- 361 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/09(土) 00:46:24 ID:MdioEx2c0
〜 キマスタの町 北門 〜
( ^ω^)「やって来ましたキマスタの町」
(゚、゚トソン「港町だけあって、潮の香りが強いですね」
川 ゚ -゚)「どことなく、国籍不明な感じの町だな」
ξ゚听)ξ「何だかニューソクの町っぽくないわね」
(∪*^ω^)「わんわんおー」
( ^ω^)「どこからか魚の焼けるいい匂いがするお!」
第三十三話 聖骸布争奪戦
- 362 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/09(土) 00:47:40 ID:MdioEx2c0
( ^ω^)「……などと、のんびりしてられる場合でもないんだおね」
僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。
僕とツン、クーとトソン君、それにわんわんおはニューソク大陸最南端の町、キマスタに来ている。
ヴィップからはかなり遠い場所で、ここに来るのは全員初めてなので少々浮かれているかもしれない。
しかしながら僕らはここに観光に来ているわけではなく、聖骸布を盗んだボルジョアを捕まえる為に来ている。
結局道中では追い付けず、ここキマスタの町まで辿り着いてしまったので、
あとは既にボルジョアが船で逃亡していない事を祈るばかりだ。
(゚、゚トソン「さて、まずは港でしょうかね」
川 ゚ -゚)「だな。しかし、全員で行くのも効率が悪いし、二手に別れるか」
クーの提案に乗り、僕とツンとわんわんおは港へ、クーとトソン君は宿場街を調べる事に決めた。
( ^ω^)「港は南西側だから、ここに集合だと遠いお」
ξ゚听)ξ「まずは全員で中央に向かって、集合場所を決めましょうか」
- 363 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/09(土) 00:48:54 ID:MdioEx2c0
川 ゚ -゚)「それがいいだろうな」
(∪^ω^)「わんわんお!」
ひとまず全員で町の中央に向かって歩く。
馬車は既に入り口近くの預かり所に預けてある。
場合によってはまた馬車で追い掛ける必要が出て来るかもしれないから、町中に停めるのは避けた。
キョロキョロ
(((゚、゚トソン))「かなり活気のある町ですね」
おのぼりさんよろしく、トソン君がきょろきょろと回りに目を奪われながら歩いている。
気付けば僕やツン達も、視線をあちこちに飛ばしていた。
無論、ボルジョアを探す為にそうしているのだが、気を付けないと町の景色に目を奪われたりしていて、
ボルジョアの事が頭から消えている時がある。
( ^ω^)「メシューマとはまた違った感じの活気だおね」
メシューマもここも商売人が元気なのは変わりないが、こちらは海産物やラウンジからの輸入品であろう物が多々見られ、
明らかにメシューマとは雰囲気が違う。
店の人も漁師を兼ねている人が多いのか、どことなく海の男的な荒っぽい印象を受ける。
- 364 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/09(土) 00:50:32 ID:MdioEx2c0
川*゚ -゚)「門の辺りでも結構匂って来てたが、近付くと更に強烈だな」
(∪*^ω^)「わんお!」
ξ゚听)ξ「まずは情報収集が先よ? 食べるのはあとあと!」
( ^ω^)b「あ、この貝串ってやつを5本──」
イッタソバカラァァァッ!!! ココデカワネバ オトコガスタルオ!
ξ#゚听)ξ三///つ(#)゚ω゚).・。 ’
殴られながらも何とかツンを宥め、このあたりの特産らしい珍しい貝の身の串焼きを購入する。
散々文句を言っていたツンだが、食欲を著しく刺激する香ばしい匂いには抗えなかったようだ。
川*゚〜゚)「これは美味いな。ソクホウやヴィップにはない味だ」
ξ゚〜゚)ξ「味付けが独特ね。あ、でもどこかで……」
( ^ω^)「前にシャキンさんが使ってた香辛料の味に近いお。あれ、南の方のだったのかもしれんお」
(゚、゚*トソン「美味しいです」
(∪*^ω^)「わんわんお!」
- 365 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/09(土) 00:51:42 ID:MdioEx2c0
買ってすぐ歩きながら食べるのは、元聖騎士であるトソン君に咎められるかと思ったが、特に気にしてないようだった。
ヴィップでそういう暮らしに馴染んだとかではなく、元々ソクホウにいた頃も、
クーに引っ張り回されて買い食いする事はあったらしい。
川 ゚ -゚)「この町はしばらく滞在したくなる食べ物の美味さだな」
僕に借金を返し終わったら、しばらくこのあたりに滞在しようかとクーは言う。
以前の話だと、北の方に行きたいと言っていた気もするが、
歴史的な意義が食べ物にあっさり負ける辺りはクーらしいとも思う。
ξ゚听)ξ「さあ、この辺りでいいでしょ。ここからは真面目に情報収集よ」
中央広場と書かれた公園のようなスペースに辿り着いた僕らは、海の神様を象ったらしい銅像の前を集合場所に決め、
二手に別れる。
ξ゚听)ξ「クー、買い食いばっかりしてないでちゃんと探すのよ?」
川;゚ -゚)「か、買い食いなんてしないさ! ホントだぞ!」
( ^ω^)「トソン君、しっかり頼むお」
(゚、゚トソン「はい、任せてください。何かありましたら、またあの魔法を打ち上げるという事で」
- 366 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/09(土) 00:52:58 ID:MdioEx2c0
クー達と別れ、僕達は町の南西側に向かう。
それなりに混み合う通りを抜けると、海からの潮風が強く感じられるようになって来た。
ξ゚听)ξ「ホント、港町って感じね」
(;^ω^)「これ、あとで乾くとべたつきそうだおね」
(∪^ω^)「わんおー」
情報収集しながら港内を進むも、手がかりは得られず、僕らは船が係留してある埠頭に辿り着く。
そこでもボルジョアの写真を見せたり話を聞いてみたが、目撃証言はない。
( ^ω^)「来てないのかおね?」
ξ゚听)ξ「まだ到着してない可能性もあるわね」
ナカノヒトの町からキマスタの町まで、通常、馬車の旅なら5日ほどかかる。
しかし、僕達はクーの巧みな馬術により、4日ほどで到着出来ていた。
ξ;--)ξ「巧みというか無謀というかね……」
( ^ω^)「正直、最初はちょっと生きた心地がしなかったおね」
(∪;^ω^)「わんわんお」
- 367 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/09(土) 00:54:01 ID:MdioEx2c0
自己申告で得意と言っていたクーの馬術の腕は、確かになかなか巧みなものだったと思う。
しかし同時に、かなり飛ばし過ぎていたのも事実だ。
ξ゚听)ξ「直線が多い街道でよかったわよね」
( ^ω^)「慣れると結構楽しかったお」
ただ、飛ばし過ぎに見えながらも、馬を潰さぬよう適度に加減していたのは感心させられた。
それ以外にも交代制で夜通し走る日も設けたので、かなり時間の短縮が出来た。
