- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/24(日) 22:46:33.36 ID:tUCt4Ox70
淡白な、まるで自分の心の中を映し出しているのではないか、
と疑問符を打ってしまいそうなくらいに真っ白な部屋。
いや、部屋と呼んでいいのかも不明瞭な、そんな真っ白な部屋。
どちらかといえば、空間、と呼ぶべきか。
そんな空間の中で、俺は今……
('A`)「ところがどっこい……っ 夢じゃありませんっ……! 現実……。 これが現実です……!」
(;'∀゚) ぐにゃあ
('A`)「さあっ……! 卓から引っ剥がし連れてってください……! 奴を……地獄に……!」
(;'∀`)「あ、ああ……あ、あああああ……」
二人麻雀と洒落込んでいた。
俗に言う地雷ゲームという奴だ。
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/24(日) 22:48:19.82 ID:tUCt4Ox70
('A`)「ククク…… これで俺の勝ちだな」
('∀`)「なあ」
('A`)「あん?」
('∀`)「お前、ここに何しに来たんだっけ?」
('A`)「ああ? そんなもん……」
('A`)「働かない日々を得るために」
('∀`)「表出ろコラ」
第四話 地味な努力ほど実を結ぶ。しかし二次元の世界においてそんな理屈は吹き飛ばされる
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/24(日) 22:50:28.98 ID:tUCt4Ox70
('A`)「仕方ない……特訓するか」
「よっこらせ」と言いながら立ち上がり、腰をさする。
正直今こうやって特訓するか、なんて言ったものの全くもってする意味はわからない。
俺は魔法少女と名乗る奴らに絡まれ、挙句その戦闘に巻き込まれて、仕事まで無茶苦茶にされた。
その状況を打破するために、自分の身を守るために魔法を身につけるための特訓なのだろう。
だがしかし。こういう時に俺が静かに思うのは、
「なんで俺巻き込まれてんの?」
である。
じゃあその思ってることを伝えたらいいじゃない。パンツがないならパンを穿けばいいじゃないの理屈だ。
馬鹿野朗。そんな勇気があれば俺はもっとモテただろうよ。それにそこまで俺はこの状況を卑下してるわけじゃない。
だって魔法だぜ? 二次元みたいな展開だぜ? そりゃあ正直楽しいさ。楽しくて仕方がないさ。毎日愉快で、痛快でたまらんよ。
('A`)「なあ? 兄弟。 そう思うだろ」
('∀`)「お前の回想シーンみたいなのはよおくわかった。で、本音は?」
('A`)「俺の心を読むなよ気持ち悪い」
(;'∀`)「そっちかよ」
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/24(日) 22:53:11.85 ID:tUCt4Ox70
別にこんな二次元的生活は全くもって嫌いではない。
が、それはあくまでも客観的に見ている時、第三者としてみている場合にのみに限る話である。
とどのつまり、この状況は俺にとって意識不明の重体になっている患者が、
あろうことかいきなり目を見開きながら、ソーラーカーで日本一周を成し遂げるぐらいあり得なく面倒臭いのだ。
('A`)「さあ、特訓をはじめようじゃないか」
(;'∀`)「え、やっていいの? 大丈夫なの?」
唐突な特訓しようぜ! という誘いに動揺している俺。
いや、まあ正確には俺ではないが。
('A`)「お前俺だろ? もっとしっかりしろよ。大丈夫だよやれよ」
(;'∀`)「……じゃあはじめるけど」
そう言って、俺じゃない俺は拳を握りこむ。
静かに、空気がゆれるのを感じる。ああ、魔法とか使う時はこういう風に大気が揺れたりするんだな。魔法すげえ。
戦闘モーションに完全に入った俺と俺は正面から対峙する。恐らく、いくぞ? という目をしている。
('A`)「……おうよ。どこからでもかかっげぶふぇらぶぁあああ」
凄い飛んだ。そりゃもうどれぐらい飛んでるかといえば凄い飛んだ。
高層ビルの屋上から突き落とされて、地面に直撃したかのような衝撃を受ける。いや、そんなもん食らったこともないから知らんけど。
兎に角、物凄く飛んだ。この空間には恐らく壁とかそういったものがないのだろう。
おかげで俺は床と長い接吻をし続ける羽目になった。
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/24(日) 22:56:55.12 ID:tUCt4Ox70
(;'∀`)「え、嘘。あたるんだアレ」
そんな腑抜けたことを言い出す俺じゃない俺。
一方の俺はというと、勿論何が起きたのか全く整理が出来ていない。
だっていきなり殴られたのか蹴られたのか、そんなのもわからず、
ただ単純にぶっ飛んだんですもの。
涙目になりながら、よくわからない痛みを発している頬をさすりながら立ち上がる。
(#)'A`)「あの、何やったか教えてくれます?」
(;'∀`)「え、いや。普通に魔力を放出しただけなんだけど……。
普通の魔法使いなら跳ね返すか、ノーダメのはず……」
普通の魔法使いなら、跳ね返すか、ノーダメのはず、か。
ええと、それはつまり?
