( ^ω^)は魔法道具屋さんのようです
- 753 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 22:05:17 ID:XcjBejlc0
〜 メシューマの町 中央付近 〜
( ^ω^)「案の定だお」
(∪^ω^)「わんわんおー」
ξ゚听)ξ「まだ他に魔法陣が残っているって事かしらね」
(‡`Д´)Ψ キィキィ
_、_
( ,_ノ` )「デミタス本人が召喚している可能性もあるが……」
(‘_L’)「どちらにせよ、立ち塞がる者は全て排除して進むしかありません」
第五十話 灰衣
- 754 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 22:07:03 ID:XcjBejlc0
( ^ω^)「そうなりますおね」
僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。
未だメシューマの街中に閉じ込められてしまっている僕達だが、無事ジョルジュさん達との合流を果たし、
戦力的には整って、希望の光は見えて来た。
あとははぐれてしまったハインさんを探し、今回の騒ぎの原因である灰衣の男、デミタスを倒せば一件落着である。
( ^ω^)(まあ、そう簡単にいくかどうかは怪しいとこだけど)
現在の所、ジョルジュさん達が予測したハインさんが向かったと思われる方向に進んでいるが、未だ追い付けずにいた。
所々にレッサーデーモンの死体があることからも、ここを誰かが通ったのは間違いないはずだが、
それがハインさんかどうかは不明である。
ξ゚听)ξ「全く、ハインの馬鹿はどこまで行ったのよ」
_
( ゚∀゚)「見当たらねえな……。もっと先に行ったのか?」
( ゚д゚)「しかし、このまま進めば街の中央、例の物見塔の真下辺りに出るな」
- 755 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 22:09:08 ID:XcjBejlc0
(;-_-)「そこまで行ってしまうと、灰衣の男がいるかもしれませんね」
(‘_L’)「その可能性は高いですが……」
_、_
( ,_ノ` )「奴の目的がはっきりしていないからな。動き回っている可能性もある」
( ゚∋゚)" コクッ
( ^ω^)「五分五分ってとこですかおね。何にせよ、早いとこハインさんを探しますお」
(∪^ω^)「わんわんお!」
街の中央に近付くにつれ、灰色の霧の様なものは更に濃くなっていく。
視界が遮られるのに加え、これ自体が通常の大気よりも多くの魔力を含有しているらしく、
遠方の魔力を察し辛くなってしまう。
慎重に進まないと、奇襲されて一網打尽という事も有り得る。
普段は賑やかなはずのメシューマの街は、今は死んだ様に静かで、自分たちの足音とレッサーデーモンの羽音、
それに時折吹く風の音ぐらいしか聞こえない。
人の気配はなく、巻き込まれて逃げ遅れた人達ともここまで全く遭遇出来なかった。
- 758 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 22:11:13 ID:XcjBejlc0
ξ゚听)ξ「何か感じる?」
( ^ω^)「何かはいると思うお。所々、魔力反応があるけど、大体はレッサーデーモンだと思うお」
僕は答え終わると同時に左前方の上空に攻撃魔法を放つ。
魔法は近付いて来ていたレッサーデーモンを貫き、撃ち落した。
( ^ω^)「レッサーデーモンぐらいの魔力反応だと、かなり近付かれないとわからないぐらいだお」
(-_-)「ですね。右手から来るようです」
( ゚д゚)「了解」
右方から近付いて来ていた数匹のレッサーデーモンを、ミルナさんとジョルジュさんが瞬く間に打ち倒す。
やはり魔法陣はもう何個かあると考えた方がよさそうだ。
_
( ゚∀゚)「この程度なら問題ないが、物量作戦を取られると面倒だな」
( ゚д゚)「そうだな。出来ればその前に……」
( ゚∋゚)⊃ バッ
- 760 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 22:13:45 ID:XcjBejlc0
突如としてクックルが立ち止まり、両手を広げて全員を制止する。
何事かとクックルの方を見ると、クックルはその耳に両手を当てていた。
( ^ω^)「何か聞こえるのかお?」
(∪^ω^)「わんおー?」
∩( ゚∋゚)∩
頷くクックルに僕らも倣い、耳に神経を集中した。
わずかに聞こえるのは風の音。
それ以外は何も聞こえない。
∩ξ゚听)ξ∩「何も聞こえないわね……」
∩( ^ω^)∩「だおね。クック……」
『………………ま………………だ……』
∩( ^ω^)∩「!?」
- 761 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 22:16:17 ID:XcjBejlc0
∩ξ゚听)ξ∩「今何か……」
∩( ^ω^)∩「うん、聞こえたお。かすかにだけど」
∩(∪^ω^)∩「わんお」
どうやら僕らだけでなく、ジョルジュさん達にも聞こえたらしい。
かすれた様な低い音だったが、恐らくあれは人の声だ。
∩( ゚д゚)∩「だが、ハインではないようだな」
_
∩( ゚∀゚)∩「男の声か? わからんが……」
∩(‘_L’)∩「行くしかないでしょうね」
僕らは頷き合い、声がしたと思われる方向に向かう。
幸いというべきか、声がしたのは進行方向、つまりは街の中央付近からだ。
『昔話を…………か……私は…………』
進むにつれ、声は段々とはっきり聞き取れるようになって来る。
やはりハインさんではないようだが、聞こえて来る声は1人分だけである
- 762 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 22:18:13 ID:XcjBejlc0
( ^ω^)「一体誰が誰と会話してんだおね?」
ξ゚听)ξ「独り言……にしてはデカいわよね」
だが、どうも聞いているとそこに誰か相手がいるという風ではなさそうだ。
これまでの自分がして来た事を独白しているといった感じだ。
『知識を求めるには…………人の身には限界が……』
( ^ω^)
『ある賢者の…………結論は同じく、人には……』
ξ゚听)ξ
『研究の末に行き着いた…………より優れたものからの……』
(^ω^∪)ヾ
『その先で手に入れた叡智、そして……』
- 764 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 22:19:32 ID:XcjBejlc0
(´・_ゝ【+ 】『力……』
不意に僕らは灰の霧の薄い、開けた場所に躍り出た。
はっきりと見える視界の先に、1人の男が立ち尽くしている。
( ^ω^)「灰衣の男……デミタス=ヘルピングヒル……!」
(´・_ゝ【+ 】「……」
僕らの出現に動じる素振りも見せず、視線をわずかに虚空に向けたまま微動だにしないデミタス。
