- 1 名前: ◆5rua49HN2. 投稿日:2012/03/02(金) 22:57:57 ID:/qhQhP9c0
〜 ドクオの庵 〜
( ^ω^)「──という事があったんですお」
('A`)「うん」
( ^ω^)「……」
('A`)「……」
( ^ω^)「……それだけですかお?」
('A`)つ「うん? まあ、そうだな」(^皿^∪)
∩('A`)∩「俺からは特にない」(∪^ω^)
第十三話 静寂破るは叩扉の音
- 2 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/02(金) 22:59:35 ID:/qhQhP9c0
( ^ω^)「何ですかお、その素っ気無さは?」
僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。
('A`)「何ですかと言われてもだな、俺がそんな信心深いように見えるか?」
彼の名前はドクオさん。
巷では賢者と称される魔法使いで、僕の師匠に当たるが見た目は残念な人だ。
(∪^ω^)「わんわんお」
この子の名前はわんわんお。
僕のペットというか家族で、見た目は子犬だが実は元竜だ。
( ^ω^)「そりゃ、ドクオさんは神に見放された容姿を持って生まれてらっしゃるけども……」
('A`)「うん、もう少しオブラートに包んで言おうな」
( ^ω^)「でも、結界に関してはスペシャリストですお?」
( ^ω^)「教会の結界がなくなってる事に気付かなかったんですかお?」
- 3 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/02(金) 23:01:30 ID:/qhQhP9c0
僕は今、わんわんおと共にドクオさんの庵を訪ねていた。
先日の教会の件の話をするためだ。
しかしながらドクオさんの反応は極めて淡白なものだった。
本人が言う様に、教会とは関わりのない人だが、
結界に関しては本職なんだからもう少し興味を示してくれてもいいと思うのに。
('A`)「といってもなあ……、流石に結界の有る無しはある程度近付かねえとわかんねえし」
('A`)「あそこにあったのはごく普通の教会の結界だしで、わざわざ興味を持つほどでもなかったからなあ」
( ^ω^)「それはそうかもしれませんけど……」
一応、ドクオさんが言っている事は筋は通っているのだが、何だか素っ気無さ過ぎる気がする。
教会に興味はなくても、教会の結界の術式には興味を持ってくれると思っていたのだが、食い付きは悪い。
( ^ω^)「結界の術式は普通でしたけど、隠すのに教会の極秘事項な魔法使ってましたお?」
('A`)「ああ、あれだろ、柱に文字が浮かぶやつ」
( ^ω^)「お? 知ってたんですかお?」
- 4 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/02(金) 23:03:00 ID:/qhQhP9c0
('A`)「まあな。一応、賢者と言われてるぐらいだからな」
ヒッキーさんは教会の極秘事項と言ってたのだが、それが使われている教会は各地にあり、
それなりの知識のある魔法使いなら知ってる人もいるらしい。
( ^ω^)「僕は初めて知りましたお」
('A`)「誰にでも気安く教えるような話でもないしな」
弟子の僕にぐらい教えてくれてもいいと思うのだが、ドクオさんが言わんとせん事もわかる。
一介の魔法使いが勝手に教会の結界を書き換える事はないだろうし、
もし書き換えの依頼があった場合でも、その際は教会の人間が付くだろうから知らなくても困らないだろう。
しかしながら、何となく腹立たしいような寂しいような気持ちになったので、わんわんおを放り投げておいた。
ガブリ
( ^ω^)ノ彡 (∪^皿^){゚A゚;) チョッ!?
- 6 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/02(金) 23:04:21 ID:/qhQhP9c0
(;'A`)ヾ「お前なあ……」
( ^ω^)「それで、ドクオさんはどう思いますかお?」
つ∪^ω^)
恨みがましい目を向けてくるドクオさんの視線をスルーし、今回の事件に関するドクオさんの見解を聞く。
精霊の件は二次産物の様なものだが、結界が解除されていたのは確実に人為的な何かによって起こされた事件だ。
('A`)「知らん。物盗りか何かだろ」
( ^ω^)「何で教会なんかに泥棒入るんですかお。それに、中は全然荒らされてなかったんですお」
他の町の教会は知らないが、少なくともヴィップの町の教会は作りは質素だし、高価な物は何も見当たらない。
前の司祭様も私服を肥やすような人じゃなかったし、わざわざ教会に盗みに入る理由が思い付かない。
勿論、僕が知らない何かがあそこにあった可能性もあるのだが。
そもそも、何かが盗られたのかどうかもわかっていないのが現状だ。
ヒッキーさんは以前あそこに何があったのかは把握してないし、一見した所、教会の運営に必要な物はちゃんとあった。
('A`)「さてね。どこぞやの魔法使い見習いが結界解除の練習でもしたんじゃねえの?」
( ^ω^)「その理由、いくらなんでも適当過ぎませんかお?」
- 7 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/02(金) 23:05:50 ID:/qhQhP9c0
