- 2 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/05/11(水) 11:50:21 ID:NvB2ome60
- * 一年以上空いたため、忘れた人とそうでない人のためのあらすじ。
川 ゚ -゚)「どっきゅん」
('A`)「なんだい」
川 ゚ -゚)「僕と契約して、魔法少女になってよ!」
('A`)「いいおー」
川 ゚ -゚)「やったあ」
('A`)「うわあー相手の攻撃が跳ね返せるようになったよぉ」
- 3 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/05/11(水) 11:50:34 ID:NvB2ome60
- ξ゚听)ξ「勝負じゃー」
('A`)「おらー」
ξ゚听)ξ「ぎゃー」
ノパ听)「私はつよいぞー」
('A`)「おらー」
ノパ听)「ぎゃー」
(´・ω・`)「あんなところにしゅーたんが!」
('A`)「おらー」
('A`)「ぎゃー」
lw´‐ _‐ノv「勝負しようぜー」
(´・ω・`)「よっしゃーうらーがっしぼっか」
lw´‐ _‐ノv「ぎゃぐっわ」
―――――――
('A`)「なんぞこれ」
川 ゚ -゚)「さあ?」
はじまります。
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/05/11(水) 11:51:04 ID:NvB2ome60
('A`)「そんなわけで……」
はじまったはじまった。
互いの大将さま同士が一騎打ち。そりゃあもう互いに出し惜しみしておらず、
いきなり透過している円陣が宙に浮いては何か爆発が起きたり、雷が光ったり、もうてんやわんやな状況である。
(´・ω・`)「どうしたシュール! 昔のお前はもっと強かったぞ!」
そんな変態同士の過去とかどうでもいいが、どうにも昔はもっと強かったらしい。化け物かマジで。
既に白光を何度も繰り返しており、もしここが天空の城だったら俺はどれだけ目を抑えながらのたうちまわっているのだろうか。
lw´‐ _‐ノv「うはははは!! ショボン! お前も随分と腕が落ちているんじゃないかのう!?」
余裕たっぷりといった感じの二人。
お互いに倒さなくてはいけないという使命感があるわけでもなく、ただ単純にこの戦いを楽しんでいるような気がする。
というか、いいのかここで暴れまわって。この場所はショボンさん。あんたにとって大事な魔法少女の本部だろうが。
そんな心配をしていたが、何故だか知らんが工場内はそこまで激しい損傷は見当たらない。
何度も爆発したりと繰り返しており、
普通の家ならとっくに爆発炎上しているはずだが、ここではそんな事態が起こっていなかった。
ふざけてやがる。どこまでご都合主義なんだ。
どうせ魔法障壁とか張ってるんで壊れないんですー! ばーか! 情弱乙ー! とかいうオチなんだろうが。
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/05/11(水) 11:51:33 ID:NvB2ome60
(´・ω・`)「ふむ……」
lw´‐ _‐ノv「ううむ……」
互い一度距離を取る。
幾度も繰り返された爆発やら、白光やら、円陣やら、雷が止む。
両者共に見つめあい、その場から動かない。
唯一動いているのは腐れ赤フンの垂れた部分だけ。
ふわりふわりとゆれ続けている。引きちぎりたい衝動に駆られるが、静かに見守る。
lw´‐ _‐ノv「さてはて……」
しかし、最初に静寂を破ったのはスク水幹部の方だった。
なにやら屈伸をはじめ、両腕の肘を曲げては伸ばしてを二、三度繰り返す。
lw´‐ _‐ノv「そろそろウォーミングアップは終わりにさせて貰うぞよ」
そう言うや否や、再び戦闘モーションへと移行する。
おいおい。これで本気じゃなかったってのかよ。
俺ぐらいの小物がそのセリフを吐いても絵にならんが、この化け物どもが言うと流石に本当のことだろう。
どうするんだショボンさん。
流石にあれ以上になると、さっきまでは対等に渡り合っていても、一気にケリをつけられるんじゃないか?
