- 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 21:31:50.19 ID:KUBlz4yJ0
〜 ニゲット山 麓 〜
( ^ω^)「それじゃあ、僕らは山に入りますお。成果に関わらず、夜までには下山しますお」
( ゚д゚)「ああ、馬車の番は任せておけ」
( ^ω^)「頼りにしてますお。それと、わんわんおの事もよろしくお願いしますお」
(* ゚д゚)「無論だ。心配するな」
つ∪^ω^)「わんわんお!」
( ^ω^)「それじゃあ、皆行くお」
_
( ゚∀゚)「おう」从 ゚∀从「へいへい」ξ゚听)ξ「ええ」川 ゚ -゚)「うむ」
( ^ω^)「……ちょっとは揃えろお」
第九話 ニゲット山の戦い
- 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 21:33:00.42 ID:KUBlz4yJ0
( ^ω^)「さて、気を引き締めていくお」
僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。
僕は今、幼馴染のツン、今回の依頼主であるクー、冒険者のジョルジュさん、
ハインさんと共にニゲット山へ採掘のクエストに来ている。
ニゲット山では良質の鉱石が取れるが、モンスターも多いので気を付けなければならない。
_
( ゚∀゚)「で、まずはどこを目指すんだ?」
( ^ω^)「この近辺にないのは探査済みですから、このまま道なりに登りますお」
道と言っても獣道と言ってもいいような細く、舗装もされていない道だが、多少は人の手によって切り開かれた跡もあった。
ニゲット山は人の住まないモンスターだらけの山ではあるが、今の僕らと同じようにクエストで人が訪れる事もある。
そういった先人達が通った道は比較的安全な可能性が高い。
モンスターに襲われる事は避けられないだろうが、通れなかったり妙な仕掛けがあったりする事は避けられるだろう。
ξ゚听)ξ「その探査の魔法って、当てになるの?」
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 21:34:08.14 ID:KUBlz4yJ0
( ^ω^)「一応昔、他の鉱石ではやった事あるから大丈夫なはずだお」
前にペンダントの話をした時に触れたが、探査の魔法は鉱石を探す際に用いられる事がある。
その鉱石の成分を魔法で分析し、同成分の鉱石の反応を探知するのだ。
今回の目的であるニスリル銀の成分はペンダントから分析してあるし、
麓周辺ではそれが引っかからなかった事も調査済みである。
从 ゚∀从「ま、そっちはブーンに任せるよ」
川 ゚ -゚)「我々は周辺の警戒だな」
( ^ω^)「うん、そうなんだけど、誰か1人ぐらい荷物持ってくれてもいいんじゃないかお?」
現在、僕の荷物は採集袋と全員分の水に食料、それに採掘用と予備で2本のピッケルと、なかなかの重量を誇っている。
戦闘時の事を考えれば、余分な荷物は持たせられないがもう少し何とかならないものだろうか。
ξ゚听)ξ「その状態で戦えとは言わないから安心しなさい」
( ^ω^)「そういう話じゃなくてだおね……」
_
( ゚∀゚)「早速お出ましのようだぜ」
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 21:35:22.79 ID:KUBlz4yJ0
僕とツンの会話にジョルジュさんの声が割り込む。
坂の前方、少し開けた場所に数体のモンスターの姿が見える。
∧∧ ∧∧ ∧∧
(コдボ) (コдボ) (コдボ)
(;^ω^)「コボルドかお!?」
コボルド、強さとか性質とか色々ものすごく平たく説明すると犬の頭をしたゴブリンだ。
思わずノリで驚きはしたが、このパーティーなら楽勝である。
从 ゚∀从「くたばりなッ!」
∧∧ ∧∧ ∧∧
(コдボ) (コдボ) (コдボ) コボォォォッ!?
等と考えていると、真っ先にコボルド目掛けて走って行ったハインさんがその首を一瞬にして刎ねていた。
あの踏み込みの速さは武術家であるツン以上かもしれない。
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 21:37:03.74 ID:KUBlz4yJ0
ξ゚听)ξ「ちょっとハイン、こっちにも回しなさいよ」
从 ゚∀从「ヒャハハハ、こういうのは早いもん勝ちって相場が決まってるもんさ!」
切れ長の目を更に細め、口角を吊り上げて笑うハインさん。
平素はそうでもないのだが、戦闘の際はかなりテンションが高い。
何というか、戦闘狂のような所が節々に見られるので少し怖く感じる時もある。
_
( ゚∀゚)「まだ終わっちゃいねえぞ?」
後方からの声に振り向くと、左右から数匹のコボルドが躍り出て来る。
僕は杖を構え、呪文の詠唱を始めた。
_
( ゚∀゚)「雑魚は失せろッ!」
気合一閃、ジョルジュさんは身の丈ほどもある斧を振り上げ、力任せに叩き付ける。
その一撃は受け止めた盾ごとコボルドを真っ二つにした。
∧∧
(コдボ) コボォォォッ!?
