('A`)ドクオと愉快な魔法少女のようです

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 21:29:06.13 ID:4oE5SEN30



( ・∀・)「客こねー」

などと急に呟き、眠そうに大あくびをするイカれた店長。
一体何が悲しくて僕は今この人と二人でコンビニにいるのだろうか。

答えは単純で極めて明快。バイトだ。ああ、うん確かにバイトなのはいいんだ。
ただこちとら休みの日に無理やり出勤させられて、
挙句ぶち込まれたシフトが某糞シフトで有名な腐った金魚のフン、ドクオの物という二段オチだ。

( ^ω^)「時給上げてくださいお店長」

流石にこの無茶苦茶な待遇を受けている以上、
こっちも無茶苦茶だが、ある程度正当な注文をつけてみたくなってくるものだ。
この畜生な職場を改善するには、少しでも僕のやる気をあげることだ。そこから店の経営発展に繋がるだろう。

( ・∀・)「ああん? 仕事が出来るようになってから物をいいな!」

そうかい。そりゃそうか。ただでさえ経営難なこの状況であげられるわけもないか。
それはいい。それよりも僕の癪に触るのは、自分が仕事できる人間であることをアピールしている発言だ。
トチ狂いやがって。ただでさえ狂った性格なんだからそれ以上捻じ曲げてどうするんだ畜生。

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 21:32:23.15 ID:4oE5SEN30

(;^ω^)「僕より出来ないじゃないですかお……」

( ・∀・)「それを言われるといやんまいっちんぐ」

( ^ω^)「お母さん。どうして僕はこんなところで働いているのでしょうか」

「43番一つ」

( ^ω^)「あ、はい」

こういうタイミングでは来店する空気の読めないお客さんが煙草をご所望。
こちとら少し現実から離れたい気分だというのに、何を考えて煙草を売れというのか。
しかもわかばかよこいつ。せめて富士ぐらいにしとけよ。

( ^ω^)「ありがとうございましたお」

煙草だけ買ってさっさと出て行くお客さんの後ろ姿を見届けながら、僕は静かに親指を下に向け拳を突き出す。

( ・∀・)「穏やかじゃないねぇ」

( ^ω^)「誰のせいだと」

( ・∀・)「えへへ」

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 21:35:08.55 ID:4oE5SEN30

この店長を相手にするのであれば、いっそ自給をホストクラブ並にあげてもいいんじゃないだろうか。
こんなど畜生を相手に、ど畜生なお客さんを相手にしながら、
ど畜生な物品を計算して、ど畜生な発注しなきゃならないなんてどんだけど畜生な過酷なんだよ。

ちなみにその間店長は後ろで大あくびをこきながら、おでんをつまんでいる。

( ^ω^)「……地球なんて滅びればいいのに」

ξ゚听)ξ「メラ!」

(^ω^ )「はて、ほのかに雑誌の焦げるかほりが」

ξ゚听)ξ「ギラ!」

( ^ω^)「……」

どう見ても基地外が手から炎を出しています。本当にありがとうございました。
つーか何やってんだあの子。僕より小さいナリで、何とんでもないことやらかしてるんだ。
あの炎から出てるものは別にアースジェットなどを使って火炎放射器をしているわけでもない。

つまりあれは、本当に魔法的なあれで炎が出ているわけだ。
あれ、僕はいつの間に二次元の世界に飛び立ったんだ? 流石に魔法とかねーよ。マジックだってあれ。

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 21:38:42.31 ID:4oE5SEN30

( ・∀・)「おうおうおう。嬢ちゃん何やってんだこら」

急いで止めに入ったというには似つかわしくないのんびりとした足取りでその子の元へと行く店長。
その目はきらきらと輝いており、
あれは確実に「何か面白いことがあった!」といった子供心からきているものだ。

ξ#゚听)ξ「邪魔よあんた!」

( ・∀・)「大人に向かってなんて口を聞くんだ! 裏で調教してやあちぃいいいい!」

ξ#゚听)ξ「ふんっ」

店長の着ている衣服が思いっきり燃えている。流石にあれは止めるべきか?
と思ったが、とっさに床を転がり、火を消しをしている辺り、大丈夫だろう。

ξ゚听)ξ「さて、あんたは何もしてこないの?」

と、不満気に鼻息を荒立てる少女。これは怖い。
ご生憎様。僕にそんな非現実かつ二次元ルートびんびんな相手をする勇気はない。

( ^ω^)「お、お客様何かお探しですかお?」

……数秒前の僕よ。一体何を考えていたのだ。
膝までがくがく震わせながら、挙句の果て紡いだ言葉がこれか。

お客様何かお探しですかお。じゃねーよ。
どう考えても何も探してないだろ。今明らかに暇つぶしか何かで雑誌燃やしてただろうが。
関わっちゃいけないんだよ僕みたいなペーペーな一般ピーポーが。

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 21:41:52.26 ID:4oE5SEN30

ξ゚听)ξ「探し物……。 そうね」

( ^ω^)「お」

逆に食いついた! まさか食いついてくるとは思っていなかった。
だって普通に食いつく前に僕に食らいついてきそうだったもの。

それ以前に……もうちょっと言葉を選べなかったのだろうか。
しかし今更後悔しようが、結局何も変わらないんだ。
だったら今に思考を移し変えよう。過去を考えてても仕方ない。うわあ今の僕輝いてる。

ξ゚听)ξ「私の心はどこにあるのかしら、ね」

僕より明らかに歳が下で、かつ人間らしからぬ彼女は低い声で喋り始める。
何このシリアスムード。いらねーよそんな展開。何で見ず知らずの幼女がいきなり心ここにあらずな感じで話進めてんだよ。

( ^ω^)「あの、空を見てくださいお」

ξ゚听)ξ「……空?」

おい僕うううううううう。何を言い出してやがるんだ。これ以上喋ると痛い目見るぞ。
ただでさえクラスに馴染めなかった余り組のランキングで堂々の二位を取った男なんだぞ。それを考えて喋りかけろよ。

ちなみに一位は勿論のことだがドクオ君である。
クラスに溶け込むどころか、完全に空気と同化してましたからね、彼。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 21:45:03.52 ID:4oE5SEN30

( ^ω^)「雲が一つ、二つ、いや、数え切れないレベルですお」

ξ゚听)ξ「そうね。雲がいっぱいあるわ。……空は、大きいのね」

( ^ω^)「そうですお。つまりですお」

ξ゚听)ξ「……ええ」

( ^ω^)「あの空みたいに僕たちは成れませんお。
       でも、それに似た大きさは別の意味で手に入りますお。
       それがいつになるかはわからないですお。ひょっとすれば手に入らないかもしれないお」

少女はじっとこっちを見つめている。
お前は詩人か、と自分に突っ込みを入れてやりたくなるほどに、セリフを次から次へと繋いでいく。
あれ、僕いつの間にこんなロマンチストになったんだっけ。

