( ^ω^)は魔法道具屋さんのようです

330 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/19(月) 23:10:10 ID:pOxVQJsE0

 〜 メシューマ・ソクホウ間の街道 〜


( ^ω^)「お? 前方に隊商の馬車が停車中……あ、何かヤバげな感じですお」

( ゚д゚)「どうやら襲われているようだな」

(∪^ω^)「わんおー」

( ^ω^)「どうしますか……」
ダッ
ミ从 ゚∀从
スタッ
ミξ゚听)ξ

( ^ω^)「まあ、助けるんだけども、せめて足並み揃えてくれお」



     第十八話 王都への道


332 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/19(月) 23:11:40 ID:pOxVQJsE0

( ^ω^)「全く、出るなら役割分担ぐらい決めてからにして欲しいお」

僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。

( ゚д゚)「相手は盗賊のようだな。まさか王都への街道であんな馬鹿な事をやらかすとは恐れ入る」

彼の名前はミルナさん。
僕の顔馴染みの冒険者で、生真面目で強面だが、意外と小さくてかわいいものが好きだったりする人だ。

(∪^ω^)「わんわんお!」

この子の名前はわんわんお。
僕のペットというか家族で、見た目は子犬だが実は元竜だ。

僕達は騎士学校に入学するショボンを送ってソクホウに向かう最中だ。
途中で寄ったメシューマの町で偶然再会したミルナさん達3人の冒険者を乗せ、現在は7人旅である。

( ゚д゚)「ともかく、俺も助けに行こう」

( ゚д゚)「守りは頼むぞ、ブーン。それと寝ているジョルジュ達も起こしてくれ」

333 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/19(月) 23:13:41 ID:pOxVQJsE0

( ^ω^)「わかりましたお。わんお、馬車に入ってるお」

(∪^ω^)「わんお!」

僕は馬車を止め、御者台から馬車内に入り、先日の夜番で未だ就寝中だったジョルジュさん達を起こし、状況を説明する。
  _
( ゚∀゚)「チッ、出遅れたか。まあ、いいや。あいつらなら大丈夫だろ」

(´・ω・`)「僕もここで馬車番という事だね」

( ^ω^)「僕はちょっと状況見に行って来ますんで、よろしくお願いしますお」

ミルナさんからは馬車の番を頼まれたが、ジョルジュさんがいるなら僕はいなくても大丈夫だろう。
ミルナさん達の方もその辺の盗賊相手なら問題はないと思うが、数はいるだろうし、念の為援護に回る。

( ^ω^)「おー、ばったばったとなぎ倒されてるおね」

死んではいない様だが、数人の盗賊が既に倒されていた。
ツンとハインさんが縦横無尽に駆け回り、瞬く間に盗賊を打ち倒して行く。
ミルナさんは隊商の馬車前に陣取り、盗賊が近付くのを的確に防いでいる。

( ^ω^)「相変わらず集団戦になると空気だおね、僕。魔法の持ち腐れだお」

334 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/19(月) 23:15:02 ID:pOxVQJsE0

僕は魔法の縄で倒れている盗賊を縛り、一箇所に集める。
やがて盗賊達は勝ち目がないと悟ったのか、算を乱して逃げ出していった。

( ^ω^)「大丈夫でしたかお?」

(;´W`)「ありがとうございます、助かりました」

僕は隊商の中で一番身なりの良かった人に話しかける。
多分、この人が隊商を率いる人だろう。

(;´W`)「私はシラヒーゲと申します。貴方方には何とお礼を申し上げればよいのか」

未だ青い顔をしていたが、シラヒーゲさんは深々と頭を下げて感謝の意を示してくれる。

( ^ω^)「ヴィップで魔法道具屋をやってるブーンですお。商売人同士、困った時はお互い様ですお」

( ^ω^)「でも、この隊商の規模ならもうちょっとマシな護衛は雇うべきでしたおね」

一応、護衛はいたようだが腕の方は大した事なかったらしく、多勢に無勢の状況を覆すほどの力はなかったのだろう。
自分の身を守るのに精一杯だったようである。

335 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/19(月) 23:16:23 ID:pOxVQJsE0

(;´W`)「仰る通りです。面目ない。まさかこの街道で襲われる事はないと油断していました」

( ^ω^)「お気持ちはわかりますお。この街道みたいな王家のお膝元で盗賊が跋扈してるなんて思わないですおね」

最初にミルナさんも言った事だが、ここは王都ソクホウへの続く道で、
当然何かあれば王都から騎士団が出張って来るような場所だ。
そんな所で盗賊行為なんて、捕まえてくれと言っている様なものだ。

从::゚∀:从「いんや、そうとばかりも限らんぜ?」

(;´W`) ヒッ…

( ^ω^)「どういう……って、ハインさん、ちょっと顔洗って来てくださいお」

抜身の蛮刀をぶら提げたハインさんの顔は赤く染まっていた。
自身は傷を負っていないのだろうが、軽くスプラッタな光景である。

从う∀:从「ん……、ああ、すまん」

手で拭っても何の解決にもならないと思うが、ハインさんはそのまま話を続ける。
何でも、最近街道で隊商を襲う盗賊が横行している話をメシューマで聞いたとの事だ。

336 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/19(月) 23:18:09 ID:pOxVQJsE0

