( ^ω^)は魔法道具屋さんのようです
671 名前:名も無きAAのようです:2013/01/19(土) 22:15:56 ID:NwSV61F60

 〜 メシューマの町 中央南東部 〜


( ^ω^)「そこを右だお」

ξ゚听)ξ「了解、先行するわ」

( ゚∋゚)つ スッ

ξ゚听)ξ「大丈夫よ。レーサーデーモンとの戦い方も慣れたから。後詰め、お願いね」

( ゚∋゚)" コクッ

( ^ω^)「もう魔方陣は近いと思うお。油断するなお」

(∪^ω^)「わんわんお!」



     第四十九話 魔法陣を破壊せよ


672 名前:名も無きAAのようです:2013/01/19(土) 22:17:13 ID:NwSV61F60

( ^ω^)「ツン、何か見えるかお?」

僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。

ξ゚听)ξ「駄目ね。相変わらず灰の霧みたいなのが濃くて見通しが悪いわ」

彼女の名はツン。
サンライズの隣の武術道場の娘で、いわゆる幼馴染というやつだ。

( ゚∋゚)σ スッ

彼の名前はクックル。
デレの護衛の戦士で、ラウンジ最強の武と称される屈強で寡黙な人だ。

僕達はメシューマの町での騒動に巻き込まれ、ラウンジの聖女一行と協力してその解決に当たっている最中である。
デレとモララーさんが結界内に閉じ込められた観客を逃がし、僕達がレッサーデーモンの出現を防ぐため、
魔方陣の破壊に向かっている。

( ^ω^)「あっちの方向かお? 確かに向こうの方が魔力反応強いおね」

673 名前:名も無きAAのようです:2013/01/19(土) 22:18:20 ID:NwSV61F60

僕達はクックルが指差した方向に進み、群がるレッサーデーモンを薙ぎ倒して行く。
なんせ街中によくわからない灰色の霧の様な物が充満し、視界が悪い。

僕が魔力頼りに魔方陣の大体の位置を見当付けて進んでは来たが、
ある程度まで近付くと魔力差が感じ辛くなるので、最終的には目視で探すしかなさそうである。

ξ゚听)ξ「レッサーデーモンも馬鹿じゃないのね。魔方陣からまっすぐこっちに向かって来てくれればいいものを」

( ^ω^)「出現場所を隠す知能ぐらいはあるようだお」

(∪^ω^)「わんお」

モンスターの中では知能が高いとされる悪魔だ。
低級とはいえ、本能のままに動いてるだけではないようである。

ξ゚听)ξ「それに、意外と組織立って動いている感じがするわ」

( ^ω^)「召喚者に従って命令を実行しているのなら、必然的にそうなるのかもしれんお」

今の所、レッサーデーモンは複数匹で編隊を組んで襲って来ている。
各個撃破し辛い分厄介なのだが、クックルがいるお陰でそれほど苦労していない。

( ゚∋゚)

( ^ω^)(改めて、敵に回さずに済んで良かったと思うお……)

674 名前:名も無きAAのようです:2013/01/19(土) 22:19:48 ID:NwSV61F60

デレが言った様に、盾としてものすごく優秀で、レッサーデーモンが放つ火球を悉く受け止めてくれる。
その隙に僕やツンが攻撃するという連携で、ここまで危なげなく来れていた。

ξ゚听)ξ「また団体さんのお出ましよ」

( ^ω^)「ひー、ふー、みの……いっぱい、と」

(∪^ω^)「わんわんお」

性懲りもなく現れたレッサーデーモンの一群は、僕らに向かって火球を撃ち出す。
僕はその場で呪文の詠唱を始め、ツンはその場で腰を落とし、飛び出す為の溜めを作った。

∩( ゚∋゚)⊃ ブンッ

そんな僕らの前方を、クックルの鎖付きの盾が縦横無尽に駆け回り、火球を打ち落としていく。
そして全ての火球が打ち落とされた瞬間、ツンが飛び出し、僕の魔法が発動した。

ξ゚听)ξ「はあああッ!」

( ^ω^)「サンダー・フォール!」

(‡xДx)Ψ ギュォアー

675 名前:名も無きAAのようです:2013/01/19(土) 22:21:11 ID:NwSV61F60

僕の魔法とツンの拳でレッサーデーモンが次々と打ち落とされていく。
そこに防御を終えたクックルの盾も攻撃に加わり、レッサーデーモンの一群はあっさりと全滅した。

ξ゚听)ξ「さあ、この隙に魔法陣を探しましょう」

( ^ω^)「了解だお。けど、見付けても迂闊に近寄らないでくれお」

レッサーデーモンの動きを見てもわかるように、敵は魔方陣を守ろうとしている。
故に、魔方陣の側に何かしらの罠や強力なモンスターが配置されている可能性も考える必要がある。

( ゚∋゚) チラッ

( ^ω^)「この感じだと、強力な魔力は感じられないので、デミタス本人はいないかと思うお」

しばらく共に戦う内に、不思議と目の動きや仕草でクックルの言いたい事がわかる様になって来ていた。
本当にそれであっているかは不明だが、訂正されない所を見ると、それほど間違ってはいないのだろう。

ξ゚听)ξ「仮にデミタス本人がいたらどうするの?」

( ^ω^)「それは……」

676 名前:名も無きAAのようです:2013/01/19(土) 22:22:19 ID:NwSV61F60

ツンの質問に、今度は僕がクックルの方をちらりと見る。
クックルはゆっくりと首を振ってそれに応じた。

( ^ω^)「モララーさんの言い付け通り、撤退するしかないおね」

ξ゚听)ξ「そう……」

どこか不満げにな反応を見せるツン。
まあ、僕もこの騒動の元凶を目の前にして逃げるのは不本意だが、勝算のない無謀な戦いは避けるべきだと思う。
出来ればその前にジョルジュさん達と合流したいのだが、未だ皆とは出会えずにいた。

