( ^ω^)は魔法道具屋さんのようです

838 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/19(木) 23:12:51 ID:7gnB2v7k0

 〜 イチサンの町北東の海域 マリン・サースガ号内 〜


( ^ω^)「もうすぐ目標の海域ですおね」

ξ゚听)ξ「何の変哲もない、穏やかな海よね」

川 ゚ -゚)「雪が止んだのは幸いだったな」

( ´_ゝ`)「で、これからどうするつもりだ?」

+(´<_` )「勿論、幽霊船を探すに決まってる」

( ´_ゝ`)「うん、俺としてはどうやって探すのかを聞きたいんだけどな……」



     第三十九話 蒙霧に浮かぶ幽霊船


840 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/19(木) 23:14:04 ID:7gnB2v7k0

( ^ω^)「探すと言っても、わかってるのは幽霊船が出る時に霧が出る事ぐらいなんですおね」

僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。

ξ゚听)ξ「その霧を探すってもの難しいと言うか、よくわからないわね」

彼女の名はツン。
サンライズの隣の武術道場の娘で、いわゆる幼馴染というやつだ。

(∪^ω^)「わんわんおー」

この子の名前はわんわんお。
僕のペットというか家族で、見た目は子犬だが実は元竜だ。

僕達は魔王の頭骨を探すクエスト受け、イチサンの町へ向かい、
そこで聞いた幽霊船の情報が魔王の頭骨に関係あるのではないかと推測し、海に出ていた。

(´<_` )「ひとまずこの辺りに船を止めて、しばらく待つしかないんじゃないかな?」

川 ゚ -゚)「情報によると、単に通っただけだったり、漁の最中であったりと出現状況は一定じゃないようだしな」

841 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/19(木) 23:16:01 ID:7gnB2v7k0

(゚、゚トソン「では、しばし待機という事ですね」

川 ゚ -゚)「休憩だ休憩。私は部屋で寝てるから、何かあったら起こしてくれ」

そう言うとクーは船内に入っていった。
トソン君はこのまま甲板で待機しているつもりらしい。

ノパ听)「よし、わんお! 競争するぞ!」

(∪^ω^)「わんわんお!」

ξ;゚听)ξ「甲板を走るのは止めなさい! あんたら絶対落ちるから」

走り出すヒートとわんわんおを追い、自分も走り出すツン。
3人まとめて海へ転落という事態は避けて欲しいものだ。

( ´_ゝ`)「じゃあ、俺も中で武器の仕上げ作業にかかるかな。何かあったら呼んでくれよ」

+d(´<_` )「ああ、こちらは僕に任せて存分に作業に専念してくれ」

( ^ω^)「じゃあ僕はと……」

842 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/19(木) 23:17:46 ID:7gnB2v7k0

僕はアニジャさんに続いて船内に戻る。
と言っても、道具を取りに行くだけだ。

||ヽ( ^ω^)ゝ「よし、準備万端だお!」

(´<_` )「おや、それは釣竿じゃないか。いつの間にそんなもの用意してたんだい?」

( ^ω^)「祭りの時仲良くなった漁師さんに格安で譲ってもらったんですお」

( ^ω^)「前々から1度海釣りに挑戦してみたかったんですおね」

ξ゚听)ξ「海釣りって難しいって聞くわよ? 湖であれなのに、大丈夫?」

( ^ω^)「何事もやってみなくちゃわからんお。それに、海釣りの方が僕にあってる可能性もあるかもしれないお」

(´<_` )「ハハ、まあ、どうせ待つ間は暇なんだし、存分にやってみるといいんじゃないか?」

( ^ω^)「勿論、警戒は怠らないようにしながら釣りますお」

今回のクエストも千年紀の王絡みだ。
いつ誰に襲われるかはわからない。
現在は海上なので見晴らしは良いが、また西の賢者が襲って来る可能性もあるので油断は禁物だ。

843 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/19(木) 23:19:26 ID:7gnB2v7k0

ξ゚听)ξ「来るのかしらね、あいつら?」

( ^ω^)「どうだろうかおね。僕らもここに魔王の頭骨があるって確信があって幽霊船を探してるわけでもないし」

(゚、゚トソン「来る可能性は低いと見るべきですかね」

( ^ω^)「まあ、だとしてもいつ襲撃されてもいいように迎撃の準備はしておくお」

西の賢者が前回みたいな強力な魔法を撃って来るならお手上げだが、その時はいっそ接近戦を仕掛けるべきか。
西の賢者は倒せなくともその船を壊すのは可能だろうから、前よりは勝機はある。

( ^ω^)「多分来ないとは思うけど」

そう言いながら僕は釣竿を上段に構える。
デレは僕に任せると言ったのだ。
僕はその言葉を信じたいと思う。

(´<_` )「だといいね。それはともかくブーン君、お昼ご飯用に何か釣ってくれるのを期待してるよ」

( ^ω^)「任せて下さいお! そんじゃ……っと、ツン、わんおを捕まえておいてくれお」

ξ゚听)ξ「はいはい、流石に海に飛び込まれるのは勘弁して欲しいからね」
つ∪^ω^)

844 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/19(木) 23:21:05 ID:7gnB2v7k0