从=゚∀:从「で、そいつらが出没した場所は一定じゃないらしい」

( ^ω^)「ん? 規模の大きい盗賊団って事ですかお?」

从=゚∀:从「いや、それがどうやら違うみてえだな」

ハインさんの話では、その盗賊団はそれほど大きくはないが、
アジトを持たず場所を移動しながら盗賊行為を繰り返していると噂されているらしい。

( ^ω^)「なるほど、一所に止まらないから、討伐が難しいという事ですおね」

从=゚∀:从「そういうこった。俺らみたいに偶然ぶち当たってその場で倒しちまえばいいんだろうがな」

シラヒーゲさんも盗賊の噂は聞いていたらしいが、
盗賊の出没情報は全てメシューマの南の街道だったから油断していたという。
となると最近この街道を狙うようになったのか、もしくは噂とは別の盗賊団なのかもしれない。

どっちにせよ、なかなか調子に乗ってる盗賊団だ。
王都に続く街道なら、その内確実に騎士団が何かしらの対策を打って来るだろうに。

騎士団に遭遇しなくても、これだけ派手にやれば隊商も腕利きの護衛を雇うようになるだろうから、
いずれにせよ、こんな無茶な簒奪行為が続けられるはずはない。
ひょっとしたら、捕まる前に稼ぐだけ稼いで短期間で盗賊団自体を解散させるつもりなのかもしれない。

338 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/19(月) 23:19:25 ID:pOxVQJsE0
  _
( ゚∀゚)「って事は、今が討伐のチャンスじゃね?」

( ^ω^)「お、ジョルジュさん、どういう事ですかお?」

( ゚д゚)「いくらアジトを持たないといっても、今盗んだものを保管しておく場所や」

( ゚д゚)「それがなくとも集合場所ぐらいは決めているはずだ」

要するに、今なら追撃してその盗賊団とやらを殲滅すればいいという事らしい。
なるほど、理には適ってるがそれは僕らの役割ではないような気がする。
  _
( ゚∀゚)「なら、ブーン、お前は放っておいて、また商人が襲われる可能性をそのまま残しておくのか?」

(;^ω^)「それはよくないと思いますけど、僕らだけで行くのは危険……でもないのか」

先の戦いを見れば、多分それほど強い盗賊団ではない。
やり方が小狡く、危険を避けて簒奪行為を繰り返してたのだろう。
たまたま運が良かっただけとも言える。

从 ゚∀从「ジョルジュにしてはいいアイデアじゃねえか」

339 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/19(月) 23:20:40 ID:pOxVQJsE0

いつの間にかツンから渡された水で顔を洗って来たハインさんも賛成する。
全員の顔を見渡すも、皆やる気のようである。
  _
( ゚∀゚)「捕まえたら賞金も出るだろうからな」

既に何度か犯行を重ね、噂もになってる盗賊団かもしれないのだ。
確かに賞金が掛かっていてもおかしくはない。
冒険者がそれ目当てで行動するのは不純だとは思わないし、ある意味当然の労働報酬と危険手当だ。

( ^ω^)「まあ、まだ騎士学校の入学試験に間に合いはしますけど……」

(´・ω・`)「僕としても、騎士になるならここは行くべきだと思うから気にしないで」

(´・ω・`)「これで遅れても悔いはないし、悪事を見過ごす方がよっぽど悔いが残るよ」

( ^ω^)「お前にそう言われたら行くしかないじゃないかお」

从 ゚∀从「よし、行くぜ。急がねえと逃げられちまう」

( ^ω^)「けど、大体の方向はわかりますけど、適当に追って見付けられますかおね」

( ^ω^)「あと、馬車どうするとかの話もありますお」

340 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/19(月) 23:22:13 ID:pOxVQJsE0

( ゚д゚)「それなら心配はいらん」

ξ゚听)ξ「捕まえたやつの1人の口を割らせたから」

( ^ω^)「いつの間に……。つか、どうやったんだお? こういうの、大体そう簡単には口割ってくれないお?」

ξ゚ー゚)ξ「ヒ・ミ・ツ」

( ゚д゚)「ヒントを出すならあそこで砕けてる岩だな」

( ^ω^)「おk、深くは聞きませんお」

馬車の方は、手当てや修繕でしばらく留まる必要が出来てしまったシラヒーゲさんが見てくれると言う。
王都に使いも出したらしいので、騎士団も遠からず来るだろうから安心出来る。

( ´W`) 「捕まえて頂いた賊の引渡しもやっておきます」

( ^ω^)「お願いしますお。それじゃあ、行きましょうかお」

(∪^ω^)「わんわんお!」

(;^ω^)「あ、わんおどうしよう……まあ、いいかお。一緒に行くお」

341 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/19(月) 23:23:58 ID:pOxVQJsE0