一見するとどこにでもいそうなただの人という外見だったが、
今はその身の半分が四角い灰色の棺桶のような物の中に収められており、かなり異様な姿で、
胸には赤い宝石の様な物を提げている。
(‘_L’)「デミタス=ヘルピングヒル。貴方をニューソク騎士団襲撃の犯人と見なし捕縛します」
デミタスの姿に怯むことなく、フィレンクトさんが前に進み出る。
正直な所、交渉が通じそうな状況だとは思えない様に見える。
フィレンクトさんもその事は理解した上での行動なのだろう。
どちらかといえば、探りを入れているといった風だ。
- 765 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 22:21:33 ID:XcjBejlc0
(´・_ゝ【+ 】「……」
(‘_L’)「大人しく縄につくならばよし。抵抗するならば……」
(´・_ゝ【+ 】「……法の名の下にですか」
先の独白の様子からはまともに受け答え出来ないのではと思っていたが、
意外にもデミタスから落ち着いた声色のまともな答えが返って来る。
(‘_L’)「残念ながら今の私には、法の下に捕縛する権利も裁く権利もありません」
(‘_L’)「ですが貴方が抵抗しないならば、正しき法の下で裁きを受けさせる事をお約束します」
(´・_ゝ【+ 】「……」
今度は無言で応じるデミタス。
フィレンクトさんも無言でデミタスからの返答を待っている。
しかし、先ほどからジョルジュさんが苛立ち混じりの視線をフィレンクトさんに向けていた。
恐らく、何をまどろっこしい事をやってるんだとでも言いたいのだろう。
僕も未だこの場が交渉で収まるとは思っていないので、警戒は怠らない様にしている。
- 766 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 22:23:25 ID:XcjBejlc0
(´・_ゝ【+ 】「……法という物は素晴らしい物ですね」
(´・_ゝ【+ 】「人間が知的生命体である事を端的に示す良き例です」
_
(#゚∀゚)「その法を破ってふざけた真似してるのはどこのどいつだよ?」
平然と答えるデミタスに、ジョルジュさんが声を荒げる。
しかし、デミタスはそれを意に介す事もなく、平然と言葉を続けた。
(´・_ゝ【+ 】「知恵がなければ人間は動物と大差がない。むしろ、力に劣る分、動物より下でしょう」
(‘_L’)「生憎、貴方のご高説を聞いている時間は我々にはないのですよ」
(‘_L’)「このあと人探しもしなければならないので」
そう言いながら、フィレンクトさんはミルナさんに目配せをした。
このまま話していても埒が開かないと踏んだのだろう。
ミルナさんは無言で一歩前に踏み出す。
ジョルジュさんもそれに呼応するように前に出た。
更に、気付けばシブサワさんの姿が見えない。
どうやら既に背後に回り込んでいるらしい。
流石というべきか、抜け目のない人だ。
- 767 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 22:24:55 ID:XcjBejlc0
(‘_L’)「大人しく縄についてもらいますよ」
フィレンクトさんが左手を前に突き出す。
そこから数発の石が飛び出すのが見えた。
それと同時にミルナさんも鉄球を飛ばし、ジョルジュさんも駆け出した。
デミタスの背後にシブサワさんの姿も見える。
僕とツン、そしてクックルはこの場に留まり、相手の出方を伺う。
この状況で魔法を撃つのは同士討ちの危険があるし、デミタスに察せられる可能性も高いので控えた。
(´・_ゝ【+ 】「……やれやれ、話はまだ途中だというのに」
(´・_ゝ【+ 】「まあ、こちらもそう時間があるわけでもないですので……」
デミタスが左手を縦に振ると胸の宝石が光を放つ。
その刹那、デミタスの左右の空間が割れ、先ほども見た青黒い腕が飛び出し、こちらの攻撃を全て防いだ。
(;^ω^)「召喚!? てか、呼び出すの早過ぎるお!」
あらかじめ喚んでいたとしたら僕が魔力で気付けたはずなので、
恐らくあの手を振る短い動作だけでGデーモンを喚んだ事になる。
人間には到底無理な芸当だと思う。
┏ ┓ ┏ ┓
ミ∬οw) (´・_ゝ【+ 】 ミ∬οw)
- 768 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 22:26:56 ID:XcjBejlc0
- _、_
( ,_ノ` )「チッ……こいつはちと厄介だな」
1匹でさえ苦労した相手なのに、それが2匹もいる。
更に今回は、Gデーモンは完全に姿を現しており、空間の一部に繋がっている事もない。
つまりそれは自由に動き回れるという事だ。
それに加えてデミタスもいる。
状況的には分が悪い所か、最悪の部類だろう。
( ^ω^)「……とはいえ、ここで引くわけにもいかんおね」
ξ゚听)ξ「当たり前じゃないの。ここであの男を逃がすわけにはいかないわ」
他の皆も意見は同じ様で、既に臨戦態勢は整っている。
若干、ヒッキーさんの腰が引けているが、あの人はあれくらいの方が良くもある。
(´・_ゝ【+ 】「さて、もう少し話をしたい所でしたが……」
( ^ω^)(けど、馬鹿正直に全員を相手にする必要はないお)
狙いはデミタスに絞る。
他に色々と手を打たれる前に速攻でケリをつけようと、唱えていた魔法を解き放つ。
- 769 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 22:29:18 ID:XcjBejlc0
( ^ω^)「エア・シューズ!」
(´・_ゝ【+ 】『この場は彼らに任せて、私は引かせてもらいますよ」
デミタスがその手を斜めに挙げ、身体の前にかざすと周りに灰の霧が満ちていく。
その口ぶりからして転移の魔法か何かの類だろう。
このまま逃がしてGデーモンだけに集中すべきか一瞬迷ったが、僕はそのまま全速力でデミタスの元へ駆けた。
⊂二二二( ^ω^)二⊃「逃がさんお!」
ξ゚听)ξ「ブーン!」
既に前に出ていたツンが僕に合わせてデミタスに仕掛ける。
ジョルジュさん達は僕達の行動を一瞬で理解したのか、2体のGデーモンの足止めに回ってくれた。
(;;;・;;;【+;;;;;;;】「ゲート……」
その姿がほとんど灰の霧で隠されつつあるデミタスに、僕は速度を緩めることなく体当たりを仕掛けた。
しかし、ぶつかった衝撃は返って来ず、代わりに赤い光と妙な浮揚感が僕を包む。
(;^ω^)「間に合わな──」
次の瞬間、視界が灰に染まり、全ての音が消え去った。
- 770 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 22:31:03 ID:XcjBejlc0
〜 メシューマの町 南東部 <デレ> 〜
ζ(゚ー゚*ζ「はい、これで全員ですね。お気を付けて〜」
ようやく最後の1人を結界の外へ送り出し、脱出作業は一段落した。
まだ逃げ切れていない人がどこかに隠れている可能性もあるので、これで完了というわけではないが。
( ・∀・)「彼らは何をやっているのだろうかね?」