ξ;゚听)ξ「あんたも、泳いで魚捕まえてこようとか考えるんじゃないわよ?」

∩ノパ听)∩「ん? 何でだ? 駄目なのか?」

ツンは今にも海に飛び込まんとしていたヒートを取り抑える。
雪は止んだとはいえ、まだまだ海は冷たいはずだ。
深さも相当なものだし、潜って魚を取るのは流石に無理がある。

||⊂( ^ω^)「それじゃ……」

(゚、゚トソン「……」

||⊂( ^ω^)「……トソン君も釣りたいのかお?」

(゚、゚*トソン「あ、いえ、その……」

否定はするが、その目は明らかに釣りたいと訴えて来ている。
しかし、自分でもまた釣竿を投げる危険性があるのを危惧しているらしい。

(゚、゚;トソン「また誰かの服に引っ掛けてしまう可能性もありますしね」

(;^ω^)「うん、今回は見送って貰おうかお」

845 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/19(木) 23:22:41 ID:7gnB2v7k0

僕は改めて釣竿を構え、勢いよく海に投げ入れる。
格好だけは様になっているというツンの褒め言葉なんだか嫌味なんだかわからない言葉を聞き流し、
釣りに集中する事にした。

( ^ω^)//「……」

ξ゚听)ξ「この海域はモンスターはいないんですかね?」

(´<_` )「そこまで陸から離れてるわけでもないから、本来ならそんなにはいないはずだけど」

(´<_` )「竜の大陸に近い所為か、たまに見かけるという話はイチサンで聞いたよ」

( ^ω^)//「……」

ξ゚听)ξ「シーサーペントみたいなヤバいやつですか?」

(´<_` )「ピンキリらしいけど、すごくヤバいのもいるらしいね」

( ^ω^)//「……」

(´<_` )「古代の伝承にある様な、伝説クラスのモンスターの名前もあった」

ξ゚听)ξ「それは相当なものですね。例えばどんなのです?」

( ^ω^)//「……」

846 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/19(木) 23:24:37 ID:7gnB2v7k0

(´<_` )「そうだね、聞いた中で一番恐ろしいのはクラーケンかな」

ξ゚听)ξ「それって、どんなモンスターなんですか?」

( ^ω^)//「……」

(´<_` )「巨大なイカの様なタコの様な姿と伝わっているけど、詳細は不明だね」

(´<_` )「大体において、巨大な足ぐらいしか目にする事はないらしいし」

(´<_` )「足1本でこの船ぐらい軽く沈められるほどの大きさだとか」

ξ;゚听)ξ「それはちょっと洒落になってませんね」

( ^ω^)//「……」

(´<_`;)「ま、あくまで伝承の類だけど、そんなのがホントに出て来たら逃げる以外に手はないだろうね」

ξ;゚听)ξ「ですよね。陸で戦っても勝てるかわからない大きさなのに、船上じゃまず勝てませんよね」

( ^ω^)//「……」

847 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/19(木) 23:26:33 ID:7gnB2v7k0

(´<_` )「見てみたいという気持ちは大きいけど、出会わないのを祈るべきかな」

ξ゚听)ξ「シーサーペントみたいに出現の兆候とかないんですか? それがわかれば逃げられるような」

(´<_` )「いくつかはあったね。大渦が巻くとか、高波が起こるとか」

(´<_` )「確認してからじゃ逃げるの間に合わないくらいの」

ξ;゚听)ξ「それ、兆候じゃなくて、ばっちり遭遇しちゃってますよね」

( ^ω^)//「……」

(´<_` )「面白い所では、釣り糸にかかったなんて話もあるね」

(´<_` )「やけに重い魚だと思ったら、クラーケンの足だったとか」

ξ;゚听)ξ「それは流石に嘘じゃないですか?」

( ^ω^)//「……」
  チラッ
(´<_` )「まあ、嘘だとは思うけど……」
  チラッ
ξ゚听)ξ「ホントにかかったら洒落になりませんね」

848 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/19(木) 23:28:55 ID:7gnB2v7k0

||( ^ω^)「……」

ξ゚听)ξ「あら? 釣り止めちゃうの?」

(;^ω^)「間近でそんな話されて続けられるほど図太い神経してないお」

僕は釣り糸を巻き上げ、釣竿を足元に置く。
尾ひれが付いた噂話だと思いたいが、万が一の可能性を考えると怖いものがある。

ξ゚听)ξ「ここで止めちゃったらまた釣果0じゃないの」

(;^ω^)「またって言うなお」

それなら自分にちょっとやらせてくれと言うツンに釣竿を渡す。
僕がやった限りでは全然引きがなかったし、ここは場所が悪いから釣れないのではないかと思う。

(´<_` )「余計な事を言った様で悪かったね」

( ^ω^)「いえ、どうせ全然引きがなかったし、頃合でしたお」

ξ゚听)ξ//「……」

849 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/19(木) 23:30:43 ID:7gnB2v7k0