僕はわんわんおを抱え、盗賊が逃げた方、街道から少し離れた森に向かって走り出す。
既にハインさんとツンがかなり先を走っている。

(;^ω^)「いや、だから足並み揃えましょうってば」

从 ゚∀从「今回は迅速な行動が必要だからな。先行するぜ!」

正論といえば正論だが、流石に何の考えもなく2人だけを先行させるのはよろしくないのではと思う。
万が一、待ち伏せにでも会ったら洒落にならない。

(;^ω^)「じゃあ、僕も行きますお」

僕は魔法を唱え、速度を上げた。
二手に別れ、ジョルジュさん達には後詰めに回ってもらおう。

そのまま走り続けること10数分、途中に血痕が付いてたり、人の通った跡があったりと、思ったより追跡は楽だった。
それがカムフラージュや囮の可能性も考えたが、それほど頭の回る盗賊団ではなかったらしい。

僕達4人は待ち伏せされる事もなく、あっさりと森の中で追い付いてしまった。

(;盗)「な……、てめえら何で!?」

343 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/19(月) 23:25:56 ID:pOxVQJsE0

(;^ω^)「どうもこの人達、今まで相当運が良かっただけっぽいおね」

ξ゚听)ξ「同感ね」

(∪^ω^)「わんおー」

从 ゚一从「何でもいいや。さっきの続きだ、遊ぼうぜ?」

笑顔で蛮刀を抜き放ち、盗賊達の答えを待つ事もなく斬り掛かるハインさん。
この期に及んでまだ座ったままで身構えてすらいない者がいる時点で、この盗賊団の強さは底が知れる。

( ^ω^)「こりゃまた出番なさそうだおね」

(∪^ω^)「わんわんお」

盗賊団の人数は残り約20人ほど。
先ほど捕まえた10人程度と合わせてみると盗賊団としてはそれなりに多い方かもしれないが、
この程度の腕なら僕らを相手にするには少ないと見るべきだろう。
  _
( ゚∀゚)「先に始めるんじゃねえよ。俺にもちっとは戦わせろっての」

( ゚д゚)「烏合の衆が……死にたくなければ武器を置け」

(´・ω・`)「人のものを盗ったら駄目ってお母さんに教わらなかったのかい?」

344 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/19(月) 23:27:16 ID:pOxVQJsE0

それほど距離が空いてなかったのか、すぐにジョルジュさん達3人も合流し、益々僕の出番はなくなった。
わんわんおも抱いてる事だし、後方支援に徹しようと思う。

( ^ω^)「はいそこ、スネア・トラップ」
つ∪^ω^)つ「わんおー」

(;盗)「うおっ!?」

ショボンの背後からこっそり近付こうとしていた盗賊の足元に魔法を唱え、転ばせる。
実戦経験のほとんどないショボンが一番援護が必要だろう。

(´・ω・`)「ありがとね……っと」

(;盗)「ぐわぁぁぁッ!!!」

ショボンは対峙していた盗賊を叩き伏せ、僕が転ばせた盗賊の腕を刺す。
落ち着いたその様子からするに、心配するまでもなく背後からの接近に気付いていたらしい。
騎士になる為に鍛えていた時間はちゃんとショボンの糧になっている様だ。

( ^ω^)「んじゃ、バイン・バインド」
つ∪^ω^)つ「わんおー」

精霊に働きかけ、森の木々に絡まっていた蔦を操り、倒れた盗賊を縛る。
最近縛ってばっかりな気はするが、殺さずに手っ取り早く行動不能にするならそれが一番だ。
こう敵味方が密集した状態では効果範囲の広い魔法は使い難い。

345 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/19(月) 23:29:47 ID:pOxVQJsE0

从 ゚∀从「手ごたえねえなあ」

(;盗)(;盗)「ぐわぁぁぁッ!!!」
  _
( ゚∀゚)「お前ら、それでよく馬車襲う気になれたな」

(;盗)「ぬわぁぁぁッ!!!」

( ゚д゚)「全くだ」

(;盗)「ぐふっ……」

競い合うように盗賊達を打ち倒して行くジョルジュさん達。
盗賊達とは個々人の実力もそうだが、連携という部分でも圧倒的な差がある。

(;盗)「ぐわぁぁぁッ!!!」

( ^ω^)「お?」
つ∪^ω^)「わんお?」

ジョルジュさん達が倒した盗賊も捕縛しようと魔法を唱えていたら、僕の背後の方で盗賊の悲鳴が上がる。

346 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/19(月) 23:31:36 ID:pOxVQJsE0

ξ゚听)ξ∩「いくら相手が弱いからって、油断し過ぎじゃない?」

( ^ω^)「ツンがそっちに向かう姿見えたんで、任せただけだお」

言い訳ではなく、ツンが僕の背後から近付く盗賊に向かっている姿は視界の端にちゃんと捉えていた。
万が一近付かれても何とかなるという自信もあったが、それを油断というのかもしれない。

ξ゚听)ξ「そういう事にしといてあげるわ。あ、そいつも縛っといてね」

( ^ω^)「はいはい、仰せのままにだお」

結局、その後は僕が捕縛魔法に終始している間に戦闘は終わってしまった。
いくらなんでも弱過ぎだと思うが、弱過ぎだからこそ引っかかる部分がある。

何でこんなのが盗賊なんかやってるのかとか、これで成功してるならどれだけ運が良かったのかとか。
もっとも、運が良かっただけではなく、何かしら別の理由があった可能性はあるのだが。

( ^ω^)(考えられるのはよっぽど精度のいい情報を仕入れてたかだおね……)

