- 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 00:08:38.95 ID:WpIyzebh0
どうしてこうなった。そんなAAが脳裏に過ぎる。それほどの衝撃的映像が今目の前で広がっている。
何にそこまで驚くのか、簡単である。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
俺の家の前で全力で叫んでいる命知らずがいることだ。
朝っぱらから藪から棒に叫び散らす怒号のような咆哮。
そんなニワトリ顔負けの目覚まし時計のおかげで、この辺りに住んでいる人間は間違いなくフルボッキだろう。
それほどに物凄い叫び声だ。
だがしかし、この場所で声を荒げる者がいれば恐らくあの人は黙っちゃいないだろう。
「うっさいよ糞が! この前といい、最近といい、
あんの糞家賃滞納野朗のせいでこちとら毎日毎晩四六時中うるさいったらありゃしない!」
案の定現れる俺の耳にも痛いセリフを早朝から轟かせる我が借家の管理人様。cv こやまきみこ
どういうわけか、そんな怒声が響いたと思えば、すぐに響き渡るカーン! と爽快な金属による打撃音。
恐らくフライパンででも叩いたのだろう。あの人のことだ。日用品はフルで使いやがる。
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 00:11:14.57 ID:WpIyzebh0
「行ってえええええええええええぇぇぇえ!! 何すんじゃあああああああ!!」
朝から本当にはた迷惑なこと極まりない。叫ぶならもっと他所でやって頂きたかった。
こちとらおよそ三日ぶりに仕事を再開したかと思えば連続出勤で疲れ果て、
ようやくして休みを貰い死ぬようにして眠りたいというのに。
悲しきかな、何故に俺がこんな状況に出くわさなくちゃならないんだ。ふざけやがって。
( ^ω^)「朝から想像しいお。ねえどっくん」
('A`)「いやまてそれよりお前が俺の部屋にいることのほうが遥かに想像しい」
そんな一日の始まりだった。
('A`)ドクオと愉快な魔法少女のようです
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 00:13:42.97 ID:WpIyzebh0
薄暗い空。太陽など全くもって輝いておらず、
その早朝ではおっきな子供はわいわいがやがやと騒ぎながらゲームをしている。
窓の外からみえる屋内は、決して綺麗と呼べるものではない。身を乗り出しているピザがいるからだ。
見渡す限りの太ましい腹、脂肪、腹、脂肪。たまに見えるヘソチラ。かくいう俺は全力で拳を固めている。
( ^ω^)「あ! シビレ罠が!」
おや、シビレ罠が壊されてしまったらしい。
……。なんだこのデジャブ。
折角の清清しい朝が台無しだ。別にデジャブであることが悪いわけじゃない。
(#);'A`)「いぶへしぁあああああ!?」
だからなんだよこのデジャブ。ありがちな展開とか絶対に言わないからな。
つーか何がどうなって俺が悲鳴をあげざるを得なくなった。
( ^ω^)「おやおや、穏やかじゃないねえ」
('A`)「うるせえメモリースティックだけへし折るぞ」
( ^ω^)「それはらめえええええ」
こんな下種はおいとこう。
それよりもだ。何故俺が悲鳴を上げたのか。答えはすぐに見つかった。
単純な話である。俺の眼前にはフライパンが転がっているのだ。つまり、俺はこいつを何者かに投げつけられて思わず叫んだ、ってわけだ。
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 00:16:38.55 ID:WpIyzebh0
('A`)「なるほど。フライパンか」
( ^ω^)「なら仕方ないお」
('A`)「そうだな。フライパンなら仕方ない」
よくあることじゃないか。フライパンが飛んでくることなんて。
この鶴屋荘では割とありがちなことだ。
('A`)「んなわけねえだろ。何でこんな早朝に、
かつこのタイミングでフライパンが飛んでくるんだよアホか氏ね」
( ^ω^)「ちょっと落ち着こうおどっくん。これ以上事を荒立てても仕方ないお」
('A`)「いやだからお前なんで俺の部屋にこの早朝からいるんだよ。
しかも俺が気づいてなかったってことはお前結構前からいただろ」
( ^ω^)「あ、ばれた? そうだお。なんか深夜に窓から忍び込んだら
思いっきり寝てたから無視して屯してたんだお」
('A`)「そうかそうか」
( ^ω^)「だおだお」
ははは、と二人揃って笑い合う。一方は普通に笑っているが、
もう一方の俺は声だけで笑っており、そこに感情の類は存在していない。
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 00:19:20.26 ID:WpIyzebh0
なにせ、目が覚めたら友人の顔があって「おはよう」とにこにこ笑ってやがるんだぜ?
それはそれはもう、貞操の危機を感じるぐらいの恐怖だ。
('A`)「だおだおじゃねえよ。なんでお前俺の部屋に平気で不法侵入してんだよ」
( ^ω^)「いや、だって窓開いてたお」
駄目だこいつはやくなんとかしないと。
('A`)「もういい……。どうせフライパンもつーさんだろ……。
いいから寝かせろよ。俺は疲れてんだ」
( ^ω^)「どうぞおやすみなさい」
('A`)「おう……。おやすみ」
友人のおやすみを聞き、俺もおやすみと返し、再び床に……
(;'A`)「いや、だから帰れよおま「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
( 'A`)
(^ω^ )
('A`)「何今の」
( ^ω^)「フライパンの原因じゃね?」
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 00:22:10.80 ID:WpIyzebh0
なにやら、面倒ごとに巻き込まれそうな、そんな嫌な予感がする。
こういう展開上、ここ最近の俺からすると大体よろしくないことが起きるもんだ。
例えば、俺の平穏なる日々を脅かす存在である魔法少女とかな。
……まさかとは思うが、この早朝から暴れまわっているモラルの欠片も感じられない輩ってのは、
「私は魔法少女だああああああああああああ!!!」
ああ、やっぱりね。どうせそんなことだろうと思ってたよ。
そんな糞みたいな叫び声を聞いた後はただただ静寂。
早朝らしく、小鳥の囀りや少し肌寒い風が吹いている。
ああなんだ。別に穏やかな感じじゃないか。
朝だ。そんなことを思い俺はふと隣を見やるが、駄目だ。全く穏やかじゃない。
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 00:25:27.01 ID:WpIyzebh0
( ^ω^)「どっくんどっくん」
('A`)「あんだよ」
早朝から胸糞悪い気分だ。
まず望んでもいない友人がそこにいたり、
挙句の果てには折角の休みを魔法少女だと高らかに叫ぶ基地外がすぐ近所にいるということ。
ふざけんな。こっちは休みでゆっくり寝たいんだよボケ。
それを何だ? 魔法少女だあああ!! だと? 糞が。どうせまともに少女少女してないんだろうが。
そりゃあな。法律上そういう子をいたぶったりするのはアウトだ。
それに、フライパンで叩かれていた辺り、そりゃあもう確実に成人様だろうよ。
流石に小さい子に手を挙げるような人じゃなかったはずだ。
( ^ω^)「お。自分の世界に入り込んでるお」
('A`)「ほっとけ。最近色々忙しくて考えることが多いんだよ」
( ^ω^)「ドクオが考えるwwwwwwwww映画化wwwwwwwww」
顔面玉袋が何か言っているが気にしない。
いやまて、こいつ今まで俺をどういう目で見てやがった。
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 00:28:14.52 ID:WpIyzebh0
( ^ω^)「まあそれはいいお。で、本題だお」
('A`)「ああん? 本題だあ?」
ややっ、何か面倒ごとのかほりが!