( ^ω^)「しかし、オトジャさん、今回はどうして手伝ってくれるんですかお?」

( ^ω^)「手伝ってくれるのは勿論ありがたいんですけど、当初は送って貰うだけの予定でしたお?」

(´<_` )「そうだね、単純に面白そうだったからというのが一番の理由かな」

ξ゚听)ξ//" ググッ…

( ^ω^)「面白そうですかお」

(´<_` )「友達を助けたいってのもあるけど、興味を惹かれているっていうのが本音だね」

ξ゚听)ξつ(゚|< )<| ピチピチ

( ^ω^)「でも、結構危険ですお? さっきの話じゃないですけど、伝説クラスのモンスターの話とか」

(´<_` )「確かにね。でも、そういったものを見てみたいという気持ちもあるんだよね」

ξ゚听)ξ//" ググッ…

850 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/19(木) 23:33:19 ID:7gnB2v7k0

(´<_` )「僕はトレジャーハンターだけど、歴史家でもあると思ってるからね」

(´<_` )「モンスターの生息域から見る歴史も、調査対象の1つなんだよ」

( ^ω^)「なるほど」

ξ゚听)ξつ<゚ |フ:::: ><| ピチピチ

(´<_` )「北は特にね、竜の大陸に近い所為で、色々と変わったモンスターが集まってるとも聞くしね」

( ^ω^)「竜の魔力に惹かれてって事なんですかおね?」

ξ゚听)ξつ(゚|< )<| ピチピチ

(´<_` )「そう見るのが一般的だけど、実際の所は不明だね」

(´<_` )「それだと説明がつかないものもあるからね」

( ^ω^)「ええ、それだとシベリアに上陸せずにこの辺りにいるのはおかしいですおね」

ξ゚听)ξつΣ゚二二二二二二二二> ピチピチ

852 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/19(木) 23:34:56 ID:7gnB2v7k0

( うω;)「……そろそろ泣いていいですかおね?」

ξ゚听)ξ「え?」(゚|< )<| (゚|< )<| (゚|< )<| (゚|< )<| (゚|< )<| ピチピチ

(´<_`;)「う、うん、その、たまたまだと思うよ、たまたま。何と言うか……、ドンマイ」

僕がオトジャさんと話し込んでいる間に、ツンは次々と魚を釣っていく。
これが涙せずにいられようか。

ξ゚听)ξ「いつもの事じゃないの、気にしなさんな」

( うω;)「うるせえお! いつか絶対釣り勝負でツンに勝ってやるお!」

時間も良い頃合だったので、ツンが釣った魚を調理して昼食にする。
釣りたての魚はとても美味しかった。

( ;ω;)「刺身うめえー! フライうめえー! ご飯うめえー!」

川;゚ -゚)「何でこいつ、泣きながら魚食ってんの?」

(゚、゚;トソン「そっとしておいてあげましょう」

ノハ*゚听)「うめえなー!」

(∪*^ω^)「わんわんお!」

853 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/19(木) 23:36:47 ID:7gnB2v7k0

その日は結局霧は出ず、僕らは海の上で一夜を過ごした。
その翌日も何も起こらなかったが、海に出て3日目にそれは突然現れた。

ノパ听)σ「おーい、何かあっちの方に妙なものがあるぞー?」

(∪^ω^)「わんわんおー」

( ^ω^)「あれは……オトジャさん?」

(´<_` )「うん、今遠眼鏡で見たけど、どうも当たりっぽいね」

当たり、つまりは霧が発生しているという事だろう。
僕達は霧の方へ向かって船を走らせる。

(゚、゚トソン「このまま突っ込むつもりですか?」

川 ゚ -゚)「それしかないだろ? 虎穴に入らずんばというやつさ」

無論、警戒はするがクーの言う通りここまで来て足を止めるつもりはない。
僕達は船を霧の中に進ませる。

854 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/19(木) 23:39:10 ID:7gnB2v7k0

ξ゚听)ξ「視界が悪いわね」

(´<_` )「船の速度を落とすよ。衝突が怖いからね」

ノパ听)「これ、ブーンの魔法でどばーっと吹っ飛ばせないのか?」

( ^ω^)「多少は飛ばせるだろうけど、これだけ霧が濃いと焼け石に水だお」

船はゆっくりと前進していく。
視界が悪いのを差し引いても、自分達以外に生物がいないのではと錯覚するほどの静けさだ。
船が立てる波の音以外は何も聞こえない。

( ´_ゝ`)「何か不気味だな……」

(゚、゚トソン「そうですね、不気味ですね」

(;´_ゝ`)「何でこっちをまっすぐ見詰めて言ったの?」

川 ゚ -゚)「なんだか不自然なぐらい静かだな。出そうな感じといった所か」

(∪^ω^)

855 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/19(木) 23:41:09 ID:7gnB2v7k0

( ^ω^)「わんおも妙におとなしいおね。何か一点をずっと見詰めてるお」

ξ;゚听)ξ「それ、そこに何かいるんじゃないの?」

川;゚ -゚)「怖い事言うなよ」

(∪^ω^)

(´<_` )「ふむ、ここはわんお君の野生の勘に頼ってみようか」

そう言うとオトジャさんは、船の進路ををわんわんおが向いていた方に変える。
それに伴い、わんわんおの視線が徐々に正面を向く。

(゚、゚トソン「わんお君、何か見えてるっぽいですね」

( ´_ゝ`)「野性味全く感じないのに、流石は動物ってとこか」

( ^ω^)「何が見えるんだお、わんお?」

(∪^ω^)"