明らかにこの話に気乗りがしていないドクオさん。
探究心を忘れた魔法使いなんて、薬草を売ってない道具屋みたいなものだ。
(;'A`)「その喩えがよくわからんが、俺に言わせれば逆にお前は首を突っ込み過ぎだ」
(;^ω^)「僕は別に好きで首突っ込んでるわけじゃないですお?」
僕としては依頼を受けただけで、その途中で色々な事に遭遇しているだけなのだ。
僕が何かやらかしたわけではない。
('A`)「とにかく、お前は本業をもっとがんばれよ」
(;^ω^)「そ、そっちもちゃんとがんばってますお?」
('A`)「結界の術式を一部消すくらい、誰だって出来るんだ。今の状況でいくら考えた所で真相はわからん」
(;^ω^)「それはそうですけども……」
('A`)「……この件は俺が調べておくから、お前は無闇に動き回るな。いいな?」
(;^ω^)「……ドクオさんが調べてくれるのなら、お任せしますお」
僕は完全には納得いってないものの、ドクオさんが関わってくれるのならと引き下がる事にした。
現状、漠然とし過ぎていて、僕では調査の方向を決め切れずにいたのでその方がいいのだろう。
- 8 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/02(金) 23:07:20 ID:/qhQhP9c0
( ^ω^)「じゃあ、もう1つの件ですけど」
('A`)「まだ何かあるのかよ……」
もう1つとは言ったが、先の教会の件に関連する事だ。
あの時あの場にいた女性、デレについての話である。
('A`)「それこそ全くわからんだろ」
( ^ω^)「あまりにもいいタイミングで来ましたし、あの子、何かしら知ってると思うんですおね」
あの時はしつこく詮索するのは諦めたが、彼女の素性や目的はやはり気になる。
未知の魔法を扱い、恐らくその実力も高いと思われる人だ。
ドクオさんなら少しは心当たりもあるのではなかろうか。
('A`)「旅の僧侶と名乗ったんだろ? 魔法使いならまだしも、教会関係にはあまり顔はきかねえよ」
( ^ω^)「おまけになかなかの美人でしたし、まかり間違ってもドクオさんの知り合いではないという事ですおね」
(;'A`)「うん、確かに知り合いじゃないんだが、そういう言い方する必要はないと思う」
ひとまずその件も記憶に止めておくとドクオさんが言うので、僕はこの辺でドクオさんの庵を辞する事にした。
- 11 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/02(金) 23:08:38 ID:/qhQhP9c0
( ^ω^)「じゃあ、今日はもう帰りますお。お騒がせしましたお」
('A`)「おう、気を付けて帰れよ」
(∪^ω^)「わんわんお」
('A`)つ「お前はもう少し俺に懐けよ」
(∪^皿^)
(;'A`)「うん、悪かった」
僕はドクオさんを威嚇するわんわんおを抱えて庵を後にした。
どうもドクオさんはここ最近の異変に対して楽観的というか、無関心に見えるのが気になるが、
実際に何かヴィップの町に危機が迫れば動いてはくれると信じている。
( ^ω^)「けど、竜騒動の時は気にしてたみたいだったのに、どうしてなのかおね?」
(∪^ω^)「わんおー?」
逆に考えれば、ドクオさんが無関心な内は大した危険はないのかもしれない。
それならばやはりこれは僕の杞憂なのだろうか。
- 12 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/02(金) 23:09:52 ID:/qhQhP9c0
( ^ω^)「……あれ? そういえば僕、結界が一部消されてたって話、ドクオさんにしたっけかお?」
消されたであっているのだが、僕は書き換えられたと説明した気もする。
どっちだったか思い出せないが、大差ないし多分僕が消されたと言ったのだろう。
( ^ω^)「まあいいお。さっさと帰って新商品の開発でもするお」
(∪^ω^)「わんおわんお!」
僕は天気もいいのでわんわんおの運動がてら、走ってヴィップの町に戻る事にした。
前は数時間の歩きでバテていたわんわんおだが、日課の僕のランニングに付き合う内に、
それなりの体力は付いた様だ。
正確には、取り戻したと言った方が正しいのかもしれないが。
それでも、時々ペース配分が出来なくてバテたりするのは相変わらずである。
( ^ω^)「よし、ペース上げるお! 付いて来れるかお?」
(∪*^ω^)「わんおわんお!」
僕達は穏やかな陽射しの下、走ったり休憩したりしながらヴィップの町へ帰り着いた。
- 13 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/02(金) 23:10:39 ID:/qhQhP9c0
〜 魔法道具屋サンライズ 数日後 〜
( ^ω^)「これをこうして……そしてこう……」
川 ゚ -゚)つ⊂(^ω^∪)
( ^ω^)「で、ここをこうして……」
⊂川 ゚ -゚) (^ω^∪)つ
( ^ω^)「最後にここをこうして……完成だお!」
∩川 ゚ -゚)∩∩(^ω^∪)∩
( ^ω^)「……何やってんだお、バイト」
川 ゚ -゚)「仕事」
つ∪^ω^)
( ^ω^)「いや、明らかにサボってただろ?」
- 14 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/02(金) 23:11:22 ID:/qhQhP9c0