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/05/11(水) 11:53:59 ID:NvB2ome60
(´・ω・`)「ふふふ」
……笑ってやがる。
皮肉でもなんでもなく純粋に笑ってやがる。それこそ余裕を感じるほどに。
(´・ω・`)「奇遇だなシュール」
lw´‐ _‐ノv「ふむ?」
(´・ω・`)「俺もそろそろ本気で行こうかと思っていたのさ」
lw´‐ _‐ノv「気が合うじゃないかショボン。どうだ、これが終わったら結婚でもしないか?」
(´・ω・`)「それはいいな。式場は……そうだな。本部の牢獄にしようか」
lw´‐ _‐ノv「ふはははは! そいつはいい! そいつぁ愉快だ!」
互いに笑いあう。引きつったような苦笑いでもなく、ただただ純粋に声を荒げ笑い合う。二人の立場やら力やら、その辺を考えずにこの光景を見ればただの仲が良い男女ぐらいで見れるだろう。
だが、残念なことに二人とも狂ってやがる。会話の一つ一つがぶっ飛んでいる。
(´・ω・`)「それじゃ……」
lw´‐ _‐ノv「ああ……」
(#´・ω・`)「いくぞおおおおしゅうううううううるうううううう!!!」
lw#´‐ _‐ノv「かかってきやがれカカロットオオオオオオオオオオオオオ!!」
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/05/11(水) 11:54:43 ID:NvB2ome60
ほーら見ろ。最初からクライマックスだ。
うおおおおおおおやらうらあああああああああやら、もうなんかすっごい叫んでるの。
勿論、そんな全身を貫くほどの咆哮だけじゃなく、攻守共にすんばらしい。
魔法だけに頼った攻撃ではなく、ショボンさんに紫電が走ったと思えば、
その刹那スク水おっぱい星人の懐に潜り込み、大きくアッパーカットをお見舞い……は叶わない。
薄皮一枚の僅差で上体を仰け反り避けきる。だが、事実上紙一重の戦いが行われている。
なんだこれ。次元が違いすぎるだろ。これがボス同士の戦いかよ。
ふとそんなことを考えればその逆もしかりである。
雷をその手中に携えて、棒状に握りこみ地面を焦げ付かせながら加速し、横薙ぎに振るうシュー。
勿論おっぱいを揺らすというこの世の真理を忘れてはいない。スク水越しからでもわかる巨乳の大震災。
まあ、そんなことでやられるショボンさんではないのだが。悠々と涼しい顔で避けている。カウンターを交えながら。
……そのカウンターすら受け流したり、避けたりともう到底理解し難い世界になっているが。
あんだよ。ショボンさん。あんたはボクシングで世界取れたんじゃないんすか。
そんなガチバトルを半ば口を開きながら観戦していた俺だが、ふと正気に戻る。
('A`)「やってられっかーい! 俺は逃げるぜぱっつあーん!」
高らかに、かつ静かに、俺は屋外へと逃げ出した。
はぐれメタルもびっくりな速度で。すばやさの表示画面をバグらせる勢いで。
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/05/11(水) 11:55:27 ID:NvB2ome60
('A`)ドクオと愉快な魔法少女のようです
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/05/11(水) 11:56:38 ID:NvB2ome60
('A`)「あーやだやだ」
久しぶりに街を練り歩く。俺の名前はハイエンドオタクではないが。
まあ、所謂気分転換という奴だ。
あまりの真面目展開に嫌気をさし、あの場から颯爽と逃げ出したというわけだ。
付き合いきれるかクソッタレ。あんな万国ビックリショーに参加してたら身が持たんわ。
「あら? あなたはもしかして……」
不意に背後から声をかけられる。
何故だろう。展開的に全くいい予感がしない。
有無も言わずに逃げたい気分だが、
背中を見せながら逃げるのはいささか隙だらけというか、恐ろしいというか。
('A`)「どちらさまでしょうか。ここはアリアハンリザーブの村じゃないですよ」
ξ゚听)ξ「わかってるわよ薄らハゲ」
(;'A`)「だ、誰がハゲじゃい! ちょっと後退しかけてるぐらいじゃい!」
ξ゚听)ξ「やっぱりあなたなのね」
(;'A`)「……」
うわあ、と思わず口が滑りそうになった。
実に五話ぶりの登場。相変わらず金色の巻き糞と、整った顔立ちの美少女である。
ちなみに今の服装はやはりスク水。そして街中である。
正直に言おう。
怖いのはこの魔法少女ではなく、この状況を見た警察が穏やかに釈放してくれるのか、ということである。
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/05/11(水) 11:57:55 ID:NvB2ome60
ξ゚听)ξ「……随分と、魔力が増幅しているのね」
('A`)「あんだって?」
ξ゚听)ξ「あなた、気づいてないの? 」
魔力が増幅している? 気づいていない?
……いや、確かに俺がこいつと会ってからもう一ヶ月近く日が空いてるが、
そんな俺の力があがったとはにわかには信じがたい。
まあ確かに……考えてみれば、な。思い当たる節がなくもないといえば普通にない。
あの入院中に行った特訓。その成果で得た俺だけの特殊能力。
それらを視野に入れれば能力はあがっているかもしれない。だが、魔力が上がるとはこれいかに。
ξ゚听)ξ「ふん……まあいいわ。それで? あんたこんなところで何してんのよ」
(;'A`)「お、お前に話す義理があんのかよ」
情けねえなあ。実際に普通の会話を女性としようとしたらすーぐこれだ。
ギャグで済まされそうな相手ならいいものの、ガチな女とガチな会話をしようとすればこうなっちまう。
嫌な性格だぜ畜生。だが、穏便に済むならそれでいい。このまま何もなく終わるならな。
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/05/11(水) 11:58:24 ID:NvB2ome60
ξ゚听)ξ「ふーん……。ま、別にどうでもいいか」
おやおや。何か普通に引き下がりそうな気配。
とかなんとか思っている時点でフラグをおったてているような気がしなくもないが。
……馬鹿野朗。俺の馬鹿野朗。こうやって自分でフルボッキ状態にしかけてんじゃねえか。
よし。ここは俺から話を振るんだ。そうやって危機から脱する。それしかねえ。
('A`)「あ、あの」
ξ゚听)ξ「ん? 何よ」
いいな。極自然な話題で、コスモスくらいの花を咲かせる勢いで話すんだぞ俺。
なら一体何が一番自然か。当たり前の話。当たり前の質問。
会話ってのは、相手に話を振って、
その振られた相手が楽しそうに話していれば適当に相槌を打つだけでも向こうは楽しく感じるもんだ。
なら、質問だ。質問から入れ。女性ということを考慮して、振るべき質問とは……!