(#)'A`)「素質0ktkr!」
思わず拳を突き上げ、叫んでみたものの悲しくなったので静かに拳を下ろした。
悲しいよね現実って。こんなときにだけ刃を向けてくるもんね。くたばれマジで。
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/24(日) 22:59:53.39 ID:tUCt4Ox70
(;'∀`)「……お前さ」
(#)'A`)「なんだよ。鍋の蓋についた昆布を見るような目で見んな」
(;'∀`)「うるせえ顔面みぞれ鍋。んなことはどうでもいい。
お前、まさかだけど……魔法使えないとかそんなアレだったりすんのか?」
(#)'A`)「あ、バレちゃった」
(;'∀`)「一から教えるのか……」
心底面倒くさそうな「はあ……」とか溜め息まで憑き始める俺。いや、まあ確かに俺らしいっちゃらしいけど、
もっと協力的になってもいいだろう。他でもない俺のためなんだぞ。
もっとこう、地球が破滅する5秒前ぐらいの危機感を持ってもいいだろう。他ならぬ俺のためなんだから。
そんな期待を込めて視線を送ってみるが、相も変わらず面倒そうな表情だ。
(;'∀`)「じゃあまあ、とりあえず基本的なことから教えるぞ?」
('A`)「おう、どこからでもかかってこい、あ、殴らないでね」
さっきのトラウマがよみがえり、つい俺に媚を売っていた。
情けねぇ……。尻の穴という穴から涙が出そうだ。
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/24(日) 23:04:08.17 ID:tUCt4Ox70
('∀`)「まず、魔力の練り方だが……」
そこから先の三十分間は覚えていない。何故かといわれれば答えは一つだ。
(-A-)Zzz シゴトガアアアア シゴトガアアアア
あまりの話の難しさに俺の頭がついていかず、
夢の中っぽいところで更に夢を見ているからだ。
('∀`)「……というわけなんだ。わかった?」
(つA-)「え? あ、おkおk把握」
('∀`)「お前寝てただろ。おいこら寝てただろ」
('A`)「何を失礼な。大丈夫。俺天才だから睡眠学習ぐらい余裕ッスよ。
で、けいおんがどうしたって? あずにゃんはやらねーからな」
(;'∀`)「聞いてねーんじゃねぇか……。しかもけいおん厨かよお前氏ねくたばれ」
俺に叱られる日が来るなどと、誰が想像しただろうか。全く理解が出来ない。
第一になんかよくわからん方程式が出たり、専門用語を馬鹿みたいに使われたりしたらそりゃ理解も出来ないっての。
というかこの野朗さらっと俺を侮辱しやがって。お前なんかウコンの力飲んで体中の毛穴からウンコが捻り出てくればいいんだ。
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/24(日) 23:07:20.26 ID:tUCt4Ox70
(;'∀`)「もういいや。簡単な方法だけど、魔力ってのは体内に宿ってるものなんだ」
('A`)「ほうほうそれで?」
('∀`)「(こいつ……我ながら鬱陶しいキャラしていやがる!)」
心底面倒だろう。我ながらそう思う。いや、別に聞く気力がないわけじゃない。
だが、あまりに漠然としなさ過ぎる。だってそもそも魔力なんてあんのかよ。って話ですよ。
そりゃ魔法少女とかそんな連中が使えるのは納得がいくが、いくらなんでも俺ですよ? 戦闘力3のゴミですよ?
('∀`)「まあ……体内に宿ってる魔力は大したもんだ。
扱い方を知らないもんだから持ち腐れだが」
とか抜かし始める俺。しらねえよ。そもそも魔法なんか使う機会なかったんだから。
そういえば確かにうちの母親方の先祖は何か非現実な職だった気がしないでもないが……。
ちなみに親父はただのバキュームカーを走らせるおっさんだったけどな。そういや最近ぼっとん便所みねえな。
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/24(日) 23:12:14.05 ID:tUCt4Ox70
('A`)「で、どうしたらいんだよ」
('∀`)「考えるな。感じるんだ」
('A`)「よし寝る」
('∀`)「ちょwwww」
アホか。そんなことでわかるんなら今まで生きてきた二十数年で変なことが起きてるっつんだ。
まあ……確かにたまに幽体離脱まがいのことやら、空を飛んでたりはしたが。だがあれは間違いなく夢だ。俺はそう信じている。
('A`)「感じれたら苦労しねえだろうが。具体的に説明しやがれ」
(;'∀`)「(糞……なんでこいつこんなに偉そうなんだ。そもそも話しても無視だった癖に……)」
('A`)「お前の役割は俺の特訓だろうが。答えろ」
('∀`)「そうだな……確かにお前の特訓は俺の役目だ」
('A`)「おう。苦しゆうない。続けたまえ」
(*'∀`)「スパルタで行きますNE!」
('A`)「ちょwwww」
まさに今、ようやくして特訓が始まった。
なんか、炎とか出してんの。馬鹿じゃねえのこいつ。
ライターとキンチョール使うぞ糞が。
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/24(日) 23:15:38.69 ID:tUCt4Ox70
一方その頃現実では。
川 ゚ -゚)「林檎うめえ」
从 ゚∀从「俺にもわけろよォ」
すやすやと、とは呼べない苦しそうに「うーん……俺キメェ……」などと項垂れながら眠っている青年の横で、
黙っていれば可愛い部類に入る魔法少女が二人、果物を頬張りながら完全にぐうたらとだらけきっている。
一方の魔法少女は黒装束という謎の格好。そしてもう一方の魔法少女はコスプレというわけでもなく、学生服、もといセーラ服を着ている。
挙句の果てには赤フンだけの誰がどう見ても変態と称する全身筋肉質の露出狂が一人。
後はまともな格好の病人である中年男性が一人という異常なグループが出来上がっている。
(;´・ω・`)「見舞いの品が……お前らって奴は」
( ・∀・)「いやあ、中々美味だね。流石は士農田工場の社長さんだ」
(´・ω・`)「……はっはっは! そうだろう! たーんと食べるといい!」
なんとも口車に乗せられやすいのだろうか。
中年男性に悪意はなく、本心から言っているようだが、少し褒められてこの有様。大丈夫なのだろうかこの変態は。
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/24(日) 23:18:37.09 ID:tUCt4Ox70
( ・∀・)「ではありがたく貰うとしよう」
しかしながらこの魔法少女グループ。残念ながら『少女』と呼べる者がいない。
何せ全員の設定年齢が余りにも残酷である。
成人しておきながら「私は魔法少女だ!」高らかに叫ぶ基地外、そもそも少女ですらない赤フンマッチョ。
一人はまあ……一応未成年ではあるが、もう直にその『未成年』という肩書きも消えてしまうだろう。
それでも彼らは言うのだろう。「私は魔法少女だ!」と。現実、こんな奴らがいたらどうする。大半の人は両手を挙げて逃げ出すだろう。
それを考えれば俺キメェと項垂れる少年はある意味で尊敬に値するのかもしれない。半分以上が異端の塊ではあるが。