黙って見てろと言わんばかりに、わんわんおは軽く頭を振り、前方を示す。
僕達は警戒をしつつ前方に注視した。

856 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/19(木) 23:42:40 ID:7gnB2v7k0

程なくして前方に黒い影が浮かぶ。
はっきりとしない形ではあるが、大きさはかなりのものだ。

(;´_ゝ`)「これ、モンスターって事はないよな?」

( ^ω^)「まあ、危険なモンスターならもう攻撃されててもおかしくない距離ですお」

(´<_` )「正面は避けるか。側面に回ろう」

一際濃い霧の中を進み、影の方へ近付く。

ξ゚听)ξ「船が見えるわ!」

ノパ听)「おんぼろのでっかい船だ!」

( ^ω^)「どうやらこれっぽいですおね」

(´<_` )「ああ、これが幽霊船のようだね」

話に聞いていた通り、未だに運用されているとは到底思えない朽ちた木製の船が僕達の眼前にその姿を現した。
人の気配は一切感じず、僅かな波音だけが耳に届く。

857 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/19(木) 23:45:03 ID:7gnB2v7k0

川 ゚ -゚)「想像より大きいな」

(´<_` )「いつの時代の船かわからないけど、かなり大きな船だね」

( ^ω^)「じゃあ、取り敢えず乗り込みますかお」

船を幽霊船の船首近くに並走させ、オトジャさんがワイヤーを飛ばす。
協議の結果、船には操船出来るアニジャさんと護衛としてヒートが残る事になった。

ノハ;゚听)「何で私が留守番なんだ?」

ξ゚听)ξ「脆そうな船だし、あんたに下手に暴れられて壊されるのは嫌なのよ」

納得がいかないとごねるヒートをツンが物理的に黙らせ、僕達はワイヤーを登る。
先のツンの理屈で言えば、トソン君も少々危険があるのだが、一応神聖魔法が使えるし、
この手の話に付き物の霊的な敵に対しては有効な対抗手段になり得る。

まあ、上手く発動させられればだが。

( ^ω^)つ□「これ、緊急時用の魔法の護符ですお

( ´_ゝ`)「うん? 2枚あるな」

858 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/19(木) 23:47:19 ID:7gnB2v7k0

( ^ω^)「こっちが発光して、こっちは音が鳴りますお」

( ^ω^)「僕等らが幽霊船内にいた場合、光だと伝わらない可能性もありますので」

( ´_ゝ`)「なるほど」

( ^ω^)「その逆の可能性もあると思うので、使う時は両方使って下さいお」

( ´_ゝ`)「把握した」

僕は後の事をアニジャさんに頼み、ワイヤーに手をかける。
万が一を考えて、逃げ足に自信があり、飛び降りても魔法で何とかなる僕が先陣を切る事にした。

( ^ω^)「いっちばーん、だお!」

(∪^ω^)「わんわんお!」

上船した僕は周囲の様子を観察する。
荒れ果ててはいるが、荒れているだけで特に不審な物はない。
何かに壊されたとかそういった雰囲気ではなく、長い年月を経たといった感じだ。

859 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/19(木) 23:49:06 ID:7gnB2v7k0

( ^ω^)「海の底に沈んでたって感じじゃないおね」

特に危険はなさそうなので、僕は皆に上がって来るように伝える。

ξ゚听)ξ「まずは甲板かしらね?」

川;゚ -゚)「そうだな。固まって行動した方が良さそうだし、順に見ていこう」

皆少し緊張した表情をしていたが、特にクーは若干青ざめた様な顔をしていた。
この手の幽霊話はあまり得意ではないのだろう。

モンスターや精霊といった存在がいるのはわかっていても、何となく得体の知れない感じや、
この雰囲気が不気味で不安を掻き立てられる気持ちはわからなくもない。

(゚、゚トソン「何となく嫌な空気ですが、殺気や敵意のような物は感じられませんね」

(´<_` )「うーん、でも町の人の話によると自分達の船に被害があったみたいだから」

(´<_` )「何かしらはあると思うんだけどね」

( ^ω^)「とにかく、色々と調べて見ましょうかお」

僕達はゆっくりと甲板を右回りで調べていく。
マストはボロボロで、帆は布らしき物の残骸がわずかに付着するのみだ。
かなり高いマストだが、上空は霧が濃くて先端までは見えない。

860 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/19(木) 23:53:25 ID:7gnB2v7k0

ξ゚听)ξ「縄梯子があるわね。登る?」

川;゚ -゚)「確実に千切れそうだぞ?」

いくつか船内への入り口らしきドアもあったので、試しにドアを開けてみると鍵は掛かってないようだ。
ひとまずそれらは放っておく事にし、甲板を進む。

( ^ω^)「脱出艇みたいなのはないおね。この規模の船ならボートの1艘や2艘あってもおかしくないお」

ξ゚听)ξ「幽霊船だし、この船が1度沈んだのなら、もう使われちゃったんじゃないの?」

そのまま甲板を1周してみたが、これといって目に付くものはなかった。
目的の魔王の頭骨は元より、この船の正体がわかるものも見当たらない。

( ^ω^)「やっぱり船内に入るしかなさそうですおね」

(´<_` )「そうだね。ちょっとアニジャにそう伝えて来るよ」

オトジャさんは船の舳先に行き、ワイヤーで繋がれたままのサースガ号にいるアニジャさんへ話しかけている。
幽霊船がいつまで出現しているかもわからないし、脱出に時間が掛かりそうな船内に進むのは危険を伴うだろう。