ξ゚听)ξ「あんまり強そうには見えなかったのにね」

( ^ω^)「どこにでもいそうな顔だったお。多分、どこかですれ違ってても気付かないような」

デミタスという男が何者なのか、目的が何なのかとか、モララーさんのお陰で多少は知る事も出来たが、
まだまだわからない事だらけだ。

ξ゚听)ξ「少なくとも、朱玉を手に入れるだけではないって事よね」

( ^ω^)「千年紀の王を復活させたいわけでもなさそうだおね」

(∪^ω^)「わんお」

677 名前:名も無きAAのようです:2013/01/19(土) 22:25:20 ID:NwSV61F60

少なくとも、まっとうな何かを為し得ようとしていない事はわかるものの、今の所、
何で僕らを含めた結界周辺にいた観客まで閉じ込められたのかはよくわからない。

( ^ω^)「単純に考えれば、エサなのかもしれんおね」

ξ゚听)ξ「悪魔が好むという、人間の負の感情を得る為って事?」

( ^ω^)「そうだお。ただ……っと、それっぽいの発見だお」

考察を中断し、灰の中で地面が薄青く光っている箇所を目指す。
そこは少し開けた場所で、作りからして元は公園だったのだろう。

( ^ω^)「ストップ。一旦ここで様子見るお」

(∪^ω^)「わんわんお!」

先ほども述べた様に、魔方陣付近に罠やモンスターが配置されている恐れもある。
とはいえあまりのんびり構えていて、またレッサーデーモンがどんどん召喚されるのは避けたいので急いだ方が良い。
僕達は周りの様子を伺いつつ、魔方陣に慎重に近付いた。

ξ゚听)ξ「罠は仕掛けられてないみたいね」

( ゚∋゚)" コクッ

678 名前:名も無きAAのようです:2013/01/19(土) 22:26:30 ID:NwSV61F60

ξ゚听)ξ「どうする? ここから一気に突っ込んでみる?」

( ^ω^)「その必要はないお」

僕は一歩前に出て、呪文の詠唱を始める。
わざわざ近付かなくとも、ここから僕の魔法で破壊すれば済む話である。

ξ゚听)ξ「壊せるの?」

( ^ω^)「壊せるお。下に書いてある陣を破壊すればいいお」

ξ゚听)ξ「案外簡単に壊せるのね。それなら何でもっと遠くからやんなかったのよ?」

( ^ω^)「魔法防御結界とか仕掛けられてる可能性もあったんだお」

ある程度近付くことで、罠や防御結界などがない事が確認出来たので魔法がきくだろうと判断したのだ。
それに、遠距離からの魔法だとレッサーデーモンが出て来て防ぐ可能性もあった。

( ^ω^)「ここまで近付けばレッサーデーモンごと倒せる魔法が撃てるお」

ツン達を納得させ、僕は詠唱に集中する。
何も仕掛けられていない事には多少引っかかる部分はあれど、
灰衣の男が時間的にそれほど万全を期して準備出来たとも思えないので、不自然でもない。

679 名前:名も無きAAのようです:2013/01/19(土) 22:27:59 ID:NwSV61F60

( ^ω^)「此の地に宿る風の精霊よ、我が刃となりて全てを切り裂け。ウインド・ブラスト!」

呪文の完成とともに、僕の右腕からいくつもの風の刃が出現し、高速で突き進む。
狙いは魔方陣の中心、地面に向けて放った。

(;^ω^)「!?」

ξ;゚听)ξ「魔方陣が!?」

突如として魔方陣の発光が強まり、魔方陣の上の何もない空間に亀裂が走る。
亀裂は一気に広がり、その奥には漆黒の闇が見えた。

そして何かが飛び出し、僕の放った風の刃にぶつかる。

(;^ω^)「腕……!?」

空間の裂け目から現れた深い青色の腕が、魔法を受け止めた。
割と自信のあった魔法だったので、軽くショックである。

(;^ω^)「けど、あの腕だって無事で済むわけはないお」

ξ゚听)ξ「残念ながら全然平気っぽいわね」

(∪^ω^)「わんおー」

( ゚∋゚)∩ スッ…

680 名前:名も無きAAのようです:2013/01/19(土) 22:29:32 ID:NwSV61F60

落ち込む僕を余所に、ツンとクックルは臨戦態勢を取る。
未だ健在のあの腕をどうにかするには、更に接近するしかなさそうだ。

( ^ω^)「仕方ないお。またレッサーデーモンが湧き出す前にあいつを仕留めるお」

ξ゚听)ξ「ええ」

( ゚∋゚)" コクッ

恐らくあれがこの魔方陣を守るためにデミタスが召喚した守護モンスター、ガーディアンなのだと思う。
だとすれば、魔方陣を壊すためにはあれを先に倒すか、隙を突いて魔方陣を壊すしかない。

( ^ω^)「ウインド・カッター!」

僕は今度は弱めの魔法を牽制として撃った。
きかない事はわかっているが、ツン達が接近する為の陽動の様なものだ。

案の定、魔法は片腕の一薙ぎでかき消される。

(;^ω^)「当たりもしてねえお。あいつ相当強固な魔法防御張ってるおね」

681 名前:名も無きAAのようです:2013/01/19(土) 22:31:35 ID:NwSV61F60

ξ゚听)ξ「なら直接打撃をぶち込むしかないわね。あんたは牽制と防御に集中してて」

クックルは腕に向けてまっすぐ突き進み、ツンは迂回して側面に向かう。
密接してしまえば僕の魔法もきくと思うのだが、あの2人に混じって接近戦をしても邪魔になると思うので、
おとなしくツンの言葉に従うことにした。

( ^ω^)「ウインド・バリア」

ξ゚听)ξ「ありがと。クックル!」

∩( ゚∋゚)⊃ ブンッ

ツンの合図でまずクックルが両盾を振るった。
盾は左右それぞれの腕を狙い、上下から襲い掛かる。

(;^ω^)「受け止めやがった」

それを難なく受け止める両腕。
しかし、その隙にツンが左の腕に最接近し、拳を放つ。

ξ゚听)ξ///⊃「せやあああッ!」

683 名前:名も無きAAのようです:2013/01/19(土) 22:33:37 ID:NwSV61F60

裂帛の気合と共に放たれたツンの一撃が左腕を捉えようとした。
しかし、ツンは一瞬驚いた表情をし、拳を止めて後ろに飛び退る。
その次の瞬間、地面から漆黒の闇が湧き上がり、空へ伸びた。