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 21:39:37.45 ID:KUBlz4yJ0
川 ゚ -゚)「ハッ」
僕の左前方、ジョルジュさんの反対側ではクーが細身の剣を振るい、コボルドの盾を避けて確実にダメージを与えている。
瞬く間に穴だけにされたコボルドは次々と崩れ落ちる。
∧∧ ∧∧
(コдボ) (コдボ) コボォォォッ!?
( ^ω^)「相変わらず出番がない件」
_
( ゚∀゚)「ブーンは護衛される側なんだからそこで見てりゃいいさ」
コボルドの最後の1体を叩き斬りながらそんな事を言うジョルジュさんだが、
一応僕も戦力として数えてこのクエストに臨んでいるので、甘んじて護衛されるだけには止まらないつもりだ。
とはいえ、この程度の相手なら僕が魔法を使うまでもなく、楽勝で片付けてくれるくらいのパーティーではある。
クーも思ったより戦えるみたいだし、僕の出番はいつも以上になさそうだ。
从 ゚∀从「何だよ、こんなもんか?」
瞬く間にコボルドを殲滅してハインさんがぼやく。
確かに手応えのある相手ではなかったが、今回のクエストはモンスター討伐ではない事を忘れないで欲しい。
目的は鉱石であって、戦闘ではないのだ。
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 21:41:03.76 ID:KUBlz4yJ0
ξ゚听)ξ「麓の方ならこんなものでしょ」
山を登るに従い、強いモンスターが出て来るだろうから我慢しなさいとツンはハインさんを窘める。
若干、小言の方向が間違っているがその言い分は正しい。
この先はもっと強力なモンスターが出て来るはずだから気を抜くわけには行かない。
川 ゚ -゚)「山の上に行くに従ってモンスターが強くなるというのはどういう理屈なんだ?」
ξ゚听)ξ「偉ぶる馬鹿は高いとこが好きなのよ」
(;^ω^)「適当に言うなお」
単純に生息環境の違いとか、必要とするエサの種類とか、人が踏み入って来ない場所を好むとか、
そんな理屈だったりするらしいがそれで正解かどうかはわからない。
どちらかといえば経験則の積み重ねの知識が流布したものだ。
川 ゚ -゚)「強いモンスターなら弱いモンスターを食料に出来るから、人里まで降りる必要はないという事か」
( ^ω^)「そういう風な認識だお」
クーは納得した様に頷き、勉強になったと僕に礼を述べる。
礼を言われるほどの事ではないが、役に立てて良かったと思う。
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 21:43:00.66 ID:KUBlz4yJ0
从 ゚∀从「ここから道が分かれてんな。どっちだ、ブーン?」
そんな事を話していると、前方を行くハインさんからお呼びが掛かる。
ここまでほぼ一本道であった獣道だが、ここから左右に道が分かれている。
道を無視して更にまっすぐ進むという選択肢もあるし、ここは僕の出番だだろう。
( ^ω^)「お、ちょっと待ってくださいお」
僕は目的であるニスリル銀の成分を分析した術式を込めた杖を構え、探査の魔法を詠唱する。
そしてそのまま杖を地面に突き立てた。
( ^ω^)つ○ ドスッ
┃
パタン
( ^ω^) ━○
( ^ω^)σ「よし、あっちだお!」
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 21:45:16.70 ID:KUBlz4yJ0
- _, _, _, _,
( ゚∀゚)从 ゚∀从川 ゚ -゚)ξ゚听)ξ
(;^ω^)「お? 皆眉をひそめてどうしたお?」
探査魔法の結果を元に、揚々と歩き出そうとした僕に冷たい視線が突き刺さる。
皆何故だが僕の探査魔法に不信感を抱いている様である。
_,
ξ゚听)ξ「探査魔法っていうか、ただの運任せにしか見えないわよ」
(;^ω^)「何言ってんだお? れっきとした探査魔法だお?」
杖の先端に魔法を込め、探査物が探索範囲内にあればその方向に引かれ、杖が倒れる仕組みである。
麓で使った時は範囲内に探査物がなく、杖は倒れなかったのが、
今は倒れた事からするに探査魔法の範囲内に目的であるニスリル銀があるという事だ。
从;゚∀从「ブーンの魔法を信じてないわけじゃねーんだが……」
_
(;゚∀゚)「もうちょっと違うやり方なかったのか?」
(;^ω^)「そう言われても、これが僕が習った探査魔法ですお」
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 21:47:04.31 ID:KUBlz4yJ0