川 ゚ -゚)「失敬な。では見せてやろう。私の仕事の成果を」
「お手」 「わんお!」
川 ゚ -゚)つ⊂(^ω^∪)
「おかわり」「わんお!」
⊂川 ゚ -゚) (^ω^∪)つ
∩川 ゚ -゚)∩「ちん( ^ω^)「それ以上やらんでよろしい」
これといって用事も何もない普通の日、僕はクーとわんわんおと共にサンライズにいた。
本来、僕が店にいる時はクーに店番を頼む必要もないのだが、今日は特別である。
ヒッキーさんから聖水を仕入れる事が出来たので、僕はその商品化に忙しいのだ。
しかしながらクーはいかにも暇そうにして全く仕事をしている様子はない。
川 ゚ -゚)「いや、客が来ないんだし仕事のしようもないだろ?」
( ^ω^)「掃除したり片付けたり商品の埃払ったり色々あるお?」
川 ゚ -゚)「それ、全部掃除だろ。掃除しかやる事ないのか」
- 15 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/02(金) 23:12:36 ID:/qhQhP9c0
( ^ω^)「だからって、わんわんおに芸を仕込むのは仕事じゃねえお」
川 ゚ -゚)「招き犬の愛想が良くなったら更に集客アップが望めるかもしれないだろ?」
(∪^ω^)「わんわんお!」
( ^ω^)「ああ、もういいお。それよりこれ、目立つとこに並べてくれお」
川 ゚ -゚)つ[]「これが聖水か。ただの水にしか見えんな」
無造作に1本の瓶を掴み上げ、まじまじと中を覗くクー。
商品はもう少し丁寧に扱うようにして欲しいものだ。
( ^ω^)「見た目も匂いも味も普通の水と変わらんお。つーか、クーは聖水知ってるんだお?」
川 ゚ -゚)「儀式用のはな。こんな小瓶に詰めた物を間近で見た事はなかったからな」
川 ゚ -゚)「というか、聖水は飲めるのか?」
( ^ω^)「浄化用のは飲めるお。攻撃用に清めの力を強めた物はヤバいかもしないけど」
- 16 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/02(金) 23:13:28 ID:/qhQhP9c0
クーは興味深げに頷きながら、聖水を棚に並べて行く。
用途に分けて何種類か違う瓶に詰めてあるので、値札をいくつか書いてクーに渡す。
川 ゚ -゚)「意外と安いんだな」
( ^ω^)「いくら便利でも、あんまり高いと消耗品は売れないお」
実際、高い道具は使う側に躊躇いが生まれる事があると前に冒険者の人から聞いた事がある。
その僅かな逡巡が生死を分けるかもしれないので、出来れば気軽に使って欲しいものだとは思う。
川 ゚ -゚)「その辺は道具屋が心配する話じゃないんじゃないか? 冒険者の自己責任の範囲だろ」
( ^ω^)「お客さんあってのお店だお」
( ^ω^)「なるべくならお安くお届けして、気軽に使ってまた買ってくれるのが望ましいお」
川 ゚ -゚)「高いもの買わせて、気軽に使ってもらって、また売って、私の時給を上げるのが理想的じゃないか」
( ^ω^)「お前、どうしようもねえな……」
(∪^ω^)「わんおー」
クーの意見は極端だが、商売人としては需要を見極め、可能な限り利益を高めるのは間違っていない。
その辺りは商売人の腕の見せ所と言ってもいいだろう。
しかしながら、僕はそこまでがめつく儲けたいわけじゃないので、真っ当に暮らしていけるだけの稼ぎがあればいいのだ。
- 17 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/02(金) 23:15:07 ID:/qhQhP9c0
川 ゚ -゚)「派手に儲けて遊んで暮らそうとは思わないのか?」
( ^ω^)「魔法道具屋やってる事自体、僕にとっては道楽というか楽しい事だお」
多分、お金を稼ぎたいのなら魔法使いとしてどこかに仕官するか冒険者にでもなった方がいいだろう。
自分の実力を過大評価するつもりはないが、客観的に見ても2人の師のお陰で普通よりは魔法に長けていると思う。
川 ゚ -゚)「お前はいいとしても、私は早いとこお金稼いで借金返してまた旅に出たいんだが」
( ^ω^)「真面目に働けばすぐ返せるぐらいの額だお」
川 ゚ -゚)「いや、結構な額だろ、これ。全然お金たまらないし」
そうは言うが、僕が低賃金でクーをこき使っているわけではない。
僕もシャキンさんも、標準的な給金を渡している。
たまらないのは単にクーが使ってしまうからだ。
川 ゚ -゚)「そりゃ、生活費はかかるだろ」
( ^ω^)「かかるけども、はっきり言ってクーの場合はかかり過ぎてるお」
- 18 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/02(金) 23:16:53 ID:/qhQhP9c0
クーはだいぶこのヴィップの町に馴染んで来たが、馴染んで来た故に人付き合いが増えている。
冒険者やツンのような友達とかと、お酒飲んだりお茶したり、交遊費的な遊びに使うお金も増えているのだ。
それでも普通に生活は出来るのだろうが、それから更に借金を返したいのならある程度は我慢すべきだろう。
川 ゚ -゚)「だって、楽しいじゃないか」
( ^ω^)「そりゃそうだろうけども……」
クーのこれまで生きてきた環境を思えば、自由に飲み食いし、
冒険者や友達と親交を深めるのはとても楽しいと感じるのはわかる。