('A`)「今日のパンツは何色ですか?」
ξ゚听)ξ「よーし決闘だ」
\('A`)/
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/05/11(水) 11:59:02 ID:NvB2ome60
コスモスどころか、彼岸花すら枯れ果てちまったよ。クソが。
しかし、幼女のスク水から僅かに白い布がはみ出していることに気づく。
……生きてて良かった俺。
これだけでも収穫だ。どうやら今日の奴は白パンらしい。無地なら尚よしなんだが。
やっぱり、縞パンとかもいいけど、純白無地も素晴らしいよな。
あん? ……ああお前か。うんうん。よし。ティーバックてめーは今すぐ回れ右しろ。
(;'A`)「って言ってる場合じゃねえええええ」
ξ#゚听)ξ「待てコラアアアアアアア!!」
(;'A`)「ち、チックショー! リア充してんな俺よーい!」
逃げ回る俺と、追い掛け回す美少女。何だこれ。
はたから見たら随分とおかしな光景である。不細工を追いかける美少女なんて聞いたことがない。
あるとすればいじめ現場みたいなもんだ。うーん。確かに弱いものいじめですよねこれ。
ξ゚听)ξ「埒があかないわね……」
息も絶え絶えになる俺とは全く異なり、この巻き糞女は平然と走っていやがる。
しかし、突然足を止める女。ここぞとばかりに俺は逃げればいいのだが、
なにやら流れ的に逃げてはいけない気がしたので俺も立ち止まる。
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/05/11(水) 12:03:37 ID:NvB2ome60
(;'A`)「ぜひぃー……ふひぃー……」
死ぬ。これは死ねる。これが若さって奴なのか。
いや、違うか。魔法の力って奴か。恐ろしい。やっぱり魔法少女らしく魔法で挑んでくるんだな。
駄目だ。これじゃ俺に勝ち目なんてねえや。せめて現実にあるようなもんなら勝機はありそうだが。
ξ゚听)ξ「仕方ないわね」
黒く、そして鈍く鋭く、重量感たっぷりなある物を取り出すビッチ。
こ、これは……。
('A`)「うーん。神様よう、現実の物を望んだけどこの願い却下で。願わくばギャルのパンツをおくれ」
ξ゚听)ξ「人生最後のセリフはそれでいいかしら?」
最早魔法も糞も関係ねえ。そんな、ある物というのは……。
rー―――‐====F2t
!ニiー―‐‐゚、==゚rー-、l[゚
 ̄ ̄`l(゙~) ).キ.。.キ r'
 ̄~゙ヘl!::::::!|
|l:::::::l|
ー―'
泣く子も黙りやがる拳銃だった。
(;'A`)「もう魔法も肉体言語も関係ねー!
俺の叫びも空しく、火薬の炸裂音が街中へ響き渡った。
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/05/11(水) 12:04:13 ID:NvB2ome60
「勝手なことをしてもらっちゃ困るなあ……
リリカル・トカレフ・キルゼムオールってぇわけだ」
が、ダメっ……!
発砲音空しく、俺に銃弾は届かなかった。
何故か? 簡単な答えだ。
( ^ω^)「待たせたな……」
('A`)「うーん。もう展開がわからないよダディ」
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/05/11(水) 12:05:00 ID:NvB2ome60
( ^ω^)「ふ、ふふふ」
('A`)「はて、突如ヒーローみたいなポジションで現れた内藤さんの腹から血が滴っておりますよ」
( ^ω^)「何を仰る。私にそんな銃などという攻撃がきゴブァ」
('A`)「ぶ、ブーンさあああん!!」
( ^ω^)「後は……頼んだぜ……」
そういって、内藤はがっくりと項垂れた。俺の腕の中で。
('A`)「綺麗な顔してるだろ……」
( ^ω^)
('A`)「こいつ……死んでるんだぜ……」
ξ゚听)ξ「そ、そんな……あんなに元気だったのに……」
('A`)「びえええん! どうしてなのよおおおおぶうううん!」
( ^ω^)
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/05/11(水) 12:05:52 ID:NvB2ome60
ξ゚听)ξ「さて。茶番はこれくらいにして、続きをやりますか」
('A`)「え? いくらなんでも早すぎないか?
もうちょっとこう、余韻というものをだな……ちょwwwww撃つなwwwww」
ξ゚听)ξ「うっさい! さっさとあんたも死ね!」
( ^ω^)「だあからお。さっきから好き勝手して貰っちゃ困るんだお」
('A`;)「ちょwwwwwお前なんでまた俺の前に立ってんだwwwww今度こそ死ぬぞwwww」
( ^ω^)「大丈夫だお。あの血もただの作り物。第一僕は一般人なんかじゃないしお」
('A`)「あれれーブーンさんゲームのしすぎですかー?
エロゲ脳は流石に社会じゃ弊害っすよー?」
( ^ω^)「目の前で魔法少女がどうとか言ってる奴にそれを言われるとは不覚だお」
('A`)「まあいいわ。俺はどっちにしろ攻撃なんざ出来ないからな」
( ^ω^)「じゃ、黙って僕に任せるといいお」
そういうと、ブーンの奴はシリアスムード全開で拳を握る。
顔が笑っているのはいつものことだが、そんな緩んだ目とは違い、表情はいつもの倍以上に引き締まっている。
むしろもう、引きつっていると言っても過言じゃないレベルだ。
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/05/11(水) 12:06:40 ID:NvB2ome60
( ^ω^)「お嬢さん。前に僕のコンビニに来たおね」
ξ゚听)ξ「あら……。あなたは私の呪文書を探してくれると言ったあの店員じゃないの」
( ^ω^)「バッキャロー! 誰がザキの呪文書なんざ探すかお! こちとらレジ打ちって魔法しか使えないんだお!」
ξ゚听)ξ「うーん。なら余計に納得が行かないわ。
どうして魔法も使えないあんたが銃弾を受けて平気で、なおかつ私の前に立ちふさがるのかしら?