(;^ω^)「ツン!?」

ξ;゚听)ξ「クッ……」

かわし切れなかったのか、右腕を押さえて表情を歪めるツン。
防御魔法を張っていたから、ダメージは小さい様だ。
こちらに平気だという合図を返す。

( ゚∋゚) スッ

これでは迂闊に近付けないという考えが頭を過ぎったが、クックルは意に介さず腕に接近する。
恐らく先の攻撃魔法の様なものの範囲外から攻撃するつもりなのだろう。
ツンほど肉薄しなくても強力な攻撃が打てるのはクックルの強みだ。

( ゚∋゚)∩ グワッ

ある程度近付いた地点でクックルは足を止め、引き戻した盾を振りかぶりった。
また受け止められる可能性は高いが、クックルはかまわず盾を腕目掛けて投げ付ける。

684 名前:名も無きAAのようです:2013/01/19(土) 22:35:19 ID:NwSV61F60

(;^ω^)「やっぱ受け止めるかお」

∩( ゚∋゚) グッ

あっさりと左腕によって盾は受け止められてしまったが、クックルはそれにかまわずもう1方の盾も投げ付ける。
しかし、今度は最初と違ってもう1方の盾も同じ左腕を狙った様だ。

( ゚∋゚)∩ グワッ

もう1方の盾が届く前に、最初の盾を引き戻し、左腕の体勢を崩そうとするクックル。
しかし、左腕は最初の盾を捨て、次の盾を受け止める。
クックルもそれは計算済みだったのか、再び引き戻した盾を投げ付け、間断なく波状攻撃を仕掛けた。

(;^ω^)「なかなか手強いおね、って、解説役やってる場合じゃないお」

(∪^ω^)「わんわんお!」

その隙に僕は再び魔法の詠唱を始める。
クックルに合わせて攻撃を仕掛ければダメージを与えられるかもしれない。

( ^ω^)「デカいの行くお!」

僕は少し後退して距離を取り、呪文の詠唱を始める。
今度は一点集中ではなく、広範囲に魔法を撃ち、あわよくば魔方陣を壊せればというつもりで魔法を選んだ。

685 名前:名も無きAAのようです:2013/01/19(土) 22:36:38 ID:NwSV61F60

( ^ω^)「天なる空を漂う雷の精霊よ、我が矛となりて全てを貫け」

( ^ω^)「食らえお、サンダー・ストームッ!」

力ある言葉と共に天空から飛来した幾筋もの雷が、両腕とその周辺目掛けて着弾する。
激しい轟音と巻き上がる砂煙が魔方陣を包み込む。

( ^ω^)「これなら……」

ξ゚听)ξ「やったの?」

( ゚∋゚)

先の魔法と周囲の灰の霧の様なものの所為か、両腕の魔力反応はよくわからない。
はっきりと感じ取れないということは、今の一撃で倒せたのかもしれない。

( ^ω^)「魔方陣は壊せなかったみたいだお」

ξ゚听)ξ「あいつさえ倒しちゃえばなんとでもなるでしょ」

(∪^ω^)「わんお!」

686 名前:名も無きAAのようです:2013/01/19(土) 22:38:34 ID:NwSV61F60

( ゚∋゚) ピクッ

ξ゚听)ξ「どうしたの、クックル?」

∩( ゚∋゚)∩ スッ

ツンの問いにクックルは両耳に手を当てる。
何かが聞こえるということか。
僕とツンもそれに倣い、耳を研ぎ澄ませ、周囲の物音に集中した

          グォォォォォオォォォォォ……

(;^ω^)「……何かヤバげな音が聞こえるお」

地の底から響く様な低い獣の唸り声が聞こえる。
それが何の声なのかわからないが、聞こえて来るのはまず間違いなくあの魔方陣の中心からだ。
そこから導き出される答えは、どう考えても最悪なものしか浮かばない。

僕達は再び臨戦態勢を取った。
やがて収まりつつある砂煙の中から、あの深い青色の両腕が姿を現す。

688 名前:名も無きAAのようです:2013/01/19(土) 22:39:54 ID:NwSV61F60

(;^ω^)「ちょっとぐらいダメージはあったのかおね……」

ξ;゚听)ξ「どうかしらね……」

(∪;^ω^)「わんおー」

( ゚∋゚)

追撃を加えるという選択肢もあったが、全くきいていないようなら仕掛けても無駄だろう。
その場合は隙を付いて魔法陣を壊す事に専念する方がいい。
僕達は両腕の動きをじっと見詰めていた。

(;^ω^)「やっぱきいてない……って、あれ?」

煙の中から腕が完全に姿を現したと思ったら、その腕の付け根の方にも青い何かが見える。
それだけでなく、下の方にも腕と同じ色をした何か、恐らく足と思しきものが見えた。

ξ;゚听)ξ「これって……」

(;^ω^)「どうやら全身出て来ちゃったみたいだおね」

          グォォォォォオォォォォォ……

             ┏ ┓
            ミ∬οw)

689 名前:名も無きAAのようです:2013/01/19(土) 22:41:28 ID:NwSV61F60

低い唸り声と共に、レッサーデーモンとは少し造形の違う黒ずんだ青色の毛むくじゃらの顔が姿を現した。
その目は虚ろで、直視し難い鈍い輝きがある。

ξ;゚听)ξ「こいつは?」

(;^ω^)「多分レッサーデーモンの親玉……G(グレーター)デーモンってやつだお」

実際に見た事はないし、過去に書物で見た絵とは少々顔が違う気もするが、
雄山羊の様な特徴的な、悪魔然とした曲がった角からしてそうだと思われる。
当然の如く、レッサーデーモンとは比べ物にならないくらい強いモンスターだ。