ζ(゚ー゚*ζ「この灰色っぷりですし、見付けられなかったんじゃないですかねえ」
先生が言う彼らとはブーン君達の事であろう。
ぼやいているのは、ブーン君達が全く避難民の人達を誘導しなかった事についてだ。
結局私達は最初にいた人達と、この辺りを少し探索して集めた人達を逃がしただけである。
( ・∀・)「ここ以外にいなかったのならそれで…っと、すまない」
ζ(^ー^*ζ「大丈夫ですよ、気を使わなくても。状況は理解してますから」
私は努めて笑顔を作り、最悪の可能性は考えない事にする。
いかに聖女だとか祭り上げられようと、自分が何でも出来るわけがない事はよく理解している。
- 771 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 22:32:46 ID:XcjBejlc0
( ・∀・)「さて、デレ。この辺りにいた人達は全て脱出させた事だし、君も外に出たまえ」
ζ(゚ー゚*ζ「先生はどうするんですか?」
( -∀-)「本来ならば他国の騒動に関わるべきではないのだが、そうも言ってられない状況だからね」
( ・∀・)「不本意ながら、彼らの助けに向かうよ」
ζ(゚ー゚*ζ「それじゃあ、私も同行しますね」
( ・∀・)「駄目だ」
何となく予想はしていたが、先生は私の申し出をバッサリと切り捨てる。
理由は危険だからとかそんなとこだろう。
ζ(゚、゚*ζ「えー? どうしてですか?」
( ・∀・)「無論、危険だからだ。それに……」
先生はそこで言葉を切り、視線を結界の方に向ける。
- 772 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 22:35:00 ID:XcjBejlc0
( ・∀・)「どうも事は簡単ではないらしいからね」
ζ(゚、゚*ζ「どういう意味です?」
釣られる様に私も結界の方へ視線を向けたが、先生の言葉の意味はよくわからない。
状況が複雑な事は理解していたつもりだったけど、
先生が言いたいのはこの騒ぎを起こした張本人の事だけじゃないらしい。
( ・∀・)「しばらく前から結界の外に人が集まって来ているようだね」
( ・∀・)「それも、かなり訓練された部隊のね」
ζ(゚ー゚*ζ「メシューマの警備兵とかじゃないんですか?」
( ・∀・)「それは最初からいたさ。だが、それとは別の部隊も展開している様だ」
ζ(゚、゚*ζ「それって……」
豪商の私兵とか、そういった類じゃないらしい。
だとしたら、可能性があるのはそう多くはない。
- 773 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 22:36:28 ID:XcjBejlc0
ζ(゚、゚*ζ「ニューソク騎士団ですか?」
( ・∀・)「かもしれない。それか、もしくはその上か」
確かブーン君の話では、元ニューソク騎士団長だった人もこの中にいるはずだった。
だとしたら、その援護に騎士団の人達が来ていてもおかしくはない。
ζ(゚、゚*ζ「けど、それなら何で入って来なかったんですかね?」
この近くにいるなら、先生が開けた穴から観客が脱出していた事には気付いたはずだ。
だとしたら、こちらに何らかのアクションを仕掛けて来てもおかしくはないと思う。
しかし、実際には何の接触もなかった。
( ・∀・)「だから簡単じゃないって話だよ。どうもきな臭いね、この状況は」
先生は少しずり下がってきていた眼鏡を直し、軽くため息を吐く。
向こうの意図が何にしろ、ラウンジの人間としてはニューソクの公式な部隊に接触はしたくないから、
考え様によっては幸いだがと言葉を続けた。
( ・∀・)「彼らが騎士団ないし、ニューソクの正規の部隊に属するなら、本来ならこの場は彼らに任せるべき話だ」
ラウンジ教国の要職にある自分達が関わると話がややこしくなると先生は言う。
それは私も理解していた。
- 774 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 22:38:16 ID:XcjBejlc0
( ・∀・)「だが、どうやら彼らはこの状況を静観するつもりの様だ」
ζ(゚、゚*ζ「職務怠慢ですねえ」
( ・∀・)「むしろ、職務に忠実かもしれないがね」
どちらにしろ、騎士団らしき人達が何もしないなら、私達がどうにかする以外に道はない。
私はブーン君達の所に向かう事を先生に提案した。
( ・∀・)「だから、君はこの場を離れてだね……」
ζ(゚、゚*ζ「でも、この状況で外に出て、その騎士団の人達と鉢合わせたらまずくないですかね?」
私1人外に出るよりは、先生と一緒にいた方が安全じゃないかと私は言う。
先生は渋い顔をしつつ、私の目をじっと見詰めた。
( ・∀・)「立場上、君を危険な目に合わせるわけにはいかないんだがね」
ζ(゚ー゚*ζ「だからこそ、先生と一緒にいるんじゃないですか」
にこやかに微笑む私に、先生は更に顔を渋らせる。
付き合いの長い先生は、私の本心を理解しているのだろう。
- 775 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 22:40:02 ID:XcjBejlc0
( ・∀・)「この地には君が守るべき民はいないんだよ?」
ζ(゚ー゚*ζ「先生は私の願いを知ってるでしょ? 国は関係ありませんぜー」
聖女なんてご大層な肩書きをもらっているのだ。
他国の人だから助けないなんてのは名が廃るというものだろう。
( ・∀・)「……ついて行きたい理由はそれだけかね?」
ζ(゚ー゚*ζ「他に理由なんて……」
ζ(゚、゚*ζ「ああ、そういう事ですか」
どうやら先生はまた見当外れの危惧をなさっているらしい。
やれやれ、ブーン君は本当にただのお友達だというのに。
( ・∀・)「しかしだね、デレ。君はわざわざ彼に会いに行ったのだろう?」
ζ(゚、゚*ζ「そうですけど、それほど深い意味はありませんぜー?」
確かに、ヴィップの町に行きはしたが、それほど明確な目的があってのことではない。
ただ何となく、その顔を見てみたかっただけである。
- 777 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 22:41:37 ID:XcjBejlc0
何度となく話に聞いていた、大賢者の孫。
ブーン=ナイトウ、先生が本当に教えたかった人がどんな顔なのか。
私と同じく、生まれで生き方が決まってしまっていたはずの人。
しかし、私が想像していたより彼はずっと自由に生きていたのは意外だった。
それ以降、ヴィップの町以外で会ったのは完全に偶然に因るものである。
( ・∀・)「だが、興味は持っているのだろう?」
ζ(゚ー゚*ζ「そりゃあ、先生からよく話を聞いてましたし、興味ぐらいは持ちますよ」
( ・∀・)「……僕はそんなに彼の話をした覚えはないんだが」
ζ(゚ー゚*ζ「覚えがないくらい、無意識にしてるんですよ」
あれやこれやと比較をされたわけではない。
先生はブーン君の今の状況を詳しく知っていたわけではないのだ。