正確には広域探査魔法で、ある一定範囲内にあるもっとも強い探査物の反応を見つける物だ。
これには多少問題があり、近ければ近いほど反応は強くなるが、多くても反応が強くなる。
結果、近くて少ないと遠くて多いの差が見分けられない場合も出て来る。
( ^ω^)「近付いたらもっと範囲の狭くて正確な探査魔法に切り替えるお」
そちらは紐付きの魔法鉱石を用いるもので、それを手に持って提げ、
広域探査魔法と同じく反応のある方に引かれる物だ。
( ^ω^)つ|「こっちはまだ反応なしだから、まだ距離があると思うお」
゚
僕の説明に納得したのか、納得しなくても従うより他に道はないと諦めたのか、全員僕の指す方へ歩き出した。
僕もその後に続き歩き出す。
_
( ゚∀゚)「油断すんなよ。経験上、そろそろ手強いモンスターが出て来る頃合だ」
ジョルジュさんはそう言いながら油断なく辺りに注意を巡らせる。
ツン達も頷き、警戒しながら歩を進める。
やはりクエスト慣れした人がパーティーにいてくれると安心感がある。
そう思った矢先に、それは前方に現れた。
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 21:49:06.55 ID:KUBlz4yJ0
∧∧ ∧∧ ∧∧
(コдボ) (コдボ) (コдボ)
( ^ω^)「コボルドかお」
∧∧ ∧∧ ∧∧
(コдボ) (コдボ) (コдボ) コボォォォッ!?
再び現れたコボルドの集団は瞬く間に屠られて行く。
この程度のモンスターに苦戦するパーティーではない。
从 ゚∀从「またコボルドかよ。歯応え無さ過ぎだろ」
_
( ゚∀゚)「まあ、厄介なモンスターが出て来るよりはいいさ」
_
( ゚∀゚)「それより油断すんなよ。いつ手強いモンスターに襲われてもおかしくない状況何だからな」
僕らはまた歩き出し、山を登る。
警戒しながら進んでいると、それは突然前方の物陰から飛び出して来た。
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 21:53:31.89 ID:KUBlz4yJ0
∧∧ ∧∧ ∧∧
(コдボ) (コдボ) (コдボ)
( ^ω^)「コボルドかお」
∧∧ ∧∧ ∧∧
(コдボ) (コдボ) (コдボ) コボォォォッ!?
三度現れたコボルドの集団だが、何度現れようが雑魚は雑魚だ。
僕らは傷を負う事無く、コボルドを打ち倒す。
それからも進む度、何故か遭遇するのはコボルドばかりだ。
強力なモンスターに襲われるよりはだいぶマシなのだが、雑魚戦とはいえ、積み重ねれば疲れもする。
何となく緊張感も削がれ、あまりいい状況とは言えない。
从#゚∀从「何だこの山? 人を馬鹿にしてんのか?」
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 21:54:27.52 ID:KUBlz4yJ0
ξ゚听)ξ「落ち着きなさいよ。でも、確かに変よね」
ハインさんを宥め、ツンは僕の方へ視線を向ける。
このコボルドの異常遭遇を説明しろとでも言いたいのだろうが、そんなものは僕だってわからない。
( ^ω^)「ジョルジュさんはどう思いますかお?」
_
( ゚∀゚)「わかんね」
経験豊富な冒険者であるジョルジュさんに振ってみるも、返って来た答えは至ってシンプルだった。
僕もわからないし、偶然で片付けられる話でもあるし、わからないのも仕方のない事ではあるのだろう。
从 ゚∀从「ジョルジュよお、お前言ったよな? いつ手強いモンスターが現れてもおかしくない状況だって」
_
( ゚∀゚)「言ったし、状況は変わってねえぞ?」
从#゚∀从「それが何だよ、これ? どこに手強いモンスターがいるんだよ?」
_
( ゚∀゚)「知らねえよ。俺は一般論を言ったに過ぎないし、この状況はラッキーと思うべきだろ」
从#゚∀从「このクソつまんねえ状況のどこがラッキーだよ? ふざけんな!」
_
( ゚∀゚)「ふざけてんのはお前の方だろうが。今回のクエストはモンスター討伐じゃねえんだよ」
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 21:56:37.84 ID:KUBlz4yJ0
(;^ω^)「その、落ち着いてくださいお! えっと、そうだ、だいぶ歩いたし一旦休憩にしましょう」
僕の言葉にツンとクーは頷き、それぞれハインさんとジョルジュさんを引き離すようにして道端に座り込む。
2人の素早い行動に感謝し、僕は採集袋から水を取り出し口に含んだ。
(;^ω^)「ふう……」
