( ^ω^)は魔法道具屋さんのようです

742 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/15(日) 22:28:20 ID:/IGpyouk0

 〜 ドクオの庵 〜


( ^ω^)「先日は助かりましたお」

('A`)「ああ、わかったから帰れ」

( ^ω^)「サンライズは元に戻ったんだし、機嫌直してくださいお」

('A`)「戻りはしたがな……、お前は色々とお人好し過ぎるんだよ。そもそもだな……」

( ^ω^)「そういえばドクオさんにお土産あるの忘れてましたお。モテモテ通信の最新号ですお」

(*'A`)「何!? 発売日はまだ先だぞ? うお、マジ最新号じゃねえか!」

( ^ω^)(これでお小言は回避と……)



     第二十五話 憂う賢者の語る世界



743 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/15(日) 22:30:26 ID:/IGpyouk0

( ^ω^)「ソクホウに行った時、世話になった人がそれの著者だったんですお」

僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。

(*'A`)「ホントか? それはすごいな。あの流石小町と知り合いになったのか」

彼の名前はドクオさん。
巷では賢者と称される魔法使いで、僕の師匠に当たるが見た目は残念な人だ。

(∪^ω^)「わんわんお」

この子の名前はわんわんお。
僕のペットというか家族で、見た目は子犬だが実は元竜だ。

サンライス騒動から数日後、僕とわんわんおはドクオさんの庵を訪れていた。
シューの事の説明や旅から帰っての色々な物の整理などが一段落したので、ようやく話をしに来れたのだ。

( ^ω^)「流石小町? ああ……」

僕は結局アニジャさんから無理矢理押し付けられたモテモテ通信の裏を見て、ドクオさんの言葉の意味を理解した。
どうやら流石小町というのがアニジャさんのペンネームらしい。
武器職人とモテモテ通信の発行人で名前を使い分けているのだろう。

しかし、オトジャさんのペンネームもあれな感じだったが、アニジャさんのも大概だ。

744 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/15(日) 22:31:43 ID:/IGpyouk0

(*'A`)「どんな人だった、小町ちゃん」

( ^ω^)「小町……ちゃん……?」

(∪^ω^)「わん……お……」

ドクオさんは名前の響きでアニジャさんの事を女性だと誤解しているようだ。
こんな頭の悪い本を妙齢の女性が書いてるとは思い難いのだが、
わざわざ夢を壊すのも無粋なので適当に誤魔化す事に決めた。

( ^ω^)「気さくないい人でしたお」

(*'A`)「そっかー。そうだよな、この詩集とか見ると、飾り気のない人っぽいもんなー」

( ^ω^)「アニ……小町さん、詩集とか出してんですかお」

(*'A`)「おう、出してるぞ。その筋では有名なやつだ」

僕はドクオさんがこちらに差し出した、『サスガ記念日』という詩集をタイトルだけ見て慎んでお返しした。
正直、ろくな事は書いてないと思う。

745 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/15(日) 22:33:37 ID:/IGpyouk0

( ^ω^)「それはそれとして、ちょっとドクオさんに聞きたい事があるんですけど」

('A`)「ああ、何だ? あのシューってやつの事なら俺から言う事はもうないぞ」

シューの話をしたかったわけではないのだが、ドクオさんはもうシューの事を危険視はしていないようだ。
あの時は難癖をつけてばかりだったが、一応はシューの言葉を信じているらしかった。

('A`)「話の筋は通ってたからな。馬鹿馬鹿しい理由だったが」

( ^ω^)「いいじゃないですかお。真っ当に働きたがってるんですお?」

('A`)「人じゃねえけどな。……まあ、人間を襲うつもりはないようだから、放って置けばいいだろ」

関わりたくないというのがドクオさんの本音らしい。
大体の人と関わりたくないと思うのがドクオさんの本音だから、いつも通りといえばいつも通りだ。

('A`)「一応釘は刺しておくが、間違ってもあいつと戦うなよ?」

あの様子なら戦うことにはならないだろうが、もしそうなったら逃げろとドクオさんは言う。
ドクオさんの見立てによると、シューは相当強い悪魔らしい。
シューを見ていると全くそうは見えないのだが、ドクオさんが嘘を吐く理由もないので本当なのだろう。

746 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/15(日) 22:35:38 ID:/IGpyouk0

('A`)「ついでに言えば、あいつは例外中の例外だからな? 悪魔が皆あんな友好的だと思うなよ」

( ^ω^)「それはそうでしょうお。悪魔自体が滅多に会うものじゃないでしょうけど」

悪魔は高い魔力と高度な知性を有し、人間に害するものがほとんどだ。
僕は遭遇した事はなかったが、文献や一般認識ではそう伝わっている。

('A`)「くれぐれも関わり過ぎて余計な事に巻き込まれるんじゃねえぞ?」

(;^ω^)「善処しますお」

(∪^ω^)「わんわんお」

無論、厄介事に巻き込まれるのは勘弁願いたいのだが、
これから別の厄介事の話をするとなるとドクオさんはどんな顔をするだろうか。
そのまずい顔が更に歪みそうなのは容易に想像出来る。

( ^ω^)「で、今日ここに来た本題なんですけど」

とはいえ、フィレンクトさんとの約束もあるし、聞かないわけにもいかない。
僕はソクホウでの話をドクオさんに順を追って説明した。

747 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/15(日) 22:38:22 ID:/IGpyouk0