しかし、無理をし過ぎて体調を壊したりしては本末転倒なので、そこは気を付けている。
( ^ω^)「傷はもう大丈夫かお?」
ξ゚听)ξ「何とかね。あんたも体調はもういいの?」
( ^ω^)「魔力はばっちり回復してるお」
4日もあれば若い僕なら魔力は完全に回復する。
いくら急いで追って来たといっても、その間に馬車内で十分に休めたのだ。
( ^ω^)「しっかし、ソクホウの港に比べるとすごい船の数だおね」
- 368 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/09(土) 00:55:31 ID:MdioEx2c0
ξ゚听)ξ「港の規模じゃニューソク大陸一なんでしょ?」
(∪^ω^)「わんわんお」
漁業は勿論の事、ラウンジとの交易も盛んなキマスタの港は、
これまで見た事もないような色んな船が何隻も停泊していた。
と言っても、船自体がそんなに馴染みがあるわけでもないので、どれも珍しく見えるのは当たり前かもしれない。
ξ゚听)ξ「でもこうして並んでるのを見ると、どれも大体の作りは同じよね」
( ^ω^)「まあ、そうだおね。規模と動力の違いぐらいで、フォルムは似てるお」
ξ゚听)ξ「それに比べると、私達が乗った唯一の船って、随分変わってたんだと今更ながら気付かされたわ」
( ^ω^)「あれはだいぶ特殊な例だおね」
僕達が唯一乗った事のある船、アニジャさんの船はここにあるどれとも一線を画した形状をしていた。
機工技術の賜物という話ではあったが、それを差し引いても何というか変であったと思う。
ξ゚听)ξ「特に色とかね」
( ^ω^)「あれは技術関係なく変だおね」
(∪^ω^)「わんお」
- 369 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/09(土) 00:57:51 ID:MdioEx2c0
そんなことを話しながら歩いていると、ひしめき合うように並んでいた船から少し離れた、
というより離されたように見える場所に、どこかで見覚えのある船の姿があった。
ξ;゚听)ξ「ねえ、ブーン、あそこにある船……」
(;^ω^)「うん、あの他の船が近付くのを避けてるように見える船の事だおね?」
(∪^ω^)「わんおー」
まさかと思って目を擦ってみるも、やはりその船はそこにある。
見間違いようもないくらい特殊な船なので、これはやはりそういう事なのだろうか。
(;^ω^)「アニジャさんの船だおね?」
そう思って近付いてみるが、船に人気はない。
となると、船の持ち主であるアニジャさんないし、オトジャさんは町中の方にいるのかもしれない。
ξ゚听)ξ「ま、今は用もないし放っておきましょ」
あったら挨拶ぐらいはするが、それよりも先に僕達にはやる事がある。
僕達はアニジャさんの船の側を離れ、再び聞き込みを開始した。
- 370 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/09(土) 00:59:30 ID:MdioEx2c0
ξ;゚听)ξ「駄目ね。全く情報がないわ」
(;^ω^)「やっぱりまだ来てないのか、それとも既に出航しちゃったのか……」
後者の方なら、何かしら情報があってもおかしくないが、
シブサワさんの話ではボルジョアは逃げ足は一級品という事だったし、上手く隠れて船に乗ったのかもしれない。
( ^ω^)「さて、どうしたもんかおね」
ここ、キマスタの町に知り合いはいない。
ギルドや今回の依頼主でもある教会に情報を仕入れに行く事も考えられるが、この町で騒ぎを起こしたわけでもない、
一介の旅人と変わらないボルジョアの情報があるかは難しい所だ。
ξ゚听)ξ「いつからいるかはわからないけど、駄目元でアニジャさん達を探してみる?」
( ^ω^)「うーん、可能性としてはギルドの方が高そうだけど」
( ^ω^)「犯罪者ってことで、一応情報を押さえてる可能性も……お!?」
そんな事を考えながら歩いていると、曲がり角を飛び出て来た人にぶつかってしまった。
- 371 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/09(土) 01:01:22 ID:MdioEx2c0
(;^ω^)「っと、すみませんお」
向こうは走って来たし、向こうが悪いような気もするが、僕にぶつかってその人は転倒してしまったので、
ひとまず僕が謝る事にした。
(;・3・)「何やってんだYO! 気をつけろYO!」
(;^ω^)「あ、いや、でも……って!?」
いきなり怒り出した男は、勢いよく立ち上がった所為で深く被っていたフードが脱げ、その顔を顕にした。
それを見た瞬間、どこかで見たことがある顔だなと漠然と考えていたが、
すぐにそれが捜し求めていた男の顔だという事に気付いた。
(;゚ω゚)「ボルジョアアアアアッ!?」
(;・3・)「な、何で俺の名前を知ってんだYO!? も、もしや奴らの仲m──」
ξ#゚听)ξ「ハッ!」
(;゚3゚)「グボァッ!?」
- 372 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/09(土) 01:03:03 ID:MdioEx2c0
事実確認や状況把握や交渉など色々な手順をすっ飛ばして、ツンのボディブローがボルジョアに突き刺さる。
そしてツンは、前のめりに倒れるボルジョアの背にあった円筒形の背負い袋の中を漁りだした。
ξ゚听)ξつ□「これかしらね?」
(;^ω^)「うん、それっぽいけど僕はツンに色々言いたい事あるお」
思わぬ幸運からいともあっさりと目的を達せられてしまったが、何だか少し納得がいかない。
色々とボルジョアから聞きたいこともあったし、聖骸布を取り戻そうと意気込んでいた僕も気持ちの向け所とか、
不完全燃焼感が半端ない。
ξ゚听)ξ「じゃあ、どうすれば良かったのよ?」
(;^ω^)「どうすればとかいう話じゃなくてだおね、もう少し、何かこう、ね?」
(;^ω^)「それっぽく取り返したかったんですお」
(∪^ω^)「わんお」
_,
ξ゚听)ξ「面倒臭いわねえ……。よし、わかった」
- 373 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/09(土) 01:05:01 ID:MdioEx2c0
ツンは聖骸布を綺麗に畳み、僕に恭しく差し出す。
何だかよくわからないが、僕はそれを受け取った。
ξ゚听)ξ「ジャーン! 勇者ブーンは聖骸布を手に入れた!」
(;^ω^)「いや、そういうんじゃなくてだおね……」
ξ゚听)ξ「あ、そうか」
ξ゚听)ξ「ジャーン! 魔法使いブーンは聖骸布を手に入れた!」
(;^ω^)「そこが気に入らないわけじゃないお」
僕はツンにもういいからと謝罪し、受け取った聖骸布を脇に挟む。
ひとまずクエストは成功という事で、納得しようと思う。
( ^ω^)「しかし、何であんなに慌ててたのかおね、ボルジョア。盗んだ経緯とかも色々気になるお」
ξ゚听)ξ「話はこいつが起きたら聞けばいいでしょ? それよりほら、こいつをいつものように縛ってよ」
(;^ω^)「僕が常日頃から縛ってるように聞こえる言い方は止めてくれお」
- 374 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/09(土) 01:06:26 ID:MdioEx2c0