あんた……死ぬわよ」
( ^ω^)「なあに、簡単なことですお。ですおね、くたばり底ない」
「ははは。そうだね。世の中とは非常にユニークなものでね。
魔力がなくとも、魔力が少なくとも魔法は使えるものなのだよ」
ξ;゚听)ξ「くっ……真打ち!? まだ増えるっての!?」
流石に不味い状況だろう。今俺とブーンで二対一なのだ。それが更に新しい仲間が増えると三対一。
自身の力を圧倒的なまでに過信しており、なおかつそれで自信があり実力があるのなら、この状況なんとでもなるだろう。
だが、クーと張り合う女だ。それを考えれば、俺らよりかはいくばくも強い。そんな気はする。
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/05/11(水) 12:07:18 ID:NvB2ome60
「ははは。そんなに固くならなくてもいいよ。どうせやり合うのなら肩の力を抜きたまえ」
ξ;゚听)ξ「うっさいわね! そんなこと言うなら姿を現しなさいよ!」
「おっと。レディーの前だというのに、とんだ失礼を。ふふ。とうっ!」
それはそれは、重力に従っている人間としてあるべき姿が俺の目の前を通り過ぎる。
簡単に言えば、奴はさっきまで俺の頭上にある木の上から格好よく降りようとしたのだ。
結果はどうかといえば、それはもう無様の最上級だろう。着地失敗し、思いっきり足を捻ったらしく、
「いてええええええよおおおお!!!」
と地面をのた打ち回っている。アホだ。こいつ。
と、心の中で謎の真打ちをディスる。ただ、この声色、どこかで聞いたことあるんだよな。
誰だったかな。あまり知り合いなんていないから、すぐに検討つくもんなんだが。
そう思い、俺は落ちてきた無様な男の顔をちらりと見やると……
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/05/11(水) 12:07:46 ID:NvB2ome60
ξ;゚听)ξ「これ……あんたの仲間、でいいのよね……」
( ^ω^)「何もなかった。こんな奴はいなかった。最初から僕とドクオとお嬢さんしかいなかった」
('A`)「ああそうだ。俺とお前とお嬢さん。この三人しか存在しなかった」
こんなにも、頼りない味方なんて。
(;・∀・)「いてえええええええ!! いてえよおおおおお!!」
だって、現役コンビニ店長四十五歳だしな。
というかあんた骨折してただろうが。なんで飛び降りたんだよ。両足骨折させる気か。
( ^ω^)「こう見えても、店長は強いおどっくん」
('A`)「えー?」
本当だろうか。信じろというほうが難しい。
これまで何度と弱い部分しか見ていなかった。DQN客には逆らわないし、俺や内藤にだってすぐ言い包められる。
……うーん。マジで強いのか? そんなことを思い、俺は店長を再び見る。
(;・∀・)「いてええええええ!!」
('A`)「ない。これはない」
両足を掴みながら地面をぐるぐるローリング。
そりゃあもう見てるこっちが目を離したくなるほどだ。
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/05/11(水) 12:09:07 ID:NvB2ome60
ξ;゚-)ξ「で? 状況はよろしくないけど、逃げる気は毛頭ないわよ?」
シビレを切らしたスク水幼女。三対一であろうとも、大人しく引き下がってはくれないようだ。
……とりあえず、味方の戦力把握だ。今ここにショボンさんはいない。寧ろあの戦いだ。来れないだろう。
後はハインさんとクーなんだが、この二人はどこにいるのかもわからん。さっぱりだ。
となると、やっぱりこの三人でなんとかしなきゃならないわけだ。
力が未知数の二人。どうなんだ。戦えるのか? 魔法を使い、拳銃を扱うこの女に。
( ^ω^)「あ」
何か、よからぬフラグが立ちそうな、そんな気がする腑抜けた声。
俺はその声に返事はしない。
( ^ω^)「魔法具忘れちまったwwwwwwwやべえwwwww」
よーし。まず戦えない奴が一人。
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/05/11(水) 12:10:06 ID:NvB2ome60
('A`)「戦力外通告を顔面に貼り付けてとび蹴りする前に聞いてやる。
魔法具ってあんだよ」
( ^ω^)「お? そりゃ文字通りだお。魔法具は扱える人間にだけ使える魔法を使用させてくれる素敵なアイテムだお」
('A`)「お前……そんなもん持ってたのかよ」
( ^ω^)「まあ、僕の持ち物じゃないんだけどお」
('A`)「お前の持ち物じゃない?」
( ^ω^)「だお。これは僕のじゃなくて……」
視線を俺から別の方向へと向ける。
その目の先には。
(;・∀・)「ようやく静まったか……やはり邪鬼眼は扱いに困るぜ」
( ^ω^)「そこの厨二病患者だお」
('A`)「く、狂ってやがる……」
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/05/11(水) 12:13:37 ID:NvB2ome60
とはいえ、その肝心な魔法具とやらを忘れたこいつ。
……それでも、分からないことが一つ。単純なものだ。
さっきの展開。決して見逃せない内容である。
こいつは、銃で撃たれたのだ。
決して偽者なんかじゃない。発砲音と共に、銃弾は確かに放たれたのだ。
なら、どうしてこいつは今無事で、なおかつぴんぴんしているのか。
そんな疑問を放っておけるほど、俺は何もかもわかっているわけじゃない。
('A`)「お前、魔法具忘れたのにどうして銃で撃たれて無事なんだよ」
( ^ω^)「お? そりゃだって、ここに来る前、店長にこれを着させられたからだお」
打ちぬかれたはずの服。その下にはしっかりと着込まれたこの国には縁のないチョッキ。
単純に言うと、それは正しく防弾チョッキと呼ばれるボディーアーマーだった。
(;'A`)「いや、つってもお前血が垂れてたじゃん。ってあれ? 止まってね」
( ^ω^)「っつぶはぁwwwwwwwwwwwwww
演出に決まってるじゃないっすかおwwwwwwwwwwwww
全力で釣られwwwwwwクマぁえへぇああwwwwwwwwww」
とりあえず上条さんもびっくりするぐらい全力で殴っておいた。
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/05/11(水) 12:15:04 ID:NvB2ome60
……つーかなんだこれ。魔法に銃器に防弾チョッキ。一般人だと思っていた友人に、バイト先の店長。