('A`)「……」

( ^ω^)「……というわけで、その灰衣の魔法使いについて知ってる事ないですかお?」

僕の話が終わっても、ドクオさんは両手を組んで額に当て、俯いたまま黙り込む。
しばらくの後、ドクオさんから大きな溜め息が漏れた。

('A`)「お前さ……」

( ^ω^)「お?」

('A`)「何でそう行く先々でトラブルに巻き込まれてんの?」

(;^ω^)「いや、それは僕の所為ではないというか、むしろ僕が聞きたいとこですお」

ドクオさんは普段の3割増しぐらいの疲れた顔で僕を問い詰める。
しかしながら僕も好き好んで厄介事に巻き込まれているわけではないし、不可抗力みたいなものだ。
今回の件にしたって、襲われている馬車がいたら助けないわけにも行かないだろうから、ある意味不可避の事だ。

('A`)「しかも騎士団長かよ……。ばっちり王宮と関わる事になりやがって……」

748 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/15(日) 22:39:23 ID:/IGpyouk0

( ^ω^)「そういえば、ドクオさんの兄弟子って人にも会いましたお」

('A`)「……お前、ビコーズさんとも会ったのか?」

ドクオさんは僕の言葉にさらに険しい顔をする。
やはり自分の兄弟子が何を言っていたのか、ドクオさんでも気になるものなのだろうか。

( ^ω^)「ええ、僕がソクホウに来たと聞いたらしくて、向こうから会いに来られましたお」

('A`)「何を話した?」

( ^ω^)「思い出話とか世間話とか、これといった用事はなくて、会ってみたかっただけらしいですお」

('A`)「そうか……」

どことなく安堵したような顔でドクオさんは呟くように言う。
そんなに心配しなくても、ビコーズさんはドクオさんの事を大層褒めていたのに。

('A`)「褒めていた……か」

( ^ω^)「じいちゃんが最後まで側に置きたがったくらい、良い弟子だったって言ってましたお」

749 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/15(日) 22:40:43 ID:/IGpyouk0

('A`)「……そうか」

( ^ω^)「お?」

そんな話を聞いても、ドクオさんはあまり嬉しそうには見えず、どちらかといえば苦しそうな表情を見せた。
理由を聞いていいものか迷ったが、ドクオさんはすぐに何でもなかったかのように普段の冴えない表情に戻り、
それは良かったと頷いた。

( ^ω^)「そうそう、ドクオさん、もう1人兄弟弟子もいるって話じゃないですかお」

('A`)「ああ……、モララーの事か」

( ^ω^)「何でも、ライバルみたいな人だったって聞きましたお。どんな人だったんですかお?」

('A`)「自信家でいけ好かない野郎だな。……何でもそつなくこなす優秀なやつだったが」

( ^ω^)「今はラウンジにいらっしゃるとか」

('A`)「ずっと連絡取ってねえから知らんが、まあ、今もラウンジの国政に携わってるんだろうな」

面倒臭いと返答を渋られるかと思ったが、今日はやけにちゃんと答えてくれる。
ドクオさんも2人の事を懐かしく思っているからなのだろうか。

751 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/15(日) 22:43:42 ID:/IGpyouk0

しかし、ビコーズさんもモララーさんもそれぞれの国で要職に就いているとなると、
ドクオさんの境遇が少し不憫に感じる。
ひょっとしてドクオさんの王族嫌いはその辺りの劣等感から来てるのだろうか。

だとすれば僕はドクオさんに対して申し訳なく思う。
恐らくじいちゃんは僕を育てる為に、自分の弟子を1人側に置いていたのではないかと思われる節がある。
ビコーズさんはその事を羨んでいたが、同様にドクオさんはビコーズさんやモララーさんを羨んでいたかもしれない。

('A`)「それはねえから心配するな。少なくとも、俺は……その……何でもねえ」

( ^ω^)「何ですかお? はっきり言ってくださいお」

(A` )「何でもねえよ。……べ、別に、サンライズで過ごした時間が悪くなかったとか思ってねえから」

( ^ω^)「何、この嬉しくないツンデレ?」

(∪^ω^)「わんおー」

冗談はさておき、ドクオさんはじいちゃんと共にヴィップで過ごした事を後悔していないようだ。
だとしてもやっぱり色々と疑問点はあるのだが、それに答えてくれる気はないらしい。

752 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/15(日) 22:44:59 ID:/IGpyouk0

( ^ω^)「それならドクオさんが店長で、サンライズを一緒にやってくれてれば良かったのに……」

('A`)「うるせえな……ああいうのは俺の性に合わねえんだよ」

('A`)「つーか俺の話はどうでもいいだろ? お前が聞きたいのはその、何だ、灰衣の男だっけ? それだろ?」

強引に話を打ち切られ、最初の質問まで話を戻される。
もう少しじいちゃんのお弟子さん達の事とか聞きたかったが、
こっちの話を面倒臭がらすちゃんと取り合ってくれるなら、ある意味ラッキーかもしれない。

('A`)「だが、俺に心当たりはない」

(∪^ω^)「わんおー」

( ^ω^)「実力とか、そういう点から見たらどうですかお?」

('A`)「俺、ビコーズさん、モララーなら出来るかもしれないな」

( ^ω^)「かもしれない、ですかお? 断言ではなく」

('A`)「断言出来ないのは、感知されずにってとこがあるからだ」

753 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/15(日) 22:47:45 ID:/IGpyouk0

