从 ゚∀从百合は咲耶、乙女は散り急ぐ徒花のようです

1 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/16(月) 23:10:30 ID:9chxrQSQO
o川*^ー^)o「こんちまたまた。いやあ、この作品を読んで下さる方がいるようで感謝感激雨霰っす」

o川*゚ー゚)o「そこで次のレスから本編が始まる訳なんすけど、ちょいとお先に一つご注意をと」

o川*゚ー゚)o「この作品は百合と申しますか、少女同士の秘め事的な要素を多分に含みます」

o川*゚ー゚)o「更に一応18禁という形にさせて頂いております」

o川*゚ー゚)o「18歳未満の方や、そういうのが苦手な方は、大変申し訳ございませんがご遠慮お願い致します」

o川*^ー^)o「18歳以上でそういうのが気にならない方は、楽しんで頂ければ幸いっす」

o川*゚ー゚)o「では次から本編スタートっすよ!」


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3 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/16(月) 23:13:37 ID:9chxrQSQO
昔あるところに、燃え盛る炎のように赤い髪をした、幼い少女がおりました。
陽光を照り返して尚輝く本当に美しい赤でしたが、当の本人はあまりそれが好きではありませんでした。

なぜなら彼女が暮らしているのは、黒髪の単一民族で形成される極東の島国だったからです。

残酷という言葉の意味すらまだ理解できない周囲の子供達は、からかい混じりに少女の容姿を揶揄します。

――赤鬼、と。

赤鬼少女は母に尋ねずにはいられませんでした。

「なんで私は、お母さんやみんなのように黒い髪の毛じゃないの?」

母は軟らかく微笑みながら答えます。

「この赤い髪はね、お母さんからのプレゼントなの」

「プレゼント?」

「そう。いつかこの髪が、きっと貴女のことを守ってくれるわ」

赤鬼少女は髪を優しく梳いてくれる母へ、きょとんと首をかしげることしかできませんでした。

しかし、程なくしてその言葉の真意を知ることになります。


赤鬼少女は泣きました。
わんわん泣きました。

三日三晩泣き続けて、四日目の朝からはもう泣きませんでした。

失った大切な人は今でも自分の近くにいて、守ってくれていることに気付いたからです。

4 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/16(月) 23:14:23 ID:9chxrQSQO





从 ゚∀从百合は咲耶、乙女は散り急ぐ徒花のようです




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5 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/16(月) 23:15:35 ID:9chxrQSQO
砂混じりの熱風が成長した少女、ハインの緋色に煌めく髪を揺らした。

从 -∀从「白昼夢ってわけでもないだろうに」

生命力の強い草花であっても、わずかな数を残して全て枯れ果ててしまうような、中東の砂漠。
その砂漠のど真ん中で、ハインは悠然と一人佇んでいた。

从 ゚∀从「あれからもう十年か」

中東は湿度が低いから日本の夏よりは快適などとよくいわれるが、それはあくまで日陰に入ればの話だ。
これほどの気温の高さで直射日光を浴び続ければ、間違いなく身体に変調を来たすことになるだろう。

しかし、ハインは汗の一滴すら流さず、平然とした様子で地平の向こうを眺めていた。

6 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/16(月) 23:16:51 ID:9chxrQSQO
从 ゚∀从「……そろそろか?」

足の細さに対して少々大きめなサイズのベトナムズボン、そのポケットへ無造作に手を突っ込む。
取り出したのは小型の携帯無線機だ。

本来ならば軍で正規採用されている、115式携帯無線機2号を使用するはずだったが、

从 ゚∀从「あんなごちゃごちゃしたもん、分からねえっての」

ハインが使い方を知らないので、仕方なく間に合わせの簡単な通信機が配備された。

从 ゚∀从 「どうせジャミングや傍受に耐性がないなら、携帯電話でいいじゃん」

と提案もしてみたが、さすがにインフラの利用はやめてくれと、部隊から却下された。

そもそもハインはインフラがなにか分からなかったのだが、とりあえず重々しくそうだなと頷いておいた。

7 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/16(月) 23:18:46 ID:9chxrQSQO
『こちら朝日。赤鬼、送れ』

