- 616 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/01(日) 00:08:47 ID:WzvZEXpI0
〜 ニューソク王宮 宮廷魔術師執務室 〜
( ^ω^)「それじゃあ、早速ですけどクエストの詳細を……」
( ∵)「はい、ですがお茶をお淹れ致しますので少々お待ちを」
ξ゚听)ξ「お構いなく」
(∪^ω^)「わんわんお」
( ´∀`)「モナの分も茶くれモナ」
(;^ω^)「って、何でモナー王様がここに!?」
第三十六話 互い思う、思い違う
- 617 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/01(日) 00:10:27 ID:WzvZEXpI0
(;^ω^)「ほ、本日はお日柄も良く……」
僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。
( ´∀`)「今日はあんまりいい天気じゃないモナ。そう硬くならなくても良いモナよ」
彼の名前はモナー王。
ここニューソク国の国王で、とっても偉い人である。
( ∵)「と言いますか陛下、政務はどうされたのですか?」
彼の名前はビコーズさん。
ニューソク国の宮廷魔術師で、かつて僕のじいちゃんの弟子でもあった人だ。
僕とツンとわんわんおは、クエストの詳細を聞きにビコーズさんの執務室にお邪魔していたが、
何故かそこにモナー王までいた。
( ´∀`)「ちょっと休憩モナよ。茶ぁ飲みに来ただけモナ」
( ∵)「それなら侍従に用意させればよろしいでしょうに」
( ´∀`)「久しぶりにお前が淹れた茶が飲みたくなったんだモナ」
- 618 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/01(日) 00:12:42 ID:WzvZEXpI0
( ∵)「わかりました。しかし私はこれからブーン様とお話がありますので……」
( ´∀`)「わかってるモナ。邪魔はしないモナよ」
そう言うとモナー王はビコーズさんの執務机の方の椅子に座る。
こちらの話に加わる気はないという意思表示なのだろう。
ただ、こちらの方をちらちらと見ている王の様子を見る限り、話したがってるのだろうなとは思う。
それにしても2人の話し振りは言葉遣いは硬くとも、臣と臣下というよりは友達のような気軽さが感じられる。
( ∵)「気になりますか?」
(;^ω^)「え? いや、まあ……」
ビコーズさんは僕の考えを察した様に、お茶を淹れながらモナー王の方を顎で指し示す。
僕は曖昧に頷き、モナー王の方を見る。
( ´∀`)「茶はまだモナ?」
( ∵)「今淹れてますからお待ち下さい」
ビコーズさんはまず僕達の方にお茶を差し出し、その後、モナー王の方に湯飲みを持って行く。
- 619 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/01(日) 00:14:55 ID:WzvZEXpI0
( ´∀`)「茶菓子はないモナか?」
( ∵)「用意しておりませんが……お二方は御必要ですか?」
ビコーズさんは僕達の方に茶菓子が必要か聞いて来る。
僕は必要ないのだが、モナー王が欲しがってるのにいらないと言うのも気が引ける。
そもそも僕達に聞かずとも、王が欲しがってるのだから用意させれば良さそうなものだが。
(;^ω^)「そ、そうですおね……ええっと……」
(∪^ω^)「わんわんお!」
( ´∀`)「ほら、わんこも欲しいって言ってるモナ」
( ∵)「仕方ありませんね。少々お待ち下さい」
そう言ってビコーズさんは執務室を出て行く。
多分、お茶菓子を取りに行ったのだろうが、王と共に残された僕らはどうすればいいのだろうか。
謁見の時も思ったが、王の事を無防備にし過ぎだと思う。
( ´∀`)「あいつとは、昔馴染みの友達だモナ」
ξ゚听)ξ「そうなんですか?」
- 620 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/01(日) 00:15:49 ID:WzvZEXpI0
あいつとはビコーズさんの事だろう。
モナー王はお茶を片手に僕達の前のソファーに座った。
( ´∀`)「モナも一時期君のおじいさんの所で修行した事があったモナ」
( ^ω^)「モナー王様がですかお? それは初めて聞きましたお」
( ´∀`)「ほんの短い期間だったけど、色々と教えてもらったモナよ」
( ´д`)「しかし残念ながら、モナには魔法の才能は一切なかったモナ……」
( ´∀`)「けど、教えてもらった事は今も役立ってるようなことばかりモナ」
じいちゃんにはすごく世話になったと、モナー王は昔を懐かしむ様に言う。
(;´∀`)「ただ、その代わり滅茶苦茶厳しかったモナ」
(;^ω^)「ああ……、じいちゃんの事知ってる人は、皆そう言いますお」
(∪^ω^)「わんおー」
僕の記憶では、魔法を教える時以外はそうでもなかったのだが、大体の人がそう言うので恐らくそうだったのだろう。
それも未だに畏怖されている原因の1つかもしれない。
- 621 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/01(日) 00:16:57 ID:WzvZEXpI0
( ´∀`)「それにしても、流石と言うべきモナかね」
( ^ω^)「お?」
( ´∀`)「ブーンの事モナ。よくもまあ、ラウンジの聖女や西の賢者を出し抜いてクエスト成功させたモナよ」
大賢者の孫だけはあるとモナー王は言うが、僕は複雑な表情でそれに応じた。
僕は、そんな大層なものではないと控え目に訂正する。
( ´∀`)「負けた事をまだ気にしてるモナか? こないだも言ったけど、勝ったのはブーンモナよ」
( ´∀`)「少なくとも、モナにとってもニューソク国にとってもそれが事実モナ」
( ´∀`)「如何に戦いに勝とうとも、目的を達成できなければ負けモナ」