( ^ω^)ニコヤカ「野次馬根性全開でちょっと外に出てみようお」
('A`)「よしくたばれ。そしてカラスに食われて氏ね」
「魔法少女おおおおおおおおおおお!! どこにいるううううううううう!!」
もう嫌こんな生活。
誰か悪魔戦争でも勃発させてくださいまし。
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 00:31:08.64 ID:WpIyzebh0
( ^ω^)「行くお! 拒否権はねーお!」
(;'A`)「ちょ、ちょっと待て! 手を引っ張るな! 俺そもそもパジャマ!」
( ^ω^)「着替えなんか必要ねーお! ほら行くお!」
(;'A`)「待てえええええ! 落ち着けえええええええ!!」
そして無理矢理引っ張り出されて鶴屋荘の外庭。大して広いものでもない。
早朝、恐らく時刻的には六時前頃だろう。そんな中、俺は寝巻き姿を近隣住民さまにお披露目することになってしまった。
アカン。このパジャマはアカンて。
( ^ω^)「お! 着いたお!」
(;'A`)「クソが! デブの癖に身のこなしといい筋肉だけは無駄につきやがって!」
( ^ω^)「おーおー。やってるおー」
(;'A`)「聞いちゃいねえ……ん?」
内藤の見ている方向へと、自分も視線を向ける。
するとそこには、明らかにそれはそれはキャッチマイハートな子と……
(#*゚∀゚)「毎日毎日毎日毎日よォオオオオオ……! 騒がしくしがってよォオオオオオ……!!」
軍神が居た。
俺はここで人生三回目の失禁を果たすことになる。
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 00:34:03.97 ID:WpIyzebh0
なんだよあれ。何かオーラみたいなもん出てんじゃねえか。
早朝なのに死兆星が見える気がすんぞ。頭上に落ちるんじゃねえのか。
(;^ω^)「……どっくん、あれ知り合いかお?」
(((('A`)))「あれは……あれは俺の住居の……か、管理人だ……」
(;^ω^)「これを殺気というのかお……ぱねえお……」
なるべく気づかれないように、早々に俺は立ち去ろうとした。
もし今あの人を刺激するようなことがあれば、俺はたちまち生命活動の終わりを告げる羽目になる。
だが……全身の振るえが止まらん。糞が……逃げようにも足がすくんで動けない。
今までかつてない恐怖。そして今までかつて見たことのないぶち切れたつーさん。
人間じゃねえ。この人マジで魔人か何かだ。荒巻をも凌駕してやがる。
(#*゚∀゚)「……!! ドクオオオオオオオオオオォオ!!」
((((;'A`))))「ひ、ひいいいいい!!」
大気が揺れる。大地が揺れる。空気が揺れる。俺の目指した明日が消える。
バレた。思いっきりバレた。しかも名指しときたもんだ。怖い。やばい。怖い。
どうする俺。ライフカードとか何もないぞ。そもそも対抗手段すらないぞ。やばい。これは非常にやばい。
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 00:39:23.94 ID:WpIyzebh0
(#*゚∀゚)「この際その胸糞悪い服装は触れないでおいてあげるよっ! ちょっと手を貸しな!」
((((;'A`))))「て、手を貸すってな、なな何をですかあああああ引き千切らないでええええええ」
(#*゚∀゚)「違うよ馬鹿! あんたにはこの朝から叫び散らした輩を排除する手伝いをしてい貰うだけだよっ!」
排除する手伝い? ということは、あれですか? 戦闘とか華麗にやっちゃうわけですか?
いやいやいや。一般的な喧嘩的戦闘であれば俺が手伝うより、つーさん単独で戦う方がよっぽど強いじゃないですか。
(#*゚∀゚)「あたしじゃ相手にならないんだよっ!」
そういってフライパンを構える鶴屋荘管理人さま。
あんたで勝てない相手に俺が対抗できるわけないだろ。
仮に魔法とか使っても勝てる気がしないあんたが手に負えない相手なんぞを、
俺が相手したらどうなるんだよ。三秒で現世からデッドエンドだ。
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 00:41:41.59 ID:WpIyzebh0
何? 何なの? 俺の平和的日常生活かつ、
ゆっくりしておきたい時期ナンバーワンである休日の朝がどうしてこんなことになってんの?
畜生……畜生……!