( ^ω^)「……そもそも、心というのは誰にでも備わっていますお。
       人というのは不思議なもので、感情がありますお。その奮起で心が揺さぶられますお。
       もしお客様が心がないと仰るのなら、僕が探しましょうお。たとえあの広大な「尻穴!」であろうとも!」

(^ω^;)「……」

( ・∀・)「えへ」

突然に言葉の締めが広大なお尻の中から心を探すという内容に劇的ビフォーアフター。
見つからねえよ。どう足掻いても見つかるのは前立腺とか、ウコンの力だよボケ。
いきなり何入り込んでくれてんだよ。ちょっと綺麗な話になってたのにお前のせいで急にスカトロだよ。

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 21:49:14.43 ID:4oE5SEN30

内藤、アウトー! そんな言葉が脳裏に浮かんでくる。しかし、ひょっとすれば希望はあるかもしれない。
そんなあり得ない展開を思い浮かべながら、僕はやる夫もびっくりするぐらいにちらっと彼女を見てみる。

ξ゚听)ξ「……」

( ^ω^)「どきん」

( ・∀・)「きめえwwww」

虚ろな目をしているわけでもなく、まっすぐに何かを見ているわけでもない。
どこか呆然と空を見上げる彼女の瞳はとても綺麗で、思わず見惚れてしまった。
そんなにあの言葉に感動したのだろうか。凄いな。
彼女、見かけによらずスカトロ趣味なんだな。今頃胸中はブラウン色なんだろう。

……というか、この子随分と可愛いじゃないか。

ってちょっと待て僕。一体いつからお前はロリコンになったんだ。
僕の射程距離は二次元的推測でも18歳以上だぞ。設定上の話だけど。
でも、それでもロリルートはあまり選ばない、言うなればはぐれ刑事は純情派が好きな僕だぞ。

それがまさかこんな幼子に惚れてしまうなんて、あり得ないあり得ない。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 21:52:01.21 ID:4oE5SEN30

ξ゚听)ξ「私は、」

いつの間にか視点がまた僕の方へと戻っていた。
やばい可愛い。正面から見たらまた一段と可愛い。くそう、こりゃ確かにロリコンが増えるわけだ。
だって、この子反則的な萌え要素バッチリですもの。

金髪縦ロールで、加えてちょっとだけ膨らみがあって、かつ八重歯な幼児体系って。
こんなもの直視したらそりゃ情熱派を決め込んでいようと、ほいほいとロリコンになっちまうだろう。きっと道下君も更生されるだろう。

ξ゚听)ξ「……知りたい」

静かにそう呟いた彼女の瞳は、うるうると輝いており、そこから一筋だけ雫が零れ落ちる。
落ちるや否や、表情を読み取られない為か、隠すようにして両手を顔につけ一度伏せてしまう。
何故だろうか。理由を考えたが全くわからない。どうして彼女が泣いているのか。何を彼女は知りたいのか。

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 21:55:18.84 ID:4oE5SEN30

ξ゚听)ξ「あなた、探してくれるって言ったわよね」

再び顔を上げた時には、目に涙は溜まっておらず、まっすぐにこちらを見つめていた。

( ^ω^)「何をですかお」

嗚呼、この子の為なら僕はあの大空だって掴んでやろうとも思える。
そこに彼女の求めるものがあるのなら、この世界の果てまで飛んで行ってやろう。

ξ゚听)ξ「ザキの呪文書」








( ^ω^)「いらっしゃいませー」

僕は静かにレジ打ちという名の現実へ戻った。




第三話 とあるコンビニの禁書目録


15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 21:57:52.69 ID:4oE5SEN30


四角形の箱型液晶byブラウン管という名の、まあ所謂旧型テレビという奴だ。
今俺は暇を持て余し、体の節々が痛む最中呆然とその旧型テレビ様を見ている。

『定額給付金g ピー三十分クッキンg 先日放たれたテポドー……』

ロクなものをやっていない。流石平日の昼というべきか。
普段テレビなど見ないからといえど、そりゃあ全ての番組が物珍しく映るかと言えばそうではない。
どちらかといえばアニメの一つでも見たいものだ。

適当にチャンネルを回しているうちに、こんな病院でもアニメが一つはやっているみたいだ。
おかげさまで、なんとか暇を持て余すことはなくなりそうだ。

『あなたの心を真っ赤に染めるぅ! 愛と放射能とピーを撒き散らす魔法少女らz』

瞬間的にテレビの電源を落とす。
馬鹿野朗。何平和な気持ちでテレビを眺めている時に限ってこんな魔法少女という単語を聞かねばならんのだ。シット。

そういえばこの前買った魔法少女ゲームだが、腐れ畜生金髪ツンデレ……ではなく、あのイカれた赤フンマッチョによって粉砕されてしまった。
あの戦闘が起こる前に、俺は思わずゲームを落としていたが、
残念な、至極残念なことにあの腐れマッチョの全方位展開魔法的なもので爆発に巻き込まれていた。

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 22:00:24.19 ID:4oE5SEN30

病院に搬送される時、誰かわからんが恐らくクーが忍び込ませたのだろう。
俺の懐には燃えて焦げ尽き果てたゲームのパッケージと、溶けたディスク。そして……。

('A`)「お前、変わっちまったな……」

最早原型を留めていない、
炉心融解でもしてしまったのではないか、と疑念を抱きかねない。
そんなモッコス顔負けのフュギィアが窓際の一角で突っ立っている。

スク水だった物はババァの皺が寄った顔のように歪み切り、もう萌え要素は一切にない。
そして極めつけには顔面が解け、『ムンクの叫び』の絵をそのままはっ付けた出来になっている。

……どこにいったんだ俺の可愛い妹たる嫁は。いらんところで二次元的世界が広がっているというのに、
こういう都合が悪い時だけは変に現実的である。物悲しい話だぜ。

とはいえども、もう半分諦めて何か新しい境地を開きかけている俺すらいるわけで……。
俺もこのフュギュアみたいに随分と変わったもんだ。違った意味で歪んじまったよ。
どうせなら顔を歪ませてもっとイケメンにして欲しいものだ。
と、考えながら俺はそのまま視線を窓の外を見やる。

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 22:03:33.58 ID:4oE5SEN30

('A`)「……」

ああ、空は広い。あの広大な空間の果てには宇宙という浪漫が広がっている。
きっとあの宇宙の果てには俺の知らない世界が広がっているのだろう。

外の世界というのは広い。広すぎて現実味がない。
だが、それでもきっとこの地球の遥か彼方にきっと俺の知らない世界がある。

俺は恐らくそこには辿り着けないだろうし、その世界を生涯知ることはない。
でもそれでいい。それでこそ人は想像を膨らませるものだ。

(*'A`)「平和だ」

思わず笑みがこぼれる。別に気を紛らわせているわけではない。
『今現在』はこんなことを考えられる猶予と余裕があるのだ。とどのつまり、今は幸せだろう。
こんな幸せは一体いつまで持つだろうか。一体どれだけ続くだろうか。
ほんの一瞬かもしれない。でも、それでも俺はこの幸せを……