定例通信の時刻。
周波を指定されていた度数に合わせると、無線機からくぐもった声が響く。

从 ゚∀从「こちら赤鬼。感明良し、送れ」

『敵、想定通り。一時方向より主力戦車が三。繰り返す――』

从 ゚∀从「繰り返さなくていい、問題はない。通信を終了する」

『……了解』

从 -∀从「はあぁぁ」

無線機を切ると、ハインは胸一杯に溜まった苛立ちを、吐息として深く外へ吐き出した。

从 ゚∀从「確かに想定通りなんだろうけどよ、むかつく」

この道を一直線に進むと、行き当たるのは集落と呼べる程の小さな村だ。

从 ゚∀从「戦車だあ? 銃すらろくにないような村を潰すのに、なんで戦車みたいなもんが必要なんだよっ!!」

持場で待機して敵を待ち受けろという指示だったが、ハインはそれを気にも掛けず、北へ向けて歩を踏み出す。

从 ゚∀从「俺は正式な軍属じゃねえ。命令など関係ない」

抑えきれない激情が身体から闘気として溢れ、中近東に吹くシムーンのごとく、周囲の砂を巻き上げて進む。

果たして彼女のその行動は、背後の村を守るためのものなのか。
それとも気に入らない敵を潰すためなのか。


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8 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/16(月) 23:20:12 ID:9chxrQSQO
(;^Д^)「白昼夢かこれはっ!?」

革命軍の中でも勇名を馳せる大男、プギャーは目の前の惨劇を現実のものとして認識できなかった。



少し前までは悠々と戦車を前進させていた。

車両は第二次世界大戦後期にドイツ軍が採用していたもので、
現代では骨董品ともいえる代物だが、それでも国内での戦力としては十分だった。

この先にある村を潰して、愚かな国の高官達に革命軍の力を見せつける。
己の更なる武勲に心を踊らせていると、水を差すように先行している部下から通信が入った。

『こちらティーガー03、聞こえますか!』

( ^Д^)「こちらティーガー01。感明良し、どうした?」

『進路上に一人の少女が立ち塞がっています!』

( ^Д^)「少女? そんなもの逐一報告しなくても、邪魔になるなら踏み潰してしまえ」

『そうじゃないんです! 少女は、輝かんばかりの赤髪をした……!? あああああぁぁぁああ!!」

( ^Д^)「どうした! 何があったっ!」

『…………』

通信機からはザーと耳障りな雑音が聞こえるばかりで、答えが返ることはなかった。

9 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/16(月) 23:21:47 ID:9chxrQSQO
輝かんばかりの赤髪をした少女、そう呼ばれて思い浮かべるものは一つしか存在しない。

( ^Д^)「……レッドオーガ、実在するのか?」

革命軍内でまことしやかに流れている噂話がある。
赤い髪をした少女が武器も持たずに単身で乗り込み、幾つかの友軍基地を壊滅させたと。

その少女を目撃したという、事切れる寸前の同志は、

「やつは人間じゃない。レッドオーガだ……」

といい残したらしい。

噂を耳にしたときは、そんな馬鹿なことがあるかと一笑に付したプギャーだが、それが今現実のものとして眼前に存在する。



部下からの通信が途絶えた地点に到着すると、待っていたのは目を覆いたくなるような光景だった。

天から巨大な剣でも降って来たのか、大地ごと真っ二つに裂かれたティーガー03の残骸。

そして更に信じられないことに、もう一つの友軍車両ティーガー02は、赤い髪をした少女に片手で軽々と掲げ上げられている。

从 ゚∀从「ははは! 地面についてないから意味ないのに、ずっとキャタピラ回してやんの!」

その少女は、まるで新しい玩具を買って貰った子供のように、面白くて仕方がないという純粋な笑みを浮かべていた。

10 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/16(月) 23:23:22 ID:9chxrQSQO
(;^Д^)「やつがレッドオーガ……!」

