('A`)ドクオと愉快な魔法少女のようです

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 08:04:12.73 ID:erK/GDpP0


('A`)「知ってるひとはこんばんはー!」

('A`)「知らない人もこんばんはー!」

('A`)「僕ドクオだよー! 完全に作者の自己投影で出来たどっくんだよー!」

('A`)「それはさておき。
   前回の話を読んでない、読むのマンドクセって人用にかるーいあらすじを書いたから、
   こんな糞スレ開いてとりあえずなんとなく読んでみるかって気になって、
   パチスロを打つよりも時間を無駄にしようとしてる人達に少しでも自由をあげようって思いを込めたよ!
   こんな糞スレより愛を込めて!」



* 以下、別に誰も求めてないだろうけど、とりあえず一部の人のために書く
  自己満足以外なんでもないあらすじ。


6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 08:06:17.35 ID:erK/GDpP0

ある朝、俺は外へと出かけていた。
用事なんてない。別に何も予定もない。
一年中自宅を警備している身からすれば、そりゃたまには外に出ようなんてとち狂って気が触れちまうことだってある。

「あれ……おい、あいつ」

うるさい。五月蝿いウルサイうるさい。
俺を指で示すな。その一指し指なんて失礼きわまりない物へし折るぞ。
じゃあやってみろよ。とかって詰め寄ってこられたら全力で挙動不審になるから間違っても言わないでね。

こちとらもう何年も人とまともに会話してねえんだ。
そんな状態で一昔前に俺をいじめてた奴らなんかに声をかけられてみろ。


……欝ダ氏ノウ。

クソったれ……。
過去のトラウマとか思い出して感傷に浸る柄じゃねえだろ俺……。
つっても、一度凹んじまったら中々カラっとは生きていけないものよなマジで。

「パチンコで8万円負けました。
      でも、気にしてません。前を向いて生きていきます」

こんな脳内お花畑に生きていけるわけがない。
っていうか、そもそもこういう能天気に頭に蛆虫がわいてる奴はパチンコなんてしねえ。
俺みたいな奴が行って「あの店マジボッタ店だわうんこ」って文句垂れながら、
結局また行って「養分乙」ってレッテルを貼られるんだ。

……また落ち込んできた。

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 08:08:22.09 ID:erK/GDpP0

なにやってんだよ俺は。
いい加減真面目に働こうぜ。自宅警備なんて激務から逃げちまってよ。
いっそスロニートに転職しちまうか? はは、わろえない。こちとら五号機相手に貯金全滅しちまってんだよ。

('A`)「あんだってんだよ……」

空を見上げる。
項垂れた俺の目がとらえる鬱陶しいほどに明るくまぶしい太陽が、さんさんと照りつけてくる。
似合わねえ絵だなマジで。俺と太陽ほどチョイスミスしちゃいけないもんねえぞ。

('A`)「あれ……あいつ」

そんな俺の憂鬱を晴らすことのないお日様を視界の外へ。
そしたらあらまあ、なんということでしょうね。唯一のマブダチ(笑)がそこにいるわけですよ。

(;^ω^)「おっ……」

相変わらずの容姿。何も変わってねえ。
決して細身とは言えないが、ピザデブというほど太っていない。嫌になるほど常に笑ってるような顔をしてる男。
本人曰く「遺伝子ってどこから来るんだお」とのこと。

そんな両親の血を全く受け継がずに生まれちまった悲しき野朗。ブーンだ。
学校時代のあだ名は河川敷で拾われた男である。俺しか言ってなかったけど。

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 08:10:29.34 ID:erK/GDpP0

('A`)「おい」

(;^ω^)「うひゃあ! ……ってなんだお。ドクオかお。久しいお」

('A`;)「なんつー声あげてんだよお前……久しぶり」

(;^ω^)「おっ。なんだお。どうしたお、急に」

('A`)「いや、なんか不審者がいたからな。通報する前に事情ぐらい聞いてやろうかなって」

(;^ω^)「そいつぁありがてえお。今全力でストーカーしてんだお」

('A`)「通報しますた」

( ^ω^)「時に落ち着け。これには深い事情があるんだお」

('A`)「そりゃ相手さんからすりゃ不快な事情だろうよ」

( ^ω^)「上手いと思った?」

('A`)「ごめん許して」

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 08:12:37.68 ID:erK/GDpP0

( ^ω^)「まあそれはいいお。で、なんだお。邪魔すんのかお」

('A`)「え、なんでこの人ストーキングしておいてこんな偉そうなの」

( ^ω^)「今日僕の妹のパンツが盗まれたんだお。
       その犯人であろう奴を見つけたから今こうして張り付いてんだお」

('A`)「なるほどな……そいつは大変だな」

( ^ω^)「だお。ならほっとけお」

('A`)「ちなみにお前の妹のパンツ取った犯人だけどさ」

( ^ω^)「お?」

('A`)「それ、俺なんだよな」

( ^ω^)「なんだドク


( ^ω^)ド





( ^ω^)「は?」

('A`)「目の前に縞パンがあったらそりゃクンカクンカするだろ……道徳的に考えて……」

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 08:15:59.19 ID:erK/GDpP0

( ^ω^)「わかった。お前が辛いのはよくわかったお。だから、な?
       お父さんと一緒に自首しよう。な?」

('A`)「やだー! 私怖いのやだー!」

( ^ω^)「うるせえ尻から裂けるチーズみたいに分裂さすぞボケ」

('A`)「ほんとごめんゆるちくび」

( ^ω^)「久々にキレちまったよ……屋上いこうぜ……」

('A`)「いやんまいちっちんぐ」

( ^ω^)「世界が狂ってもマチコ先生にはなれねえお。で、これどう落とし前つけてくれんの」

('A`)「しょうがねえから返すよ。悪かった」

( ^ω^)「最初っからそうしとけおクズ……。って何してんの
       ちょっと、ねえちょっと、えっあの、え、何ストリップショーはじめてんのなあおい止めろ」

('A`)「ほれ。お前の妹のパンツだ。誰の手にも渡らないように俺が直々に隠しておいた」

( ^ω^)「おい、すっげえまいるどなイカさんの香りがするんだけどお。流石に妹もいらねえって言うんだけどこれ」

('A`)「文句の多い奴だなお前……」

( ^ω^)「腹筋の数と同じぐらい尻割るぞマジで」

('A`)「ごめんほんとごめん」

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 08:18:27.43 ID:erK/GDpP0

そんな感じで俺は逃げた。
腕を振る。足を振る。動け動け動け動け動け動け!!
今逃げなきゃいつ逃げるんだよ! こんな極上の代物中々手に入るもんじゃねえんだよ!!
大体あいつの妹可愛すぎるの。わかる? 極上のロリっ子。今期で言ったらアスタロッテのおもちゃに出てくる明日葉ちゃん級なわけ。
もうマジペロペロしたい。股に挟まれて「しょうがないなぁもう」とか言われたい。そんでもって思いっきりクンカクンカしてえ。やばい達する。