ただ単に、先生は師である大賢者の側にいたかっただけなのだろう。
だから、その孫であるブーン君の事を気に掛けていた。
若干そこに東の賢者への対抗心みたいなものもあったようだが。
- 778 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 22:43:56 ID:XcjBejlc0
( ・∀・)「デレ、勘違いはしないで欲しいのだが……」
ζ(^ー^*ζ「はいはい、こんなとこで時間を潰してる暇はないですから、早いとこ行きましょう」
私は笑顔で先生を背中を押し、有耶無耶の内に同行する事を認めさせた。
実際、今はのんびり話している暇はない。
この事態の全容も掴めていない上、首謀者の実力も相当のものだろう。
クックルが一緒だとはいえ、ブーン君達だけでは恐らく手に余るはずだ。
( ・∀・)「やれやれ……仕方がないね。けど、なるべく僕から離れないようにね?」
ζ(゚ー゚*ζ「わかってますよー。さあ、急ぎましょうぜー」
( ・∀・)「さて、彼らは……ふむ、恐らくこっちでしょうね」
ヽζ(゚ー゚*ζ「んじゃ、れっつらごー」
私は先生と共に街の中央の方へ向かって走り出す。
視界は悪いが、先生について行けば問題なく辿り着けるだろう。
- 779 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 22:45:46 ID:XcjBejlc0
〜 メシューマの町 ??? <ブーン> 〜
(;-ω-)「お……」
気付けば僕は石畳の上にうつぶせに倒れていた。
意識が飛んでいたのはほんのわずかだろう。
身体も特に異常はない様で、問題なく動く。
フードの中のわんわんおは気を失っているようだ。
僕は上体を持ち上げつつ、ゆっくりと目を開いた。
(;^ω^)「ここは……?」
見た所、メシューマの街中である事はわかる。
先ほどとは違う開けた場所だが、道の造りは同じ様に見える。
(´・_ゝ【+ 】
(;^ω^)「デミタス!?」
- 780 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 22:47:08 ID:XcjBejlc0
僕は視線の先にデミタスの姿を確認すると、跳ね起きて体勢を整えた。
その際、僕の隣に倒れているツンの姿がある事に気付いた。
(´・_ゝ【+ 】「なかなか面白い魔法を使いますね」
(´・_ゝ【+ 】「あまり魔法使いらしくない魔法ですが、悪くない着眼点です」
(;^ω^)「そりゃどうも。さっきのは転移魔法かお? ここはどこだお?」
僕は質問をしつつ、少しずつツンの方へ近付き、足で小突く。
後で怒られそうだが、このまま気を失われているのは少々まずい。
(´・_ゝ【+ 】「ええ、そうです。場所は……私もよくわかりません。適当に決めましたので」
馬鹿正直に質問に答えてくれるデミタス。
一応ここはメシューマの街中らしいが、詳しい場所はわからないらしい。
( ^ω^)「転移魔法なんて高度な魔法、詠唱なしでよく使えたおね」
(´・_ゝ【+ 】「それが私が得た力です。もっとも、あらかじめこの場所に飛ぶように仕掛けはして置きましたが」
そう言って辺りを見回すデミタス。
よく見ると、少し離れた先に結界が張ってあるのがわかる。
という事は、ここは街の端の方なのかと思ったが、よくよく見ると違う様だ。
- 781 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 22:49:13 ID:XcjBejlc0
(;^ω^)(全方位に結界があるっぽいおね……)
どうやらここは街の周囲を囲む結界とは更に別の結界に囲まれた場所らしい。
それはつまり、僕達はジョルジュさん達と完全に分断されたという事になる。
(;^ω^)(何という最悪の状況……。完全に僕の判断ミスだお)
周囲を囲む結界が、街を囲む結界と同じくらいの強さのものなら少なくとも僕には破れない。
ジョルジュさん達にも無理だろう。
唯一可能性があるのはモララーさんだが、今すぐに来てくれるのを期待出来る状況ではない。
何とかして僕達だけでデミタスを倒すなり、時間を稼ぐなりはしなければならない。
( ^ω^)「ここで何をするつもりなんだお?」
僕はひとまず時間を稼ぐべく、再度デミタスに質問をぶつける。
先ほどの感じだと、まともに会話になりそうだったし、むしろ話したがっている様にも見えた。
(´・_ゝ【+ 】「何も。ただ、時を待っているだけです」
( ^ω^)「待っている? 何をだッ……お?」
- 782 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 22:51:19 ID:XcjBejlc0
鈍い痛みを足先に感じ、思わず言葉に詰まりかけた。
どうやらツンが目を覚ましてくれたらしい。
もう少し穏便に伝えて欲しかったけど。
(´・_ゝ【+ 】「……あなたも魔法使いなのですね?」
( ^ω^)「そうだお。魔法使い兼、魔法道具屋だけど」
僕の質問には答えず、別の質問で返すデミタス。
質問というよりは確認に近いものだったが、どちらにしろ時間を稼ぐのが目的なので、僕は素直に答えた。
(´・_ゝ【+ 】「ならばあなたも、知識を追い求める人種というわけですか」
( ^ω^)「研究はあんまりやってないけど、一応魔法使いなんでそうなるおね」
一般的概念で言えば、魔法使いは研究者の側面を持つ。
それはこの世界においてはごく普通のことである。
そんな当たり前のことを聞くデミタスの質問の意図はよくわからない。
(´・_ゝ【+ 】「あなたは知識の探求に限界を感じた事はありませんか?」
( ^ω^)「そりゃそんな事はしょっちゅうだお。その都度しらべたり、別角度から考えたりするお」
( ^ω^)「でも、それでもわからなくて諦める事はよくあるお」
- 783 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 22:53:01 ID:XcjBejlc0
(´-_ゝ【+ 】「でしょうね。人には限界がある」
目をつぶり、軽く首を振るデミタス。
別に人でなくとも限界はあると思うが、ここで茶化す意味はないので僕は無言で頷く。
何となくだが、デミタスが何を言いたいのかは理解出来てきていた。
( ^ω^)σ「それで辿り着いたのが、その四角いのかお?」
僕はデミタスの左半身を覆う灰色の棺桶の様なものを指差す。
いつの間にか、僕の隣からツンの姿が消えていた。
(´・_ゝ【+ 】「ええ、察しが良いのは素晴らしい事です。限りある時間を無駄にせずに済みます」
どうやらデミタスは、自分がどうしてこんな事をしたのかを説明してくれているらしかった。
要約すれば、研究に没頭し、知識を追い求めたが人の身では限界を感じたので、
人ならざる者の力を借りたという事だろう。
随分と短絡的な理由で、馬鹿馬鹿しいとまでは言わないが、ありきたりな理由かもしれない。
( ^ω^)「そいつは何なんだお?」
(´・_ゝ【+ 】「何だと思いますか?」