そう言いながらも、言われるままにボルジョアを魔法のロープで縛る。
そういえばボルジョアをどうするか聞いてなかったが、教会にでも預ければいいのだろうか。
(;^ω^)「お?」
ふと気付くと、周りの人たちから奇異の視線を向けられている。
それもそうだろう。
いきなり通行人を殴り倒し、その荷物を漁る僕らは明らかに不審者どころの騒ぎではない。
ξ゚听)ξ「あー、こいつ盗人だから。私達は悪くないわよ? 仕事よ、し・ご・と」
ξ゚听)ξ「文句があるならヴィップの魔法道具屋サンライズまでどうぞ」
(;^ω^)「そういう名前の広め方すんなお」
そんなツンの言葉に、ざわついていた声は更に高まったが、多分、見た目の印象とかで納得してくれたのだろう。
冒険者スタイルの僕らと、ボロ布のような、いかにも隠れる為の服を着たボルジョアとでは、怪しさの度合いが違う。
特に咎められる事もなく、周囲にいた人は1人、また1人とその場を離れて行った。
単に関わり合いたくなかっただけかもしれないが、どちらにしろ助かったと思う。
ξ゚听)ξ「さあ、クー達に合流しましょうか」
( ^ω^)「そうするかお」
- 375 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/09(土) 01:08:19 ID:MdioEx2c0
ボルジョアは馬車を持って来るなりトソン君に手伝ってもらうなりして後で運ぶ事にして、
適当な柱に結び付け、僕達は集合場所まで戻ろうとした。
しかし、歩き出した僕らの前に、今一番会いたくなかった人がいつの間にか立ち塞がっていた。
ζ(゚ー゚*ζ
( ^ω^)「デレ……」
ζ(^ー^*ζ「やっほー、お久しぶり、ブーン君。といっても数日振りぐらいだねえ」
ζ(゚ー゚*ζ「それと、そっちの子は、はじめましてだね」
(∪^ω^)「わんわんお!」
ζ(゚ー゚*ζ「わんお君も久しぶり。元気だった?」
(∪^ω^)「わんお!」
ξ゚听)ξ「……ツン=ディレードよ。あんたがラウンジの聖女さん?」
ζ(゚ー゚*ζ「その呼ばれ方は好きじゃないんで、気軽にデレちゃんって呼んでくれると嬉しいね、ツンちゃん」
- 376 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/09(土) 01:09:44 ID:MdioEx2c0
いつも通りのにこやかな笑みを浮かべて僕らの前に立つデレ。
僕は何と言うべきかわからずに、ただ黙ってその顔を見詰めていた。
ξ゚听)ξ「それで、どういったご用件でしょうか、デレさん?」
ζ(゚、゚*ζ「それは聞かなくてもわかっておられるのではございませんかねえ?」
そう言ってデレは僕の手にあった聖骸布に目を向ける。
確かに聞くまでもなくわかり切っていた話ではある。
しかし僕は、それでも一縷の可能性にかけたい気持ちであった。
( ^ω^)「これは僕達が先に取り返したものだお。だから……」
ζ(゚ー゚*ζ「だから、大人しく帰れ、と?」
ξ゚听)ξ「それが筋ってもんでしょ? どうせ所有権はあやふやなんだし」
ζ(゚ー゚*ζ「まあ、所有権に関してはそうかもね」
ζ(゚、゚*ζ「うちの神さんがあんな布必要としてたとは思わないし」
( ^ω^)「自分とこの主神を奥さんみたい言うなお」
- 377 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/09(土) 01:12:14 ID:MdioEx2c0
ξ゚听)ξノ「じゃあ、その神さんがいらないならそういう事で」
( ^ω^)ノ「ばいぶー」
自身の正当性を主張し、そのままさり気なくデレの横を通り過ぎようとしたが、
デレは再度僕らの前に立ち塞がった。
ξ゚听)ξ「まだ何か?」
⊂ζ(゚ー゚*ζ「あるんですねえ、それが」
当然でしょうとでも言わんばかりの態度で、デレは右手をこちらに向ける。
「わんお!」
(∪^ω^)つ⊂ζ(゚ー゚*ζ
ζ(゚、゚;ζ「いや、わんお君じゃなくってだねえ」
わんわんおを抱き上げてデレに向けてみたが、やはりこれでは駄目らしい。
誤魔化せそうにもないならば、腹を括って話し合うべきか。
- 378 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/09(土) 01:13:43 ID:MdioEx2c0
ζ(゚、゚*ζ「ようやく追い詰めたのに、うまーく漁夫の利を攫われちゃったのよね」
デレの話し振りからするに、ボルジョアが言い掛けた『奴らの仲間』という言葉の『奴ら』は、
デレ達の事だったのだろう。
確かに僕らは運良くボルジョアを捕まえただけに過ぎないが、それでも捕まえたという事実は変わらない。
( ^ω^)「港町だけに漁夫の利、と」
ζ(´ー`*ζ「アハハー、あんまり巧くないねえ」
ξ゚听)ξ「それで? どうしたいのよ、あんたは?」
ζ(゚ー゚*ζ「当然、それを渡して欲しいって話ですな」
( ^ω^)「それって、聖骸布の事かお?」
ζ(゚ー゚*ζ「それ以外に何があるのでしょうかねえ」
( ^ω^)「……デレが欲しいのは、聖骸布なのかお?」
ζ(゚、゚*ζ「おやおや、含みのある言い方ですな」
- 379 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/09(土) 01:15:52 ID:MdioEx2c0
実際、含ませた感じで言ったのだが、それがわかるという事は、デレもこれのもう1つの顔を知っているのだろう。
ただの聖骸布として、ラウンジ聖教の為に取り返すつもりだったのなら譲るという道も取れたかもしれない。
しかしながら、これを魔王の衣として欲するなら、簡単には渡せない。
( ^ω^)「これをどうするつもりだお?」
ζ(゚ー゚*ζ「ナカノヒトでも言ったと思うけど、これをこっちに置いておくわけにはいかないんですよねえ」
( ^ω^)「こっちって、どっちだお?」
qζ(゚ー゚*ζ「こっち、ニューソク大陸だよ」
デレは足元を指差し、そう答える。
裏を返せば、ラウンジ大陸には置いておけるという事なのか。
( ^ω^)「どうしてニューソク大陸には置いておけないんだお?」
ζ(゚ー゚*ζ「そうだねえ。簡単に言えば、信用ならないから、かな?」
珍しくまともに質問に答えてくれるが、今1つ飲み込めない部分が多々ある。
ただ、どうもデレはこれを魔王を復活させるために集めているようには見えないと思う。
- 380 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/09(土) 01:18:20 ID:MdioEx2c0
ξ゚听)ξ「つまりあんたは、ニューソク大陸の人間が千年紀の王ってやつを復活させるって思ってるわけ?」
ζ(゚ー゚*ζ「ずばりその通りですな」
( ^ω^)「どうしてそう断言出来るんだお?」
ζ(゚ー゚*ζ「だって実際に集めてらっしゃるじゃあございませんか」
ξ゚听)ξ「それはちょっと短絡的過ぎじゃない?」
(∪^ω^)「わんわんお」
デレの言葉通り、僕らは聖骸布を集めているが、それが魔王を復活させる為だとは聞いていない。
もし魔王を復活させる為だったとしても、それを馬鹿正直に伝えはしないだろうが、依頼元は教会からだったし、
それは有り得ないのではと思う。
( ^ω^)(……いや、今の状態でこの依頼が教会からだと言っていいのかおね?)