862 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/19(木) 23:54:59 ID:7gnB2v7k0

ξ゚听)ξ「でも、ここまで来たら行くしかないでしょ?」

( ^ω^)「まあ、そうだおね」

川 ゚ -゚)「オトジャの推測を踏まえるなら、品は貨物室とかそんなとこにありそうだしな」

この船が魔王の頭骨を積んでいたのなら多分クーの言う通りだろう。
美術品か何かと考えられていたのならその可能性が高い。

ただ、僕らは実際の魔王の頭骨の大きさや形状を知らない。
場合によっては個人が所有していた可能性もある。

川 ゚ -゚)「そもそも、魔王のっていうぐらいだから巨大なのかもしれないんだよな?」

川 ゚ -゚)「その場合はどうやって持って帰るつもりだ?」

( ^ω^)「衣があの大きさだったし、それはないと踏んでるお」

なんにせよ、船内を探して魔王の頭骨そのものか、この船に積んでいたかどうかの記録を探す必要がある。
中の状態は未知数だが、ここで帰っては捜索が進まない。

863 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/19(木) 23:57:17 ID:7gnB2v7k0

(゚、゚トソン「安全性を考えるなら、この船全体を浄化してみましょうか?」

( ^ω^)「出来るのかお?」

(゚、゚トソン「一応、僕が浄化の魔法を使えますし、範囲が広いですがスペシャルで増幅すればなんとか……」

川 ゚ -゚)「じゃあ、出来ないと同義じゃないか」

(゚、゚;トソン「何故に!?」

何故も何も、お前が最後まで躍り切れるわけがないと言うクーに、トソン君はこれでもかというほど落ち込む。
僕もクーに同意するが、もう少し言い方を考えてあげられなかったのか。

(゚、。トソン「ウフフ……僕ってまるで役立たずですよね……肝心なとこで姫様のお役に立てず……」

川;゚ -゚)「いや、そこまで落ち込まなくてもいいだろ。私は事実を……」

クーの言葉がよっぽど堪えたのか、虚ろな目で膝を抱えるトソン君。
クーの事を姫様と呼ぶのを久しぶりに聞いた気がする。

864 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/19(木) 23:59:11 ID:7gnB2v7k0

結局、宥めすかした結果、僕らが船内を捜索している間にトソン君がここで浄化の魔法を使う事になった。
トソン君1人を甲板に残す事に対する心配はあるが、いざとなったら船に逃げればいいし大丈夫だろう。

(;^ω^)「それじゃあ、僕らは先に行くお」

(^、^*トソン「はい、僕もすぐ魔法を唱えて追い付きますのでご安心下さい!」

川 ゚ -゚)「きっと追い付けな──」
       ドスッ
ξ;^竸)ξ⊃「慌てなくていいから確実に頼むわね」Σ川;゚ -゚) イテッ
ビシッ!
ノ(^、^*トソン「はい、それでは後ほど!」
     ビシッ!
(∪^ω^)∩「わんわんお!」

やけに上機嫌になったトソン君を置いて、僕達は船首に一番近いドアから船内に入る。
出来れば捜索が終わるまでにトソン君の魔法が完成して欲しい所だが、期待はしていない。

川 ゚ -゚)「暗いな……」

||ヽ(´<_` )「それならサースガ式……」

      {○}
( ^ω^)つ}{「ライティング」

865 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/20(金) 00:00:58 ID:6HuDzCTE0

僕は呪文を唱え、杖に光を灯す。
それを見てオトジャさんが寂しそうに松明を仕舞っていたが、あれの光量を考えるとこちらの方がいいだろう。
今回はそれほど探索は長くならないだろうから、魔法も使いやすい。

僕達が侵入した所は通路に繋がっていた。
上に登る階段と下に降りる階段がある以外は、外に出る別のドアがあるぐらいだ。

ξ゚听)ξ「まずは操舵室かしらね?」

(´<_` )「そうだね。そこにいけば色々とわかることもあるだろう」

( ^ω^)「そうなると上かお」

(∪^ω^)「わんお」

僕達はオトジャさんとツンを先頭に階段を登る。
状況を考えるとトラップ等はないと思うが、何かしらモンスターの類はいる可能性はあるので、
警戒はしておかなければならない。

ξ゚听)ξ「あんたらならモンスターの気配は、ある程度魔力でわかるんじゃないの?」

( ^ω^)「この嫌な空気の所為でさっぱりポンだお」

恐らくのこの船自体が何らかの大きな魔力を帯びているのか、そこかしこにモンスターがいると錯覚してしまう。
この淀んだようなどこか嫌な空気はその所為かもしれない。

866 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/20(金) 00:02:58 ID:6HuDzCTE0

