- 149 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 14:23:56 ID:kDBQh9UYO
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5章「三人の乗客と四つの偽り」
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- 150 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 14:26:14 ID:kDBQh9UYO
その姿は目を掩いたくなるような光景だった。
黄色のシャツに、心臓付近に開いた穴から深紅の血が流れ出て、
その上から羽織っていた白いコートのせいでそれはより妖しさを演出している。
白い帽子を、まるで顔を隠すようにして被っていたので
ワカッテマスさんは彼が寝ているものだ、と勘違いしたのだろう。
白いコートを羽織った状態では、血は伺えないのだ。
いろいろと不審な点はあるも、それが死体であることそのものが不審なのだ。
警部が大声を張り上げる。
(´・ω・`)「おい、検死の道具はあるか!」
(; <●><●>)「ないですよ、私は監察医じゃなくてあくまで刑事です!」
(#゚;;-゚)「まず見るまでもなく銃殺じゃないですか!」
(;、;トソン「………」ガタガタ
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- 151 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 14:29:00 ID:kDBQh9UYO
( 、 トソン
いつのことだろうか、私が事件に巻き込まれた
という経歴があるのは知ってるはずだ。
犯人扱いされたり、第一発見者だったり。
その、いつしかの事件、いくつかの事件で私は幾度となく生々しい遺体を見てきた。
流血は止まれど固まってはいない、血。
それらは、思春期というデリケートな時期である私の脳に
トラウマとしてしっかり刻むにはじゅうぶんすぎた。
それが、今まさに蘇っている。
(´・ω・`)「トソンちゃん」
(( ( 、 トソン ))
(´・ω・`)「トソンちゃん!」
(゚、゚トソン「は、はい!?」
(´・ω・`)「……席に戻りなさい。
僕がやっとくから。ね?」
(;、;トソン「………」コク
警部は、私の手を強く握り、
目をじっと見て、そう指示した。
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- 152 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 14:30:44 ID:kDBQh9UYO
(#゚;;-゚)「……警部さん、確か言ってましたよね。
弾痕がない以上、捜査をしなければならないと」
(´・ω・`)「……」
(#゚;;-゚)「揃いましたね。
容疑者、凶器、そして弾丸……」
(´・ω・`)「……」
警部は、依然その死体を見つめ黙っている。
でぃさんは冷静に徹底しながら話をすすめている。
(#゚;;-゚)「……では、ここで捜査は終了です」
(#゚;;-゚)「乗客の皆様には申し訳ない限りですが、
列車の到着を待ち、捜査に臨ま……」
(´・ω・`)「素晴らしい直観力を持つ君のような人材が、
まさかこんな見落としをするなんてね」
(#゚;;-゚)「え?」
(´・ω・`)「わからないのかい?」
(´・ω・`)「この現場には、偽りが存在する」
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- 153 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 14:32:15 ID:kDBQh9UYO
私が見た一瞬で焼き付いた光景を思い返す。
座席に深く座り、背もたれにぐったりともたれ、
帽子で顔が見えないようになっていた。
血がべっとりと着いた黄色のシャツに上から
それを覆い隠すような白いコート。
ズボンには異変が見あたらず、帽子とコート込みの上
一見すると、それはまるで寝ているだけにしか見えない。
しかし警部は異変に気づき、失敬してコートのボタンを外したのだ。
そして、現在に至る。
(#゚;;-゚)「すみません、ちょっと頭が混乱していて、とても整理できません。
説明をお願いします」
(´・ω・`)「オーケーだ、ひとつずつ説明しよう」
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- 155 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 14:34:58 ID:kDBQh9UYO
そして、警部の声が淡々と耳に入ってきた。
(´・ω・`)「まず、位置関係はあとで言うとして、
犯人をシャキーンさんと仮定する。銃殺だ」
(´・ω・`)「銃殺、胸を貫いて且つこの出血だ、当然即死ね」
(´・ω・`)「ほら、早速一つ目の矛盾が生まれた」
( <●><●>)「わかりました」
その“一つ目”の矛盾にいち早く気づいたであろうワカッテマスさんの声が聞こえる。
( <●><●>)「それだと、なぜコートを着ているのかが問題になります」
(´・ω・`)「そうだ。ワカッテマスは一度遺体を
見ているのに、死に気づかなかった」
(´・ω・`)「隠されていたんだよ、コートで」
(´・ω・`)「死後に無理矢理着せられたと考えるのが一般的か」
一つ目の矛盾、それはコートの謎だ。
私が遺体を見たときに感じた不審な点、それはおそらくこの矛盾だ。
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- 156 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 14:36:00 ID:kDBQh9UYO
( <●><●>)「しかし……」
ワカッテマスさんが疑問を唱える。