('A`)「強大な魔力を隠して魔法を撃つなんて事は、はっきり言って人間には不可能に近い」

( ^ω^)「それは確かにそうかもしれませんお」

('A`)「しかし、可能性として考えられる事はいくつかある」

1つ目は感知されないほど遠くから魔法を撃った場合。
この場合は制御の面から考えると、正直無理があり過ぎると思う。
それだけ高威力の魔法を長距離から放ち、それを制御するなんてどれほどの膨大な魔力が必要だろうか。

('A`)「まあ、そうだな。遠視の魔法も同時に使う必要もあるだろうから、かなり無茶だ」

2つ目は感知させる暇がないほどの高速詠唱が出来る場合。
先ほどに比べると有り得る話だが、過去にそれが出来たのはじいちゃんぐらいのものだ。
並大抵の魔法使いでは無理だろう。

('A`)「無理かもしれないが、世にはまだ俺らの知らない実力者がいてもおかしくはない」

( ^ω^)「そうですおね」

754 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/15(日) 22:49:47 ID:/IGpyouk0

3つ目はそもそも感知しなかった場合。

( ^ω^)「これはどういう事ですかお?」

('A`)「簡単な話だ。まず先に魔法使いだけを殺した」

( ^ω^)「あ……なるほど……」

('A`)「殺さずとも、買収したって方法も考えられるが、その魔法使いも殺されてるんだよな……」

( ^ω^)「どちらにせよ、実現の可能性が一気に高まりましたお」

1人だけ先に殺しておいたとしても、その後広範囲魔法で全てを巻き込むなら殺された順番とかわからないだろう。
これが一番可能性は高いかもしれない。

とはいえ、実際に行われた手段がこれだったとしても、
結局犯人はそれなりに高い実力を持った魔法使いである事は変わらないのだが。

('A`)「ま、今の仮定だと俺ら3人なら実行出来たという証明になるだけだな」

(;^ω^)「確かに……話はあんまり進展してないのかもしれませんお」

755 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/15(日) 22:51:08 ID:/IGpyouk0

('A`)「さらに言えば、この位は既に騎士団長様は考え付いてる可能性もある」

('A`)「可能性を論じるなら、実際は複数犯だった可能性もある。証言したやつが気付かなかっただけとかな」

(;^ω^)「うーむ……結局、確かな何かが無い事には決め手にかけますおね」

('A`)「だからといって、下手に首突っ込んで調べようと考えてないだろうな?」

(;^ω^)「それはフィレンクトさんにも釘刺されましたし、やるつもりはないですお」

('A`)「……それならいいが」

そう言うとドクオさんは顎に手を当て、考え込むような素振りをみせる。
この話はこれでお仕舞いかと思ったが、ドクオさんが徐に口を開いた。

('A`)「……関わるなと言っておきながらこれを言うのもなんだが」

( ^ω^)「お?」

('A`)「あいつなら、ひょっとしたら1の場合でも2の場合でも出来るかもしれない」

( ^ω^)「あいつって、誰ですかお?」

756 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/15(日) 22:53:33 ID:/IGpyouk0

('A`)「シューだよ」

(;^ω^)「お……それは……」

言われて気付いたが、確かにシューがドクオさんの見立て通りの強さなら可能なのだろう。
それでいて魔力を隠せるなら、ひょっとして魔力を隠したまま呪文の詠唱も可能なのかもしれない。

( ^ω^)「あ、でもその日時にはサンライズにいたみたいですお」

シューのチャームは、チャームをかけた以降の記憶はそのまま残っているという話だった。
確かクーがその時間にシューがいたのを証明出来るだろう。

('A`)「だからお前はお人好しだって言うんだよ」

(;^ω^)「お?」

('A`)「あいつがその日その時間の記憶を捏造した可能性もあるだろ?」

('A`)「そこだけチャームをかけたままの残しているかもしれない」

(;^ω^)「それは……」

757 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/15(日) 22:54:44 ID:/IGpyouk0

('A`)「そもそもそんな事をせずとも、悪魔なら何らかの手段で瞬時に移動出来る可能性もある」

(;^ω^)「……」

ドクオさんの言い分は間違っていないと思う。
しかしながら僕には、あのシューがそんな事をするとは思えない。
シューの働きぶりや農具についての反応を見る限り、そんな事をするようには見えないのだ。

('A`)「甘い……と言いたい所だが、それについては正直俺も疑問はある」

('A`)「そんな事はしそうにねえかなと思ってはいるのが本音だ」

(*^ω^)「お……」

('A`)「取り敢えず、そのシューの事を証言したやつにこの薬を飲ませろ」

ドクオさんはまた懐から例の僕が飲んだ粉薬を取り出した。
なるほど、これならもしチャームが残っていても打ち消す事が出来るだろう。

(;^ω^)「あの苦いやつですかお。飲ませたら殴られそうだお……」

(∪^ω^)「わんおー」

758 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/15(日) 22:57:23 ID:/IGpyouk0