ただ、それだと今回の襲撃は少し腑に落ちない点もある。
僕らは急遽この街道を進むことを決めたわけではなく、メシューマから普通に道なりに来たのだ。
情報の精度が確かなら、僕らとの遭遇を考えずにあの隊商を襲うはずがない。

347 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/19(月) 23:33:28 ID:pOxVQJsE0

( ^ω^)(今回に限って情報の精度が落ちたのか、情報を得てないのか、僕らの強さが計算外だったのか……)

思いつく可能性はいくつもあり、そもそもが仮定の話なので正しい答えはわからない。
僕は、捕まえた盗賊団のボスに話を聞こうかと思い立った。

( ^ω^)「けど、どいつもこいつも雑魚面で、どれがボスなのかわからんおね」
つ∪^ω^)「わんおー」
  _
( ゚∀゚)「ブーン!」

( ^ω^)「お?」

突然ジョルジュさんが僕の名を呼びながら斬りかかって来る。
それが何を意味するのか、僕は背後からの殺気で瞬時に理解した。

(=゚д゚)「ラギッ!」
  _
( ゚∀゚)「でりゃッ!」

僕は斜め前方に転がるように避け、その場から離れる。
代わりにジョルジュさんが僕の元いた場所に踏み込み、斬撃を受け止めた。

348 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/19(月) 23:34:55 ID:pOxVQJsE0
  _
( ゚∀゚)「まだいやがったか」

(=゚д゚)「賊の割にはやるラギね」

(´・ω・`)「あれ? ちょっと、ブーン?」

( ^ω^)「うん、止めないとまずいっぽいお」

斬り合いを始めたジョルジュさんと襲撃者だが、この戦いは止めなければならない。
襲撃者の格好を見れば、彼が何者なのかは察することが出来る。

( ^ω^)「ジョルジュさん、ストップ! そっちの騎士さんも止めてくださいお!」

( ^ω^)「僕らは盗賊じゃありませんお!」
  _
( ゚∀゚)「あ? 騎士? そういやそんな鎧だな……」

(=゚д゚)「ラギ? どういう……」

騎士が何かを言い掛けた時、その背後から更に同じ鎧を着けた一団が一斉に現れる。
更にまずい展開になる前に誤解されないよう呼びかけようとしたが、
1人の長身の騎士が進み出て、最初に襲ってきた騎士の前に出る。

349 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/19(月) 23:36:27 ID:pOxVQJsE0

(‘_L’)「止めるんだ、トラギコ。彼らは賊ではない」

(=゚д゚)「団長!」

団長と呼ばれた騎士は、ジョルジュさんに広げた手を向け、武器を下ろしてくれるように頼む。
ジョルジュさんは警戒しながら数歩下がり、斧の刃を下げた。
襲って来た騎士の方も慌てて剣を納め、直立不動の姿勢を取る。

(‘_L’)「大変失礼しました。私はニューソク騎士団長、フィレンクト=ドレイクです」

( ^ω^)「ヴィップの町で魔法道具屋をやってます、ブーン=ナイトウですお」

( ^ω^)「彼らは旅の仲間ですお」
つ∪^ω^)「わんお!」

皆の視線が集まるのを感じ、僕が代表して名乗る。
交渉ごとは僕の役目という事なのだろう。

僕は、自分達がここにいた経緯と盗賊団の事を説明する。
それを聞いたフィレンクトさんは、改めて謝罪をし、騎士団がここに来た経緯を説明してくれる。

(‘_L’)「野外演習をしていた時に、商人からの王都への救援願いの使いと遭遇しましてね」

350 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/19(月) 23:38:07 ID:pOxVQJsE0

使いを出したとはいえ、いくらなんでも早過ぎる到着だと思ったが、
幸運な事に騎士団がたまたま近くにいたらしい。

(‘_L’)「それで急いで駆けつけたのですが、まさかこの少人数で既に盗賊団を壊滅させているとは」

僕達が討伐に向かった事はシラヒーゲさんから聞いていたらしいが、この状況は想定外だったようだ。
腕前に感嘆すると同時に、部下の軽率な行動を心から謝罪するとフィレンクトさんは頭を下げる。

(;^ω^)「頭を上げてくださいお。ニューソクの騎士団長さんにそんなことをされるのは恐れ多いですお」

僕は必死に頭を上げてもらうように頼み、何とか聞き入れてもらった。
その後、現状を説明し、盗賊達を引き渡した。

(‘_L’)「ご協力ありがとうございました」

(‘_L’)「それで1つお尋ねしたいのですが、ブーン殿のこの後のご予定はどのようになっておられますか?」

( ^ω^)σ「ソクホウに向かう予定ですお。彼が騎士学校に入学する予定なんで、送って行きますお」

(;´・ω・`)「ちょ、それは今言わなくてもいいでしょ!?」

(‘_L’)「それはそれは……」

フィレンクトさんは僕の言葉に僅かに笑みを浮かべ、ショボンの方を見る。
ショボンは自分が目指す先にいる人に予期せぬ出会いをし、緊張しているのか顔が強張っている。

351 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/19(月) 23:40:31 ID:pOxVQJsE0