最初は教会の依頼としてヒッキーさんから請け負ったクエストだが、そのヒッキーさんへの指示は現地のエージエント、
つまりはシブサワさんの指示に従う様にとの事だった。
そしてそのシブサワさんは、僕に聖骸布を宮廷魔術師に届けてくれと頼んだのだ。
そうなると、依頼主は宮廷魔術師、ビコーズさんという事になるのだろうか。
- 381 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/09(土) 01:21:52 ID:MdioEx2c0
( ^ω^)(断言は出来ないおね。それがシブサワさんの独断の場合も考えると)
何らかの理由で、シブサワさんが教会へ届けるのを良しとせず、届け先を変えた可能性もある。
シブサワさんが教会所属のエージェントだという事を考慮すればおかしな話だが。
( ^ω^)(そもそも、僕達はただの雇われ冒険者で、何でこれを取り返そうとしたかとかわかってないんだお)
そういう状態でこちらの正当性を主張するのは難しいと思う。
出来るのは仕事だからと言い張る事ぐらいだろう。
( ^ω^)「正直な話、そこを議論しても無駄だと思うんだお」
ζ(゚ー゚*ζ「うーん、まあ、そうなんだよねえー」
デレが僕達、ニューソクの人間を信用出来ないと言うのと同じく、僕達もデレ達、
ラウンジの人間を無条件に信用する事は出来ない。
ニューソクとかラウンジとか国の違いは関係なく、お互い相手側の人間を知らないから判断出来ないという事だ。
どちらが持った方が正しく管理出来るかとか、水掛け論に終わるだろう。
( ^ω^)「特にこっちはただの代行者だから、取り返す理由すら説明出来ないお」
- 382 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/09(土) 01:23:08 ID:MdioEx2c0
ξ゚听)ξ「そんなのは、こっちの施設から盗まれたからで十分でしょ?」
ζ(゚ー゚*ζ「それを言うと、もっと前にこっちの施設から盗まれたものでもあるからねえ」
( ^ω^)「まあ、そう主張するおね。だから水掛け論なんだお」
ζ(゚、゚*ζ「残念ながらそうなっちゃうね。でも……」
( ^ω^)「でも?」
ζ(゚ー゚*ζ「そっちは自分達の意図を説明できなくても、こちらは出来ますぜ?」
そういえばシブサワさんの話では、ラウンジで聖骸布を取り戻そうとしている人達の中心はデレだという事だった。
僕らとは違い、請け負いの仕事として来ているわけではないのだろう。
ξ゚听)ξ「だから何? 自分達の正当性を主張したいの?」
ζ(゚ー゚*ζ「その判断はお任せするとして」
ζ(゚ー゚*ζ「私達は、千年紀の王の復活を阻止する為に聖骸布、魔王の衣を取り返そうとしてたんだねえ」
- 384 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/09(土) 01:24:36 ID:MdioEx2c0
( ^ω^)「具体的にはどうやって阻止するつもりなんだお?」
ζ(゚ー゚*ζ「1ヵ所に集めなきゃ大丈夫じゃない?」
( ^ω^)「適当だおね。そもそも、疑問系って事は、よくわかってないのかお?」
千年紀の王の復活を阻止すると明言した割には、アバウトな方針だと思う。
そんな簡単な事で阻止出来るなら、これまでも復活する事はなかったのではなかろうか。
ζ(゚ー゚*ζ「まあ、それはおいおい考えるとして」
ζ(゚ー゚*ζ「ひとまず私達は他の誰かにそれを悪用されない為、集める事にしたんだよ」
ξ゚听)ξ「……はっきり言って、説明になってないわね」
( ^ω^)「申し訳ないけど、僕もツンに同意だお」
(∪^ω^)「わんわんお!」
ζ(゚ー゚*ζ「おや、交渉決裂ですか」
ξ゚听)ξ「いくら何でも理由が適当過ぎるでしょ?」
- 385 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/09(土) 01:26:24 ID:MdioEx2c0
ξ゚听)ξ「本気で説得したいなら、もう少しそれっぽい理由付けなさいよ」
ζ(゚ー゚*ζ「でも、理由としては間違ってないと思いますぜ?」
ξ゚听)ξ「そうね。それが人としては当たり前の事なんでしょうけど。ただ……」
ξ゚听)ξ「それに納得する為には、あなたの事をもう少し知らないと頷けないのよね」
ζ(゚ー゚*ζ「平たく言えば、信用出来ないと」
ξ--)ξ「そういう事よ」
僕も概ねツンの意見に賛成だが、多少はデレの事を信用していいかとは考えていた。
肩書きからも、実際に話した経験からも、デレが僕らを騙そうとしているとは思えない。
対して、僕達の依頼主が信用出来るのかと問われれば、はっきり出来ると明言できない。
未だよくわからない事がいくつもあり、どういう経緯でこれを集める事になったのさえも知らない。
そんな僕の迷いを見透かしたかのように、デレはこちらに視線を向ける。
ζ(゚ー゚*ζ「でも、君は信用してくれるんじゃないかな、私の事を?」
- 386 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/09(土) 01:28:53 ID:MdioEx2c0
( ^ω^)「……デレはいい人だと思うお」
ξ゚听)ξ「……」
( ^ω^)「僕達を騙そうとか、世界を滅ぼす為に魔王を復活させようとか、思ってもいないと信じてるお」
( ^ω^)「君が語った、夢は本当だと思うんだお」
ξ゚听)ξ「夢?」
ζ(゚ー゚*ζ「全ての人がほんの少しだけでも今より幸せになれるように、っていうのが私の夢だよ」
デレはナカノヒトの町で話したような内容をツンに伝える。
ツンはそれを黙って聞いていた。
ξ゚听)ξ「ふーん。いい夢じゃない」
ツンは馬鹿にするでもなく、素直に感心したように頷いた。
デレはそれに笑顔で応える。
ζ(^ー^*ζ「ありがとう」
- 387 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/09(土) 01:30:31 ID:MdioEx2c0
( ^ω^)「でも、今これを君に渡す気はないお」
( ^ω^)「状況がよくわからないからって、他人に押し付けて済ますのは主義じゃないんだお」
( ^ω^)「ちゃんと自分で調べてから答えを決めるお」
ζ(^ー^*ζ「うん、そうだと思った」
デレは笑顔のまま、両手を組んで上に向け、大きく伸びをする。
ζ(-、-*ζ「それじゃまあ、気が進みませんが……」
ξ゚听)ξ∩「あんたに恨みはないけど、これも仕事なのよね」
ツンは拳を固め、デレを睨み付ける。
出来れば避けたい事態だったが、このまま何もせずに引いてくれというのは虫が良過ぎる話だ。
ラウンジの聖女の実力は未知数でも、2対1なら何とかなるだろう。
( ^ω^)(問題は姿を見せていない鶏頭の男だけど……どこかに隠れているのかお?)
