(´・ω・`)は偽りの香りを見抜くようです

210 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/19(月) 15:43:14 ID:PZuwl2n.O
 


6章「二つ目の『   』」


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211 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/19(月) 15:45:49 ID:PZuwl2n.O
 


アーボンオレンジ、突如としてあらわれたその名前について、
シャキーンさんは別段不思議なことでもない、と言いたげな顔をして、言った。


(`・ω・´)「上着のポケットに入ってたんだ。それを一緒に切り落とした。
      それも含めて続きを話したいんだが、いいか?」

(´・ω・`)「……止めてすまんかったな。続けてくれ」


深呼吸、とまでは言わないにしても、
やや大きく呼吸して、シャキーンさんは証言を再開した。



(`・ω・´)「脇腹を切った時、奴は逃げようとしたが、当然私も許さない」

(`・ω・´)「二号車に駆け込む前に、奴が二号車とトイレ前を仕切っている壁から
      二号車乗客に姿を見せる前に俺が背中を……切りつけた!」

(`・ω・´)「慌てて奴は走り去った。私も追いかけたかったものの……
      如何せん傷がひどい、もう一度トイレに逃げ込んだ」

(`・ω・´)「その際に見つけたのがアーボンオレンジだ。
      上着に入っていたのをたまたま切ってたんだろう」

(`・ω・´)「俺は、それを、塗った。塗ったくった」


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212 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/19(月) 15:47:33 ID:PZuwl2n.O


(`・ω・´)「そして暫く経ってからトイレを出たものの、まだ傷から血が出ていた」

(`・ω・´)「帰る訳にもいかないから、トイレットペーパーで飛び散った微かな血を拭いてまわった」

(`・ω・´)「全部拭き終える頃、そこの女が来たんだよ」


(゚、゚トソン


(゚、゚トソン「え、私ですか!?」


今回、急に話を振られてばかりだ。
彼らの話を聞いていると、やはり何の前触れなく、シャキーンさんに名を指された。
いや、呼んではないも、こちらに一瞥を与えるだけで充分だ。


(`・ω・´)「まあその時こいつは私に気づかなかったがな。
      その後も、私はトイレ前と乗務員のスペースをうろちょろしていた」

(`・ω・´)「仕方ないから帰ろうとすると、急にトイレの扉が開いて……こいつに体当たりされた」

(-、-;トソン「はうっ!」


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213 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/19(月) 15:49:01 ID:PZuwl2n.O


(`・ω・´)「………こんなところかな」

彼は一言話し終えてこちらを向いた。
しかし睨むこともなければ声をかけることもなく、警部と再度対面する。
正直言って、証言に私が用いられているだけで心臓がドキドキする。

(´・ω・`)「うーん……追究の前にトソンちゃんに2つ確認」

(゚、゚トソン「は、はい?」

(´・ω・`)「彼はその時コートを着ていた?
      あとそれは何分頃の話?」

(゚、゚トソン「え、ええと……」


必死にあの一瞬を思い出す。
とは言っても、第一印象が恐ろしすぎて何も覚えちゃいない。
時刻は、警部に車内販売をやっているかの偵察を要求され、
そして戻ってきたとほぼ同時にワゴンがきたから。

(゚、゚トソン「コートまでは覚えてないですけど、時刻は30分手前です」

(´・ω・`)「わかった、ありがとさん」


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214 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/19(月) 15:51:06 ID:PZuwl2n.O


(´・ω・`)「さて……何から言うべきか」

( <●><●>)「おかしい点はあります?」

(´・ω・`)「ある、たくさん。でも……」

(´・ω・`)「これはいったい……」ボソッ

( <●><●>)「え?」

(´・ω・`)「なんでもない。シャキーンさん、ちょいと伺うよ」

(゚、゚トソン「………」


警部はふと口から漏れた独り言のように、確かに言った。
「これはいったい」と。
続きに「どういう事なんだ」と、補完されているのだろう。
それの意味を考えると、ひとつわかることがある。
この事件には、まだまだ明かされていない真実があるという事だ。