从 ゚∀从「飽きた。つまんないの、もう要らねえやっ!」

早くも戦車に興味を失ったのか、それを振りかざすと思い切り地面へ叩き付ける。

どれほどの圧力が加わったのだろう。
大戦中では最高クラスの装甲を誇ったティーガー戦車が、プラモデルのように容易くひしゃげた。

(;^Д^)「あぅっ……!」

言葉が喉の奥に張り付いて、口から出てこようとしない。
今目の前で行われている光景が、どうしようもなく現実なのだと理解すると、プギャーは全身の血が凍るのを感じた。

レッドオーガと呼ばれる少女は、面目躍如といったところだろうか。
それだけで済ませる気は更々ないようで、その戦車を再度持ち上げると即座に叩き付ける。

从 ゚∀从「そらそらそらそら!」

叩き付ける、叩き付ける、叩き付ける、ただただそれを高速で繰り返す。

そしてぼろぼろに崩れた戦車を、正しくゴミを捨てるような気軽さで放り投げた。

ショートした電子機器が、ガソリンエンジンに引火したのだろう。
したたかに叩き付けられたティーガー戦車は、熱砂の上で黒煙をあげて惨たらしく炎上する。

当然ながら脱出者など存在しない。
部下である乗員五名の命が造作もなく摘み取られる瞬間を、プギャーは呆然と眺めることしかできなかった。

11 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/16(月) 23:24:27 ID:9chxrQSQO
从 ゚∀从「さあて、残るは――」

(;^Д^)「ひっ」

背に纏った爆炎にも劣らず輝く、紅の髪を翻して赤鬼はこちらへ向き直る。
火影の中で爛々とした瞳が、プギャーの心臓を鷲掴みにした。

从 ゚∀从「俺が怖いか?」

(;^Д^)「……な、なにをやっている! 砲手、撃て! あの化物を撃ち殺せ!」

震える声を振り絞って伝令する。
プギャーはもはや虚勢でもいいから大声を張り上げていないと、正気を保っていられなかったのだ。

砲塔がギチギチと金属の擦れ合う音を放ちながら回転し、赤鬼へ狙いを定めた。

从 ゚∀从「怖いだろうなあ。圧倒的な暴力が、目の前で形を伴って存在するんだから」

56口径8、8cmの戦車砲。
もし人間が受けたならば結果を論ずる必要はないだろう、即死だ。

それを向けられても赤鬼は動じず、ただ右腕を逆袈裟にかざすのみである。

12 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/16(月) 23:25:52 ID:9chxrQSQO
( ^Д^)「ファイア!」

そして、砲身から弾丸が放たれた。
鋭く撃ち出された鉄の塊は、赤鬼との距離を瞬く間に詰める。

( *^Д^)「ははははははははは! やった、レッドオーガを討ち取ったぞ! さすがは英雄プギャーだ!」

从 ゚∀从「はあぁっ!!」

掛け声と共に、赤鬼はかざした手を電光石火で振り下ろし、高速で飛来する砲弾を造作もなく素手ではたき落とした。

( ^Д^)「えっ、あっ、はっ?」

从 ゚∀从「誰だって死ぬのは怖いんだ。お前らはさ、そんな死にたくねえって叫んでる人達を今まで殺してきたんだよ」

(;^Д^)「砲手! 次弾急げ! 機関銃もばらまけ! やつを近付けるな!」

絶え間なく放たれる銃弾が、赤鬼の服に無数の弾痕を作る。
しかしその下の皮膚には一切の傷が見えず、まるで死神が巡遊するように、悠然とこちらへ歩み寄って来た。

从 -∀从「だからさ、精一杯懺悔しろよ。今まで自分がどれだけの人を殺したのかを」

(;^Д^)「ひ、ひぃ!?」

从 ゚∀从「神が許すかどうかは関係ねえ。懺悔した上で、俺が殺してやるからよぉぉぉっ!!」


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13 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/16(月) 23:27:10 ID:9chxrQSQO
今日の出来事を部隊長の朝日に報告したハインは、疲れた身体を引きずるようにしてキャンプに入る。

