( ^ω^)は魔法道具屋さんのようです
- 507 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 22:11:13 ID:R8BRgvYs0
〜 メシューマの町 中央付近 〜
( ^ω^)「……」
ξ゚听)ξ「……」
(∪^ω^)「……」
(;^ω^)「予想以上に人多いおね」
ξ;゚听)ξ「何とか場所は確保出来たけど……」
(∪;^ω^)「わんおー」
(;^ω^)「わんお、踏まれそうだからフードに入ってるお」
第四十七話 混迷のメシューマ
- 508 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 22:16:23 ID:R8BRgvYs0
( ^ω^)「流石、祭りのメーンイベントだおね」
僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。
ξ゚听)ξ「大会も大会だから、妙にヒートアップしててうるさいわね」
彼女の名はツン。
サンライズの隣の武術道場の娘で、いわゆる幼馴染というやつだ。
(∪^ω^)「わんおー」
この子の名前はわんわんお。
僕のペットというか家族で、見た目は子犬だが実は元竜だ。
僕達3人は現在、闘技大会を観る為にメシューマの町に来ている。
今日は大会当日、幸いにも好天に恵まれ、まだ開幕まで多少の時間はあるが既に周囲は人で溢れていた。
ξ゚听)ξ「もう、結界は稼動してるのよね?」
( ^ω^)「してるお。見えないけど、あれより先には近付けないはずだお」
- 509 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 22:19:37 ID:R8BRgvYs0
戦場を囲む結界は、見物を考慮してか不可視で発動しているようだ。
この魔力の感じからすると、何十時間ももつ物ではなさそうだが、その分強固でそう簡単には破れないだろう。
ξ゚听)ξ「一応、時間制限があるのね」
大会は3時間、決着が付かなかった場合長1時間プラスされた時間内で行われるらしい。
それでも決着が付かなかった場合は、審査員の投票で決まるという話であった。
ξ゚听)ξ「ちょっと長い気もするけど、妥当なとこかしらね」
( ^ω^)「まあ、それ以上かかると観てる方もだれてくるかもだお」
戦場内は運動場のような広いスペースもあるが、建物も数多く存在している。
単に真正面からのぶつかり合いだけでないなら、それなりに時間もかかるだろう。
ξ゚听)ξ「流石に逃げ回るだけの参加者はいないでしょうけど、隠れて奇襲を仕掛けるぐらいはしそうよね」
( ^ω^)「地形を上手く使うのも有効な戦術だお」
そういった意味では、メシューマの町をよく知る地元の人間の方が若干有利な部分はあるだろう。
しかし、一部今回の大会の為に増設した建物や整備した道もあるらしいから、一概に有利とばかりも言えない。
- 510 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 22:22:38 ID:R8BRgvYs0
ξ゚听)ξ「あの中央の塔も今回の為に建てたって事だったわね」
( ^ω^)「町を挙げての一大イベントって感じで、気合入ってるおね」
戦場の中央辺りに一際高い物見塔がある。
あそこに登れば、戦場を一望出来て色々と有用かもしれない。
ただ、下から狙われる可能性も考えると、考えなしに登るのは危険も伴うだろう。
( ^ω^)「で、その塔の天辺に今回の賞品である魔王の朱玉が飾ってある、と」
_,
ξ゚听)ξ「流石にここからじゃよく見えないわね。何となく赤いのが見えるような……」
(;^ω^)「どんな目してんだお。僕には全く見えないお」
(∪^ω^)「わんわんおー」
どういう意図かは知らないが、実際に塔の天辺から突き出ている尖った部分に魔王の朱玉がはめ込まれているらしい。
展示するにしては少々変な場所で、観客が見るには遠過ぎると思う。
ひょっとしたら、結界の制御に一役買っているのかもしれない。
魔力の増幅機能をもつなら、その位は利用出来そうでもある。
- 511 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 22:24:00 ID:R8BRgvYs0
ξ゚听)ξσ「で、有事の際に突入するのはあそこからでいいのよね?」
そう言ってツンが指差した先は、他とは違い結界の周辺に多くの警備兵が立っている。
( ^ω^)「そうなるお。そうならないことを祈りたいとこだけど」
昨日、シブサワさんから聞いた話によると、あの場所だけ結界が開閉出来るようにしてあるらしい。
考えてみれば当たり前のことで、ケガ人や負けたチームが戦場の外に出る場所はあってしかるべきだ。
(;^ω^)「僕としたことが、薬草パンの所為で見落としてたお」
ξ--)ξ「全く、しっかりしなさいよね」
そう言うツンも僕と一緒にいて見落としたのは同じなのだが、僕はその事は指摘せずに黙っておいた。
( ^ω^)「……お、始まるのかおね?」
僕達の少し前にある、スクリーン、カメラの映像を写す布を掛けた板の事をそう呼んでいるらしいが、
そこに大会の運営の人らしき人達が写った。
何か話そうとしているので、開幕の挨拶かもしれない。
- 512 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 22:25:18 ID:R8BRgvYs0
( 運)「まもなくメシューマ闘技大会を始めたいと思いますが、その前に……」
( ^ω^)「お?」
( 運)「各チームの現在の様子をご覧頂きたいと思います」
どうやら出場者はもう、戦場に分散して待機しているらしい。
この開始位置も結構重要になってくると思うのだが、果たしてジョルジュさん達はどの辺りにいるのだろうか。
ξ゚听)ξ「すぐ近くにマルタスニムと灰衣の男っていう展開は流石に厳しいもんね」
( ^ω^)「時間を置いて当たるか、その2人が潰し合う様な位置なら最良だお」
そんなことを話している内に、スクリーンに各チームの様子が映し出されていく。
今の所、メシューマで活動しているらしい冒険者チームが一番人気の様だ。
そのチームがインタビューに答えている時は、周りがすごく盛り上がっていた。
ξ゚听)ξ「聞かない名前ね。強いのかしらね?」
( ^ω^)「本選に出れるくらいだから、それなりには強いんじゃないかお?」
- 513 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 22:26:02 ID:R8BRgvYs0
( 運)「続きましては、チーム・ヴィップです」
( ^ω^)「お、次ジョルジュさん達だお」
スクリーンにジョルジュさん達6人の様子が映し出される。
昨日、体調を崩していたハインさんも元気そうで、皆落ち着いた、しかし緊張感のあるいい顔をしている。
( ^ω^)「これ、どの辺りかおね?」
メシューマの町に詳しいわけでもないので、ジョルジュさん達が町のどの辺りにいるのかは見当が付かない。
少なくとも、僕らの近くにはいない様だ。
_
【( ゚∀゚)】「あん? 何か言わなきゃいけねえのか?」
どうやらこの大会への意気込みを聞かれているようだが、ジョルジュさんは特に何も考えてなかったのか、
振り向いて他の皆の顔を見回す。
チームリーダーはフィレンクトさんなのだろうけども、フィレンクトさんはあまり前に出ないようにしている様なので、
必然的にジョルジュさんが体面的にはパーティーリーダーになっているらしい。
_
【( ゚∀゚)】「んー、そうだな……何かあるか?」
- 515 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 22:27:05 ID:R8BRgvYs0
【从 -∀从】「適当に答えとけよ。がんばりますとか、全員ぶっ殺しますとか」
【(;-_-)】「殺しちゃうと失格ですからね?」
【(* ゚д゚)つ| |】 < ワンワンオ!