ミ∬οVV) グァ

(;゚ω゚)「全員、退避ぃーッ!!!」

無造作に口を開いたGデーモンに夥しい魔力が集束していく。
次の瞬間、左右に散った僕達の間を黒い光が薙いだ。

ξ;゚听)ξ「何なのよ、あの威力は?」

射線上にあった建物が倒壊していく様子に、ツンが色を失った顔でぼやく。
あんなものを食らったら一発で終わりだし、僕の防御魔法程度で防ぎきれる自信はない。

691 名前:名も無きAAのようです:2013/01/19(土) 22:42:45 ID:NwSV61F60

(;^ω^)「けど……!」

三( ゚∋゚) ダッ

いくらGデーモンとて、早々強力な魔法を連発出来る物ではない。
そう判断して攻撃に転じようとした僕より、更にいち早くクックルが攻撃を仕掛ける。
遠距離からの盾の攻撃では通じないと判断したのか、クックルはGデーモンに向かって走った。

( ^ω^)「クックル、狙いは……」

( ゚∋゚)" コクッ

僕の声に走りながら頷くクックル。
狙いはGデーモンではなく魔方陣、クックルもその事は理解していた様だ。

見た所、Gデーモンは全身を現してはいるが、まだ一部は魔方陣の上にある空間の裂け目に繋がっている。
こちらに近付いて来ない事からも、Gデーモンは魔方陣と何らかの依存関係にあると思う。
故に、魔法陣を壊してしまえば何とかなる可能性が高い。

まあ、最悪の場合は魔法陣だけ壊して逃げて、後は西の賢者に任せるという手もある。

693 名前:名も無きAAのようです:2013/01/19(土) 22:44:10 ID:NwSV61F60

( ^ω^)「それじゃ、僕も行くかお」

クックルの後を追い、魔方陣に近付く。
既にクックルは攻撃態勢に入っていたが、Gデーモンがその腕を一薙ぎすると、
そこから大量のレーサーデーモンが湧き出し、クックルに迫る。

ξ゚听)ξ「させない!」

( ^ω^)「ロック・スロー!」

レッサーデーモンの群れにツンの飛び蹴りと僕が飛ばした瓦礫が突き刺さる。
その隙にクックルがGデーモン目掛けて飛び掛る。

( ゚∋゚)⊃ ブンッ!

ミ∬οw)∩ ガシッ

クックルの渾身一撃をいとも容易く受け止めるGデーモン。
しかしクックルの狙いはGデーモン本体ではない。
クックルは受け止められた手とは逆の手で、盾を魔方陣目掛けて投げ付けようとした。

694 名前:名も無きAAのようです:2013/01/19(土) 22:45:51 ID:NwSV61F60

ミ∬οw)⊃彡 バッ!

(;゚∋゚)∩ !?

Gデーモンは咄嗟に掴んでいたクックルを上空に放り投げ、クックルの行動を阻害する。
恐らくGデーモンは、魔法陣を守れという命令を召喚者に受けているのだろう。

上級とまでは行かずとも、Gデーモンは中級悪魔ぐらいの強さはある。
知性はかなり高いはずだ。

ξ゚听)ξ「それなら!」

蹴り飛ばしたレッサーデーモンを踏み台に軌道を変え、上空から一気にGデーモンに迫るツン。

ミ∬οVV) グァ

しかし、Gデーモンは再びあの強力な黒い光線を放とうとその口を広げた。

(;^ω^)「させるかお! サンダーッ──!」

走りながら唱えていた魔法が完成し、僕の右腕に雷の力が宿る。
その魔力の大きさに反応したのか、Gデーモンの口が僕に向けられ、黒い輝きが膨れ上がった。
僕は魔法を解除し、横っ飛びにその場を転がって離れた。

695 名前:名も無きAAのようです:2013/01/19(土) 22:47:49 ID:NwSV61F60

(;゚ω゚)「うぉぉぉぉッ!?」

(∪;゚ω゚)「わんわんお!?」

何かが溶ける様な短い音と、少し遅れて焦げ臭い匂いが鼻を突く。
辛くも回避に成功したが、ツンの上空からの蹴りもGデーモンの腕に受け止められた様だ。

ξ;゚听)ξ「クッ……モンスターのくせに的確に防いで来るわね」

(;^ω^)「悪魔をただのモンスターと考えない方がいいお。それにこいつは悪魔の中でも中級クラスだお」

僕達は再び距離を空け、合流する。
Gデーモンは追撃は仕掛けて来ず、周囲にレッサーデーモンを召喚し、守りを固めている様だ。
Gデーモン単体ならまだしも、レッサーデーモンまでいるとなると明らかにこちらの手が足りないだろう。

(;^ω^)「一度態勢立て直した方がいいかもしれんお」

ξ;゚听)ξ「逃げるっての?」

(;^ω^)「戦略的撤退だお」

696 名前:名も無きAAのようです:2013/01/19(土) 22:50:16 ID:NwSV61F60

とはいえ、簡単に逃がして貰えるかは難しい所だ。
あの黒い光線の射程は半端ないし、大量のレッサーデーモンも追って来るだろう。
レッサーデーモンと交戦中に視界の外からあの光線を撃たれるとかなり危険である。

守りに重きを置いているようにも見えるし、追って来ない事に望みを託して逃げるのもありかもしれないが、
リスクの高い博打だと思う。

だからといってこの人数で仕掛けるのも無謀な試みだ。
Gデーモンは単に攻撃が強力なだけでなく、的確に対応して来ていた。

唯一勝機を見出すとしたら、強力な攻撃を連発させ、魔力切れを狙うぐらいだが、現状ではそれも難しいかもしれない。
Gデーモンは現在、まだ身体の一部別の空間に繋げている。
恐らくはその先が魔界で、魔力の供給を図っている物と推測される。