('A`)「良薬は口に苦いもんだ、我慢しろ」

僕としては、その理論が気に入らないから色んな薬草を開発しているので、素直に首を縦に振りたくはない。
効果も飲み易さも両立させるのがベストだ。

とはいえ、そんな話をしに来たわけでもないので今それを主張するのは止めておく。

( ^ω^)「それで、シューじゃなかったとしても、他の悪魔の仕業って事も考えられますかおね?」

('A`)「そうだな。ひょっとしたら、それが一番有り得る話かもしれないな」

目的がわからないことには推測の域を出ないが、
悪魔または、悪魔を使役している人間の仕業である可能性も考えられるとドクオさんは言う。

('A`)「まあ、使役する場合は自分より弱い悪魔しか従わせられないだろうから、あまり考えられないが」

( ^ω^)「協力関係なら有り得ると?」

('A`)「師匠と天空竜みたいな関係も過去にはあるからな。有り得ない話ではないな」

珍しく渋らず答えてくれるドクオさんだが、最後はやはりお前は関わるなよと釘を刺して来る。
心配しなくても情報提供だけに止めるつもりだから安心して欲しい。
そりゃ何とかしたいという気持ちもあるが、これが自分の手に余る問題だという事ぐらいは理解している。

759 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/15(日) 22:58:47 ID:/IGpyouk0

('A`)「ならいい。くれぐれも馬鹿な事は考えるなよ?」

( ^ω^)「自分の力の無さは重々承知してますお」

深入りする気がないのは本心だ。
皆に心配をかけてまで背伸びをしようとは思っていない。
亡くなった若い騎士たちの事を思えば何とかしたいと思ってしまうが、それで迷惑をかけるのは本末転倒だ。

('A`)「そんなとこだな。まあ、俺も少し調べてみるわ」

( ^ω^)「お願いしますお」

いつもの事とはいえ、結局ドクオさん預かりになってしまうのは少し申し訳なくも思う。
ドクオさんが言うように、僕は厄介事ばかり持ち込んでいるような気がする。

( ^ω^)「っと、そういえばもう1つ聞きたい事があったんですお」

そんな事を考えながらも、もう1つ厄介事の話があったのを思い出した。
と言っても、新しい厄介事ではなく、前のやつが進展した話だが。

( ^ω^)「行き掛けにメシューマで、あのヴィップの教会で会ったデレって子にまた会ったんですお」

760 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/15(日) 23:00:08 ID:/IGpyouk0

僕はデレから聞いた事をドクオさんに話す。
大した事は聞けなかったが、1つ気になる事があった。

( ^ω^)「やっぱりデレは教会から盗まれた物が何か知ってるようでしたお」

('A`)「ふむ……、その件なら俺の方も1つわかった事があったぞ」

('A`)「と言っても、大した事じゃないが、どうやらその件は協会本部でも結構問題になってるようだな」

('A`)「その盗まれた物の捜索隊が近々組まれるらしい」

多分、ヒッキーさんが出した報告を教会本部が受け取って、それから話が大きくなったのだろう。
ヒッキーさんも本部から査察が来るかも知れないと言っていたが、その件はどうなったのか聞いていない。

( ^ω^)「となると、盗まれた物は何か重要なものだったんですかおね」

(;^ω^)「じゃあ、何で無人の教会に放置してたんだって話ですおね」

('A`)「さてな。ひょっとしたらそこにあった事を教会本部は知らなかったとかな」

(;^ω^)「盗品でも保管してたって事ですかお? 教会に? ちょっと無理ありませんかお?」

761 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/15(日) 23:01:43 ID:/IGpyouk0

('A`)「ちょっと思い付いただけだ。あまり深く考えるな」

( ^ω^)「あと、デレは少し気になること言ってたんですおね」

( ^ω^)「『危険なものとかじゃないから、今は』、って」

(∪^ω^)「わんお!」

( ^ω^)「それって、いつか、もしくは過去に危険な物だったって事ですおね?」

('A`)「その言い方だとそう取れるな。まあ、結局盗まれた物が何かわからないことには何とも言えんが」

仮に危険なものだったにしろ、今はヴィップの町には無いのだからどうという事もないのだが、
どういう風に危険な物なのかは気になる所だ。
例えば世界を滅ぼすような危険な何かなら、誰もが無関係だとか言ってられなくなる。

('A`)「そんな都合のいい強力な道具があるわけ……いや、そうか、それがあったな……」

( ^ω^)「何ですかお、その意味深な感じは?」

('A`)「もう、千年紀を回ったのか……? それとも、ただ集めているだけか?」

762 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/15(日) 23:03:39 ID:/IGpyouk0

ドクオさんは僕の問い掛けには答えず、1人で何事かをぶつぶつと呟いている。
聞き覚えのない単語がいくつも聞き取れるが、どれも何か不穏な響きがあるのは気の所為だろうか。

('A`)「……」

( ^ω^)「ドクオさん? 聞こえてますかお? ドクオさん?」

('A`)「ん……? ああ、すまん。聞こえてるよ、迸る俺の魅力について聞きたいんだよな」

( ^ω^)「そんな無い袖を振らせる様な事はしませんお。何ですかお、その千年紀とかって?」

('A`)「あれだ、顔を洗う時に水を溜めておく……」

( ^ω^)「そりゃ洗面器ですお。誤魔化そうとしても無駄ですお? ちゃんと聞こえたんですから」
つ∪^皿^)

露骨に誤魔化してくるドクオさんに、わんわんおをけしかけようとしてみせる。

(;'A`)「わかったって。ちゃんと話すからそいつをこっちに向けるな」

('A`)「……といってもまあ、別に隠すような話でもないんだがな」

( ^ω^)「お?」

764 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/15(日) 23:04:47 ID:/IGpyouk0