当たり前で、平穏だった日常は日々狂いっていく。異端な魔法少女。そして異常だったコンビニ店員と店長。
よくわからない。よくわからないが。
('A`)「そんだけ準備が整ってりゃ万全だな」
戦えるってことだ。
( ・∀・)「問題ない。僕や内藤君は君たちと違い魔法なんてこの世の秩序を壊すものを持ち合わせていないけれどね、
人類の生み出した在るべき武器を使うだけさ」
そういって、このおっさん。あろうことか平和な昼間の公園で、
( ^ω^)「うひょーかっこいいお」
( ・∀・)「だろう? 自慢の武器さ」
黒く、鈍く光を放ち、尚且つ力強いオーラを持つ重厚感たっぷりな存在。
木製のグリップ。組み立てが容易で旧ソ連が冷戦時に愛用したと名高い朱色が特徴的な名銃。型名はAK-47。
とどのつまりはだ。アサルトライフルを二丁取り出したっつーわけだ。
え、っていうかアサルトライフルを二丁って、正気かこのおっさん。
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/05/11(水) 12:15:42 ID:NvB2ome60
( ^ω^)「よくそんなもん持ってるお」
( ・∀・)「そりゃあ僕だからね。お任せあれだよ」
何者なんだこの人は。ただのコンビニ店長じゃないのか。
悠長にそんなことを考えていると、発砲音が鳴り、炎があたりを包む。
ξ゚听)ξ「物騒なものねえ。手っ取り早く片付けないとね」
(;'A`)「!」
スク水幼女も流石にこれ以上は待ってくれないようだ。
火は空気を燃やし、更に火力を強めていく。小さな火の玉程度だった魔法は、
気がつけば俺ら三人を包み込むほどに大きく広がり、視界を全て火で埋めていく。
いつしか炎は、半径5メートルほどの大きさで俺らを丸め込んでいた。
それだけじゃない。拳銃も襲ってくる。
逃げ場は断たれた。今までのように逃げられはしない。
いつか空気を全て燃やし、呼吸が出来なくなるだろう。
なんて発想だ。大胆すぎるぐらいに大胆。だが、それでいて一番に効果的だ。
一人で大勢の人間を倒すには適した方法。今までの俺なら、諦める状況。そうだ。今までの俺なら、だ。
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/05/11(水) 12:16:53 ID:NvB2ome60
( ・∀-)「ふむ……」
当たり前だが、冗談を言う余裕はあたりから消えていた。
談笑していた空気は、その炎によって燃やされた。
張り詰めていく。辺りにシリアスムードが展開されていく。
ふと、モララーさんとブーンを見ると、奴らは真面目な顔をしていた。
( ^ω^)「敵は一人。問題はないですお」
( ・∀・)「そうだね。五人以上いるのであれば恐ろしいことだが、あくまでも一人だ」
響く発砲音。それは決してモララーさんの武器から鳴ったのではない。
炎の向こう側。円形ドーム状の火を挟んだ場所からである。
俺の頬を掠める。顔の皮膚が、小さく裂けまっすぐな傷を作る。血が、伝っていく。
('A`)「炎程度、掻き消せますよ」
( ・∀・)「必要ないさ。君は大人しくしていればいい」
そういって二丁のアサルトライフルを構える店長。
その様を見て、ブーンは俺の方を向き直る。……なんか焦った表情をしているんだけどな。
(;^ω^)「あー嫌なモーションだお。ドクオ! 伏せるお!」
(;'A`)「はあ!?」
( ・∀・)「ヒャッハー! 汚物は消毒だー!」
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/05/11(水) 12:18:05 ID:NvB2ome60
気がつけば俺のとこまで全力疾走で近づいていたブーンは、俺の頭を掴み、
思いっきりたたきつける。どうも地面さんこんにちは。
やだぁ/// 私のファーストキッス奪われちゃったぁ///
打った頭は痛いが、それ以上に頭上で鳴る炸裂音が何より耳を劈いていく。
地に伏せた状態で、俺は顔だけモララーさんの方を向く。
するとそこには、それはそれはトリガーハッピー状態でぐるぐる回転しながら四方八方に銃をフルオートでぶっ放す姿があった。
炎の向こう側から「こんなもん避けられるわけないじゃないの!」という悲鳴に近い声が響いている。
……いやだからなんで普通の人間のあんたがその銃を二丁フルオートできるんだよ馬鹿か。
( ・∀・)「相手が悪かったね! 炎程度じゃ僕は止められないのさ!」
じりじりと火は燃え続けている。それでも、止まらない重火器の発砲音。
外には善良な市民がいる。警察がこの光景を見たら今すぐにでも止めに……入れないか。
そりゃそうだろうな。だって、何か発砲音が聞こえると思って駆けつけたらドーム状の炎。
そんでもって、その大きな火柱の中から銃弾が飛んできてるんだから。
恐ろしいったらありゃしねえよマジで。
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/05/11(水) 12:19:27 ID:NvB2ome60
( ・∀・)「さって。暴れた暴れた。ドクオ君。火を消して貰えるかな?」
そういえばそうだ。別にこの状況で戦い続けるような理由はないんだった。
('A`)「へいへい。やらせて頂きますよっと」
言って、俺は舞い上がる火の粉へと近づく。熱い。マジで熱い。
いかん。いかにこれが魔法によって作られてるって言っても熱すぎる。
これに触るの? え? マジで? 無理無理。俺の手なんて焼いても骨しか食えるとこねえぞ。
そんなことすら思うが、手を近づけてみるとなんだか全く熱くない。
これは消せる。そう実感した瞬間、俺は既に炎に触れており、頭の中で火を吸収するように念じた。
するとするとあら不思議。そりゃあもう魔法使いみたいに、火を手の中に収束させ、一つの火の玉にしていた。
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/05/11(水) 12:20:10 ID:NvB2ome60
(;^ω^)「話には聞いていたけどお。どっくん、本当に魔法が使えるのかお」
('A`)「みてーだなあ。全くもって喜ばしくない」
( ・∀・)「なんだい。君は魔法少女になっても嬉しくないのかい」
('A`)「ったりめーでしょうに。何が悲しくてこんな非現実を求めにゃならんのですか」
( ・∀・)「ふうむ……そうかいそうかい」
そんなことを呟く店長は特に気にせず、俺は一人のスク水魔法少女へと向き直る。
('A`)「さあて、これ以上まだなんかしてくんのか? 結果は見えてると思うが」
ξ;゚听)ξ「き、昨日今日で強くなった程度のあんたに! 死に物狂いで苦労した私が!