- 784 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 22:55:15 ID:XcjBejlc0
( ^ω^)「あんたが召喚した悪魔……ってとこまではわかるお」
僕は少しずつ、デミタスに悟られない様に距離を詰める。
恐らく、どこかのタイミングでツンが仕掛けるはずだ。
それを隠すためにも、デミタスの注意を惹き続ける必要がある。
(´・_ゝ【+ 】「これがなんだか知りたいですか?」
( ^ω^)「そりゃあ、教えてくれるなら知りたいお」
(´-_ゝ【+ 】「その探究心、いいですね。魔法使いはそうでないと」
再び目をつぶり、満足げに頷くデミタス。
僕は無言で次の言葉を待つ。
(´・_ゝ【+ 】「あなたが言うように、これは私が召喚した悪魔です」
(´・_ゝ【+. ゙゚ 】「名はオサム」
一瞬、棺桶に目の様なものが浮かび上がる。
その視線は射抜く様に鋭く、背筋に寒気が走った。
- 786 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 22:57:42 ID:XcjBejlc0
(´・_ゝ【+ 】「おっと、失礼。まだ完全には馴染んでないのでね」
デミタスは胸の宝石に手を当て、魔力を込める。
すると、棺桶に浮かび上がっていた目は消えていった。
( ^ω^)「朱玉はその為に必要だったのかお」
(´・_ゝ【+ 】「そういうことになりますね」
オサムを召喚し、力を借りる契約を結んだまでは良かったが、
オサムがデミタスの身体を乗っ取ろうと企んでいる事に気付いたという
だがデミタスはその事に気付かぬ振りをし、本来の目的を隠し、朱玉を手に入れるに至った様だ。
(´・_ゝ【+ 】「力を手に入れたまでは良かったのですが、少々強過ぎましてね」
(´・_ゝ【+ 】「抑えられない事も多々あって難儀をしました」
(´・_ゝ【+ 】「しかし、これでこの力も、そして叡智も私の物というわけですよ」
( ^ω^)「……1つ聞きたい事があるお」
- 787 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 23:00:35 ID:XcjBejlc0
(´-,_ゝ【+ 】「何でしょうか? 今私は最高の気分ですので、大抵の事には答えてあげますよ」
口角を吊り上げ、大袈裟に片手を挙げるデミタス。
既に事が成就したという、勝者の余裕の様な態度が見て取れる。
( ^ω^)「商隊の馬車や、騎士団を襲ったのもその力が抑えられなかったからかお? それとも……」
(´・_ゝ【+ 】「いいえ、必要だったからですよ」
朱玉が必要だったから、それを移送すると思しき馬車を襲い、自分が雇った事がバレると面倒な事になるので、
盗賊達も排除したとデミタスはごく当たり前のように言う。
( ^ω^)「そうかお」
僕は湧き上がる怒りを抑える為、目を伏せる。
ひょっとしたら悪魔の力を持て余し、意図せぬ罪を重ねたのかと考えもしたが、どうやらそうではない様だ。
(´・_ゝ【+ 】「大事の前の小事ですよ」
こいつはただの狂人だ。
こいつをぶっ飛ばすのに、何の躊躇いも感じる必要はない。
- 789 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 23:03:08 ID:XcjBejlc0
( ^ω^)「わかったからもうしゃべらなくていいお」
(´・_ゝ【+ 】「何がわかったのですか、未だ探求の途中にあるあなたが?」
( ^ω^)「お前がどうしようもない馬鹿だって事がだお」
(´・_ゝ【+ 】「……ほう、言ってくれますね」
デミタスの表情が強張り、明らかに先ほどまでと空気が一変する。
基本的に小者なのだろう。
あれほどの力があるのだから、僕ごときの挑発ぐらい余裕で受け流せば済むものを。
(´・_ゝ【+ 】「あなたのような矮小な人間が」
(´・_ゝ【+ 】「私を馬鹿呼ばわり出来るほどの知恵も力も持ち合わせているとは到底思えないのですが」
┐( ^ω^)┌「思い上がりも甚だしいお」
僕はわざと大袈裟に肩をすくめて、小馬鹿にしたように鼻で笑う。
こんな見え透いた挑発にも、デミタスはあからさまに乗ってくれるようで、目つきが険しくなっていく。
- 790 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 23:05:33 ID:XcjBejlc0
( ^ω^)「借り物の知恵と力でよくそこまで得意になれるもんだおね」
(´・_ゝ【+ 】「黙りなさい」
( ^ω^)「探究心が聞いて呆れるお」
(´・_ゝ【+ 】「黙れ!」
拳を握り締め、こちらをその細い目で睨み付けるデミタス。
僕はそれを笑って受け流す。
(#´・_ゝ【+ 】「お前は自分が置かれている状況がわかっているのか?」
( ^ω^)「どうしたんだお? そんなに青筋立てて?」
(#´・_ゝ【+ 】「うるさい! お前は自分の今の状況を理解しているのかと聞いている」
怒りを顕にしたデミタスがつかつかとこちらに歩み寄って来る。
随分と堪え性のない男だ。
( ^ω^)「いいのかお? そんな無防備に近付いて? 油断してると矮小な人間に足元を掬われちゃうお?」
(#´・_ゝ【+ 】「出来るものならやってみろ! 悪魔の力を手にした私に通じるものならな?」
- 791 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 23:07:20 ID:XcjBejlc0
( ^ω^)「大した自信だおね。己の力を過信、いや盲信し過ぎると痛い目見るお」
・ ・ .・ ・
( ^ω^)「ちゃんとその細い目を開けて見てないと、どうなっても知らんお」
僕は意図的に言葉を強調し、挑発をしつつ魔法を詠唱ではない手振りのみで準備をする。
( ^ω^)(さて、あとはツンが気付いてくれるかだけど……)
恐らく、単純に用意した魔法を唱えた所で防がれてしまうだろう。
しかし、わずかでも隙を作れれば、きっとツンが何とかしてくれる。
周囲からツンの気配は感じないが、デミタスに一撃を食らわすチャンスを伺っているのは間違いない。
ツンは僕を護衛すると言ってくれた。
そうでなくても、ツンが僕を置いて逃げるはずはない。
(#´・_ゝ【+ 】「言いたいことはそれだけか?」
∩(#´・_ゝ【+ 】「お前は私の偉業の証人として生かしておいてやろうと思っていたが、もういい。死ね」
デミタスが片手を挙げ、その手に魔力を込める。
僕は両手に杖を持ち、その手を前方に突き出して完成していた魔法を解き放った。
- 792 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 23:11:13 ID:XcjBejlc0
( -ω-)「フラッシュ!」
(´・_ゝ【+ 】「!?」
目の前の魔力反応が霧散し、気配が遠ざかるのを感じた。
咄嗟に魔法を中断し、目を閉じて後方に飛び退ったのだろう。
( -ω-)(外した……けど……!)