_
【( ゚∀゚)】「んじゃ、全員適当にぶっ飛ばすわ」
片手をひらひらと振りながらぞんざいに言い放つジョルジュさんに、
インタビュワーの人は少し困惑気味の表情を浮かべつつも、すぐに自信の表れがどうのと都合のいい様にフォローする。
なかなかプロ根性のある人だ。
(;^ω^)「わー、すごいgdgd」
ξ゚听)ξ「ハイン達、大会自体はどうでもいいんでしょうからね」
(∪*^ω^)「わんわんお!」
( 営)「さあ、続きましてはチーム・コフィンです。このチームは今回の大会で注目の……あれ?」
( ^ω^)「お?」
- 516 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 22:28:36 ID:R8BRgvYs0
映像が切り替わり、先ほどとは違う運営の人が映し出されたが、そこにはその人だけしか映っていなかった。
画面が左右に大きく動くも、そこに他の人影は見当たらない。
(;営)「えっと、チーム・コフィンのデミタスさん? どちらに……」
ξ゚听)ξ「ブーン」
( ^ω^)「うん、わかってるお」
参加者が1人消えた。
それだけならただ棄権しただけかもしれない可能性もあるが、消えたのは例の灰衣の男と思しき人物だ。
何かあると考えるべきだろう。
僕達は人込みを掻き分け、結界のそばまで近付く。
不測の事態に人々のざわめきが徐々に大きくなっていった。
(;営)「えーっと……チーム・コフィンのデミタス選手はいらっしゃらないようですね」
(;営)「ひとまず、次のチームの様子を……」
ξ゚听)ξ「いた! ブーン!」
- 517 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 22:30:29 ID:R8BRgvYs0
走りながらそう叫び、ツンは前方の上空を指差す。
そこにある物は戦場の中央に建つ物見塔だ。
(;^ω^)「いや、だからよく見えないお」
ξ゚听)ξ「あの物見塔の天辺に誰かいるわ!」
ツンの声が運営側にも聞こえたのか、カメラの1つが物見塔の天辺に向かっている様だ。
僕達は足を止め、手近なスクリーンの前に人を押しのけて出る。
(;^ω^)「ホントだ、誰かいるお!」
(∪^ω^)「わんわんお!」
徐々に近付くカメラが、物見塔の上に立つ人物の姿をはっきりと映し出す。
そこにいるのは1人の旅装束の男。
【(´・_ゝ・`)】
【(;営)】「おおっと、あれはチーム・コフィンのデミタス選手です! まさかこんな所にいるとは一体どうして……」
- 518 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 22:32:01 ID:R8BRgvYs0
( ^ω^)「あれが……」
ξ゚听)ξ「……灰衣の男なのかしらね?」
僕達は固唾を呑んでデミタスと名乗る男の挙動に注目した。
やつが何をする気か見当もつかないが、悪い予感がどんどん膨らんでいく。
【(´・_ゝ・`)】「……これがそうか」
【(´・_ゝ・`)】『ああ、そうだ』
しばらく無言で立ち尽くしていたデミタスがようやく口を開いた。
どこか焦点が合ってないように見える視線は正面に向けられたまま、その場に身を屈める。
【(´・_ゝ・`)】「これでようやく解放されるのだな」
【(´・_ゝ・`)】『……解放? それがお前の望みだったか?』
( ^ω^)「何か変だおね」
ξ゚听)ξ「独り言にしては妙ね」
- 519 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 22:34:02 ID:R8BRgvYs0
デミタスがつぶやいている言葉はカメラを通してこちらまで聞こえて来る。
独り言というよりは誰かと会話しているようにも聞こえるが、物見塔の上には他に人の姿はない。
【(´・_ゝ・`)】「それが私の望みだ……」
【(´・_ゝ・`)】『本当にそうだったか?』
【(´・_ゝ・`)】「何を……」
【(´・_ゝ・`)】『思い出せ。貴様が我を喚んだ日の事を』
【(´・_ゝ・`)】「……」
【(;営)】「デミタス選手、至急そこから降りて所定の位置についてください。開始時間までに戻らなければ失格に……」
【(´・_ゝ・`)】『貴様の本当の望みは何だ?』
【(´・_ゝ・`)】「私の……望み……」
デミタスには運営の人の呼び掛けが全く聞こえてない様で、物見塔の上でしゃがんだまま動く気配はない。
ただ何事かを自問自答し続けているだけだ。
- 520 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 22:35:09 ID:R8BRgvYs0
【(;営)】「デミタス選手! 聞こえてますか? あなたは……って、今度は何だ!?」
また周囲の様子が慌しくなって来た。
どうやら他ジョルジュさん達が行動を開始したらしい。
運営の制止を振り切り、物見塔に向かっている姿がスクリーンに映し出される。
【(;営)】「ええい、どいつもこいつも! お前らまとめて失格にするぞ!」
ξ゚听)ξ∩「突入する?」
(;^ω^)「簡単に言うなお」
(∪^ω^)「わんおー」
灰衣の男と思しき人物が怪しい動きを見せている現在、こちらも参戦したい気持ちは山々だが、
警備兵が結界の開閉口の前をがっちりと固めている。
( ^ω^)「強行突破して混乱を引き起こすのは本末転倒だお。こっそり近付いて、隙を見て突入するお」
ξ゚听)ξ「了解」
僕達はスクリーンの様子を伺いつつ、結界の開閉口の方に近付く。
スクリーンの中ではデミタスがまだ何事かを呟いている様だが、よく聞き取れない。
- 522 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 22:36:45 ID:R8BRgvYs0
【(´・_ゝ・`)】「私は……」
【(´・_ゝ・`)】『思い出せ。我を喚んだ理由を』
【(´・_ゝ・`)】「私は……欲した」
【(´・_ゝ・`)】『何をだ?』
【(´・_ゝ・`)】「この世の全てを知る為の叡智を……」
【(´・_ゝ・`)】「そして……」
(;^ω^)「!?」
ξ゚听)ξ「どうしたの?」
不意に足を止めた僕に、ツンが心配そうに声を掛ける。
しかし僕はツンの方は見ずに、足を止めた原因、物見塔の方をじっと見詰めた。
(;^ω^)「これ、ちょっとヤバい感じだお……」
- 523 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 22:38:08 ID:R8BRgvYs0
先ほどから急激にデミタスの魔力が上がっているのを感じる。