(‘_L’)「いい目だ。君と共に銜を並べる時が来る事を楽しみにしてるよ」

(*´・ω・`)「ありがとうございます!」

(∪^ω^)「わんわんお!」

差し出された手を握り返し、ショボンは頬を紅潮させて礼を述べる。
その目には羨望の思いが溢れているようにも見えた。

(‘_L’)「ブーン殿、ソクホウにお着きになられましたら、1度騎士団の詰所にお越しくださいませんか」

もう少し詳しい話を聞きたいのと、今回の件の礼金を出すからとフィレンクトさんは言う。
僕もこの盗賊団については少し気に掛かる点もあるし、少し迷ったが了解した。

(‘_L’)「それでは、我々はこれで」

(=゚д゚)「そこのあんた、悪かったラギね」
  _
( ゚∀゚)「気にすんな。それより今度手合わせしてくれよ」

僕達はニューソク騎士団一行を見送り、馬車を停めた所へ戻る。
シラヒーゲさん達は未だ馬車の修理中だったが、何人かの騎士が護衛として留まってくれる様だ。
場合によっては馬車が直るまで僕らも留まるべきかと考えていたのだが、その必要はないらしい。

352 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/19(月) 23:42:08 ID:pOxVQJsE0

( ´W`)「お気遣いありがとうございます。こちらの事はお気になさらず出発なさってください」

是非お礼を受け取ってくれと言ってくれたシラヒーゲさんだったが、騎士団から礼金が貰えるし、
その上で困っている人から貰うのも申し訳ないので辞退させてもらった。

ジョルジュさん達も同じ考えのようで、礼金はいらないと断る。
しかし、それでは自分の気が済まないと言うシラヒーゲさんに納得してもらう為、
積荷にあった果物を少しだけ譲ってもらう事で話は収まった。

( ´W`)「本当にこんなものでよろしいのですか?」

( ^ω^)「最初にも言いましたお? 困った時はお互い様ですおって」

( ^ω^)「それに、こんな美味しそうな果物もらえれば十分ですお」

( ゚д゚)「お心遣いだけはありがたく頂きます」

(∪^ω^)「わんわんお!」

僕達は何度も頭を下げるシラヒーゲさんに手を振り、馬車を出発させた。
少し時間を取られてしまったが、特に旅に支障はない。

353 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/19(月) 23:44:08 ID:pOxVQJsE0
   シャクシャク
ξ*゚〜゚)ξ「この果物、甘いわね。初めて食べるけど美味しい」
   シャクシャク
( ^ω^)「見たことないやつだおね。色合いからして南方のものかおね?」
  _ シャクシャク
( ゚〜゚)「俺にはちーっとばっかし甘過ぎるな。瑞々しくてうめえが」
   シャクシャク
( ゚д゚)「そうか? いい塩梅だと思うが」
   グリグリ
从 ゚∀从「ほら、食え? ん? 食わないの? 美味いぞ?」
つ)∪;^ω^)ノシ 「わんおー」

(;´・ω・`)「ハインさん、わんおちゃんに柑橘類は止めてあげてください」

(; ゚д゚)「止めろハイン。それと、お前のわんおちゃんの持ち方はおかしい。離せ」

ξ゚听)ξ「南方っていえば、ひょっとして露店に空きが出来たのって、あの盗賊団の所為だったのかしら?」

ツンの言葉で思い出したが、確かメシューマの商工会で南方からの商人が来られなくなったという話があった気がする。
ハインさんが聞いていた噂と合わせて考えると、その可能性はあると思う。
あいつらのお陰で場所が借りられたと思うと複雑だが、そういうのは巡り合わせだと割り切るしかないか。

354 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/19(月) 23:46:11 ID:pOxVQJsE0

从 ゚∀从「しっかし、あいつら何なんだ? 弱過ぎるにも程があるだろ」

わんわんおを取り上げられて退屈そうなハインさんが馬車から御者台に上がって来る。
ツンが少し僕の方に身を寄せ、スペースを空けた。

( ^ω^)「色々と腑に落ちない点がいっはいなんですおね」

僕は戦闘中に考えていたことをツンとハインさんに説明する。
馬車内に繋がる幌は上げてあったので、ジョルジュさん達にも聞こえたかもしれない。

ξ゚听)ξ「弱いといっても、商人に負けるほど弱くはないでしょうから」

ξ゚听)ξ「護衛の少ない隊商とかの詳しい情報があれば成功はするでしょうね」

( ^ω^)「でも、メシューマ南方の時は、そこそこはちゃんとした護衛もいたはずなんだおね」

その辺りの話は盗賊団を捕まえる事が出来たので、
後で事情徴収をするであろうフィレンクトさんに聞いてみてもいいだろう。

ξ゚听)ξ「そんなの一般人に教えてくれるかしら?」

( ^ω^)「その時はその時だお。聞いてみるのはタダだし」

355 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/19(月) 23:48:13 ID:pOxVQJsE0

从 ゚∀从「あいつはやっぱ強いんだろうな」

( ^ω^)「でしょうね。いかにも騎士然とした方でしたおね」

フィレンクトさんの印象は真面目で礼儀正しい人という感じだった。
背が高く、年は30代半ばぐらいだろうか。
ニューソク騎士団長を勤めるぐらいだから、その強さはかなりのものだろう。