(;A;)「もう嫌ああああああああああ!!」
(;*゚∀゚)「あ、ちょっ!」
俺は全力で駆けた。太陽が顔を出している方向へと。
逃げることは恥じゃない。今この場においては恐らく百人居て九十人は俺の行動は正しいと賛同してくれるだろう。
(;A;)「この涙は明日に繋がる架け橋になるんだああああ!!」
ただただひたすらに逃げた。
恐らく100Lvのミュウツーとかに出会ったコラッタはこういう気持ちで逃げるのだろう。
ひたすら身体に走る悪寒と、恐怖に全身を包み込まれる気持ち。今はただ思う。怖い、と。
(;A;)「こんな心理描写どうでもいいんじゃああああ!!」
鶴屋荘の出入り口に差し掛かった時、俺は少し安心した。
ああ、逃げ切れる。これならなんとかなる。
そんなことを思ったのが間違いだった。大体こういうことを思えばフラグというのは立ってしまうのだ。
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 00:44:55.22 ID:WpIyzebh0
「お前魔法少女だなあああああああああ!!」
ほらな。どうせこうなるんだよ。
ここ最近の狂った日常的に考えてまともな展開なんざ起こり得ねえよ。
(;'A`)「だがしかし!」
俺もアホではない。
鶴屋さんと共に戦うのと、単独で戦うのであれば単独で戦う方が『まだ』気持ちが楽というものだ。
ノハ#゚听)「お相手願おうぞおおおおおおおおお!!」
('A`)はきゅんっ
必死になって見えていなかったが、今地を駆けている魔法少女は、紛れもない魔法少女だった。
まさに二次元の世界から引っ張り出してきたかのような、そんな絵に描いた魔法少女。
オタク心を鷲づかみにするような、紺色のスク水。
そしてあまり目立たない胸の膨らみ。極め付けには赤色ロングストレートの綺麗な髪。
瞳の大きさがロリっぽさをより強調させ、小さな唇が更に顔の統一感を増させている。
さらにはただ一本の線を引いたようなシャープな眉。筋の通った、しかしそれでいて小さな鼻。
どれをとっても一級品のロリっ子であった。
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 00:47:23.98 ID:WpIyzebh0
(*'A`)「結婚を前提にお付き合いをしてくぶれあしひいいいいいいいいいいい」
体が重力に反して空を飛ぶ。目の前に細い生足が見える辺り、飛び蹴りでもされたのだろう。
ああん駄目。俺もう何か新しい性癖が目覚めちゃいそうだ。
ノハ;゚听)「あれ……魔法障壁は……?」
吹っ飛んだ俺をぽかーんとした顔つきで見ている。
魔法障壁? なんだそれ。俺と君のATフィールドのことかな? いやいや、そんなもの心配しなくてもいいんだよ。
すぐにそんな壁打ち破ってあげるさ。厚ければ厚い壁のほうが打ち砕いた時気持ちいいもんだ。
ノハ;゚听)「お前、魔法少女じゃないのか?」
地面と平行に吹っ飛び、所々擦り切れているパジャマに半分涙目になりながら身体を起こす。オキニのパジャマだったのに(号泣)
しかし妙なことを聞いてくるな。俺が魔法『少女』だって? 何を言ってるんだ。俺をどう見たら少女に見えるってんだよ。
(;'A`)「ってて……」
……この子、確かに可愛いんだが、考えてみりゃあ魔法少女なんだよな。
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 00:49:00.95 ID:WpIyzebh0
ああ……スーパー賢者タイムだ。よくよく考えれば、こんな子と生活すれば確かに毎日がエブリディだろう。
だが、魔法なんか使っている子と仲良くなることによって俺の三次元的平穏な日々は失われてしまうじゃないか。
('A`)「君とは付き合えないよ」
( ^ω^)「お前と付き合うなんて誰も言ってねーだろうがお」
('A`)「ややっ、内藤殿! お元気でござったか!」
いつもの俺に戻っていることに気がついた。
相変わらずの気持ち悪さだ。
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 00:51:10.85 ID:WpIyzebh0
(;^ω^)「いきなり逃げ出したり急に調子取り戻したり……お前は一体何なんだお」
友人の引きつった顔は、それはそれは間違いなく『気持ち悪い物』を見たものとなっていた。
単純に引いているだけなんだがな。
('∀`)「ほら見ろよ……この清清しい空を……!」
( ^ω^)「鏡見ろよ。その核爆発を起こした焼け野原の顔を……!」
('A`)「ですよねー」
( ^ω^)「ですおー」
ノパ听)「はっはっは!」
俺たちは三人で笑いあった。この綺麗な青空の下で。
きっとこれから俺たちはあの朝日に向かって走り出すんだ。
そして青春の息吹を感じながらどこまでも走り続けるんだ。
嗚呼、青春(爆笑)
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 00:54:09.24 ID:WpIyzebh0
('A`)「さあ! 気分も爽快! 家に帰って引き篭もるか!」
高らかに叫び、俺はさっさとその場から立ち去ろうとした。
立ち去ろうとしたのだが、何かが後ろ首を掴んでいる。
ええい、そんなもん知ったことか。俺は誰が何を言おうと休みの日は引き篭もると決めてるんだ。
('A`#)「なんじゃい! 休みぐらいゆっくりさせろい!」
後ろ首を掴んでいるであろう輩に向け、そう叫んだ。
……叫んだのはいいんだ。叫ぶことには問題がないんだ。
(*^∀^)
叫んだ相手が悪かったとしか言いようがなかった。
('A`;)
(*^∀^)「ドクオ君?」
('A`;)「ひゃ、ひゃい!」
どうして人間は怒りを通り越すと笑顔になるんだろうな。
それと同時にどうして人間は焦りを通り越すと笑顔になるんだろうな。
人間って不思議だな。答えのない旅をずっとし続けていくなんて。
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 00:56:40.18 ID:WpIyzebh0
(#*゚∀゚)「生意気な口を聞く前にてめえは溜まった家賃払え戯けが!!」
(;'A`)「し、しぃまシェーン!」
その後、俺は何故か叫び散らしていた魔法少女と、内藤と一緒に朝日の下で説教を食らった。
一番悲惨なのは内藤である。何故自分が怒られているのかわけもわからず、
どうして自分が怒られているのかと勇気を振り絞り言って見れば、
『そんな無駄に垂れ下げた脂肪の塊に拒否の権限なんざないよっ!!』
と罵られ、いわれのないことをずっと言われ続けていた。
その間俺は正座で二度目の失禁をしていた。きっと今頃あそこには花が咲いているだろう。
しかしそもそも何故俺が怒られなきゃならんのだ。ふざけやがって。悪いのはあの赤髪だろうが。
いや、そりゃまあ怒っていたには怒っていたが。
というかつーさん、手に負えないとか言ってた割にしっかり怒鳴り散らしてたじゃないか。
本格的に俺を呼ぶ意味がなかっただろうに。何故呼んだし。畜生……今度魔法使ってパンツ盗んでやる。
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 00:59:02.48 ID:WpIyzebh0
('A`)「で、なんだが」
( ^ω^)「なんだお」
そんな悲惨な目にあった内藤はすこぶる不機嫌である。
勿論、不機嫌なのはわかっている。わかっているが……。
('A`)「どうしてお前はまだ俺の部屋にいる」
( ^ω^)「いやんいけずう。僕とどっくんの仲じゃないのお」