正確には、デミタスからというよりはデミタスを包む様に魔力が膨れ上がっている感じだ。
ξ;゚听)ξ「ブーン、あれ!」
(;^ω^)「な……!?」
驚いた顔で物見塔を指差すツンに言われるまでもなく、僕も異変にはすぐ気が付いていた。
物見塔が灰色の霧の様なものに包まれていく。
【(´・_ゝ・`)】「……力を欲した」
【【+ 】(´・_ゝ・`)】『ならばその手に掴め。力を!』
灰の中のデミタスのそばに、何かが浮かんでいるのがかすかにわかる。
デミタスはその身を更に屈め、下方に手を伸ばした様だった。
(;^ω^)「朱玉かお!? ツン、予定変更! 強行突入するお!」
僕は物見塔から視線を外し、ツンの方を見る。
だがその瞬間、膨大な魔力が弾けるのを感じ、思わず動きを止めた。
(;゚ω゚)「お──」
身体を何かに包まれ、一瞬にして世界が灰に染まる。
僕は抗う事も出来ず、ただされるがままにその身を灰に染められていった。
- 524 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 22:44:28 ID:R8BRgvYs0
〜 メシューマの町 中央南部 <ジョルジュ> 〜
_
(つ∀゚)「何だ今のは?」
一瞬、周囲が白く光った。
白というよりは灰色に近かったかもしれないが、それは些細な問題だ。
( ゚д゚)「わからん。だが、どうやら結界の方で何かがあったと見るべきだろうな」
ミルナはいつも通りの落ち着いた声でそう答え、周囲を警戒するように見回す。
今の光はこちらに対する攻撃ではなさそうだが、だからといって気を抜いていられる状況でもない。
_、_
( ,_ノ` )y━・~「……嫌な感じだな」
(-_-)「はい」
俺達にはよくわからないが、シブサワのおっさんとヒッキーが言うには、周囲から感じる魔力が妙に増えているという。
だが、大会の参加者が奇襲でも仕掛けようかと周囲で待ち伏せてるというわけでもないらしい。
(-_-)「大気中の魔力の濃度が濃くなっている感じですね」
- 526 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 22:46:07 ID:R8BRgvYs0
- _
( ゚∀゚)「ふーん……。で、濃くなると何かあるのか?」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「お前らにはあんまり関係ないだろうな。魔法を使うやつには多少なりとも影響が出るだろうが」
_
( ゚∀゚)「ならいいや。先に進もうぜ?」
シブサワが説明しようとした言葉を遮り、俺達は物見塔の方へ向かう。
細かい話は聞いてもどうせ覚えてないし、特に影響ないなら気にしてもしょうがない。
それよりもあの灰衣の野郎をぶっ飛ばしに行くのが先決だ。
(;-_-)「やはり彼が例の灰衣の男なのでしょうかね?」
周囲を警戒しつつ、無言で物見塔に向かっているとヒッキーが不安げに聞いてくる。
見てて大丈夫かと思うほど緊張のし過ぎだと感じるが、本人曰く、このくらいの方がいいらしいとの事だ。
途中でぶっ倒れたりしなきゃいいのだが。
(‘_L’)「その可能性は高いでしょうね」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「ま、あの有様を見る限りはな」
おっさん’sが言う通り、あの灰色の霧の様なものに包まれた物見塔を見ればそう考えざるを得ないだろう。
あれが何かはわからないが、あの灰色っぷりが灰衣の男と無関係とは考え難い。
- 527 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 22:47:28 ID:R8BRgvYs0
( ゚д゚)「しかし、人気がなさ過ぎるな。他の参加者はどうしてるんだ?」
_
( ゚∀゚)「逃げたんじゃねえの?」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「この状況で残ってるやつはよっぽどの物好きだろうからな」
ここから出られるかどうかは別として、普通ならまず出口を探すのが懸命な行動だ。
わざわざ出口から離れて中央に向かうのは危険が危ないだろう。
俺達は足は止めず、小走りで塔に向かいながら会話を続ける。
( ゚д゚)「だが、先ほど外周の方で何か光っていたからな。あっちはあっちで危険かもしれん」
(‘_L’)「あれが結界内だけで済んでいればいいのですが……」
フィレンクトの言葉で、恐らく見物しているであろう2人、いや3人か、の顔が思い浮かぶ。
ブーン達なら大丈夫だと思ってはいるが、無事を確かめるまでは安心出来ない。
(-_-)「先にブーン君達の安否を確認しに行きますか?」
俺達の目的を考えれば、ここは物見塔に向かい、灰衣の野郎を捕まえるのが第一だ。
申し訳ないがブーン達の事は後回しにするべきだ。
あいつらなら、自分達で何とか出来るという信頼も込みで俺はそう考える。
- 528 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 22:48:45 ID:R8BRgvYs0
- _、_
( ,_ノ` )y━・~「……そんな時間はなさそうだぜ?」
シブサワの言葉でいつの間にか周囲に人の気配があるのに気付く。
足を止め、身構える俺達の前にいくつかの人影が躍り出て来た。
(;参)「クッ……、新手か……」
恐らく大会の参加者であろうその一団は、既に満身創痍で俺達と戦えるとは到底思えない。
仲間の肩を借りなければ歩けない者もいて、明らかに戦意を喪失していた。
(‘_L’)「我々は今、貴方方と戦うつもりはありません。早くお逃げなさい」
どうするべきか考えていると、フィレンクトが前に進み出て俺達が来た方とは違う道を指し示した。
俺達はフィレンクトの意を汲み、武器は構えたままで指し示された道から離れる。
(;参)「すまない、ここは退かせてもらう」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「ああ、1つ聞いていいか?」
(;参)「何だ? 出来れば手短に頼む」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「誰にやられた? 他の参加者か? それとも……チッ、そこを離れろッ!」
- 529 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 22:49:43 ID:R8BRgvYs0
シブサワの怒号で弾かれた様にその場を離れようとした男が、瞬く間に炎に包まれる。