警部がそのまま推理を続けた。
(´・ω・`)「ここで二つ目の問題が現れる。
あの発砲のあと、誰か動いたか?」
(;´・_ゝ・`)「! ぼ、僕はずっと自分の席にいたぞ!?」
間髪入れずに盛岡さんの否定の声が聞こえた。
実際、彼は動いてなかったのを私は知っている。
(´・ω・`)「そうだ。銃声の鳴った直後、
ワカッテマスたちが乗り込んできた。
そのとき、不審な動きをしている人はいたか?」
( <●><●>)「いたら9が取り押さえにいきますよ」
(´・ω・`)「ほら。一つ目の問題と食い違う」
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- 157 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 14:37:31 ID:kDBQh9UYO
(´・ω・`)「まさか死体が勝手に服を着まい。
真犯人の手によって着せられたに違いないのさ」
(´・ω・`)「だけど、それは不可能だ―――ひとりを除いて」
( <●><●>)「……」
ワカッテマスさんが警部から視線をそらした。
その視線を向けた先にいた人物、
彼女に警部とワカッテマスさんの視線は向けられていた。
(#゚;;-゚)「……私、ですか」
(´・ω・`)「まあ決めつけてはいないよ。
可能性を消していって、残った先にいたのが君だけだから」
( <●><●>)「しかし、
謎に直面した際、有り得ない事を消していき、最後に残った事が
どんなに奇妙な事でもそれが真実である、という話もあります」
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- 158 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 14:38:55 ID:kDBQh9UYO
(#゚;;-゚)「でも動機がない、まずこんな死体を
見たら大声を出さずにはいられません」
(´・ω・`)「その点はあとでまた考慮するとして、次の問題点だ」
(; <●><●>)「ま、まだあるのですか!」
(´・ω・`)「匂わないか? このどギツい香水の香りが」
( <●><●>)「……え? 香り?」
拍子抜けした声が聞こえ、においを嗅ぐ音が聞こえた。
ワカッテマスさんの肺活量はすごい、おそらく思いっきり吸い込んでいるのだろう。
鼻をつまんで彼は苦笑を浮かべている。
(; <●><●>)「これは……コロンなんかとはまた違う。なんというか……」
(´・ω・`)「パルファンだ」
(#゚;;-゚)「!」
.
- 159 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 14:40:12 ID:kDBQh9UYO
(´・ω・`)「あれ? また関係のありそうな人物が浮かび上がったよ?」
(#゚;;-゚)「……香水、ですか」
香水といえば、彼女……もといワゴンから
微かにパルファンが香ると警部は言っていた。
まさか、こんな場面で香水が話に出てくるとは思わなかったが。
警部が当時の話をぶり返す。
(´・ω・`)「ワゴンに私物の香水をこぼしたって言ったけど……
あれは嘘、だね?」
(#゚;;-゚)「わ、私は確かにこぼして……!」
(´・ω・`)「じゃあなんでこの遺体から香るんだい?」
(#゚;;-゚)「……ッ!」
でぃさんが、推理合戦になって初めて黙り込んだ。
そして今、警部はでぃさんを疑っている。
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- 160 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 14:42:55 ID:kDBQh9UYO
しかし彼女に深くは追究せず
警部の攻めはいったん止まった。
(´・ω・`)「ということだから、まだシャキーンさんを犯人と断定するには早い」
(´・ω・`)「捜査、続けるよ」
(#゚;;-゚)「……」
警部の挙動を、でぃさんは止めなかった。
ワカッテマスさんもその場から動き、彼について行く。
彼に監視されていたシャキーンさん、彼は特に
動くこともなく、ただ呆然と立ち尽くしている。
彼に尋問することがまだあるだろう、私はそう思うも、
それを声として発そうとするとおなかに力が入らず、声にならない。
彼らの跫音が止まった。
私が視線をそこに向けると、黒髪がきれいな女性が座っていた。
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- 161 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 14:44:07 ID:kDBQh9UYO
川 ゜々゚)
(´・ω・`)「……彼女の名は、素直くるうか」
川 ゜々゚)「くるうはくるうだよ!」
(´・ω・`)「彼女に関するデータは?」
( <●><●>)「彼女は、精神に障害を患っているものと思われます」
(´・ω・`)「ほう……」
警部はそれに深追いをしない。
「くるうだよ」と連呼している女性の甲高い声が、
遠く離れた席に座っている私の耳にもよく聞こえる。
その甲高い声を、ワカッテマスさんの低い声が
かき消すように話しかけた。
( <●><●>)「おそらくはリハビリか何かでしょう」
(´・ω・`)「まあ、精神障害者に頻繁に外出をさせるというのはよく聞くな」
川 ゜々゚)「セーシンショウガイシャじゃないよ、くるうだよ!」
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- 162 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 14:46:18 ID:kDBQh9UYO
警部が少し彼女から距離を置き、ワカッテマスさんに耳打ちする。
幸い警部の口がこちらに向いていたので、
若干ではあるがその内容を聞き取れた。
(´・ω・`)「……昔、見たことある顔のような気がする」
( <●><●>)「警部も思われますか?