( ^ω^)「そうですおね……でも、ここで喜んでちゃ強くなれないと思いますので……」
( ´∀`)「良い心掛けモナ。今回も成功を期待するモナけど、ヤバそうならちゃんと引き返すモナよ?」
ξ;゚听)ξ「えっと、王としては、そこは生命に賭けても成功させろと言うべき所ではないのですか?」
( ´∀`)「死んだらつまらんモナ。生きていれば、また次の機会もあるモナ」
(∪^ω^)「わんお!」
- 622 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/01(日) 00:19:32 ID:WzvZEXpI0
( ∵)「……私のいない間に話を進めないで欲しいのですが」
お盆に大量のクッキーの入った皿を乗せたビコーズさんが戻って来て、王の隣に座る。
モナー王はまだ世間話しかしていないと弁解し、早速クッキーをつまむ。
( ´∀`)「ブーンがすごいって話してただけモナ。うちの子も見習って欲しいとこモナよ」
( ∵)「ええ、ブーン様は才気溢れる方ですよ。しかし、王子達もそれぞれがんばっておられますよ?」
( ∵)「おっと、ブーン様達もどうぞ、お召し上がり下さい。わんわんお君にはこれを」
(∪*^ω^)「わんわんお!」
砂糖を使っていないビスケットだと、ビコーズさんはわんわんおの前に小皿を置く。
ご丁寧に間にはハムらしきものが挟まっている。
( ´∀`)「それが一番美味そうモナね」
( ∵)「茶菓子には向きませんよ。だからその手は引っ込めて下さい」
( ^ω^)(そういえばクーもよく、わんおの食べてるものを取ろうとするおね。親子だお……)
- 623 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/01(日) 00:21:29 ID:WzvZEXpI0
僕達はビコーズさんの言葉に従い、クッキーを口に運ぶ。
さっくりとした上品な口当たりで、ほのかに甘くて美味しかった。
( ´∀`)「もうちょっと歯応えが欲しいモナよね」
( ∵)「これはそういうお菓子ですよ。1人で全部食べないで下さい。お茶のおかわりは?」
( ´∀`)「貰うモナ」
僕は、実に仲の良い2人だと微笑ましい気持ちで見ていた。
ツンも同じ気持ちだったのか、その顔にはうっすらと笑みが浮かんでいる。
( ´∀`)「で、うちの子の話モナ」
( ∵)「我々はクエストの話をしたいのですが……」
ビコーズさんの呟きを聞こえなかったふりをして、モナー王は話を続ける。
長男であるワカッテマス王子は頭は良いのだが、知識を偏重し過ぎて頭でっかちな部分があるという。
( ´∀`)「あいつは書物の知識だけで満足せず、もっと実践すべきなんだモナ」
( ∵)「確かにそういう所があられますね。ただ、実際やってみれば何でもそつ無くこなされますよ?」
( ´∀`)「平素はそうモナけど、緊急時や精神状態が普通でいられない時はかなり脆いモナ」
- 624 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/01(日) 00:24:59 ID:WzvZEXpI0
2人の王子に対する人物評がなされているが、王子の事をよく知らない僕らは口を挟む余地がない。
2人の人物評をまとめると、長男のワカッテマス王子は頭はいいが、文人肌でプレッシャーに弱く、
次男のビロード王子は心やさしいが頭も力も並以下という所らしい。
( ´∀`)「どっちもまだまだ王の器にはなり得てないのが頭の痛い所モナ」
( ∵)「まだお2人ともこれからですよ」
( ´∀`)「そうだといいモナね。むしろ今ならクレアの方が王に相応しいのかもしれんモナ」
( ∵)「クーレリア様ですか。確かに気質は一番王たる物を備えてそうですね」
( ^ω^)(クレア、クーレリア……あ、きっとクーのことだおね)
モナー王が言うには、まだ世間知らずな所はあるが一番資質はあるだろうとのことだ。
言葉では説明し辛いが、人を率いて前に立てる、
言うなればカリスマ性の様なものが自分の子供達の中では一番感じられると。
( ´∀`)「女でなければ迷わず跡継ぎにしたモナよ」
(;^ω^)(てか、こういう話、僕達が聞いててもいい話なのかお?)
大体において、跡継ぎ問題というものはかなりデリケートな話だ。
それで争いが起き、国が傾くというような話は過去にいくつも例がある。
既にこの王宮内に、各王子達の派閥があったとしてもおかしくはないぐらいだ。
- 625 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/01(日) 00:26:10 ID:WzvZEXpI0
( ´∀`)「おっと、当然この事は他言無用モナよ?」
(;^ω^)「それはもう」
ξ;゚听)ξ「勿論です」
(∪^ω^)「わんお!」
思わず僕もツンも姿勢を改め、かしこまって答える。
吹聴して回る気はないが、それならそれで聞かれて問題になりそうな事は言わないで欲しくも思う。
( ∵)「まだ陛下がご健在なのですから、跡継ぎの話はそうお急ぎにならずともいいでしょう」
( ´∀`)「そうモナけど、早めに自覚はしといて欲しいとも思うモナよ」
そう言うと、モナー王はビコーズさんの方に湯飲みを突き出す。
ビコーズさんは無言でそれを受け取り、お茶を注ぐ。
( ∵)「クーレリア様が婿を取って、その方にお任せするという手もありますね」
( ´∀`)「上の2人が頼りにならんようなら、それもいいモナね」
- 626 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/01(日) 00:27:20 ID:WzvZEXpI0
ビコーズさんは何故か僕の方を見ながらモナー王にお茶を差し出す。
モナー王はお茶を受け取り、茶菓子に手を伸ばした。
( ´∀`)「そういえばクーレリアはどうしたモナ?」
(;^ω^)「お……」
( ∵)「北の離宮に御出でですよ」
( ´∀`)「まだ引き篭もってるモナ?」
( ^ω^)(あれ……?)