(´<_` )「位置的にここが操舵室だと思うんだけど」

階段を登った先も通路で、その少し先にドアがあった。
更に先から船の後部側に伸びた通路もあるが、構造を考えるとオトジャさんの言う様に操舵室はそちらではないと思う。

( ^ω^)「じゃあ、行きますかお」

僕は返事を待つ事無くドアを開ける。
通路より部屋の中の方が淀んだ空気が濃いような気がした。

川;゚ -゚)「おいおい、そんな躊躇なくいきなり開けるなよ」

( ^ω^)「一応、防御魔法は張ってから開けたお」

トラップの類はなくとも、ドアを開けた瞬間モンスターが襲って来る事も想定はしていた。
しかしながらそんな事もなく、静かなものだ。

ξ゚听)ξ「予想はしてたけど無人ね……」

(´<_` )「となると、この船は流されるままに動いてるって事になるのかな」

( ^ω^)「それだと別の海域に到達しそうですおね」

867 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/20(金) 00:05:17 ID:6HuDzCTE0

潮の流れが回っているのか、魔法ないし呪い的なもので転移させられているのかはわからないが、
目撃情報からするとこの船はこの辺りの海域にしか出現していない。

ξ゚听)ξ「何かこの船の事情がわかるものがないか探しましょうか」

( ^ω^)「そうするお」

それほど広い部屋ではないので捜索するのにさほど時間はかからなかった。
残念ながら目ぼしい物はほとんどなく、わかった事は少なかった。

(´<_` )「この朽ちかけた海図からすると、大陸は今の形のままなので何千年も昔の船って事はなさそうだね」

( ^ω^)「千年、前回の千年紀の王復活以降ならここに魔王の頭骨がある可能性はありますおね」

(´<_` )「そうだね。地名からすると……うん、ニューソク王国があるし、千年以内なのは間違いないね」

(∪^ω^)「わんわんお」

確か現ニューソク王国は建国して300年ほどだったはずだから、計算上はそうなる。
つまりはここに魔王の頭骨がある可能性はゼロではないという事だ。

川 ゚ -゚)「他には目ぼしい物はないようだな」

868 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/20(金) 00:07:03 ID:6HuDzCTE0

ξ゚听)ξ「何枚かのメモっぽい紙はあるけど、読める状態じゃないわね」

( ^ω^)「海図ほど丈夫な紙に書かれてないし、外に近いからしけったりしたんだろうおね」

(´<_` )「もっと保存状態の良い記録を探したいとこだね」

( ^ω^)「どこかに航海日誌とかあるといいんですけど」

操舵室を出て、僕らは階段を降りる。
船体の中ほどにある船室なら、もう少し保存状態の良い何かがあるかもしれない。

( ^ω^)「割と通路が広いお」

ξ゚听)ξ「所々穴が開いてるけど、浸水してない所をみると、穴は深くないんでしょうね」

(∪^ω^( ^ω^)「でも、落ちても嫌なんで、わんおはフードに入ってるお」

川;゚ -゚)「何か出そうな雰囲気が増したな……」

クーが言う様に、少しだけ嫌な空気が増した気もするが、ずっとこんな感じなので大差はないと思う。
いつ何時、何が出て来てもおかしくはない感じではある。

869 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/20(金) 00:09:22 ID:6HuDzCTE0

(´<_` )「遺跡なんかとは違って、侵入者を排除する仕掛けはないはずだから」

(´<_` )「こちらを排除しようとするモンスターはいないと思うけどね」

川 ゚ -゚)「だが、何かが住み着いたりしていたら別だろ?」

( ^ω^)「まあ、そういう事も……」

ξ゚听)ξ「……あったみたいね」

いつもは大雑把な感じなのに、今日はやけに心配性なクーの不安は残念ながら当たってしまったようだ。
通路の奥の暗がりから、何者かがガシャガシャと音を立てて近付いて来る。

         
           (●. .●)
            ヽ曲ソ


( ^ω^)「骸骨だおね……」

ξ゚听)ξ「ばっちり動いちゃってるけど、骸骨ね」

870 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/20(金) 00:10:52 ID:6HuDzCTE0

(●. .●) カタカタカタ
 ヽ曲ソ

小刻みに震え、歯を鳴らす骸骨。
軽装だが鎧らしき物を身に着け、短めの曲刀と小振りの盾を持っている。

(´<_` )「格好からして、船員の成れの果てといったところかな」

川;゚ -゚)「骸骨戦士とでもいった所か。薄気味悪いな……」

軽装なのは海上での戦いを想定をしているからだろう。
数体の骸骨戦士が無造作にこちらに近付いて来る。

( ^ω^)「この人自体の怨念か、何かに操られてるのか、どっちだろうかおね?」

ξ゚听)ξ「どっちも同じようなもんでしょ?」

( ^ω^)「若干違うけど、まあ、やる事は変わらんお」

前者の場合、強力な負の感情を起因とすることもあり、時に恐ろしいほどの力を持つ場合もある。
後者の場合は、単に操られているだけなので、そこに意思はなく、あまり力はないが、
操っている者が強力ならそれに比例して力が増す。

ただ、どっちにしろ襲って来る以上、倒さねばならない事には変わりないが。

871 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/20(金) 00:12:37 ID:6HuDzCTE0

( ^ω^)「それじゃあ、先制攻撃……」

ξ゚听)ξ三///⊃「ハッ!」

僕が呪文を撃つより早く、ツンが先頭を行く骸骨戦士に攻撃を仕掛ける。
緩慢な動きでそれを防ごうとした骸骨戦士だが、防御は間に合わない。
そのまま後方に吹っ飛び、バラバラに崩れ落ちた。