その中で一人、コンビニの店長という肩書きを持つこの中年男性も、ある意味で異端かもしれない。
いや、行動に起こしていることや、言動だけを見れば十分異端の塊ではあるのだが。
从 ゚∀从「いやァおっさん。この前はすまなかった」
( ・∀・)「何、店が少し心配だが、内藤君なら上手くやっているだろうし、
こうして無償で休暇も得られたのだから感謝したいくらいだよ」
从;゚∀从「(い、言えねェ。店を無期限休暇にしているなんて言えねェ)」
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/24(日) 23:20:38.81 ID:tUCt4Ox70
決してばらせない本心を隠しながら、「は、ハハ」と苦笑いをする魔法少女。
そんな状況を知るわけもない、
とあるコンビニ店長な中年男性は心底笑顔である。
一言でいうなれば、「かわいそうな人」だ。
川 ゚ -゚)「頑張れドクオ……」
ようやくまともな思考をし始めた者がいた。
恐らく今頃必死に特訓をしているであろう少年の無事を祈ってか、静かに眠ってる青年を見つめている。
川 ゚ -゚)「腹減った」
残念ながら青年のことはすぐにアウトオブ眼中。あっという間に青年の下からフェードアウトしていく魔法少女。
お見舞いの品である林檎を一つ手に取り、丸ごと頬張る。
甘い香りが口内に広がり、その味を堪能しながらゆっくりと噛み、飲み込む。
(´・ω・`)「ふふふ。そういうと思っていたぞ。そんなお前のために弁当を買ってきたんだ」
川 ゚ -゚)「流石社長。いつもコンビニの鳥弁なのかは問わないでおくが」
(´・ω・`)「これが一番美味いのさ!」
( ・∀・)「あのコンビニの鳥弁って七味じゃなくて、甘ダレの時が一番良かったよね」
(´・ω・`)「それは認めざるを得ない」
青年の苦労などいざ知らず。今彼らが話している内容はコンビニ弁当を懐古しているだけである。
今頃青年は一人必死に特訓中だろう。こういう王道パターンからすれば、
大体成長して帰ってくるのが鉄則だが、この物語、一体全体どう転ぶのかさっぱりわからない。
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/24(日) 23:23:39.63 ID:tUCt4Ox70
从 ゚∀从「そういえばよォ」
川 ゚ -゚)「なんだ?」
从 ゚∀从「ドクオ、だっけか。あいつのことなんだが」
ようやく青年についての話がピックアップ。
恐らく食べていた果物にも飽きてきた頃か、満腹にでもなったのだろう。
そのついでに話す内容も特にないので、とりあえず何か話そうとして頭を捻ってみたところ、出たのがこの話題、といったところだろうか。
从 ゚∀从「あいつは、どの程度の能力者になるんだ?」
川 ゚ -゚)「そう、だな……。今はまだ未能力者だが、潜在能力を引き出せればあいつは私たちを軽々と超える」
从;゚∀从「王道的過ぎないかそれ。流石に偉い人達に怒られんじゃねェの」
川 ゚ -゚)「私に言われて困りましゅううう」
そんな話をはたから聞いていたコンビニ店長45歳。
こんな面白そうな話他じゃ中々ないぜ! といわんばかりに目がギラギラと輝いている。
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/24(日) 23:26:11.14 ID:tUCt4Ox70
( ・∀・)「どっくんが、能力者? 一体どういうことなんだい?」
しかし普段の基地外っぷりは押さえ込む。流石にこの面々で全裸になったりするのは危険を感じるのだろうか。
いや、それ以前に入院しておきながら屋上まで赴き、雨の中全裸で床を転げまわったり出来るくらいならさっさと退院しろよ、という話なのだが。
川 ゚ -゚)「ああ店長。今のは冗談だ。忘れてくれ」
( ・∀・)「平然と嘘をつくね君は。なんだいハブかい。僕だけ一人ハブかい」
(´・ω・`)「まあまあ。これでも食べて落ち着きな。あの店のプリンだ」
( ・∀・)「こ、これは! あの店のプリンじゃないか!」
(´・ω-`)「ああ、あの今でも大人気のあの店のプリンさ」
( ・∀・)「い、いいのかいこれを貰っても」
(´・ω・`)「ああ。ただし、これ以上この話はしないことだ。いいですかな」
( ・∀・)「そ、そんなのむしろこっちがいいのかと言いたいくらいさ!」
从;゚∀从「(なんでこいつらぷっちんプリン一つでここまで盛り上がれるんだ……)」
川 ゚ -゚)「もwwwwりwwwなwwwwがwwww」
目の前にある105円の値札がついたぷっちんプリンを、
それはもう見てられないくらいの笑顔で頬張る45歳中年男性。
そんな彼を見ながら、皆一様に笑顔になっていく。勿論、その目が心から笑っているのかといえば、そんなことはない。
薄ら笑いを浮かべながら、にやにやと蔑んでいるだけなのだが。
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/24(日) 23:29:11.03 ID:tUCt4Ox70
川 ゚ -゚)「そういえばだが、ハイン」
从;゚∀从「は、え? 俺? な、何だよ」
川 ゚ -゚)「お前、ドクオの特訓状況とか見れるよな?」
从 ゚∀从「ん、あ、ああ。そういった能力は確かに俺ァ持ってるけどよォ」
川 ゚ -゚)「よし、暇だから見せろ」
从;゚∀从「盗み見とは……酷い奴だな」
(´・ω・`)「いいだろう! 彼の特訓次第で我々の動きも変わるのだからな!」
( ・∀・)「えーどっくん特訓とかしてるんだ。見たいみたいーあたい見たいわー」
中年男性の首があらぬ方向へと曲がり、そのままぶくぶくと泡を立てて倒れこんだが、
誰一人として助けようとはせず、そのまま放置される。
从;゚∀从「お前ら……相手は一応入院患者だぞ……」
(´・ω・`)「なあに、いざとなれば回復するから大丈夫だ」
从;゚∀从「なんでもアリかよ。まあいいわ。それじゃ、映すための媒体はあるか?」
川 ゚ -゚)「あれでいいんじゃないか?」
彼女の指差すアレ、というのは一昔前の産物であるブラウン管を積んだテレビ、
……の横にある魔法少女のフィギィア、だったものである。
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/24(日) 23:31:20.09 ID:tUCt4Ox70
从;゚∀从「……アレ?」
川 ゚ -゚)「アレ」
(;´・ω・`)「テレビ使えよ常識的に考えて……」
川 ゚ -゚)「今時普通にやっても面白かねえんだよ! 馬鹿かてめぇら! 飼いならされやがって!」
そんな発狂し始める魔法少女は完全に放置の方向で、金髪な魔法少女はテレビに向けて手をかざす。
その姿、さながら「わしの商売道具に何をする!」とか言いながら、自分はさも当然そうに水晶玉の上に乗っている腐れBBAを連想させる。
勿論、そんな皺くちゃアレではなく、お肌にはハリがあり、若々しさ全開の子が念じているのだが。
从 -∀从「……! お、見えたぜ。よし、じゃあ媒体に映像を切り替える、ぞ」
(´・ω・`)「dkdk」