……。

で、現実に戻るわけだ。
場所は屋外。近所の公園。人通りの少ない。少なすぎて違和感を感じるような、そんな隔離された空間。

('A`)「やっべ現実逃避してた」

( ^ω^)「お前いい加減僕の妹のパンツ盗むの止めろマジで何回通報すりゃいいんだお」

('A`)「そういうケースもある」

( ^ω^)「95割ねえわ」

('A`)「っていうかこれあらすじでいいの」

( ^ω^)「過去回想だろ」

そんな感じの午後の公園。血溜りの出来た広場。
風穴を開けられた少女。魔法。そんな日常。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 08:21:02.19 ID:erK/GDpP0




('A`)ドクオと愉快な魔法少女のようです
 

  第八話 馬鹿とメンヘラは紙一重

*真面目な展開が続くので、
 シリアスいらねえんだわって人はブラウザの閉じるボタンを連打して下さい。



14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 08:23:28.25 ID:erK/GDpP0



「あんたぁ。起きて。起きてえな」

全国的に朝である。
この時間は国中で布団から出たくない症候群に発祥してしまう危険な期間。
誰も望んでないが、まあそういう風に出来ている。

そして、勿論僕もこの朝には布団から出たくない症候群に発祥しているわけだ。

「もう。そうやってまた布団に包まって。小学生やないんやから、いい加減起きてえな」

もう少しだけ。あと五分だけ、いいだろう。
声にこそ発しないが、きっと向こうもわかってくれ……おおうお!

(;っ∀・)「でぃ……」

(#゚;;-゚) 「なんよ。布団から出ないから追いはぎに会うんやで?」

そんな症候群に発祥しようとも、
よくもまあものの数秒で完治してしまう画期的な方法を見つけたものだ。

やれやれ。

まあ、こんな可愛い追いはぎなら喜んで受け入れるがね。

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 08:26:43.49 ID:erK/GDpP0

( ・∀・)「はてさて。おはようでぃ」

(#゚;;-゚) 「おはよう、あんた」

そして僕は再び布団へと包まった。
が、怒声とともに思いっきり引っぺがされたのは言うまでもない。




('A`)ドクオと愉快な魔法少女のようです

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 08:28:54.58 ID:erK/GDpP0


( ・∀・)「いってきます」

(#゚;;-゚) 「いってらっしゃい」

毎朝、味噌汁とご飯。時々トースト。何も言わなくとも出てきてくれるモーニングである。
そして欠かさずコーヒーを入れてくれるのだが、僕の要望で常にアイスである。
単純にホットは熱くて苦手なのだ。シロップ代が無駄だとよくぼやかれてしまうのが欠点ではあるが。

さて。

今日も仕事だな。
と、言ってもただのコンビニ店長だ。バイトではないが。
それにまあ、コンビニというよりかはどちらかといえば地方、田舎独特のなんでも屋みたいな感じである。
野菜とか、肉とかまあ色々置いてある。割と腐るから自分で処理するのだけれど。

まあ、食費が浮いて助かる。自分用に仕入れをしていたりもするしね。


( ・∀・)「いらっしゃいませー」

日常。

そんな何の変哲もない、ただただ平和なだけの毎日。
僕はそれを望んでいたし、そういう風に生きたいと思っていた。
だからこれでいい。

こんな日常がいいんだ。

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 08:31:20.69 ID:erK/GDpP0

( ・∀・)「こちらのジャンプは温めますか?」

「温めねえよ何言ってんだお前」

( ・∀・)「温めますね。失礼します」

「oiみすおい紀伊店のかどこの世界に書庫を温めてほっかほかにして読む奴がいるんだよ」

( ・∀・)「冷たいものを袋分けておきますねー」

「おい、そこが気遣えてなんでジャンプに気を回してあげれねえの? なあ」

( ・∀・)「ありがとうございましたー!」

「二度と来るかァァァアア!!」



「やや……なにやら人が怒りながら去っていったでござるぞ」

( ・∀・)「ああなに、大丈夫。あの人いつもあんな風に言いながら毎週買いに来る常連だから」

そんな日常。
見知った人がよく立ち寄る、そんなコンビニエンスストア。
僕はこれでもこの店を仕事って言葉だけで割り切りたくはないし、この人付き合いを大事にしたいと思っていた。
時々妻にも手伝ってもらって、そんな生活がなんだかんだ嫌いじゃないし、大好きだ。

そんでもって、今目の前にいるこの人も馴染みの客なわけで。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 08:33:39.77 ID:erK/GDpP0

lw´‐ _‐ノv「なるほど。そいつは愉快な常連だ」

( ・∀・)「だろう? それで、今日は一体どうしたんだい」

古くからの馴染みである、シューだ。若くして一会社の社長となり、
部下を従えエリートコースまっしぐらな制服がスク水という謎極まりない、

僕の上司だ。

lw´‐ _‐ノv「いやなに、繁盛してるかなと覗きにきたんだ」

( ・∀・)「なるほどねえ。残念。閑古鳥が鳴いてるよ」

lw´‐ _‐ノv「そいつぁ残念至極。まあそれはついでで。本題はでぃさんに用事があってね」

( ・∀・)「でぃに? 何か用件があるなら伝えておくけれど」

lw´‐ _‐ノv「いや、直接話がしたいんだ。今日は出勤かい?」

( ・∀・)「いや、今日は休みだね。この時間なら家にいるんじゃないかな」

lw´‐ _‐ノv「なるほど。なら少しでぃさんをお借りするよ」

( ・∀・)「取って食わないでね」

lw´‐ _‐ノv「ああでぃさんああっ百合百合フィールド展開しちゃいましゅうう」

( ・∀・)「録画した」

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 08:35:49.31 ID:erK/GDpP0

そんなこんなで、今日も売れないコンビニを営業する。
表向きにはコンビニエンスストア。裏事情を持った、そんな闇店。

彼女、シュールは所謂魔法少女と呼ばれる存在である。
最初聞いた時にわかには信じがたい話ではあったけれど、実際に魔法を使うことでそれを証明した。
雷など、電力を伴う魔法を扱うことが出来るらしく、自分自身の形状すら変化できるらしい。

魔法少女以外の人間が魔力を持ってして、それをしたところで肉体は無事ですまないらしいが。
ただ魔力も膨大な数値であれば話が別らしい。膨大って、どんぐらいなんだろうね。