背中を見せて逃げるわけにいかないでしょ!」
そりゃそうだな。
こいつは俺よりももっと前から魔法少女なんだ。
こんな小さな姿で、こんな俺よりも人生を生きてない奴でも、必死に魔法少女やってんだ。
それこそ本当に、血が滲むような。そんな努力をしたのだろう。
それを、たった一ヶ月やそこらで成長した奴を前にして、臆して、逃げるわけにはいかないだろうな。
だがな、少女。
('A`)「世の中には諦めなきゃなんねえことが山ほどあんのさ。
それでも諦められない奴は諦めた振りをしてずっと騙し続けて生きていくんだよ」
( ^ω^)「何その決め台詞みたいなの。かっこいいんだけどドクオのくせに」
('A`)「それを言われなけりゃ普通にかっこよかったのに。邪魔しやがって糞ブーン」
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/05/11(水) 12:21:09 ID:NvB2ome60
( ^ω^)「やんのかお? ええ? やったるおこの糞ドクオ」
('A`)「防弾チョッキだけで俺に勝てると思うなよ!」
( ^ω^)「荒ぶる鷹のポーズを取ろうが、魔法を吸収することしか出来ない男に生身の人間を倒せると思うなお!」
しかし、俺や内藤にそんな殴り合いの喧嘩をするような勇気はない。
大体七秒ぐらい睨み合って、はっ! とか悪態吐いて互いに視線を逸らす。
ξ゚听)ξ「……」
一方少女は黙っていた。
全く。諦めたほうが身のためだろうに。
俺や内藤はともかく、モララーのおっさんだけは何しでかすかわかんねえぞマジで。
こんな平和に満ち溢れてる中で、凶悪に満ち足りている重火器を持ってるような奴だ。
反抗したら容赦なく蜂の巣もんだ。
まさか魔法以外の方法で挑んでくるとは思わなかったが、こっちまで魔法以外のもので戦ってくるとは思わなかっただろう。
大人しくしておけばいいんだよ。
そうすれば楽になれる。現実ってのは押し流されるほうが楽ってもんだ。
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/05/11(水) 12:22:14 ID:NvB2ome60
( ・∀・)「諦めたかいお嬢さん」
ξ゚听)ξ「……」
( ^ω^)「諦めたなら、僕のお嫁さんになりませんか」
('A`)「うーん。ニューゲームか、セーブロードを駆使しないと無理だろ」
( ^ω^)「ちくしょう! もっと僕がイケメンだったらよかったのにお!」
('A`)「性格で無理ですよねー」
( ^ω^)「ですおねー」
うははと俺らは笑う。
だが、対面する魔法少女は静かだ。一切と動かない。
そんなに負けを認めたくないのか? と思ったが、決してそんなものじゃない。
何せ、動かないのだ。本当に。
無視をする、そんな様子ではなく、微動だにしない。
いわば、直立不動状態。一本の柱みたいにその場に突っ立っているだけ。
おかしな、本当におかしな空気が流れている。
……だが、思い返してみれば、俺らは勝手に勝ったと思っていた。
漫画やアニメやゲームでよくある「やったか!?」というセリフや「やったな……」という
セリフを言った瞬間に立つフラグのようなものを、知らず知らずに立てていたのだ。
不味ったね。こりゃ。
心の中でぼやいたその声は、勿論誰にも聞こえるわけがない。
さあて、何が出てくるのかね。出来ることならスライム程度の産物ならいいのだが。
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/05/11(水) 12:25:42 ID:NvB2ome60
ξ )ξ
おいおい。おいおいおい……なんか全身が震えてるじゃねえか。
肩が震えるとかそんなレベルじゃねえ。体中が痙攣してるって感じだ。
(;^ω^)「な、なんか不味くないかお」
('A`)「そうだなあ。お前の結婚発言が火を点けたんじゃないか?」
(;^ω^)「全国のロリコンどもすまんこ! 許しておくんなましいー!」
冗談でもなんでもなく、公園内でそんなことを本気で叫ぶ俺の友人。
幸いにも人は歩いておらず、警察もいなかったので何事にもならなかったが、フリスクをケツにねじ込んでやりたい気持ちになった。
( ・∀・)「……これだから、魔法少女なんてのは」
('A`)「はい?」
( ・∀・)「いやいや。なんでもないよ」
('A`)「そっすか」
なにやら、聞き逃してはいけないセリフが出たような気がするが、まあ放っておこう。
それよりも今何とかしなきゃならないのは、
ξ )ξ
こいつだよな。
どうなるんだ。体の震えがどんどん大きくなってきてんぞ。