だからといって無計画にお金を使ってたら、いつまで経っても借金は返せない。
いっそ給料から天引きした方がクーの為にはなるのかもしれない。
川 ゚ -゚)「時給上げてくれれば万事解決じゃないか」
( ^ω^)「……はぁ」
僕は大きな溜め息を吐き、この話を強制的に終わらせた。
自覚しない事にはいくら僕がお小言を言っても聞き流されるだけだろう。
( ^ω^)「それ貼り終わったら、あっちの棚の掃除しといてくれお」
- 19 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/02(金) 23:18:23 ID:/qhQhP9c0
川 ゚ -゚)「結局掃除なんだな」
( ^ω^)「不服かお?」
川 ゚ -゚)「不服というかだな、こないだから掃除ばっかりじゃないか」
( ^ω^)「あれは教会の掃除だお? うちの掃除はまた別だお」
先日、ヒッキーさんと約束した掃除の手伝いに派遣するバイトはクーに頼んだ。
ツンの危惧も合ったので、ヒッキーさんとクーを引き合わせてみたのだが、
これといった反応はどちらにも見られなかった。
川 ゚ -゚)「あれは大変だったんだぞ。一生分の掃除はしたと思う」
( ^ω^)「そりゃ、クーが今までまともに掃除した事なかっただけだお」
( ^ω^)「そこまで汚れたり傷んだりしてるのはなかったお」
一応、僕も少し手伝いに行き、高い所の埃を払ったりとか魔法で手伝いをしたのだ。
作りはしっかりしている建物で、補修が必要な箇所もなかったので掃除は意外と早く終わらせる事が出来た。
- 20 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/02(金) 23:19:54 ID:/qhQhP9c0
川 ゚ -゚)「とにかくあれは大変だった。故にあの分は特別手当が出てしかるべきだと思う」
( ^ω^)「次、あっちの棚も頼むお」
川 ゚ -゚)「聞けよ……」
ぶつぶつと文句を言いながらも、クーは言われた通りに棚の掃除を始めた。
掃除慣れしてないから仕方がないのかもしれないが、埃の落とし方や汚れの拭き方に少々甘い部分が見られる。
川 ゚ -゚)「終わったぞ。次はどこの掃除だ?」
( ^ω^)「掃除はもういいお。店番頼むお」
川 ゚ -゚)「やれやれ、客も来ないのに店番か」
( ^ω^)「その内来るから!」
僕は再びクーに店番を頼み、新商品の開発に取り組む事にする。
聖水も手に入ったし、これを絡めた新商品を考えてみるのもいいだろう。
( ^ω^)「……」
- 21 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/02(金) 23:21:24 ID:/qhQhP9c0
川 ゚ -゚)「薬草聖水とか安易な発想は止めろよ?」
つ∪^ω^)「わんおー?」
(;^ω^)「あ、安易じゃねえお。つーか、人の心を読むなお」
考えてた事をずばり当てられて動揺したが、決して安易な考えではないと力説したい。
聖水に薬草を溶け込ませれば、喉越し爽やかで飲みやすい薬草が出来るのではなかろうか。
川 ゚ -゚)「聖水は無味なんだし、ただの苦い水にしかならないだろ」
(;^ω^)「何か甘みを足せば大丈夫だお」
そうすれば味の方はクリア出来るが、多少かさばるのが問題かもしれない。
聖水の効果を為すために、特殊な瓶に入れる必要もあるだろうし、少々コストがかさむ。
川 ゚ -゚)「それ、薬効が上がるならともかく、大差ないなら水でもいいだろ」
(;^ω^)「……段々突っ込み方がツンに似て来たおね」
なかなか厳しい所を指摘するクーだが、拳が飛んでこない分、ツンよりはマシかもしれない。
わざわざ薬草に聖水を使うメリットがほとんどないのは確かだ。
- 22 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/02(金) 23:22:30 ID:/qhQhP9c0
川 ゚ -゚)「どっちかというと、聖水は武器に転用する方が可能性はあるんじゃないか?」
( ^ω^)「うん、モンスターに対する切れ味を高めるのは普通に出来るお」
それは本来の用途の1つなので、僕が加工するまでもなく出来る事だ。
武器を聖水に塗布すれば魔力を持つモンスターに対して効果が上がるのは前にも説明した。
( ^ω^)「ただ、僕は神聖魔法使えないから、効果を上げるのは難しいんだお」
これも前に話したことだが、僕がやってるのは効果の維持だ。
聖水自体の効果を高める事は出来ないと考えるべきである。
川 ゚ -゚)「効果を高めるのは無理としても、使いやすくは出来ないのか?」
液状のものを上手く武器の刃だけに塗布するのはなかなか難しいのではないかとクーは言う。
( ^ω^)「武器によってはそうかもしれないお」
どちらかといえばこの使い方の場合、前もって使っておくものなので、緊急時に使用する事は考えられてないが、
前もって使う場合でも、武器の形状によっては塗布し辛い物はあるだろう。
- 23 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/02(金) 23:23:43 ID:/qhQhP9c0
( ^ω^)「鞘の中で聖水に浸せるものとかどうだろうかお?」
川 ゚ -゚)「悪くないかもしれんが、それ、武器ごとにオーダーメイドになるんじゃないか?」