( ∵)「しばらく勉強をしたいという事でしたから」
( ´∀`)「ふーむ……まあ、いいモナ。その内ブーンにも会わせるモナよ」
(;^ω^)「あ、はい……是非……」
どうやらモナー王はクーが王宮を出ている事を知らないらしい。
ビコーズさんは当然知っているし、恐らく意図的に王に知らせないようにしているのもビコーズさんだろう。
どういう事なのか気になるが、それは今聞くべきではなさそうだ。
- 627 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/01(日) 00:29:07 ID:WzvZEXpI0
( ∵)「では、この辺りでクエストの話を……」
( ´∀`)「茶菓子なくなったモナ」
( ∵)「……そろそろ政務にお戻りになられた方がよろしいのでは?」
やんわりと窘めるビコーズさんを、モナー王は悲しげな目で見る。
ビコーズさんは首を振り、片手を出口の方に向けた。
( ´∀`)「しょうがないモナ。そろそろ働くモナかね」
( ∵)「お茶と茶菓子のおかわりはあとで届けさせますので」
( ´∀`)「頼むモナ。それじゃあ、ブーン、お前達に期待してるモナよ」
( ^ω^)「ご期待に応えるべく、がんばりますお」
( ´∀`)「兵が必要なら言ってくれモナ。多少は出せると思うモナ」
(;^ω^)「あ、いや、情報収集もありますし、最初は少人数の方が動き易いと思いますので……」
( ´∀`)「そうモナか?」
- 628 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/01(日) 00:30:23 ID:WzvZEXpI0
( ∵)「ブーン様にはツン様以外にも頼りになるお仲間がいらっしゃるので大丈夫ですよ」
(;^ω^)「え、ええ、そうですお」
意味ありげにこちらを見るビコーズさんに僕は頷いて返す。
( ´∀`)ノシ「わかったモナ。そなた達の帰還を楽しみに待ってるモナ」
立ち上がり、自らドアを開けて出て行くモナー王に、僕達も慌てて立ち上がって見送る。
そうかしこまらなくてもとモナー王は苦笑していたが、公の場ではないとはいえ、だいぶ不作法だったと思う。
( ∵)「さて、これでようやくクエストの話が出来ますね」
王を見送り、ソファーに座った僕達にビコーズさんが早速切り出して来る。
しかし僕はその前に1つ聞きたい事があった。
( ^ω^)「その前にビコーズさん、どうしてクー……クーレリア姫の事をモナー王に内緒にしているのですかお?」
ξ゚听)ξ「それ以前に、どうしてお連れ戻しにならないのですか?」
ツンが僕の質問に言葉を付け足す。
確かに、本来はそちらが問題視されるべき事だろう。
- 629 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/01(日) 00:31:49 ID:WzvZEXpI0
( ∵)「そうですね……一言で言えば、この国の為ですよ」
( ^ω^)「この国の為?」
( ∵)「先ほど、モナー王の話にもありましたが、王はクーレリア様、クー様に期待しておられます」
しかしそのクーにも足りない部分があり、
それを補う為にもクーは1度王宮以外の生活も知るべきだったとビコーズさんは言う。
そしてその事は、モナー王も理解していたと。
ξ゚听)ξ「それならば、内緒にせずともモナー王様にそうお伝えすればよろしかったのでは?」
( ∵)「仰る通りですね。しかし、王とはいえモナー王も人の親です」
( ∵)「我が子を一人旅立だせるのは躊躇われたでしょう」
かと言って、多数の警護をつけての旅であれば、旅立たせる意味がない。
故に王には内緒で、クーが王宮を抜け出す手筈を整えたと言う。
( ∵)「旅立たせてしばらくは監視も付けておりましたし、危険があれば即連れ帰るつもりではありましたが」
幸い無事にヴィップに辿り着き、色々と経験する事が出来て良かったとビコーズさんは言う。
今は時々様子を見に行かせるくらいで、四六時中の監視はしていないらしい。
- 630 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/01(日) 00:33:13 ID:WzvZEXpI0
ξ゚听)ξ「貴方がクーレリア姫をヴィップに辿り着くように仕向けたのですか?」
( ∵)「結論を言えばそうなりますね」
( ∵)「各種条件を考えた結果、ヴィップが一番クー様が活動するのに適していましたから」
まだ何か聞きたそうだったツンだが、わかりましたと引き下がった。
筋は通っている気はするが、引っかかる部分も多少はある。
( ^ω^)「それじゃあ、トソン君の事もビコーズさんが?」
( ∵)「そうです。元々、1人ぐらいは護衛もいていいだろうとは思っていましたし、丁度良いと思いまして」
どうやらトソン君がヴィップに向かわなければ、それとなく行き先を教えるつもりだったらしい。
探索用の鏡の件も不問にしてあるし、聖騎士団に籍も残してあるとの事だ。
( ∵)「結果的に、ブーン様方にクー様の事を色々と押し付けた様で申し訳なく思っております」
( ^ω^)「いや、僕達は単に友達として自主的に付き合ってるだけで、押し付けられたとは思ってませんお」
深々と頭を下げるビコーズさんに、僕は気にしていない事を告げる。