( ゚∋゚)∩ スッ…

ξ;゚听)ξ「いや、クックルだけ残して逃げられるわけないでしょ?」

( ゚∋゚)⊃ サッ…

ξ;゚听)ξ「モララーさんを呼びに行くとしても、結構時間かかるわよ?」

(;^ω^)(てか、短時間でクックルのこと理解し過ぎだお……)

697 名前:名も無きAAのようです:2013/01/19(土) 22:51:09 ID:NwSV61F60

恐ろしい順応力を見せるツンに驚きつつも、僕は次の一手を模索する。
実際にはまだ全く効果的な手が打てていない状況なので、次も何もあったものじゃないが。

( ^ω^)「取り敢えず皆で逃げるお。殿は僕が……って、もう来やがったお」

気付けばレッサーデーモンの編隊がこちらに向かって飛び立った所だった。
更にレッサーデーモンは湧き出していて、逃げるのも攻めるのもますます厳しくなっていく。

(;^ω^)「仕方ないお。まずはレッサーデーモンを殲滅させるお」

(;^ω^)「けど、Gデーモンの動きからは絶対に目を離すなお」

これまでの様にクックルを盾に足を止めて迎撃するのはGデーモンの存在がある以上、
難しいので僕らは散開し、レッサーデーモンに向かう。


(‡`Д´)Ψ キィッ (‡`Д´)Ψ キィッ (‡`Д´)Ψ キィッ (‡`Д´)Ψ キィッ


(;^ω^)「ええい、また大量に来やがったおね」

詠唱していた魔法を解き放ち、近づいて来ていたレッサーデーモンを撃ち落す。
ツンもクックルも同様にレッサーデーモンを倒しているが、湧き出すスピードが尋常じゃなくなっている。
倒しても倒しても次々と襲い来るレッサーデーモンに、僕らは完全に足止めされていた。

699 名前:名も無きAAのようです:2013/01/19(土) 22:52:27 ID:NwSV61F60

(;^ω^)「専守防衛に徹する気かおね?」

ξ;゚听)ξ「あいつが戦列に加わってくるよりはマシだけど、きりがないわね」

(∪;^ω^)「わんお」

逃げるにしろ、戦うにしろ、何らかの一手が欲しい所だ。
向こうの召喚能力がどこまで続くかはわからないが、こちらに限界があるのは確定なのだから。

(;^ω^)「仕方ないお、ここはまた目くらましで……って、また大量に来やがったお」

策を考える時間も与えてくれないほど、間断なく襲い掛かって来るレッサーデーモン。
この様子だとタイミングを合わせて全員で逃げるのは厳しいかもしれない。
2人を先に逃がし、最後に僕が目くらましを仕掛けて逃げるぐらいしか今の所は手が思い浮かばずにいた。

ξ;゚听)ξ「ブーン、上!」


(‡`Д´)Ψ キュル キュル (‡`Д´)Ψ キュル キュル (‡`Д´)Ψ キュル キュル (‡`Д´)Ψ キュル キュル


(;^ω^)「チッ、いつの間にこんなとこまで!?」

700 名前:名も無きAAのようです:2013/01/19(土) 22:54:34 ID:NwSV61F60

逃げる手立てを考える事に気を取られ過ぎて、レッサーデーモンの群れにかなり接近を許してしまっていた。
しかもそいつらは既に魔法の詠唱に入っている。

(;^ω^)「ここは一旦防御魔法を……」

「イグニッション!」

(^ω^;)「え?」

突如として轟いた大音声に、敵の前だというのに思わず僕は振り返ってしまっていた。
しかしながら、僕はそこで見た光景に自然と笑みが浮かび、防御魔法を中断して別の魔法の詠唱を始める。
  _
(#゚∀゚)「でえええりゃぁぁぁぁッ!」

(‡x/ /x)Ψ ギュォアー

ジョルジュさんの斧の一撃で、ある者はその身を両断され、ある者は炎に巻かれ墜落していく。
更に鉄球や石か何かが背後から飛んで来て、レッサーデーモン達を次々と撃ち落していった。

( ゚д゚)「わんおちゃん、それに皆無事か?」

(∪^ω^)「わんわんお!」
  _、_
( ,_ノ` )「どうやら無事の様で何よりだが、またややこしい事になってんな」

( ゚∋゚)

701 名前:名も無きAAのようです:2013/01/19(土) 22:56:33 ID:NwSV61F60

( ^ω^)「ナイスタイミング! けど、のんびり話してる暇は無しですお。ヒッキーさん!」

(;-_-)「え? あ、はい?」

僕は唱えていた魔法をヒッキーさんに放ち、次いで自分にも唱えてヒッキーさんの手を取る。
そのまま僕達は一直線に魔方陣に向けて走り出した。

(;-_-)「ちょ!? 速ッ!? え、何?」

( ^ω^)「ヒッキーさん、防御魔法よろしくですお!」

(;-_-)「急に……って、何です、あれ? 禍々しいのが……」

ミ∬οVV) グァ

(;^ω^)「回避ーッ!」

(;-_-)「うわああああッ!?」

魔法で速度を上げた僕達は、Gデーモンから放たれる黒い光線をかわしながら更に近付く。
既に僕の意図を理解してくれているのか、ツン達も僕達を追い掛けて雑魚を蹴散らして進んでいる。

702 名前:名も無きAAのようです:2013/01/19(土) 22:58:33 ID:NwSV61F60

( ^ω^)「ここだお!」

(;゚_゚)「いっ!?」

ミ∬οVV)∩ ガァァァッ!

僕達2人はGデーモンに最接近した場所で足を止める。
当然、Gデーモンは僕らを排除しようとその腕を振り上げ、攻撃態勢に入っている。

( ^ω^)「ヒッキーさん、あれ、止めといてくださいお」

(;゚_゚)「ええええッ!? ちょ、急にそんな無茶な──ホーリー・サークル!」

ミ∬οVV) グオッ!?