しかし光速で動けるというのは魅力的な話だ。
言ってしまえばどっかのサイヤ人みたいなことが出来るわけだろう。こんな愉快な話はない。

まあ、シュール曰く僕には魔法少女としての才能はゼロらしいけど。
少女じゃないしね、そもそも。これで男が魔法少女名乗ってたら世も末だし。
世紀末にでもなんない限りそんな横暴通されてたまるかってんだ。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 08:38:59.82 ID:erK/GDpP0

( ・∀・)「いらっしゃいませー」

そういう風に僕は日常を過ごしていく。
夕方が来るまで僕は一人で過ごす。夕方が過ぎるとでぃが一緒に入ってくれる。

ただ、シュールが「近頃危ないからな。バイト雇ってもいいぞ」とありがたーい言葉をくれたので、バイトを雇うことにした。
あと、その代わりに深夜もあけてくれといわれたので、合計で二人。
正直部下を持つとか、誰かを雇ったことなんてないので適当にバイト募集の張り紙をはっつけるだけにしていた。

そしたら勿論こんな店に働こうと思う変わり者は……一人来た。

('A`)「あ、あああの。ば、バイトのみmっめ、面接あっ、あ、募集してるって書いてるの見て……」

めっちゃ挙動不審な背の低いぼっさぼさの髪した兄ちゃんである。
なんでも一人暮らしを始めたのはいいけれど、仕事も何もなく焦っているらしい。
そしたら失礼きわまりないが、暇そうな店なのでシフトに入れてくれるんじゃないかと踏んで来たらしい。

変わった子だ。

だからこそ、僕は面白いんじゃないかと思って雇ったが、
後からでぃとシュールに話をしたらお前馬鹿じゃないのって笑われた。

まあいいんだ。仕事はしっかり覚えてるし。っていうか僕より働くしあの子。
名前はドクオ君。鬱蒼とした表情にぴったりな名前だ。親からは悪意しか感じないネーミングセンス。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 08:41:51.43 ID:erK/GDpP0

そんなドクオ君がしばらくして、自分の知り合いを面接してほしいと紹介してきた。
まあ、この子の知り合いなら変わった子でも多少はいいかと思い承諾したら、


( ^ω^)「こんにちはですお。面接に来ました内藤ですお」


なんか語尾「お」とかつくふざけたにやけ顔のデブが来た。
社会的に抹殺されるだろ……男で語尾「お」って……。


でも雇った。今度はでぃとシュールに怒られた。
ただ、そのふざけた語尾と体系には似合わずよく働く子だった。
最近の子はギャップがあるほうが働くのかもしれない。……いや、たまたま運がいいだけだろう。

そんな感じで妻には出勤してもらわなくてもなんとかなるようになった。
僕と、内藤君と、ドクオ君。この三人で店を回して、たまに店を閉めて。
そんな風に毎日がこれから過ぎていく。


そう、思っていた。


だけど、いつだってそうだけど。

――――幸せって奴は、続かないものだ。

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 08:43:53.20 ID:erK/GDpP0


(#;゚;;-゚) 「うっ……」

(;・∀・)「でぃおか……なんだ! どうしたんだ一体!?」

ある日僕は店を閉めた。
たまには休日をとるべきだとでぃが言ってきたのだ。
僕もたまにはいいか。と思いバイトの二人にはそう伝え休みにした。

日も浅く、まだ溶け込めていないからかそこまで深く追求もしてこなかったので理由は説明しなかった。

そしてその休み当日。
僕はでぃと一緒にどこかに行こうと考えていた。街をぶらつくのもいいだろう。
そんな幸せな妄想にふけっていた。忘れていた。彼女が普段何をしているのかを。


魔法少女というのは、一体何をしている職業なのかを。


昼過ぎに、彼女は帰ってきた。いつもの「ただいま」を言わずに。
そしたら玄関先で激しい物音がした。
何かが倒れ、その拍子に靴箱においていた花瓶や、置き時計。そういった諸々が一緒に崩れる破裂音。

何事かと思い、僕は玄関に向かって走る。
ひょっとしたら強盗かもしれない……そんな可能性すら疑うことなく。
でぃが危ないと。ただそう感じて。

そしたら、案の定でぃはそこにいた。花瓶は割れて、水を被っていた。
しかしそんなことはどうでもいい。花瓶が割れようが何が砕けようが、そんなことはどうでもよくなるような、

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 08:46:50.28 ID:erK/GDpP0

(;・∀・)「おい、なんだ! どうしたんだ!? なにがどうしたってんだ!」

(#;゚;;-゚) 「ちょっと……しくっちゃったわぁ……」

(;・∀・)「しくったって……そんな程度の怪我じゃないだろこれ!!」

でぃの重傷っぷりに。

酷いものだった。右肩はどれだけ強打すればそうなるんだといわんばかりに腫れて、
服はあふれ出る血を吸収しきれず、にじみ出て、ワンピースを赤く染め上げる。

肩は自分の意思ではもうあがらないらしく、ぶらりと垂れ下がっている。
足には擦り傷。切り傷。顔も、返り血を浴びていた。

(#;゚;;-゚) 「大丈夫、やから……いつもこう、やから……」

(;・∀・)「いつもだって!?」


そんなことはない。
僕はたまにでぃの補佐をする。魔法少女として戦う彼女を助けるときだってある。
交戦している場面も見ているし、その度攻撃を食らっている彼女を見たことだってある。

だけど、いつだって彼女はこんな深手を負うことはなかった。
というより、そもそも怪我すらしてなかったんだ。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 08:48:56.74 ID:erK/GDpP0

(#;゚;;-゚) 「ごめんなぁあんた……一つ黙っててん」

(;・∀・)「黙ってたって……なにを」

(#;゚;;-゚) 「私ら魔法少女は、怪我を負っても魔力がある限り、勝手に回復する仕組みになっとるんよ」

(;・∀・)「じゃあ、なんで! なんでこんな」


『魔力がある限り』

嫌に引っ掛かる。喉につっかえる。
脂汗が出る。背中が嫌に冷えていく。腹の奥が重くなる。なんだ。なんなんだ。
この感覚一体なんだ。何がおかしいんだ。

(#;゚;;-゚) 「私なぁ。もう魔力尽きてもうてん」

馬鹿みたいに鳥肌が立っていく。喉が、狂ったように乾いていく。
頭が鈍器で叩かれたような衝撃を受ける。

何が

何が



27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 08:52:01.72 ID:erK/GDpP0


冷静になれない自分がそこにいた。
魔法少女という存在にした奴が許せなかった。僕が彼女と出会った時には、もうでぃは魔法少女だった。
だからそれを否定出来なかったし、それを否定しても結果は変わらなかった。

それに、僕は彼女が魔法少女だったから、ここにいられる。だから責められない。

そんな魔法少女との出会いは単純だった。

僕は彼女がやってくるその前、死のうと思っていた。実際に死ぬつもりだった。
いわゆる飛び降り自殺の手前だ。生きていく理由なんてものを見失って。
家族を失って、友達を失った。文字通り、みんな死んだ。