- 388 名前: ◆5rua49HN2.[sage] 投稿日:2012/06/09(土) 01:32:43 ID:MdioEx2c0
- 続きはまた今夜に
今日みたいに深夜になるかもしれませんが
- 396 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/10(日) 00:26:28 ID:qeSzdZss0
ζ(゚、゚*ζ「せえのっと!」
伸びをしていた体勢から、デレは両腕を一気に振り下ろした。
それに対し、咄嗟に防御姿勢を取ったが、武器は勿論、魔法も何も飛んでくる事はなかった。
ζ(゚口゚*ζ「〜♪」
ξ;゚听)ξ「な……!?」
その代わりに飛んで来たのは声、それも相当大きな声だ。
(;^ω^)「ツン!」
僕は咄嗟にツンを突き飛ばす。
そのまま自分もこの場から離れようと思ったが、手足が動かず、声も出せなくなってしまった。
(;^ω^)(何で……)
言わずもがな、これがデレの攻撃だというのはわかる。
僕の知る魔法ではないが魔力を感じるこの声、いや歌というべきか。
ただの大声だったそれが、いつの間にか旋律を奏で、綺麗な歌に変化していた。
- 397 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/10(日) 00:28:06 ID:qeSzdZss0
ζ(゚口゚*ζ「あ〜ら〜ら〜♪ ひ〜とり〜に〜がし〜ちゃった〜ね〜♪」
(;^ω^)(歌にしては歌詞はだいぶ変だけど、やっぱ歌なんだおね)
過去にデレはヴィップの町の教会で、歌うことで教会の精霊を浄化したのだ。
この歌にも何らかの効果があると見るべきで、それが僕の動きを封じているのだろう。
身動きが取れないという効果から考えるに、呪歌と呼ばれる呪いの系統の物かもしれない。
ラウンジの聖女が使うにしては、いささか不似合いな響きだが。
(;^ω^)(いきなり大ピンチだけど、この歌にもどこかに穴はあるおね」
かろうじて視界に映る範囲からわかる事は、恐らくのこの歌は聞こえる範囲全体に及ぼしているわけではないと思う。
デレの背後に見える、そう遠くない位置にいる町の人は普通に動けている。
ξ;゚听)ξ「ブーン!」
首を回し、確認すると、やはりツンも動けている様だ。
このデレの歌はごく狭い範囲にしか効果をなさないのだろう。
フルフル
(((;^ω^)))
- 398 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/10(日) 00:29:39 ID:qeSzdZss0
僕は無言のまま首を振り、ツンにこちらに近付かない様に示唆する。
ツンさえ無事ならこの状況は何とかなる。
ξ゚听)ξ「これがラウンジの聖女の力ってわけ?」
ツンは状況を理解したのか、頷き返すとデレを睨み付けながら僕から距離を取る。
デレの歌の性質にも気付いてくれたのだろう。
ツンはデレの背後に回り込んだ。
ζ(゚口゚*ζ「そ〜のよ〜ばれ〜か〜た〜は〜♪ す〜き〜じゃな〜い〜って〜い〜ったよ〜♪」
デレはツンの方を向かず、質問に答える。
歌の効果範囲を考えると、きっと向かないのではなく、向けないのだろう。
デレの顔、正確には声の出所である口が向いている方向にしか効果を及ぼさないと見た。
ξ゚听)ξ「随分と余裕ね。先制攻撃には失敗したんだから、その歌止めて仕切り直すの方がいいんじゃないの?」
僕達2人共がデレの歌に捕まっていたら、有効な手段だったのかもしれない。
デレにも仲間はいるんだし、それまで動きを封じていればいくらでも聖骸布を取り返す手はあるだろう。
ただ、僕達にも仲間はいる上、1人しか捕まっていない状態で歌を続けるメリットは無いと思う。
- 399 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/10(日) 00:31:56 ID:qeSzdZss0
ζ(゚口゚*ζ「そ〜で〜すな〜♪ でも〜な〜んか〜わ〜すれ〜て〜ません〜か〜♪」
ξ゚听)ξ「!?」
咄嗟に後方に飛び退いたツンの元居た場所に、重々しい音を立てて何かが降り立つ。
そこには鶏の仮面を被り、上半身裸で両腕に盾を着けた男が蹲っていた。
( ゚∋゚)
降り立った屈強な筋肉の塊、クックルは僕やツンの方を見ることもせず、ただデレの方を見詰める。
ナカノヒトでもそうだったが、御付であるクックルはデレの指示に忠実に従って動く様だ。
となるとこの場に現れたのも、予め決めておいたか、先の会話のどこかで合図を送っていたからかもしれない。
ζ(゚口゚*ζ「そ〜っち〜お〜ねが〜いね〜く〜っくる〜♪」
( ゚∋゚)" コクッ
デレの言葉に、クックルはデレの背後を守るように立ち、ツンに対峙する。
今の僕にはそれを止める事や手助けする事どころか、助言すら挟めない状況だ。
ツンの強さは知っているが、向こうもラウンジの聖女の御付というぐらいだから弱いという事はないだろうし、
体格差的にも勝ち目は薄いのではなかろうか。
(;^ω^)(クッ……、まずはこっちを何とかしないとだお)
- 401 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/10(日) 00:33:20 ID:qeSzdZss0
ξ゚听)ξ「話には聞いていたわ。ラウンジの聖女の御付の戦士ね?」
( ゚∋゚)
ξ゚听)ξ∩「1つお手合わせ願おうかしら」
( ゚∋゚)∩ スッ…
僕の心配を余所に、ツンとクックルの戦いの火蓋は切って落とされた。
まずは様子見とばかりにツンはクックルを中心に据えて、その周りを軽いステップで半円を描く。
隙あらばいつでも仕掛けられる体勢だ。
(;^ω^)(のんびり見てる場合じゃないお。これ、どうやったら外れるんだお?)
何とか身体を動かそうとするが、相変わらず動くのは首ぐらいだ。
首を振り、デレに言いたいことを伝えようとしてみるも、首だけでは自分でも何をしたいのかよくわからない。
ただ滅茶苦茶に頭を振り回しているだけだ。
,, ,,
"(((;^ω^)))" フルフル
ζ(゚口゚*ζ「あ〜む〜り〜む〜り〜♪ う〜た〜う〜のや〜めな〜いか〜ぎり〜ぬ〜けら〜れ〜ない〜ね〜♪」
- 402 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/10(日) 00:35:25 ID:qeSzdZss0
- ,,, ,,,
".'(((゚ω゚三゚ω゚))))'." ブンブン!