(*;゚ー゚)「……、点滴、変えますね」

一秒も続きやがらなかった。目の前にはコスプレでもなんでもなくナース服を纏った天使の皮を被ったイケイケのギャルが立っている。
髪を染め粉で色付けして、かつスカートの丈が短いピンク色の夜の蝶。昆虫採集が目の前で出来る状況だ。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 22:08:05.00 ID:4oE5SEN30

しかし、現実はどうだろうか。目の前の天使は俺のゴッドスマイルを直視して唖然呆然どころの騒ぎではなく、どん引きしていらっしゃる。
そりゃ確かに独り言を呟いて、挙句空を見ながら満面の笑みを浮かべている成人男性を見れば誰でも同じ反応するだろう。
しかもそのすぐ隣にはこの世の物とは思えない不気味な良く分からない元フュギュアだ。

悲しいけど、これって現実なのよね。
そういつまでも悲観してなど居られない。なんとかナースさんの誤解を解かなくては。
神速と言っても過言ではないぐらいに点滴のパックを取り替えている彼女に何か適当な話題を……。そうだ。

('A`)「ナースさん。俺はいつ退院できますか」

(*;゚ー゚)「精神疾患もともなってるのでわかりません」

一蹴。
畜生。流石にもう血も涙も出ねえ。入院一日目にして俺は居場所を失った。
きっと彼女はこのあとみんなに俺のことを言いふらすだろう。きっと呆けた老人と同じ扱いを受けんだぜ。
糞……。もういっそ何もないところから林檎でももぎ取って食べるフリでもしてみようか。

('A`)「お願いです。友達が出来る薬を下さい」

(*;゚ー゚)「し、失礼します」

常に苦笑いの表情を浮かべながらも手馴れた手つきで点滴を変え、そそくさと逃げていった悪魔の子。
もうあれは天使じゃねえ。天使ならきっと優しい抱擁が待っていた筈だ。辛かったね。とか言いながら抱きしめてくれる筈だ。

……仕方ない。気分転換に外に出よう。そうすれば少しは心が晴れるだろう。
普段別に落ち込んでも外になんか出ねぇけどな! それぐらいしかやることねえんだよ!


20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 22:10:09.35 ID:4oE5SEN30



('A`)「ううむ。晴天ナリ」

場所は変わって病院の屋上。
空はさっき見た通りで、相変わらずの晴れ模様。いい天気である。

きっと今頃子供達は「先生今日のパンツ何色ですか!」「いやねえ! 先生はノーパンよ!」「きゃー! 先生だいたーん!」
など騒ぎながら乱交しているところだろう。
素晴らしき国、日本の未来は安泰です。きっとこれからも人口は増え続けるでしょう。

屋上の隅へと移動し、座り込む。
今思えば、嵐のような三日間だった。そのオチが入院なわけだが。
とはいえ、これまでのことを整理するには十分な時間が出来た。久しぶりにゆっくりと考えられそうだ。そろそろ現実逃避は止めにしよう。

まずは、魔法少女についてだ。
奴らが一体何者なのかの把握はしている。言うなれば、大手の建設会社に、小さな石鹸屋が挑んでいるというものである。

で、勝てる見込みもないから誰か助っ人呼んでこーい! 連れて来ました! 入院しました! というのが魔法少女と俺の関係である。
助っ人として呼ばれて一日で入院など、どこのスポーツでもあり得ないビッグニュースである。

敗因は別に俺に武器がなかったからなどというものではない。単純な力の差による一方的な虐めである。
いきなり味方のトップに力試しを要求されて、成す術全くなく魔法で一網打尽という。

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 22:13:07.75 ID:4oE5SEN30

('A`)「……ねーよないくらなんでも」

そんなことを呟いて、一呼吸おき、大きなため息を吐く。
そういえばだが、魔法なんてものはどうやって使っているのだろうか。
この平和な日本、それ以前に地球にそんな黒々とした魔術的要素があっただろうか。

そりゃそれこそ数千年前とかならああそうですか、歴史すげえで済むんだが、
今のこの平和な世の中で一体どうやってそんなものを会得したのか。
今度聞いてみるか。何か俺にも魔力とかあるみたいだしな。火とか出せたら便利だよな。ガス代とか倹約できるし。

('A`)「……雨?」

さっきまでの晴天がどこへやら。ふと空を見上げれば、灰色の雲が浮いていた。
馬鹿な、どう見ても数分前までは雲もあまり見えない快晴だったというのに。
しかしそんなことをぼやいても結果は変わらない。仕方がないのでさっさと病室に戻ろう。

('A`)「あ、どうも」

「やあどうも」

屋上の出入り口の扉を開けると、そこには何故か本来居てはいけない男がいた。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 22:16:04.81 ID:4oE5SEN30




( ^ω^)「ウェブマネー三千円分ですね。かしこもっこりですお」

別に今僕が相手をしているお客さんは魔法少女というわけでもなければ、
何も感じられない、しがない一端のオタクなお客さんである。
全くもって僕の人生、夢も希望あったものじゃない。
先刻雑誌コーナーを火あぶりにした子は保護者らしき人が来て雑誌代を全部払って帰っていった。

( ´ω`)「はあ……」

何だろうこの気持ち。やはり僕はあの子に恋でもしてしまったのだろうか。
困ったものだ。まるで仕事に身が入らない。今あるのは体の虚脱感と気だるさだけである。
今あの子はどうしているのだろう。元気にしているのだろうか。保護者の人に怒られていないだろうか。

( ・∀・)「ブーン君ブーン君」

店長が裏方から出てきて、僕を呼んでいる。何だろう。
……どうせ下らないギャグでも言うつもりなのだろう。面倒臭い。放っておこう。
反応したら反応したで、付け上がるからなあこの40代前半。

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 22:19:15.65 ID:4oE5SEN30

( ・∀・)「ビッグニュースだよ。さっき電話があったんだ」

雑誌の懸賞でも当たったのだろうか。この人、電話の相手なんて業者とかぐらいだしな。
妻がいるわけでもなし、家族もいない。天涯孤独といえばそうだが、同情はしない。だって心底この人楽しそうだもの。
たまに見ていられない時はあるけども。

( ・∀・)「なんだい完全にスルーか。この前は誕生日を祝ってくれたくせに。このこのう」

ああ、やはりこの人は面倒臭い。……でもそんな店長、嫌いじゃないですよ。
とか一応心の中で褒めておくが、別にそんなこと思っていない。今はただ面倒だ。
それに確かに誕生日は祝ったさ。祝ったけど店長。
あの時出したケーキは店の売れ残り+消費期限オーバーの代物です。美味しいそうに食べやがって。おかげで今でも胸が痛いわ。

( ^ω^)「なんですかお。今僕は忙しいんですお」

( ・∀・)「そんな上の空でお客さんもいない状況で、発注も棚卸も終わって一体何が忙しいんだね。
      あれか思春期か。思い人でも出来たのか。卑しい奴め林檎の芯に頭ぶつけて氏ね」