川 ゚ -゚)「wktk」
飛竜種ならばその場から動けなくなるほどの強い閃光。
しかしその光を直視して、発言しているのは「うおっまぶしっ」や「目がああああぁぁ目がぁああああ」という悲しいものである。
勿論のことだが、彼らがその光で本当にダメージを受けているのか否かで言えば……
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/24(日) 23:33:50.22 ID:tUCt4Ox70
川 ゚ -゚)「お、映ったな」
(´・ω・`)「そうだな。なんだ。ボロボロじゃないか」
この有様である。全くもってのノーダメージ。
魔法少女というのは完全に生態が狂っているのだろう。
从 ゚∀从「んじゃまァ……。ゆっくり見物といきますか」
川 ゚ -゚)「うわ……性悪女め……」
从;゚∀从「てめェが言うな!」
そういいながらも、全員静かにテレビを見やる。
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/24(日) 23:35:31.25 ID:tUCt4Ox70
(´・ω・`)「しっかしまあ、相変わらずこの部屋は白いんだな」
川 ゚ -゚)「そうだな。白、或いは黒。この二つしかパターンがないからな」
从 ゚∀从「なんだってこんな部屋なんだ?」
川 ゚ -゚)「基本的に色というのは白と黒の元素となる色しかないわけだ。
そこから派生して赤やら青やらの原色が出来ているが、下は黒か白の二択。
私たちが敵対しているのも言ってしまえば白と黒、私たちが正義で、向こうが悪。
が、まあ勿論そんなものは私観でしかない。はたからみれば……」
(´・ω・`)「長くなりそうなので巻きでお願いしますぐるぐるぐるー」
そして再び視線はテレビの方向へと向けられた。
箱の中ではただただ魔法をよけ、直撃しては連続でダメージを受けている青年の姿がそこにはあった。
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/24(日) 23:38:28.79 ID:tUCt4Ox70
(###A###)「前が見えねえ」
(;'∀`)「まさか……。能力ゼロなんて」
魔法など使えない俺に魔法の特訓などしても結果は見えていた。
目の前にいる俺は、全く俺をコピーしたようには思えないほどに華麗に魔法を使ってきた。
どっかの誰かさんは魔法の属性は一つ、または二つまでしか使えないとか抜かしやがってきた癖に、
目の前の不細工は『地、水、火、風、雷、氷』この六種類を巧みに使ってきやがったんだが。
雷、氷以外の四種類が一般的じゃなかったのかよ糞が。
(;'∀`)「このままじゃ、特訓にならないから君の能力をオーバーする力を使わせて貰うぞ」
(###A###)「畜生早くやりやがれ」
どうにも夢ではないらしく、いや、正確には多分現実とは違う場所にいるのだが全身が酷く痛い。
つーかこの状況下で俺に拒否権なんざあるわけないだろう。煮るなり焼くなり四つんばいにさせるなり好きにしやがれ。
しっかしまあ……。なんというかかめはめ波を直撃して木っ端微塵になるより、
瀕死のダメージを受けているほうがきついということがよくわかりました。
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/24(日) 23:41:13.96 ID:tUCt4Ox70
(;'∀`)「もうじき痛みが引く。回復魔法なんてのは反則的過ぎるから通常使えないだがな」
そうか。回復魔法か。どっかの誰かさん曰く魔法で受けたダメージは回復されないとか言ってた気がしないでもないが。
ああ、だからこそ反則的で、俺の能力をオーバーする力なのか。
そんなことを考えているうちに全身が光に包まれていた。なんというか性的な意味ではなく気持ちいい。
これがFF的に言えばケアルを受けている気持ちか。間違っても合体中毒みたいなアレではない。
ちなみにどっかのクーさんの回復魔法はあまりに凶暴過ぎだと俺は思う。
気持ちよくもなんともない。殴られて、気がつけばあっという間だ。もっとこんな感じの魔法を使えればいいのに。
どうしてヒロイン的ポジションの女が、
華麗にステッキとか振り回したりして「えいっ♪」と言いながら回復してくれないんだ。
挙句あいつのやってることって言えば、単純に肉体言語じゃねえか。ふざけろ糞設定め。
('∀`)「よし。戻ったな」
('A`)「なんて便利な能力だ」
ふと気がつけば既に俺の怪我は全て癒えており、最早文句の付け所がないほどに全快していた。
……こんだけ回復してるなら現実というか、病院にいるであろう俺はもう動けるんじゃないか?
('∀`)「残念だけど、現実の君には影響がない。
ただ、ここで死ぬと話は別だ。精神崩壊を起こして二度と立ち上がれないからな」
そうですか。俺の思考に勝手に入り込んでくれた挙句、絶望の淵に追いやるような的確な返事をご丁寧に糞どうも。
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/24(日) 23:44:16.77 ID:tUCt4Ox70
('A`)「結局じゃあここで俺は何すりゃいいんだよ」
(;'∀`)「いや、魔法の特訓だろ……」
('A`)「お前な……。さっき見た通り、特訓も糞もねえ。まず俺には魔法が使えないんだ。
だってのに一体何の特訓するんだ。お前はアレか。
『早く勉強なさい!』とか教材も、環境も整ってないのに偉そうに指図するババァか何かか」
(;'∀`)「自分のオリジナルであることが悲しくなるぐらい卑屈だな……。
まあ確かに教材はない。だが環境は整っている。
あとはお前が魔法を使えるようになればいいだけだろ」
('A`)「それができねえんだろうが」
悪態吐いて俺はその場に座り込む。
相変わらずぶっさいくな面をした俺が溜め息を吐きやがる。
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/24(日) 23:47:15.54 ID:tUCt4Ox70
(;'∀`)「そう悲観的になるなよ。今から魔法の使い方を教えるんだから」
('A`)「長ったらしい説明はパスな。覚えきれねえ」
('∀`)「お前今すぐハリーに謝って来い。ついでに色々必死に特訓して本とか読んで、
ようやく五話目ぐらいで魔法を使えるようになる主人公たちに謝って来い」
('A`)「だが断る」
そりゃあ確かに俺の言ってることは無茶苦茶だ。そしてこの傍若無人っぷり。
しかしだ。俺にそんな器量があれば恐らく二話ぐらいで既に覚醒フラグが立ち、魔法を使いながらあの腐れマッチョと戦えていただろう。
それが出来ないというのはつまり、そんな器量は持ち合わせていないってことだ。
(;'∀`)「オリジナルながら面倒臭ぇ……。まあ、とりあえず魔力の練り方から教えるとしようか」
('A`)「魔力の練り方? ああ……なんかさっき言ってた奴か」
('∀`)「ああ。まず体内に蓄積されている魔法の源となる魔力。これを体外に具現化しなきゃならないわけだが、
そもそも魔力というのは人間全てに備わっているかと言われればそうではない。