混乱しつつもヒッキーさんはスペシャルを唱える。
上から迫るGデーモンの腕に加え、下からはツンを襲った漆黒の闇が湧き出す。

(;-_-)「下からも!? けれど!」

下からの攻撃はヒッキーさんのスペシャルが完全にシャットアウトしてくれた。
しかし、上からのGデーモンの腕を完全には防ぐ事が出来ず、その軌道を逸らすのが精一杯だった。

703 名前:名も無きAAのようです:2013/01/19(土) 22:59:45 ID:NwSV61F60

(;-_-)「クッ!? もう一撃は耐えられませんよ、ブーン君!」

( ^ω^)「十分ですお! サンダァァァァ・ブレェェェェイクッ!」

僕は雷を宿した右拳を地面に突き立てる。
激しい爆音の中、何かが割れるような乾いた音が耳に届いた気がした。

ミ∬οVV) グルォォォォォ……

魔法陣のあちこちから黒い光が立ち上がり、魔法陣が崩れていく。
Gデーモンも苦しげな悲鳴をあげながら、空間の亀裂に吸い込まれていった。
どうやら僕の魔法は魔法陣を砕く事が出来たようだ。

( ^ω^)「ふぅ……、何とかなったみたいだおね」

(;-_-)「色々と言いたい事があるのですが、取り敢えずもう少し説明してからにして欲しかったですね……」

一際疲れた顔で愚痴をこぼすヒッキーさんに、僕は謝罪をする。
しかし一見、無茶に見えたかもしれない作戦だったが、僕なりには勝算あっての事である。
ヒッキーさんのスペシャルの性質を考えれば、敢えて説明しない方が効果は高まると計算したのだ。

704 名前:名も無きAAのようです:2013/01/19(土) 23:02:09 ID:NwSV61F60

(;-_-)「それはそうかもしれませんが、防ぎ切れるかは結構ギリギリの所でしたよ」

( ^ω^)「ヒッキーさんの神聖魔法で駄目ならもう打つ手なしですから、そこはもう賭けでしたお」

Gデーモンにクックルの盾を握り潰すような腕力があったら流石に賭けにならなかったが、
どちらかといえば魔力による攻撃の方が強い様だったので、何とかなると判断した。
結果的にその判断は正しかった様である。

(‘_L’)「さて、ブーン殿、再会を祝したいのはやまやまですが……」

( ^ω^)「わかってますお。手早く情報交換と行きましょうお」

残りのレッサーデーモンを殲滅させたフィレンクトさんが僕に声を掛けて来る。
急いでいるのはお互い様なようなので、僕はモララーさんから聞いた話や現在の僕らの状況を説明する。
フィレンクトさんからマルタスニム、そしてハインさんの事を聞いた。
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「なるほどな。召喚士か」

( ゚д゚)「確かに目的が今一つ絞り込めんが、碌でもない事は間違いないだろうな」

ξ:--)ξ「そっちの方が状況は深刻みたいね。ハインのやつ、無茶してなきゃいいけど」

706 名前:名も無きAAのようです:2013/01/19(土) 23:03:30 ID:NwSV61F60
  _
( ゚∀゚)「つーわけで、俺らは先を急ぐが……」

( ^ω^)「僕らも同行するお。ハインさんの事は心配だし、僕らだけで魔法陣の破壊は厳しいみたいだお」

( ゚∋゚)" コクッ

魔法陣の破壊も急いで対処するべき事ではあるが、それよりもまずハインさんを追うのを優先すべきだと思う。
敵の戦力も考えると、僕ら3人だけでは厳しい事もわかったので、共に行動するしか手はない。

ヒッキーさんと僕だけで、先の手段を用いて魔法陣破壊に向かうという手もなくはないが、
何の援護もなしにあれをやるのは少々リスキーだろう。
ガーディアンがGデーモンだけとは限らないのだし。

ξ゚听)ξ「そうね。戦力を集中して、各個撃破していく方が結果的に時間はかからないでしょうね」

( ^ω^)「今回はマルタスニムも前回みたいな物量作戦は取れないだろうから、何とかなると思うお」
  _、_
( ,_ノ` )「こいつもいるしな」

( ゚∋゚)

708 名前:名も無きAAのようです:2013/01/19(土) 23:04:32 ID:NwSV61F60

(‘_L’)「そうと決まれば先を急ぎましょう」

( ^ω^)「はいですお」

(∪^ω^)「わんわんお!」

僕達はハインさんが向かったと思しき方向に走り出す。
周囲にレッサーデーモンの気配はないので、これまでよりは楽に進めそうだ。

ξ゚听)ξ「魔法陣があの1個だけならいいんだけどね」

( ^ω^)「もしまだあったにしても、多分もっと離れた場所にあると思うお」

デミタスの目的がはっきりしたわけではないが、人々に恐怖を与えるにしても、自分の身を守るにしても、
広範囲に配置した方が効率はいいはずだ。

( ^ω^)「てなわけで、他のとこからレッサーデーモンが来る前に片付けたいとこだお」

( ゚д゚)「そうだな。早くハインを探さねばならん」

ξ゚听)ξ「でも、ハインを見付けるより先にデミタスと遭遇したらどうするの?」

( ^ω^)「それは……」

デミタスとは戦うなとモララーさんには言われているが、
フィレンクトさん達と合流した今なら戦っても問題はないと思う。

709 名前:名も無きAAのようです:2013/01/19(土) 23:06:42 ID:NwSV61F60

仮に僕が戦わなくてもフィレンクトさん達は戦うわけだから、この状況で加勢しない手はない。
ただ、それでハインさんの事を後に回していいかは難しい所だ。
  _
( ゚∀゚)「その時は先にデミタスを叩く。勝手をした馬鹿にかまけて目的を見失うわけには行かねえさ」

そう答えるジョルジュさんに、ミルナさんは無言で頷いた。
僕は2人の気持ちはわかっていながらも、それに異を唱え様としたが、僕より早くフィレンクトさんが口を挟む。

(‘_L’)「仲間は必ず助けます。だから、急ぎますよ」
  _
( ゚∀゚)「……すまねえ」

フィレンクトさんもジョルジュさん達も、お互いしばらく同じ釜の飯を食べて来た仲間だ。
フィレンクトさんはジョルジュさん達がハインさんの事を大切に思っているのはよくわかっているのだろう。