(;^ω^)「随分辛辣ですお」

そもそも林檎の芯じゃどう足掻いても死ねないだろう。まだ豆腐の角の方がマシだ。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 22:22:34.50 ID:4oE5SEN30

( ^ω^)「いや、それはいいですお。何かあったんですかお?」

( ・∀・)「いやんいけず。少しは待ちなさいよ」
   _, ,_
( ^ω^)

( ・∀・)「あ、ごめん怒った?wwwww怒っちゃった?wwwwwごめんねwwwwwwうぇえええwwwwwww」

僕は人目もはばからずに店長の口にダチョウ倶楽部もびっくりな激熱おでんを捻じ込んだ。
「あちぃwwwwwあちぃwwww」と床をのたうち回っていたがそこに更に汁をぶちまいた。やばい何かに目覚めそうだ。
そしてしばらく元気に駆け回っていたフランダースでしたが、ゴキブリに熱湯をかけたが如く静かになった様を見て安堵の溜め息を吐く。

( ^ω^)「……」

(20円 ∀ )

静かに僕は店長の顔に魔法のアイテムを使って値札を貼り付けた。きっと誰か買ってくれるだろう。

从;゚∀从「(えげつねェ……)」

コンビニ内にお客さんは一人しかおらず、そのたった一人のお客さんがじっとこちらを見ていた。
そりゃまあこんな状況に出くわせば誰でも驚くだろう。それでもドクオならきっと笑ってくれたさ。……いや、あいつは笑わない。
きっと「俺共犯じゃないから!」とか言って笑顔でタイムカードを押すような奴だった。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 22:25:32.08 ID:4oE5SEN30

( ^ω^)「お客さん、今入荷したての店長要りませんかお? 安いですお」

从;゚∀从「遠慮しとく」

ナンパなんてしたことのない僕がこうやって女性に声がかけられるのは恐らくこの狂った店長のおかげなのでしょう。
ああ店長ありがとう。きっとこれから僕はリア充になれそうです。

(;・∀-)「う、ううん……」

( ^ω^)「こいつ、動くぞ!」

あんなことがあったのにもう動こうとしている店長20円。
まさかもう元気を取り戻すとは。見かけによらずタフなのね。あたしカンゲキ(笑)

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 22:28:13.53 ID:4oE5SEN30

(;・∀・)「いきなり酷いじゃないか内藤君」

( ^ω^)「うるせえ40代童貞でめでたく妖精入りが」

( ・∀・)「お前減給な」

( ^ω^)「ああん? 辞めるぞこの野朗」

( ・∀・)「心の底からすまなかったお願いだから辞めないでおじさん死んじゃう」

( ^ω^)「チッ……」

从;゚∀从「(店長とバイトだというのに)」

从;゚∀从「(この格差……)」

从;゚∀从「(狂ってる!)」

最早ここのコンビニに癒しを求めてくる人はいないだろう。
夏なのに暖房を間違えて入れて生物が全て腐るという事態を発生させたり、
季節限定の商品の中には真夏だというのにも関わらず平然とした面持ちで湯たんぽとほっかいろが居座っていたりする。

店長曰く「このギャップがそそられるんだ」らしい。駄目だ狂ってる。
思い返さなくともこういう話がいくらでもある辺り、しっかりしたチェーンには入れないだろう。
個人経営のコンビニの癖して、変に内装を某サークル○をインスパイアした作りといい、商品の陳列具合といい、そろそろ捕まればいい。

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 22:31:33.83 ID:4oE5SEN30

( ・∀・)「で、ブーン君よ」

( ^ω^)「何ですかお」

ああ、もう今はこの人と話せば話す度に超サリヤ人になれそうだ。きっと歌が今は上手いだろう。

( ・∀・)「さっきの電話の話だけど」

そういえばそんなこと言ってたような。結局何だったのかは聞けず終いだった。
原因は僕にもあるといえばあるが、九割以上この畜生が原因だ。
まともに聞く耳を持ってやれば図に乗るわで、もうある程度制裁を加えた後でないと聞き出せないのがいつものパターンである。

( ・∀・)「いやー。びっくりしたよー」

( ^ω^)「いや、いいから話せお。もったいぶってんじゃねえお」

( ・∀・)「え? いいの? 話すよ? いやーブーン君びっくりして瞳孔開きっぱなしになっちゃうと思うけどなあ、ははは」

( ^ω^)「(うぜえ……)」

もういい加減引っ張りすぎだろう。一つの内容をここまで引き伸ばしてどうするっていうんだ。
そりゃ確かにもう後先考えずに進めた結果レス数稼ぎなんてのはざらじゃないが、いくらなんでもこれは酷い。

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 22:34:40.55 ID:4oE5SEN30

( ・∀・)「コホン。心して聞きたまえ」

返事はしない。放っておけば勝手に話し始める。
僕の予想通り、その散々長引かせた話をするべくしてようやく口を開く。

( ・∀・)「いやー。実は結構深刻な話なんだ。ドクオ君、知ってるだろう?」

( ^ω^)「知ってるも何も、止むを得ず僕とシフトを交換した張本人ですお。ファック」

畜生。何が悲しくてこの店長といる時間を普段より増やさなくてはならないのか。
この四日だけでパートのおばちゃん一ヶ月分の働きだぞ。ドクオ。僕はいつでも君の帰りを待っているから、いつでも戻っておいで。
そしたらめでたく僕の一週間分のシフトを君に譲ろう。めでたく24時間x7だ。

( ・∀・)「そのドクオ君がだけども……」

そこで一区切り。なんだ、まだ長引かせるつもりか。
いいから早くしてくれ。こちとらあんたの話にいつまでも付き合ってるほど暇じゃないんだ。
家に帰って早く寝たいんだよ。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 22:38:36.02 ID:4oE5SEN30

( ・∀・)「入院した」

( ^ω^)「へーそうですかおー」

さ、話も終わったし仕事仕事。僕は今仕事人間にな、は?