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215 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/19(月) 15:54:06 ID:PZuwl2n.O


(´・ω・`)「その傷を見つけた時も思ったんだけど、
      アーボンオレンジの効能を知ってたのかい?」

(`・ω・´)「ああ。実際、この傷もそれがなければ
      未だに肉が見えていただろう」

(´・ω・`)「……まあ、事実関係はいいじゃない。知ってたの?」

(`・ω・´)「? あ、ああ……おかしいかね?」

(´・ω・`)「いや……じゃあいいんだ」

首を傾げながら、警部は続けて質問内容をかえ
再び平然としているシャキーンさんに問いかけた。

(´・ω・`)「じゃあ“血”について詳しく聞かせてくれませんか」

(`・ω・´)「なにを」

(´・ω・`)「そうですねぇ。その量と、飛んだ箇所だ」

(`・ω・´)「そんなのを聞いてどうするつもりだ」

(´・ω・`)「………あとで調べるからね」

( <●><●>)「9が戻ってきてからですけどね。
         ルミノール試薬はひとつしかないですから」

今思ったんだけど、あの人が捜査の道具ありったけを
持って行ったせいで、割とこっちが迷惑を被ってないか?
これで成果なしなんですとか言って手ぶらで戻ってきたら、
警部の顔が、それはすごい形に変形されそうだ。


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216 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/19(月) 15:57:43 ID:PZuwl2n.O


(`・ω・´)「……仕方ないな。
      当然トイレの扉、その足下、あと二号車への
      入り口とトイレの中間にも垂れていた気がする」

(´・ω・`)「遠くに飛んでいったとかは?」

(`・ω・´)「ない。銃ならともかく、お互い刃物だ。飛んでせいぜい1メートル。
      ぱっと半径1メートル付近も見たが、目につく程の出血は見当たらなかったな」

(´・ω・`)「その間、トイレ前に訪れたのはトソンちゃんだけで?」

その質問に、シャキーンさんは目を閉じてゆっくり答えた。
老人が、過去を振り返って「あの頃はよかった……」とでも言うように。

(`・ω・´)「運が良かった。交戦の最中や血を拭き取っている時に誰かきたら……」

(`・ω・´)「そいつの口を塞いでいた」

(;ー;トソン「ひぃぃぃぃ!」

(`・ω・´)「なんてな。
      まあ、もし見つかっていたら何らかの策は講じる」

(゚、゚;トソン「……この人ならやりかねない」


この今の証言を聞いて、警部は目の色が変わった。
捕らえるべき獲物が、眼前を横切った時の虎のように、それは素早い反証だった。


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217 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/19(月) 15:59:11 ID:PZuwl2n.O


(´・ω・`)「おかしいね。それじゃあ証言に食い違いができる」

(`・ω・´)「もう動じないぞ」

(´・ω・`)「いやいやぁ、あんた嘘ついちゃだめだよ」

(´・ω・`)「目的は知らないけどさ、あんた……」



(´・ω・`)「うろちょろしてた理由、血を拭うためだけじゃないでしょ」

間髪入れずに、ワカッテマスさんが異議を唱えた。
警部の視線が彼に突き刺さり、同様にシャキーンさんの眼光が彼を捕らえる。

( <●><●>)「ちょっと待ってください。血を拭き取る以外になんの目的があってその場に居座るんですか」

( <●><●>)「本来なら、そんな人目につく所からすぐ逃げるべきでしょうに」

(`・ω・´)「そうだ。拭き取る以外に目的なんてない」


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218 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/19(月) 16:01:02 ID:PZuwl2n.O