从 -∀从「…………」

結果からいうと任務は遂行した。
多少の命令違反はあったが、軍の上層部からなんらかの力が働いたのだろう、特に咎められることもなかった。

ξ゚听)ξ「お疲れ様」

从 ゚∀从「……ああ。水くれ、まだ手が汚れてる気がするんだ」

ξ゚听)ξ「まったく、精神的に参るぐらいでしたら、直接素手で殺すなんて真似よせばよろしいですのに」

ハインと同じく正規の軍属ではない少女、ツンは呆れ顔を強くして水の入ったペットボトルを投げ渡す。

それをキャッチすると、ハインはテントの外へ腕だけを突き出し、その水で特に汚れてもいない掌を何度何度も洗った。

14 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/16(月) 23:33:40 ID:9chxrQSQO
从 ゚∀从「サンキュな」

ξ////)ξ「べ、別に貴女のために用意していたわけではありませんからね! 勘違いはなさられないように!」

从 ゚∀从「俺のためじゃないなら、なにか使う予定があったんじゃねえのか?」

ξ゚听)ξ「えっ!? それは、そのぅ、……そう! 丁度必要ではなくなったところでしたの。つまりあれは私にとってはゴミ同然の代物!」

なぜ素直に用意していたといえないのかハインは疑問に思うが、そこがツンの面白いところなので黙っておく。

ξ*゚听)ξ「いうなればゴミを施しただけに過ぎませんわ!」

从*゚∀从「ぷっ、くっ、ははは! いくらなんでも砂漠で、水がゴミはねえだろ」

しかも上手く誤魔化せたと、ツンはこれ見よがしな顔をしていた。
そこが更に強くハインの笑いのツボを突く。

ξ゚听)ξ「な、なにがおかしいんですの。また貴女は私のことを馬鹿にして」

从 ゚∀从「馬鹿になんてしてねえよ。いやいや、癒されるっていうか、ツンは可愛いなあって」

ξ////)ξ「はあ!? まあ、私が可愛いのは、その、当然のことですけど、……一応礼を申しておきますわ」

15 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/16(月) 23:35:00 ID:9chxrQSQO
从 ゚∀从「しかし、冗談抜きでツンみたく可愛けりゃあ人生得だろうな」

ξ*--)ξ「もう、褒め殺しですの? 私は、その、ハインも十分に……お、御綺麗だと思いますけど?」

从 ゚∀从「……それは、こんな身体でもか?」

ハインは軍から支給されていた服を乱暴に脱ぎ去り、ランプの灯の元へ白くしなやかな裸体をさらす。
普段の大人びた雰囲気とは逆に、その身体は成長途中の未成熟な少女のものだった。

まだ発育が十分ではない膨らみかけた胸、少しだけくびれた腰回り。
随所から大人になりかけている少女特有の、幼い色香が漂っている。

从 ゚∀从「こんな俺でも綺麗だと本気で思うのか?」

ハインが何を指してこんなというのか、それは一目瞭然だった。

透き通るようなみずみずしい肌の至る所に付いた、大小様々な無数の裂傷の痕。
その一つ一つが強く存在を主張している。

古い傷なのだろう、年頃の少女に刻み込まれた痛ましいそれは、昨日今日のものというわけではなさそうだ。

16 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/16(月) 23:36:34 ID:9chxrQSQO
ξ゚听)ξ「私は、それでも綺麗だと思いますわ」