そんな生きる希望をなくして、もうなんでもいいから楽になりたい。
生きていくだけ絶望していくなんてもう嫌だって。

空を見ると、暗雲が浮かんでいた。太陽は、見えなかった。陽は、陰っている。
……そんなことはどうでもよかった。

それで、僕は思い切って飛び出そうと思い、下を見る。視線が、下を。下へ。下に。
物が、人が、何かが、1ミクロの何かが。下に。直下に。真下に。

恐怖


怖い。恐れ慄いた。
死ぬんだ。ここから飛べば。僕は消える。
いいじゃないか。それでいいんだろう。楽になれる。それで逃げられる。

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 08:54:18.61 ID:erK/GDpP0

なら、早く飛べよ。
恐怖なんて、消えるだろ。死んでしまえばいい。
殺されてしまえ。恐怖に。食い殺されてしまえ。

「どうすんのさぁ。あんた」

浮かんでいた。女性が。宙に。重力に逆らって。

「死にたいんだろ? 楽に、なりたいんだろ? だったらそうしなよ」

「恐怖を感じるのかい? 怖いのかい? 楽になるさ。死ぬって、そういうことさ」

簡単にいってくれるけど、これ、凄いんだぜ?
足元見てみろよ。ほら、凄いだろ。震え上がっちまって。そんなとこまで見てるんだろう彼女は。
それを知った上で、そんなことを言うんだろ。怖い女だ。

「お、いよいよやるのかい」

ここまで煽られて、僕も歯止めがきかなくなっていた。
恐怖を跳ね除けるに足りるとはいえないが、それでも元々死ぬって決めてきたんだ。
こんな気持ちに負ける程度の軽い覚悟じゃないんだ。

そのためのキッカケが欲しかった。なんでもいい。単純な、キッカケが。

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 08:56:31.01 ID:erK/GDpP0

いくぞ?

いいんだな、僕。

これで、最後になるんだぞ。

「くっそおおおおおおお!!!」

最後くらい、いいだろう。

叫んだ。心の底から。腹の奥から。
飛んだ。ビルから。世界から。重力から。

生から、飛翔した。一瞬だけ、重力に逆らった。

「くっそおおおおおおお!!!」

もう一度叫んだ。悪態を。吐いた。叫んだ。腹の、奥から。
心の、底から。

「もっと生きて楽しみてえよおおおおおお!!!」

心情を。感情を。
僕は生きて初めて自分を露にした。
生きていたいもんなんだな。本音って奴は。いつも埋もれてるけれど。

それに、自分って奴に嘘をつきたくなんていつだってないんだ。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 08:58:44.10 ID:erK/GDpP0

建前を貼り付けて、本音を隠して。
大人って殻に守られて、子供って中身を攻め立てる。

だから僕は苦悩した。何もかもを誤魔化して、傷ついてないふりをして。
でも本当はどうだ? 家族が死んだ。身内はみんな逝ってしまった。
一人取り残されて、葬式でも強がって大人の振る舞い。気を使って、自分を騙した。

こんな状況になって、初めて気付けるわけだ。
というより、ようやくして出せるわけだ。自分を。
そりゃ普段は社会っていう服を着てるからな。皮膚みたいに離せねえ代物なんだよこれ。

こんな、人生って奴から解き放たれようとでもしない限り。

そう、思っていた。
思っていたんだ。

なのに、


「なんだい。そんな恐怖を跳ね除けて飛び出せる勇気があるんじゃない。
 だったら、本気を出せばそんな絶望、希望に変えて見せれるさ。違うかい?」

風は止み、空は晴れ、雲が消える。
雷雲はなくなり、青々と透き通っていく。

太陽を背にした彼女は、そう僕に告げる。

思いっきり飛んだはずの僕の両手をしっかりとつかみながら。

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 09:00:50.70 ID:erK/GDpP0

(  ∀ )「なんだよ……邪魔しないでおくれよ……」

(#゚;;-゚) 「そういいながら、なんであんたは笑顔なんだい」

(  ∀ )「こんな奇跡体験したらそうなるさ……はは」

そんな出会い。こんな救い。そうした助け。
一目惚れだった。そりゃそうさ。人間ってのは常に自分にないものを求めてるんだ。
魔法少女であり、命の恩人であり、こんな男前な彼女に惚れない男がいないだろう。

だから僕は付きまとった。彼女に。そりゃあもうしつこいぐらいに食い下がった。

(#;゚;;-゚) 「あんたまた来たん……いや、いつもご飯くれるのは嬉しいけどさぁ」

( ・∀・)「べっ、別にあんたのために餌付けしてるわけじゃないんだからね!」

(#;゚;;-゚) 「日本語でおk」

そういう風に、冗談もぶつけあった。
時には喧嘩だってした。お互いに思い思いに言葉を投げつけた。

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 09:03:23.61 ID:erK/GDpP0

(#゚;;-゚) 「命を粗末するんやない!」

(#・∀・)「一度捨てた命をどう使おうが僕の勝手だろう!」

(#゚;;-゚) 「それで悲しむ人がどれだけおると思うとんの!」

(#・∀・)「家族も身内もいないよ! 僕は一人だ!」

(#゚;;-゚) 「私かて一人や! 家族も身内もおらんわ!
     でも、あんたがおるんやろ!? あんたが、いつまでもストーカーしてくれるんやろ!?
     なら悲しむ人はおるんやん!」

(#・∀・)「だったらでぃ、君も! 命を粗末にするんじゃない!」

痴話喧嘩だなこりゃ。
そんな過去もあった。知らない誰かを守れなかったと、悔やみ、泣き腫らした日もあった。
その度僕らは誓った。犠牲なんて出さないと。こっち側の都合に巻き込ませなんてしないと。

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 09:05:24.91 ID:erK/GDpP0

だから救える限りの人は救う。全員は無理だと、それは流石にわかっていた。認めたくないけど、認めるしかなかった。
そういう制約で、正義を振りかざして来た。

そんな中でも僕は幾度となく助けられた。何度も、救われた。
魔法少女と呼ばれ、それが正義だと微笑む彼女に。

いつだって、僕は救われてきた。生きる希望を失わない人達に、救いを差し伸べて来た。


そんな彼女が、

なんで。

こんな目に合わなくちゃいけない?

魔法少女だから?
そんな理由で?

そんな……ふざけた理由で?