一息吐いた僕は自分が全員分の水を所持していた事に気付き、まずはジョルジュさん達の方へ向かう。
( ^ω^)「どうぞですお」
川 ゚ -゚)「うむ、助かる」
_
( ゚∀゚)「サンキュー」
2人に水を手渡し、ツン達の方へ向かおうとした所でジョルジュさんに呼び止められた。
迷惑かけてすまないと謝られてしまった。
(;^ω^)「いや、その、ジョルジュさんは別に悪くないと……」
_
( ゚∀゚)「うん、だからハインが迷惑かけて悪かったなって」
(;^ω^)「お……」
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 21:59:32.89 ID:KUBlz4yJ0
ハインには何というか戦闘を好むとこがあるからと、ジョルジュさんは少し言い辛そうに弁明をした。
ハインさんのそういう部分については僕も知ってはいたが、あそこまで怒りを顕にされるとは少し驚いた。
_
( ゚∀゚)「……あいつは少々怒りっぽいからな」
( ^ω^)「はあ……」
何だかいつものジョルジュさんらしくない歯切れの悪い物言いだが、僕は深くは追及しない事にした。
この状況なら僕ですら多少いらつきを感じるくらいだし、ハインさんが怒っても仕方がない部分もある。
そんな事を考えていると、いつの間にか僕の背後にハインさんとツンが歩み寄って来ていた。
从 ゚−从「ジョルジュ」
_
( ゚∀゚)「何だ?」
从 -∀从「すまなかった、お前に当ったりして」
_
( ゚∀゚)「気にすんな。それより、これから先は油断すんなよ」
从 ゚∀从「ああ、わかってるよ」
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:01:28.57 ID:KUBlz4yJ0
ハインさんが素直に謝ってくれた事により、何となく重苦しく感じていた空気が晴れた様な気がする。
僕が胸を撫で下ろすと、ツンが僕に笑みを向けている事に気付いた。
僕は話し込むハインさん達から離れ、ツンに礼を述べる。
( ^ω^)「ありがとだお。ハインさんを宥めてくれたんだおね」
ξ゚听)ξ「別に私は、ハインにプロらしく仕事しなさいって言っただけよ」
謙遜するツンだが、多分もっと色々と言葉を重ねてハインさんを宥めてくれたんだと思う。
僕は笑って、再度ありがとうと述べた。
ξ゚听)ξ「それより、この状況だけど……」
( ^ω^)「お?」
ξ゚听)ξ「どう思う? 何か気付いた?」
( ^ω^)「皆目見当さっぱりポンだお」
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:03:21.82 ID:KUBlz4yJ0
偶然と考えても有り得ない話ではない。
コボルドクラスのモンスターなら数は多いし、山の中腹ぐらいならいくらでもいるだろう。
ただ、コボルドも武器や道具を扱えるぐらいの知性は持っている。
そんなモンスターが明らかに自分達より強い僕らに何度も襲い掛かって来るだろうか。
( ^ω^)「違う群れだったとしても、何かしら見てたりわかってたりすると思うんだけどね」
ξ゚听)ξ「そうよねえ……。そういえば私、1つだけ気になってる事があるのよね」
( ^ω^)「気になる事?」
ξ゚听)ξ「1番最初に遭遇したコボルド覚えてる?」
( ^ω^)「覚えてるけど、特に何もなかったお?」
ξ゚听)ξ「あの時って、私達の周囲を取り囲む様に出て来たでしょ?」
( ^ω^)「そうだったおね。それが何か変なとこあったかお?」
ξ゚听)ξ「それが変だって話じゃなくて、変なのはそれ以降よ」
ツンの話を元に、僕は以降のコボルドとの戦闘を考える。
そうした所、僕はある事に気付いた。
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:05:10.60 ID:KUBlz4yJ0
( ^ω^)「皆、前から襲い掛かって来たおね」
前方、山の上の方からだ。
それが何を意味するか見当も付かないが、何だか嫌な予感はする。
ξ゚听)ξ「包囲したり待ち伏せしたりとか、コボルドでもその位の頭はあるはずなのに、不自然よね」
( ^ω^)「考え過ぎ……だといいけど、ちょっと警戒強めるべきだおね」
僕達はこれ以上考えても想像の域を出ないと結論付けて話を終えた。
何度も言うが今回はモンスター討伐クエストではないので、状況次第でいつでも撤退出来るように構えておくべきだろう。
ξ゚听)ξ「鉱石は近いの?」
( ^ω^)つ|「ちょっと待ってお」
゚
( ^ω^)つ\「お? 反応有りだお、結構近いお」
゚''