奇遇ながら、私もです」
(´・ω・`)「まあ、いいか」
耳打ちを終え、彼女と再び向き合った。
相変わらず彼女はふにゃふにゃと自己紹介を続ける。
(´・ω・`)「ええと、くるうさん……持ち物を伺っていいですかな?」
川 ゜々゚)「くるうはなにももってないよ!」
(;´・ω・`)「いやいや、財布とかはあるでしょ」
川 ゜々゚)「サイが謝ってごめんなさい!」
(;´・ω・`)「………」
(´・ω・`)「ワカッテマス」
( <●><●>)「はい」
彼女に話が通じないと察したのか、すぐにワカッテマスさんに話を振った。
動じることもなく彼に応える。
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- 163 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 14:48:23 ID:kDBQh9UYO
( <●><●>)「彼女の持ち物は小銭入れ、あと
特定の相手にのみ繋がる電話があります」
(´・ω・`)「特定?」
( <●><●>)「俗に言うジュニアケータイで、
おそらくは保護者に繋がるようになってるのでしょう」
(´・ω・`)「……見た目は20歳前後だがな」
( <●><●>)「ちなみにGPS機能搭載の機種でして、
もしもに備えての配慮がなされているものです」
( <●><●>)「あと住所と名前と備考が書かれてある
名刺のような札もありました」
( <●><●>)「銃やナイフは疎か、殺傷能力を持つ
道具はなにも持ってないようです」
(´-ω-`)「……そうか、ご苦労」
一通りの報告を受け、警部はひとまずの労いの言葉をかけた。
しかし、と言葉を挟んで彼は大声で言った。
(#´゚ω゚`)「調べ終えてるならそれ先に言えやぁぁぁぁ!!」
(゚、゚;トソン「(ごもっともだ!
警部のくせにごもっともだ!)」
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- 164 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 14:49:30 ID:kDBQh9UYO
(; <●><●>)「なにぶん、言う機会がなかったので……」
(´・ω・`)「……まあ、仕事はできてるということで許す」
この一連の流れで、一気に3歳は老けたかのように、
警部の顔にどっと疲れが溜まったのが見えた。
その席からふたつ前、これまたくるうさんと
同じように騒いでいる男性がいるのだが、
ここからは彼の顔の細かい表情まではわからない。
.
- 165 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 14:51:13 ID:kDBQh9UYO
\( ^o^)/
(´・ω・`)「人生オワタ?」
( <●><●>)「はい。年齢は18、歴としたヒト科のオスです」
\( ^o^)/「ナメてんのかオラ!」
(゚、゚;トソン「(もっと怒れよ!)」
ワカッテマスさんのボケなのか、またSモードに入っているのかはわからないも、
彼にこけにされたわりにその男性は笑顔だった。
言ってる内容そのものは怒っている(?)のだが、声も明るく手をじたばたさせている。
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- 166 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 14:52:03 ID:kDBQh9UYO
( <●><●>)「で、彼の報告ですが……」
\(;^o^)/「オワタ! 俺まじオワタ!」
(´・ω・`)「……なんかこいつ煩いぞ、黙らせろ」
\( ^o^)/「おまえに俺のなにがわかるんでい!」
( <●><●>)「……警部、その件なんですが、
聞いて驚かないでください」
(´・ω・`)「うん」
( <●><●>)「この男性、ラウンジのプラットホームに
荷物を忘れてきてるんです」
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- 167 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 14:54:46 ID:kDBQh9UYO
(´・ω・`)
真顔で報告するワカッテマスさん、
その事実を否定しないオワタさん、
彼らの前で警部は一瞬固まった。
私は、彼の推理のロジックが繋がったのか、若しくは
お前は嘘をついている!とか言って尋問するのかと思った。
しかし、彼が発した一瞬の声を聞き逃さなかった。
(´・ω・`)「………」
(´・ω・`)「ぶっ」
\(;^o^)/「?」
(´;ω;`)「ぶひゃひゃひゃひゃ!
ただのバッカでねーの!」
\(;^o^)/「黙れ! おまえに俺のなにがわかるんでい!」
( <●><●>)「最初は嘘かと思いましたが、臨時でラウンジ駅に配属させていた
警官に調べさせると、確かにそれらしき荷物がありました」
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- 168 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 14:55:57 ID:kDBQh9UYO
( <●><●>)「人生オワタ、と名前が書いてある下着もあったので間違いないです」
(´;ω;`)「18で、ぱ、パンツに名前ひゃひゃひゃひゃ!」バンバン
\(;^o^)/「だ、黙れ黙れ!