(;^ω^)「わ、わんもあー」

( ・∀・)「いや、だからどっくん入院したって」

( ゚ω゚)「な、え、あ、は?」



「はあああああああああああああああああああ!?」



この時恐らく、僕はムンクの叫びすら凌駕したんじゃないだろうか。

( ・∀・)「いやー。困ったことになったねーお互いに家に帰れない日々が続きそうだ。
      はっはっは。深夜は一人になりそうだね」

( ゚ω゚)

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 22:42:11.15 ID:4oE5SEN30

ちょっと待て。ドクオが入院したってどうするんだよ。
店長、あんたは勿論家に帰れないが、僕はどうするんだ。流石に用事が……なかった。
今月何もなかった。というか年中予定なんざなかった。

( ・∀・)「ちなみにどっくん、一ヶ月休むんだって」

( ゚ω゚)イッカゲツ

正気の沙汰じゃねえ。アカギでもこんなことしねえ。
血液を賭けた麻雀というよりも、どちらかといえば命をそのまま賭けた戦いだ。
今時コボラーでもここまで酷い惨事には陥らないだろう。そもそもなんだっていうんだ。バイトが二人の店ってどうするんだ。

しかも、その内の一人が一ヶ月入院だと? お願いします神様。ドクオの身にエターナルフォースブリザードぶち込んで下さいまし。
違う。そんなことしてもどうしようもない。今考えるべきは……

(;゚ω゚)「ど、どどどどどうすんだお! バイトとか他にいないのかお!」

( ・∀・)「いるわけないじゃないwwwwwwwwギギギwwwww」

(;゚ω゚)「悔しいのうwwww悔しいのうwwwwwwww」

心のタガがどうやら二人とも外れてしまったみたいだ。ああ、僕将来ボーカロイドになるよ。
そしたらきっと割れ物とか出てきて、そこから同人ネタに発展するんだ。ふたなりとかになるんだ。
やったね、これで僕も億万長者! いやっはーい!

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 22:44:36.54 ID:4oE5SEN30

从;゚∀从「(……大変だなァ最近のコンビニってのは)」

( ・∀・)「さて……バイトをそろそろ本格的に探さなくては……」

(;^ω^)「おせーお! 既に深刻なエラーが発生しまくってんじゃねえかお!」

( ・∀・)「なんとかなるなんとか……お、丁度良さそうな人間発見」

从;゚∀从「(あれ、なんかあれ私の方に向いてねェか? ちょ、こっち来るんだけど……)」

(#・∀・)「確保ー!」

从;゚∀从「うおォおお! きめェええええええ!」

当然の反応をありがとう。
それと同時に、全くもって常識を逸した状況が起きる。
飛びつくように女性にダイブした店長が、その重力に反して身を翻し逆方向へと飛んでいく。

( 。∀゚)

雑誌コーナーへと一直線に飛ぶおっさん。
砂埃でも舞うんじゃないか、と思うような激しい物音を立て、
雑誌コーナーのラックをぶっ壊しながら、奥まで飛び、ようやくして止まる店長。

ああ、なんとも無残なお姿。でも同情は一切しない。
もし助けを求めてきたら僕は全力でガリガリ君の当たり棒を投げて逃げるだろう。余ってんだよアレ。

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 22:47:34.08 ID:4oE5SEN30

从;゚∀从「ンだよ一体……」

ごめんなさいねお嬢さん。悪意はないと思います。多分。
でも、決して許さなくていいんです。だってあれは何れ罰せられるべき男だったんで。
しかし……。

( ^ω^)「(なんだお今のは……)」

从 ゚∀从「いけねェ……。一般人に使っちまった……」

むむっ、なにやらいけないかほりが。
よし、関わらないで置こう。放置だ放置。こういうのは関わり合うとロクな目に合わない。

从;゚∀从「なァ店員さんよ」

( ^ω^)「ど、どきん!」

な、何ですかお!
あれ……?

从;゚∀从「……まァいいや。あれ、どうしたらいいと思う?」

( ^ω^)「へ?」

从;゚∀从「いや、アレ」

彼女の見つめる方向へと目をやると、まあそこには当然の如くぶっ壊れた店長と、倒壊した商品を置いてある棚があった。
ああ、あの人をどうしたらいいかってことか。
……え? いや、どうしたらいいのアレ。

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 22:50:08.26 ID:4oE5SEN30

从;゚∀从「困ったな……」

いやいや、確かにお嬢さんも困ったかもしれないけど。
それ以前に店はどうするんだ。店長があの様じゃ流石に病院送りだし、そうなると店長不在の店になるし。

( 。∀゚)

どうしたらいいのだろうか。壊れた店長。困った客。しかしお客さんは正当防衛が通じるレベルだ。
加えて、この人に逆らったら今度は僕の命が危ない。

こういうとき、ドクオなら一体何を考えるのだろう。店長の看護? それとも、警察に通報? 拉致監禁?
……。もう駄目だ。考えるだけ無駄だ。こんな非常事態をバイトが片付けるって時点でこの世界は狂ってるんだ。
もういいや。どうせまともなことにはならない。ならいっそ壊れてしまおう。常識なんか糞食らえだ。

从;゚∀从「どうしたものか……」

困った表情を浮かべている彼女を見つめ、僕は真顔になる。
じっと見つめあうことおよそ三秒間。

……僕の出す答えは。

( ^ω^)「店を閉めよう」

从 ゚∀从「ちょwwwwおまwwwww」

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 22:53:11.44 ID:4oE5SEN30





こうして大して長くもないモララーの営むコンビニが復活未定の形で休業した。
店を出る前に赤い紙を店中に貼り付けておいた。今、店先には看板が立っている。
その看板には達筆な赤字で


『ちょっと旅行に行ってきます CLOSE 404』




39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 22:55:11.23 ID:4oE5SEN30




( ・∀・)「やあどっくん」

('A`)「なんでいるんですか」

そういうわけで戻る現代。屋上へと繋がる出入り口付近で運命の再開を遂げた二人。
愛が二人の間に芽生えた。羊羹が美味しい季節になりました。

( ・∀・)「入院しちゃって。ほらこの足。折れちゃった」

('A`)「いや、安静にしとけよ」

そういったモララー氏の足は、全体を痛々しいギブスで覆われていた。
確かにこれは入院ものです本当にありがとうございました。
で、そんなレベルの人が何松葉杖片手にしながら額に汗を滲ませてここまで昇ってきてんだよ。大人しく部屋で絵日記でも描いてろ。

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 22:58:03.38 ID:4oE5SEN30

「ちょっとモララーさんどこ行ったんですかー!」

('A`)「ほら、看護婦の人が探してるじゃないですか」

( ・∀・)「違う違う。僕モララーじゃないし」

('A`)「おい何堂々と嘘吐いてんだよ」

(*;゚ー゚)「はぁ……探しましたよモララーさん! さあ、部屋に戻りますよ!」

げ。
さっきの看護婦じゃないか。

( ・∀・)「ちょっと待ってくれ。僕はドクオ君に大事な話があるんだ」

(*゚ー゚)「ドクオさん? ドクオさんっていうと……うわ」

('A`)「どうもっす」

うわ、とか言われたけど気にしない! だって男の子だもん!
いっそ全裸で逆ブリッジ体制になりながら四足歩行してやろうか。

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 23:01:01.21 ID:4oE5SEN30

(*;゚ー゚)「モララーさん知り合いだったんですね。ご、ごゆっくり」

おいおい。お嬢さん。そんなんじゃ病院内で生きていけないぜ?
おじさんがちょっと怖いものを魅せてあげよう。漢字は仕様だ。

('A`)「うらー叫べーわめけー」

( ・∀・)「乗った!」

全裸になった男が二人。やってることは逆ブリッジ体制の四足歩行。
いうなればゴキブリが逆向きで走ってくる図を想像すればいいだろう。
なんという肉体美。これは間違いなく清涼感。

(*゚ー゚)「……」

('∀`)「……」

( ・∀・)「……」

(*゚ー゚)「祖チン」

※ 粗末なチンチン。広大な草原が広がる野性の動物が思い思いに欲望をぶつける中、
  樹齢400年はあるであろう巨人のドシンもびっくりな大きさの木に、
  一匹寂しく群れから離れ自分の欲望を打ちつけることしか出来ない実に残念な生き物の略称である。

バタン。バタバタ。
俺たち二人は揃って屋上の雨に打たれた。
ああ、何故だろう。今はこの雨が俺ら二人の再会を祝福してくれているみたいだ。
俺たち結婚します!