ここまで広域探査魔法に従って歩いて来たが、いつの間にかかなり近付いていた様だ。
この分ならこのまま無事にクエストを終えられそうかもしれない。
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:07:10.89 ID:KUBlz4yJ0
川 ゚ -゚)「ようやくか」
いつの間にか側に来ていたクーが物珍しそうに僕の手にある魔法鉱石を覗き込む。
糸に繋がれた魔法鉱石は、何かに引っ張られるかのように不自然に持ち上がり揺れている。
_
( ゚∀゚)「お、見付かったのか? どっちだ?」
( ^ω^)σ「向こうみたいですお」
从 ゚∀从「その方向だと道はねえな。うし、気合入れて行くか」
ハインさんが2本の蛮刀を抜き放ち、道から逸れて草木が生い茂る未開の山中に足を踏み入れて行く。
僕らも慌ててそれに続いた。
ξ゚听)ξ「ちょっと、先走らないでよ」
从 ゚∀从「何が出て来るかわかんねえんだ。さっきの罪滅ぼしに俺が斥候になってやるよ」
ξ゚听)ξ「あんたはただ暴れたいだけでしょうが。まあいいわ。気を付けてよね」
先頭にハインさん、ツン、クー、僕と続き、殿にはジョルジュさんが付いた。
先ほどまでとは違い、道なき道の上、下草の背は高く、周りを囲む木々の密度も高い。
ここで戦闘になるのは避けたいとこではある。
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:09:35.77 ID:KUBlz4yJ0
( ^ω^)つ\「お、そこ左ですお」
゚''
从 ゚∀从「オーライ。って、歩きづれえな」
探査魔法を維持したまま山中を進む。
先ほどまでよりは慎重に歩を進め、警戒を密にする。
そのまま探査魔法に従い歩き続けると、少しだけ開けた場所に出た。
正面は山肌が露出し、直角に切り立った崖の様になっていて登るにはロープや足場用のピッケルが必要だろう。
それ以外の周囲は木々に囲まれ、その奥は良く見えない。
川 ゚ -゚)「行き止まりか?」
( ^ω^)つ\「いや、ここだお。多分、あの辺に……」
゚''
僕は探査魔法の引かれる方向に進み、正面の崖にある窪みを見付ける。
小さな洞穴になっているこの中にニスリル銀の鉱床があるとみた。
_
( ゚∀゚)「随分狭い穴だな。モンスターの気配は感じねえが」
( ^ω^)「ここは僕が掘った方が良さそうですおね。皆は周囲の警戒をお願いしますお」
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:12:46.76 ID:KUBlz4yJ0
僕は身を屈め、洞穴の中に入る。
幸いな事に、入り口は狭かったが中は人が立てる位の高さはある様だ。
( ^ω^)「さてと……こっち側の壁みたいだおね」
僕は背負っていたピッケルを手に持ち、まずは大雑把に壁を削って行く。
採掘は数をこなしていないのであまり得意な方ではないが、場所の見当が付いているので失敗はしないだろう。
( ^ω^)「お? これは……ニスリルじゃないけど魔法鉱石っぽいお。ラッキー」
目的の鉱石を探しつつ、役得とばかりに高値が付きそうな鉱石も採掘しておく。
無論、独り占めするつもりはなく、この分の儲けは報酬として皆で分け合うつもりだ。
そんな事を繰り返し、ようやくニスリル銀らしい鉱床が見付かった時、外の様子が慌しくなった。
何事かと手を止めて、出口の方を見ると洞穴の中にクーが慌てた様子で入って来る。
川;゚ -゚)「見慣れぬモンスターと遭遇した。そっちの状況はどうだ?」
( ^ω^)「今ニスリル銀らしい鉱床を見付けたとこだお。5分もあれば掘れると思うお」
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:14:06.57 ID:KUBlz4yJ0
( ^ω^)「それより、見慣れぬモンスターってどんなのだお?」
クーの話では、そのモンスターは巨大な蛇の様な外見をしているが、恐ろしく速く動き、頭を伸ばして攻撃してくるという。
川;゚ -゚)「緑色の斑模様で、ジョルジュ達も知らないモンスターの様だ」
( ^ω^)「緑の斑で速く動く蛇……どっかで聞いた事あるような……」
ジョルジュさん達が戦っているらしいが、攻撃しては周囲の木々の中に姿を隠すそのモンスターに手を焼いているらしい。
ここを離れて追うわけにもいかないから、なかなか厳しい状況のようだ。
(;^ω^)「じゃあ、特急で作業終わらせて撤退した方がいいかもしれんね」
僕は3分で作業を終わらせるからとクーに告げ、ピッケルを振る。
蛇の様なモンスターは珍しくないが、そこまで素早く動くのは珍しい。