从 -∀从「はっ、冗談だろ?」

ξ゚听)ξ「冗談などではありません!」

从;゚∀从「わわっ!?」


ツンは自分でも何がこんなにとは思うが、いつも人を食った性格をしている同僚兼友人の、自嘲的な態度が酷く気に入らなかった。

そして気がつけばいつになく真剣な表情で、ハインを強引に押し倒していた。

なぜ自分でもこのようなことをしたのか理解できないが、もう後戻りもできそうにない。
ここから先は本能に従うことにした。

ハインの甘い匂いが感じられる胸元へ唇を寄せて、ツンは朱色にぬめった舌で傷痕をなぞり上げる。
まるで動物が愛しい相手の傷を癒すときのように、丹念に何度も舐める。

从*-∀从「んぅぅっ!?」

鎖骨から胸へ、胸からへそへ、全身を慈しむように這い回る優しい舌の感触が、快感となってハインの背中を駆け巡った。
まだ開花していない青い蕾は、かつて経験したことのない刺激に、瞳を閉じ身を縮こませて悶えることしかできない。

17 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/16(月) 23:39:44 ID:9chxrQSQO
从;-∀从「馬鹿っ! 汚いだろ、おい、やめ」

ξ*--)ξ「ぴちゃ、んちゅ……んふふ、汚くなんてありません。綺麗ですわよぉ、ハイン……」

興奮が抑えられなくなったのか、荒くなった吐息混じりの嬌声が、ツンの口から漏れた。

ハインが意を決してまぶたを開けると、西洋人形を想起させる澄ましたツンの美しい顔立ちは、見る影もなくとろけていた。
そして、なまめかしい表情で熱っぽく見つめ返してくる。

そのエロチックな顔に一瞬見惚れていると、不意にゾクッと身体を震わせる電流が走った。
どうやらツンの繊細な指先が、ハインの脇腹を上から下へと撫でるようにくすぐったらしい。

从*゚∀从「ひゃあっ!? だ、め……」

やがて腰まで降りて来た指は、飾り気のないショーツに引っ掛かる。

ツンはためらう様子すら見せずに、それをにわかにずり降ろし、まだ生えそろっていない幼い茂みへと舌を――

从#゚∀从「駄目だっつってんだろうがっ!!」

ξ;゚听)ξ「あだっ!? なにも叩くことはないではありませんか」

18 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/16(月) 23:41:21 ID:9chxrQSQO
从 ゚∀从「お前さ、人にこんなことするってことは、自分もやられる覚悟はできてるってことだよな?」

ξ゚听)ξ「ほえ? えーと、それは」

从 ゚∀从「ははは、お返しに今度は俺がよくしてやるからよ」

ハインは不気味に両手をうねらせながら、ツンににじり寄る。
口元こそ笑っているものの、その顔つきは戦車を潰した時よりも幾分か険しい。

≡ξ゚听)ξ「……それではごきげんようー!」

≡从 ゚∀从「待て、この野郎!」

≡ξ゚听)ξ「野郎ではありませんから、断固として待ちませんわ!」

特別待遇で他の兵員達と比較すれば大きいテントを使用しているが、それでも走り回るのに十分な広さとはいえない。

そんな空間で、人間とは思えない身体能力をした二人の少女は、無駄に高次元な争いを繰り広げていた。

从 ゚∀从「捕まえたぜ!」

ξ゚听)ξ「残念、それは残像ですわよ!」

本当に無駄にレベルの高いこの攻防は、夜が明けるまで続くことになってしまった。


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19 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/16(月) 23:42:54 ID:9chxrQSQO
从 -∀从「へへ。なかなかやるな、お前……」