('A`)「うるせえメタボ。俺は休みの日は家で寝るって言ってんだろうが」
( ^ω^)「うるせえこちとらあの糞店長に店任されて毎日必死なんだお」
('A`)「おい」
( ^ω^)「ああん?」
('A`)「お前店どうした」
( ^ω^)「あ」
( ^ω^)「モンハンやろっと」
('A`)「いや、現実と戦えよ」
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 00:59:48.50 ID:WpIyzebh0
第五話 「仕事が見つからないんじゃない。
仕事が俺を見つけてくれないんだ」
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 01:03:07.25 ID:WpIyzebh0
内藤の糞野朗は「覚えてろおー!」と悪役顔負けのセリフを吐きながら店に戻っていった。
おかげで俺はようやくして眠れる、そう思っていた。思っていたのだが。
どうにも神様は俺に安らぎの時間を与えてくれないようで、
ノパ听)
何故か知らんが魔法少女が居ついていた。
いや、確かに彼女いない暦=年齢の俺にとってこの上ないチャンスかもしれない。
チャンスかもしれんが、こんな得体の知れん魔法少女なんぞに手を出す勇気は微塵もない。
ノパ听)「お、鉄拳チンミみっけ」
そして何お前はさも当然のように人の家の漫画を読み漁っていやがる。
おかしいだろ。何がって、この状況すべてがおかしさの塊だろうが。
内藤と一悶着合った時完全に度外視してたが、よくよく考えてみればつーさんに怒られた後、俺の部屋に入り込んでたじゃねーか。
ノパ听)「中身が男塾……だと……」
('A`)「中身が男塾とかそれはいい。お前は何故ここにいる」
ノパ听)「えー。なんか凄いナチュラルに無視してたのに今頃掘り返すの?」
不貞腐れながら、俺の布団へと思いっきり飛び込み、寝転び始める。無論スク水で。
後でクンカクンカしよう。きっと甘い香りがするんだろう。
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 01:04:46.31 ID:WpIyzebh0
('A`)「そんなもんどうでもいい。どうでもいいからくつろぐな」
ごろごろと俺の布団を転がりまわる。
おいおい。そんなエロゲ的シュチュエーションとか来ても俺は年齢=彼女いない暦な男だぞ。
何か出来るのかといわれたら何も出来んに決まってるだろうが。
ノパ听)「よいしょっと」
そういうや否や、転がりながら上体を起こす魔法少女。
微妙に主張している胸に目が行く。やべえ。最近オナ禁始めたのにこれはやべえ。
誰がどう捉えても極上もんのロリっ子だぜ? そんなもんが今目の前で俺をまっすぐに見てるんだぜ?
しかもどういうことか、俺の部屋にいるんだぜ? やったよ母さん。今日は赤飯だ。
ノパ听)「お前さ」
いやあああん! こっち見てるう! 僕の方見てるよおお!
もう駄目っ! それだけで感じちゃう! 悔しいッ!(ビュクビュクッ)
ノパ听)「魔法少女なのか?」
('A`)「え」
俺の中でほとばしっていた熱き何かは静かに鎮火。
そういやそうですよね。考えてみればうちの石鹸屋にはいなかった子ですもんねこの子。
そうなると、やっぱり敵ですものね。ああやだやだ。
ちょっとファンシーな気持ちになってたらすーぐこれだ。いいじゃない。うちの石鹸屋っていうバンドに入ろうよ。
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 01:08:59.87 ID:WpIyzebh0
('A`)「あ、はい」
そっけない返事というわけではない。ただこういう時意気揚々と叫べる馬鹿にはなりきれないのだ。
普段の行いを見直せって? いや、それはその場の状況次第だが、今はあくまで俺のソロライブだろう。
だとすればあまり騒がないのが身のためだろ。だって相手考えろよ。魔法とか平気でつかってくるんだぞ?
それに対して俺は成す術なしだ。そんな状況下でいつもみたいにアホなこと言ってられるか。
('A`)「魔法少女とか歳考えろよって話ですよねwwwwwwwwwww」
('A`)「あ」
ノパ听)「表出ろコラ」
('A`)「自分でフラグを立てるなんて……! 素敵……!」
襟元をつかまれながら、再び俺はずるずると引きずられる始末。
うん。こればっかりは自分が悪い。文句も出ない。いや、あるにはある。
そもそもだ。何故俺が休日の真っ只中でこんな面倒ごとを抱え込まなきゃならんのだ。
ああ、なんか無性に腹が立ってきたぞ。畜生が。何が幼女だ。何がロリっ娘だ。そんなもん三次元に存在したところで……
ノパ听)
駄目だ可愛いわ。なんかこう……きゅんっ!って来るよね。
性的な意味じゃなく、幼女っていいよね。見てて和むというか、気持ちが安らぐね。
でもどうして、この幼女は和やかな気持ちになってる俺に向けて、
メガ粒子砲をぶちかましかねない感じで手をかざしちゃってくれてんの?
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 01:12:27.99 ID:WpIyzebh0
ノパ听)「魔法少女であるなら、容赦はしないぞ」
\('A`)/
気がつけば、外に出ており、さっきつーさん達と一悶着あった外庭にいるわけで。
そして周りには誰もいないわけで、助けを請おうにも人がいないわけで。
とはいえ、流石に部屋の鍵くらいは閉めさせてくれるというなんか庶民的な彼女なわけで。
いやいやいや。おかしい。こんなことで庶民的とか一般常識的に考えておかしい。
何よりこの状況は不味い。
なんというか、速すぎる展開についていけなさ過ぎて緊迫感も全くないが、これは不味い。
何が不味いって、こんな時間にスク水を着た幼女と、明らかに成人している男が一人。
この光景をもし警察に見つかりでもしたら、それはそれは魔法大戦とかなんとか言ってる場合じゃなくなっちまう。
ともなれば、逃げるが勝ちなんだが生憎様、この庭から外へ出るには俺の真後ろにある出入り口から出なくてはならない。
勿論、通常の場合なら走れば逃げられるだろうが、この状況は通常なんかではない。
背を向ければ恐らく何かしら非現実的な攻撃が俺を襲うだろう。
そうなれば、やはり戦うしか他道がないとも思えるのだが俺には攻撃の術がない。
打撃戦に持ち込めようものならこっちのものかもしれんが、そんな漫画みたいに上手くいくわけもなし。
ううむ。万事休すか。
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 01:15:10.45 ID:WpIyzebh0
(;'A`)「冷静に考えてる場合じゃねー!」
ノパ听)「くったばれええええええええええ!!」
目の前に迫り来るのは炎。とっさに頭を腕で覆いながら地面に這い蹲る。
そのおかげでなんとか避けきれたものの、
髪でもこげたんじゃないのかと思うほどに通り過ぎた熱気は凄まじかった。
('A`)「どう見てもピンチです本当にありがとう御座いました」
「ならそのピンチ、救ってやろうか」
('A`)「スク水だけに」
突然聞こえる声。
今までならきっと、黒装束を纏ったどこからどう見てもただの不審者が来るのだろうが、今回は全く別のケース。
思わずボケたのはいいが、冷たい目で見られた。
从;゚∀从「いや、そのりくつはおかしい」
('A`)「いや、すく、う水着みたいな」
从 ゚∀从「半年ROMれ」
金髪だったり、赤髪だったり忙しい女が現れた。今日はちなみに茶髪である。
こんなところでしっかり矛盾を解決させるなんて流石だね! 一部始終的に考えて!