カーチャンが勝手に書いただけなんだ!」
警部のあの独特な嗤いがオワタさんを刺激する。
手をじたばたして暴れ、黙れと連呼しているも
警部は全く止まる様子が見られない。
それどころかしきりに腹を叩き、涙を流してまで笑っている。
あ、いま咳した。
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- 169 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 14:57:55 ID:kDBQh9UYO
(´;ω;`)「ひー… ひー…」
( <●><●>)「いま彼が持っているのは、たまたまポケットに入れてた
小型の音楽プレイヤーとそのイヤホン」
( <●><●>)「あと夢と希望は持っているはずです」
\(;^o^)/「おまえさっきから俺のことバカにしてるだろー!」ジタバタ
(´;ω;`)「ぶひゃひゃひゃ! ワカッテマスギャグのセンス上がったな!」
いったんは収まった警部の笑いのツボが、
彼のギャグで更に刺激され、再び笑いの沸点まで持ち上げられた。
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- 170 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 14:59:19 ID:kDBQh9UYO
( <●><●>)「お褒めの言葉ありがたく頂戴します」
わかった、この人一見無表情だけど
おそらくその裏では腹が捩れるほど笑っているに違いない。
そして帰宅して、家でオワタさんのことを
思い出して声を上げて笑うに決まっている。
彼の笑いなど聞いたことも見たこともないが。
ちなみに私も同じく笑っているも
おなかに力が入らないので声をあげて笑えない、
つまりにやにやしているだけの実に気持ち悪い顔となっている。
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- 171 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 15:01:01 ID:kDBQh9UYO
(´ぅω-`)「じゃあ、こいつも、犯行は不可能、
と見て、いいんだ、な?」
警部は落ち着きを取り戻そうと、涙を拭いて本題に入った。
しかし呼吸が未だ整わず、途切れ途切れの発言となっていた。
しかしワカッテマスさんは更に追い打ちをかける。
( <●><●>)「おそらくは。
まあ、銃を持ってても彼には銃殺なんて到底できないですよ、
きっと間違えて自分の腕でも撃ちます」
(´;ω;`)「ひゃひゃひゃひゃ! それもそーか!
ってかいちいち笑わせるなコラ!」
\(;^o^)/「俺はのび太の何倍も射的の天才だぞ! ナメんな!」
(´・ω・`)
(´;ω;`)「のォォォびィィィ太ァァァァァぶひゃひゃひゃ! ゲホッ、ゲホッ」
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- 172 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 15:02:33 ID:kDBQh9UYO
( <●><●>)「グッ……ぷぷ……」
(<●><●> )≡「……失礼」タッ
ついに、ワカッテマスさんも我慢の限界なのか
すぐに一号車前方の乗降口へ向かった。
左手で手すりを掴み顔を俯け、口を右腕で塞いで
必死に笑いを抑えようとしているも、肩がびくびく震えている。
彼の笑う姿を見てみたいものの、見たら
きっと後悔する気がするのでやっぱり遠慮しておく。
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- 173 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 15:03:29 ID:kDBQh9UYO
\(;^o^)/「おい、いい加減に教育委員会に訴えるぞ!」
(゚、゚;トソン「(なぜに教育委員会!?)」
(´;ω;`)「も、もうしゃべるな! 公務執行妨害で捕まえるぞ!」
\(;^o^)/「えっ嘘!? やめてください謝るからこのとーり、ちょ俺まじオワタ!」
(´;ω;`)「ひゃひゃひゃひゃ! ウケる!」
オワタさんが必死に頭を繰り返し下げる。
しかし高速で頭を上下にするので、長めの髪の毛がふわふわと靡く。
しかもそれと並行して両手もバタバタ動かすので、
なんだかもう訳の分からない光景となっていた。
これで私と同い年とは、なかなか信じがたい。
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- 174 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 15:04:45 ID:kDBQh9UYO
見かねたのか、でぃさんがそれを止めに入る。
(#゚;;-゚)「警部、いプッい加減に捜査を再開してください」
\(;^o^)/「いまおまえも笑ったな!? 笑っただろ!」
(#゚;;-゚)「これ以上騒ぐと業務妨害で告発しますよオワタさん」
\(;^o^)/「ひどい! 割とひどい!」
( <●><●>)「そうですよ、早く本題に入りましょう」
\(;^o^)/「おまえにだけは言われたくねーんだよデコスケ野郎!」
●><●> ) 「ちょっと失礼」タッ
.
- 175 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 15:05:48 ID:kDBQh9UYO
(´;ω;`)「……ふぅ……フゥ」
(´・ω・`)「うぉっほん!」
ワカッテマスさんがその場から離れて
またも笑いを堪えることで必死になっている。
でぃさんがオワタさんを制し、その隙に
警部とワカッテマスさんは笑いを必死で止めていた。
警部は少ししてやっと落ち着きを取り戻し、
オワタさんに指を突きつけてキツめに確認をとった。
(´・ω・`)「つまり、銃殺事件に関しては無関係だな?」
\( ^o^)/「そうだっつってんだろ!」
(´・ω・`)「ならいい。おい、ワカッテマス!」
(( < >< >))
( <●><●>)「あ、はい」
(゚、゚トソン「(まだ笑ってたなこいつ)」
.