その刹那、もう1つの気配が僕の前に忽然と現れる。
裂帛の気合を込めた怒声が耳に響く。
ξ#゚听)ξ「でええええりゃぁぁぁぁッ!」
(´゚_ゝ【+ 】「ガハッ!?」
鈍い音と短い悲鳴がツンの奇襲が成功した事を僕に告げる。
僕は目を開け、追撃の魔法の詠唱を開始した。
(#^ω^)「食らえお! ファイヤー・アロー、アロー、アローッ!」
立て続けに3発の炎の矢をデミタスに向けて放った。
ツンの悶絶ものの一撃で、防御もままならなかったであろうデミタスに、炎の矢は全て着弾する。
(´゚_ゝ【+ 】「グオオオオッ!?」
- 794 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 23:14:36 ID:XcjBejlc0
身に纏う衣に火が点き、炎に包まれるデミタス。
そこにツンが止めとばかりにデミタスの頭を蹴り飛ばした。
ξ#゚听)ξ「せいやぁぁぁぁッ!」
悲鳴もあげず、錐揉みしながら吹き飛ぶデミタス。
下手したら殺しかねない一撃だが、相手は悪魔の力を宿した人間だ。
ここは一気呵成に攻め続けるしかない。
(#^ω^)「サンダー・フォール!」
落雷が吹き飛ぶデミタスの身体を貫き、地面に叩き付けた。
デミタスの身体はバウンドして後方に跳ね、わずかに地面を滑って動きを止めた。
(;^ω^)「……やったかお?」
ξ;゚听)ξ「手応えは十分過ぎるほどあったわ。でも……」
悪魔の力がどれほどのもので、どう身体に影響を与えているかは不明なのだ。
これで倒せたかどうかはわからない。
- 795 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 23:16:56 ID:XcjBejlc0
(;^ω^)「ぴくりとも動かないおね」
(∪´ω`)「わんおー」
( ^ω^)「お? わんお、起きたかお?」
フードの中で気絶したままだったわんわんおが目を覚ます。
僕はわんわんおにケガがないのを確認し、地面に降ろして慎重にデミタスの方へ近付いた。
( ^ω^)「気を失ってるのかお? 取り敢えず……」
僕はデミタスを縛るべく呪文の詠唱を始ようとした。
( ^ω^)「……っと、その前に」
デミタスの胸元に手を伸ばし、朱玉を掴む。
これが魔力増幅装置として機能するなら、これをそのままにしておくのは危険だ。
ξ;゚听)ξ「ブーンッ!」
(´゚_ゝ【+ 】 クワッ!
(;^ω^)「つッ!?」
- 796 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 23:18:18 ID:XcjBejlc0
目を開き、勢い良く半身を引き起こしたデミタスから離れ、後ろに飛ぶ。
掴んだままだった朱玉は紐を引き千切って僕の手の中にあった。
ξ;゚听)ξ「まだ動けるの!? ならば!」
(´゚_ゝ【+ 】 ガガ……ギギギ……
追撃をかけようと飛び出すツン。
デミタスは凡そ人の関節の作りを無視した不自然な動きで、弾かれた様に立ち上がった。
ξ#゚听)ξ///⊃「はあああッ!」
【+ 】 ガタンッ
デミタスの身体が棺桶の中に引きずり込まれるように消え、ツンの拳は空を切った。
そのまま棺桶を蹴り飛ばそうとしたツンを制止し、後ろに下がらせる。
( ^ω^)「あれが悪魔絡みのものなら、僕の魔法の方がきくはずだお」
僕は呪文の詠唱を始める。
今のデミタスの状態なら、動けなさそうだし強力な魔法を当てる事も出来るだろう。
朱玉を使って増幅する事も考えたが、使い方とそのリスクもわからなかったのでそれは止めておいた。
- 798 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 23:20:49 ID:XcjBejlc0
( ^ω^)「此の地を焦がす火の精霊よ、我が力となりて全てを焼き尽くせ……」
( ^ω^)「ファイヤー・シュート!」
杖を持ったまま突き出した両手から4つの火球が斜め方向に飛び出し、旋回して中央に集まりつつ正面に飛ぶ。
燃え盛る火球は轟音と共に全弾棺桶に着弾し、火柱を上げる。
( ^ω^)「今度こそ……」
ξ゚听)ξ「……」
(∪^ω^)「……」
炎の中、棺桶は直立したままで動きはない。
僕達は警戒は解かず、無言で燃え続ける棺桶を見詰め続けた。
【+ 】
- 799 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 23:22:50 ID:XcjBejlc0
〜 メシューマの町 中央付近 <ミルナ> 〜
_
( ゚∀゚)「で、どうするよ?」
苛立たしげな口調を隠そうともせずジョルジュはそう言い放つ。
気持ちはわかるが、焦っても状況は好転しない事ぐらい本人もわかっているだろう。
(‘_L’)「ブーン殿達を追うしかないでしょうが……」
( ゚д゚)「それにはあいつらがどこに行ったかを探さねばならんのと……」
_、_
( ,_ノ` )「この状況をどうにかするのが先だろうな」
固まる俺達の横を黒い魔力の塊が通り過ぎて行く。
以前見た、光線状の魔力の攻撃よりは威力はなさそうだが、当たればダメージは小さくないだろう。
(;-_-)「申し訳ないですけど、正直そろそろ限界ですよ?」
防御魔法を維持しながら、苦しそうな声でヒッキーがそう告げて来る。
先ほどからずっと防御魔法を張り続けているのだから、それも仕方のないことだ。
- 800 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 23:24:28 ID:XcjBejlc0
- _
(#゚∀゚)「クソが。全く降りて来る気配がねえ」
そう言って上空を睨むジョルジュの視線の先には、2体のGデーモンの姿がある。
灰衣の男、デミタスが召喚した悪魔だ。
┏ ┓ ┏ ┓
ミ∬οw) ミ∬οw)
先にも戦いはしたが、ほんのわずかな間の事で、その強さはブーンから話に聞いていた。
それが2体もいるとなると、相当な苦戦を強いられそうだが、何故かGデーモンは上空に陣取り、
積極的には仕掛けてこない。
それでも牽制と思しき攻撃ですらかなりの威力があるので、
今現在はヒッキーが張った防御魔法内でこの先どうするか、方針を検討中である。
(‘_L’)「やはり、まずはこの場を離脱しましょう」