ξ゚听)ξ「でも、思ったより騎士団って人数少ないのね」

( ^ω^)「いや、あれで全部なわけないお」

ニューソク騎士団は10の師団からなる。
全ての師団が出払って王都を空にするはずはないから、あれはほんの一部なのだろう。

各師団にはそれぞれ師団長がおり、それらを束ねるのが騎士団長だ。
だからあのフィレンクトさんは相当偉い事になる。

ξ゚听)ξ「聖騎士団もその師団の中の1つなの?」

( ^ω^)「聖騎士団は完全に別物だお」

356 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/19(月) 23:50:09 ID:pOxVQJsE0

聖騎士団は聖騎士団で独自に団長がいる。
騎士団長と位的にはどっちが上なのかは知らないが、強さは聖騎士団の方が上だろう。
数では騎士団の方が圧倒的に多いが。

从 ゚∀从「ふーん。なるほどねえ」

ハインさんは感心した様に頷き、馬車内に入っていった。
今日はもう少し進んだら馬車を停めて野宿の準備をしようと思う。

( ^ω^)「この先、水場が街道から近いのってどの辺りだお?」

ξ゚听)ξ「そうねえ……この辺かな?」

僕はツンが指し示してくれる地図を確認し、到着までの時間を計算する。
日が落ちる前に着きたいから、少しだけ馬車の速度を上げた。

( ^ω^)「水場といえば、明日には大陸一の湖、マツー湖が見られるかもしれんお」

ξ゚听)ξ「……」

( ^ω^)「どうしたお?」

ξ゚听)ξ「ん? 別に、初めて見る景色だから少し見とれていただけよ」

ツンも僕も王都に行くのは初めてだ。
この辺りのごく当たり前の街道沿いの景色も、ヴィップの周りとはどことなく趣が違うのでツンが見とれるのもわかる。

357 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/19(月) 23:52:11 ID:pOxVQJsE0

( ^ω^)「たまには旅もいいもんだおね」

ξ゚听)ξ「たまにはね」

ずっと旅ばかりだとその内飽きると言うツンだが、
場所ごとに違う景色が見れるのなら飽きないのではないかと僕は思う。

ξ゚听)ξ「どうだかねえ。あんたもその内自分の部屋の布団が恋しくなるわよ」

( ^ω^)「それはあるかもしれんおね。野宿は寝床が固いのが難点だお」

それから、僕らはたわいもない話をしつつ馬車を走らせた。
見知らぬ山に沈む夕日が綺麗だったのがすごく印象的だった。

長く旅を続ければ、綺麗な景色もそうでない景色も沢山目にする事になるのかもしれないが、
どちらにしろ、何かしらの感慨を与えてくれるのだろう。
でも、出来れば綺麗な景色だけを見ていたいと願うのは自然な事だと思う。

僕はこの時、少しだけ旅に対する憧れの気持ちが湧いていた事に気付いていた。


そこからの旅は特に何も起きず順調に進み、翌々日の朝、僕達は王都ソクホウへ辿り着いた。

358 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/19(月) 23:54:40 ID:pOxVQJsE0

 〜 王都ソクホウ 東の入り口付近 〜


( ^ω^)「おー、流石王都、道が全部綺麗に舗装されてるお!」

(∪^ω^)「わんおー」

ξ;゚听)ξ「それほど驚くとこ?」

( ^ω^)「ヴィップなんて、ほとんど地面剥き出しじゃないかお」

ξ゚听)ξ「そうだけど、メシューマだってほとんど舗装されてたじゃないの」

( ^ω^)「あそこのはここほど綺麗じゃなかったお? ここのは石も揃ってるし、しっかり作られてるお」

ξ゚听)ξ「そうね。でも、わんおを散歩させるならヴィップの道の方が良さそうだけど」

( ^ω^)「それはそうかもしれんお」

(∪^ω^)「わんお!」

359 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/19(月) 23:56:28 ID:pOxVQJsE0

(´・ω・`)「ここがソクホウか……」

从 ゚∀从「何だ? 緊張してんのか?」

(´・ω・`)「それなりには。でも、ここまで来たという感動の方が強いかもしれませんね」

( ゚д゚)「流石に、大きな町だな」
  _
( ゚∀゚)「こりゃ確実に道に迷いそうだわ」

それぞれが思い思いの感想を述べるが、共通しているのは皆がソクホウに来るのは初めてという事である。
僕達はほとんどヴィップから出た事がなかったし、ジョルジュさんとミルナさんはメシューマの近郊で育ち、
その周辺とヴィップでしか活動していないという話だ。
  _
( ゚∀゚)「で、まずはどうする?」

当面の僕達の目的は3つ。
ショボンを騎士学校に送る事、騎士団の詰所に向かう事、武器職人と会うことだ。
例外的に僕だけは4つ目の目的があり、薬草パンの販売があるが今日はまだ準備していないので後日の予定だ。

( ゚д゚)「まずはショボンを送るべきだろう。試験に備えて準備もしたいだろうからな」

360 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/19(月) 23:57:48 ID:pOxVQJsE0