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 09:07:34.75 ID:erK/GDpP0


(#;゚;;-゚) 「いいんよ。私はこれで」

(;・∀・)「いいもくそもあるか! 」



真面目に生きてきた者が馬鹿を見る。

         そんな人達を利用する奴らが甘い蜜を吸う。


(#゚;;-゚) 「ありがと。楽しかったで? あんたと一緒で」

(;・∀・)「おい、待て! 待てよ! なに最期みたいに言ってんだ! これで終わりじゃないだろ!?」


彼女は、僕と出会い言った。
「たくさんの人を守りたくて、魔法少女になった」なんて。

だったらまだ、終わりじゃない。まだまだ救いを待ってる人はいっぱいいる。
僕がかつてそうだったように。

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 09:09:45.16 ID:erK/GDpP0
(#゚;;-゚) 「誰かを救うことも、守ることも出来なかった私だけど、それでも自分の正義を守れて誇りに思う」

(;・∀・)「何言ってんだよ! 僕を守ってくれただろ!? 救って、くれただろ!?
      これで終わりじゃないだろ! これからも正義を振り続けるんだろ!?」

(# ;;- ) 「もう、無理なんよ。 魔法少女ずっとやってるからわかるんよ。
      魔力は無限じゃないし、回復だって普通の体力より遅い。私はそもそもそんなに向いてるわけじゃない。
      そんな体でずっとやってて、今日でもうお終い。ガス欠なんよ」

(;・∀・)「でぃ……」

(#^;;-^) 「だから、私は今日ここで終わり。でも、それでよかったんよ。
       私は死ねない身体。滅びない器。魂。そんな状態で生き続ける無限連鎖からやっと開放される。
       長い間待ってたこの苦しみから、やっと」

(  ∀ )「それでも僕は……嫌なんだよ……」

(#゚;;-゚) 「聞き分けの悪い人やねえ。正義ってのは己が持ってればそれでいいんよ。
     それを最期まで貫き通せたんだから、私はもう満足なんよ。
     こんな私でも、最期まで愛してくれる人がいて……ああ、もう限界か」

(;・∀・)「限界って、え、でぃ」

(#゚;;- ) 「まあ……そのまんまの意味やね。魔力が肉体の修正に追いつかなくなってる。
      そろそろ魔力の器になってる肉体が崩壊して、消滅するよ」

(;・∀・)「……」

(# ;;- ) 「なんよ。最期くらい景気よく終われんのあんたは。そんな湿っぽい男ちゃうやろ?
      それに、まだもうちょっとだけ、最後に一言ぐらい言える時間は、ある」

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 09:13:00.88 ID:erK/GDpP0

彼女の身体から光があふれ出す。とはいえ、それは神々しいような白い光ではなく、禍々しい黒い光。
魔法少女になった者が背負う宿命。魔力が枯渇しない限り死ぬことすら許されないそんな運命。
その人間の才能によって差はあるが、人間の寿命より遥かに長い。

そんな長い長い人生の終わり。終点に辿りつこうとしている彼女に僕は何て声をかければいい。
何もいえない。何も伝えられない。なんていえばいい。

(# ;;- ) 「しみったれた面しなさんなよ」

(  ∀ )「だって、さぁ……!」

格好悪い姿を見せたくない。溢れてくる涙を堪えることに必死だった。
嫌だ。これで最後なんて。もっとずっと一緒にいたかった。いられると思っていた。
僕が補助して、彼女が闘う。闘いが終わったら、ゆっくりお茶でも飲んで。

僕がジジィになった時でもそうしていこう。そう思っていた。

だが現実はどうだ。魔法少女ってのは、どうなる。
こうなるんだ。肉体的ダメージは魔力で補われる。それも勝手に。銃器であれば何百発と撃たれても耐えられるだろう。
そんな痛みを受けても生きることを強制される彼女が、ようやく死ねると言ってるんだ。

そんな彼女に生きていてほしいと願うのは、間違いなのか。
それが、僕にとっての正義だとしても、それは間違いなのか。

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 09:15:10.87 ID:erK/GDpP0

(# ;;ー ) 「ま、あんたが、どう、思おう、と、勝手、さ」

(  ∀ )「でぃ……!! 僕は、僕は君に……!!」

(# ;;ー )「なによ。もう耳が遠いんよ。声が、聞こえ、ないんよ。
     き、っと、これが、最、後の言葉、になる、かな。
     聞きたく、なか、ったら、きかんでも、ええ、よ?」

もう聞こえない。
もう、伝えられない。

生きていて欲しいなんて夢物語じゃなくて。
君といられて楽しかったと。ありがとうと。お疲れ様と。
君がやりたいようにしてきて、僕はそれに付き合えてよかったと。

最後まで、届けられなかった。

そんな彼女が口を開き、一言ずつ、僕に伝えていく。

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 09:18:18.69 ID:erK/GDpP0

「私は」
         「今日まで」
「ずっと」

「楽しかった」
         「ありがとう」
「頑張って」
         「悩まないで」


「あんたは」
         「あんたの」

「やりたい」 

「ように、

すればいい」

「こども、すきだった、のに
 
 ごめん、ね」

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 09:21:21.03 ID:erK/GDpP0

暗転。

世の中って奴は実に上手く出来ている。食物連鎖。弱肉強食。
バランスよく人は人に食われる。利用する側、される側。
実に利己的に生きた奴がいい目を見る。正義感を振りかざした者は大目玉を食らう。

そんなケースが多い。前者はローリスクハイリターン。後者はその逆。
それでも見返りを求めず、ただひたすらに己が正義を振りかざす。

これが僕の妻。
世界で唯一、愛する。信じる。添い遂げられる。そんな生涯に一人だけのパートナー。

その妻を守れなかった。助けて、やれなかった。最後まで救えなかった。
挙句の果てに、守られた。助けられた。逆に僕が、救われた。

それが僕の妻。
最後にすら己が正義を振り下ろす。

「ぅぅおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉおおああああああおおおお!!!」

絞り出される。何もかも。
こんな姿に。正しいことを正しいと、ひたすらに信じた末路がこの結果に。
四肢は辛うじて繋がれ、痛みにもがき、通常ショック死という形で救われる。

だが、
魔法少女にそんな概念はない。意識を飛ばすことすら許されず、耐え難い痛みに襲われ、絶命する。
魔力が傷の回復を補え切れなくなり、命は途絶える。

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 09:23:47.17 ID:erK/GDpP0

それでも、彼女は最後に、誰に向かって、なんていった。どんな顔をした。表情は。目は、誰を見ていた。
僕を見ていた。僕に向いていた。僕に言った。笑ってた。笑顔だった。僕を、見て。

楽しかった。ありがとう。頑張って。悩まないで。
あんたは、あんたのやりたいようにすればいい。

苦痛にゆがみきってしまいそうな顔を、ひたすらに堪え、
顔の筋肉が引きつり、痙攣しているそんな状態でも、笑顔を作り僕に伝えた。

そんな優しい言葉を僕に向けた。
子供が好きだったのに、ごめんねと。彼女は静かに言って。

事切れた。光となり、粒子となり、消えていった。

正義を主張する魔法少女として生きた、でぃの最期。
人として生きることを許されず、死んでからも人として扱われない。
肉体を残すことすら叶わない。そんな、絶望の集合体。