武器の鞘に聖水を注いで、武器を収めれば満遍なく聖水が武器に付着するので使い勝手はいいかもしれない。
問題はクーが言う様に、武器ごとに合う鞘から作るか、既存の鞘を改造する必要があるのでかなり手間はかかる。
川 ゚ -゚)「というか、そこまで行くと武器屋の仕事だろ」
(;^ω^)「それはそうかもしれんお」
(∪^ω^)「わんわんおー」
いいアイデアだと思ったが、確かにそれだと魔法道具屋の範疇を越えるかもしれない。
もう少し汎用的に扱える物を考えるべきか。
川 ゚ -゚)「武器に塗布するなら、液状ではない方が使いやすいかもしれないな」
( ^ω^)「ふむ……それは一理あるお」
大きなバケツみたいなものに聖水を入れて武器を浸すなら液状の方が早いだろうが、
クエストに携帯してキャンプ時に塗ったりするのなら、固形の方が使いやすいかもしれない。
武器によっては布に浸してから塗るものもあるぐらいだし。
- 24 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/02(金) 23:25:54 ID:/qhQhP9c0
川 ゚ -゚)「いっそクリーム状とかの方が塗りやすいのかもしれんな」
( ^ω^)「聖水クリーム……手についたりするのを考えると良くなさそうだおね」
聖水は人体に害があるものではないが、濃度が高いものだと、特に魔力の高い人間は軽い痛みを感じる事もある。
魔法の発動中で高い魔力を放出している場合なら火傷位のケガはするかもしれない。
川 ゚ -゚)「それも武器の形状次第かな」
( ^ω^)「折角だから甘くして、食べられる聖水クリームにしたら売れるかもしれないお」
川;゚ -゚)「いや、武器に塗るものを食べるのはちょっと……」
1人で考えるよりは、誰かと意見を出し合いながらの方がアイデアが浮かぶ様だ。
まだ明確な商品としての形は決まっていないが、何か作れそうな気もする。
( ^ω^)「よし、ちょっと教会に行って来るお」
川 ゚ -゚)「ん? 何か用事か?」
( ^ω^)「ちょっと神聖魔法について聞いてくるお。聖水を有効に活用する手段を増やせないか相談も兼ねてだお」
- 25 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/02(金) 23:27:10 ID:/qhQhP9c0
川 ゚ -゚)「店番はどうするんだ?」
( ^ω^)「いや、そのためにクーがいるお?」
_,
川 ゚ -゚)「この客が来ない店にわんわんお共にじっと篭ってろと?」
(;^ω^)「だから客はその内来るお!」
不服そうな顔をしながらも、バイトとしての立場はわきまえているのだろう。
クーは渋々ながらも僕を送り出す。
川 ゚ -゚)「お前が帰ってくるまで客ゼロだったら時給倍な」
つ∪^ω^);;
(;^ω^)「何でだお。暇ならむしろ下がるお」
無茶苦茶な事を言うクーをあしらい、店を出る。
今日も外はいい天気だ。
( ^ω^)「さて、行くかお」
ミ(∪^ω^)「わんわんお!」
- 26 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/02(金) 23:28:12 ID:/qhQhP9c0
(;^ω^)「お? わんお、いつの間に外に出て来たお?」
どうやらわんわんおは僕について外に出て来たらしい。
飼い主思いで愛いやつだが、暇潰しの相手が消えたクーは今頃どんな顔をしてるだろうか。
( ^ω^)「お前はお留守番……まあ、いいお。一緒に行くお」
(∪*^ω^)「わんわんお!」
遠出をするわけではないが、店の中でじっとしているよりは外を歩いていた方がわんおも楽しいだろう。
僕はわんわんおを連れて教会に向かう。
グルグル
(((^ω^∪三∪^ω^)))「わんわんお! わんわんお!」
( ^ω^)「まだお散歩の時間じゃないからあんまり走らないでくれお」
のんびり歩く僕の周りを催促する様に走り回るわんわんお。
僕の方を見ながら走ってると、その内確実に転ぶ事が予想出来る。
グルグル
(((^ω^∪三∪^ω^)))「わんわんお! わんわんお!」
( ^ω^)「せめて前を見て──」
- 27 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/02(金) 23:29:50 ID:/qhQhP9c0
(∪;^ω^)「わんお!?」
ズサーッ
o∩∩ (´´
∩ノ ノ (´⌒(´
((つ ノ⊃≡≡≡(´⌒;;;≡≡≡
 ̄ ̄ ̄(´⌒(´⌒;;
(;^ω^)「あー、やっぱりかお……」
(∪TωT) キューンオ…
僕は勢いよく転んでしまったわんわんおを抱き上げ、再び歩き出す。
教会まではもうすぐそこだ。
(-_-)「やあ、ブーン君、それにわんわんお君もこんにちは」
( ^ω^)「こんにちはですお、ヒッキーさん」
つ∪^ω^)「わんわんお!」
- 28 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/02(金) 23:30:53 ID:/qhQhP9c0
ヒッキーさんは教会の外で草木に水やりをしていた。
庭と呼べるような囲いは存在していないが、教会の周囲には花壇などもいくつかある。
数日前までは雑草の生い茂ったひどい有様だったが、今は綺麗に抜き取られている。
(-_-)「どうしたんですか? 聖水に何か問題がありましたか?」