('A`)「千年紀の王、いわゆる魔王の話さ」

( ^ω^)「魔王……」

ドクオさんの話を簡単にまとめると、この世界には魔王と呼ばれる強力な悪しき存在が過去にいて、
人間を滅ぼそうとしたとの事だ。
そして戦いの果てに人間の手によって倒されたらしい。

しかし、魔王はその千年後、また復活したという。

('A`)「倒しても倒しても、その千年後には復活する迷惑極まりない存在さ」

( ^ω^)「それはまた、大変なお話ですおね」

千年紀が何を指すかはわかったが、それについて少し疑問がある。
何でそんな何度も繰り返し起こった歴史上の事を、僕が知らないのかだ。

僕は魔法使いで魔法道具屋という事もあり、魔法の勉強や道具の鑑定の為に歴史も一通り抑えてある。
それほど大きな事件がどこにも記されていないのは不自然だ。
見落としたとは思えないし、僕だけじゃなくもっと広く世間一般に知られていて然るべき話だと思う。

('A`)「簡単な話だ。意図的に歴史から削除されているからさ」

(;^ω^)「何でですかお?」

765 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/15(日) 23:06:56 ID:/IGpyouk0

( ^ω^)「千年ごとに復活するのが確定なら、広く知らしめてそれに対して備えるべきじゃないですかお?」

('A`)「少々言い方が悪かったな。千年ごとに復活するのは確定というわけじゃないんだ」

ドクオさんによると、千年ごとに復活可能な条件が揃うだけで、自然に復活するわけじゃないらしい。
しかしながら、千年ごとに魔王は復活している事実もあるという事だ。

('A`)「これがどういう事かわかるか?」

( ^ω^)「……誰かが復活させたという事ですかお?」

('A`)「正解だ」

それは力を欲した誰かであったり、世界に絶望した誰かであったり、はたまた権力の虜となった誰かであったりと、
過去に必ず人の手によって復活させられたのだという。

(;^ω^)「何だお、それ……馬鹿げてるお……」

人間がそこまで愚かだとは思いたくないが、残念ながらこれは事実なのだとドクオさんは冷たく言い放つ。
だからこそ先人達は歴史からその事を削除し、魔王を復活させようと考える者が出ないようにしたという事だ。

766 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/15(日) 23:08:48 ID:/IGpyouk0

('A`)「しかしまあ、俺のように知ってるやつもいるんだから、根本的な解決策にはなって無いんだがな」

('A`)「とにかく、その復活の条件が整うのが千年期で、それが遠からず訪れるって話だ」

( ^ω^)「それが訪れたらどうなるんですかお?」

('A`)「あくまで条件の1つだからな。残りの条件を満たさない限りは魔王の復活はない」

( ^ω^)「残りの条件って何ですかお?」

('A`)「ここから先は本来無闇に話すべき話ではないんだが……お前は知っておくべきだろうな」

('A`)「魔王の復活の鍵となる道具を集め、復活の儀式を行う」

('A`)「そうすると、その儀式の場にいたもっとも欲深き者が魔王に選ばれるって寸法さ」

( ^ω^)「欲深き者? それに選ばれるってどういう事ですかお?」

ドクオさんの話によると、魔王というものはその魔王というモンスターがいるわけではなく、
人間に取り憑き、魔王に変えてしまう物らしい。

767 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/15(日) 23:11:16 ID:/IGpyouk0

('A`)「で、欲深き者といってはいるが、儀式を開いたやつといってもいいんだろうな」

('A`)「欲深いからこそ魔王の力を欲するんだからな」

( ^ω^)「把握。何か意外と簡単っになれるっぽいですおね。どんな儀式かは知りませんけど」

(∪^ω^)「わんおー」

('A`)「実際、儀式といっているが道具を集めて願う程度の簡単な物のはずだ」

( ^ω^)「となると、魔王復活の為にはその道具集めが一番の肝となるわけですおね」

('A`)「そういう事だな」

(;^ω^)「おー、ようやく話が繋がりましたけど、ひょっとして教会の件はそういう事ですかお?」

つまりドクオさんは、教会から盗まれたのがその魔王の復活の鍵となる道具なのじゃないかと危惧しているらしい。
何故それがヴィップの教会にあったかは定かではないが、可能性の1つとしては有り得ると。

('A`)「ちょっと話が飛躍し過ぎているし、あくまで可能性の1つだがな。全く関係ないかもしれない」

( ^ω^)「でも、その千年紀ってやつが近いって事は、今後そういう話を聞く可能性もあるんですおね」

768 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/15(日) 23:13:53 ID:/IGpyouk0

( ^ω^)「ちなみに、その道具ってどんなやつなんですかお?」

('A`)「俺も実物は見た事がないから形とかはわからないな。名前だけなら知っているが」

何でも、魔王の頭骨、魔王の朱玉、魔王の衣という揃いも揃って物騒な名前らしい。

( ^ω^)「あれ、何かどこかで聞いたような名前が混ざってるお」

ごく最近、魔王に関する名前のものをどこかで聞いた気がする。
あれはどこでだっただろうか。

(∪^ω^)∩「わんわんお!」
 ⊃
( ^ω^)「お?」

∩(∪^ω^)「わんお!」
     ⊂
( ^ω^)「そうだお、メシューマのポスターだお!」

('A`)「……ねえ、何で今ので思い出せたの?」

769 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/15(日) 23:15:33 ID:/IGpyouk0