- 176 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 15:06:48 ID:kDBQh9UYO
しきりに体を震わせ、両手で自身の体を抱くようにしておなかをさすっていた。
警部の呼びかけに、彼は若干遅れるも返事した。
(´・ω・`)「えっと、そこのルカ……? さんも済んでいるんだな?」
( <●><●>)「一応ざっとは持ち物も検査しましたが……」
警部とワカッテマスさんはルカさんの方に目を向けた。
しかし、ルカさんは答えない。
それもそうか。
从* -ノリ
.
- 177 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 15:09:03 ID:kDBQh9UYO
( <●><●>)「被害者の遺体を見て気絶中です。起こします?」
(´・ω・`)「いや、起こしてもこれからまだまだ気絶する羽目になるだけだ。
それより彼女の持ち物は?」
( <●><●>)「? ……財布と手帳、あと履歴書が」
(´・ω・`)「履歴書……面接にでも行こうとしてたのか?」
( <●><●>)「さぁ。
しかし、血を見て気絶するような人に、今回の犯行は不可能かと」
(´・ω・`)「まあ……とりあえず可能性は低い、ってとこか」
( <●><●>)「限りなく低いです」
(´・ω・`)「え?」
.
- 178 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 15:10:45 ID:kDBQh9UYO
( <●><●>)「彼女は乗車からずっと寝ていたようで、
それは彼女の顔を見ればわかるかと」
(´・ω・`)「あー今見てた。じゃあ彼女も白か」
気絶しているルカさんを起こすことなく、
彼女への追究はそこで切り上げた。
次に警部は、後ろにいた盛岡さんに目を向ける。
ゲームはしておらず、縮こまっている。
(;´・_ゝ・`)「……」
(´・ω・`)「彼の名は……」
( <●><●>)「盛岡デミタスです」
(´・ω・`)「持ち検したいんだけど……大丈夫か? 顔色悪いが」
(;´・_ゝ・`)「……」
(´・_ゝ・`)「あ、はい。トイレ行きたいだけなので」
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- 179 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 15:12:08 ID:kDBQh9UYO
(´・ω・`)「一応先に調べさせてもらうよ。
ワカッテマス、彼のデータは?」
ワカッテマスさんは手帳を開き、
細かい字が並んでいるページを上から順に見ていった。
盛岡さんのデータを書いてある欄を見、警部に噛み砕いて説明する。
( <●><●>)「26歳フリーター、発砲騒ぎが起こるまでは
オンラインゲームを楽しんでいました」
(´・ω・`)「オンライン……」
疑われていると勘違いしたのか、盛岡さんは
汗だくになって警部に弁論を試みた。
この人に一度睨まれると、推理にて
どこまでもつけ回されるから、それだけは嫌なのだろう。
私だって嫌である。
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- 180 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 15:13:30 ID:kDBQh9UYO
(;´・_ゝ・`)「で、でも履歴は残ってますし、
対戦相手は知り合いだから証言もさせれますよ!」
(´・ω・`)「電車内でオンラインゲームなんてできるのか?」
( <●><●>)「え? あ、そういえば」
警部の何気ない一言で、ワカッテマスさんは
思い出したかのようにでぃさんにその点を尋ねる。
でぃさんはケロッとした顔で答えた。
( <●><●>)「電車内でオンライン通信ってできるのですか?」
(#゚;;-゚)「あ、はい、一応。
コンセプト上、インターネット通信は完備されてます」
コンセプト……まあ、長距離走行を前提にした列車だからだろう。
盛岡さんも、その機械なのか小さなコネクタを見せる。
.
- 181 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 15:15:34 ID:kDBQh9UYO
(´・_ゝ・`)「友だちに証言はさせなくていいですか?」
(´・ω・`)「あとで聞くよ。
あと持ち物を調べている間、
乗車の動機を教えてください」
(´・_ゝ・`)「はい、カバンです。
動機……というか、今からオフ会なんですよ」
警部がサックを受け取りながら聞き返した。
サック、というよりリュックと呼ぶ方が相応しいか。
(´・ω・`)「オフ……?」
( <●><●>)「簡単に言えば、ネット上で知り合った人と
実際に会って遊ぶ行事みたいなものです。
オフラインで会うからオフ会、です」
(´・_ゝ・`)「詳しいですね」
( <●><●>)「まあ、その手の話については」
.
- 182 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 15:16:28 ID:kDBQh9UYO
(´・_ゝ・`)「乗車してからずっとゲームしてたんですが、
これの大会に出るためにVIPまで訪れたんです」
( <●><●>)「じゃあ、対戦相手というのは……」
(´・_ゝ・`)「大会に出る友だちとの練習試合、というべきか」
( <●><●>)「じゃあ友だちとはネット上の方ですかね」
(´・_ゝ・`)「はい。といっても頻繁にオフで会いますけど」
( <●><●>)「警部、この人はアリバイがありますよ」
(´・ω・`)「え?」
(; <●><●>)「話に入っててくださいよ!」
警部はリュックのなかの物を丁寧に確認している。
ワカッテマスさんと盛岡さんの話をガン無視していたらしい。
.