ヒッキーさんとは今朝方、聖水を届けてくれた時にも会った。
要らぬ心配をさせてしまったが、仕入れた聖水に問題はなかったと思う。
(-_-)「それは良かった。それで……」
( ^ω^)「ちょっとお話を聞きに来ただけですお」
僕は聖水について、それと神聖魔法についての話を聞きに来たと、
新商品を考えていた事も踏まえてヒッキーさんに説明する。
(-_-)「なるほど……。しかし、私は他人に教えられるほど詳しいわけではないですよ?」
( ^ω^)「一般的な事でかまいませんお。勿論、お時間があればですけど」
(-_-)「そのくらいで良いのなら、いくらでも聞いてください」
- 29 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/02(金) 23:31:55 ID:/qhQhP9c0
僕はヒッキーさんに案内され、教会の東側に向かう。
教会内ではなく、外で話そうという事らしい。
その方がわんわんおにはいいんじゃないかという、ヒッキーさんらしい細やかな配慮だ。
( ^ω^)「あ、テーブルと椅子、外にもあったんですね」
(-_-)「天気のいい日はこうやって外でお茶を飲むのもいいかと思いまして」
お茶を用意するからと、教会の中に入って行くヒッキーさん。
僕は椅子に座り、わんわんおを地面に下ろした。
( ^ω^)「僕はちょっとヒッキーさんとお話してるから、この辺で遊んでてお」
(∪^ω^)「わんわんお!」
僕の言葉を理解したのかどうかわからないが、わんわんおは全速力で教会の裏手に向かって駆け出して行った。
あまり離れ過ぎるのはよくないと思いかけたが、わんわんおは教会を一周して反対側から戻って来る。
( ^ω^)「おー、だいぶ速くなったおね」
ε三(∪^ω^)「わんわんお!」
- 30 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/02(金) 23:33:05 ID:/qhQhP9c0
そのままノンストップで駆けて行くわんわんおを見送ると、ヒッキーさんが教会から出て来た。
お茶のカップ以外に器がある所を見ると、わんわんおの分のお水まで用意してくれた様だ。
(-_-)「随分と元気な子ですね」
( ^ω^)「元気なのが取り柄ですお。でも、すぐバテちゃったりしますけど」
体力はついて来たがペース配分が上手くないというか、少しお馬鹿なとこがあるので、
散歩の途中で歩けなくなる時もしばしばだ。
その姿は見てて面白かったりするので、それはそれで楽しくもあるのだが。
§
(-_-)つq■「粗茶ですが、どうぞ」
§
( ^ω^)q■「いい匂いですお。いただきますお」
僕はヒッキーさんが淹れてくれたお茶を飲み、まずは聖水について尋ねる。
お茶はヒッキーさんが元住んでいた地方の物だろうか。
飲み慣れない味だったが、なかなかに美味しかった。
(-_-)「聖水の作り方を聞きたいわけではないのですよね?」
( ^ω^)「そこは神聖魔法が使える前提ですから、僕が知っててもあんまり意味ないですおね」
- 31 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/02(金) 23:34:22 ID:/qhQhP9c0
僕はいくつかの基本的な事と有効期限など、
これまで明確には理解していなかった事をヒッキーさんに教えてもらった。
昔の司祭様がいた頃は僕がまだ年若く、今ほど魔法道具屋として商品について考え切れなかった事もあり、
聞く機会を逃していたのだ。
( ^ω^)「なるほどですお。となると、活性化に精霊魔法を使うのもありですかおね」
(-_-)「それほど反発は起こらないと思いますが、精霊を止めておく手間はありますね」
先ほどは他人に教えられるほどは詳しくないと言ってたヒッキーさんだが、それは謙遜だった様だ。
神聖魔法以外の魔法の基本も理解されてるらしい。
( ^ω^)「小瓶に入れて飛び道具に──」
o(∪^ω^)
(_ u u
( ^ω^)「って、どうしたお?」
いつの間にか戻って来ていたわんわんおが、じっと座って一点を見詰めていた。
外では特に忙しないわんわんおにしては珍しい姿だ。
- 32 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/02(金) 23:35:17 ID:/qhQhP9c0
リ(-_-)
( ^ω^)「……」
その視線の先にはヒッキーさんの姿がある。
別段変わった様子はない……と判断しようとした時、どこかに違和感を覚えた。
リ(-_-)「どうされました?」
( ^ω^)「ヒッキーさん……髪伸びてませんかお?」
スッ…
"(;-_-)∩「え、髪?」
僕の言葉に慌てて頭に手を伸ばすヒッキーさんだが、いつの間にか違和感は消えていた。
(;^ω^)「あれ? 気の所為だったようですお」
(;-_-川「そ、そうかい? それなら──」
(;゚ω゚)「って、気の所為じゃねええええッ!」
今度はヒッキーさんの顔の反対側に先ほどより大量の髪が伸びている。
明らかに見間違いと呼べるレベルを超えており、はっきりと見る事が出来た。
- 33 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/02(金) 23:36:04 ID:/qhQhP9c0
(;-_-川「え、何?」
(∪^ω^)「わんわんお!」
(;-_-)三川д川 ヒャッ!?