ζ(゚口゚*ζ「お〜ちついて〜♪」
ζ(゚口゚*ζ「う〜ご〜き〜と〜めた〜あと〜♪ ね〜むらせ〜るだけだ〜から〜♪ が〜いは〜な〜いよ〜♪」
(∪´ω`) zz
(;^ω^)(お……わんお……)
なるほど、いつの間にか背中のフードの中にいたわんわんおが眠っていたのはその所為なのだろう。
どうやら案外平和的な攻撃の様で安心したが、抜けられない事には変わりない。
(;^ω^)(いくらなんでもずっと歌い続ける事は出来ないだろうから、いつかは外れるだろうけど……)
恐らくその前に僕も眠らされてしまうのだろう。
そうなる前に抜け出したいが、身体を動かせず、言葉も発せられない状況では、魔法の1つも唱える事は出来ない。
ξ゚听)ξ「ハッ!」
( ゚∋゚)∩ スッ…
- 403 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/10(日) 00:36:37 ID:qeSzdZss0
そんな僕の葛藤を余所に、ツンとクックルの戦いは徐々に激しさを増している様だ。
と言っても、ツンが一方的に仕掛け、クックルはそれを防いでるだけらしい。
何か狙いがあるのか、それともただツンの動きに付いていけないだけなのかはわからないが、
まだクックルは1度も攻撃に転じていない様だ。
(;^ω^)(だからと言って、ツン有利とは言えないかもしれんお……)
ξ゚听)ξ「セヤッ!」
( ゚∋゚)∩ スッ…
クックルの左側方に高速で回り込み、そこから側頭部目掛けて蹴りを放つツン。
しかしクックルはそれを落ち着いて左腕の盾で防ぐ。
ξ゚听)ξ「守りの堅さは相当のものね……」
( ゚∋゚)
すぐさま距離を取り、呼吸を整えるツン。
先ほどから何度も鋭い踏み込みからの高速の攻撃を仕掛けてはいるが、全て先の様にクックルに防がれている。
この状況では、ツンが優勢と楽観視する事は出来ない。
- 404 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/10(日) 00:38:26 ID:qeSzdZss0
ξ゚听)ξ「しかもやり辛い場所に立たれてるし」
クックルはデレの背を守るように立っているので、ツンはクックルの背後に回る事が出来ないでいる。
回り込もうとしてデレの歌の効果範囲に入ってしまえばそこで終わってしまうのだ。
先にデレを倒すという手もあるだろうが、それをクックルが易々と許すとは思えない。
ξ゚听)ξ「さて、どうしますかね……」
大きく息を吐き、ツンはゆっくりとクックルの周囲を回りだす。
正直な所、ツン1人の攻撃ではクックルの鉄壁の守りを崩す事は出来ないんじゃないかと思う。
恐らくツンは速度重視の戦い方をしているのだろうけど、先の一撃だって決して軽く撃ったわけじゃないはずだ。
それがああも簡単に防がれるとなると、例え防御を掻い潜ったとしても大したダメージは与えられないかもしれない。
,,, ,,,
".'(((゚ω゚三゚ω゚))))'." (だから何とかこれから抜け出して! ツンの援護をしないとだお!)
ζ(゚口゚*ζ「あ〜きら〜めま〜しょ〜お〜♪ あきら〜めま〜しょ〜お〜♪」
ξ゚听)ξ「……ま、ブーンも助けなきゃいけないし、のんびりはしてられないか」
- 405 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/10(日) 00:40:46 ID:qeSzdZss0
再びツンが速度を上げ、クックルを中心に半円を描く。
しかし今度は、ただ速度を上げただけではなく、時折り速度を緩め、緩急を付けて惑わすように動いている。
ξ゚听)ξ「あんまり得意じゃないんだけど……行ってみますかねッ!」
( ゚∋゚)
突如、ツンがこれまでよりも更に速度を上げ、クックルに迫る。
しかしクックルも、惑わされずしっかりとツンの動きに対応して来る。
ξ゚听)ξ三つ「ハッ!」
( ゚∋゚)∩ スッ…
ツンの放った右の拳は音も無く、クックルによって簡単に防がれてしまう。
(;^ω^)(いや、今のは……)
ξ゚一゚)ξ「なんてね」
( ゚∋゚)「!」
- 406 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/10(日) 00:42:44 ID:qeSzdZss0
ツンはにやりと笑みを浮かべると、クックルに肉薄した状態で更に歩を進め、姿勢を低くして脇に潜り込む。
先の一撃はフェイントで、ツンは最初から弱めに打撃を放っていた様だ。
すぐさま引き剥がそうとクックルが手を伸ばすが、ツンは裂帛の気合と共に、
クックルの脇腹に押し当てていた拳をいち早く押し込む。
ξ#゚听)ξ「はあああああああああッ!」
( ゚∋゚)「!?」
これまでの攻撃では全くダメージを受けた様子のなかったクックルの身体が、
ツンの一撃で大きく後に滑るようにずらされる。
そのままデレにぶつかるかと思ったが、寸での所で止めたようだ。
ξ゚听)ξ「惜しい、もうちょっとだったわね」
(;^ω^)(今の何やったんだお? あの重量を動かすなんて……)
ξ゚听)ξ∩「前に説明した事あったでしょ? 柔の拳ってやつよ」
(;^ω^)(ああ、なるほど。……って、何で僕の考えてたことわかったんだお)
- 407 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/10(日) 00:44:44 ID:qeSzdZss0
それほどわかりやすい顔をしていたのだろうか。
ツンは僕が疑問に思っていた事に答えてくれる。
(;^ω^)(柔の拳、そういえば前にそんな話聞いたおね)
確か気を使った攻撃で、相手の装甲関係なく、直接身体の内部にダメージを与える技だったはずだ。
ツンも使えるとは言っていたが、まさかこれほどの力があるとは思わなかった。
ただ、若干技の系統が違う気もするが、今は深く追求している場合ではないし、そもそも聞く事が出来ない。
ξ゚听)ξ「ちなみに今のは応用技で、身体の内部に打撃を通すのではなく、相手を動かす事に特化したものだから」
(;^ω^)(だから人の心を読むなお……。けど、これで何とかなるかお?)