ヒッキーの話では、ブーン達は恐らくデミタスの転移魔法に巻き込まれたという事らしい。
ブーンの魔力反応もデミタスの魔力反応も近くからは感じないという話なので、この場に留まる意味はない。
- 801 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 23:25:50 ID:XcjBejlc0
( ゚д゚)「当然、そうするべきなのはわかっている。だが、簡単には逃がしてもらえそうにないぞ?」
先ほども1度離脱を試みようとはした。
しかしながら、足止めを命令でもされているのか、逃げようとすると途端に上空からの攻撃が激しくなり、
危険な状況に陥ってしまった。
それで急場を凌ぐため、足を止めてヒッキーの防御魔法内に隠れたのだが、何故か攻撃が散発的になった。
_
( ゚∀゚)「だからって、ここであいつらの攻撃を防ぎ続けてても埒が明かねえだろうが」
( ゚д゚)「それもわかってるさ。だが、下手な手を打って全員戦闘不能の事態に陥るのは本末転倒だ」
少し強引な手を打ってでも、この場を離脱するべきだと俺も思っている。
しかし、そうするとGデーモンの追撃で全員無事に離脱出来る可能性は低いと見るべきだろう。
それを避けたいなら、誰かがここに残ってGデーモンを足止めしている間に逃げるしかない。
その場合、残る人間の無事は一切保障できないが。
( ゚д゚)「……仕方ない、ここは俺が」
_、_
( ,_ノ` )「このままだと時間を無駄にする一方だ。二手に分かれようか」
- 802 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 23:28:08 ID:XcjBejlc0
俺の言葉を遮るようにシブサワが口を挟む。
その内容は俺が言おうとした事と同じ物だった。
_、_
( ,_ノ` )「俺があいつらを足止めする。その間にお前らは離脱してブーン達を追え」
( ゚д゚)「……死ぬ気か?」
_、_
( ,_ノ` )「そのつもりはないさ。……無論、危険なのは承知している」
こういった汚れ仕事は慣れていると自嘲気味に笑うシブサワ。
俺はその目をじっと見詰める。
( ゚д゚ )「盾となるのは本来俺の役目なんだがな」
_、_
( ,_ノ` )「それはお姫さんがいる時の為にでも取っておけよ。ここは年功序列って事で任せとけ」
(‘_L’)「私も残りましょう。相手も2体ですからね。貴方1人では厳しい」
_、_
( ,_ノ` )「お前さんはデミタスを捕まえるって使命があんだろうが。何の為に騎士団長を辞めたんだよ」
(‘_L’)「しかし……」
( ゚∋゚)⊃ スッ……
- 803 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 23:29:37 ID:XcjBejlc0
シブサワとフィレンクトの間にクックルが無言で割って入る。
言葉はなかったが、何が言いたいかはすぐにわかった。
( ゚д゚)「あんたはブーン達の護衛を任されてたんじゃないのか?」
( ゚∋゚)
( ゚д゚)「……わかった、そっちは引き受けよう」
_、_
( ,_ノ` )「俺1人でも……と言いたいとこだが、正直助力はありがたい」
( ゚∋゚)
(|ii-_-)「お話中すみません。そろそろ本気で限界が……」
_、_
( ,_ノ` )「おう、すまんな。だが丁度話はまとまったぜ」
ヒッキーが防御魔法を解除すると同時に、シブサワとクックルが仕掛ける。
それから一拍置いて俺達が逃げるという作戦とも呼べない作戦だけを決め、行動を開始した。
_、_
( ,_ノ` )「それじゃあ、行きますか」
( ゚∋゚)" コクッ
俺達はシブサワとクックルの背中に礼を告げ、2人とは反対方向に駆け出す。
背後から響く轟音が、2人の戦いの開始を告げた。
- 804 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 23:31:29 ID:XcjBejlc0
〜 メシューマの町 ??? <ブーン> 〜
【+ 】
ξ゚听)ξ「……なかなか燃えないわね」
( ^ω^)「倒れもしないのは不自然だおね」
(∪^ω^)「わんわんおー」
正直な所、嫌な予感しかしていない。
これでも倒せないとなると、次にどういう手を打てば思い付かない。
( ^ω^)「今の内に朱玉の解析してみるかお」
ξ゚听)ξ「それ、使うつもりなの?」
( ^ω^)「デミタスへの対抗手段に使えるかもだし、この結界をどうにかするにも強い魔力は欲しいお」
ξ゚听)ξ「でもそれ、危険じゃないの?」
- 805 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 23:32:59 ID:XcjBejlc0
どうやらツンは、魔王の朱玉の『魔王』という響きが気になるようだ。
その心配は僕もしているが、今は選べる手段が少ない状況である。
( ^ω^)「まだ使い方もよくわからないし、調べるぐらいは……」
;;【+ 】;; ガタンッ!
(;^ω^)「お?」
炎の中で棺桶が大きく揺れた。
燃えている所為かとも思いもしたが、そうではないらしく、段々と揺れが激しくなっていく。
;;;【+ 】;;; ガタッ! ガタッ! ガタンッ!
ξ゚听)ξ「まだ元気みたいよ?」
( ^ω^)「全く……勘弁して欲しいおね」
(∪^ω^)「わんおー」
次第に揺れが激しくなり、それに合わせるかのように炎の勢いは収まってく。
状況から察するに、まだ終わりではないという事なのだろう。
本当に勘弁してもらいたいものだ。
- 806 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 23:34:25 ID:XcjBejlc0
( ^ω^)「ツン、何かあいつにききそうな技とかないかお?」
ξ゚听)ξ「さっきの感じだと、打撃がきいてないわけでもなさそうだったのよね」
極度に硬いとか、そういう感じではなかったから攻撃手段がないわけではないが、
この様子だと果たしてそれが効き目があるのかどうかわからないとツンは言う。
どちらかといえば、そういう分析は魔法使いである僕の役目であるし、そこは自分で見極めるしかなさそうだ。
;;;【+ 】;;; ガタッ! ガタッ! ガタンッ!