耳をつく男の悲鳴と、燃え盛る炎の音が響き渡る。
_、_
( ,_ノ` )「ヒッキー、頼む!」
(;-_-)「は、はい!」
シブサワは煙草を投げ捨て、男の前に立ち、防御呪文を唱える。
その時俺は既に、炎の魔法が飛んで来た方へ走り出していた。
_、_
( ,_ノ` )「おいおい、無茶すんじゃねえぞ」
( ゚д゚)「この位は無茶の内に入らんさ」
動くのはほぼ同時、しかし俺よりは少し後にミルナが続く。
魔法使いとの戦い方はこの大会に備えてブーンに色々とレクチャーしてもらったし、多少は経験もある。
一度魔法を唱えたら、次の魔法を唱えるまで間があるはずだから、そこで距離を詰めるのが基本だ。
向こうに魔法使いが2人いたら、まあ、その時はその時だ。
_
( ゚∀゚)「!」
- 530 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 22:50:43 ID:R8BRgvYs0
川─┬)
走る俺の前に、フードを被った小柄な人影が飛び出して来た。
その手には大振りのナイフが握られており、臨戦態勢は整っている様だ。
_
( ゚∀゚)「邪魔だ!」
走りながら俺は肩に担いでいたバルディッシュを、相手の頭部めがけて振り下ろす。
川─┬)「グァッ!」
_
( ゚∀゚)「ぬっ!?」
威力よりは当てる事を重視したコンパクトな振りではあったが、俺の一撃は相手のナイフに造作も無く受け止められる。
こいつはどうやら見た目よりもだいぶ厄介な相手の様だ。
( ゚д゚)「ジョルジュ!」
_
( ゚∀゚)「おう!」
俺はバルディッシュに力を込め、ナイフごと相手を押しやろうとする。
しかし相手は全く動かず、俺は止む無くバルディッシュを引き、その場から飛び退いた。
- 531 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 22:51:40 ID:R8BRgvYs0
(#゚д゚)「ふんッ!」
川─┬)「グァッ!」
俺のいた場所をミルナの鉄球が貫き、ナイフ野郎に迫る。
だが、ナイフ野郎はミルナの鉄球もいとも簡単に弾いてみせた。
_
( ゚∀゚)「すまねえ。体勢を崩せなかった」
( ゚д゚)「お前が押しやることさえ出来なかった相手ということか。簡単に弾かれるわけだ」
俺とミルナはナイフ野郎を挟み込むように左右に分かれて位置を取る。
背後にいる魔法使いのことを考えれば好ましくない状況だが、無視して通り過ぎられる相手じゃなさそうだ。
_、_
( ,_ノ` )「厄介なやつが出てきやがったか……」
川─┬)「グォー……」
_
( ゚∀゚)「何だ? おっさんの知り合いか?」
_、_
( ,_ノ` )「まあな。ちょっとした仲さ」
- 532 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 22:53:28 ID:R8BRgvYs0
軽い口調で応じるシブサワだが、視線はナイフ野郎から片時も外していない。
このおっさんがここまで警戒する相手という事は、相当の使い手なのだろう。
_
( ゚∀゚)「案外顔が広いんだな」
_、_
( ,_ノ` )「もてる男は辛いもんだ」
なおも軽口を叩きつつ、シブサワはナイフ野郎との間合いを詰める。
背後に魔法使いも控えている事だし、ここはシブサワに任せて、俺はミルナと視線を交わし、先に進もうとした。
川─┬)「グォァ!」
_
( ゚∀゚)「チッ」
しかし、そう簡単には行かない様で、ナイフ野郎は俺に向かって斬り掛かって来た。
俺はそれを受けずにかわし、反撃に転じようとしたがナイフ野郎は既に方向を変え、ミルナに向かって斬り掛かる。
_
( ゚∀゚)「素早い野郎だ」
_、_
( ,_ノ` )「色々と箍が外れてるからな。常識の範疇で捕らえようとするなよ?」
_
( ゚∀゚)「了解」
- 533 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 22:54:59 ID:R8BRgvYs0
( ゚д゚)「ぬんッ!」
川─┬)「グルァッ!」
気合の入った声と共に放たれるミルナの鉄球の一撃は容易くかわされ、ナイフ野郎の斬撃もミルナの盾に防がれる。
俺はその隙に背後から斬りかかるべく斧を構えたが、それよりも早く別の角度から一撃が放たれた。
川─┬)「グォ……」
从 ゚∀从「……」
走り込んで来たハインの2刀を合わせた一撃もナイフ野郎に防がれたが、ハインはそのまま蛮刀を押し込む。
俺の力ですら押しやれなかったナイフ野郎を、ハインの力で押せないのは目に見えているだろう。
2人は得物を競り合わせたまま、互いの距離を限りなくゼロにする。
川─┬)「ガッ!」
从#゚∀从「このッ!」
いつ取り出したのか、ナイフ野郎の反対側の手にもう1本の刃が煌く。
ハインは繰り出されるそれをナイフ野郎に蹴りを放ちつつ、その反動で背後に飛んでかわした。
- 534 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 22:56:44 ID:R8BRgvYs0
从#゚∀从「おとなしくくたばってろよ!」
川─┬)「グォァ……」
着地してすぐにまたハインはナイフ野郎に飛び掛かる。
ハインが攻撃的なのは毎度のことだが、今回は事の他苛立っているのが見て取れる。
_、_
( ,_ノ` )「おいおい、急ぎ過ぎは……」
从#゚∀从「うるせえ、黙ってろッ!」
シブサワの言葉に耳を貸さず、やたらめったら斬り掛かるハイン。
激昂している割には狙いは的確に相手の急所を捉えているが、ナイフ野郎はそれを全て防ぎ切る。
从#゚∀从「ハッ!」
川─┬)「グォッ」
先の鍔迫り合いの時ならまだ加勢のし様もあったが、激しく動き回りながら立ち回られると手の出しようが無い。
それでも俺は、どこかで隙を見て割って入るつもりで身構えた。
- 535 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 22:57:52 ID:R8BRgvYs0
(;-_-)「精霊兵器……確かクルゥとかいう名前の」
(‘_L’)「なるほど。先にそちらに当たってしまいましたjか」
そんな中、ようやくフィレンクト達が追い付いて来た。
どうやら先の男は一命は取り留めたらしい。
_
( ゚∀゚)「精霊兵器……か」
事前にシブサワ達から聞いてはいた。
ブーン達と共にナカノヒトの町で戦った相手だと。
なるほど、これならあいつらが苦労したのも納得がいく強さだ。
そしてやり辛い相手でもある。
こいつも本をただせば被害者なのだから。
_