余裕たっぷりの表情を見せているツンだが、柔の拳、気を使った攻撃は体力の消耗も激しいと言っていたはずだ。
拳を当てて行う物が大半なので、相手に密接する必要もあるのでリスクも大きいとも。
ζ(゚口゚*ζ「ゆ〜だん〜た〜いて〜き♪ ほ〜ん〜き〜で〜い〜こ〜う〜♪」
( ゚∋゚)" コクッ
クックルはデレの言葉に頷くと、未だ無表情を保ったままツンの方に向かう。
そして先ほど立っていた位置を通り過ぎ、これまでよりはかなりデレから離れてしまった。
- 408 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/10(日) 00:46:11 ID:qeSzdZss0
ξ゚一゚)ξ「ま、そうしてくれた方が私は戦いやすいけどね」
挑発めいた笑みを向け、ツンはクックルの動きを見守る。
今の内にデレの歌の邪魔をして欲しいなと思うも、多分ツンはそんな戦いが興醒めしそうな事はしないのだろう。
クックルもそう思ったからこそ、デレから離れたのかもしれない。
ζ(゚口゚*ζ「そ〜れじゃ〜♪ こ〜ち〜ら〜も〜♪」
何故かデレが歌いながらこちらに近付いて来る。
そして僕の横を通り過ぎると、その背後に止まった。
ζ(゚口゚*ζ「と〜く〜と〜せき〜♪」
(;^ω^)(戦いが見える位置に移動したのかお)
随分と余裕を見せてくれるものだが、2人の戦いの邪魔をしないという意思表示でもあるのだろう。
そうしてる内にツンと正面から向き合っていたクックルは、ツンに向けて突然軽く頭を下げた。
( ゚∋゚)" ペコッ
ξ゚听)ξ「……見くびっていてすまなかったとでも言いたいわけ?」
- 409 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/10(日) 00:47:37 ID:qeSzdZss0
( ゚∋゚)⊃ スッ…
ξ゚ー゚)ξ「語るのは拳でってわけね、上等!」
ツンは速度を上げ、一気に間合いを詰める。
今度は場が広く取れることもあり、そこから身を翻させ、クックルの後方に回り込む。
,,, ,,,
".'(((゚ω゚三゚ω゚))))'." (ツン! がんばれおっ!)
ζ(゚口゚*ζ「な〜か〜な〜か〜♪ し〜ぶと〜いね〜♪」
ξ#゚听)ξ「ハッ!」
( ゚∋゚)∩ ガシッ
ξ#゚听)ξ「せやッ!」
( ゚∋゚)∩ ガシッ
ξ#゚听)ξ「でええええりゃぁぁぁぁッ!」
( ゚∋゚)∩ ガシッ
- 410 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/10(日) 00:49:36 ID:qeSzdZss0
場所は変わっても先ほどと展開は同じ様に、ツンが一方的に攻撃を仕掛けている様だ。
クックルが守りに徹するつもりは無くとも、ツンの速さにそうせざるを得ないのかもしれない。
,,, ,,,
".'(((((゚ω゚三゚ω゚))))))'." (そうなるとっ! ツンの狙いはっ! 気の一撃っ!)
ζ(゚口゚*ζ「ゆ〜れ〜す〜ぎじゃ〜な〜い♪ ちょ〜っと〜こ〜わ〜い〜♪」
ξ;゚听)ξ「全く、防御の技術は見事なものね……」
( ゚∋゚)
ξ゚听)ξ「あんたみたいな大男は、力任せに来るのがお約束ってやつなのにね」
ξ゚ー゚)ξ「ちゃんと修練を積んでるのがよくわかるわ」
( ゚∋゚)⊃ スッ…
ツンはどこか嬉しそうにクックルに語り掛ける。
クックルはそれに言葉で答える事は無かったが、拳で答えるつもりらしい。
初めて攻撃に転じたクックルを、ツンはその場で待ち構えた。
- 411 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/10(日) 00:51:02 ID:qeSzdZss0
∩( ゚∋゚)∩ グワッ
ξ゚听)ξ「……」
両腕を頭上で組み、力任せに振り下ろすクックル。
当たったらひとたまりもなさそうだが、あんな見え見えの攻撃に当たるツンではない。
カウンターを狙うべく、攻撃を引き付ける。
,,, ,,,
".'(((((゚ω゚三゚ω゚))))))'." (でもっ! クックルだってっ! それはわかってるはずだおっ!)
そうなると考えられるのは、カウンターを更にカウンターで返す事だ。
しかし、速度では圧倒的に劣ってるクックルがそれを実行できるとは到底思えない。
ξ゚听)ξ「セイッ!」
クックルの攻撃をギリギリでかわし、ツンの拳が低い位置にあったクックルの顔面に突き刺さる。
だがクックルは、わずかに首をよじるだけでそれに耐え切った。
ξ゚听)ξ「!?」
( ゚∋゚)⊃ バッ!
- 412 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/10(日) 00:53:01 ID:qeSzdZss0
クックルは振り下ろした両腕を開き、ツンに掴みかかる。
最初からそれが狙いだったのだろう。
,,, ,,,
".'(((((゚ω゚三゚ω゚))))))'." (けどっ! ツンのスピードならっ! 捕まらずに逃げ切るおっ!)
そう確信していたが、あろう事かツンは自分からその腕の中に飛び込む様に踏み込んだ。
ξ#゚听)ξ「ここで決めるッ!」
( ゚∋゚)「!?」
クックルに捕まったかの様に見えたツンは、滑らすように身体をクックルの懐に潜り込ませ、脇に抜ける。
その間ずっと拳はクックルの脇腹に押し当てられていた。
,,, ,,,
".'(((((゚ω゚三゚ω゚))))))'." (行けっ! ツンっ! ドリルパンチだおっ!)
ζ(゚口゚*ζ「きみ〜♪ まほ〜て〜いこ〜た〜か〜す〜ぎ〜じゃな〜い♪」
ξ#゚听)ξ三///つ「だぁりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」
気合一閃、押し当てた拳を捻り込む用にクックルに押し込むツン。
風船が割れたような乾いた音と共にクックルの身体がくの字に曲がり、
大きく後方に吹き飛ばされ、うつ伏せに倒れた。
- 414 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/10(日) 00:55:43 ID:qeSzdZss0
- ,,, ,,,
".'(((((゚ω゚*三*゚ω゚))))))'." (ツーンっ! ナイスドリルだおっ!)
ξ--)ξ「……」
(;^ω^)(お……?)
体力を激しく消耗したのか、ツンの動きが止まる。
ξ;--)ξ「やってくれるじゃないのよ……」
攻撃を当てたはずのツンが何故かその場に膝を付いた。
何事かとクックルの方を見やるも、クックルは未だ倒れたままである。
その手はツンを掴もうとするかの様に、ツンの方に伸ばされたまま。
(;^ω^)(あれ?)
よく見なくとも、クックルの手から金属の鎖のようなものが伸びている事に気付く。
鎖を辿るとツンの足元まで伸び、そこには丸い何かが落ちていた。
(;^ω^)(クックルの盾かお!?)
- 415 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/10(日) 00:57:24 ID:qeSzdZss0
腹部を押さえて蹲るツンの様子から察するに、クックルは攻撃を食らって吹き飛ばされながらも、
あの盾を投げて反撃をしたのだろう。
全力の一撃を放ったばかりのツンに、それをかわすのは無理だ。
(;^ω^)(何てタフさだお……)
クックルは自分の攻撃が当たらない事を理解した上で、最初からツンの攻撃の隙を狙おうと考えていたのかもしれない。
しかしそれを実行しようにも、自身が吹き飛ばされるほどの強力な一撃も食らっているのだ。
そんな中で反撃してくるとは、信じられない打たれ強さである。
(;^ω^)(つーか、それならひょっとして、まだ立ち上がってくるんじゃ……)
(,, ゚∋゚) ムクッ…
僕の嫌な予感はすぐに的中する事となり、クックルはゆっくりとその身を起こし、立ち上がる。
流石にノーダメージとはいかなかった様だが、軽く身体を動かして状態を確認すると、伸ばしていた鎖を引き戻し、
盾をその手に持った。
ζ(゚口゚*ζ「が〜んば〜ったけ〜ど〜♪ く〜っくる〜は〜ら〜うんじ〜い〜ちのぶ〜♪」
ζ(゚口゚*ζ「そ〜う〜か〜んた〜んに〜は〜♪ た〜おれな〜いよ〜♪」
- 416 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/10(日) 00:58:44 ID:qeSzdZss0
- ,,, ,,,
".'(((((゚ω゚;三;゚ω゚))))))'." (クッ! 動け!_動けお! 僕の身体!)