- 183 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 15:18:40 ID:kDBQh9UYO
( <●><●>)「まあ……持ち物はどうですか?」
(´・ω・`)「ノートパソコンとそれの充電アダプター、小説もあるな。
あとは財布とか乗車券の半券とか」
(;´・ω・`)「それと……なんだこれ?」
警部はやや装丁が雑な本を取り出した。
それを盛岡さんに確認する前に、彼は
顔を赤らめてすぐにひったくった。
(*´・_ゝ・`)「わわっ! こ、これは事件とは無関係ですから!」
( <●><●>)「……同人誌?ですかね、それも成人向けの」
(´・ω・`)「それもオフ会に?」
(*´・_ゝ・`)「じ、実は僕とある同人サークルの一員でして、
コミケでの売れ残りをその友だちあげようかなと思いまして……」
(;´・ω・`)「同人サークル? コミケ? 売れ残り?」
.
- 184 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 15:20:26 ID:kDBQh9UYO
警部がオウムに成り下がったかのように、繰り返し尋ねる。
だんだんちいさくなる盛岡さんの声を
ワカッテマスさんが上書きして警部に言う。
( <●><●>)「今度教えますから。
まあこれも事件とは無関係です」
(;´・_ゝ・`)「助かるよ、これ中身確認されたらまずいからさ……過激だし」
( <●><●>)「表紙だけでじゅウブん察せます」
ワカッテマスさんがそう動揺しながら言う。
私も興味本位でその表紙を見てみたいのだが、
心の声がそれを拒んでいる。
(*´・_ゝ・`)「いえ、表紙は触手だけなんですが
中はSMありーの獣耳ありーのふたな」
( <●><●>)「口を慎みなさい、逮捕しますよ。
もう公然わいせつとか関係なく」
(;´・ω・`)「触手? SM? 獣耳?」
( <●><●>)「あなたもです警部」
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- 185 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 15:22:28 ID:kDBQh9UYO
触手ってなんだ!
つーかSMって!
獣って猫耳とか? なんだそれ!
なんて心の中でツッコむも、彼らはそんな事で
いちいち躓いている訳にもいかず、捜査を再開することになった。
盛岡さんは少々がっかりした顔をしている。
余程同人誌について語りたかったのだろう、
しかし語ると捕まるに違いない。
( <●><●>)「ええと、これで全員の取り調べは終わった、んですかね」
(´・ω・`)「まだまだいるだろ」
( <●><●>)「え?」
警部は、一号車後方に向かって歩いてきた。
最初私の番か? と思うも実はそうではなく、
ちょうど私とワカッテマスさんの中間で止まった。
(´・ω・`)「まずはあんただよ、シャキーンさん」
(`・ω・´)
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- 186 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 15:23:48 ID:kDBQh9UYO
(´・ω・`)「ワカッテマス、こいつのデータはさっぱりだろ?」
( <●><●>)「あ。忘れてました」
平然とそう言ってのけるワカッテマスさんに
合わせてシャキーンさんは舌打ちをした。
そのまま警部を見上げ、目を細める。
(`・ω・´)「カバンの中身は見せただろう。
あと何がいるんだ?」
(´・ω・`)「証言だよ」
(`・ω・´)「……何の、かな」
シャキーンさんの問いに答えるべく
遺体に指を突きつけて、警部は言う。
(´・ω・`)「あんた、被害者のこと面識があるな?」
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- 187 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 15:25:31 ID:kDBQh9UYO
( <●><●>)「え? でも、根拠はな」
(´・ω・`)「もしあんたが銃殺したなら、
面識は必ずあるはずだ。
そして―――」
(´・ω・`)「銃殺してなくても、面識があるはずだ」
(`・ω・´)「根拠を聞かせてもらおう」
警部が強気で攻めるも、シャキーンさんも同じくらいに強気になっている。
先ほどまでとは違い、冷静沈着さに拍車が掛かっている。全く動じない。
(´・ω・`)「一つ、撃たれた被害者の見方だ。
みんな“前方”から見て“弾痕”を見ていた」
眉ひとつ動かさないシャキーンさんに、
警部が「しかし」と言って続ける。
(´・ω・`)「あんたは“斜め後方”……今座ってるその席から被害者の“脇腹”を見ていた」
(`・ω・´)「見ていない!」
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- 188 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 15:27:20 ID:kDBQh9UYO
(´・ω・`)「いいや、見てたね」
(´・ω・`)「そして、今の解答がその最たるものだ。
僕のどうでもいいような質問に『違う』と即答した。
別に一見どうでもいい質問なのに。それはなぜか?」
(`・ω・´)
(´・ω・`)「……あんたも、知ってるんだな?