横揺れの大地震の最中か、と思わせるぐらいになってんじゃねえか。
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/05/11(水) 12:26:47 ID:NvB2ome60
いやだなあ。こういうの。
なんか新しいバイト先でよくわからない状態なのに、
まるでそれぐらい知っておけよみたいな態度取られて、
忙しいからって怒り狂ってる先輩を見るぐらい嫌だなあ。
ξ )ξ「ああああああああああああああああああ!!!!」
(;'A`)「うひい!」
(;^ω^)「なんだおおおおお!?」
突然叫びだす幼女。
その声は決して人が何かを発音するためのものではなく、ただ腹の底からひねり出されたような、地面に響く図太く、重々しい音。
乱暴に押し出された声は、既に聞き取ることが出来ない。低音のサイレンと思えば、ぴったり当てはまるだろう。
そんな声が、鳴り止むことなく俺たちを襲う。
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/05/11(水) 12:27:08 ID:NvB2ome60
(;'A`)「おいおいおい! どうなるってんだよ一体よお!」
(;^ω^)「いやいやいや、これはアニメとかでよくある覚醒シーンって奴でしょうがお!」
(;'A`)「何!? エヴァとかでいう暴走みたいな!?」
(;^ω^)「そんな感じだろうお! どう見たって普通の目をしてないしお!」
ξ )ξ「あああああああああああああああああああああ!!!」
止まらない唸り声。ひたすら喉を伝って搾り出されている。
大した戦闘経験もないが、流石に不味いということが最大級にわかる。
逃げるんだ。と、警戒信号が点滅し、俺を走らせようとする。
だが、実際に逃げられたのかでいえばそうではない。
足がすくむのだ。こんな状況に出くわしたことがない。当たり前だ。誰かがぶちぎれてもこんなことにゃならんだろう。
そんな初めての経験に、味わったことのない感覚に戸惑わざるを得ない。
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/05/11(水) 12:27:40 ID:NvB2ome60
(;'A`)「収まった……?」
(;^ω^)「みたいだお……」
何が起きたのかさっぱりわからないまま、静まり返った魔法少女を見る。
再び直立不動。だが、上半身がだらりと垂れ下がっている。逆海老反り状態である。
ただ叫んだだけとは思えない。
そんなことを考えながら、視線を外すわけにもいかない魔法少女を、俺はじっと眺めていた。
すると、
急に、
ぎょろりと、
双眸が見開かれ、
俺たちを一瞥した。
(;'A`)「こええええええええええええええ!!」
逆に、今度は俺が叫ぶ。
そして鍔を返して思いっきりに逃げた。
そういえばですけど、チーターって自分より前を走る者を捕まえるって言いますよね。
もうね、それと同じ状況になっちゃったのよね。今。
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/05/11(水) 12:28:12 ID:NvB2ome60
ξ゚∀゚)ξ「ひゃああああああああ!!」
やばい。怖い。やばい。怖い。
冷や汗をだらだらと流しながら、俺は必死に逃げている。
( ^ω^)「ドクオー! 頑張って逃げるんだおー!」
('A`;)「ばば、バッキャロー! さっき俺を助けたみたいに助けやがれってんだーい!」
全く頼りにならない友人内藤。俺はそいつに頼ることを止めて、自分を信じて公園内を駆け回る。
なんとか逃げ切れる方法はないか。このままじゃ体力が尽きてやられてしまう。
そう思った時、俺の右手に熱を感じた。
そういえばそうだ。俺は今追ってきてる奴の魔法を手の中に束ねたじゃねえか。
なら、こいつを思いっきりぶつけてやればいい。そうすれば沈黙するだろうよ。
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/05/11(水) 12:28:44 ID:NvB2ome60
('A`;)「く、食らいやがれええええ!!」
焦りながらも、しっかり焦点は合わせて、
走りながら後ろを向いて、右手を振り下ろす。
直撃した。大きな火柱を立てながら、相手の動きを確実に止める。
(;'A`)「や、やったか……?」
……失策。
何回同じ過ちを繰り返すんだよ俺。
こんなセリフ吐いたら駄目だろうが。フラグフルボッキどころか二回戦もやれる状況になっちまうじゃねえか。
おとうさーん! フラグが立ったよー!