ある一定の条件を満たす環境、才能がなければ魔力は存在しないわけだ」
('A`)「うん。なるほど。おkおk。産業の説明でありがたいんだが、わかり辛い」
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/24(日) 23:51:36.54 ID:tUCt4Ox70
俺ではない俺がぶっさいくな面が更に歪み始める。
マザーのラスボス戦を連想させるような歪みっぷりだ。
(;'∀`)「……一番分かり易いのはまず、魔力について認識することなんだがな」
('A`)「そういう小難しいのはわからん。簡単にしてくれ」
顔面に核爆弾でも落ちたような顔の俺が、再び頭をかきむしり始める、。
面倒くさそうに溜め息を吐きながら「とことん面倒くせえこいつ……」と一言ぼやく。
(;'∀`)「……まあいい。とりあえず体内の魔力の在り処はわかるか?」
('A`)「知らん」
(;'∀`)「即答かよ。じゃあ魔力はどうやって生み出されるかわかるか?」
('A`)「知らん」
(;'∀`)「……魔法のことはどこまで知ってるんだ」
('A`)「何も知らん」
世界が停止したかのように動きを止める食卓に潜む黒い悪魔イニシャルGもびっくりな顔の俺。
二秒ぐらいだろうか、それぐらい経ち、ようやくして口を開き、
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/24(日) 23:53:35.33 ID:tUCt4Ox70
('∀`)「止めよう。不毛だ」
('A`)「ちょwwww」
とんでもないことを言いやがった。
お前それを言ったら全部おしまいだろうが。もしこの状況を誰かに見られたら怒られるぞマジで。
(;'∀`)「だってお前何もわかってないならどうしようもないだろ」
('A`)「いやそこはほら、なんか魔法とか使って俺を覚醒したり、薬とかで何とかなるんじゃね?」
('∀`)「その手があったか」
('A`)「ちょwwww」
想像以上に俺が魔法を使える日は近そうだ。
ぶっちゃけ努力も何もしない俺からすればこれほど願ってもみないことはない。
正直そろそろ向こうがキレるかな、とか思ってたりしていたものだから覚悟を決める予定だったのだが、存外に事は簡単に運びそうだ。
('∀`)「じゃ、まず瀕死になろうか」
('A`)「まてその発想はおかしい」
突然何を言い出すんだこいつは。
魔法とか使って何とか出来そうなオーラが漂っていたのにいきなり暗雲立ち込めたるだ。
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/24(日) 23:56:33.92 ID:tUCt4Ox70
('∀`)「いやほら、サイヤ人とかは瀕死になるとパワーアップするじゃん」
('A`)「俺はサイヤ人でもなければ、現実の人間だ」
(#'∀`)「んじゃどうすんだよ! わがまま垂れ腐りやがって!
いい加減こっちもお手上げなんだよこの顔面猥褻物陳列罪が!」
とうとうキレて、顔面兵器が俺を性器扱いしてきやがった。どっちもどっちの顔であるが。
確かにまあ話は進まない上に何とかしようとすればすぐに「いや無理」の連発である。
そりゃあいい加減キレもする罠。こいつは俺ながら頑張ったよ。
相手が俺だとわかっていたら、俺なら既に初期の初期で脳線がぷっつりいってるだろう。
(#'∀`)「久々にキレちまったよ……ちょっと屋上行こうか」
冷静に状況を判断している俺に対して「ヒュー……ヒュー……」と不気味な呼吸を今にも始めそうな俺がいた。
しかし残念だがこの亜空間に屋上はないだろう常識的に考えて。
(#'∀`)「もういい。お前の体内にある魔力を無理やり体外に出してやるから、
その感覚で全部覚えろ」
('A`)「え、リスクとかねえの?」
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/24(日) 23:58:29.42 ID:tUCt4Ox70
そんなことしたらどんな漫画やゲームでもリスクを伴うとよく聞くが……。
一応精神力的なものを放出するわけだろう? 反動で体が倒れたりするじゃねーか。
いや、でも確かに現実でならあいつら使っても大した反動とかなさそうだしな。安全かもしれんな。
多分そうだろう。ふと目の前の自分の顔を見ると、そいつはもうこれほどにもない妖艶な笑みを浮かべていた。きめえ。
(*'∀`)「下手すりゃあの世への片道切符が渡されます」
とんでもないこと言いやがったコイツ。
いや確かにそれぐらいしなきゃ魔法なんて一生扱えないかもしれないが。
(;'A`)「いや待てよ。もっと穏便な方法はねえのか? いやあるだろ。何かあるだろ」
(#゚∀゚)「ねええええぇぇぇよおおおおお!!
手前があれこれ無理だとか言いやがるから全部お手上げだ糞があああぁぁぁぁああ!!」
落ち着け俺。その表情じゃちょっと色々不味い。おっぱい愛好者にあっちまう。間違えるなよ俺は脚フェチだ。
違うそこじゃねえ。まずこの狂った状況をどうにかしないとだ。よし、穏便に話を進めよう。
相手は俺だ。きっと穏やかに笑いながら許してくれるさ。
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/25(月) 00:01:34.52 ID:U7L6Xij20
- _
(;'A`)ノ 「落ち着けって、な? ほら、何事も急いては事を損じと言ってだな……。
よし、とりあえず眉毛をつけよう、な?」
_
(#゚∀゚)「だぁぁぁあああれぇぇぇええが原因だぁぁああああ!!」
駄目だこいつ。話が通じねえ。
誰に似てこんな融通が利かない子になっちまったんだ。俺か。ああ俺か。
いや待て。俺はもっと紳士的な変態だぞ。
_
(#゚∀゚)「コロスコロスコロスコロスコロスコロス……」
アカン。完全にぶっ飛んでらっしゃる。
これは流石になんとかしないといけないな。
('A`)「まあ落ち着けよ。俺のちんこでも舐めるか?」
_
(#^∀^)
駄目だ。これ以上は流石に駄目だ。冗談をぶちまいてる場合じゃねえ。
なんとか事を穏便に進めないと俺の命が危ない。生命活動のゲシュタルト崩壊を招いてしまう。
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/25(月) 00:03:52.73 ID:U7L6Xij20
(;'A`)「俺真面目にやりますから! もっと真面目に生きますから! ちゃんと就職しますから!」
(#'∀`)「手前の就職状況なんざ河から流れてきた桃を取ろうとして、
爺さんがそのまま海辺まで流されるくらいどうでもいいわ糞が!」
(;'A`)「なんて的を得てない突っ込み! これは酷い!」
(#'∀`)「うるせえやっぱりここで氏ね!」
(;'A`)「ちょ、ちょっと待てよ! 普通に俺が魔力を放出する方法を考えようぜ!」
(#'∀`)「そんなもん無理矢理放出させたら身体が勝手に覚えるだろうが! 勝手にくたばって氏ね!」
落ち着け俺。落ち着くんだ。冷静に考えれば何かあるかもしれない。
そもそも無理矢理魔力を放出させられるのなら、違う方法で魔力を調節しながら放出させられるんじゃないか?