- 631 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/01(日) 00:34:05 ID:WzvZEXpI0
ビコーズさんにそういう思惑があったにしても、僕がクーと付き合ってるのは気が合ったからで、
友達として一緒にいて楽しいからだ。
借金の兼ね合いもあるが、強制されているつもりはない。
( ∵)「そう言ってもらえると助かります。クー様に色々と経験を積ませてあげて下さい」
ξ゚听)ξ「ええ、今後も友達として付き合って行くつもりです。王宮とは関係なく」
(∪^ω^)「わんわんお!」
若干強い調子でツンがビコーズさんの言葉に応じる。
どうも少し不機嫌そうに見えるが、僕にはその理由がわからなかった。
( ∵)「そうですか。それではそろそろクエストの話を致しましょうか」
ようやく僕らは本来の目的について話し始めた。
今回依頼されたクエスト、魔王の頭骨の捜索についてだ。
( ^ω^)「具体的な場所はわかってるんですかお?」
一言で探せと言われても、ニューソク大陸も狭いわけではない。
漫然と探すならかなりの時間がかかる。
- 632 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/01(日) 00:35:23 ID:WzvZEXpI0
( ∵)「北の地にあるという噂は聞き及んでおります」
( ^ω^)「北というと、イチサンですかお?」
ニューソク大陸最北の町、イチサン。
過去に竜との戦いで町の大半を焼失し、多くの人や竜が亡くなった地でもある。
( ∵)「はい、当面の目的地はそこになります」
( ∵)「そこから先は、ブーン様の手腕に御期待するとしか言えずに申し訳ありませんが……」
まずはイチサンの町で情報を集めてくれという事だろう。
南の騒動、聖骸布の件やマルタスニムの件で、今まで調査にほとんど人員を裂けなかったらしい。
( ^ω^)「じゃあ、そこで色々と調べてみますお」
( ∵)「よろしくお願致します。それと、これをお持ち下さい」
ビコーズさんは僕に封書を差し出す。
封書には王家の印が押されており、重要書類っぽい雰囲気だ。
( ∵)「イチサンの長老への紹介状です。これをお持ちになれば話は早いでしょう」
物が物だけに出来るだけ目立たぬよう探して欲しいが、何の協力者も無しでは大変でしょうとビコーズさんは言う。
- 633 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/01(日) 00:36:48 ID:WzvZEXpI0
( ^ω^)「助かりますお」
(∪^ω^)「わんわんお」
受け取った封書を仕舞い、その後いくつかの質問をして聞きたい事は一通り聞き終えた。
ナカノヒトやキマスタ絡みの事も、既に一通り手配してくれていた様だった。
出発の時期はこちらに任せるという事なので、それは帰ってから皆と相談しようと思う。
( ∵)「こんな所でしょうか」
( ^ω^)「ですおね。……その、今回のクエストとは直接関係ないんですけど、1つ聞いてもいいですかお?」
( ∵)「何なりと」
( ^ω^)「これらの集めた魔具をどうするつもりなんですかお?」
( ∵)「それは先日の王の言葉にもあったと思いますが、ニューソク王家が責任をもって管理致します」
( ^ω^)「出来るんですかお? その、集める事自体ヤバかったりしませんかお?」
同じく、千年紀の王を復活させる魔具を集めようとしていたデレは、まだ具体的な方法を見付けてはいなかった。
管理するといっても、そう簡単ではないのではと危惧する。
- 634 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/01(日) 00:38:38 ID:WzvZEXpI0
( ∵)「確かに、下手に扱えば藪蛇になりかねませんが、既に対策は練ってあります」
ビコーズさんの話によると、ここソクホウの町には古くから聖域とされる場所があり、
邪悪な力を抑えるに適した場所があるという。
どこかで聞き覚えのある場所だと思ったら、多分トソン君の昔話で出て来た場所であろう。
( ∵)「そこで個別に封印し、千年紀の王が2度と蘇らぬよう管理していくつもりです」
( ^ω^)「そこまで考えておられるなら安心ですお。失礼な事を聞いてすみませんでしたお」
( ∵)「いえいえ、ブーン様が御心配なさるのも当然ですので。お爺様からお聞きになられていたのでしょう?」
( ^ω^)「お? いや、その事は特には……」
( ∵)「そうでしたか。千年紀の王の事は、師が自分の亡き後起こりうる問題として」
( ∵)「気にしておられた事の1つでしたので、聞き及んでおられたのかと思いまして」
じいちゃんが自分の死後の事で気にしていたのは、千年紀の王と竜との関係だったらしい。
そのどちらも僕は聞いてはいなかったが、その両方と関わる事になるとは因果なものだ。
- 635 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/01(日) 00:40:08 ID:WzvZEXpI0
( ∵)「竜の方は今の所、これといった動きはありませんので大丈夫でしょう」
( ^ω^)(あれ……?)