ξ ゚ー゚)ξ「……」
やがて炎が勢いをなくし始めた時、静かに所々が焼け焦げたスク水幼女が現れた。
金色のドリルは決して傷つくことなく、何故か服のところどころが焼けただけで、肌を露出している。
なんでこれだけの大爆発で、それだけのダメージしか受けてないんだよアホか。
('A`;)「おいおい……まるで魔法が通じねーみてーじゃねえか……」
こうなっちまうと、俺に出来る術はなくなる。
あの狂った状態で、俺を襲ってきた場合、捕まると恐らく零距離で何かをけしかけてくるだろう。
そうなると、流石に魔法だとしても受けきれない。多少は緩和できても、深手を負うことになるだろうな。
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/05/11(水) 12:29:47 ID:NvB2ome60
ξ゚∀゚)ξ「コウゲキ、マホウ、オボエタ!」
するとびっくり。どうしたことでしょうか。
走りながら、俺に向けて光弾やら、炎やらを投げつけてくるじゃありませんか。
流石に魔法によって作られた物だけあって、俺は防ぐことが出来るが、拳銃を取られるといささか不味い。
どうしたものか。最早対処のしようがねえ。完全に詰んじまった。
そんなことを思いながら、再び公園内でリアル鬼ごっこを嫌というほど堪能していると、ふとモララーさんの隣を横切っていた。
( ・∀・)「やっぱり、必要悪だな」
何かを呟いた。
俺にその声は届かなかったが、本人には充分過ぎるほどに聞こえていた。
そして、魔法少女がモララーさんの隣を過ぎ去ろうとした次の瞬間。
ξ゚∀゚)ξ「ぴぎゃあ! ……ひ、あ、あ……?」
静かに、本当に静かに、発砲音が二つ鳴り響いた。
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/05/11(水) 12:30:16 ID:NvB2ome60
( ・∀・)「……すまない。本当に、すまない」
どくどく、どくどくと。
貫かれた腹部と頭部から血を流し、小さな水溜りを作り、地面に染み込ませていく。
( ^ω^)「モララー、さん?」
( ・∀・)「……約束、破ってしまったよ。やはり、放っておけなくてね」
突然の出来事だった。
俺は異変に気づいて立ち止まったら、そんな状況になっていたのだ。
何が起きたのか。頭の中を整理する。銃声が鳴って、女が倒れて、モララーさんが申し訳なさそうに俯いている。
ああ、そうか。
あの人が、人を殺したんだな。
('A`)「なにを……やってんだよ……」
誰に言うわけでもなく、誰かに聞いて欲しかったわけでもなく。
俺は、ただそんなことを呟いていた。
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/05/11(水) 12:37:51 ID:NvB2ome60
ぎょろりと見開かれた双眸は、閉じられることなく。
焦点の合っていない視線は恐怖とはまた違う感覚を大きく。
より一層大きく増徴させていく。
( ・∀・)「君たちは、こうなってはいけない」
( ^ω^)「あなたは……やっぱり……」
なんだよこれ。
なにをやってるんだよこれは。
ξ ∀゚)ξ
「ドクオ? おっ、ど、ドクオ!」
薄れていく視界。ぼやける世界。
消えかかる意識の最中、俺が最後に見たものは、
血溜りの中にいる、小さな、それはちっぽけな、
魔法少女だった。
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/05/11(水) 12:55:02 ID:NvB2ome60
* * *
lw´‐ _‐ノv「おおおおおおおおおお!!」
(´・ω・`)「うおおおおおおおおおおおお!!」
炸裂。爆砕。止まらない、止められない攻防。
終わらない負の連鎖。因果。それらを全て終わらせる為に。
お互いの力を出し切り、世界そのものを守るために。
lw´‐ _‐ノv「……! おい、ショボン! 止めだ!」
(´・ω・`)「なんだとァアアア!! いきなりなんだってんだァ!」
lw´‐ _‐ノv「……私の、大事な教え子の魔力反応が一つ途絶えた」
(´・ω・`)「おい。どういうことだ。途絶えただと? どこにいたんだ」
lw´‐ _‐ノv「恐らくだがね、お前の連れてきたルーキーとはち合っていたはずなのさ。
けれども、魔力反応が一つも感じられないまま、いきなり途絶えた」
押し黙るようにして、ショボンの動きが止まり、顔を伏せる。
一瞬何かを考え、少しだけ眉尻が上がったかと思えば、すぐに顔を上げる。
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/05/11(水) 12:55:29 ID:NvB2ome60
(´・ω・`)「……今日こそ、ケリをつけてやろうと思っていたんだがな。止めだな」
lw´‐ _‐ノv「ああ……そうだねえ。私もようやくお前を傘下に入れられると楽しみにしていたのだがねえ」
(´・ω・`)「そっくりそのまま返してやるよ。だが、どういうことだ?
魔法少女同士の戦いで、魔力反応なしで途絶えただと?」
lw´‐ _‐ノv「おかしな話だろう? ……やはり、あいつらなのか」
(´・ω・`)「ああ? なんだ。あいつらってのは。どういうことだ、おい。説明しろ」
lw´‐ _‐ノv「……第三勢力さ。私たちの抗争を邪魔する、もう一つの勢力」
(´・ω・`)「第三勢力だと? 馬鹿な。魔法を扱えるのは俺とお前の組織だけじゃないか」
lw´‐ _‐ノv「その通りだよ。ショボン。でも、私たち魔法少女を好ましく思っていない連中がいるとしたら?
そうさ。そのままそっくり第三勢力として出来上がっちまうのさ」
(´・ω・`)「……やつらの戦力は? もし、俺の予想が当たってるのなら最悪の相性だぞ」
lw´‐ _‐ノv「……戦力は、単純なものだよ」
(´・ω・`)「勿体ぶる場合か。早く言え。そして早くその場に行くぞ」
既にショボンは出入り口に走り出していた。
シューはそのショボンを追い抜き、こっちだ。と一言呟いて、走りながら振り返る。
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/05/11(水) 12:56:49 ID:NvB2ome60
やっぱりか。おい。急げ。
そんなことを言葉をその場に残して走り抜ける。
事の元凶がいるであろう場所へと。
第七話
やっと就職した先で、
便所飯をする羽目に会うなんて誰が予想出来ただろう
おわり
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