( ^ω^)「弱っ!」

川 ゚ -゚)「よし、ここは私に任せろ!」

敵が弱いとわかった途端、妙に張り切りだすクー。
ここの所負け続けだったし、気持ちはわからなくない。

そのままツンとクーに任せ、戦闘は呆気なく終わった。

(´<_` )「……うーん、これと言ってわかる事はないな」

バラバラになった骸骨戦士を調べていたオトジャさんだが、特に得られる物はなかったらしい。
僕達は再び船内の捜索に戻る。

872 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/20(金) 00:15:01 ID:6HuDzCTE0

( ^ω^)「と言っても、まずはどこから調べようかおね」

(∪^ω^)「わんおー」

(´<_` )「船長の部屋ないし、航海士の部屋か、もしくは貨物室みたいな場所があればそこからだけど……」

川 ゚ -゚)「ドアを見る限りでは、どこも変わらないように見えるな」

ξ゚听)ξ「手当たり次第見て行くしかなさそうね」

( ^ω^)「しかないかお。まあ、入り組んでないのが幸いだけど」

そう方針を決めると、僕達はまず手近にあった向かい合ったドアの右側の方を開ける。


           (●. .●)
            ヽ曲ソ


(;^ω^)「うおっ!? 近っ!」

873 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/20(金) 00:17:48 ID:6HuDzCTE0

ドアを開けると目の前に骸骨戦士の顔があった。
骸骨戦士は手に持った得物を無造作にこちらに突き出して来る。

(;^ω^)「危ね!」

すぐ様後方に飛び退り、攻撃をかわす。
骸骨戦士の攻撃速度が遅かった事もあり、僕は切られる事無く距離を取れた。
そして僕と入れ替わるようにして前に出たツンが骸骨戦士を打ち倒す。

(´<_` )「大丈夫かい?」

(;^ω^)「何とか……」

(∪^ω^)「わんお」

ξ゚听)ξ「弱いけど、これが部屋ごとにいたら面倒そうね」

室内には三段ベッドが部屋の両脇にあり、中央奥に棚のようなものが1つあるだけの簡素な造りだった。
恐らくは船員が寝泊りする部屋なのだろう。

(´<_` )「ここもこれといって気になる物はないね」

川 ゚ -゚)「骸骨戦士も1体だけのようだな」

874 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/20(金) 00:19:15 ID:6HuDzCTE0

それからいくつかの部屋を見て回ったがどれも似たような構造で、
部屋ごとに数体の骸骨戦士がいたりいなかったりと差はあったものの、捜索に進展は見られなかった。

川 ゚ -゚)σ「埒が明かんな。別のフロアに行った方が良くないか?」

そう言ってクーが指差す先には、更に下に降りる階段があるらしい。
先ほど後何部屋あるか見て来たそうだ。
通路の奥の方なので、手前から部屋を全て見て行くと、降りるのはもう少し先になるだろう。

( ^ω^)「船の構造を考えると、積荷はそっちの方にありそうだけど……」

クエストの結果だけを優先すればそうした方が良さそうだが、オトジャさんは部屋を1つ1つ調べたがっていると思う。
正確には、この幽霊船がどういった船だったのかとか、そういった事がわかるものを捜したいのだろう。
職業柄とでも言うべきか、この船の素性を知りたがっている。

川 ゚ -゚)「それならばどうせ敵も弱いし、二手に別れるか?」

今の所は二手に別れたところで、大して危険はないと思うが、
万が一骸骨戦士以外にもモンスターがいるかもしれないので考え物だ。

とはいえ、あとどのくらいの時間調査出来るかわからないので、僕達は二手に別れる事を決めた。

875 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/20(金) 00:21:14 ID:6HuDzCTE0

( ^ω^)「戦力基準で考えれば、僕が組むのはオトジャさんかおね」

ξ゚听)ξ「……そうならざるを得ないわね」

ツンが若干不満げな顔をしたが、この場合はこれがベストだろう。
僕は階段を下りて貨物室を探すと言う2人に、無理をしないよう言い含める。

川 ゚ -゚)「心配するな。自慢じゃないが逃げ足だけはだいぶ鍛えられたからな」

ξ;--)ξ「ホントに自慢じゃないわね……。まあ、何かあったらすぐ合流するわ」

(∪^ω^)「わんわんお!」

僕とオトジャさんとわんわんおは2人を見送り、この階の部屋の調査に戻る。
2体の骸骨戦士を倒し、部屋の中を調べたが収穫はなかった。

( ^ω^)「乗員の数、骸骨戦士が乗員の成れの果てだった場合ですが、結構いますおね」

(´<_` )「船の規模はなかなかのものだからね。いても不思議はないさ」

僕達はそんな事を話しながら部屋を出て通路に戻る。

876 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/20(金) 00:23:57 ID:6HuDzCTE0