そういえばメシューマの町で見た闘技大会のポスターに、魔王の朱玉という名前が出ていたはずだ。
多分、これがその魔王復活の鍵となる道具の1つで間違いないだろう。

('A`)「メシューマか……。何でまたそんな物を商賞品にしたかねえ……」

単に珍しい宝石として出されたなら裏を考える必要はないのだが、用途を知っててその名を出したのなら、
少々面倒な事になるとドクオさんは言う。

('A`)「具体的に言うと、他に魔王の道具を集めてるやつを誘き出すとかな」

( ^ω^)「主催はメシューマの商工会ですお? 商工会が悪巧みしてるって事ですかお?」

('A`)「可能性が無いわけじゃないだろ。あそこの商工会長ほどの要人なら千年紀の事を知っていてもおかしくない」

( ^ω^)「おー……」

('A`)「まあ、それが善意によるものなのか、その逆なのかもわからねえがな」

何だか話が一気に怪しい雲行きになって来た。
ひょっとしたら、今この世界は結構危うい状況にあるのではなかろうか。
誰かが悪意を持って事を進めれば、魔王の復活も現実的に有り得るのだ。

('A`)「だとしても、お前や普通の人達はいつも通りの暮らしをしていればいいのさ」

( ^ω^)「お、でも……」

770 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/15(日) 23:16:53 ID:/IGpyouk0

('A`)「何の為に王や騎士がいて軍隊がいる? そして俺達のような賢者と呼ばれる者もいるんだ」

('A`)「それにこれはまだ推論だらけの想像の話だ。千年紀の話は本当だが、そう簡単に魔王の復活なんてさせねえよ」

( ^ω^)「ドクオさん……」

いつに無く真面目な熱の篭った口調でドクオさんはそう宣言する。
千年紀の事は不可避の事としてドクオさんは知っていたのだろう。
多分、じいちゃんもその事を知っていたはずだから、何かしら備えがあってのこの自信なのかもしれない。

('A`)「まあ、そんなとこだ。託された物はちゃんと預かってる。心配するな」

( ^ω^)「はいですお!」

(∪^ω^)「わんお!」

僕はドクオさんの力強い言葉に、元気良く頷き返した。
何かあってもドクオさんがきっと何とかしてくれる。
そう思えた事が、僕の心を軽くしてくれた。

それから僕は少し近況の話をし、ドクオさんの庵を辞してヴィップの町に戻った。

771 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/15(日) 23:18:36 ID:/IGpyouk0

 〜 魔法道具屋サンライズ 〜


( ^ω^)「この辺で今日は店仕舞いと行くかお」

川 ゚ -゚)「うむ、お疲れさん」

(∪^ω^)「わんわんお!」

ドクオさんの庵から戻り、店番を頼んでいたクーと共に本日の営業を終わらせ、後片付けをする。
ごく普通の作業だが、何だかすごく久しぶりな気がする。
  _,
川 ゚ -゚)「私の出番も随分と久しぶりな気がするな」

(;^ω^)「何の話だお。いいから入り口のとこの掃除頼むお」

実に10話ぶりだとか何だとかぼやくクーをスルーし、本日の売り上げを計算する。
長期間店を離れてたりシューの事とか色々あったが、旅に出る前より僅かに売り上げは増えている。

( ^ω^)「売れ筋が薬草パンと薬草おにぎりってのは、魔法道具屋としてどうかと思うけどね」

(∪^ω^)「わんお」

772 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/15(日) 23:20:14 ID:/IGpyouk0

薬草パンを買いに来る客が増えたのは、僕が宣伝したから自業自得なのだが、
薬草おにぎりまで買いに来る客が出て来たのは想定外だった。

チャーム中の産物だったとはいえ、薬草おにぎり自体はその味で売れていたようだ。
シューは薬草おにぎりを気に入るようなチャームはかけてなかったらしい。

その結果、元のサンライズに戻っても薬草おりぎりを売ってくれという注文が少なからず出て来たのだ。

( ^ω^)「元は僕のアイデアだし、喜んでもらえるなら売るのは全然かまわないんだけどね」

(∪^ω^)「わんわんお」

あまり派手にやり過ぎると、ヴィップの他の店の領域を侵犯しそうで少し気掛かりだったが、今の所は特に問題はない。
むしろ他の店からも観光客誘致の1つとして歓待されている節もある。

川 ゚ -゚)「掃除終わったぞー。よし、パンもーらいっと」

(;^ω^)「せめて食べていいか断ってからにしてくれお。一応売り物なんだし」

川 ゚〜゚)「いいだろ……ムグムグ……どうせ今日中に処分するんだし……モグモグ……」

773 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/15(日) 23:24:07 ID:/IGpyouk0

( ^ω^)「まあ、そうだけども。今日は2つ残っちゃったかお。作りすぎたかおね」

2つぐらいなら御の字だとは思うが、理想は少し足りないぐらいにして、購買欲を駆り立てるくらいの方がいい。
おにぎりの方がバリエーションがある為か売れ行きは良いから、パンもバリエーションを増やすべきか。