素直シュール。

これがお前の望んだ結末か。それが、お前の叶えたい願いか。
利用対象を作って切ってを繰り返す組織の上に立つ。それがお前の野心か。
上に立つお前が、選んだ答えなのか。

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 09:25:54.62 ID:erK/GDpP0


lw´‐ _‐ノv「モララー……」

(  ∀ )「これで、よかったのか。お前は」

lw´‐ _‐ノv「……すまない」

(  ∀ )「これが魔法少女になったものの因果か」

lw´‐ _‐ノv「……反論、しない」

(  ∀ )「そうか……。訳は、あるんだろ?」

lw´‐ _‐ノv「……それも、いえない」

(  ∀ )「上か。口止め、だな」

lw´‐ _‐ノv「すまない。それも、いえないんだ」

(  ∀ )「いい。わかった。わかったさ。お前が上を目指しているのは知っている。
      僕はそれを否定したこともない。だからこれからも従うさ。僕の上司は君だけだからね」

lw´‐ _‐ノv「モララー……でぃさんは、」

(  ∀ )「明日からも通常通り店は開ける。それでいいだろう。
      だから頼む。帰ってくれ。しばらく、一人にしてくれ」

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 09:28:13.82 ID:erK/GDpP0

笑えなかった。とてもじゃないが、そんな彼女を見て僕は憎悪しか生まれてこなかった。雷を操る彼女に勝てるとは毛頭思ってもいないが、それでもこのままいたら僕は自分が保てなくなりそうだった。
殺してしまいたい。ぐちゃぐちゃいにしてしまいたい。そんな濁った感情しか出てこないんだ。

彼女に罪はないのだろう。長年付き合うことで、僕は薄々そう感じていた。
恐らくは上の命令か、何かしら事情はあるのだろう。

それでも、僕は納得など出来なかった。許せなかった。
そんなある日、僕は魔法少女が一つの組織だけじゃないと知る。
シュール側の魔法少女とは別の組織。どちらかといえば、対立していた、団体。

だが出会うことは叶わなかった。その上層部は勿論、配下すらも。
どれだけ探りを入れようが、見つからなかった。それもそうだろう。魔法少女自体、裏社会の人間なんだ。

('A`)「てんちょー仕事してくださいよー」

( ・∀・)「ははは。明日から本気を出すさ」

('A`)「今日から本気出さない時点で三日後もあんたは本気を出さない」

( ・∀・)「やだぁどっくんのいけずう」

('A`)「おでんの汁っておいしいですよねーほれー」

( ・∀・)「あつ、ちょwwあつwwwww」

人と話すことで、気持ちを誤魔化した。復讐心を隠し通した。
冗談をぶつけあうことで、ひたすらに自分を騙し続けた。
だが、そんな我慢をひたすらに強い続けたら、人間、限界などすぐに来てしまうものだ。

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 09:30:35.69 ID:erK/GDpP0

案の定、その時は来た。

僕は、この会社のコネを使い、あらゆる人脈を使い、
魔法用具を集め、重火器、防具を取り寄せた。
そこから出るお金は経費で落とせばバレる。途方もない額だ。

だが、それでも集めた。ひたすらに資金を。己が正義を信じて。
もし救えないのだとしたら、僕が救ってみせる。
裏社会の顔も、僕が暴く。そして、それを引き裂いてみせる。

利用される側とされる側。そんなふざけた上下関係、崩してやる。
魔法少女がいつだって利用されるこんな狂った世界、壊してやる。

( ^ω^)「……地球なんて滅びればいいのに」

ξ゚听)ξ「メラ!」

(^ω^ )「はて、ほのかに雑誌の焦げるかほりが」

ξ゚听)ξ「ギラ!」

ある時、魔法少女が来た。バイトの内藤君が対応していたが、僕も面白半分に突っかかってみた。
だが、駄目だった。理性を抑えるのに必死だった。言葉を誤魔化す方面に回すのに精一杯だった。

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 09:34:04.42 ID:erK/GDpP0

正直魔法であしらわれて、よかったと思う。
だって、あの魔法少女は、シュールが所属している組織専用の武装をしていたんだ。

スクール水着。

それを魔法少女の制服として採用しているのはあの組織だけなんだ。
腸が煮え繰り返りそうだった。必要悪の組織。魔法少女を、人として扱う気がない組織。

そしてそれに利用されたでぃ。取り残された、僕。
だが、彼女に罪はあるのか。ない。今のところ害もない。いや、一応書籍焼かれてるけれども。
命に差し障るような過激な行動はとってこない。一応火で焼かれたけど。

許容範囲として許してきた。

だけど、僕はその時の映像が目に焼きついてしまった。
抑えられなくなる衝動が、ひたすらに打ち付けてきた。
どうすれば収まる。この気持ちは、昂ぶりは。

思えば思うほど、脈拍は激しさを増す。血が、のぼっていく。
気がつけば僕は、内藤君と話をしていた。魔法少女の、話を。

その因果関係の話を。

そしたら、すんなりと彼は信じてくれた。都合がよかったのだ。
実際に魔法を使っている少女を前にしたのだから。
だから協力を要請した。もし僕が闘うときになったら、一緒に付き合って欲しい、と。

なら、彼は笑ってくれた。決して馬鹿にせず、一度だけ頷いてから、僕を見て、

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 09:36:13.35 ID:erK/GDpP0

( ^ω^)「いいですお。その代わり、自給。弾んでくださいお?」

もう一度にやりと笑った。
申し訳なさ半分で、僕も釣られて笑う。
嬉しかったのだ。こんな僕のたわごとに付き合ってくれる人も、いるのだと。

それから、バイトのドクオ君が入院したと話を聞いた。
理由はよくわからないが、思いっきり暴行を受けたとのことだった。
だが、原因がさっぱりわからないままに全治一ヶ月の怪我を負わされて、
その本人がその場に居合わせるという状況らしく、不審に思い僕もコネを使い入院した。

そしたら、彼は、シュールと別の組織に入っていたのだ。
魔法による怪我ではないというのが面白いところだったが。
何より、魔法を受けても怪我をしているあたり、まだ契約はしていないようで、安心した。

そんなこんなで月日は流れていく。
いつものように。歩くような、速さで。

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 09:39:07.41 ID:erK/GDpP0

僕はどこでも魔力が揺れ動いているのがわかるように、常に腕時計をつけている。
魔力係数によって針が変動して、振動するという過去のなごりを。でぃの、形見を。
そんな計測具が、思いっきりに揺れる。思わず内藤君に声をかけた。助けが、欲しいと。
(;^ω^)「どうしたんですお!? 店長!?」