掘りながらも僕は、その緑の斑の素早い蛇の正体を思い出そうとしていた。
( ^ω^)「……あ、わかった、バンダースナッチだお」
バンダースナッチ、山森に住み、その素早い動きと強力な牙で獲物を襲う手強い魔獣だ。
かなり珍しい部類で、あまり知られてはいないモンスターである。
僕もそれをじいちゃんの書物で見た覚えがあっただけで、実物は見たことがない。
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:17:05.39 ID:KUBlz4yJ0
(;^ω^)「あれ……確かバンダースナッチってかなりヤバいモンスターだった様な……」
じいちゃんの書物の内容を思い返して行く内に、僕はその本のある1節を思い出した。
『バンダースナッチと遭遇したら逃げるべし。
何故ならば、そこにはバンダースナッチだけではなく、必ず奴の影があるからだ』
(;^ω^)「ぬおおおおおお! 急げ、急げ僕!」
僕は全力でピッケルを振り、多少形を壊してしまう事を厭わずにニスリル銀を掘り出した。
(;^ω^)「ミッションコンプリート! 脱出だお!」
鉱石を採集袋に入れ、ピッケルを背負って転がる様に洞穴から脱出する。
開けた視界の先には、バンダースナッチの一撃を受け止めるジョルジュさんの姿が見えた。
____
@ ゚ V V)「シャァァァッ!」
_
(;゚∀゚)「チッ! ちょこまかと!」
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:18:45.13 ID:KUBlz4yJ0
从#゚∀从「うぉぉぉぉりゃぁぁぁぁッ!」
攻撃を受け止められ、一瞬動きが止まったバンダースナッチにハインさんが斬りかかるが、
大蛇の巨体は一瞬にして木々の中に消えて行く。
从#゚∀从「クソが! 逃げんじゃねえ!」
ハインさんはこちらを一瞥し、僕がいる事を確認してこの場を守る必要がないと判断したのか、
バンダースナッチの後を追おうとする。
(;^ω^)「ハインさん、ストップ! 撤退だお! 今すぐ逃げるお!」
从#゚∀从「あ? どういう事だ?」
ξ;゚听)ξ「ブーン! ニスリル銀は?」
(;^ω^)「ばっちり採掘完了だお! もうここにいる必要はないお!」
从 ゚∀从「だったらこっちは好きにさせて貰うぜ? なめられっ放しは癪に障る」
怒鳴り付けるような口調で言い放ち、ハインさんは僕に背を向ける。
あくまでバンダースナッチを仕留めるつもりの様だが、それは認められない。
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:20:19.69 ID:KUBlz4yJ0
(;^ω^)「駄目だお! 今すぐ逃げるんだお!」
_
( ゚∀゚)「おい、落ち着け、ブーン」
状況を把握していない皆には、僕の慌て様は理解出来ないのだろう。
ジョルジュさんはやんわりと僕を宥め、ここを守る必要がない今なら何とかなるだろうと楽観的な見方をする。
(;^ω^)「あれは、バンダースナッチはどうでもいいんだお!」
_
( ゚∀゚)「バンダースナッチ? それがあのモンスターの名か? しかし、どうでもいいってどういう事だ?」
(;^ω^)「バンダースナッチがいるとこには、必ずもう1匹モンスターがいるんだお!」
川 ゚ -゚)「「もう1匹? それってどんな……」
不意に空が陰った。
黒い影が僕らを覆う。
見上げ、それを視認するよりも速く、舞い降りた何かが大地を抉った。
_/~
ミ,,__゚ノ,,)
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:22:18.34 ID:KUBlz4yJ0
ξ;゚听)ξ「な、何よ、あれ……?」
四方に飛び、辛くもその一撃をかわした僕らが目にしたもの。
悠然と2本の脚で大地に立つ、背に2枚の翼を持つ巨大な深い緑の体躯。
その手には長い鉤爪、醜悪な顔には長い牙。
眼光は鋭く、獲物を見定めるような目で僕らを睨む。
(;^ω^)「亜竜、ジャバウォックだお」
僕は呟く様に目の前のモンスターの正体を皆に告げる。
亜竜ジャバウォック、その強さは竜に匹敵し、凶暴な事この上ない。
_
( ゚∀゚)「ブーン」
(;^ω^)「何ですかお?」
ジョルジュさんは僕の方を見ず、ジャバウォックから目を離さずに呼び掛ける。
僕もジャバウォックから視線を外さず、それに応じる。
_
( ゚∀゚)「ツンとクーを連れて逃げろ」
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:24:52.64 ID:KUBlz4yJ0