( ゚∀゚)(まあ、だからといって自分や仲間の生命と引き換えにしてまで助けようと思うほどお人好しじゃあないがな)
俺達はこいつを殺すわけにはいかない理由がある。
だが、結果的にそうするしかない場面になったとしたら、俺は躊躇わずバルディッシュを振るうだろう。
- 536 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 22:58:52 ID:R8BRgvYs0
( ゚д゚)「ジョルジュ」
_
( ゚∀゚)「……ああ、わかってるよ」
ミルナが近付いて来て俺の名を呼ぶ。
それだけで俺はミルナが何を言いたいのかわかっていた。
从#゚∀从「でえええりゃぁぁぁぁッ!」
川 ゚ 々゚)「グァッ!」
ハインの一撃がナイフ野郎、精霊兵器クルゥのフードを切り裂き、その顔を露にする。
ナイフ野郎などと呼んでいたが、見た目はまだ10代ぐらいの少女だ。
_
( ゚∀゚)「ハインッ!」
从#゚∀从「何だよ! 邪魔は──」
_
( ゚∀゚)「先に頭を潰す! いいな?」
从#゚∀从「……了解」
何か言いたげな顔を一瞬見せつつも、ハインは俺の言葉に頷いてクルゥを蹴り飛ばし、距離を取る。
ハインもこいつが真の意味での敵ではないことはよくわかっているのだ。
- 537 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 23:00:27 ID:R8BRgvYs0
(‘_L’)「……仕掛けて来ませんね」
_、_
( ,_ノ` )「ああ、妙だな」
_、_
( ,_ノ` )「てっきり俺達があのクルゥってのにてこずってる間に魔法の一発でも飛んで来ると思ったんだが」
(-_-)「逃げたんでしょうかね?」
_、_
( ,_ノ` )「完成型のこいつを置いてか? 有り得んだろ」
シブサワのおっさんが言うには、マルタスニムは自己顕示欲の塊の様な男らしい。
そいつが自身の研究成果を見せびらかしこそすれど、置いて逃げるとは考え難いと。
(‘_L’)「となると考えられるのは……」
(-_-)「既に他の誰かにやられたか……」
_、_
( ,_ノ` )「こちらを一網打尽にする手はずを整えていたか、だな」
シブサワのおっさんの言葉が言い終わらない内に、俺達はその場から散開する。
四方から現れた人影に1人ずつ向かい、フィレンクトとヒッキーが中央に残った。
- 538 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 23:02:15 ID:R8BRgvYs0
- _
( ゚∀゚)「雑魚は引っ込んでろ!」
\(^o^)/ オワー
現れた人影、確かオワタ兵と呼ばれていた仮面の敵をバルディッシュの一振りで薙ぎ倒す。
クルゥとは比べ物にならないほどの弱さだ。
他の3人もそれぞれオワタ兵を打ち倒していた。
そして中央には炎の塊が飛来する。
(-_-)「ホーリー・サークル!」
炎はヒッキーたちに直撃することは無く、手前で弾け飛んだ。
あの緊張しまくていったヒッキーの様子に不安はあったが、防御魔法においては存分に頼りにして良さそうだ。
(#^^ω)「私の魔法を防ぐとは小癪な! ……って、どこかで見た顔ホマね」
(‘_L’)「思い出さなくて結構。貴方はここまですから」
飛び散る炎の合間を縫って、フィレンクトが一気にマルタスニムに迫る。
残るオワタ兵は全て俺達が抑えている現状、奇襲は成功するかに見えたが、
マルタスニムの前にはいつの間にかクルゥが立っていた。
- 542 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 23:09:36 ID:R8BRgvYs0
川 ゚ 々゚)「ヴァー」
俺達も既にマルタスニムの元に走り出してはいるが、フィレンクトに追い付いてクルゥを排除するにはまだ距離がある。
ここは一旦仕切り直すか、それともこのまま攻めるかはフィレンクトの判断に任せる。
俺達はそのどちらにも対応出来るよう、走りながら体勢を整えた。
(‘_L’)「どいて頂けますか? 私は貴女に用があるわけではありませんので」
フィレンクトは踏み込み速度を緩めず、クルゥに肉薄する。
フィレンクトの武器、いわゆる騎士剣と呼ばれる直刀とクルゥのナイフなら、
ここまで近付いてしまえば短くて小回りのきく後者の方が圧倒的に有利だ。
(‘_L’)「失礼」
川 ゚ 々゚)「グァ!?」
フィレンクトが身をかがめたと思った次の瞬間、クルゥの身体が半回転して宙を舞っていた。
どうやったかよくわからなかったが、相手の足を掛けて上体を押すような形の投げを見舞ったと思われる。
(#^^ω)「ホマッ!? だが遅いホマッ!」
- 543 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 23:10:35 ID:R8BRgvYs0
クルゥが稼いだほんのわずかな間に、マルタスニムは次の呪文を完成させていたようだ。
その手にある短い杖をフィレンクトに向けた。
聞いていた通り実力はある様で、ただのいけ好かない野郎じゃないらしい。
(‘_L’)「シッ!」
短い発声と共にフィレンクトが左手、正確には指で小石を撃ち出す。
いわゆる飛礫と呼ばれる技だが、とても元騎士団長様が使うような上品な技ではない。
しかし、意外にもこれがフィレンクトの特技らしい。
フィレンクトは騎士団長といういわゆる正々堂々と戦う騎士道を体現する様な立場の筆頭にいながらも、
先の投げにしろ飛礫にしろ、実践的な技を多く習得していた。
以前その事を騎士様らしくないとからかったことがあったが、フィレンクトは勝たねば名誉も騎士道も意味が無い、
これは守るための力なのだから、これもある種の騎士道なのだと言い切りやがった。
俺個人としては、フィレンクトのそういった点は嫌いではない。
だからこそ、こうして共に行動することを選んだのだ。
(;^^ω)「ホマッ!? 味な真似を!」
- 544 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 23:11:49 ID:R8BRgvYs0
マルタスニムが魔法を発動するよりも早く、礫がマルタスニムの眉間に迫る。
小石とはいえ、フィレンクトの強靭な指先から打ち出されたそれは、当たれば痛い程度ではすまないだろう。
マルタスニムは構えていた短杖を引き、横っ飛びに転がって回避する。
(‘_L’)「いい反応です。しかし!」
フィレンクトはマルタスニムの取る行動を読んでいた様で、マルタスニムの転がる先に刃を向ける。
その姿が見えたのか、マルタスニムの顔に驚愕の表情が浮かぶが、すぐに口の端を歪めた。