きっと、酷い顔をしていたのだろう。
それは憎悪から来るものなのか、それとも不安から来るものなのか。
いずれにせよ、僕は酷く焦っていた。何かに取り憑かれたかのように。

装備を十二分に整える。出来ることなら起こり得ない万が一に備えて。

本当に、酷い顔をしていたのだろう。
内藤君は不安そうに、それでも決して意思は曲げないという強い口調で僕に言う。

( ^ω^)「モララー店長」

( ・∀・)「なんだい」

( ^ω^)「僕は、協力すると言いましたお。でも、これだけ約束をして欲しいんですお」

僕は内藤君の言葉を待った。言うべきか、言わざるべきか。
過去を知り、それでも口を挟んでもいいのか。そんな彼なりの気遣い。

それでも、一度伝えると決意したのだ。歯止めは利かないのだろう。


55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 09:41:35.50 ID:erK/GDpP0

( ^ω^)「人殺しは、したくないんですお。
       例えば魔法少女が襲ってきても、僕は、そんな悲しいことだけは」

少しだけ、困った。
場合によらずとも、命を奪うな! と強く命令されても、衝動を抑えきれる自信があまりになかったのだ。
例えば、シュールが目の前に現れて大暴れしたとしよう。そしたら僕はどうする。

……答えは、出ている。

すまない内藤君。

( ・∀・)「ああ。大丈夫だよ。約束しよう」

僕は悪い嘘つきだ。
だけど、内藤君もそれで安心したのか、表情は以前変わりなく、不安の色を隠せていないが、
「行こうか」と伝えると、彼は首を縦に振る。

そうさして遠くない反応を辿り、二人で現場へと駆けてみれば、
いつも通り、嫌な予感というのは的中する。

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 09:44:40.57 ID:erK/GDpP0


('A`)

彼が、いた。
例の魔法少女も、そこにはいた。


その彼女は何をした。

ドクオ君に向けて、
銃を撃った。

ドクオ君に向けて、
魔法を放った。

思わず止めに入ろうとした僕をさえぎって、先に飛び出したのは内藤君だった。
僕の気持ちを察してか、有無も言わさずに飛び込んでいく。

だが話を聞いていけばいくほど、僕の中で何かが狂っていく。
それでも僕が焦っていることや、怒り狂っていることを悟られないために、
あくまでも気楽な店長を着飾る為に、トイレの上から飛び降りて。

本当に骨が折れていたのなら、もっと別の手段を取っていただろうけど、
そこまでは流石に気が回らなかった。


57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 09:47:33.77 ID:erK/GDpP0

それからいつどうなろうとも、彼らを守れるように僕は付き添った。
それが僕にとっての正義だったから。でぃがそうしてきたように、僕もそうしていくと決めたように。
それでも、魔法少女に罪はない。そう思ったから僕は急所は狙わなかった。絶対に。

だが、豹変した。
害悪でもないレベルだった彼女は、人としてまだ自我を保てていた魔法少女は。
どこかに消えていった。暴走を始めだした。

内藤君には事前に、僕は誰も殺さないと告げていた。
だが、実際は駄目だった。暴走した魔法少女と何も変わらない。
僕もまた、意識が飛び、気がつけば約束を破っていた。

だが、魔法少女というのは、


そんな簡単に死ねる生き物じゃないんだ。




59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 09:50:37.62 ID:erK/GDpP0

      *        *        *       

そんな感じの午後の公園。血溜りの出来た広場。
風穴を開けられた少女。魔法。そんな日常。

ただただ横たわった、項垂れた目。

('A`)「モララー、さん」

( ・∀・)「ドクオ君……」

('A`)「どうして、なんすか。どうして、こんな結末なんすか」

( ・∀・)「君の知らない事情が、そこにあったんだよ」

('A`)「事情って……」

( ・∀・)「理由はもうわかる。そこを見てごらん。そこの魔法少女を」

何を言ってるんだ。その魔法少女はさっきから動かないじゃないか。
何度も確認した。勿論触ることはないが、それでも急所に、頭のど真ん中に風穴が開いているんだ。
そんな状態で、何を見るっていうんだ。

ふざけるのも大概にしろ。そう言おうとした。事実、俺は口を開いたんだ。
なのに、言葉は出なかった。届けられることはなかった。

なにせ、その撃たれた魔法少女は、
項垂れていたはずの目は、正常に前を見ており、瞳には光が戻っていて、
あいていたはずの風穴は綺麗さっぱりなくなっていた。

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 09:52:49.44 ID:erK/GDpP0

ξ゚听)ξ「……あれ」

ξ゚听)ξ「私、なんでここに……」


意味が、わからなかった。

('A`)「どういうことだよ……なんだってんだよ……」

頭がぐちゃぐちゃにかき混ぜられる。
思考が、追いつかない。何がどうなっているのか、さっぱり理解出来ない。
モララーさんと一緒に来た内藤なら何かわかるかもと思い、視線を向けるが、俺と同じような顔をしていた。
 
そして眉間、所謂急所を撃たれた魔法少女は何故か、傷跡一つ残さず起き上がっていた。
清楚な雰囲気。さっきまで死んでいたことなど感じさせない。何より、その子は今起き上がって一言呟いたのだ。
見間違いじゃない。内藤の反応がそれを物語っている。何故、生きているんだと。

本来生きていてよかったとも思える場面だが、何故だろう。
胸騒ぎが収まらない。

訳が、わからない。

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 09:54:59.52 ID:erK/GDpP0

( ・∀・)「魔法少女に、通常の攻撃は通じない。魔法の攻撃が通じても、通常魔力という壁に阻まれている。
      だから彼女達は魔力が尽きるまで生き続ける。
      そういう運命の元で、彼女達は生きているんだよ。死ぬことすら許されない体で、ね」

('A`)「なに、言ってんだよ……。だって俺、怪我してるぞ? この前だって、入院したんだぞ?」

( ・∀・)「それは、君が正式に契約をしていないからだろう。属性を持たないのがいい証拠だ」

('A`)「正式に、契約……」

( ・∀・)「なんだ。君の上はそんなことも教えてなかったのか」

('A`)「なんだよ。正式に契約ってなんだよ。魔法少女って、なんなんだよ」

( ・∀・)「生きることを否定され、死ぬことを拒まれる。
      死ぬためには闘うしか道がないのに、恐ろしくその終着点に辿り着くのは厳しい。
      そんな運命を背負うことになる悲しい契約者さ」