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 01:18:12.03 ID:WpIyzebh0
まあ……そんなことはいい。
それよりもこの女だ。一体全体どこから現れたのか、さっぱりわからないのだ。
気がつけば隣にいたという感じだ。
これも所謂魔法の力とかで解決する問題なのだろう。恐ろしい世の中だぜまったく。
ノパ听)「ハイン……」
从 ゚∀从「んだよヒート。お前かよ」
あらあら。何か二人の間にただならぬ関係を感じるわよ。
これはひょっとして平和的解決になるんじゃないか。
きっと「久々に会ったし、ちょっと飲みにいくか」みたいな展開になって、
近所の居酒屋とかで二人の再会を祝って乾杯とかやるんだろう。
ノパ听)「ここで会ったが百年目ええええええ!! 今日こそ決着つけてやるぞおおおおおおお!!」
駄目だ。絶対平和的解決にならねえ。そもそもそんな淡い期待を抱くだけ無駄だった。
絶対こいつらライバルとかそんな設定だ。間違いない。
从 ゚∀从「48戦48勝。今日で49戦目か。いいぜ、かかってこいよ」
ノパ听)「今までの私だと思うなよおおおおおお!!」
从 ゚∀从「はッ……。相変わらずの馬鹿っぷりだなァおい!」
特攻してくる赤髪ロリータ、装備スクール水着。
凹凸のない胸を恥じることなく突っ込んでくるその様は、
さながら親方さまあああと叫ぶ真田幸村を彷彿させる。
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 01:20:10.19 ID:WpIyzebh0
ノパ听)「おおおおおおおおお!!」
从 ゚∀从「効かねえよっ!」
スク水は大きく腕を振るいながら、茶髪DQNの立っている一帯を火の海にする。
淡々と燃え続ける火の中、スカートをなびかせながら、涼しい顔をしているハインさんがいた。
从 ゚∀从「属性がわかってりゃ、それほどやりやすいもんはねえんだよ!」
ノパ听)「相変わらずのチートっぷりだな……重力操作か」
从 ゚∀从「炎が迫る直前、その軸さえぶらせばこっちに攻撃は届かないからな。
後は知ってるだろ? 攻撃に転ずることも可能だって」
おやおや。おやおやおや。なにやらまともなバトル物っぽい会話が行われています。
必ず手の内を明かす。そんな昔ならではの王道バトルが僕は好きでしたよ。
しかし今のバトル物は一体なんだ。
主人公がいきなり無敵だったり、別に仲間とかいらないとかいうやさぐれ一匹狼だったり、見ていても一方的過ぎてどうしようもない。
とはいえ、麻雀物になればおっぱいだったり穿いてなかったり。現代は狂ってる。
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 01:22:31.82 ID:WpIyzebh0
从 ゚∀从「足元がお留守だぜ」
ノハ;゚听)「くうっ!」
突然片方の足だけが硬直するスク水幼女。その額には冷や汗が流れている。
逆の立場だったらそりゃあもう恐怖の塊だろう。
身動きが取れない状態で、敵は無傷で、かつ余裕な状態なのだ。
从 ゚∀从「どうした? それで終いか?」
なんという強さ。これは間違いなくチート。
そもそも重力操作なんて卑怯すぎるだろう。相手の足場の重力を動かしてしまえば、もう動きようがなくなってしまう。
そうなれば後は袋の鼠である。じわじわといたぶるもよし、一瞬で蹴りをつけるのもよし。勝ち目なさ杉ワロタ。
ノハ;゚听)「動けなくとも……!」
从 ゚∀从「おいおい。往生際が悪いぜ? 俺を倒すんならお前じゃ役者が不足してんだよ」
ノハ;゚听)「やってみないことにはわからないだろう!」
从 -∀从「やれやれ……」
俺はふと思うんだ。こんなとんでもない味方ばかりいるのに、俺に一体何が出来るんだと。
重力操作、殴ればオールオッケー、常識無視のマッチョ。そこに俺だろう?
一体俺に何を求めているんだ。能力ゼロで、別に異能の力を打ち消せるわけでもなくて、そんな俺に一体何を。
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 01:25:35.49 ID:WpIyzebh0
ノハ#゚听)「おおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
そんな俺の懸念を吹き飛ばすような怒号。
辺り一面を包み込むような熱気。それまで風など吹いていなかったというのに、吹き荒れる熱風。
从;゚∀从「おいおい……流石にこの規模は不味いだろうjk」
('A`)「いや、それより能力ゼロの俺が明らかに不味い」
从;゚∀从「ですよねー」
そんな暢気な話をしているものの、そんな余裕は一切となく、
ノハ#゚听)「くううううううううらあああああああああええええええええええええええ」
ロリっ娘スク水幼女は叫び続ける。どうやら準備が整い、攻撃に移ろうとしているようだ。
そんな絶対的に危うい状況だというのに、俺は何故か落ち着いていた。
誰かが助けに来る、そう思っているわけでもない。自分の隠された力が発揮されようとしている。そういうわけでもない。
なら何故? 何故俺は落ち着いているんだ?
从 ゚∀从「めんどくせェ……」
ああそうか。この危機的状況であろうと、目の前の魔法少女には余裕が感じられるからか。
なんとかしてくれる。きっとそんな期待から来てるんだろう。
……違う。そんなんじゃない。
根本的に違うんだ。俺が危機を感じている相手が既に違う。
なら、一体何に? 俺は一体誰にこんな感情を覚えているんだ?