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 23:03:17.87 ID:4oE5SEN30

( ・∀・)「どっくん……」

('A`)「モララーさん……」

川 ゚ -゚)「お前ら何やってんだ」

禁断の花園フラグが立ちかけた瞬間、黒装束の人間びっくりドンキー魔法少女が現れた。
当時のスタッフはこう語る。
「あれは人の皮を被った化け物ですよ」

「あれは相手にしてはいけない。記憶を根こそぎ奪われる」

「あれはアリアハン、リザーブ村です」

「よくやった。褒美にオプナーをやろう」

そんな前例を持つとんでも女が今、俺の目前に立っているのだ。
ああ、恐ろしい。なんておぞましいんだ。こんな縞パンなんか見せつけて。

('A`)「いや、ちょっと魔法の訓練を」

川 ゚ -゚)「どう見ても全裸です。本当にありがとうございました」

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 23:06:07.73 ID:4oE5SEN30

( ・∀・)「ややっ、君はいつぞやの!」

店長が何かを思い出したのか、足の力だけで勢い良く立ち上がろうとするが、勿論のこと失敗する。
結果は背中を床に打ち付けるというもの。しかもここは屋上なので、綺麗にされた院内とは違う。
直に汚れとダメージを受ける四十代独身。無論全裸である。

あと今気づいたことなのだが、店長は見た感じは足だけを折ったのかと思えば、
どうやら背中も大きく打ち付けているらしく、汚い床でROLLING 1000 tOONしている。

( ;∀;)「痛いよカーチャン」

そんなことを言いながら、ようやく立ち上がる店長。勿論全裸で。
涙目になりながら、弱音を吐きながら、しつこいようだが、全裸で立つ四十代独身。
俺、こうだけはならないようにしよう。

川 ゚ -゚)「なんだ祖チン」

そんな店長に気遣いの念は一切見られないクーさん。流石というべきか。
……とりあえず服着よう。寒いのは体だけじゃないってことをこんなところで知ったよ。
全裸になると心まで寒くなっちゃうんだね。お母さん。ドクオは一つ成長したよ。

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 23:09:36.34 ID:4oE5SEN30

( ・∀・)「いや、そうだな。ううむ」

いつの間にか目の前の全裸は、涙を見せておらず、少し真面目な表情で何かを考えている。
右手の手のひらが口元を隠しており、左手は松葉杖というものである。

( ・∀・)「ずばり聞こう。君は何者だ」

松葉杖を突き出し、背景音にビッグブリッジの死闘が流れ始める。
しょうがないので俺は踊る。ついでにクーも踊る。

川 ゚ -゚)「私は……」

('A`)「ほいやっ! そいやっ!」

川 ゚ -゚)「私は……誰なんだ……」

('A`)「なんというシリアス展開」

( ・∀・)「私は君を知っている」

('A`)「そんな馬鹿な」

月からスッポンが生まれるくらいの衝撃が走る。ついでに雷も落ちる。
だが恐ろしいことに、目の前の全裸は至って真面目なのだ。これは本当にシリアスな展開になってきた。
それでも俺は踊ることを止めない。勿論クーも止めない。

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 23:12:14.92 ID:4oE5SEN30

川 ゚ -゚)「私は誰なんだ。教えてくれ博士」

('A`)「えらやっちゃ! ずどどん!」

二人揃ってよさこいを踊り続ける。でも後ろでかかっているのはビッグブリッジ。
どう考えても場違いです。本当にありがとうございました。
つーか博士って誰やねん。お前の目の前にいるのはただの全裸で40代なコンビニの店長だろうが。

( ・∀・)「ドクオ君。少し落ち着いてくれないか? 真面目に話しが出来ない」

('A`)「あ、はい……」

何故か俺だけ個人的に注意を受ける。なんでどうして何故何日本。
仕方なく、俺は踊りと音楽を止める。するとクーも急に真面目な顔になる。
くそ、よってたかって俺をのけ者にしやがって。そんな目に合うのは学校だけで充分だっての。


48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 23:15:29.47 ID:4oE5SEN30

川 ゚ -゚)「私は……私は……」

('A`)「いや石鹸屋だろ」

( ・∀・)「……ここにいると馬鹿な発言にイライラさせられる」

('A`)「ち、違うんだ! 先生が! 先生がやれって!」

そうだ。きっと後ろ髪でも切れば許して貰えるだろう。
そんな言葉が脳裏に浮かんできたが、そろそろ真面目に引っ込もう。
なんだか視線が痛い。畜生。全裸のおっさんに注意されるとは流石に屈辱だ。

そのお粗末君は、したたる雨に反応しながら、ジャングルにも雨が降っている。
きっと今頃クラミジアも喜んでいるところだろう。

( ・∀・)「君は、」

川 ゚ -゚)「私は、」

二人の言葉が重なる。何かが起きるような予感がした。
ひょっとしてモララーさんは、何か魔法少女と関連付いているのかもしれない。
今までにひょっとしたらそんな伏線があったのかもしれない。

('A`)「ゴクリ」

何かが……来る!

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 23:18:04.73 ID:4oE5SEN30



(*゚ー゚)「はいモララーさん戻りますよー」

( ・∀・)「はーい」

('A`)「これが現実か」

川 ゚ -゚)「看護婦……恐ろしい子!」

来たのは係りの看護婦で、何か吹っ切ったのか全裸のモララーさんのアレを握り締めながらズルズルと引きずっていく。
その間モララーさんは嬌声を上げながら悶えていた。

('A`)「俺も……戻ろう」

川 ゚ -゚)「帰ろう私たちのお家に」

決して家とは呼べない白い屋根と白い天井の待つ場所へと俺たちは駆けた。
勿論待っているのは点滴と、定期健診である。

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 23:21:16.23 ID:4oE5SEN30



場所は変わって、病室内。
俺は何故か見舞いに来たクーと、看護婦長の三人で話をしている。
もっとも、話と呼べるかどうかは不明だが。

ζ(゚ー゚*#ζ「一応あなたは重症なんですからね!」

('A`)「ふぁい」

化粧や、その他諸々のあれで、歳を誤魔化しているであろう婦長に怒られている。
しかし、残念なことに婦長の怒っている表情は、まるで恐怖を感じない。むしろ気持ちが安らぐようだ。