(´・ω・`)「ここまで来れば歩いて行けますし、送ってもらわなくても大丈夫ですよ」

( ^ω^)「少ないとはいえ荷物もあるし、ちゃんと送るお」

从 ゚∀从「騎士団に寄って、金貰ってからの方がいいんじゃね? ショボンにも分け前渡さねえと」

(´・ω・`)「いや、僕は報酬はいらないですよ。あんまり働いてないし」
  _
( ゚∀゚)「お前も生命を危険に晒して戦ったんだ。こういうのは遠慮せず貰っとけよ」

( ゚д゚)「そうだぞ、ショボン。それにこれからここで1人で暮らすんだし、何かと入り用になるかもしれん」

(´・ω・`)「お気持ちは有り難いですけど、それなら送ってくれたブーンに運賃として受け取って欲しいです」

頑なに固辞するショボンに、報酬の代わりに皆で少しずつ出し合ったお金を渡す事にした。
友人からの餞別という名目で渡されたそれは、ショボンも流石に拒否する事は出来なかったようだ。

(´・ω・`)「すみません。気を使わせてしまって」

从 ゚∀从「受け取っとけよ。どうせ俺らは騎士団からそれ以上貰う予定だからな」

(∪^ω^)「わんわんお!」

361 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/19(月) 23:59:19 ID:pOxVQJsE0

僕達は再び馬車を走らせ、騎士学校へと向かう。
騎士学校はソクホウの町の北東部にあり、ここからそれほど遠くなかった。

( ^ω^)「多分ここだおね。それっぽい広い運動場みたいなのあるし」

(∪^ω^)「わんわんお!」

(´・ω・`)「だね。その辺でいいよ。ありがとう、ブーン、ここまで送ってくれて」

( ^ω^)「礼はいらんお。送ったのはソクホウ観光のついでだお」

(´・ω・`)「フフ、そういえばそうだったね。まあ、何にせよ、助かったよ」

馬車を停め、地面に降りる。
これでショボンとはしばらくお別れだ。
再び会うのはいつになるのかわからない。

寂しくないと言えば嘘になるが、多分僕よりも見知らぬ地に1人残るショボンの方がもっと寂しいのだ。
それがわかった上で騎士になることを選んだショボンの為にも、ここは笑顔で送り出してあげねばならない。

ショボンは自分の荷物を持ち、居並ぶ僕らの前に立った。

362 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/20(火) 00:00:47 ID:h9WJkvxs0

(´・ω・`)「色々ありがとうございました。またバーボンハウスにも顔を出して貰えると父が喜びます」
  _
( ゚∀゚)「立派な騎士になれよ。お前ならきっとなれる。それと、バーボンハウスには必ず行くぜ、安心しろ」

( ゚д゚)「背中を預けられるような強い男になれよ。またいつか会おう」

从 ゚∀从「お前の淹れたコーヒー好きだったぜ。器用なお前の事だ。俺は何も心配してねえ。がんばれよ」

(´・ω・`)「はい、がんばります!」

ξ゚听)ξ「これでしばらく会えないわね」

(´・ω・`)「うん、騎士になったらなったで、ソクホウに留まる事になるだろうからね」

ξ゚听)ξ「そっか。寂しいけど、それがショボンの決めた道だもんね」

(´・ω・`)「ソクホウに遊びに来てくれれば、いつだって会えるさ」

( ^ω^)「そうだお、ツン。別にこれが今生の別れってわけでもないんだお」

(´・ω・`)「そうそう。また会えた時は3人で馬鹿な話でもして盛り上がろうじゃないか」

363 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/20(火) 00:02:25 ID:h9WJkvxs0

(∪^ω^)「わんお!」

(´・ω・`)「ああ、ごめんね、わんおちゃん。4人で、だね」

ξ゚ー゚)ξ「フフ、そうね。また4人でくだらない話でもしましょうね」

( ^ω^)「ちゃんとコーヒーの淹れ方も修行しとけお?」

(´・ω・`)「勿論。父さんより美味いコーヒーをご馳走するよ」

話し出せばずっと話し続けられそうな僕らだが、いつまでもそうしているわけにはいかない。
僕は言葉を切り、ショボンをまっすぐに見詰めた。
ショボンはすぐに僕の意図を察し、1つ頷く。

(´・ω・`)「じゃあ、僕は行くよ」

( ^ω^)「おう」

ξ゚听)ξ「負けんじゃないわよ」

(´・ω・`)「うん、ありがとう、ツン。ブーンの事よろしくね。これからも色々馬鹿やらかすだろうからさ」

365 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/20(火) 00:06:02 ID:h9WJkvxs0

ξ゚ー゚)ξ「そうね。ちゃんと見張ってるから安心して」

( ^ω^)「失礼な。僕はむしろ見張る側だお?」

(´・ω・`)「はいはい、そういう事にしておこうか」

(∪^ω^)「わんわんお!」

(´・ω・`)「わんおちゃんとのお別れは寂しいけど、元気でね。ご主人様の事を助けてあげてね」
つ∪^ω^)「わんお!」

(´・ω・`)ノ「それじゃあ、元気で。みんな、また会おうね」

( ^ω^)ノ「まただお。お前も元気でやれお」
つ∪^ω^)つ"