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 01:28:08.44 ID:WpIyzebh0
ノハ#゚听)「あああああああああああああああああああああ!!!」
地を揺らす咆哮。大気を焦がす熱気。
肉を焼き、骨を溶かす。彼女の気迫それほどまでに凄まじかった。
……実際はただわーきゃーわめいているだけのマジキチ映像でしかないのだが。
从 ゚∀从「おい……」
どすのかかった重低音ボイス。この声を知らない人間からふっかけられたら小便を思わず飛び散らしてしまうだろう。
おおこわいこわい。まったく、こんな怖い声で一体誰を脅そうとしているのかしらこのDQN。
从 ゚∀从「……おいつってんだろォが」
('A`)「……え? あ、ああ! はいはいはいはい! 俺ですかそうですか」
从 ゚∀从「てめー以外誰がいるんだ。……来るぞ。防御壁張ってろ」
('A`)「わかりやした!」
……はて、防御壁とはなんぞや。
思わず答えてしまったものの、俺に魔法なんかの類は一切と使えない。
今日は茶髪っ子は来るぞ、と言ってたな。ということは、魔法が飛んでくるわけか。なるほど、それで防御壁ね。
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 01:30:03.73 ID:WpIyzebh0
……え?
いやいやいやいやいや。このガチバトルの攻撃魔法が飛んでくるってのか?
ふざけんじゃないわよ。お陀仏するに決まってるじゃないの。
こちとら、『ある条件』で『ある状況下』で『ある物』がなければ魔法なんざさっぱり使えないんだぞ。
そんな発生条件から遠く離れてい場所で何が出来るってんだよ。どうせならもっと強くなってから挑んできやがれ幼女。
いや、夜のお相手とあらば私のおちんちんがフルバーストなんだが。
('A` )「言ってる場合じゃねーよな……」
从;゚∀从「おい……何ぼさっと突っ立ってやがんだ。いつでも飛ばせる状況だぞ」
('A`)「面白く、ねえよな」
それっぽい、まさに窮地に立てば立つほどに強くなる主人公ならではのセリフを吐き捨て、
茶髪ビッチの前に出る。
ノハ#゚听)「邪魔をするというのかああああああああああああああ!!」
怖い。それが前線に立った正直な感想だった。
相手の剣幕と、叫び声を目の当たりにして小便を少しちびった。
前に出るということは、戦うという意思を相手に、味方に見せ付けるものだ。
今まさにそれを実行して見せた。標的が俺に変わる。
勝負の邪魔をされたのだから、相手は容赦なく俺を消し炭にしてくるだろう。
こんな水を注すような真似は打算なしには出来ない。つまり、打算がないわけではない。
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 01:32:11.31 ID:WpIyzebh0
この状況下であれば、魔法が使えなくも無い。そんな淡い可能性を元に俺は前に出た。
しかし……確実というわけじゃない。一歩間違えばただではすまないだろう。
あの魔法少女の属性は、見たまんまの火だろう。というかついさっき炎飛ばしてたしな。
それも純粋な攻撃タイプの炎使いだ。一直線に攻撃してくる猪突猛進タイプだろう。
一番操りやすそうだが、逆に純粋なぶつかり合いでは新化を発揮する。正直戦うとすれば苦手な部類になりそうだ。
从;゚∀从「おいおい……お前があれを相手するのか?」
('A`)「相手になんかしたくねえよ」
本音だった。別に戦う理由も、
相手にする理由もまったくといっていいほどにない。
从;゚∀从「ならなんで前に出たんだよ」
もっともだ。こいつからすれば正気の沙汰ではない。
魔法も扱えない、毎回毎回誰かに助けられながら生きているのだ。
そんな奴が突如戦う意志を見せるなど、とち狂ったとしか思えないだろう。
('A`)「そりゃあ、俺が楽しくないからだ」
从;゚∀从「はあ?」
嘘である。思いっきり嘘をついた。
しかし、防御壁が張れないから仕方なく前に出た、なんていえるわけもなし。
なら別に逃げればいいじゃないか、と思われても仕方ないだろう。
が、おそらくこの展開上巻き添えを食らうのは目に見えていた。
この展開で無事になったためしが俺の人生経験上まったくないのだ。
- 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 01:34:49.72 ID:WpIyzebh0
从;゚∀从「お、おい!」
なら、少しぐらいかっこつけてもいいじゃないか。
('A`)「心配すんなよ。必ず勝ってみせらあ」
一瞬だけ振り返り、そう告げる。
静かに相手を見やる。怒りゲージマックス、といったところか。
あの小さい身体を小刻みに震わせながら、可愛らしい顔が怒りで歪みきっている。
('A`)「準備は整ったz」
ノハ#゚听)「念仏は唱えたかああああああああああああ!!」
喋っている途中でさえぎられる。思わず身体がびくりと跳ね、パンツの中がぬれる。
自分で前に出ておきながら、今さらあれだが、やるしかない。どうせ逃げられない。戦え。そうだ。戦え。
魔法少女に捕まった以上、戦わなければ生きていけない。なら、今生き延びれないで、次があるわけがない。
―――――なら戦え。己が意志の元に戦え。
(;'A`)「かかってきやがれやああああああああああああ!!」
ノハ#゚听)「あああああああああああああああああああ!!!」
- 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 01:36:10.28 ID:WpIyzebh0
両腕を前に突き出し、来るべき条件、状況、物が迫るのを待つ。
それに呼応するかのごとく、幼女が大きく右腕を振りかぶる。
そこから大きく火の渦が出来上がり、やがてそれは剣へと形を変え、何十本も形成されていく。
気が付けば、炎剣は俺がいる場所を円形に包み込んでおり、宙を舞っていた。
ゆっくりと生唾を飲む。冷や汗が頬を伝っていく。
正面にある一本の炎剣が小刻みに揺らめく。
来る……!
そう思った瞬間、すべての剣が俺をめがけて降り注ごうと落下している。
今まさに――――――戦いの火蓋が、切って落とされた!