被害者の脇腹のこと」
(`・ω・´)「なんのこと……だね?」
(´・ω・`)「ワカッテマス! 被害者の脇腹を見ろ、右だ!」
( <●><●>)「は、はい? 右脇腹……と」
睨み合う警部とシャキーンさん、
警部のいきなりの指示で戸惑うも、ワカッテマスさんは遺体のコートを払いのけた。
そして「な!?」と声をあげる。
(; <●><●>)「な……なんだこれ?」
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- 189 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 15:28:48 ID:kDBQh9UYO
(´・_ゝ・`)「何があったんですか? 騒がしい」
(゚、゚;トソン「(あんたは寛ぎすぎだっつーの!)」
小説を読んでいたであろう盛岡さんが、
後ろで騒ぐワカッテマスさんを見てそう言った。
さっきまでの緊張はどこへやら、すっかり元のオフ会気分に戻っていた。
ワカッテマスさんは彼に構わず、警部とシャキーンさんに
聞こえるようにその有り様を告げた。
( <●><●>)「……ちいさな“切り傷”、またそれによる出血が少々」
(;`・ω・´)
(´・ω・`)「で、もう一つ。
あんた、持ってたよね? ナイフと、その腕の“切り傷”」
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- 190 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 15:30:28 ID:kDBQh9UYO
警部の推理を止めるが如くシャキーンさんが否定した。
警部は澄まし顔のままだが、シャキーンさんは若干顔がゆがんでいる。
(;`・ω・´)「この傷は事故だ! 自分で……」
(´・ω・`)「なんの?」
(;`・ω・´)「……」
(´・ω・`)「ちいさな傷がひとつ、それならわからなくもない。
でも、あの時のようにあんな悲鳴出す程の大きな傷が
いくつもあるのは事故ではない、事件だ」
(´・ω・`)「ナイフ、切り傷、そして発砲の容疑者とそれの被害者……
関係ありそうだね?」
(`・ω・´)「…………く」
(;`-ω・´)「………言えば、いいんだろ? 言えば……」
(´・ω-`)「そ! それが市民のギム、ってもんでしょ」
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- 191 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 15:31:42 ID:kDBQh9UYO
諦めと焦りの意味で片目を瞑るシャキーンさんと、軽い気構えでウインクし勝ち誇る警部。
もう警部には、結末を見透かしているような気がした。
(`・ω・´)「だが、今から言うことは全て事実で、
尚且つ今回の発砲事件とは全く関係のないことだ!
そこを留意してほしい」
(´・ω・`)「それを判断するのはこっちさ」
(`・ω・´)「………話すぞ?」
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- 192 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 15:33:56 ID:kDBQh9UYO
(`・ω・´)「何分だったかはあまり覚えてない。
一度目の大きな揺れ以降、また30分より前だ」
(`-ω-´)「トイレで用を足した私が扉を開くと、その男が立っていた……
いや、たまたまトイレに行こうとしていただけに過ぎないだろうがな」
(;`・ω・´)「俺の顔を見るや否や、奴は腰から何かを抜いた」
(`・ω・´)「それが何か把握できる頃には、扉に手をかけていた私の右腕が切りつけられていた。
奴が握ったのは、ナイフだったということだ」
(`・ω・´)「俺は咄嗟に持っていたナイフで応戦した。
しかし、俺は右利き、ナイフを突きつける際にこの腕をまた切られた、
しかも今度は深くな」
(`・ω・´)「しかし切られたも、退かずに闇雲に
横に振ると、たまたま脇腹近くに当たった」
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- 193 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 15:36:44 ID:kDBQh9UYO
(`・ω・´)「浅くはなかったものの、それで……」
(;´・ω・`)「すすす、ストップ!」
(`・ω・´)「まだ終わってないぞ」
シャキーンさんの証言を聞きかねたのか、警部が困り顔で証言を止めさせた。
当然納得いかないという表情をするも、警部の心情も当然困ってて当然だった。
(;´・ω・`)「何一つ、嘘をついてない?」
(`・ω・´)「ああ。そう言うと思って前置きしたんだがな」
(;´・ω・`)「だってあんた、その証言はむちゃくちゃだ!」
(`・ω・´)「なんだと?」
(;´-ω-`)「だって……」
(´・ω・`)「今の証言に、最低4つ、おかしいところがある」
( <●><●>)「よ、4つも……?」
(#゚;;-゚)「車内でナイフなんてだめです! 逮捕です!」
(´・ω・`)「今はそれどころじゃないから黙ってて」
(#゚;;-゚)「は、はい」
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- 194 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 15:39:15 ID:kDBQh9UYO
一度深呼吸をして、警部は追究の体勢に入った。
物怖じせず矛盾をひとつずつ暴こうとしているのがわかる。
余談ではあるが、警部はよく「矛盾」を「偽り」と呼ぶ。