皆まで言わずとも通じ合える。
そんな空気が3人の間にはあった。

( ^ω^)「そんじゃ、さっさとハインさんを見つけるお」

(∪^ω^)「わんわんお!」
  _
( ゚∀゚)「ああ、行こう」

僕達は未だ灰に包まれて視界の悪い街中をひたすら走り続けた。

710 名前:名も無きAAのようです:2013/01/19(土) 23:08:27 ID:NwSV61F60

 〜 メシューマの町 中央東部  <ハイン> 〜


( ^^ω)「たった1人で追って来るとは、私もなめられたものホマね」

从 ∀从「うるせえ、死ね」

こいつの声を聞いていると、身体の奥底から嫌悪感が滲み出す。
俺自身はこいつの事は覚えていない。
幸か不幸か、忌まわしかったはずの日々の事は、綺麗さっぱり記憶になかった。

しかし、どうやら俺の身体はこいつの事をよく覚えているらしい。
押さえようもない怒りが俺の頭を埋め尽くす。

( ^^ω)「野蛮人め。まともに会話も出来ない馬鹿に付き合っている暇は無いホマ。クルゥ!」

川 ゚ 々゚)「ヴァイ」

マルタスニム呼び掛けと共に、クルゥと呼ばれた女がどこからともなく降って来る。
俺はそいつには目もくれず、マルタスニムに向かって一気に踏み込む。

711 名前:名も無きAAのようです:2013/01/19(土) 23:10:49 ID:NwSV61F60

(;^^ω)「クルゥ! 何してるホマ! そいつを止めるホマ!」

从 ∀从「おせえよ」

マルタスニムの首を目掛けて得物を無造作に薙ぎ払う。
鈍い音と主に、何かが宙を舞った。

(;^^ω)「クッ、何て事しやがるホマ!」

俺の得物を防ぎ、真っ二つになった短杖を、マルタスニムは距離を取りながら忌々しげに俺に投げ付けて来た。
俺はそれをもう片方の得物で切り払う。

(;^^ω)「クルゥ!」

川 ゚ 々゚)「ヴァー」

ようやく俺に追い付いたクルゥは、何故か俺に斬り掛かる事はせず、俺の目の前で足を止めた。
そして首を傾げ、物珍しげに俺の顔を覗き込む。

(;^^ω)「何をやってるホマ! そいつを殺せホマ!」

川 ゚ 々゚)「ヴァ?」

从 ∀从「どいてろ」

712 名前:名も無きAAのようです:2013/01/19(土) 23:12:20 ID:NwSV61F60

川 ゚ 々゚)「ヴァー」

俺はクルゥを無造作に蹴り飛ばし、マルタスニムに肉薄する。
マルタスニムは何事かを喚きながら必死に俺から離れようとするが、俺の動きの方が早かった。

从 ∀从「死ねよ、クソ野郎」

身体中を支配する怒りの感情に突き動かされるまま、俺は得物を振るう。
大振りで狙いも何もない、ただ本能のままに放つ斬撃。

(;゚゚ω)「き、貴様、何故この私をそうまでして殺そうと──ホマーッ!?」

マルタスニムの言葉に全く耳を貸すことなく、俺は得物を振り切った。
真っ赤な鮮血が舞い、俺の顔にへばり付く。

(;゚゚ω)「グギギギ……き、貴様、よくも……」

斬撃はマルタスニムの肩をかすめるに止まり、死に至らしめるには足らなかった。
それがまた俺の怒りを掻き立て、再び力任せに得物を振るう。

从 ∀从「死ね……クソが、さっさと死ねよ!」

(;゚゚ω)「な、何だホマ、こいつ? お前は何者……」

713 名前:名も無きAAのようです:2013/01/19(土) 23:14:39 ID:NwSV61F60

力任せに振るい続ける斬撃を、うろたえながらもかわし続けるマルタスニム。
確実に仕留めるなら、そこまでの力はいらない。

それはわかっている。
しかし、俺は俺の中で暴れ狂う怒りの衝動を押さえ切れない。
視界はぼやけ、段々と意識が遠退いていく。

俺はただ本能の赴くまま、怒りに任せて得物を振るい続けた。

ノ从∀ 从ト「死ね……死ね……死ね……」

(;゚゚ω)「クッ、この、呪文を唱える隙が……クルゥ! 何をしてるホマ、こいつを早く殺せホマ!」

川 ゚ 々゚)「グオァァァァッ」

ノ从∀ 从ト「ルォォォォォォォォォォォォ……」

向かって来る短い刃に力任せに斬り付ける。

何だこいつ……?

こいつも俺と同じ被害者だ。

714 名前:名も無きAAのようです:2013/01/19(土) 23:15:38 ID:NwSV61F60

邪魔だ……。

止めろ、こいつは殺すな。

死ね。

止めろ。

ノ从∀ 从ト「ルォァッ!」

川 ゚ 々゚)「ガッ!?」

チッ、殺し損ねた。

止めろ……こいつは……。

次は殺す。

止め……こいつ……俺と……

ノ从∀ 从ト「ルォォォォォォォォォォォォ……」

(;^^ω)「こ、この感じ? 精霊憑依の……!? まさか、お前は!?」

715 名前:名も無きAAのようです:2013/01/19(土) 23:16:21 ID:NwSV61F60

川 ゚ 々゚)「ガー」

(;^^ω)「退け、クルゥ! そいつは──」

ノ从д゚从ト「ルォァッ!」

赤が広がる。
先ほどよりも高く、鮮やかに。

その手に感覚はない。
得物を握る感覚も、生命を刈り取った感覚も。

どさりと、何かが倒れる音がした。

真っ赤に染まった視界は、それが何なのかを認識する事はない。

その音を最後に、わずかに残っていた俺の意識は闇に沈むように掻き消えていった。

716 名前:名も無きAAのようです:2013/01/19(土) 23:17:42 ID:NwSV61F60

 〜 メシューマの町 南東部  <モララー> 〜


( ・∀・)「全く……。面倒をかけさせてくれる」

ようやく開いた結界の穴を維持しながら、僕は1人呟く。
引き受けた時点で面倒な事態になるであろう事は予想はついていたが、
予想以上に面倒な事態になっているとは忌々しい話である。