警部の口角がつり上がった。
この笑みは、オワタさんの時のような嗤いではなく、
物事が順調に進んでいると実感して不意に出る笑みらしい。

(´・ω・`)「言っちゃったねー。言っちゃったよー」

(`・ω・´)「あ?」

(´・ω・`)「じゃあ、なんで乗務員室にも居る必要がある」

(#゚;;-゚)「!」

(;`・ω・´)「! ち――」


「違う!」そう言おうとしたシャキーンさんの口を
警部が手で塞ぎ、私の方を向いた。
にやにやして私に話しかけてくる。


(´・ω・`)「ねえトソンちゃん、その時さ」

(゚、゚;トソン「は、はい!」

(´・ω・`)「“ワゴン”はあった?」

(#゚;;-゚)「え……」

ワゴン、今になって漸くその単語が出た。
でぃさんが必死に隠そうとし、警部が執拗に調べたがっている、代物が。
もしかすると、今回の鍵はワゴン――



(゚、゚トソン「ありました、そしてお菓子も散らばっていましたね」

(#゚;;-゚)「……」


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219 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/19(月) 16:02:58 ID:PZuwl2n.O


(´・ω・`)「そして、シャキーンさんもその場にいた、
      しかしトソンちゃんは彼を見ていない」

(´・ω・`)「おかしいんだ……あんなにじろじろワゴンや
      その付近を観察していたトソンちゃんが、
      こんなでーっかい彼を見落とすなんて」

(`・ω・´)


( <●><●>)「三号車にいたのでは?」

(´・ω・`)「いいや、腕の血が滴るうちは脱出を封じられていたから、乗務員室にいたんだ」

( <●><●>)「隠れていたんじゃないんですかね、ワゴンの陰に」

「カァー……」と唸る警部。
ワカッテマスさんはきょとんとして彼を見つめている。



(´・ω・`)「君は僕のセリフ盗るの好きだねー」

(; <●><●>)「えぇ!? そんなつもりは……」


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220 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/19(月) 16:04:46 ID:PZuwl2n.O


(´・ω・`)「そうだ、隠れていたんだ!」

(´・ω・`)「もしワゴンがあって、その陰に隠れる事が
      できたなら、腕を隠せるし自分自身も隠れられる」

(´・ω・`)「……だけどねぇ」

(;`・ω・´)「なんだ?」

(´・ω・`)「血を拭き取る、その血は二号車から直線上では見えない位置だ。
      つまりトイレに訪れる人の存在を知るには、予め見える位置から視認しないとだめだ」

(´・ω・`)「二号車から直線上で見える位置に、血はない」

(´・ω・`)「トソンちゃんの来訪を予期して、予め隠れるなんて不可能。意味わかる?」

( <●><●>)「つまり『都村さんに見られないようにワゴン裏に隠れられたのは偶然』ってことですね」

(´・ω・`)「そう。だから、トソンちゃんの来訪は関係なく、別にワゴン裏に用があったんだ」

(゚、゚トソン「ややこしい……」

(´・ω・`)「え? もう一回言おうか?」

(゚、゚;トソン「え! あお願いします!」


心の声が漏れていた、
それが警部に聞こえたのか警部はわかりやすく(?)説明を施した。


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221 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/19(月) 16:07:21 ID:PZuwl2n.O


・交戦の血はトイレ前にだけある、だからシャキーンさんに用があるのはトイレ前だけ
・私が彼を見つけられなかったのはワゴン裏に隠れていたから

以上の二点が前提となるが、この二点の間に存在する問題は「用がないはずのワゴン裏になぜいたのか」だ。
それは「私に見つからないように隠れるため」と説明がつく。

しかし、血が落ちていたポイントは「トイレ前」から「二号車から直線上で見えないポイント」までの間、
すなわち前提一つ目により彼は二号車から見えない位置にいたことになる。
言い換えると、シャキーンさんからも二号車の様子がわからない、から私が来たというのもわからない。

よって「予め」隠れるのは不可能、しかし実際は隠れていた。
このふたつの点が成立する条件といえば、これしかない。
「隠れる目的ではなく、別の目的でワゴン裏にいた」。
これは前提一つ目と食い違う。