川 ゚ -゚)「私は注意したんです。でもドクオ君は……オロロ、オロロ」

ζ(゚ー゚*#ζ「反対まで押し切って何モララーさんと戯れてるんですか!」

この女、やってくれる!
何が私は注意したんです。だよ。お前一緒に踊ってたじゃねーか。

('A`)「ごめんなさい。ぼく悪気はなかったの」

ならばと負けず劣らず俺も誤魔化してみる。
語尾にえへへと付け加えて俺のショタっぽさをアピール。これできっとお母様達の心も鷲づかみだろう。
逆の立場なら心臓を冷えた手で鷲づかみされた気持ちになるが。
効果あったか? と思い、再び視線を婦長に戻してみると、

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 23:24:32.28 ID:4oE5SEN30

ζ(^ー^*#ζ「ドクオさん?」

(;'A`)「正直すみませんでした」

鬼でも体内に飼っているのではないか、と思うほどの殺意のオーラが滲み出ていた。
ここに来て俺は初めて婦長の恐ろしさに気づいた。駄目だ。この人に逆らってはいけない。
普段あまり怒らない人を本気で怒らせると怖いというのはまさにこの事なのだろう。


ζ(゚ー゚*ζ「よろしい。では、また後で検診に来ますので」

('A`)「は、はい」

恐怖のあまり危うく失禁しかけた。今度からパンツはムーニーマンにしよう。流石に後処理が毎回面倒だ。
そういえば、今日は闘いと呼べるものをしていないがいいのだろうか。
いや、でも逆に入院してるんだから当然といえば当然か。平和が一番だ。

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 23:27:13.33 ID:4oE5SEN30

川 ゚ -゚)「そういえばだがドクオ」

婦長が部屋を立ち去ったのを確認して、クーが話しかけてくる。
恐らく何か魔法少女関連の話だろう。正直こんなところでは聞きたくないが、どうせ何れは聞かなきゃならないのなら聞いてしまった方が身のためだろう。

('A`)「んだよ」

川 ゚ -゚)「後で社長がお見舞いに来るらしいぞ」

(;'A`)「断っていい?」

正直言おう。会いたくない。だってどうせまた赤フンだろう? さっき全裸だった俺が言えたことではないが。
第一、あの人は病院関係者の人達に注意を受けたらマジギレしてたしな。

何でも「お前らはじゃあ結婚式にスーツで参列しないのか! 俺にとっての正装はこれだ!」とのことで。
じゃあお前はあれか。結婚式や葬式でも赤フン一丁か。早く捕まれお願いだから。

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 23:30:05.52 ID:4oE5SEN30

川 ゚ -゚)「お土産を持ってくるそうだ」

('A`)「楽しみだなあ。いやあ、早く来ないかなお土産」

川 ゚ -゚)「社長じゃなくて、お土産目当てかお前は」

('A`)「あたぼうよ!」

こういうところで物に釣られる自分が非常に嫌いです。
でも、いいんだ。社長が包む土産物だぜ? 何かしら効果なものだろう。
……いや待てよ。何の社長か考え直せ俺。石鹸屋じゃないか。だったら包まれるものは?石鹸か?

……いやいやいや。入院患者にそれはないだろう。だとすれば、妥当にお菓子などか。
まあいいや。これは後の楽しみに取っておこう。いずれにしろ生活用品でないことは確かだろうしな。

('A`)「しかし暇だな。これからどうするものか」

体はこの通り、確かに傷やら、打撲やらは酷いが入院し続けるほどのものでもない。
魔法で受けた傷は治せないらしいが、自然治癒能力を高める魔法みたいなものをかけてくれているので、割と傷はふさがりつつあるのだ。
なので、正直一ヶ月も入院しなくていいと思う。

いや、確かに働かずにずっとのんびり出来るんだが、以外にも俺はアウトドア派みたいだ。
今も既に外に出たくてうずうずしている。が、外の天気を見て、その気持ちは静かに沈んでいった。だって土砂降りですもの。

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 23:33:17.02 ID:4oE5SEN30

川 ゚ -゚)「まあ、その間に少し魔力でも練れるようにするか」

('A`)「マジすか」

いきなりだが、俺にもようやくそんな機会が巡ってきたらしい。
恐らく退院したら修行編みたいなものに突入して、レベルアップするのだろう。

川 ゚ -゚)「ああ。どうせ暇だろう。なら今のうちやれることをやるぞ」

('A`)「そうだな。……で、何すんの?」

魔力を練るっていう言葉がもう既にワケワカメなんだが、まあ要約すると多分
「うおー」「くらえー」「マッガーレ」「ちゅどーん」みたいな。やべえ余計わかんねえ。

川 ゚ -゚)「まず、お前は魔法についてどんな認識を持っているかを逆に聞こうか」

('A`)「魔法についての認識?」

魔法ねえ。厨二病イメージしかねーな。

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 23:36:11.69 ID:4oE5SEN30

川 ゚ -゚)「そうだ。それでお前に見合った魔法が見つかる」

('A`)「魔法って何でも使えるんじゃねえの? マヒャド、バギクロスで二重魔法みたいな」

川 ゚ -゚)「お前はどこの賢王だ。出来るかそんなもん。
     魔法ってのは基本的に一種類が限度だ。有名な地、水、火、風の四種類だったり、イレギュラーな属性を操るものもいる」

('A`)「へー。じゃあ俺はなんか地味なのでいいや。掃除とか」

川 ゚ -゚)「そんなもんで戦力になるかボケ。戦ってる横で掃除されたらお前を先に掃除するわ」

('A`)「誰が上手いことをいえt(ry」

川 ゚ -゚)「駄目こいつ話が進まない」

('A`)「それが俺のクオリティですから」

心底面倒くさそうに溜め息を吐き散らすクーさん。
出会った当初は逆の立場だったというのに、今やこの変態集団に定着しつつある自分が凄く悲しいです。
くそ、返せ俺の仕事前に空き地で戯れる子供を視姦する日常を。

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 23:39:34.58 ID:4oE5SEN30

川 ゚ -゚)「まあいい。で? お前はどんなイメージがあるんだ魔法には」

('A`)「魔法、ねえ」

いざ、具体的にイメージを言えといわれると困るな。
魔法なんて言われたらそりゃ二次元的思考になっちまうから、なんともいえないが……。
('A`)「そうだな……」

川 ゚ -゚)「うむ」










('A`)「エターナル・フォース・ブリザード。相手は死ぬ」

川 ゚ -゚)「エターナル・フォース・ブリザード。よし今すぐ氏ね」


冷ややかなクーさんの視線は紛れもなく「厨二病患者は氏ね」というメッセージがこめられていた。
なんだよ。お前なんか魔法少女とか名乗ってんじゃねーか。これぐらい許せよ。

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 23:42:26.89 ID:4oE5SEN30

川 ゚ -゚)「だがまあ、着眼点は悪くない」

('A`)「狂ってらっしゃる」

そんな認識でもいいのかよ。それでいいのか魔法使い。
……ってことはあれか? 俺の扱う魔法ってのは厨二病全開なものなのか?