( ∵)「残ったもう1つ、千年紀の王の事は我が身命を賭しても果たさねばなりません」
(∪^ω^)「わんお!」
この様子だとビコーズさんはわんわんお、天空竜の事を知らないのだろうか。
てっきりその事を知ってるからこそ、わんわんおを王宮に連れて来るのを許可したのだと思っていた。
わんわんおを見て気付かないのは、封印が上手くいっているからだと安心も出来るが、
恐らくドクオさん経由で話が行ってるのだろうと予測していたので、ちょっと意外だった。
( ^ω^)「えっと、その、天空……」
ξ゚听)ξ「それでは、この辺でお暇致しましょうか」
ツンが僕の言葉を遮る用に立ち上がり、僕の肩に手を置く。
一通り話したい事は話したので、確かに頃合だが、何だか少し不自然な行動だと感じた。
しかし僕はツンに従い、立ち上がってビコーズさんに暇を告げる。
- 636 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/01(日) 00:41:33 ID:WzvZEXpI0
( ∵)「そうですか。それでは……おっと、失礼、もう1つ渡すものがあるのを忘れておりました」
ビコーズさんも立ち上がり、執務机の方に行くと何か重そうな袋を持って戻って来た。
( ∵)「こちらで旅の準備を整えて下さい」
(;^ω^)「あれ? 準備資金はこないだ報酬と一緒に頂きましたお?」
あれは報酬だけだと言うビコーズさんに、そんなには必要ないと袋をそっと押し返す。
しかし、そういうわけにも行かないと譲らないビコーズさんに、最終的に押し負けてしまった。
( ∵)「遠慮なさらずとも、クエストの難度を考えれば適正な準備金だと思いますが」
( ^ω^)「あんまり多過ぎると気が引けますお。使った分の明細は出しますので、余った分は返却しますお」
( ∵)「そこまで仰るならお受け取りしますが……まあ、その分報酬に上乗せするだけですけど」
(;^ω^)「それじゃ返す意味ないですお」
ひとまずそれで納得し、僕達はビコーズさんの執務室を出る。
だいぶ王宮にも慣れたので、もう送って貰わずとも帰れそうだ。
- 637 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/01(日) 00:43:25 ID:WzvZEXpI0
( ^ω^)「今日はちょっと町の方に寄って帰りますので、送って頂かなくて結構ですお」
( ∵)「わかりました。ではここで。ブーン様方のクエストの成功を祈っております」
( ^ω^)「がんばりますお」
ξ゚听)ξ「では、失礼致します」
(∪^ω^)「わんわんお!」
ビコーズさんと別れ、僕達は王宮を出る。
時間的には少し早いが、昼食を取ってから帰ろうと思う。
( ^ω^)「どこか行きたい店あるかお?」
ξ゚听)ξ「そんな事聞かれても、別にソクホウにある店なんてよく知らないわよ」
( ^ω^)「まあ、僕も知らないけど。じゃあ、食べたいもので何かないかお?」
ξ゚听)ξ「そうねえ……甘いものかな? デザートが付くような料理がいいわね」
( ^ω^)「ツンにしては珍しいおね。じゃあ、デザートがありそうなお店に行くお!」
(∪^ω^)「わんお!」
- 638 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/01(日) 00:45:13 ID:WzvZEXpI0
折角だから商業区ではなく、王宮周辺の通りで店を探してみた。
この辺りは場所が場所だけに、高級そうな上品な感じの店が多い。
( ^ω^)「ここが良さそうだお」
ξ゚听)ξ「どこも似たような店だからどこでもいいけど、どうしてここなの?」
( ^ω^)「ここが一番コーヒーのいい匂いがしたお!」
(∪^ω^)「わんわんお!」
コーヒーが美味い店は甘いものもきっと美味いという僕の根拠のない理論に呆れながらも、
ツンも特に異議はないようでこのお店に入る事にした。
問題はわんわんおも入れてくれるかだが、
いわゆるオープンテラスの席ならかまわないという事だったのでそこにしてもらった。
まだまだ暑い盛りだが、木陰になっていて案外涼しくていい席だ。
( ^ω^)「さて、何がいいかおね」
メニューを見ると、やはり僕らが普段使うような店よりは結構お高めの値段設定になっている。
とはいえ法外な値段というわけでもないので、僕らはデザートも付くランチのコースを頼む事にした。
- 639 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/01(日) 00:47:05 ID:WzvZEXpI0
( ^ω^)「案外融通きくんだおね。わんおの分の焼いた肉も頼めたお」
(∪*^ω^)「わんわんお!」
ξ゚听)ξ「そうね、ちょっとお高そうで近寄り辛い雰囲気だったけど、いい店選んだかもね」
僕らは席に座ると、ひとまず今日ビコーズさんから聞いた事について話す事にした。
テラス席には天気も時間帯も中途半端なこともあってか、僕ら以外に客はいない。
( ^ω^)「結局、マルタスニムも灰衣の男も捕まえられなかったって言ってたおね」
ξ゚听)ξ「まだ捜索は続いてるって話だけど、もうとっくに逃げてると見る方が懸命よね」
ビコーズさんの話によると騎士団は、マルタスニムに精霊兵器クルゥ、
それに灰衣の男の誰も見付けられなかったらしい。
マルタスニムについては、現地で後からシブサワさんが騎士団に捕まえるように頼んだ様だ。
騎士団は、あくまで灰衣の男を捕まえる為だけにナカノヒトに向かっていたので、
あの時僕らを助けたのは暴徒の鎮圧程度に考えていたらしい。
最初から捕まえる予定だったらタイミング的に捕まえられた気もするので、惜しいことをしたと思う。
- 640 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/01(日) 00:48:46 ID:WzvZEXpI0
( ^ω^)「ヒッキーさんはしばらくナカノヒトに止まる予定で……」
ξ゚听)ξ「シブサワさんも同じくって話だったわね」
( ^ω^)「ジョルジュさん達もまだナカノヒトにいるらしいけど、騎士団の方針次第みたいだおね」