川 ゚ 々゚)「グァッ」
(‘_L’)「……早いですね」
おおよそ知性どころか意思すら感じさせない虚ろな瞳をしながらも、
主を守るということ忠実にこなそうとする精霊兵器クルゥ。
フィレンクトは剣を引き、数歩飛び退る。
_、_
( ,_ノ` )「それじゃあ、バトンタッチといくかね」
他より一足早くフィレンクトの元に辿り着いたシブサワが、上空からクルゥ目掛けて蹴りを放つ。
おっさんの癖に素早いもんだ。
- 546 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 23:13:59 ID:R8BRgvYs0
川 ゚ 々゚)「ガー」
クルゥはシブサワの蹴りをナイフで難なく受け止める。
足技を主に戦うシブサワのブーツには金属が仕込んであるらしく、ナイフが貫通するほどやわな物じゃない。
( ゚д゚)「ここは通らせてもらうぞ」
更にミルナの鉄球がクルゥ目掛けて放たれる。
それも苦も無く弾くクルゥだが、少なくとも動きは止められた。
その隙に俺とフィレンクトはクルゥから少し離れて、回り込むようにマルタスニムに向かう。
以前ナカノヒトの町で使用した、オワタ兵による人海戦術は今回は使えないので、
同数ならこちらが圧倒的に有利になるとだろうとシブサワが予想していたが、どうやらその通りになりそうだ。
(#^^ω)「チィッ! 近付くなホマ!」
( ‘_L’)
マルタスニムに向かって走りながら、フィレンクトが俺に目配せをする。
自分が先に仕掛けるから、後詰めを頼むということだろう。
- 547 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 23:15:50 ID:R8BRgvYs0
从#゚∀从「でええええりゃぁぁぁッ!」
(;゚゚ω)「ホマァァァッ!?」
だがしかし、それよりも先に稲妻の如く俺達の間に割り込んで来たハインが、渾身の一撃をマルタスニムに見舞う。
こちらの動きを見ていないはずはないのだが、どうも頭に血が上り過ぎている様だ。
(#^^ω)「この小娘が! 当たったらどうするホマ!?」
从#゚∀从「うるせえ、死ね!」
ハインの攻撃をかわし、後方に逃げながらも怒鳴り付けて来るマルタスニム。
魔法使いの割には体捌きがしっかりしている。
この分だと単調な攻撃では仕留められそうも無いのだが、ハインはただ直線的に攻め続ける。
_
( ゚∀゚)「……ったく、どうするかね?」
(‘_L’)「彼女らしいといえばらしいのですが……若干らしくないとも思えますね」
フィレンクトが何か言いたげな視線を俺に向けて来る。
俺は肩をすくめ、ハインの援護に回るとだけ告げ、その場を離れた。
(‘_L’)「……私も、今は貴方達の仲間であることは覚えておいてくださいね」
後方から聞こえて来た言葉に俺は振り向くことはせず、心の中で謝罪を述べ、ハインの元に向かう。
- 548 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 23:17:25 ID:R8BRgvYs0
(#^^ω)「しつこい小娘ホマね!」
从#゚∀从「黙れ、死ね!」
闇雲に斬り付けるハインの攻撃は当たらず、避けるマルタスニムに余裕が見て取れるようになって来た。
マルタスニムは逃げているというより、ハインを誘い込んでいる様にも見える。
伏兵は無いはずだが、万が一を考えるとここは多少強引にでも割って入るしかなさそうだ。
_
( ゚∀゚)「そろそろくたばっとけ。イグニッション!」
俺は柄のスイッチを押し込み、発熱を始めたバルディッシュを大上段に振り上げる。
それを苦々しい顔をしたマルタスニムに向け、一気に振り下ろそうとした。
从#゚∀从「ジョルジュ!」
_
( ゚∀゚)「いいから任せ──チッ!」
てっきりハインは、俺に邪魔をするなと怒りを向けているのかと思ったが違った様だ。
ハインが片方の刀で指し示す先、上空に4つの火球が浮かび上がっている。
_
(#゚∀゚)「全員、建物の影に!」
身を翻し、そう叫んだ俺の声は、弾ける業火の轟きに飲み込まれていった。
- 549 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 23:19:02 ID:R8BRgvYs0
〜 メシューマの町 ??? <ブーン> 〜
(;^ω^)「……つッ! ここは?」
状況がまるで飲み込めないが、自分が気を失っていたのは何となくわかる。
それがどのくらいの時間だったのか、僕は地面に倒れていた自分の身を起こしつつ考えた。
(;^ω^)「この感じだとそれほど長く気を失っていたわけじゃなさそうだお」
身体の具合をあちこちを確かめ、感覚的にどのくらい時間が経過をしたかを推測する。
未だ気を失っているが、幸いにもフードの中にいたわんわんおは無事のようだ。
僕自身にも外傷はないし、どこもケガをはしていない。
あとはもう1人、一緒にいたはずのツンの姿を探さねばならない。
ξ--)ξ
( ^ω^)「お、いたお」
僕らのすぐ近くにツンは倒れていた。
よく見るとツンだけではなく、他にも何人もの人が倒れていた。
その中には何となく見覚えのある、先ほど僕らの近くに立っていたと思われる人達の顔もあった。
- 550 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 23:21:15 ID:R8BRgvYs0
( ^ω^)「あの辺りにいた人が無差別に巻き込まれたっぽいおね」
未だ何が起きたかは定かではない。
あのデミタスという男の方から魔力が膨大に膨れ上がるのを感じ、視界が灰に染まった所までは覚えているが、
それでどうしてこんな所に倒れているのかわからないのだ。
( ^ω^)「といっても、ここがどこかはわかんないんだけど」
全体的な目に映る風景の感じを見る限り、メシューマの街中であることは確かだろう。
ただ、先ほどまでいた場所とは何となく違うように思える。
それを確かめようにも僕には土地勘が無く、
更に少し離れた辺りには灰色の煙のようなものが充満していて先がよく見えない。
( ^ω^)「それほど遠くに来たわけじゃなさそうだおね。何か空気が異質な感じはするけど」
僕はひとまず考えるのを中断し、ツンを起こす事にした。
まだここが安全と決まったわけではないし、1人で考えるよりは2人の方がいいだろう。
( ^ω^)「さて、ツン、起き──」
- 552 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 23:22:54 ID:R8BRgvYs0
クセモノッ! ゲフゥッ!?