そうすれば、俺の身の危険も……ええい。考えていても仕方ない。なんとか説得するしかあるまいて。
(;'A`)「何か他の方法で魔力を放出する術とかないのかよ! 何か特定の媒体とかで代用させるとかよ!」
(#'∀`)「ああ!? そんなもの……」
動きが止まる。馬鹿みたく歪んでいた変形顔面人間が何かを考えるそぶりを見せる。
まさかあの一言でなんとかなるとは。案外単純なのね俺。ちょっと悲しくなったわ。
怒っててもすぐに冷静になれる俺。優しいのね。うふふ。
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/25(月) 00:06:01.05 ID:U7L6Xij20
(;'A`)「……え、つーか、あるのか?」
('∀`)「……こんなことを忘れていたのか俺は」
他に方法があるっぽい。……姿形、脳内回路まで俺みたいな奴だ。
確かにコピーという形で存在しているこいつだ。そりゃ確かに俺みたいに抜けているかもしれない。
……何故だ。釈然としねえ。俺はやっぱり普通に馬鹿なのか。ちょっとショックだわ。
('∀`)「……うん。そうだな。よし。簡単だ。もうお前は現実に帰ってもいい」
(;'A`)「はい?」
ただでさえ釣りあがった口元を更に釣り上げる。
何を言い出すんだこいつは。突然納得されてもこっちは理解出来ない。
('∀`)「だがな。お前はまた何れここに来ることになるかもしれない」
('A`)「と、いいますと?」
('∀`)「いいか、よく聞け……」
そういうと奴は話をはじめた。
なるほど。……確かに辻褄は合う。かつ有効的な手だ。
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/25(月) 00:09:01.69 ID:U7L6Xij20
('∀`)「だが」
('A`)「あん?」
話が終わるや否や、いきなりの否定。
なんだ。まだあるのか。もう用は終わっただろう。
('∀`)「魔力を放出する。この感覚を徐々に自分の身で覚えていけ。
で、慣れてきた頃に自分でやってみろ。そうすればきっと使える筈だ」
('A`)「ん、ああ。わかった。……ああ、でもよ、自分の属性とかいまいち把握してねーぞ?」
('∀`)「心配すんな。お前は割とチート的な資質がある」
('A`)「マジで?」
('∀`)「ああ……詳しく、聞きたいか?」
そりゃ聞きたい。自分の才能がどうとか言われて、それが明確にわかるっていうのなら、
勿論誰だって知りたいものだ。それも、チート的と来たもんだ。ならば尚更知っておきたい。
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/25(月) 00:11:57.50 ID:U7L6Xij20
('A`)「聞かせてくれ」
いつになく、真顔になる俺。どうでもいい人様の話であればそりゃあいつもどおりふざけ散らすのだが、
残念ながら今回は自分に関する、しかもかつ有益な話なのだ。
ともなれば、当然真面目に聞くべきだろう。ああ我ながら罪な男……!
('∀`)「結構長いぞ?」
普段ならば産業で済ましてもらうか、或いは適当に鼻くそでもぶん投げているところだろう。
しかし今は自分の話だ。
('A`)「構わない。聞かせてくれ」
チート的な資質。随分前に言っていた膨大な魔力。しかし扱いきれていない。
つまり、覚醒前ってことか? ということは覚醒フラグみたいなものが立てば俺に漏れなく無敵の力が?
おおう、ゲーム脳になってきたな。覚醒とか、魔力とか、資質とか。厨二臭がぷんぷんしやがるぜぇ……!
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/25(月) 00:14:14.63 ID:U7L6Xij20
('A`)「? どうした?」
('∀`)「お前のチート的資質……」
('A`)「……ああ」
生唾を飲む。
この表現ってよく使いますよね。
('∀`)「あるわけねーじゃんwwwwwwバッカスwwwww」
('A`)「ですよねーwwwwww」
('∀`)「ふひひっひっひひひひwwwww」
('A`)「はははこやつめwwwwはははこやつめwwwwおい表出ろてめえ散々引っ張って毎回結局こういうオチかこらいい加減にしやがれ」
その後しばらく乱闘騒ぎにはなったのだが、勿論のこと、俺はボロ雑巾状態になった。
そりゃそうだ。向こうはちゅどーんとか言いながら爆発起こしたり、
竜巻とかで思いっきりぶっとんだりさせられるのに対して、
俺は別に右腕でその能力が消せたりするわけでもないのに殴ることくらいしか出来ないのだ。
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/25(月) 00:17:00.20 ID:U7L6Xij20
(###A###)「俺が静かになるまで5分かかりました」
('∀`)「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁあ!!」
(###A###)「オリジナルがこんな目にあってお前は辛くないのか!」
('∀`)「あなたが死んでも代わりはいるもの」
(###A###)「畜生」
惨敗だ。最早悔しくもなんともねえ。当然の結果。俺は何も悪くない。
こんなんで俺戦えるのかよリアルで。そりゃ確かに魔法は使えるようにはなるけども……。
('∀`)「まあ、魔法の使用有無に関しては心配すんな。今この場では発動しようがないからな。
現実に帰ればしっかり準備も出来るだろう」
(###A###)「随分まともなことを言うんだな」
('∀`)「ったりめーだ。元々俺がいる理由はお前の修行のためだからな」
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/25(月) 00:19:04.63 ID:U7L6Xij20
(###A###)「そろそろ真面目に話を進めないと進まない。
っていう大人の都合上仕方なくまともな回答をしただけですね。わかります」
('∀`)「ばwwwwれwwwwたwwww」
(###A###)「oi みす おい。お前俺のキャラ奪うなよ」
('∀`)「まー。細かいことはいいわ」
(###A###)「あん?」
('∀`)「そろそろ現実に目覚めて貰う頃合だ。あんまり同じ顔の奴らが話してても色々と面倒だからな」
(###A###)「だからお前それ俺のキャラだろ……大人しく突っ込みに回れよ……」
('∀`)「気にすんな。どうせもうお別れだ。まあ……。しばらくしたらまた来ることになるかもしれんがな」
(###A###)「はあ? また来ることになるってどういうことだよ」
('∀`)「さて、お別れだ」
(###A###)「おい、話はまだ……」
突然辺り全体が光り始める。こういう時、普段であれば「うおまぶしっ」とか言うんだが、残念なことにそんな余裕はなかった。
何せ、それと同時に目の前にいるあいつの体が半透明になってるんだ。