川 ゚ -゚)っ「そうか? 私はこのプレーンのやつが一番好きだがな? シンプルで美味いぞ」

( ^ω^)「そう言ってくれるのは嬉しいが、2個目は渡さんお」

僕は素早くもう1つ残っていたパンを手に取り、口に運ぶ。
労働の後の食事は美味いものである。

川;゚ -゚)「ぬおっ!? 貴様、私の薬草パンを!」

( ^ω^)「お前のじゃねえお。ほら、わんおにも半分あげるお」

(∪*^ω^)「わんわんお!」

川 ゚ -゚)つ「じゃあ、私はわんおから半分貰おう」

({(^ω^∪)彡「もぐもぐお」

774 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/15(日) 23:26:58 ID:/IGpyouk0

(;^ω^)「それは人として恥ずかしいから止めろお」

パンをくわえて逃げるわんわんおを追い掛けるクー。
冗談でやってるのかと思いきや、その目は本気だ。
僕は仕方なく、自分の手にあった残りの半分のパンを更に割ってクーに渡す。

川*゚ -゚)「うむ、働いた後の薬草パンは格別だ」

(;^ω^)「お気に召して頂いて幸いだお」

気品の欠片も無く薬草パンにかぶりつくクー。
すっかりヴィップの暮らしに馴染んだ所為か、元からこんなだったかは判断付きかねる。

ただ、少なくとも楽しそうではあるので、王宮暮らしよりは水があっているのかもしれない。

( ^ω^)「そうだお、ちょっとクーに聞きたい事があったんだお」

川 ゚ -゚)「ブーン店長のおごりで晩飯か? 勿論かまわんぞ?」

(;^ω^)「誰もそんな事言ってねえお」

775 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/15(日) 23:28:07 ID:/IGpyouk0

話なら食事をしながらでもいいだろうというクーだが、王宮の事なので他人に聞かれないような場所の方がいい。

川 ゚ -゚)「王宮の? わかった、聞こうか」

一応、クーやトソン君には街道での騒ぎ、灰衣の魔法使いの話は既にしている。
騎士団が襲われた事はもう、世間一般的にも知れ渡っているので隠す必要はない。
灰衣の魔法使い1人の仕業というのは世間的には隠されているが、クー達には話しておいた。

( ^ω^)「ビコーズさんに会ったんだお」

川 ゚ -゚)「うむ……それで?」

( ^ω^)「あの人、じいちゃんの弟子だったって言ってたお」

川 ゚ -゚)「そうだな。それは別に隠してはいないからな。だからこそ宮廷魔術師になれた部分もあるし」

( ^ω^)「そうだったのかお。まあ、そこはいいんだけど、ほとんど世間話しかしてないし」

(∪^ω^)「わんお」

( ^ω^)「けど、別れ際に言われたんだお、『クー様の事をよろしく』って」

川 ゚ -゚)「ふむ……私がここにいる事を知っているという事か」

776 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/15(日) 23:30:02 ID:/IGpyouk0

その事自体も別に不自然ではないとクーは言う。
昔から独自の情報網を持ち、情報戦には長けている人だったという事だ。

川 ゚ -゚)「とにかく頭のいい人だったな。無表情で感情が全く読めないから、子供心には少し怖かったが」

悪い人ではなかったとクーは続ける。
真面目で国を思っている人だとも。

( ^ω^)「そんな感じは僕も受けたお。けど、それなら何でクーの事は黙認なんだろうおね?」

川 ゚ -゚)「会ったなら気付いてると思うが、ペンダントの事で言い添えてくれたのはあの人だよ」

( ^ω^)「抜け出す手伝いもしたのなら、黙認するのも当然と?」

そもそも、何故手伝ってくれたかがわからない。
単にクーの気持ちを汲んでくれただけなのだろうか。

川 ゚ -゚)「そうだなあ……、そんなわがままを聞いてくれそうな人ではないと思うが……」

何かしらちゃんとした理由がないと許してくれない人という印象だったから、
クーはビコーズさんには王宮を抜け出す相談はしていなかったという。

777 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/15(日) 23:31:20 ID:/IGpyouk0

川 ゚ -゚)「でも、どこで聞き付けたのか向こうからアドバイスしてくれたんだよな……」

( ^ω^)「むしろ率先して手伝ってくれたって事かお」

それが何を意味するのか、僕にはよくわからない。
単純に、どうせすぐ諦めて帰ってくるだろうからと、
こっそり見張りもつけて抜け出させたとかいうものならいいのだが。

川 ゚ -゚)「1度外に出て痛い目を見て来いってわけか。それなら納得はいくが」

( ^ω^)「それだと、予想以上に庶民の暮らしに馴染んでるクー見て慌てそうなとこだおね」

(∪^ω^)「わんわんお」

だがビコーズさんは、クーをよろしくと言ったのだ。
現状を知ってのこの言葉だから、すぐに帰って来る事は期待してないと見るべきか。

川 ゚ -゚)「私の、見聞を広めるという言葉を信じてくれての事だったらいいなあ」

( ^ω^)「本音は堅苦しい王宮が嫌で、適当に世界をぶらぶら見てみたいだったお?」

778 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/15(日) 23:33:32 ID:/IGpyouk0

ここ最近色々な事があったので、僕は少々勘ぐり過ぎている部分はあると思う。
クーの言うように単純な理由か、監視の届く範囲にあるから黙認されているだけなのかもしれない。