刑事時代の通り名からだ。
そして、「矛盾ではあるが偽りでない点、それが事件を解く鍵となる」と本人は言う。
(´・ω・`)「まず一つ目。
なぜあんた、そして被害者はナイフを常備してるんだ」
(`・ω・´)「被害者はわからないが私に至っては理由は言えない」
( <●><●>)「正直に証言しろ!」
(`・ω・´)「法廷で言うさ。どうせ俺が被告人だろうからな」
(´・ω・`)「本当のことを言ってくれれば、事件が解けるかもしれないし、
真犯人も見つかるかもしれないんだけど……」
(`・ω・´)「……フン」
シャキーンさんは、一度鼻を鳴らしたきり
警部にその件を言うことはなかった。
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- 195 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 15:43:42 ID:kDBQh9UYO
(´・ω・`)「…………続いて、二つ目だ。
なぜ被害者は襲いかかった……というのは野暮として、
なぜ被害者はわざわざトイレの扉に触れていた右腕を狙ったんだ」
(´・ω・`)「彼の視点で言えば一番遠い位置にあるというのに」
( <●><●>)「確かに……
襲うのであれば一番近い位置を攻撃すればいいものを」
(`・ω・´)「知るか。襲ったのは私ではないのだから」
(´・ω・`)「ふぅん……」
少し間を置いて、警部は
シャキーンさんの右腕を指し、言った。
(´・ω・`)「……三つ目。なぜあんたの右腕のコートは切れてないんだ」
傷を隠すように伸ばしているシャキーンさんのコートを見て、そう言う警部。
確かに彼もこのまま武力抗争をしていたなら
言うまでもないが、間違いなく、破れている。
(`・ω・´)「私はこの時は脱いでいたんだ。文句あるか?」
( <●><●>)「……って、どれも大したことない食い違いじゃないですか、警部」
(´・ω・`)「……」
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- 196 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 15:48:33 ID:kDBQh9UYO
警部は静かになった。
てっきり、自分が劣勢に置かれているのを確認しただけかと思ったのだが、
実際は逆、ほんとうはこれからの出方を考えていただけだったのだ。
警部の顔から、まだ余裕の笑みが消えてないのだから、そう判った。
(´・ω・`)「四つ目、これが一番妙なんだよ」
( <●><●>)「……もしかして、『コート』ですか?」
首を挟むように、警部に代わりワカッテマスさんが答えた。
「その通り」と、クイズ番組宛らに警部が言った。
(´・ω・`)「本当なら、コートの上から傷がつくんだよ、これ」
(;`・ω・´)「…………」
(´・ω・`)「どうした」
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- 197 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 15:49:44 ID:kDBQh9UYO
警部の指摘に、溜まっていた汗が一気に溢れ出たのか
と思うほどに、シャキーンさんは狼狽えた。
じっと警部の顔を見つめ、彼がそのピュア(?)な瞳の奥を見ては口を開いた。
(;`・ω・´)「……絶対に、信じろよ?」
(´・ω・`)「なんだよ」
(`・ω・´)「……切ったんだ」
(´・ω・`)「え?」
( <●><●>)「切ったって……」
(`・ω・´)「………」
(`-ω-´)「確かに切ったんだ、“コートの上から”確かに」
(´・ω・`)「……妙、だ」
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- 198 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 15:53:38 ID:kDBQh9UYO
(#゚;;-゚)「だって、それだったらコートも破けるはずなのに……」
( <●><●>)「破けてませんね、ちっとも」
その場が、瞬く間に騒然となった。
彼が嘘をついている、若しくは彼は
捜査を攪乱しようとしているのかもしれない。
しかし、顔を見る限りはそんな風には見えない。
また、先ほどから水飲み鳥の如く頷いていたでぃさんが、はじめて動揺した。
(;`・ω・´)「だから言いたくなかったんだ! だが確かに、その白いコートから……」
( <●><●>)「あなたと同様に、向こうもコートを脱いでいたとか」
(`・ω・´)「いいや、こいつは間違いなく着ていた」
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- 199 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/12(月) 15:57:49 ID:kDBQh9UYO
( <●><●>)「勘違いでしょう」
(`・ω・´)「間違いない、そいつはコートは着ていた。
ついでに切ったものもあるからな」
(´・ω・`)「……一応聞く、なんだ?」
(`・ω・´)「『アーボンオレンジ』だよ」
(´・ω・`)「あ……」
(;´・ω・`)「アーボンオレンジぃ?」
警部が聞き返す。
アーボンオレンジといえば、警部が彼の傷を暴く際に用いた、あれか。
高貴な香りが漂い、治癒力に長けているという不思議な果実。
それが、なぜ今に。
イツワリ警部の事件簿
File.1
(´・ω・`)は偽りの香りを見抜くようです
5章
「三人の乗客と四つの偽り」
おしまい
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