('A`)「んー。で、結局俺の属性ってのは何になるんだ?」

川 ゚ -゚)「さあ? 聞いてみただけだ。出してみないとわからん」

('A`)「はははこやつめ。はははこやつめ」

そんな簡単な釣りに引っ掛かって俺は、自分の厨二病っぷりを吐露しただけの結果になったわけか。
糞、もう信じねえ。大人って汚い! だから僕は大人にならない!
一生のお願いです大人になっても殺されないネバーランドに連れて行ってください。

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 23:45:08.82 ID:4oE5SEN30

川 ゚ -゚)「さて、それじゃ早速魔力の練り方について教えるが……覚悟はいいか?」

('A`)「急にそれっぽいな……いつでも大丈夫だ」

突然のまともな展開にびっくりだ。
散々弄ばれたが、今回は割とまともな展開になりそうだ。ならば喜んで受けよう。
どうせ、これからもよくわからん交戦に巻き込まれるなら自己防衛ぐらいしたいもんだしな。そういやあの刀どうしたんだろ。一話以降見てないんだけど。

川 ゚ -゚)「それじゃ、私の手のひらを見てくれ」

('A`)「手のひら……おう」

言われるがまま、広げられたクーの手のひらを見る。

('A`)「お、お前……」

川 ゚ -゚)「ん?」

('A`)「生命線が途中で切れてるじゃないか!」

川 ゚ -゚)「……吸い込め」

そういうや否や、クーの手のひらが光り始める。

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 23:48:15.06 ID:4oE5SEN30

('A`)「うおっまぶしっ」

川 ゚ -゚)「いいから見ろ。見続けていろ」

言われるがまま、俺はクーの手のひらを見続ける。網膜に焼き付いていく光。
目が痛いが、何かやるつもりなのだろう。仕方無しに見続ける。
やがて光は収まり、何かが俺の中に入って来る感覚が襲う。何だ、挿入される気分ってのはこうなのか。
こええ。俺やっぱ魔法使いになるわ。

('A`)「うわあ〜体から力が抜けていくナリィ〜」

吸い込まれたことはないが、ブラックホールに突っ込まれている気分だ。
自然と呼吸が落ち着いていく。気持ちが安らいでいく。あれ、これ眠ってる時と変わらない感覚……じゃ……。
くそ、徐々に意識が……薄れて……。

川 ゚ -゚)「ふう……。少し強引だが、まあこれが一番いい方法だろう」

(-A-)

川 ゚ -゚)「さあ、頑張れよドクオ。お前ならきっと出来る」

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 23:51:08.48 ID:4oE5SEN30



目が覚めるとそこは真っ白な空間だった。
どこまで続いているのか、至る感覚が麻痺していくのがわかる。既にもう距離感がつかめない。

(;'A-)「どこだよ、ここ」

呟いた声の返事はない。当然といえば当然だった。
この空間内を見渡してみるが、人はいない。
それどころか、何もないのだ。ゴミも、埃も、家具も、物と呼べる固形物が一つもない。

(;'A`)「いよいよ真面目展開ってことか」

また呟くが返事はない。困ったことになった。何か武器でもあれば少しは不安が解消されるが、丸腰な上に、今度こそ誰もいないのだ。
もしこのまま、何も起きることなく時間だけが過ぎていったら?
そうなると、俺は二度とここから出られず、何も出来ないままに死んでしまうのか。

('A`)「……どうしたもんかねえ」

下も見てみるが、全く地面という感覚が沸いてこない。なんだろうなこれ。
完全に視覚が麻痺してやがる。なんか真っ白いライトを直視し続けてる気分だ。
視力落ちたらどうすんだよ。唯一の取り得なんだぞ。

('A`)「やべえ、先が見えねえ」

「……それじゃ、特訓といこうか」

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/14(木) 23:54:22.36 ID:4oE5SEN30

(;'A`)「え?」

突然聞こえる人の声。さっきまで何もいないどころか、何もなかった空間に突然の人の声。
急いで振り返ると、そこには誰もいなかった筈が、確かに人がいた。
それも……。

('A`)「特訓だ」

(;'A`)「そんな馬鹿な……」

見れば見るほど不細工な顔立ち。その顔を隠すために伸びきっている髪。
そして服装が黒一色というどう見ても不審者極まりない俺がそこにいた。

('A`)「この部屋では自分が相手になる。強ければ強い分損をするが……せ、戦闘力3だと。ゴミか」

('A`)「銃も持たずに3なら上等だと思います」

目の前の男にいきなり自分の能力を知らされる。しかも自分の弱さを再認識させられるという結果だ。糞が。

しかし……。
俺がすべきことは何だ。何をやるべきだ。この空間。目の前にいる俺という存在。クーが与えてくれた特訓の機会。
……ならどうする? 答えは、既に出ている。

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/15(金) 00:09:16.46 ID:5NAmcQCA0

('A`)「色々面倒だからお前今すぐわかりやすい特徴をつけろ」

(;'A`)「え、そこなの? そこが一番率先してやるべきことなの?」

(#'A`)「そうしなきゃわかんねーだろうが! これじゃ俺の独り言じゃねえか!
     こっちだって都合あんだよ! 考えたらわかるだろこのヴォケ!」

(;'∀`)「じゃ、じゃあこれでいい?」

困った表情を浮かべながら、口を吊り上げ笑う俺じゃない俺。くそ、ややこしくなってきやがった。
しかしなんて気持ち悪いんだ。こんなのが俺だったなんて。信じられない。とりあえず退院したらすぐ髪切ろう。これは酷い。

('A`)「気持ち悪いがまあよし」

(;'∀`)「お前の顔じゃねえか……」

我ながら気持ち悪いぐらいの笑顔にびっくりだが、文句は言えない。だって俺だし。
何が悲しくてこんな真っ白な部屋で、俺と姿格好、加えて声まで同じ奴と一緒にいなきゃなんねーんだよ。
こんなとこにいるせいで色々麻痺してるのに待ちに待った人間が俺かよ。ふざけろ運命。

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/15(金) 00:11:43.98 ID:5NAmcQCA0


確かに魔法が使えるようになるっていうなら破格の条件かもしれないが、
如何せんこれはきつい。何がきついってこの先がきつい。展開的な意味で。
ええい、このままでは終わりがみえねえ。マジで見えない。未来も真っ暗だ。

毎度毎度終了間際に猿なんか来やがって。この糞ファンキーモンキーが。
あと少しで猿食らう身になってみやがれ。たまったもんじゃねぇよ糞っ垂れが。
とりあえず……終わらせなくては。終わりが見えなさ過ぎる。どうしたもんか。ううむ。

そうだな。よし。そうだ。



――――今まさに魔法の特訓が始まった!






(;'∀`)「それでいいのかお前」

('A`)「こくまろみるくれちゃうのおおおお」


第三話 おわり


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