川 ゚ -゚)「自分で言うのもなんだが、私はそこまで期待されてないだろうからな」

能力的な話ではなく、立ち位置的な話だがとクーは言う。
末子な上に女なので王位の継承順位は低く、嫁ぎ先が決まってるという事もないらしい。

川 ゚ -゚)「だからといって、何もせずに遊んで暮らす気はないけどな」

川 ゚ -゚)「今がモラトリアムな期間だとわかってはいるつもりさ」

( ^ω^)「クーもちゃんと考えてはいるんだおね」

川 ゚ -゚)「そりゃな。王族として生まれれば嫌でも考えざるを得ないさ」

( ^ω^)「何と言うか、大変だおね」

川 ゚ -゚)「生まれに関しては、お前だって他人の事は言えないぞ?」

( ^ω^)「お……」

779 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/15(日) 23:35:14 ID:/IGpyouk0

じいちゃんの名は、下手をすれば王家のそれを上回る威光があるとクーは言う。
ビコーズさんの様な態度を見れば、僕自身もそれは頷かざるを得ない。

( ^ω^)「まあ、でも僕の方は孫だって事を広く知られてないからまだ気楽だお」

川 ゚ -゚)「そうかな? お前自身が結構おじいさんの名に引っ張られてる部分があると思うが」

( ^ω^)「どういう事だお?」

川 ゚ -゚)「単に子供の憧れの様な英雄願望ならいいが、そこに義務感を持つ様になったら考え物だぞ?」

( ^ω^)「それは……確かにそうかもしれんお」

僕自身がじいちゃんの名を特別視し、その孫である自分をも特別視してしまうとクーは言いたいのだろう。
じいちゃんが世界の安定に務めていたからといって、世間を騒がす何かが起こった際に、
僕が何とかしなければと思ってしまうのはどうなのかと。

無論、そんなつもりはないが、そう言われても仕方がないくらい気にしているように見えるのかもしれない。
自分では意識していないのだが、そう見えるからこそ、
ドクオさんにも何にでも首を突っ込むなと毎回釘を刺されている恐れもある。

780 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/15(日) 23:37:04 ID:/IGpyouk0

( ^ω^)「そうだおね、その辺はもっと気を付けるお」

川 ゚ -゚)「まあ、騒動の種になりかねない私が言うのも申し訳ないがな」

( ^ω^)「いや、今の言葉はちょっとありがたかったお。これからはそういうとこにも気を付けるお」

王族として生きて来たクーは、ひょっとしたら今僕が気付かされた様な事は昔から意識させられて来たのだろうか。
特別である事を意識させられ、しかし、それほど期待もされていないというのはどういう気持ちだったのだろう。

川 ゚ -゚)ヾ「何だ? 私の顔に何か付いてるのか?」

(;^ω^)「い、いや、何でもないお……」

思わずクーの顔を見詰めてしまっていた自分に気付き、慌てて目を逸らす。
別に慌てる必要もなかったのだが、何故かそうしてしまった。

川 ゚ -゚)「む……何か気になる言い方だな? 何か付いてるんだな? パンくずか? わんお、取ってくれ」

(∪^ω^)「わんおー」

(;^ω^)「何でもないお。だから気にすんなお」

781 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/15(日) 23:38:21 ID:/IGpyouk0
  イーッ イーッ
川 ゚皿゚)(^皿^∪)

わんわんおを抱き上げ、自分の顔の前に持って来るクー。
僕はそれが何だかおかしくて、笑って見ていた。

川 ゚ -゚)「ふむ、取れたようだな」

(∪^ω^)「わんお!」

( ^ω^)「取り敢えず、僕の話はそんなとこだお」

川 ゚ -゚)「うむ、では晩飯だな、店長のおごりで」

(;^ω^)「何でそうなるんだお……」

( ^ω^)「まあ、いいお、バーボンハウスにも行きたかったから、ついでにおごってやるお」

川*゚ -゚)「流石店長! よっ、太っ腹!」

(∪^ω^)「わんわんお!」

782 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/15(日) 23:40:35 ID:/IGpyouk0

僕達は店の片付けを手早く済ませ、外に出る。
ドアの鍵をかけた所で、もう1つ聞きたい事があったのを思い出した。

( ^ω^)「そういえばクーは千年紀って知ってるかお?」

川 ゚ -゚)「顔を洗う時に水を溜めておく……」

( ^ω^)「それは洗面器だお。そのボケはもういいお」

どうやらクーは千年紀の事を知らないらしい。
王族なら全員知っているというわけでもなさそうだ。
知らないのならば今は無理に知らせる必要もないので、僕は適当に誤魔化しておいた。

( ^ω^)「おっと、そうだ、クー、これ飲んでくれお」

川 ゚ -゚)「何だこれ? 何の粉末だ?」

( ^ω^)「チャーム解除の薬だお。念の為、チャームが残ってないかどうか確かめたいんだお」

川 ゚ -゚)「ふむ……、別にかまわんが」

そう言うなりクーはすぐさまそれを口にした。

783 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/04/15(日) 23:42:35 ID:/IGpyouk0

( ^ω^)「ただし、すげえ苦いお」

川 ゚〜゚) ゴクン……

川 〜 )

川  - )「そ……」

( ^ω^)「そ?」

川 ;д;)「それを先に言えええええぇおべろぼしゃぶわッ!?」

(;^ω^)「いや、いきなり飲むとは思わなかったんで……って、きたねえ!?」

(∪;^ω^)「わんおー」

僕はクーに咽ながら殴られ、その後、バーボンハウスでしこたまおごらされる事になってしまった。



     第二十五話 憂う賢者の語る世界 終


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