           (●. .●)
            ヽ曲ソ


( ^ω^)「って、いつの間に?」

通路の手前、最初に僕達が降りて来た方から数体の骸骨戦士が近付いて来ていた。
一体どこから湧いて来たのか。

(´<_` )「どこかに抜け道でもあったのかな?」

( ^ω^)「隠し扉とかですかお?」

未だ骸骨戦士との距離はあったので、僕達はそれを落ち着いて遠距離攻撃で打ち倒す。
骸骨戦士は呆気なくバラバラになった。

(´<_` )「少し戻ってみるかい?」

( ^ω^)「そうしましょうかお」

(∪^ω^)「わんお!」

念の為、次に調べようとしていた部屋の近くに魔法で光を灯しておいた。
僕らは壁や床の穴を調べつつ、通路を逆戻りする。
しかしながらどこかに隠された入り口がありそうな感じはしない。

877 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/20(金) 00:26:09 ID:6HuDzCTE0

(;^ω^)「うーん……、ひょっとして上から降りて来ただけですかおね?」

(´<_` )「その可能性もあるけど……1つ気になる事が……」

オトジャさんは何かを言いかけ、考え込む様に黙り込んでしまう。
その視線は床の方に向けられている。

( ^ω^)「何か落ちてますかお?」

ミ(∪^ω^)「わんお!」

( ^ω^)「お、わんお、フードから出るのはいいけど、穴には気を付けるお?」

僕の言葉をちゃんと聞いていたのか、わんわんおは床の穴を避けつつ走り、通路を少し進んだ辺りで止まる。

(∪^ω^)「わんわんお!」
  ∪,,∪,, トントン

( ^ω^)「お?」

わんわんおは床に座り、前足で床をトントンと叩いた。
何の事かと近付こうとした時、黙り込んでいたオトジャさんが不意に口を開く。

878 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/20(金) 00:28:17 ID:6HuDzCTE0

(´<_` )「そうだよ、そこにあったはずの骨がないんだ!」

(∪^ω^)「わんお!」

( ^ω^)「あ……」

なるほど、そう言われれば確かに、僕等が最初降りて来た時に倒した骸骨戦士の骨が無くなっていた。
あれは今わんわんおがいる辺りに散らばっていたはずだ。

( ^ω^)「けど、どこにいったのかお?」

(∪^ω^)「わんおー」

流石にそこまではわからないのか、わんわんおは首を傾げる。

( ^ω^)「あんまり捜索に関係なさそうですけど、ちょっと気になりますおね」

(´<_` )「単に風化して消えたってのはちょっと不自然かな」

( ^ω^)「何らかの魔法で強制的に具現化されてたのならその可能性も……」

そう言いかけた僕の視線の先に、何か動くものがあった。

879 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/20(金) 00:30:20 ID:6HuDzCTE0

            (:●. .●;) カチャッ、カチャッ
             ::曲::


(;^ω^)「そういう事かお……」

(´<_`;)「再生してるのか……」

(∪^ω^)「わんおー」

そこには、1度倒したはずの骸骨が再び組みあがって行き、ゆっくりと立ち上がる姿があった。
これは思ったより厄介な相手だったようだ。

( ^ω^)「って事は、1度見た部屋の中のもまた元に戻ってそうですおね」

(´<_` )「そうなるだろうね」

幸い、1度調べた部屋にもう1度入る必要はなさそうなので、
もし部屋の中の骸骨戦士が復活していても捜索に影響はない。
これまで調べた感じからすると、骸骨戦士が自分でドアを開けて来る事もなかったので大丈夫だろう。

880 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/20(金) 00:32:21 ID:6HuDzCTE0

(´<_` )「粉々に砕いてしまえば二度と復活しなかったりするのかな?」

( ^ω^)「それは手間がかかりそうですし、ちょっと心情的に躊躇われますお」

襲って来るモンスターとはいえ、元は誰かの死体だ。
この感じだとその人の意思というよりは、誰かに操られているだけの様に見える。

本当なら火葬にでもしてあげれば良さそうだが、それをここでやると船に引火しそうである。
幽霊船が燃えるかどうかはわからないが。

( ^ω^)「ま、復活して来た所で弱いのは変わらないですお」

(´<_` )「そうだね。取り敢えずしばらく眠っていてもらおうか」

そう結論付け、僕達は骸骨戦士を見る。
もう入り口周辺を調べる必要もなくなったので、先ほど調査を中断した部屋の方に向かった。

(´<_` )「武器だけでも破壊しておけばいいんじゃないかな?」

( ^ω^)「ああ、そうですおね。破壊まで行かなくても、どこか適当な部屋に放り込んでけば安全ですお」

( ^ω^)「じゃあ、ささっと魔法で……って!?」

881 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/07/20(金) 00:33:52 ID:6HuDzCTE0

ミ (●. .●) ガシャン!
   ヽ曲ソ

(´<_`;)「何だ? いきなり勝手にバラバラになったよ?」

(∪^ω^)「わんお?」

僕が魔法を唱えるよりも早く、骸骨戦士は1体残らず崩れ落ちた。
背後に誰かいるという事もなく、ツン達が戻って来たわけではなさそうだ。

(´<_`;)「いったい何が……?」

( ^ω^)「あ……、これ、ひょっとして……」

僕は、船を包む空気に変化が生じている事に気付く。
それが意味する所は、恐らく……

( ^ω^)「1度甲板へ戻りますお」

(´<_`;)「え? 何で……?」

僕は、顔に疑問符が浮かんだままのオトジャさんの手を引き、階段の方へ向かった。



     第三十九話 蒙霧に浮かぶ幽霊船 終


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