僕達に背を向け、歩き出すショボン。
僕達は手を振り続けながら、それを見送る。

自分の道を歩き出したショボンの背は、ほんの少しだけ大きく見えた。

366 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/20(火) 00:07:51 ID:h9WJkvxs0

( ゚д゚)「行ってしまったな……」

从 ゚∀从「お前ら泣くと思ったのに……」

ξ゚听)ξ「こんなんで泣くわけないでしょ」

ξ--)ξ「それに、ショボンが自分で決めたことなんだし、悲しむ理由がないわよ」

从 ゚∀从「そうかもしんねえけど、お前らずっと幼馴染だったんだろ?」

( ^ω^)「そうですけど、そうだからこそ、ショボンが僕らにどうして欲しいかはわかってるつもりですお」

(∪^ω^)「わんわんお!」

从 ゚∀从「そういうもんなのかねえ……」

( ^ω^)「それにもし、僕がほんの少しでも涙を見せようものなら、ショボンは全力でからかいに来ますお」

( ゚д゚)「ハハ、付き合いの短い俺でも、その姿は簡単に想像出来るな」

( ^ω^)「あいつには弱みを見せちゃ駄目なんですお」

367 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/20(火) 00:09:10 ID:h9WJkvxs0
  _
( ゚∀゚)「しかし、これで試験に落ちでもしたら大爆笑だな」

从;゚∀从「お前……空気読めてねえにも程があるぞ。今そんな事言うなよ」

( ^ω^)「その時は思う存分大爆笑してやればいいんですお」

ξ゚ー゚)ξ「一生からかえるネタになるわね」

从;゚∀从「容赦ねえな、幼馴染共」

( ^ω^)「でも、まあ……」

ξ゚听)ξ「落ちないでしょうけどね、ショボンなら」

( ^ω^)「昔から要領だけはいいやつだったおね」

ξ゚听)ξ「抜け目ないもんね」

( ^ω^)「皆で出かける時とか、僕が忘れそうなものはあらかじめ余分に持ってたり」

ξ゚听)ξ「何気なく言った事を、覚えてて後で調べてくれてたり」

368 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/20(火) 00:10:40 ID:h9WJkvxs0

( ^ω^)「いつの間にか僕好みの味のコーヒーを淹れられるようになってたり」

ξ゚听)ξ「ブーンの無茶振りに、不満を言いながらも最良の方法を考えてくれたり」

( ^ω^)「いや、無茶振りするのは大体ツンだったお?」

从 ゚ー从「そっか。お前らよくわかってんだな、ショボンの事」

( ^ω^)「幼馴染ですからね」

( ゚д゚)「いいものだな」

( ^ω^)「はい」

(∪^ω^)「わんお!」

僕達はひとしきり笑い、馬車に戻る。
少しだけ軽くなった馬車の速度を上げ過ぎないように気を付け、僕は馬車を走らせる。

( ^ω^)「……」

369 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/20(火) 00:12:44 ID:h9WJkvxs0

僕は、見知らぬ町並みを見るとはなしに見ながら考える。
誰しもが自分の道を選び、また選ばずともどこかへ向かって進んで行く。

今の僕は好きで魔法道具屋をやっているが、発端はなし崩し的だった事は否めない。
じいちゃんが魔法道具屋をやっていたから、そのじいちゃんが亡くなったから。

( ^ω^)(選ぼうと思えば、今からでも新しい道は選べるんだおね……)

しかし、僕は自分が別の道を歩きたがってるとは思えない。
僕はヴィップでの暮らしが気に入っている。
旅に対する憧れも浮かんだが、それはツンが言う様に、時々だからこそ楽しいのかもしれない。

( ^ω^)(ショボンがいなくなったことで、少しセンチメンタルになってるだけだおね……)

近しい人との別れなんて、そう何度も経験したわけじゃない。
だから僕は少し、戸惑っているのだろう。
  _
( ゚∀゚)「ブーン」

( ^ω^)「お、ジョルジュさん」

馬車内からジョルジュさんが出て来て僕の隣に座る。
その顔はいつになく真剣だ。

370 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/20(火) 00:16:31 ID:h9WJkvxs0
  _
( ゚∀゚)「1つ聞きてえんだが」

( ^ω^)「何でしょうかお?」
  _
( ゚∀゚)「あのバイン・バインドって魔法、名前的に女の子に使ったらバインバインになったりしねえの?」

( ^ω^)「なるわけねえお」

何だか色々と台無しにしてくれたジョルジュさんに、僕は思わず敬語を忘れて突っ込む。
一瞬、僕の沈んだ様子を察して、心配して声をかけてくれたのかと思ってしまった事が非常に腹立たしい。
  _
( ゚∀゚)「そっかー、残念だ。もしバインバインになるなら、ツンに使ってあげればいいと思ったのにな」

(;^ω^)「えーっと、ジョルジュさん……自力で追いついてくださいね」
         _
ξ  )ξ( ゚∀゚)「え? 何──」


          ハヲクイシバレー!!!      ヒデブッ!!!
           ξ#^竸)ξ三///つ(#)゚∀゚).・。 ’

僕は、馬車から転がり落ちるジョルジュさんに心の中で敬礼を捧げ、馬車を止める事無く走らせ続けた。



     第十八話 王都への道 終


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