ξ;--)ξ「へえ……あんたラウンジで一番強いんだ。それなら……」
ξ;゚ー゚)ξ「簡単に倒れてちゃもったいないわね」
( ゚∋゚)「!」
ツンは腹部を押さえたまま、その場に立ち上がり構えを取る。
思ったより足取りはしっかりしているが、その表情は少し引きつっている。
先ほどの攻撃で、骨ぐらいは折れているのかもしれない。
".'(((((゚ω゚;三;゚ω゚))))))'." (ツン! 僕の事はいいから逃げるんだお!)
ξ;゚ー゚)ξ「何よ? 逃げろとでも言いたそうな顔して?」
".'(((((゚ω゚;三;゚ω゚))))))'." (そうだお! 逃げるんだお! 相手が悪過ぎるお!)
ξ;゚ー゚)ξ「大丈夫よ、私はまだ戦えるわ。幸い、骨も折れてないみたいだしね、多分」
ξ゚听)ξ「あんたはそこで、どっしりと構えて私の勝利を見守ってなさいな!」
- 417 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/10(日) 01:01:36 ID:qeSzdZss0
ツンは気合を入れる様に手甲を付けた拳を打ち合わせると、再びクックルに向かって走り出す。
確かに、先ほどまでと比べても遜色ない速さで動けているが、あの顔は相当無理をしていると思う。
付き合いの長い僕には、ツンが意地を張ってることなんてわかっている。
( ゚∋゚)⊃ ブンッ!
ツンを迎え撃つクックルは先ほどまでとは違い、まだツンとの距離が遠いうちから先に攻撃を仕掛けてきた。
鎖付きの盾を巧みに操り、様々な方向からツンを狙う。
ξ#゚听)ξ「なかなかやるじゃないの、よッ!」
盾をひたすらかわし続けていたツンだが、その間に軌道を見極めていたのだろう。
右方から飛来した盾にタイミング良く拳を合わせ、大きく空へ弾き飛ばした。
ξ#゚听)ξ「隙ありッ!」
すぐさま大きく踏み込み、クックルに肉薄しようとするツン。
だがその眼前に再び盾が迫る。
".'(((((゚ω゚;三;゚ω゚))))))'." (ツゥゥゥゥゥンッ!!!)
- 419 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/10(日) 01:03:58 ID:qeSzdZss0
ξ;゚听)ξ「チッ!」
ツンは背を反らせ、後方に飛ぶ。
そのまま後転しつつ距離を取った。
⊂( ゚∋゚)⊃
ξ゚听)ξ「ま、そうよね。片方だけしか使わない理由はないもんね」
今の一撃は、ツンが空へ弾いた物とは反対側の盾を使った攻撃だったらしい。
クックルが両の盾とも同じように扱えるのなら、状況は更に厳しい。
⊂( ゚∋゚)⊃ ブンッ!
ξ;゚听)ξ「っと……」
段々とクックルにペースを握られて来ているのは傍目にもわかる。
クックルが攻撃を仕掛ける場面が圧倒的に増えて来た。
(;^ω^)(異変に気付いてトソン君たちが来てくれれば……)
- 420 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/10(日) 01:05:36 ID:qeSzdZss0
集合時間まではまだ時間がある。
何かの際には護符の魔法を打ち上げる手はずになっているので、その魔法を打ち上げられない以上、
トソン君たちの救援に期待するのは難しい。
港にいた人達は、最初は結構近くでこちらを眺めている人もいたが、
クックルが現れて以降はかなり距離を取った様だ。
好き好んであれに近付きたくない気持ちはわかるが、これではイレギュラーな出来事にも期待出来ない。
".'(((((゚ω゚;三;゚ω゚))))))'." (どうするお? どうするお、僕? 考えるんだお!)
ζ(゚口゚;ζ「ちょぉ〜っと♪ し〜ぶとす〜ぎ〜じゃな〜い〜か〜なぁ〜♪」
ξ;-听)ξ「まいったわね……。近付くのに一苦労だわ」
軽口を叩いてはいるが、ツンからは明らかに疲労の色が見て取れる。
この状況で1つも直撃を貰わないのは見事だが、あまり長くは持たないだろう。
そして僕もそろそろヤバいかもしれない。
,, ,,
"(((´ω`三´ω`)))" (お……、お……)
- 421 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/10(日) 01:07:04 ID:qeSzdZss0
じわじわとと眠気が襲って来た。
唯一動かせていた首も段々と動かなくなって来た。
(((´ω`三´ω`)))(万事休すかお……)
ξ;-听)ξ 「……」
⊂( ゚∋゚)⊃ スッ…
ζ(゚口゚*ζ「さ〜あ〜お〜や〜す〜み〜な〜さ〜い〜♪ よ〜い〜ゆ〜め〜を〜♪」
( ´ω`)(お……)
ξ;--)ξ「フゥ……」
< 「フハハハハ! どうした? だらしがないぞ、我が好敵手ッ!!!」
.
- 422 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/10(日) 01:09:49 ID:qeSzdZss0
(((;^ω^)))(お……何だお、今の?)
((ξ;゚听)ξ))「な、何? 今の馬鹿デカい声は?」
港中に響くかと思えるほどの大きな声が、どこからとも無く聞こえて来た。
僕は眠気を堪え、首を回してその声の主を探すも見付ける事が出来ない。
< 「どこを見ている! こっちだ! こっち!」
ξ゚听)ξ「こっちってどっちよ?」
(;^ω^)(お……あれって……)
再び聞こえて来た大声で、飛んで来る音の方向に気付いた僕は顔を上に向ける。
それに釣られる様に、ツンも視線を空に向けた。
ξ゚听)ξ「ったく、どこのどいつが……」
(;^ω^)(おー……)
ξ;゚д゚)ξ「ゲッ……」
- 423 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/06/10(日) 01:12:43 ID:qeSzdZss0
「フハハハハッ! 天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶッ!
お前を倒せと拳が叫ぶッ! 聞いて驚け見て笑えッ!
大座亜流正統継承者ヒート=オネスティー、ここに見参!!!」
シャキーン!
へノパ听)ヘ
ヽ ノへ
/ ┗
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 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄...:.::/\
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ξ;゚ -゚)ξ ( ゚∋゚) (^ω^;) ζ(゚口゚*ζ
僕達の視線の先には、建物の屋根の上で奇怪なポーズを決める赤毛の少女、ヒートさんの姿があった。
第三十三話 聖骸布争奪戦 終
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