ξ゚听)ξ「ハイン達なら心配いらないと思うけど、相手が相手だけに気を付けて欲しいわね」
( ^ω^)「で、キマスタではデレ達一行の姿はもうなかったらしいし」
( ^ω^)「馬車は向こうの教会の人が対処してくれたらしいから、その内僕らの荷物は届くらしいお」
ξ゚听)ξ「まあ、聖女達一行は、いても捕まえるわけにはいかなかったでしょうけど……」
(∪^ω^)「わんおー」
デレ達が千年紀の王の魔具を狙っているなら、今後また争う事になる可能性が高い。
正直避けたい事態だが、デレが僕に告げた言葉を信用すれば、この件は僕に任せてくれるかもしれない。
ξ゚听)ξ「だとしても、西の賢者がこのままおとなしく引き下がってくれるかはわからないけど」
ξ゚听)ξ「プライドは高そうだったから、ラウンジの聖女をたぶらかしたあんたを仕留めに来るかもね」
(;^ω^)「人聞きの悪い事言うなお。デレとは単に友達になっただけだし、モララーさんとも色々と話したいお」
- 641 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/01(日) 00:51:06 ID:WzvZEXpI0
西の賢者ことモララーさんとは問答無用で戦う事になったが、じいちゃんのお弟子さんだし、
僕としては話したい事が沢山あった。
ビコーズさんも僕とモララーさんが戦う事になるのは避けたいらしいので、書簡を送るとは言っていたが、
モララーさんがラウンジに戻っていないなら届かないだろう。
それに、モララーさんはじいちゃんからラウンジの事を託され、自身の判断で動くように厳命されていたらしい。
いかに兄弟子とはいえ、ニューソクが間違っていると思うなら安易に従うなと。
故に書簡が届いたとしても、モララーさんが兄弟子であるビコーズさんの言葉に素直に従わない可能性の方が高いと、
ビコーズさんはすまなそうな顔をしていた。
( ^ω^)「とにかく、もしまた会ったら戦いは避ける方向で動くお」
(∪^ω^)「わんお」
ξ゚听)ξ「私はあのクックルにリベンジしたいとこだけどね」
(;^ω^)「お……」
ξ--)ξ「まあ、今の段階では厳しいのはわかってるから、なるべく戦闘は避ける事にするわ」
- 642 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/01(日) 00:52:24 ID:WzvZEXpI0
( ^ω^)「頼むお。僕もあのカッコいいポーズ魔法に勝てる気しないし」
ξ;゚听)ξ「いや、あれ、かなりダサかったでしょ?」
( ^ω^)「そんなことねえお! 僕のブーン・クラッシュに匹敵するナイスポーズだったお!」
(∪^ω^)「わんわんお!」
ξ;--)ξヽ「そう……。ひょっとしたらあんたの一門はああいうセンスなのかもね……」
それから僕らはたわいもない話をしながら料理を存分に堪能した。
料理の味は高いだけはあると納得の出来る物で、たまにはこういうのもいいと思わせてくれた。
ξ*゚〜゚)ξ「このケーキ美味しいわね」
( ^ω^)「うーむ、この甘みに薬草を……」
ξ;゚听)ξ「あんたまた薬草ケーキとか安易な新商品考えてない?」
( ^ω^)「それだと携帯には向かないから、薬草パンケーキはどうだろうかおね?」
ξ;゚听)ξ「どっちにしろ、日持ちはしないんでしょ?」
(∪^ω^)「わんおー」
- 643 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/01(日) 00:54:10 ID:WzvZEXpI0
食後のデザートとコーヒーを頂きながら、僕はツンの顔を盗み見る。
だいぶ機嫌は直ったようなので、今なら聞いても大丈夫だろうか。
( ^ω^)「ねえツン、何で今日は機嫌悪かったんだお?」
ξ゚听)ξ「え……? ああ……そうね……」
誤魔化されるかと思ったら、ツンは自分が機嫌が悪かった事はすんなり認めた。
ただ、その理由を話していいのか迷っているようだ。
ξ゚听)ξ「あんたは、今回のクエストの話どう思ってるの?」
( ^ω^)「そうだおね……わかる部分とわからない部分があるおね」
モナー王が魔王の頭骨を捜索する理由には納得がいった。
その際、僕達に頼む理由も一応は筋は通っていると思う。
この町にはあまり冒険者自体が多くないし、聖騎士団を動かしたくないという理由も理解出来る。
( ^ω^)「わからない部分はまず、謁見自体だおね」
何故わざわざ、ああいった大掛かりな謁見をしたのかという事だ。
事の重さを考えれば、ああいった場を設けること自体には納得いく。
現状を知らしめる為、王としての方針を示す為には効果的な場面だったとは思う。
- 644 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/01(日) 00:57:25 ID:WzvZEXpI0
ただ、僕に頼む事で貴族達の反発にあうのは予測出来たのではないだろうか。
それなら事前に僕等にも貴族達にも話し、方針を伝えるなりして根回しをすればもっとスムーズに行ったと思う。
あの場で僕の出自をばらす必要性も生まれなかったはずだ。
( ^ω^)「ただこれ、逆だったら疑問はなくなるんだおね」
ξ゚听)ξ「最初から、あんたの出自を話すのが目的だったらってわけね」
どうやらツンも僕と同じ考えに到達していたらしい。
魔王の衣を奪還したという功績と、大賢者の末裔という血筋のお陰で、
僕は一躍王宮内で一目置かれる存在となったはずだ。
( ^ω^)「本当の理由はわからないけど、パフォーマンスとしてのインパクトは大きかったと思うお」
ξ--)ξ「一部の貴族は真っ青になってたしね」
モナー王がそんな事をした理由はわからない。
想像でならいくつか思い付くが、どれも正しい様で正しくない様に思える。
単純に臣として僕の、じいちゃんの名が欲しかっただけならそれほど身構えなくても良いと思うが、
それ以上の何かがあるなら僕はどうすべきだろうか。
- 646 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/01(日) 00:59:21 ID:WzvZEXpI0