つまり、本当の目的が別にあった、と。
警部は、以上のように言い終えた。


(゚、゚トソン「(わかんないけど別にいいや)」

(゚、゚トソン「よくわかりました」


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223 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/19(月) 16:09:46 ID:PZuwl2n.O


(´・ω・`)「『血を拭き取る以外に目的はない』だぁ?
      嘘つけ、ほかにあるんだろ、何かが」

(;`・ω・´)「…………ん」ボソッ

(´・ω・`)「なんて?」

(;` ω ´)「言えん……」

(´・ω・`)

(´・ω・`)「お前……」

(;`・ω・´)「今は、言えん。時がくれば言うから、今は訊かないでくれ、頼む」

(´・ω・`)「ふざけるのも――」

( <●><●>)「ちょっと待って下さい」

徐々に不機嫌を露わにし、怒りを隠せないでいる
警部を宥めるようにして、ワカッテマスさんが前にでた。
警部の顔から怒りは依然消えないも、ワカッテマスさんは続ける。


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225 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/19(月) 16:11:54 ID:PZuwl2n.O


( <●><●>)「そこまで言うのでしたら、現場にて調べるのがてっとり早いのでは?」

(´・ω・`)「……」

( <●><●>)「何処にいるのかはわからないですが、
         9を呼び出して捜査に同行させて」

(´・ω・`)「……しか」


「しかし」、その言葉をでぃさんがすぐさま遮った。
二人の間にでぃさんが割り込み、自分より何十センチも
身長差があるワカッテマスさんと対峙している。


(#゚;;-゚)「それは今回の銃殺事件と何ら関係がありませんし、
     移動の間犯人が動けば次なる事件の勃発や証拠隠滅が図られます」

(´・ω・`)「そうなんだよ、ここで僕たちが動いちゃいろいろとまずい」

( <●><●>)「警部……」

(´・ω・`)「そこでだ」

(#゚;;-゚)「え?」



(´・ω・`)「君が、あのワゴンを持ってきてくれない?」


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226 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/19(月) 16:13:44 ID:PZuwl2n.O


(#゚;;-゚)「……?」

(´・ω・`)「このシャキーンさんは、何かと理解がし難い行動をとっている」

(´・ω・`)「ワゴンも、おそらくは彼がなにかしでかしたんだろう」

(´・ω・`)「……銃弾があったり、血痕が付いていたり」

私が思うに、警部のこの推理は全くのハッタリで、
本当は何か別の理由でワゴンを調べたかっただけに過ぎない筈だ。
だから何かとこじつけて、ワゴンを調べる理由をつくりたかったのだろう。
そして結論は「調べてみないとわからない」という事になるので、でぃさんも「事件とは関係ない」と断ることはできない。


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227 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/19(月) 16:15:31 ID:PZuwl2n.O


(#゚;;-゚)「……仕方ないですね」

(´・ω・`)「! ということは……」

(#゚;;-゚)「持ってきます、もう一度。許可も得てきます」

(´・ω・`)「ああ。
      ……頼むよ」




(`・ω・´)「……」


( <●><●>)「……」


(゚、゚トソン「(ワゴン、か……)」

でぃさんはそう言い残して軽くお辞儀をし、早足でその場を去った。
すぐさまその場は静かになり、電車の揺れのみが響く空間へと戻った。

(´・ω・`)「……さて」

警部は、その重苦しい空気に耐えかねたのか、
視線を再びシャキーンさんに向けた。


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228 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/19(月) 16:17:59 ID:PZuwl2n.O


