態が呑み込めず、狼狽していた盛岡さんとくるうさんを、脅して
各々の自席から追い出し、警部たちのいるところに押し出した。
ライオンから逃げるかのようにして、そそくさと2人は距離をとった。


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533 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/18(金) 00:42:16 ID:mEkcAgWAO
 

私は、両腕を背中にまわされ、彼女の左腕一本で、両腕を抑え込まれ、
彼女の右手にあるナイフが、私の首に突きつけられていた。

私が腕に力を入れても、関節技でもかけているのか、びくともしない。
脚を動かすも、あまりに腕にかけられた力が強く、痛すぎて、思うように動けない。

その後、でぃさんが大声で言った。



(#メメ - )「どうせ私の人生は終わったんだ、せめて道連れにしてやる!」

(゚、゚;トソン「………え、なに……?」


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534 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/18(金) 00:44:08 ID:mEkcAgWAO
 

(;´・ω・`)「おい、どうしたんだ! 落ち着け!」

警部とワカッテマスさんが、同時に一歩を踏み出したが、
彼らの歩みを一瞬で止められたほどに凄まじい怒声が、車内に響き渡った。


(#メメ゚ -゚)「それ以上寄ったら、その瞬間、殺す!!」

( 、 ;トソン「……ッ!」



(; <●><●>)「なんのつもりだ、でぃ!」

(#メメ゚ -゚)「報復だ! こいつが、乗務員室に入ってこなけりゃ、私は、私は……」

(#メメ;□;)「私はァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
     ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッァア!」


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535 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/18(金) 00:45:41 ID:mEkcAgWAO
 


( 、 トソン

目の前が真っ白になり、人の声を、言葉として聞き取れないレベルにまで、耳が機能しなくなっていた。
身体が固くて、思うように動けないし、声帯は震えないので悲鳴もあげられない。
眼球が固定されてしまい、首も回らず、でぃさんと面と向かって話せない。


警部に委せるしかない、のか。


数多くの偽りを見抜いてきた警部だけど、今のでぃさんには、形無しだろうな、と思った。
なんたって、これはおそらく、でぃさんの偽りない、ほんとうの感情だろうから。
守るべき理性が崩壊し、感情が垂れ流しになっているのだ。


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536 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/18(金) 00:46:58 ID:mEkcAgWAO
 

(;´・_ゝ・`)「なんてことだ……」

川  々 )「………」



(; <●><●>)「要求はなんだ? 逃走か?」

(#メメ; -;)「こいつを殺して、私も、死ぬ!」

(;` ω ´)「!!」

(;`・ω・´)「バカなことはやめろ!」

(#メメ; -;)「誰がバカだばーか!」

(;`・ω・´)「お前だおまえ! いっつもバカなんだよ! 罪をこれ以上増やすな!」

(#メメ; -;)「私のこと、なーんにもわかってくれやしなかったくせに!」

(;`・ω・´)「………」


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537 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/18(金) 00:48:08 ID:mEkcAgWAO
 


警部は、いつ時計を見たのか、
辛辣そうな顔をし、ちいさく、ワカッテマスさんに言った。


(;´・ω・`)「……駅に着くまで、5分をきった」

(; <●><●>)「下手をすれば、都村さんを人質に、逃走を図るかもしれません」

(;´・ω・`)「…………」

(;´ ω `)「万事休す、か………?」


警部が肩を竦め、私を、じっと見つめる。
私と密着している彼女、でぃさんの心臓の鼓動が、
私にもダイレクトに伝わるのだが、非常に、脈打っている。
それにつられて、私も心拍数があがった気がした。


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538 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/18(金) 00:50:41 ID:mEkcAgWAO
 






(#メメ; -;)「………ばいばい」

( 、 ;トソン「!」

(;´・ω・`)「や、  ろ!  は若 、まだやり直    ぞ!」

(; < >< >)「    ぅ  」

(;`・ω・´)「    」

(#メメ;□;)「             」



本格的に、周りの声がなにも聞こえなくなった。
それは、私が、本気で死を覚悟したからだ。
私は、警部はワカッテマスさんなど、皆に、囲まれていたから、安心、しきっていたんだ。
だから、こうして捕まって、ナイフを突きつけられて、今にでも、殺されそうに、なって、いる。


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539 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/18(金) 00:51:46 ID:mEkcAgWAO
 



―――そのときに、唯一聞こえた音が
べりっと、なにかが剥がれる音だった。
続けざまに、男の声が、後ろから聞こえた。





「どうもぉ、しがない殺し屋ですよっとぉ」




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540 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/11/18(金) 00:53:16 ID:mEkcAgWAO
 



 イツワリ警部の事件簿
 File.1

 (´・ω・`)は偽りの香りを見抜くようです

 11章
  「忌まわしき過去」

    おしまい



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