- 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/25(月) 00:22:08.70 ID:U7L6Xij20
('∀`)「さあ、頑張れよ? 俺」
(###A###)「任しとけよ。俺」
互いに拳を軽くぶつけ合い、
気持ち悪い顔を更に気持ち悪くすべく口元を吊り上げる。
そして二人揃って一言「気持ち悪ぃよ馬鹿」と言い合う。うるせえ。俺の顔だボケ。
('∀`)「さて、消える前に一ついいことを教えてやろう」
(###A###)「なんだよ。どうせまた俺を突っ込みに回すんだろうが。知るかボケ」
('∀`)「いい空気の中だからな。適当に作ったノリに付き合うとは流石腐れ根性だ。
それより、知りたくねーのか?」
(###A###)「けっ。罵倒しあって良い空気なら世話ねーな。まあいいわ。教えろよそのいいことって奴を。
ソープとか言ったらその顔面、更にしゃれにならん状態にするぞ」
('∀`)「おkおk。いいか? お前は……」
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/25(月) 00:25:14.69 ID:U7L6Xij20
目が覚める。辺りを見渡すと、そこにはぶっちゃけまだ見慣れていない真っ白な床、天井、ベッドが目に入る。
そこで一呼吸おいて、俺は思う。苦しい修行だった。しかし、最後の最後には魔法が使えるようにはなった。
この時点で収穫はあった。それに加えて、あいつの最後の言葉。
これの内容について、だが……
(;'A`)「あのタイミングで消えてんじゃねえええええ!!」
川 ゚ -゚)「うるせええええええええええ!!」
(;'A`)「いやあああああん!」
あの糞野朗、肝心な場面で
「時間切れでしたwwwwあぴゃああwwww」
とか言い抜かして消えやがった。で、それに納得がいかず叫んだところ、容赦なく殴りつけてきた腐れ魔法少女。
- 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/25(月) 00:27:02.94 ID:U7L6Xij20
川 ゚ -゚)「まあ、なんだ。お疲れさん」
('A`)「おう。お前も……おい。何くつろいでやがる」
川 ゚ -゚)「えへーへへー」
俺の病室は最早散らかりきっており、
みかんの皮やら、林檎の芯やらが辺りに散らばっている。
つーか……あれひょっとして俺のお見舞いとかじゃねーのか?
('A`)「えへーじゃねえよ。そんなペコちゃんもびっくりするぐらい舌を出しても誰も喜ばねえよ誰得だよ」
川 ゚ -゚)「戻って早々お堅い奴だ。全く、私たちが一体どれほど待ったと思っている」
('A`)「ああん? ……もしかして結構待ってくれてたのか? だとしたら、すまないな」
なんだよ。普段の行動と言動には似つかわしくない愛らしいことするじゃねえか。
流石にこんなベタベタな展開でも、現実で起こり得ちまうとやっぱ嬉しいもんだな。ちょっとときめいちゃったよ。
- 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/25(月) 00:30:07.69 ID:U7L6Xij20
川 ゚ -゚)「ああ。気にするな。わかってくれたならいい」
('A`)「いや、ありがとうよ。ああ、ちなみにどれぐらい待ったんだ?」
川 ゚ -゚)「具体的には一時間ほどだ。全く暇で仕方がなかった」
('A`)「俺のすまないとありがとうを今すぐ返せこの野朗」
ときめいたのもほぼ一瞬だけでした。
この野朗人のみやげ物を散々食い散らかした挙句、一時間病室で待っているだけでこれだけ文句垂れてやがったのか。
こいつぬるぽとか言ったら全力で、かつ死なない程度のガッをお見舞いしてやる。畜生。一生そんな機会ないだろうけどな!
川 ゚ -゚)「ちなみにお前の頑張りを実はハインの能力で見届けていました」
(´・ω・`)「ボロボロでしたねwwwwwwwwうぇwwwwwwwww」
('A`)「mjd? mjd見てたの? あの有様を? 俺以上に歪んだ顔にフルボッコにされる様を?」
川 ゚ -゚)「ああ、しっかり見ていたぞ」
('A`)「ところであの映像を見てどう思う」
(´・ω・`)「すごくwwwwwwwフルボッコですwwwwww」
いつの間に沸いていやがったこの腐れ赤フンマッチョ。つーかお前やっぱり赤フンかよ。
正直何も期待してなかったが、ある意味期待通りの服装できやがって。……いや待て。こいつに服装なんて言葉を使っていいのか?
よくないだろ。あれもう服とか装ってないじゃん。ただ布を股間に巻いてるだけじゃん。捕まれよ早く。
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/25(月) 00:33:08.28 ID:U7L6Xij20
川 ゚ -゚)「で、ドクオ。結局お前は魔法が使えるようになったのか」
('A`)「んだよ。見てたんじゃねーのかよ」
川 ゚ -゚)「一部始終だけだ。結局途中で売店にお菓子を買いに行ったからな」
('A`)「全然待ってねーじゃねーか。お前結局やっぱりだらだらしてただけじゃねーかおい」
川 ゚ -゚)「まあそれはいいだろう。で、どうなんだ? 結局使えるようになったのか?」
('A`)「まあ、一応はな。準備は必要だが」
川 ゚ -゚)「準備か。面倒そうだが……まあ、何よりだ。使えるだけで充分違うだろう。
それにお前は魔力だけは異常だからな。で、魔法の属性は?」
('A`)「属性……ねえ」
そんなもんあいつ一言も教えてくれなかったな。一応魔法の使い方、魔力の込め方なんかは大体わかったが。
とはいえ、そんな無意識のうちに魔法が使えるのであれば何も修行なんか必要性が全くないわけだ。
もしも魔法が無意識のうちに発動できるものだとすれば、この世界は恐らくこんな平和じゃない。
もっとこう……世紀末覇者なんかがはびこる時代になっているだろう。
だからこそ修行の必要があった。『ある特定の条件』で、『特定の状況』で、『特定の状態』で初めて魔法というのは発動する。
更に原則として、自分の力に見合った術以外は発動対象外となる。
自我の崩壊や、意志の暴走なんかは恐らく特例だろうが。勿論、待っているのはただの自爆だろうけどな。
まあ言ってしまえば錬金術みたいなもんだな。何かを唱えるには同等の代価が必要になる、っていう。いわゆる等価交換って奴だ。
そういったことを俺はあいつから学んだ。……半分以上は自己解釈なんだけどな。
だってまともに教えてくれませんもの。聞いてない俺が悪いんだが。
- 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/25(月) 00:36:04.45 ID:U7L6Xij20
('A`)「ううむ……」
川 ゚ -゚)「なんだ。わからないのか?」
それでも属性についてはさっぱりわからん。そもそも一つの属性のみに縛られるのか?
もしあいつが言った通りであれば、属性なんてのは関係ないんじゃないか?