( ^ω^)「でも、モナー王に悪意があるようには見えなかったんだおね」
ξ゚听)ξ「そうね。でも、私達みたいなガキに簡単に見透かされるほど馬鹿でもないと思うけどね」
謁見の間で話しただけならモナー王の真意を疑ったが、今日、ビコーズさんの執務室で話した事で、
僕の中ではモナー王を信用する気持ちが生まれていた。
( ^ω^)「多分、ビコーズさんと友達として話す王ではない、人としての部分を見たからだと思うお」
ξ゚听)ξ「まあ、そこは私も認めるわ。けど……」
( ^ω^)「けど?」
(∪^ω^)「わんお?」
言うべきか言わざるべきか迷っている。
ツンの今の顔を評すればそんな所だろう。
( ^ω^)「多分、僕に言い辛い事なんだおね? 僕が聞くと嫌な気分になるとかそういう」
ξ゚听)ξ「それは……」
- 647 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/01(日) 01:01:24 ID:WzvZEXpI0
( ^ω^)「僕はツンの事を一番信用してるお。ドクオさんとショボンと同じくらい信用してるお」
( ^ω^)「だから、何か気になる事があったら話して欲しいと思うお」
ξ゚听)ξ「ブーン……」
ξ゚ー゚)ξ「一番が3人いるの?」
(;^ω^)「あ、いや、まあ、いるけど一番には変わりないわけで……」
(∪´ω`)っ"「わんわんおー?」
(;^ω^)「あ、わんおの事も信用してるお!」
ξ゚ー゚)ξ「あらあら、一番が更に増えちゃったわね」
必死に弁解する僕と、僕の足を突付くわんわんおをツンはさもおかしそうに見ていた。
そして1つ大きく息を吐くと、真面目な顔で僕を見詰める。
ξ゚听)ξ「私はね、あのビコーズって人が今一つ信用出来ないって感じたの」
( ^ω^)「お……」
- 648 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/01(日) 01:03:01 ID:WzvZEXpI0
ξ゚听)ξ「あんたも多少は気になってたかもしれないけど」
ξ゚听)ξ「多分おじいさんのお弟子さんって事で、深く考えなかった部分もあるんじゃないかと思ってる」
確かに、ツンが言うようにビコーズさんについて多少は引っ掛かってる部分はあった。
そしてこれもツンが言った通り、じいちゃんの弟子だからと、それを流していた部分もあると思う。
ξ゚听)ξ「あの人、色々知ってるわよね」
( ^ω^)「独自の情報網を持ってて、情報戦に長けているみたいな話はクーが言ってたお」
ξ゚听)ξ「王に魔王の衣の話を伝えたのも、あの人だって謁見の時に言ってたわよね」
あらゆる事について、ビコーズさん主導で話が決められているのではないかとツンは考えているらしい。
モナー王は乗せられているのではないかと。
確かにその可能性も考えられるが、ビコーズさんから明確な悪意でも感じない限りは、
単に優秀なだけで、国思いなだけとも考えられる。
ξ゚听)ξ「そこなのよね……。あの人、私が今まで会った人の中で一番感情の機微が読めない人だし」
- 649 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/01(日) 01:04:45 ID:WzvZEXpI0
ξ゚听)ξ「意図もよくわからないし、最終的には女の勘でそう思うとしか言えないから」
ξ--)ξ「あんたに言うべきか迷ってたのよ……」
( ^ω^)「……」
ツンの言う事がまるきり根拠のない、適当な妄言だとは思わない。
確かに、ビコーズさんの行動には、よくわからない部分もある。
しかし僕は、ツンが知らないビコーズさんも知っている。
じいちゃんの話をした時のビコーズさんは、感情が読めないながらもすごく楽しそうだったと感じられた。
あの時僕が感じた気持ちも間違っていないと思う。
ξ゚听)ξ「そうね、あの人、ブーンのおじいさんの事は心から尊敬している様に感じられたわ」
ξ゚听)ξ「そしてあんたにも、敬意はあれど悪意を持っている様には見えないのよね……」
ξ--)ξ「ごめん、やっぱ忘れて。軽々しく人を疑うもんじゃないわね」
( ^ω^)「……いや、一応その事は頭の隅にでも留めておく事にするお。ありがとうだお」
- 650 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/01(日) 01:07:23 ID:WzvZEXpI0
僕はツンに礼を述べ、コーヒーのおかわりを頼みに行く。
ビコーズさんの事は疑いたくいないが、ツンが僕の事を心配して言ってくれているのもわかっている。
単に取り越し苦労ならそれはそれで笑って済む話なので、この事は覚えておく事にしようと思う。
( ^ω^)「しかし、今度は北かお。南から戻って来たばっかだってのに、何だか忙しないおね」
席に戻った僕は、話を変える事にした。
ツンもその方がいいと思っていたのか、僕の話に乗ってくれる。
ξ゚听)ξ「ホントにね。でも、今の季節なら、北は過ごしやすいかもね」
僕もツンも、北のイチサンの町には行った事がない。
降雪量の多い地域だと認識しているが、流石にこの暑い時期に雪は降らないだろう。
( ^ω^)「シューに手紙出さないとだお。戻るのが遅くなるって」
ξ゚听)ξ「帰ったらまた別の店になってるかもね」
(;^ω^)「それは……ないとは言い切れないけど、僕はシューを信用してるお」
(∪^ω^)「わんおー」
- 651 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/01(日) 01:09:22 ID:WzvZEXpI0
店番を頼んでいるシューには申し訳ないが、今更クエストを断るわけにもいかない。
何とか店番の延長をしてくれるよう頼もうと思う。
ξ゚听)ξ「まあ、ヴィップでも商売は出来るでしょうから、引き受けてくれるわよ」
( ^ω^)「だおね。ツンもすまんおね。また長旅に引っ張り出す事になっちゃって」
ξ゚听)ξ「え? まあ、私は別に……」
前にソクホウに来た時、ツンは長旅はあまり好きではない様子であった。