ξ#゚听)ξ三⊃(#)゚ω゚).・。 ’
ξ;゚听)ξ「って、ブーンじゃないのよ?」
(;^ω^)「うん、僕だお。てか、僕であろうがなかろうがいきなり殴りかかるのはどうかと思うお」
倒れているツンを起こそうと近付いて手を伸ばしたら、起き上がりざまの一撃をまともにもらってしまった。
声ぐらい掛けろと言うツンだが、いい加減付き合いも長いんだし、ツンなら僕の気配ぐらいわかってそうなものだが。
(∪´ω`)「わんわんおー」
( ^ω^)「お、わんおも起きたかお」
僕が倒れた衝撃でわんわんおも目が覚めたらしい。
まだ少し寝ぼけた顔をしているが元気そうである。
ξ゚听)ξ「で、どういう状況なの?」
( ^ω^)「さっぱりポンだお。よろしくはなさそうだってのは確実だろうけど」
- 553 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 23:23:46 ID:R8BRgvYs0
僕はツンと気を失う前に見たもの、そして目を覚ましてから見たものについて話し合う。
結果、大して進展は無いことだけがわかった。
ξ゚听)ξ「調べるしかなさそうね」
(∪^ω^)「わんわんお!」
( ^ω^)「どうするかお? その辺に倒れている人達は起こすかお?」
ξ゚听)ξ「起こして役に立つかわからないし、下手にパニック起こされるのもねえ」
( ^ω^)「だおね。まずは僕らで……」
僕は不意に感じた気配に言葉を切り、ツンの前にかばうように立つ。
それを当然の如くかわし、ツンは更に僕の前に出る。
(;^ω^)「何が来るかわからないんだし、迂闊に前に出るなお」
ξ゚听)ξ「私はあんたの護衛だって事、忘れんじゃないわよ」
そういう名目で来てもらっているのは確かなのだが、
この状況ではどちらかといえば魔法攻撃の方を警戒しなければならないだろう。
灰衣の男の存在や、この状況の発端となったと思われる魔力の増幅。
そして空気中の魔力濃度の濃さなどを加味すれば、どちらを警戒すべきかは言うまでも無い。
故に僕が前に出るべき場面だ。
- 554 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 23:25:27 ID:R8BRgvYs0
ξ゚听)ξ「……何か来るわね」
( ^ω^)「2人、いや、3人かお?」
(∪^ω^)「わんわんお」
僕はツンの横に並び、賢者の杖を構えた。
灰の中に浮かぶ黒い3つの人影は徐々にその姿を大きくし、こちらに近付いて来る。
(;^ω^)「……って、ちょっと大き過ぎるんじゃないかお?」
既に影は僕らよりもだいぶ大きくなっていた。
身長はそう高いわけでもなく、下半身もごく普通の人間サイズだが、上半身のシルエットが妙に大きい。
そもそもそれが上半身なのか判別出来ない楕円の形をしている。
しかし、その理由を考えるまでも無く、僕は既に気付いていた。
( ^ω^)「……ツン」
ξ゚听)ξ「ええ……」
こちらに向かってくる人影が、人でない事に。
( ) ( ) ( )
(‡`Д´)Ψ (‡`Д´)Ψ (‡`Д´)Ψ
- 555 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 23:26:43 ID:R8BRgvYs0
( ^ω^)「モンスター、しかもこのタイプは悪魔かお」
ξ゚听)ξ「厄介な相手ね」
(‡`Д´)Ψ キィ キィ
灰の中から現れたのは、オレンジ色の体躯をした背中に大きな羽のあるモンスターであった。
先のシルエットの上半身が大きかった理由はこの羽の所為だろう。
その手には、先端が3つに分かれた槍か銛のような武器を持っている。
恐らく、レッサーデーモンと呼ばれる低級の悪魔だ。
低級とはいえ悪魔、人語は解さないが知能が低いわけではなく、決して侮れ無い相手である。
( ^ω^)「何でこんなのがここにとか色々言いたいことはあるけど……」
ξ゚听)ξ「まずは……」
僕とツンは一瞬目を合わせ、短く頷き合う。
お互いでここでまずすべき事は何か、それを間違うわけにはいかない。
( ^ω^)「ツン、わんお、頼むお!」
- 556 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 23:28:14 ID:R8BRgvYs0
ξ゚听)ξ「あんたも、無茶すんじゃないわよ!」
(∪;^ω^)「わんわんお!」
僕は前に、ツンとわんわんおは後ろにそれぞれ走り出す。
今この場でまず僕らがすべき事、それは……
ξ#゚听)ξ「コラァァァッ! 起きろぉぉぉぉッ!」
(∪#^ω^)「わんわんお! わんわんお!」
(;客1)「わ、わっ!?」
(;客2)「ひぃぃ!? 何事!?」
ツンとわんわんおの大音声プラス打撃に、倒れていた人々が次々と起き上がる。
僕はそれを後目に、3体のレッサーデーモンの前に立った。
( ^ω^)「さて、ここから先には行かせんお」
(‡`Д´)Ψ キィ キィ
- 558 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 23:30:01 ID:R8BRgvYs0
警戒しているのか、レッサーデーモンはキィキィと鳴くだけでこちらに仕掛けては来ない。
僕の役目はツン達が倒れている人達を逃がす間の時間稼ぎなので、この状況は幸いと言える。
(;客3)「な、何だありゃ? モンスター?」
(;客4)「何でこんな街中に!?」
ξ#゚听)ξ「いいからさっさと逃げろやァァァッ!」
(;客3)「ひぃぃ!? こっちにもモンスター!?」
ξ#゚听)ξ三つ「誰がモンスターよ!」
(#)客3)「グボァッ!?」
ツンが時に怒鳴り、時に殴りつけながら次々と倒れていた人達を後方に追いやる。
ツンの性格を考えれば、ツンが僕の位置に立ちたかったであろうが、その辺りの役割分担を見誤るほど愚かではない。
魔力が高く、魔法攻撃を得意とする物が多い悪魔に対しては僕が対峙した方がいいのはツンも理解している。
( ^ω^)「このまま睨み合いで終わればいいけど……やっぱそうもいかんおね」
- 559 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 23:31:15 ID:R8BRgvYs0
(‡`Д´)Ψ キュル キュル
レッサーデーモンの鳴き声がわずかに変化したと思ったら、その頭上に火球が浮かび上がる。
高速詠唱なのか、その身に纏う魔力の高さがそれを可能としているのかはわかっていないが、人が唱えるより相当早い。
( ^ω^)(まともにやり合うのは得策じゃないおね……)
既にこちらも呪文の詠唱は終わっている。
しかし、低級の悪魔ぐらいなら1人でも何とか出来る自信はあったが、妙に周囲の魔力濃度が高い所為で、
少々厳しいかもしれない。
以前シューから聞いた話にもあったが、人間界は悪魔の住む世界、魔界に比べて魔力濃度が低いので、
生存し辛いみたいな事を言っていた。
だが、この魔力濃度なら悪魔も存分に力が発揮できるのではなかろうか。
それに、シューの話を思い返すともう1つ気になる点がある。
( ^ω^)(低級悪魔がここにいるって事は、それを呼んだ奴がいるんだおね)