('A`)「わからんわけではないが……」
川 ゚ -゚)「ああ、ちなみにドクオ。もし魔法が使えるようになっても、初めに出た属性以外を出すのはほぼ不可能とされているからな。
つまり、最初に出した属性魔法がお前の属性になると覚えておくといい」
いらんことを言いやがって。知らなければそのまま幸せだったものを。
まあでも確かに、そうしなけりゃ不公平だわな。でなけりゃ二重魔法なり何なりやりたい放題だもんな。
('A`)「俺の属性ねえ……」
川 ゚ -゚)「ならいっそここで少しだけ試してみるか?」
確かに少しぐらいならいくら病室とはいえ、大したことにはならないだろう。
それに魔法を使えることを認識させるのにも絶好の機会だ。
- 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/25(月) 00:39:28.51 ID:U7L6Xij20
('A`)「だが断る」
川 ゚ -゚)「何故だ」
('A`)「いざという時まで取っておく! 何故ならそのほうがかっこいいからだ!」
再び飛んでくる右手。その右手の速度はさながら世界を狙えるんじゃないかといえるぐらいである。
無論、世界のベルトなんぞ一発でも当たれば即座に魔法発動のクーからすれば余裕だろう。
しっかしまあ乱暴な野朗だ。いや、魔法を発動させる条件として普段から殴っていると考えるとほとんどもう癖なのかもしれないな。
……これと結婚する奴は大変だな。事あるごとに殴られるなんて耐えられねえ。
('A`)「まあ、どうせすぐ相手は来るだろ。その時を楽しみにしてるといい」
川 ゚ -゚)「……釈然としないが、まあいい」
('A`)「それにな……」
川 ゚ -゚)「なんだ」
('A`)「修行編ってのは……一話まるごと使ってもウケるもんじゃねえんだよ……」
(;´・ω・`)「お前それを言ったらおしまいだろう……」
赤フンはまあいい。それよりそこの金髪腐れビッチ。お前は何暢気に口開けながら俺の見舞い品であろう林檎をむさぼってやがる。
手前等はそろいも揃ってやることは同じか。唯一黙って待っていたのはそこの変態だけかよ。悲しすぎるだろこの現実。
- 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/25(月) 00:41:31.78 ID:U7L6Xij20
('A`)「第一これそういう話じゃねえから!」
(´・ω・`)「おいそういうのは楽屋裏でやれ。本番中ぐらい真面目にやれ」
('A`)「サwwwwーwwwwセwwwwンwwww」
(´・ω・`)「俺、もう一本ぐらいこいつの骨折っても怒られない気がする」
川 ゚ -゚)「駄目だぞショボン。これ以上病院内で話を進めようとすると色々苦しいんだから」
(´・ω・`)「なら手っ取り早く退院させるのが吉かい。どうせもう体は自由に動くだろうに。退院手続き済ませてくるぞ」
('A`)「ショボンさん待ってください」
(´・ω・`)「なぜだ?」
- 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/25(月) 00:44:34.89 ID:U7L6Xij20
('A`)「もっと働かない生活続けたいです」
(´・ω・`)「今すぐ入院せざるを得ない人達に土下座して謝って来い」
('A`)「胸wwwがwww痛wwwむwww」
(´゚ω゚`)
('A`)「あれ?wwwwねえwwwwどうしたのwwwwキレたの?wwww今どんな気持ち?wwwwねえwwww今wwwどんなwww気持ち?wwww」
川 ゚ -゚)「よし、眠らせよう。これ以上喋らすと色々面倒だ」
(´゚ω゚`)「任せろ。眠らせるのは得意分野だ」
('A`)「やwwwめwwwてwwwwあwwwたwwwいwww敏www感wwwだwwwかwwwらwww」
(´゚ω゚`)「ふんぬらばっ」
('A`)「折れちゃううううううう!」
俺の意識は再びそこで途絶えた。
それから目を覚ますと、目の前には見慣れた顔があったわけだが、
残念ながら目の前のみんなが想像しているような人物じゃない。
( ^ω^)ニコヤカ
典型的なピザ体系に、朗らかな表情をしている豚がいたのだ。
そう、全くもって現実というのは非情という名の刃を突きつけてくる。今がまさにそう。
- 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/25(月) 00:47:31.14 ID:U7L6Xij20
何が悲しくてこういう気絶シーンがあって、目が覚めたら自宅に居て、そしてそこには俺の目覚めを今か今かと待ち構えている人がいる。
しかし、その待ち続けてくれた人がヒロインではなく、正規ルートから大幅に軌道変更が行われた相手だとしたら?
加えてそれが女ですらなく、相手が男だったら?
なら誰でも迷わずこういうだろう。
(*'A`)「……内藤」
( ^ω^)「どっきゅん……」
(#'A`)「お前はお呼びじゃねええええええええええええ!!」
結果俺は一切と迷わず叫び散らしながら、目の前のピザの顔面を全力で殴りつけた。
「どうしてなの!?」とか言ってやがったが、無論そんな弁解など聞いてやる義理もない。
スラム街出身のブライアンホークにも引けを取らない狂った形相で殴り、更に追い討ちをかけていく。
('A`)「クックドゥドゥドゥルーwwwwwwwwクックドゥドゥドゥルーwwwwwww」
( ^ω^)「いやあああああああああん!! えくすたしいいいいいいい!!」
変わり果てた友人。この前会った時お前は
「あー野菜レイパーになりたい」とか極一般的なことを言っていたじゃないか。
なのにどうして今お前はこうも狂ってしまったんだ。
- 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/05/25(月) 00:49:05.35 ID:U7L6Xij20
( ^ω^)「はい俺えええええええ!! 実は俺えええええええ!!」
どうしてだ内藤。お前はいつも俺の先に行ってしまう。
いつだってそうだ。あの時だってお前は俺より先に女を作ってやがった。二次元で。
そして今も、俺の理解が及ぶ範疇をはるか斜め上に行きやがる。
( ^ω^)「あびびいいいいいいいいいいいいいwwwwwwww」
(#*゚∀゚)「退院早々うるせえええええええええええええええええ!!」
( ^ω^)「ピャー」
('A`)「今日も私の周りは平和です」
お金はなくとも、心は裕福。俺の爺さんの口癖です。
金もなければ友達もまともですらないし、ここ最近身近にいる奴らはもっとまともじゃない。
そんな中で心が裕福になるとでも思うのか糞ジジィ。ならねえよ。全くもって赤貧地獄だよ。
ああ……。おかえりなさい二次元的生活。それじゃいってらっしゃい三次元的生活。
第四話 おわり
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