ヴィップの道場や畑の事もあるし、当初の予定以上にクエストに引っ張り回すのは申し訳なく感じる。
ξ--)ξ「旅が嫌ってわけじゃないし、状況はわかってるから気にしないの」
ヴィップの事は両親もいるし、今回の話に関しては自分も当事者の1人だからとツンは言う。
ξ゚听)ξ「私は自分の意思でこのクエストに参加するんだから」
ξ*゚ぺ)ξ「別にあんたの事が心配だとか、そういうんじゃないからね?」
( ^ω^)「わかってるお。でも、いつも助かるお。ありがとだお」
ξ*゚听)ξ「わ、わかってればいいのよ。一応助けてあげるから、安心しなさい」
- 652 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/01(日) 01:10:51 ID:WzvZEXpI0
テーブルの上に注文していたコーヒーが置かれる。
心なしか、運んできた若い女の店員さんが微笑んでいた様に見えたのは気の所為だろうか。
( ^ω^)「ツンはやっぱり将来的には道場を継ぐのかお?」
ξ゚听)ξ「え? うーん……そうね、多分そんな感じでヴィップにいると思うわ」
( ^ω^)「ヒートみたいに武者修行に出ようとは思わないのかお?」
ξ゚听)ξ「そうねえ……あれ見てると楽しそうとは思う事もあるけど、そこまでして戦いたいわけでもないしね」
いつも真っ先に敵に向かうツンの姿を知る僕からすると、少々意外な意見だ。
でも多分そのことを口にすると拳が飛んで来そうなので、僕は曖昧に笑って流す。
ξ゚听)ξ「そういうあんたはどうなの? だいぶ旅に興味を惹かれてるみたいだけど?」
(;^ω^)「お? 何でそう思うんだお?」
確かに、そう思っている自分がいるのには気付いていたが、ツンに明確にそうしたいという様な話をした事はない。
それでも気付かれてしまうとは、よほど僕はわかりやすい態度を取っていたのだろうか。
- 653 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/01(日) 01:12:49 ID:WzvZEXpI0
( ^ω^)「魔法道具屋を止めたいわけでも、冒険者になりたいわけでもないんだけど」
( ^ω^)「やっぱり知らない場所に行ってみるのは楽しいと思うお」
その位の事は前にもツンには言ったと思う。
単に趣味レベルの興味で、今後の生き方を変えるほどでもないくらいのものだ。
旅先で美味いものを食べ、素晴らしい景色を眺め、知らない人と会話するのは楽しい事だと思う。
ξ゚听)ξ「その位の興味なら、私にもあるけどね」
( ^ω^)「まあ、よっぽどの無精者でなければ、ない人は少ないおね」
ただ、その位の興味で旅をしたいと思うだけなので、
今回の様に難度の高いクエストで旅に出るのはあまり本意ではない所もある。
ξ--)ξ「のんびり観光ってわけにはいかないもんね」
(;´ω`)「今回、折角南に行ったのに美味いもん食べそびれたのは甚だ遺憾だお」
(∪´ω`)「わんおー」
- 654 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/01(日) 01:14:48 ID:WzvZEXpI0
ξ゚听)ξ「千年紀絡みの話が一段落したら、また行ってみればいいじゃない」
ξ゚听)ξ「その時は、私も付き合ってあげるからさ」
( ^ω^)「そりゃいい考えだお。けど、無理しなくていいお?」
ξ゚ -゚)ξ「別に無理とかそういうのはないわよ」
ξ*--)ξ「あんたとわんおだけで旅させるのは、ちょっと頼りないしね」
私が護衛してあげるとツンは言う。
僕は素直にそれに礼を述べる。
( ^ω^)「わんおと2人旅も乙なものかもしれないけど、やっぱ人数多い方が旅は楽しそうだお」
ξ゚听)ξ「……ま、そうね」
ツンは軽く肩をすくめ、コーヒーを口に運ぶ。
ツンの口がコーヒーカップに隠れる瞬間、ツンの口が動いた様に見えたが僕には何も聞こえなかった。
こっそり文句でも言われたのだろうか。
- 655 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/01(日) 01:16:33 ID:WzvZEXpI0
( ^ω^)「さて、これ飲んだら帰って出発の準備するかお」
ξ゚听)ξ「出発はいつにするつもり?」
( ^ω^)「準備が出来次第、と思ってるけど、まあ、皆の意見を聞いてからだお」
ξ゚听)ξ「それじゃあ、私は出発まで馬鹿ヒートと稽古でもしてますかね」
( ^ω^)「ああ、僕も杖新調しないと。この辺にいい木が採れる山あるかおね」
(∪^ω^)「わんわんお」
ξ゚听)ξ「アニジャさんに作って貰ったら?」
( ^ω^)「んー、でも忙しいだろうし、あのダマスカス鋼は魔法使い向きじゃなさそうなんだおね」
( ^ω^)「重いし魔法伝導率も良くないって話もあるし。アニジャさんが開発中の新素材なら話は別だけど」
ξ゚听)ξ「アニジャさん、そんなの作ってたの?」
( ^ω^)「あれ、聞いてなかったかお、ビキニアーマーの話?」
_,
ξ゚听)ξ「うん、聞いてなかったけど、その名前だけで聞く価値がないって判断したわ」
- 656 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/01(日) 01:19:05 ID:WzvZEXpI0
僕達は立ち上がり、お勘定を済ませる。
料理の味には十分満足がいったので、今回のクエストが終わってソクホウに戻ってきた時にまた来たいと思った。
今度は他の皆も誘って。
( ^ω^)「スペシャルもどうにかしたいんだおね。スペシャル自体は変えられないけど、新たな必殺技が欲しいお」
( ^ω^)「今の必殺技は、やっぱ個人戦用か逃走用になっちゃうんだおね」
ξ゚听)ξ「あんたのスペシャルはだいぶ変わってるからね。難しいとこね」
ヽ( ^ω^)ゝ「それに伴い、新たなカッコいいポーズも編み出さないとだお。西の賢者には負けてられないお!」
ξ;--)ξ「心底どうでもいいわ……」
(∪^ω^)「わんおー」
僕らは曇り空のソクホウの町をのんびりと歩き、サースガ邸へ帰り着いた。
第三十六話 互い思う、思い違う 終
戻る 次へ