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 01:37:12.52 ID:WpIyzebh0
- 川 ゚ -゚) 「しかあし! ガチ展開になりそうなため簡略化致します。ドゥフフwwwドゥフフwwww」
(´・ω・`)「この簡略化された戦いの実況を勤めるショボンです」
从;゚∀从「お前らどこから沸いてきやがった……」
川 ゚ -゚) 「何、そう固いことを言うな。誰もガチなんて求めていないんだ。
たまに熱そうな展開をちらつかせるぐらいがちょうどいいんだよ」
(´・ω・`)「そうさ。それにハイン、巻き添えを食らわないように一瞬で引き抜いてここに連れてきてやっただろう?」
从;゚∀从「いや……別にあれぐらいなんとでも……」
川 ゚ -゚) 「何てことを言うんだ! ドクオがどれだけ必死かわかっているのか!」
从;゚∀从「実況しようとしてるお前に言われたくはねえ!」
(´・ω・`)「お。そうこうしているうちにヒートたんの剣がどっくんを貫こうとしてるね」
川 ゚ -゚) 「ぶっちゃけ、剣にするぐらいなら別に炎じゃなくていいよな。
さっさと相手を包んで焼ききったほうがよっぽど早いような気がする」
(´・ω・`)「おいおい。バトルに求められるのは効率じゃないんだぞ。
求められるのはどれだけ厨二設定で、どれだけ格好よく見せられるかだ」
- 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 01:39:13.24 ID:WpIyzebh0
川 ゚ -゚) 「お。なんかドクオが炎の剣を両腕で受け止めた。あれは魔法学的に出来ることなんですか?」
(´・ω・`)「うーん……。素手で受け止めるのは通常なら無理だね。
魔力を込めて、1、2秒程度触ることなら可能かもしれないけど」
川 ゚ -゚) 「そうだとしても、彼は素手で、なおかつ魔力なんて込められないですよね」
(´・ω・`)「そうだねー。なんか全身から魔力を放出させて、ほぼ自動的に魔法障壁を張ってるんじゃないかなー」
川 ゚ -゚) 「どっひゃーおったまげただー。そんれなら納得だー」
(´・ω・`)「あ、でも。普段魔力のようなものは感じられないから、
多分あの魔法が放出されているという状況で、なおかつ魔法が迫ってきており、
手でそれを受け止めれば魔法障壁が発動するとか、なんらかの魔法が発動したりするんじゃないかな」
川 ゚ -゚) 「あ、はい……。
なんか長い説明ありがとうございます。むむ、しかし条件付の発動魔法ですか」
(´・ω・`)「そうっぽいね……おお! 炎の剣を投げ返した! あ、また投げ返してる! ドクオやべえ!」
川 ゚ -゚) 「すげえ! すげえぜドクオ!」
从 ゚∀从「補足説明させて頂きます。ドクオは、『魔力が存在する場所』で、
『魔法が自分の手で受け止めている状況』で、
『その手の中に魔力が存在』すれば魔法が発動できるらしいです」
川 ゚ -゚) 「なんか私と似ているな」
(´・ω・`)「そうだな。特訓の成果がこれじゃあまりに物悲しいなー」
- 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 01:41:56.78 ID:WpIyzebh0
川 ゚ -゚) 「ややっ! しかし、ショボンさん! ドクオの投げ返している炎剣ですが、あれ大きさやら威力やらが倍加されてませんか!」
(´・ω・`)「なん……だと……」
川 ゚ -゚) 「いや! 倍加されてますぞ! いわばリフレクターですな!
攻撃を跳ね返し、跳ね返した攻撃は倍になるという!」
(´・ω・`)「ドクオTUEEEEEEEEEEEEEEEE!!」
川 ゚ -゚) 「でも肉弾戦ならボロ負けですよねー」
(´・ω・`)「ですよねー」
川 ゚ -゚) 「どうやら相手はそれに気づかずに作成、放出を繰り返しているみたいですね」
(´・ω・`)「アホですね。あるいは背後を突けば、なんとかなりそうなんですけどね」
川 ゚ -゚) 「いや、なんか背後にも炎剣が飛んでましたけど、
あの能力が発動している間は全体に対して攻撃が無力化されるみたいですね」
(´・ω・`)「やっぱドクオTUEEEEEEEEEEEE!!」
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 01:42:49.61 ID:WpIyzebh0
川 ゚ -゚) 「オバゼニしないかなオバゼニ」
(´・ω・`)「じゃあ僕はエクシードだ!」
川 ゚ -゚) 「出来るわけないだろ……。
ああっと! ドクオ選手、ヒート氏に倍加された炎剣を直撃させた!」
(´・ω・`)「カウント入ります! 1! 2! すr……ああっと! 立てないようです! 試合終了――――!!」
川 ゚ -゚) 「さあさ! ドクオに見つかる前に逃げ出しますぞよ!」
(´・ω・`)「ははあ!」
从;゚∀从「……」
从゚∀从「あ、ドクオの一人称に戻ります」
- 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 01:44:33.58 ID:WpIyzebh0
(;'A`)「はあ……はあ……」
ノハ;-听)「く……そ……」
俺は立っている。相手は、倒れている。
初めて魔法を使い、そして倒した。
あまりにもギリギリな戦い。一秒一秒が生死の境に立っているような、そんな、戦闘。
しかし何故だ……。
何故この初戦闘と呼べるものが4レス程度で収められたような気がするのは……!
いや、きっと気のせいだ。そんなはずがない。現実世界でそんな巻きの事態が発生するわけがない。
「ドクオ……! 無事かっ!」
そんな野暮なこときわまりないことを考えていると、
長く、しかしそれが似合っているさらさらな黒髪をなびかせながらやってきたのは、
川;゚ -゚) 「すまない……! もう少し気づくのが早ければ……! 相手はどこに……!」
クーだった。
どうやら、戦闘が行われているのに気づきやってきたようだ。
(;'A`)「そこ……だ」
川;゚ -゚) 「そこ……? ……! まさか、お前が、やったのか……!?」
珍しく慌てている。よほど急いできたのだろう。
額に汗を滲ませながら、両肩を上下に震わせ、息を整えている。
そして、俺が魔法少女を倒したという事実に更に驚きが隠せないでいる。
- 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 01:47:40.40 ID:WpIyzebh0
ノハ;-听)「認め、な、い……。 認めないぞおおおおおおおおおおおお!!」
从 ゚∀从「諦めろ。その状態じゃ戦うことはおろか、立つことも叶わないだろうよ」
自分の攻撃を跳ね返され、自分の攻撃でやられる。
一直線に攻撃するタイプであれば、これほどまでに屈辱的なことはないだろう。
しかも、相手は初めて戦闘を行うような奴だ。そんな奴を相手に戦闘不能まで追い詰められてしまった。
これが一体どれほどプライドを傷つけることか。
ノハ;-听)「くそ……くそおおおおおおおお!!」
顔を地に伏せながら、魔法少女は叫ぶ。
次に相対するとすれば、おそらく今日みたいに攻撃を跳ね返すなどという奇行では倒せないだろう。
それでも、俺はそれしかない。そうする以外に攻撃など出来ない。
从 ゚∀从「叫ぶのはいいがよォ……。お前、この状況下、なんとも思わないのか?」
ノハ;-听)「く、そがああ……」
自分が相対している魔法少女が二人と、異端児が一人。
そして自分は戦闘不能という状況。これが一体どういう意味を表しているのか。
相手の目的、相手の一味が屯している場所、その他諸々を聞き出すために尋問なんかが行われるかもしれない。
普段はふざけている集団であろうとも、目的は忘れたりしないだろう。
だとすれば、拷問や、尋問もいとわない。きっとそうだ。
そんな俺の心を見透かしたかのように、静かにクーが幼女に詰め寄る。
- 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 01:51:11.12 ID:WpIyzebh0
「おっとっと……。そうはいかんざき」
川;゚ -゚) 「っ!」
バックステップ。詰め寄っていた差は大きく開く。
そして、元々クーが居た位置には、見知らぬ女が一人。
lw´‐ _‐ノv「おひしゅう魔法少女諸君。ご機嫌よう?」
あちこち跳ね返り、完全に手入れが施されていないなっがい髪。
その長さは、腰のところまで伸びきっており、妖怪を思わせる。
だが、その妖怪じみた髪とは裏腹に、衣服はまさかのスク水である。なんだ。この組織はスク水が制服なのか?