一番考えられるのは、あの灰衣の男であろう。
どういう手段を用いたのかまではわからないが、この状況を総合して考えると低級悪魔を呼ぶだけが目的とは考え難い。
- 560 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 23:32:43 ID:R8BRgvYs0
( ^ω^)(ここでむやみに消耗するわけにもいかんお)
まずは観客を逃がし、それからジョルジュさん達と合流する。
それが最善だろう。
ただ、ジョルジュさん達がここにはいない可能性もあるので、ここがどこなのか早めに見極める必要もある。
( ^ω^)「ったく、色々とやることが多いおね!」
(‡`Д´)Ψ キィッ
一斉に放たれた火球に向けて僕は杖を握った手を突き出し、風の魔法を解き放つ。
風の障壁が火球を逸らし、火球は僕から少し離れた地点に着弾し、轟音を響かせる。
( ^ω^)「その隙に戦略的撤退だお!」
ウインド・シューズの魔法を唱え、ツン達が逃げた方へ僕も走り出す。
程なくしてツン達一団の姿が見えたが、何故かもう立ち止まってしまっている。
(;^ω^)「って、何やってんだお? まだ安全な場所じゃないから逃げないと……」
ξ;゚听)ξσ「わかってるわよ、そんな事! でも……」
- 561 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 23:33:48 ID:R8BRgvYs0
僕はツンが指差す先に目を向ける。
そこにあったのは結界であった。
それも、あの闘技大会会場にあった様な周囲を囲むような形のものだ。
(;^ω^)「何でこんなとこに?」
(∪;^ω^)「わんわんおー」
ξ;゚听)ξ「わかんないわよ。でも、この人達が言うには、ここは会場内じゃないかって」
ツンがメシューマ在住の観客の人達から聞いた所によると、ここは大会会場内、つまりは結界内部だという事らしい。
地元住民なら町の作りでわかるだろうから、見間違ってはいないだろう。
だが、僕が見た限りでは、この結界はあの会場を囲んでいたそれとは異なるように思える。
(;^ω^)「どういう事だお? 何で僕らが結界内に? いつ……」
(∪;^ω^)「わんわんお!」
(;^ω^)「クッ、もう追って来たのかお」
(‡`Д´)Ψ キィッ
- 562 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 23:34:29 ID:R8BRgvYs0
上空に向かって吠えるわんわんおの視線の先を追うと、そこには宙に浮かぶレッサーデーモンの姿があった。
( ^ω^)「仕方ないお。ここであいつらを殲滅させるからツンは……」
( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( )
(‡`Д´)Ψ (‡`Д´)Ψ (‡`Д´)Ψ (‡`Д´)Ψ (‡`Д´)Ψ (‡`Д´)Ψ
(;^ω^)「って、いっぱい集まって来やがったお!?」
灰の中から1匹、2匹と続々とレッサーデーモンが湧き出して来る。
いくら低級悪魔とはいえ、これだけの数を相手にするのは流石に厳しい。
それも戦えない人を守りながらとなると、勝機はゼロに等しい。
(;^ω^)「……ツン、皆を連れて逃げられるかお?」
ξ;゚−゚)ξ「無理ね。少なくとも、全員無事でってわけには行かないと思うわ」
( ^ω^)「だおね。今から結界の解除も無理そうだし」
( ^ω^)「仕方ないお。それじゃあ、一丁やるかお」
- 563 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 23:35:43 ID:R8BRgvYs0
ξ゚听)ξ「この人達を置いて自分達だけ逃げるって選択肢は……まあ、あんたにはないわね」
( ^ω^)「そんなの、ツンにだってないお?」
ξ゚听)ξ「……そうでもないわよ。別に依頼を受けてるわけでもないし、大切な……」
ξ--)ξ「仲間のを方を優先させるのがプロの冒険者でしょ。それに、私はあんたの護衛なんだし」
( ^ω^)「かもしれんお。でも、僕らはプロの冒険者じゃないお」
ξ゚ー゚)ξ「そうね。魔法道具屋にその護衛」
(∪^ω^)「わんわんお!」
( ^ω^)「それに看板息子だおね」
僕らは軽く笑い合い、前に進む。
観客の人達には1箇所に固まって貰い、なるべく動かない様頼んでおいた。
出来るだけの事はするからと。
( ^ω^)「それじゃあ、行くお! 先手必勝、ウインド・カッター!」
- 564 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 23:36:46 ID:R8BRgvYs0
僕は風の刃を何匹かのレッサーデーモンに向ける。
この程度の魔法では致命傷は到底与えられないが、ひとまず相手の魔法を中断させることぐらいは出来るだろう。
いくら何でもあの数に一斉に魔法を使われたら、こちらはひとたまりも無い。
(‡`Д´)Ψ キィ
ξ゚听)ξ「そこッ!」
僕の魔法をかわし、地上に降り立ったレッサーデーモンをツンの拳が的確に捉える。
もんどりうって倒れるレッサーデーモンを見るに、物理攻撃がきくタイプの様だ。
( ^ω^)「これなら何とか……って、またかお!」
( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( )
(‡`Д´)Ψ (‡`Д´)Ψ (‡`Д´)Ψ (‡`Д´)Ψ (‡`Д´)Ψ (‡`Д´)Ψ
( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( )
(‡`Д´)Ψ (‡`Д´)Ψ (‡`Д´)Ψ (‡`Д´)Ψ (‡`Д´)Ψ (‡`Д´)Ψ
このまま少しずつ数を減らしていけば何とかなるかもしれないと思ったが、それは甘かった様だ。
灰の中からまた何匹ものレッサーデーモンが姿を現した。
- 565 名前:名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 23:37:48 ID:R8BRgvYs0
(;^ω^)「これはちょっとまずいかお」
(‡`Д´)Ψ キュル キュル (‡`Д´)Ψ キュル キュル (‡`Д´)Ψ キュル キュル
一斉に呪文の詠唱を始めるレッサーデーモン。
正直な所、防ぎ切れる自信もかわし切る自信も無い。
(‡`Д´)Ψ キュル キュル (‡`Д´)Ψ キュル キュル (‡`Д´)Ψ キュル キュル
(;^ω^)「こうなったらこれしかないお!」
僕はエア・シューズの魔法を唱え、レッサーデーモンに向けて走り出す。
自棄になってなって特攻するわけではなく、この方法なら敵を倒しつつ自身の魔法防御を高める事が出来る。
⊂二二二( ^ω^)二⊃「必殺! ブーン・クラッシュ!」
(‡`Д´)Ψ キュッ (‡`Д´)Ψ キュッ (‡`Д´)Ψ キュッ
走り出す僕。
解き放たれる火球。
その刹那、戦場が光に包まれた。
第四十七話 混迷のメシューマ 終
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