【+ 】 ピタッ
( ^ω^)「……止まったお」
ξ゚听)ξ「……気を付けなさいよ?」
(∪^ω^)「わんわんお!」
僕は杖を掲げ、いつでも防御魔法を張れるよう身構えた。
ツンも無闇に突出しようとせず、僕の防御魔法の届く範囲内で様子を伺っている。
- 808 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 23:36:18 ID:XcjBejlc0
【+ 】
僕達は固唾を呑んで棺桶の動向を注視していた。
(;^ω^)「!?」
していたはずだったが、気付けば棺桶の姿が視界から消えている。
ξ;゚听)ξ「消え……嘘!?」
先ほどまで燃え盛っていた炎も今はなく、代わりにあの灰の霧の様なものが広がって行く。
ただ、灰の霧は僕らを取り囲むように満ちて行くが、僕らのすぐ近くまでは来ず、円形の空間が出来上がっていた。
(;^ω^)「囲まれたって感じだけど……」
ξ;゚听)ξ「霧の中から仕掛けて来る? それとも、これを隠れ蓑に逃げるかしら?」
僕とツンは背中を合わせ、周囲を警戒する。
デミタスの魔力反応を追おうと試みたが、これまで以上に灰によって感知し辛く感じていた。
(;^ω^)「逃げはしないと思うお。朱玉は僕が持ってるし、それに……」
【+ 】『正解だ』
- 810 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 23:38:13 ID:XcjBejlc0
頭上から聞こえて来た声に、僕達はそれぞれ前方に飛び、その場を離れる。
激しい激突音が鳴り響き、先ほどまでいた僕達が地点に棺桶が突き刺さっていた。
【+ 】『なかなかいい反応するじゃねえか』
(;^ω^)「あっぶね、いきなり派手な攻撃仕掛けてくれるおね……」
一体いつ上空に移動していたのか全くわからなかったが、辛くも攻撃をかわすことは出来た。
魔力とも殺気とも気配は察知できたので、完全に気配を消してからの攻撃は不可能なのだと見てもいいだろう。
であれば、あの灰の中から一方的に攻撃されて、なす術がなくなる危険性はなさそうだ。
【+ 】『なに、ほんの挨拶代わりだ。むしろさっきのお前らの攻撃の方が派手でえげつなかったと思うぜ?』
そう言って棺桶はさもおかしげに笑う。
笑い方もそうだが、口調もさっきまでとは随分違い、妙に砕けた感があった。
【+ 】『おっと、自己紹介がまだだったな』
ξ゚听)ξ「今更そんなのしなくても、あんたの事は知ってるわよ」
【+ 】『ハハ、そう言うなよ。お前らには礼も言わなきゃならねえしな』
( ^ω^)「礼? 何の事だお?」
- 811 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 23:45:24 ID:XcjBejlc0
【+ 】『こういうことさ』
棺桶の蓋ががゆっくりと開いていく。
咄嗟に、どこか違和感があることに気付いたが、
違和の原因が先ほどまでとは逆方向に蓋が開いた所為だと気付いた時には既に、棺桶から人の半身が姿を現していた。
【+ 】ゞ゚)
(;^ω^)「デミタス……? いや……」
その顔はデミタスとよく似ていた。
だが、顔色は極端に血の気がなく、所々ただれた様な箇所があった。
目つきも鋭く、先ほどまでの細く静かな目つきとは打って変わって、大きく見開かれ、ギラギラとした輝きがある。
【+ 】ゞ゚)『俺の名はオサム。お前らの言葉で言えば悪魔って奴だ』
挑発的に吊り上った口から紡がれた言葉は、半ば予想していた通りのものであった。
悪魔オサム、デミタスが召喚し、その力を借りた悪魔の名である。
【+ 】ゞ゚)『短い付き合いになると思うが、よろしく頼むぜ』
そう言い放ち、高らかに笑うオサムを灰の霧が衣のように包み込んだ。
第五十話 灰衣 終
- 816 名前:五十話までの登場人物:2013/02/19(火) 23:52:33 ID:XcjBejlc0
- 【登場人物紹介・簡易版】
■ヴィップの町の人々 ■ニューソク王家の人々
( ^ω^)ブーン=ナイトウ ( ´∀`)モナー=ニューソク
主人公。魔法道具屋兼魔法使い ニューソク国王
ξ゚听)ξツン=ディレード (´・ω・`)ショボン=バールボー ( <●><●>)ワカッテマス=ニューソク
幼馴染の武術家 騎士を目指す幼馴染 ニューソク国第一王子
(∪^ω^)わんわんお ( ><)ビロード=ニューソク
ブーンのペットで元竜 ニューソク国第二王子
_
川 ゚ -゚)クー=スナオ ( ゚∀゚)ジョルジュ=ナガオカ ( ∵)ビコーズ=バラナゼナ
ニューソク王国第一王女 ( ゚д゚)ミルナ=コッチオ ニューソク王国宮廷魔術師
(゚、゚トソントソン=トソン 从 ゚∀从ハインリッヒ=タカオカ (,,゚Д゚)ギコ=ニャーハン
元聖騎士でクーの友人 ヴィップを拠点とする冒険者 ニューソク王国聖騎士団長
(`・ω・´)シャキン=バールボー (-_-)ヒッキー=コーモーリ (‘_L’)フィレンクト=ドレイク
酒場バーボンハウスのマスター ヴィップの教会の司祭 元ニューソク王国騎士団長
川д川サダコ _、_
('A`)ドクオ=ボッテューツ ヒッキーに憑いている精霊 ( ,_ノ` )シブサワ=リナイオ
ブーンの師匠で東の賢者 ミセリ ニューソク王国所属エージェント
ミセリ
■その他 ■ラウンジ教国の人々
( ´_ゝ`)アニジャ=サースガ (*゚ー゚)シィ=ダンヴォール ζ(゚ー゚*ζデレ
ソクホウの町の武器職人 イチサンの町長 ラウンジの聖女
(´<_` )オトジャ=サースガ ( ^^ω)マルタスニム=ハーセガー ( ・∀・)モララー=トスリラモ
トレジャーハンター 精霊兵器研究者 デレの先生で西の賢者
ノパ听)ヒート=オネスティー lw´‐ _‐ノvシュー=パールライス ( ゚∋゚)クックル=クックドゥー
武術家で自称ツンのライバル 魔法農具屋。正体は悪魔 デレの御付の戦士
(´・_ゝ・`)デミタス=ヘルピングヒル 【+ 】ゞ゚) オサム
灰衣の魔法使い デミタスが召喚した悪魔
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