戦わずともわかる、肌で感じるその力。
まともに戦えば全滅すると、ジョルジュさんは冒険者としての経験から判断したのだろう。
(;^ω^)「逃げるなら全員でですお」
_
( ゚∀゚)「当たり前だ。当然俺達も逃げる。お前らが先に行けって話だ」
ξ;゚听)ξ「2人だけにこの場を任せるのは無茶よ!」
いっそ散り散りに逃げて麓を目指した方がと提案するツンだが、周辺にはバンダースナッチもいる。
誰かが1人でバンダースナッチに遭遇する事も考えると、分散するのは得策ではない。
从 ゚∀从「いいから行け。元はと言えば俺の判断ミスだ」
そう言うなり、ハインさんは僕らの返事を待たずにジャバウォックに斬り掛かる。
ジャバウォックの注意を惹き、囮になるつもりなのだろうが無謀過ぎる。
_/~
ミ,,__゚ノ,,)「グギャォォォッ!」
从#゚∀从「くたばれッ!」
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:27:15.40 ID:KUBlz4yJ0
振り下ろされる爪の一撃をかわし、ハインさんはジャバウォックの脚を斬り付ける。
しかし、その鱗は斬撃を通さず、ハインさんは後方に飛び退いた。
从;゚∀从「チッ、何て硬さだよ」
_/~
ミ,,__゚ノ,,)「グギュルォォォッ!」
_
( ゚∀゚)「どりゃぁぁぁッ!」
ハインさんに追撃を仕掛けて来たジャバウォックの一撃を、ジョルジュさんがかばう様に前に出て、矛先を逸らす。
大地を抉り取るジャバウォックの一撃を正面から受け止めるのは、ジョルジュさんの膂力をもってしても厳しい様だ。
ξ;゚−゚)ξ「……」
(;^ω^)「ツン、駄目だお! 今は逃げる手段を考えるお!」
ξ;゚听)ξ「けど……!」
ジョルジュさん達に加勢に行こうとするツンを引き止め、僕はここから逃げる手段を模索する。
今ならジャバウォックはジョルジュさん達に気を取られているから、僕達だけなら逃げられるだろう。
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:29:23.01 ID:KUBlz4yJ0
川 ゚ -゚)「とはいえ、あの2人をおいて逃げるつもりはないんだろ?」
( ^ω^)「モチのロンだお」
( ^ω^)「ひとまず、2人とも先に逃げるお。バンダースナッチには気を付けて、麓目掛けて走るんだお」
ξ;゚听)ξ「私達だけ先に逃げられるわけないでしょ?」
川;゚ -゚)「このクエストは私が依頼したものだ。それなのに自分だけ先に逃げるなんて出来るか!」
( ^ω^)「……2人とも、ここにいても足手まといになるだけだお」
ξ;゚−゚)ξ「!?」
川;゚ -゚)「それは……」
僕は心を鬼にし、事実を告げる。
現状の戦力では明らかに勝ち目のない相手なのだ。
逃げる以外に手はなく、2人が残ったとしてもそれはジャバウォックに対しての何ら対抗手段になり得ない。
( ^ω^)「これは全員で生き残る為の手段だお」
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:31:16.65 ID:KUBlz4yJ0
( ^ω^)「全員でここに止まってあいつを倒すのは無理。全員固まって逃げるのも厳しいお」
( ^ω^)「かと言ってバラバラに逃げると、一人が狙われた場合やバンダースナッチの存在もあるから得策じゃない」
( ^ω^)「だから取り敢えず二手に別れて逃げるお」
( ^ω^)「わかったおね?」
ξ;--)ξ"川;゚ -゚)" コクッ
僕の有無を言わせぬ強い物言いに、2人は頷いてくれる。
ツンは納得がいっていない様にも見えるが、クーを1人で逃がす事が危険な事もわかってくれたはずだ。
ξ゚听)ξ「ブーンはどうするの?」
( ^ω^)「勿論ジョルジュさん達と3人で逃げるお」
その為の手段も考えているとツンを安心させ、2人の背中を押す。
川;゚ -゚)「すまない、私が……」
- 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:33:29.30 ID:KUBlz4yJ0
ξ゚听)ξ「そういう話は後! ……ブーン、先に下で待ってるからね?」
( ^ω^)" コクッ
2人は麓目掛けて走り出した。
これが山中である意味助かったと思う。
傾斜に従い走れば、どんな形であれ山から抜ける事は出来る。
日も出ているし、登って来た道に辿り着くのはそう難しくないはずだ。
これが見知らぬ森の中だったりすると、一直線に走っているつもりでも下手すれば迷って出られない可能性もある。
( ^ω^)「さて、こっちものんびりしてられないお」