(;^ω^)「あ……」
気付かぬうちにヒッキーさんの側まで近付いていたわんわんおが吠えると、ヒッキーさんから何かが飛び出す。
何事かと身構えようとしたが、よく見ると僕はその姿に見覚えがあった。
川д川
(;^ω^)「教会の精霊さんかお?」
ヒッキーさんから出て来たのは、先日悪霊を浄化して再び教会に憑いてるはずの精霊の姿だった。
何故そんな所から出て来るのかと思ったが、当のヒッキーさんはそれほど驚いた様子はない。
(-_-)「それがどうも彼女、僕に憑いちゃったみたいで……」川д川〜 ヾ(^ω^∪)
(;^ω^)「へ?」
どうやらあの最後の浄化の瞬間に触れていたのが原因ではないかとヒッキーさんは言う。
- 34 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/02(金) 23:37:29 ID:/qhQhP9c0
(;^ω^)「それって、大丈夫なんですかお?」
川д川〜
(-_-)「今の所、これといった問題はないと思います」
質問してから思い出したが、精霊が人に憑く事はごく稀にある。
ある程度高位の精霊である場合が多いが、家系的なものだったり、単純に気に入られたり、その逆に呪われたりでだ。
〜川д川
(-_-)「呪われてはいないと思いますが……」
( ^ω^)「あの状況ならそうですおね。気に入られちゃったんでしょうね」
そんな単純な話でもないのだろうが、あの時、悪霊だけとはいえ浄化しようとした事で精霊の存在が薄くなり、
同時に教会との繋がりも薄くなったので憑く先が変わったのかもしれない。
川|;;;;;川
(|ii-_-)「時々、悪霊だった時の感覚が抜けてないのか、鬱な気分にさせられる時がありますが」
(;^ω^)「それ、若干呪われてませんかお?」
- 35 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/02(金) 23:38:29 ID:/qhQhP9c0
- 〜川д川
(-_-)「僕としては、丁度よくもあるんですけどね」
( ^ω^)「お? どういう事ですかお?」
(-_-)「先日、僕が使ったスペシャルは覚えてますか?」
( ^ω^)「はい、あの光の壁みたいなやつですおね」
(-_-)「実は僕のスペシャルの手順って、感情なんですよ」
感情を手順とするスペシャルは、手順としてはそれなりにメジャーな部類に入る。
もっとも一般的な手順である精神統一も広義ではこれに当たる。
精神統一は一切の感情を消し、集中するものだが、それとは違い、
ある1つの感情だけを膨らます事で魔法の威力を上げるのだ。
怒り悲しみとか、その他にも漠然とした高揚であったりとかその種類は少なくない。
ただ、手順として容易な分、スペシャルとしての増幅力は控えめだったりする。
(-_-)「で、僕のスペシャルはネガティブな感情を元にしてます」
(;^ω^)「また微妙なとこをスペシャルにしてますおね」
- 36 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/02(金) 23:39:30 ID:/qhQhP9c0
ヒッキーさんのは昔からマイナス思考過多な所があったのでそれを選んだらしい。
使う為には嫌な思いをしないといけなそうで、僕ならちょっと敬遠したいなと思う。
(-_-)「僕にはあってるみたいなんですけどね」
確かに、後手で回復させたり払ったりする魔法には向いてるかもしれないとは思う。
先日の件でも、僕が危機に陥ったから焦ったりしてマイナス方向の感情が強まったのだろうし。
( ^ω^)「まあでも、平時では明るく楽しく過ごして欲しいとは思いますお」
川д川〜
(-_-)∩「そうですね。僕もこの子に、そういう楽しい事を教えてあげたいと思いますよ」
精霊は微笑むヒッキーさんの中に吸い込まれるように消えていった。
何とも奇妙な関係だが、この様子なら危険はないだろうと思う。
( ^ω^)「何かあったら相談に乗りますお。精霊の話なら少しは知識ありますし」
(-_-)「その時はよろしくお願いしますよ」
( ^ω^)「しかし、まだあんまりその事は言いふらさない方がいいかもしれませんおね」
(;-_-)「そうですね。呪われた司祭と誤解されそうですし」
- 37 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/02(金) 23:40:30 ID:/qhQhP9c0
憑いているのは精霊なのだが、見た目の雰囲気が少々暗過ぎる。
とはいえ、元は教会に憑いていた精霊だ。
色々あって荒んだのだろうが、時間が経てばまた変わって行くのかもしれない。
( ^ω^)「そういえばヒッキーさんはあの女性、デレって人について何か知ってますかお?」
(-_-)「あの時の女性ですね。残念ながら私は何も……」
( ^ω^)「やっぱ教会関係者って事以外はわからないですおね」
(-_-)「……いや、彼女は恐らく教会、ニューソク正教の人間ではないと思います」
( ^ω^)「お?」
ヒッキーさんの言葉に首を傾げてしまったが、よくよく考えれば神聖魔法を使う、
イコール教会関係者と決まったわけではない。
(-_-)「ニューソク大陸でもっとも広まっているのはニューソク正教ですが」
(-_-)「それ以外の宗教がないわけじゃないですからね」
信仰対象が神とは限らず、また神の場合でも別の神であったりと、宗教的な考え、団体はいくつも存在する。
ニューソク正教ほど大きな組織は他にないが、他の団体に所属する僧侶が神聖魔法を使っても不思議はない。
- 38 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/02(金) 23:41:23 ID:/qhQhP9c0
(-_-)「そういう事です」