ξ--)ξ「ふふ、貴女こそ。太陽が黄色いですわ……」

性も根も尽き果てたという様相で、二人は大の字に倒れ込んで、テントの入口から差し込む朝日を拝んでいた。

(-@∀@)「いったい何をやっているんですか……」

从 ゚∀从「いや、朝日ったってお前のことじゃねえよ」

(-@∀@)「はあ? それよりも苦情が出ているんですよ。あそこのテントは夜通し、怪獣大決戦でもやってるのかって」

从 ゚∀从「いや、その、全力でぶつかり合わなければ、真の友にはなれないかと思って」

ξ゚听)ξ「そう、私達は拳を交えなければ互いを理解し合えないのですわ」

(;-@∀@)「そんな格闘漫画みたいな設定は知りませんよ!」

从 ゚∀从「二の腕と胸って同じ柔らかさなんだってよ」

ξ゚听)ξ「へー、でもハインは筋肉でそこまで柔らかくないじゃありませんの。ああ、だから胸の方も」

从 ゚∀从「テメェ、もう1ラウンドやるか?」

(;-@∀@)「なんで今そんな話を始めたんですか!?」

20 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/16(月) 23:44:26 ID:9chxrQSQO
从 ゚∀从「それでなんの用だ、政府の犬が」

(-@∀@)「ええ、それが……って政府の犬は酷くないですか!?」

ξ゚听)ξ「正直に申し上げますと、私は三十も過ぎたおっさんのツッコミを、気持ち悪いと思っております」

从 ゚∀从「ああ、それが俺達の今の本当の気持ちだ」

(-@∀@)「だったら脱線しないで下さいよ頼みますから! なんなら土下座しますから、いやもうしてますけど!」

部隊長朝日ことアサピーは権力に弱い、名実と共に政府の犬だった。

(-@∀@)「それでですね、実は」

そして本当に土下座しながら語り出す三十過ぎのおっさんを見て、二人はこうはなるまいと深く決意することになる。

(-@∀@)「ハインさんに帰国指示が出たんですよ」

从 ゚∀从「ああん? 誰が手を回したんだよ」

(-@∀@)「私では詳しくは分からないのですが、一応連絡はジョルジュ殿からだと」

从 ゚∀从「……あいつからか」

21 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/16(月) 23:46:21 ID:9chxrQSQO
ξ゚听)ξ「何か思い当たる節でもありますの?」

从 ゚∀从「こいつは招待状かも知れねえ。地獄の花園、乙女学府へのな」

ξ゚听)ξ「乙女学府って!」

从 ゚∀从「わざわざ出払ってる俺に戻れってことは、恐らく国が圧力掛けてきてんだよ」

ξ゚听)ξ「……帰国指示ぐらいなら蹴ってもなんとかなりますわよ?」

从 ゚∀从「いいや、帰るよ。ここに俺の求めているものはなかったしな」

(-@∀@)「私はいつまで土下座をしていれば――」

从 ゚∀从「じゃあな、ツン。生きてたらまたどこかで会おうぜ!」

ξ゚听)ξ「ええ、次の再会は戦場でなければよろしいですわね」

どちらからともなく差し出した手を掴み、二人は握手を交わした。
これから先、二度と会えないかもしれない友への想いを伝えるように、強く固く。

(-@∀@)

そう土下座したアサピーの上で。


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22 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/16(月) 23:49:26 ID:9chxrQSQO
从 -∀从 (日本軍に俺がいることは極秘つってもよ)

他国へ存在が秘匿されているハインは、堂々と日本へ凱旋というわけにはいかない。
まずは旅行者を装って韓国へ飛び、そこを経由して日本へ帰ってこなければならない。

从 ゚∀从「もっといい旅客機はなかったのかよ」

「そうか、ハインはJAL以外は初めてだったな」

隣りに座っている中肉中背の男性がハインに馴々しく声をかけた。

一見では、誰もが親子連れの旅行者として疑わないだろう。
しかし、特別観察力に長けた者が見れば分かる。
男は完全にハインを恐怖の対象として見ていた。

从 ゚∀从「別に気を使わなくていい。長いフライトになるんだからな」

「そ、そうか?」

从 -∀从「少しぼーっとしてるから、何かあったら声かけな」

緊張というのは伝播するもので、相手に気構えられるとハインとしても窮屈になる。

だから眠るように、シートへ深く背を預けまぶたを閉じた。

从 -∀从 (日本、か)

目を瞑っていると、何とはなしに浮かんでくるのは、日本にいる旧友の顔だった。

从 -∀从 (オオカミ、お前は俺を……)



第一話 完


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