(´・ω・`)「あんたが席をたって、戻ってきた時までの
      数十分くらい?の間の事、もう少し詳しく聞こうか」



(`・ω・´)「………」



(`・ω・´)「ム。失礼」

(`・ω・´)「しかし、なぜ私が席を立った、と?」

(´・ω・`)「気が付いたらあんたどっか行ってたじゃん」

(`・ω・´)「は?」

(´・ω・`)「ねートソンちゃん」



(-、-;トソン「……」

(゚、゚トソン「なんでいちいち話を振るのよぉ……」


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229 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/19(月) 16:20:19 ID:PZuwl2n.O


一応、誰かが聞くわけでもないが、
「彼が席を立った時間はわからないが、立ったに違いないと断定できる」理由はわかる。
彼とは一度、お茶の件で、クリーニングだの警察だのと話をした。
そのシャキーンさんは、30分手前くらい?に私と一緒に一号車に戻ってきたからだ。
彼は怪訝な顔をして警部を見つめ、傾かせていた頭を真っ直ぐに戻してその答えを探す。


(`・ω・´)「ム……
      トイレ行って、交戦、血を拭いて、隠れて……戻った。それだけだ」

(´・ω・`)「……」

( <●><●>)「埒が明きませんね。ワゴンの到着を待つとしよう」

(´・ω・`)「まあ待て。まだ質問はあるよ」


ワカッテマスさんの制止空しく、警部は未だ食い下がる。
さすがに疲れたのか、シャキーンさんも徐々に尋問に飽き飽きとしているのが窺える。


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230 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/19(月) 16:22:10 ID:PZuwl2n.O


(´・ω・`)「その時、ぱるふぁ……香水の匂いはした?」

(`・ω・´)「男である私に香水の区別がつくとでも?」

(´・ω・`)「これは失礼。しかし、なにか香りませんでした?」

当然といえば当然、香水は匂えどそれの種類までなんて、
とてもではないが香水に詳しい人でない限り特定は難しい。
警部は嗅ぎ分けられたらしいが、やはり常人のシャキーンさんは長い間唸る、考える。


(`・ω・´)「……………。香水はわからん。
      私のまわりには血の匂いが残ってたんだ、嗅ぎ分けることなどできん」

(´・ω・`)「それはご自分の?」

(`・ω・´)「そりゃ、交戦して血を拭いたりしたし、まず私からも
      流血されていたからな。おかしくはないだろう?」


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231 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/19(月) 16:24:23 ID:PZuwl2n.O


理に適っている、といえば適っているのだと思う。
普段から血を匂うことなんて滅多にないんだ、だから
少量の出血に対して多少敏感に鼻が利いていても、問題はない。

ないのだけど、


(´・ω・`)「………」


なんだ、警部のこの怪訝な顔は。



(´・ω・`)「……ワカッテマス」

( <●><●>)「はい」

(´・ω・`)「被害者のデータは?」

( <●><●>)「さっぱりです。アンモラルの社長という点以外は」

(´・ω・`)「持ち物は? 見た?」

( <●><●>)「見てない……ですね」


よし、と一言つぶやき、彼は手をたたいて
そそくさと被害者の席に向かって数歩、足を伸ばした。
指名されたワカッテマスさんも手帳を開き、同じくして被害者の席に向かう。


というか、被害者のカバンの中って勝手に漁っていいものなのか?


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232 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/19(月) 16:28:04 ID:PZuwl2n.O


(´・ω・`)「しかし、大社長ともあろうおかたがこんなちんけなカバン……」

(`・ω・´)「………」

( <●><●>)「身元は特定できてますから、なにか事件に関係しそうなものを探しましょうか」

(´・ω・`)「なーにか、殺されるキッカケをつくったようなモノが……」


(;´・ω・`)「ぬぬ!?」


予め調べてなかったワカッテマスさんを遠回しに責めているのか、小言を並べる警部がカバン
(リュックのようなデザインで、機能面を考えると
 おそらく今回の乗車は外泊を目的としていたのだろう)
を手に取った。
鉤をはずし、豪快に中身を開いた瞬間、警部は声をひっくり返るほどに高くあげ、驚愕した。