ヽζ(゚ー゚*ζ「は〜い、順番にここから出てくださいね〜。あ、押さないでくださいね〜。順番にですよ〜」

そんな事態でもいつもと変わらぬ調子で人々を誘導するデレ。
正直、デレのそんな態度は緊張感を削ぐ事も多々あるのだが、あのマイペースさはデレの強みでもある。

( ・∀・)「デレ、あとどのくらいかかりそうかい?」

ζ(゚ー゚*ζ「そうですねー、あと1、2時間はかかるんじゃないっスか?」

( ・∀・)「そんなにかね? もう少し早まらないものかな?」

ζ(゚ー゚*ζ「でも、あんまり急がせると危ないですしねー」

718 名前:名も無きAAのようです:2013/01/19(土) 23:19:31 ID:NwSV61F60

ζ(゚、゚*ζ「先生がもう少し大きな穴を開けてくれると……」

( -∀-)「わかった、皆まで言わなくていい」

僕はデレから顔を背け、穴の維持に集中する。
デレは簡単に言ってくれるが、この規模の、
しかも恐らく例の朱玉で強化されていると思しき結界に穴を開けるのは簡単ではない。

しかし、そんな事をぼやこうものなら、デレは恐らくあの馬鹿を引き合いに出して来るだろう。
入る時はもっと簡単そうにやってたとか。

あれはあの馬鹿が結界専門なだけで、決して僕があの馬鹿に劣っているわけではない。
事実、それ以外の分野ではほぼ全てにおいて勝っているのだから。

( ・∀・)「それにしても、随分と長い滞在になってしまったな」

デレを連れて帰るだけのつもりで来たニューソク大陸に、思いの他長逗留する羽目になってしまった。
無論、そうするに至った理由はあるわけだが、いい加減ラウンジに戻らないとよろしくない。
僕もデレも、やる事は山積みだというのに。

( -∀-)「それもこれもあの馬鹿の手際が悪い所為だな」

719 名前:名も無きAAのようです:2013/01/19(土) 23:20:12 ID:NwSV61F60

曖昧な説明、真偽も定かではない、いくつかの懸念。
それに基づいた少々雑な依頼ではあった。

しかしそれでも僕が引き受けたのにはいくつか理由がある。
中でも一番の大きな理由は……

ζ(゚ー゚*ζ「しかし先生、東の賢者さんとは随分仲良しさんでしたねえ」

ζ(^ー^*ζ「あんなに楽しそうな先生は初めて見ましたぜー」
  _,
( ・∀・)「……デレ、君はやはり人を見る目が致命的に欠けてるようだね」
  _,
( ・∀・)「あれのどこが仲良しに見えるのかね? 大体、西、東と並び称されているだけでも不快だというのに」

ζ(゚、゚*ζ「そうですか? でも、何だか昔話に花が咲いてるみたいでしたし……」
  _,
( ・∀・)「あれはあいつが昔と同じように、手際が悪い事を指摘していただけだ」

ζ(゚、゚*ζ「けど、最終的に引き受けちゃってるし……」

( ・∀・)「勘違いして貰っては困るね。別に、あいつに頼まれたから引き受けたんじゃないんだよ」

720 名前:名も無きAAのようです:2013/01/19(土) 23:22:07 ID:NwSV61F60

( ・∀・)「あいつが、今回の件は師のたっての願いだというから引き受けただけだ」

( -∀-)「あいつ自身の頼みなら即断るよ。引き受けるはずがない」

ζ(゚ー゚*ζ「はいはい、そういう事にしておきますね」

( ・∀・)「デレ……君はやはり人を見る目が……」

ヽζ(゚ー゚*ζ「あ、頭気をつけてくださいね。はい、次の人〜。こっちですよ〜」

( ・∀・)「デレ……全く……」

実際、僕が引き受けたのは今回の件が師が亡くなる直前に託した願いだという事だったからだ。
こんな曖昧な説明の依頼でも引き受けたのは、その一点に因る。
断じてあの馬鹿の頼みだから引き受けたという事はない。

( ・∀・)(しかし、どこまで手を出すべきかな……)

デレの言い分を肯定する様で今一つ納得いかないが、
僕とあの馬鹿で今回の大本の原因であるデミタスを叩いた方が、事態を収束させるには手っ取り早い。
だが、あの馬鹿はそれは望んでいないらしい。

あくまでこの件を片付けるのは彼らにやらせたい様だ。

721 名前:名も無きAAのようです:2013/01/19(土) 23:23:40 ID:NwSV61F60

( ・∀・)(大っぴらに動くなとも注文を付けて来たし、誰を警戒しているのか聞きはしたが……)

場合によってはこの後、そっちの方も探るべきであろう。
あの馬鹿の言い分を全て鵜呑みにする必要はないのだ。

( ・∀・)(ただ、別にあの馬鹿を全く信用していないわけでもないんだがね)

昔からくだらない嘘はよく吐く男だったが、少なくとも師の名を使ってまで嘘を吐く様な男ではない。
気に入らないが、一応師に認められた弟弟子だ。
そこまで愚かな男ではないのはわかっている。

( ・∀・)「何にせよ、少々この地は荒れそうだな……」

僕は視線を街の中央に向ける。
視界を覆う灰の先で、今何が起こっているのか。

( -∀-)「あとできっちり全部聞かせてもらうからな、ドクオ?」

僕は見通せない先を見通すべく目を細め、空を仰いだ。



     第四十九話 魔法陣を破壊せよ 終


戻る 次へ

inserted by FC2 system