しかし、顔立ちはかなり整っている。エロゲにでも出てきそうなタイプだ。
目はかなり細いが、顔立ちとぴったり合っている。髪さえ切ればおそらく更に可愛くなりそうなタイプだが、なんとももったいない。
……いや。そんなことはいい。そんなことより、スク水だったりと目立つ格好でありながら、
俺ら誰一人として気が付かずにここに現れたということが何より脅威だ。
加えて、おひさしゅうといった。
つまり、ハインや、クーはこいつを知っている。知っているにも関らず気づけなかった。
- 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 01:55:15.32 ID:WpIyzebh0
川;゚ -゚) 「出たな……」
从;゚∀从「やっぱり回収はさせてくんねえか……!」
川;゚ -゚) 「せっかくのスク水回収が……!」
从;゚∀从「え、そこ?」
いつ襲われても対処できるように、二人とも身構える。
……。いや、待て。今クーさんが明らかにおかしな反応を示したぞ。
あいつ尋問とか云々じゃなくて、今の発言だと単純にスク水だけ奪おうとしてなかったか?
……いやいや。きっとあのスク水になにか特別な力でもあるのだろう。
そうだ。きっとそうだ。いや、そう信じたい。信じさせてくれ。
しかし、あの茶髪DQNが身構えるってことは、こいつよっぽど強いってことか?
……何故だろうか。つーさんの時のような恐怖も感じなければ、強者であった時のような威圧感もない。
- 61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 01:58:27.77 ID:WpIyzebh0
lw´‐ _‐ノv「おやおや。嫌われたものよのう。ふぉっふぉっふぉ」
ノハ;-听)「シュー……」
明らかに仲間が助けに来て安堵している様子の幼女。
何度も戦い、それでおいて何度も取り逃がしているのは勝負が終わるたびにこの女が助けに来ているということか?
だとすればつじつまが合う。あのハインさん、ましてやクーやショボンさんがこの好機を見逃すはずがないのだ。
lw´‐ _‐ノv「大丈夫かねヒート殿。後で甘酒を傷口に塗ってしんぜよう」
ノハ;-听)「勘弁、してくれ……」
lw´‐ _‐ノv「大事な部分にも、たっぷりと。私の米汁を……ふふふふふふ」
それは正直興味があるが、今はそんな場合じゃない。
不覚にもおっきしたが、そんな場合じゃない。
臨戦態勢に入っている二人と、胸の形が俺好みのような気がする余裕たっぷりなこの女。
lw´‐ _‐ノv「今日のところはこれぐらいで許してやる!」
从;゚∀从「はあ……? 何いってやが……!?」
そして、跡形もなく二人は消えた。
何が起きたのか、理解出来なかった。理解の仕様が無かった。
文字通り、言葉どおり、消えたのだから。
- 62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 02:00:42.99 ID:WpIyzebh0
从;゚∀从「瞬間移動はさすがに反則だろうが……」
川;゚ -゚) 「おぼえておけドクオ。あれが私たちが相手にしている組織のボスだ」
('A`)「あ、はい……」
格が違う。とでも言いたいのだろうか。
だが、何故かわからないが、俺にはあいつがそこまで脅威には思えなかった。
理由も、根拠も一切としてないのだが。
从 ゚∀从「帰るわ……」
川 ゚ -゚) 「私も、帰るとしよう。ショボンにこのことを報告しなくては」
俺のことなどアウトオブ眼中で、二人ともとぼとぼと帰っていった。
一人残された俺は、何か無性にむなしくなり、とぼとぼと家へと帰った。
なんだろうな。初めて活躍したのに、何故かまったく活躍できてないような気がする。
いや、確かに戦ったんだ。そして勝利を収めた。
なのに、何故ここまで扱いがぞんざいな気がするのだろうか。
気のせいだろう。そうだ。そういうことにしよう。
きっとあの短く感じた戦いも、戦ってみれば一瞬の出来事だったってことだけだ。
静かに家へと帰り、部屋の扉を開ける。
疲れた。この数時間の間に一日分以上の体力を消費した気がする。
魔力って奴でも消費したのだろうか。非現実な話だ。
- 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 02:02:29.87 ID:WpIyzebh0
lw´‐ _‐ノv「へろうべいべー」
('A`)「……え?」
扉を開けたその先には、もっと非現実な奴がそこに居た。
lw´‐ _‐ノv「話があるのだよ小僧。もちろん拒否権はないぞよひょひょひょ」
何もない場所を両手で揉み解しているこの女。
いつの間にここにやってきたのか、一体いつこの部屋に入り込んだのか。
こんな俺でも部屋の鍵くらいは閉めてくる。いや、確かに閉めたはずなのだ。
だというのに、何故こいつは俺の部屋の中にいるんだ。
lw´‐ _‐ノv「ふふふ。さあ、ではついてきてもらおうか青年」
得体の知れない魔法少女のボス。そして未知の能力。
相手に出来るものじゃない。おとなしくついていくほうがいいかもしれない。
いや、ついていかなければ駄目だ。でなければ、俺なんか一瞬で炉心融解してしまうだろう。
- 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 02:03:57.27 ID:WpIyzebh0
('A`)「でも展開上面白くないのでお断りします」
lw´‐ _‐ノv「いやいや。お断りしますをお断りします」
('A`)「お断りしますをお断りしてお断りします」
lw´‐ _‐ノv「お断りしますをお断r(ry」
そんなやり取りが、十分以上続いた。
('A`)「次回へ続く!」
lw´‐ _‐ノv「え?」
唐突に
五話 おわり
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