異変に気づき、コンマ1でワカッテマスさんが飛びつく。
同じく、彼も言葉を失った。


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233 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/19(月) 16:29:43 ID:PZuwl2n.O


(;´・ω・`)「嘘だろ? なあワカッテマス、これはチョコかなにかだよな?」

( <●><●>)「警部、落ち着いてください。
         パラソルチョコやキャラクターを象ったチョコ菓子は実に様々です」




(; <●><●>)「……しかし、さすがにコレはないでしょう」

(´・ω・`)「……なんでさ、なんで」




(´・ω・`)「“二つ目のピストル”が見つかるわけ?」



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234 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/19(月) 16:31:21 ID:PZuwl2n.O


(;´・_ゝ・`)「え!?」


(゚、゚;トソン「うっそ?!」


\(;^o^)/「オワタ! まじここオワタ!」


川 ゜々゚)「きゃっきゃ! ピストルチョコ!」


( <●><●>)「静かに! あとピストルチョコではありません!」



恐る恐る警部が取り出した“ソレ”は、紛れもない“輪胴式の拳銃”だった。
ぱっと見、シャキーンさんが持っていたものと瓜二つ、いや一緒の型のものだと思う。

(一人場違いがいるが)当然、驚愕の事態に、私含め乗客の皆は慌てふためく。
オワタさんに限っては、手をじたばたさせすぎて何度か窓に腕をぶつけていた。痛がっている。


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235 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/19(月) 16:32:52 ID:PZuwl2n.O


(; <●><●>)「とりあえず、でぃさんも連れてきますか?」

(´・ω・`)「ああ」

落ち着いて状況を整理したワカッテマスさんがとった行動は、すぐにでぃさんを連れてくる事だった。
容疑者ではあろうとこの拳銃に関しては関係ないはず、私はそう思っていた。
しかしよく考えると、そこに拳銃があるというだけで一大事だ、彼女の同伴を望むのは半ば必然か。


ワカッテマスさんが急ぎ足で一号車を飛び出した。
警部は彼を見送り、拳銃を上から下から様々な角度から眺めている。


.

236 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/19(月) 16:33:45 ID:PZuwl2n.O


(;´・_ゝ・`)「ぼ、僕じゃないですよ!」

(´・ω・`)「わかってますって!」



(゚、゚;トソン「警部……」

(´・ω・`)「落ち着いて、今から調べるんだ」



\(;^o^)/「手が、手が痛い!」

(´・ω・`)「知るか!」



川 ゜々゚)「ピストルチョコは弾がピーナッツなんだ! 定価いちおくせんまん円!」

(;´・ω・`)「漫才させるな!」



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237 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/19(月) 16:35:04 ID:PZuwl2n.O


寝ているルカさんを除く、乗客の皆が皆冷静を欠いてる状況にて、
警部は、そっと拳銃のリボルバーをはずした。
弾倉を確認するのだ、もしここで6弾全部補充されていれば問題はない。
しかし、ただでさえシャキーンさんの拳銃の「2発目」の謎が残っているのに、発砲されているわけが……





(;´・ω・`)「……弾は、5つ! 一度発砲されていたんだ!」



(゚、゚;トソン「えぇ!?」

(;´・_ゝ・`)「なんだって!?」


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238 名前: ◆wPvTfIHSQ6 投稿日:2011/09/19(月) 16:38:28 ID:PZuwl2n.O


同時に、一号車の扉がかなり強引に開かれた。
ここの慌ただしい、荒れた空気に加え、更に大声で――ワカッテマスさんが叫んだ。




(; <●><●>)「警部!! 死体が、もうひとつ!」



  「ワゴンから、死体が発見されました!」





(´・ω・`)「……… な」

(;´゚ω゚`)「なんだとぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」





 イツワリ警部の事件簿
 File.1

 (´・ω・`)は偽りの香りを見抜くようです

 6章
  「二つ目の『   』」

    おしまい


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