( ^ω^)「そうなると、彼女が何者か特定するのは難しそうですおね」
(-_-)「何をしにここに来たのかもわかってませんしね」
( ^ω^)「結局、何か無くなってた物とかあるかどうかもわからないんですおね?」
(-_-)「ええ。ただ、本部に報告は出しましたので、その内査察に来るかもしれませんが」
ドクオさんとも話したことだが、現状ではわからない事だらけで彼女の事を追うのは難しそうだ。
僕は、何かしら気付いた事があったら教えて欲しいとヒッキーさんに頼んでおいた。
(-_-)「わかりました。……僕としても、1つ気になってる事もありますので」
( ^ω^)「気になってることですかお? それは……」
(-_-)「ちょっとあやふやですし、恩人を無闇に詮索するのも気が引けるので、確証を得たらお話します」
気にはなったが、それ以上の追求はせずにヒッキーさんにお任せする事にして、僕は席を立った。
少々長くお邪魔し過ぎたかもしれない。
ヒッキーさんも教会の整備等、まだまだやる事があるだろうから、そろそろ辞する頃合であろう。
- 39 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/02(金) 23:42:32 ID:/qhQhP9c0
( ^ω^)「お話ありがとうございましたお。そろそろ帰りますお」
(-_-)「大したもてなしも出来なくてすみませんね」
( ^ω^)「いえいえ、お茶美味しかったですお」
(∪^ω^)「わんわんお」
(-_-)「また気軽にお越しください。お茶ぐらいならいつでもご馳走致しますので」川д川〜
( ^ω^)ノシ「またですお」
(∪^ω^)「わんわんお!」
僕は一礼し、教会を後にした。
色々と役に立つ話も聞けたので、また新商品の開発に取り組めそうだ。
( ^ω^)「しっかし、あの精霊には驚いたおね」
(∪^ω^)「わんおー」
- 40 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/02(金) 23:43:54 ID:/qhQhP9c0
( ^ω^)「わんおはよく気付いたおね。やっぱ犬だからそういうのに鋭いのかおね?」
(∪^ω^)「わんお」
( ^ω^)「でも、あれは悪い精霊じゃないから、追い回したりしたら駄目だお?」
(∪^ω^)「わんわんお!」
僕はわんわんおと共にのんびりとサンライズまで歩いて帰った。
( ^ω^)ノ「ただいまーだお」
(∪^ω^)「わんわんお!」
_, ,_
川 ゚ -゚)「……おかえり」
サンライズのドアをくぐると、出迎えてくれたのはこれまでにないほどの仏頂面をしたクーであった。
どうやら相当ご機嫌斜めのようである。
(;^ω^)「……えっと、ひょっとしてお客さん全く来なかったのかお?」
- 41 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/02(金) 23:45:31 ID:/qhQhP9c0
- _, ,_
川 ゚ -゚)「……いや、来た」
(;^ω^)「そうかお。そりゃ良かったお」
_, ,_
川 ゚ -゚)「良くない。来たっていってもたった1人だぞ?」
(;^ω^)「まあ、ゼロよりは……」
_, ,_
川 ゚ -゚)「お前けに売れたのが薬草1つ」
(;^ω^)「何も売れないよりは……」
_, ,_
川 ゚ -゚)「客ゼロなら時給倍だったのに、よりにもよって1人かよ」
(;^ω^)「いや、その話は了承したわけじゃねえお」
_, ,_
川 ゚ -゚)「おまけにわんわんおまで私を見捨てて行くし」
(∪;^ω^)「わんわんおー……」
クーの怒りは収まる気配を見せず、矛先がわんわんおにまで向けられる。
正直な話、客がいなかったらのんびりしてもらっててかまわないのだが、きっと根が真面目なのだろう。
暇な時にやる仕事を探すが見付からず、フラストレーションが溜まっていったものと思われる。
- 42 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/02(金) 23:46:51 ID:/qhQhP9c0
(;^ω^)「悪かったお。だから機嫌直してくれお」
(∪;^ω^)つ「わんおー……」
. _, ,_
(゚- ゚川 プィッ
取り付く島もないクーに、僕は諦めてカウンターに着く。
この後も店番を頼もうと思ったが、そんな空気ではなさそうである。
_, ,_
川 ゚ -゚)「そもそもこんなに客来ないなら、私も連れて行けよ」
(;^ω^)「だから、来ないわけじゃないお。現に1人来たんだお?」
_, ,_
川 ゚ -゚)「午前中からずっと店開けてて1人だぞ? 店としてそれでいいのか?」
(;^ω^)「聖水も並べたし、その内ドカーンとお客さん来るお!」
(∪^ω^)「わんお!」
_, ,_
川 ゚ -゚)「ドカーンとなんて来るわけ──」
- 43 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/02(金) 23:48:31 ID:/qhQhP9c0
< ドカーン!
(;゚ω゚)「うぉッ!?」
突如鳴り響く轟音と共に、跡形もなく吹き飛ぶ店のドア。
僕は立ちこめる煙の中、状況の掴めぬままに杖を手に臨戦態勢を取った。
川 ゚ -゚)「……ホントにドカーンと来たな」
(;^ω^)「こういうドカーンは想定外だお。つーか危ないから下がってろお」
僕は足元で身構えていたわんわんおをクーに預け、今は亡きドアの方に向かう。
薄れて行く煙の先に見える何か、それは……
(~~{ ヽ
(;^ω^)「人……?」
そこには、フードを目深に被った1つの小さな人影があった。
第十三話 静寂破るは叩扉の音 終
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