甘く見まくっていた魔法少女の実態を、俺は知った。
それも、無関係だと思っていた人間から。だが、直接的な関わりを持っている人間から

きっとこの言葉には嘘偽りはないだろう。この人は、そういう人だ。

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 09:57:15.70 ID:erK/GDpP0

「モララー。それ以上の説明は不要だ」

「あとは、俺たちが説明する」

会話が一段落ついた瞬間、
間髪入れずに割り込んでくる聞きなれた声と、聞き覚えのある声。

( ・∀・)「はは、都合のいい時にだけ現れてくるね君たちは」

初めて見せる、店長が悪態を吐く姿。嫌悪感を剥き出しに接する、そんな姿勢。
その対象の人達。

lw´‐ _‐ノv「……久方ぶりだな、モララー」

(´・ω・`)「いつぞやは、世話になったな」

訳有りの対立組織の社長、シュール。
そして味方でありながら、素性が掴めない男、ショボン。
いずれも、魔法少女だ。……男って説明しちゃったけどな。

冗談の言える空気でもないし、そんな気分にも、ならない。
だから傍観を決め込んだ。静かに聞きに回る。

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 09:59:44.91 ID:erK/GDpP0

( ・∀・)「お久しゅう。シューにショボンさん。病院ではこちらこそ。
      だけど、二人とも説明するもなにも、これ以上何をどう説明するっていうんだい?
      僕はもう全て伝えて終わったあとだけど?」

(´・ω・`)「違うんだ。モララー。
      俺はでぃさんを知っているし、魔法少女というのが一体どういうものなのかも知っている」

( ・∀・)「でぃを、知ってる……だって?」

(´・ω・`)「ああ。知っている。あの優秀な魔法少女を忘れるわけもない。
     なあ、シュール」

lw´‐ _‐ノv「……ああ。大事な、大切な人だった」

( ・∀・)「君たちは何を言ってるんだ。僕はショボンさんを知ったのはついこの間の病院だし、
      ましてやシュー。君は利用しただけじゃないのか? それなのに一体今更何を」

lw´‐ _‐ノv「でぃさんは、魔法少女が魔法少女である理由、その存在を作り出した張本人と闘ったんだ。
       このふざけた因果をぶち壊すために。
       私の知らないところで、勝手に。独断専行して。……知らないところで!」

( ・∀・)「シュー、君は一体、なにを……」

lw´‐ _‐ノv「モララー。君の知らない事情。これは上からも止められている話。
      だけど、これは、君が知らなくてはいけない情報。魔法少女の存在理由」

俺は一言も聞き漏らさないように集中していた。
この話は、俺にも関係している。クーにも。ハインさんにも。相手側の、魔法少女達にも。

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 10:03:34.83 ID:erK/GDpP0

lw´‐ _‐ノv「私たちは、『最強』と闘うために魔法少女として契約させられた存在。
       生きる理由はただ闘うため。そのふざけた設定を作り出した男と。
       そしてそれが守れなければ世界を、壊していくと告げた同じ男と」

lw´‐ _‐ノv「彼女は、でぃは。そいつが来ていると告げたら一人で挑んだんだ。
       その結果、彼女は……」

(  ∀ )「なん、だよ。それ……。
      じゃあ、でぃがしてきたことは……一体……」

lw´‐ _‐ノv「彼女がしてきたことが無駄だなんて私は一度足りとでも思ったことなんてない。
       闘いの運命を受け入れて、それでも正義を貫く姿勢を否定なんて出来るものか。
       モララー。君がどれだけ現実から逃げようと、現実は君を見逃してはくれないからな」

何も言い返さないモララーさん。俺は、何も言わない。
この会話の重さを、いくら俺が馬鹿でも流石にわかってしまう。
俺なんかが、割り込んでいいような話じゃない。

lw´‐ _‐ノv「そして、彼女を容易く奪ったそいつはまた近いうちにやってくる。
       あの時奴が来たのはもう時期に期限が来ると伝えるためだ。忘れていないだろう、と。
       だから私は来るべき時のために精鋭を集めた。奴が定めた期限の間に」

(´・ω・`)「お互い、数百年以上もすれ違うとは思わなかったがな」

lw´‐ _‐ノv「全くだな。ショボンに事情を説明しなければ今こうしていることもないだろうな」

(´・ω・`)「違いないな。どこまでもすれ違っていた」

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 10:06:46.39 ID:erK/GDpP0

(  ∀ )「つまり、なにかい。シュー。君は魔法少女を利用していなかったというわけでもなく、
      でぃは、でぃ自身の正義を貫いて、
      本当に誰にも騙されず、揺らされることなく生き抜いて、果てたっていうのかい」

lw´‐ _‐ノv「……そういうことになる。私は、君にそう伝えたかった。
       だが、あの時君は言葉を聞いてなど、くれなかったからね」

( っ∀ )「そう、だったのか……でぃは、自分の為に正義を貫けたのだね……」

lw´‐ _‐ノv「それは、約束しよう」

(  ∀ )「ぉぉおおおおおおおおお……!!!」

かみ殺した声は、響いていく。いくら押し殺していようとも、痛いほどに俺にも伝わっていく。
一体この人にどんな過去があったのか。一体でぃさんはどういう人だったのか。そんなことはわからない。
それでも、想像だにしない何かが、この人達の間にはあったのだろう。

今は、それでいいだろう。
きっと、それがいいんだろう。

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 10:09:31.95 ID:erK/GDpP0

lw´‐ _‐ノv「第三勢力。危惧するほどではなかったよ」

(´・ω・`)「そう、だな。戦わずに終われたのだしな。
     ……だが、なんだ。この胸のざわめきは。杞憂、ならいいが」

lw´‐ _‐ノv「何言ってるんだ。魔力は感じないし、問題ないだろう。
       さ、ツン。帰るよ」

ξ;゚听)ξ「え、あ、うん……」

何も状況が飲み込めてない魔法少女。
だけど、そのほうがいいかもしれない。何も知らないほうが、幸せかもしれない。
そんなことを考えてしまう。

ほどなくして、誰かが近づいてくるのを感じる。
その方向に振り向いて見れば、そこにはモララーさんがいた。

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/13(月) 10:12:07.22 ID:erK/GDpP0

( ・∀・)「迷惑を、かけたね。
      動揺させてしまったろう。すまないドクオ君。内藤君」

( ^ω^)「今に始まったことじゃないですお店長」

('A`)「大丈夫なら、いいんすよ」

( ・∀・)「はは、もう大丈夫さ。この通り、僕はへい」


――――モララーさんが最後まで言葉を発することはなかった。

その代わりに、血が飛び散った。綺麗に描かれる赤道は、鮮やかに咲き乱れた。
血線が、地面に引かれていく。乱暴なまでに華麗に。美麗に。

その状況に対して俺の理解は追いつかない。
俺の目は、ただ見開いたまま。何も出来ず、何も言うことが出来ず、呆然と立ち尽くす。

倒れていく、その男の姿を瞳の奥に焼き付けながら。



第八話
 おわり


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