視線をジョルジュさん達の方へ向けると、防戦一方の2人の姿が目に入る。
先のハインさんの一撃で、生半可な攻撃は通らないと判断したのだろう。
見た所、ジャバウォックの鱗は斬撃に対する耐性がかなり高いようだ。
ジョルジュさんとハインさんの武器、どちらも相性が悪い。
ジョルジュさんの両手斧は重量があるからまだマシだが、ハインさんの蛮刀はことにだ。
あれに物理ダメージを通すなら、今この場にはいないミルナさんかツンの方が適している。
先ほどはツンがジョルジュさん達の加勢に行くのを止めはしたが、
相性を考えるとツンの行動は間違っていたわけではなかったのだ。
だからといってあれをツン1人で倒せるとは到底思えないが。
- 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:35:06.52 ID:KUBlz4yJ0
(;^ω^)(本当はあの手の強装甲のモンスターに一番有効なのは魔法なんだろうけど……)
ジャバウォックに近付くと、空気が異質に感じ取れるくらい魔力の放出が多い事がわかる。
それはすなわち、そのまま魔法に対する抵抗が高い事を示す。
残念ながら僕の魔法程度では、大したダメージは与えられないだろうと判断するしかない。
スペシャルで魔力を高めるにも、この狭い場所では走り回るには厳しいものがある。
一か八か大技を打つ手もあるが、必殺のブーン・クラッシュが止められでもしたら、ただでは済まないだろう。
有効な対策手段を練るにはジャバウォックの情報が不足し過ぎている。
やはり最初の考え通り、逃げるのが最上の手だと思う。
( ^ω^)「ジョルジュさん、ハインさん!」
_
( ;゚)「何でまだいるんだよ! お前も逃げろ!」
从从;゚)「こっちは引き受ける。だから急いで山を降りやがれ!」
2人はこちらを見ずに僕を怒鳴りつける。
一瞬たりともジャバウォックから目を離す余裕はない。
( ^ω^)「短い時間だと思いますけど僕があいつの目を潰します。その隙に一緒に逃げますお!」
閃光の魔法を使い、目眩ましを仕掛けるので合図と共に目を閉じてくれと2人に伝える。
凶暴なモンスターの前で目を閉じるなど自殺行為に等しいので、唱えるタイミングは見定めねばならない。
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:37:20.19 ID:KUBlz4yJ0
- _
( ;゚)「タイミングは任せる!」
从从;゚)「信じるぜ、ブーン!」
(;^ω^)「ま、任せてくださいお!」
緊張のあまり若干声が上擦ってしまったが、気にせず戦列に加わる。
もっと後方から仕掛ける手もあるが、魔法に注視させるならその方が効果的だ。
_/~
ミ,,__゚ノ,,)「シャギャァァァッ!」
;;(;^ω^);;「!?」
間近で対峙すると身が竦む思いだ。
しかしながら僕はこれよりももっと強大なモンスター、天空竜と対峙した事もある。
あの時は本気の殺気は向けられていなかったとは思うが、それでもあの時の恐怖を思えば今の方がまだマシである。
_/~
ミ,,__゚ノ,,)「グギャォォォッ!」
- 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:40:45.35 ID:KUBlz4yJ0
(;^ω^)「っと、危ねっ!」
从;゚∀从「出過ぎるな、馬鹿!」
(;^ω^)「大丈夫ですお。防御魔法も張ってますしね!」
振り下ろされるジャバウォックの爪をかわし、再び前に出る。
そしてその場で、魔法の詠唱を始めた。
(;^ω^)「さあ、もう1回僕を狙って来いお!」
知性が低いわけではないが、ジャバウォックは人語を解する事はないと書物にあったのを覚えている。
言葉が通じるのなら、先の僕の作戦は筒抜けという事で意味がなくなる。
呼びかけたのは注意を惹く為だ。
僕は杖を振り、その先端をジャバウォックに向ける。
_/~
ミ,,__゚ノ,,)「シャギャァァァッ!」
(;^ω^)「来た! 2人とも、目をッ!」
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:42:22.59 ID:KUBlz4yJ0
2人が目を閉じたか確認する余裕はないが、閉じてくれたものと信じて杖を前に向けたまま、
後方に大きく飛び退り、魔法を解き放つ。
(;-ω-)「フラッシュ!」
_
(;-∀-)从;-∀从「!」
_/~
ミ,,__゚ノ,,)「!?」
一瞬の間の後、耳に響くこれまでとはトーンの違う咆哮。
_/~
ミ,,__xノ,,)「グゴァァァァッ!?」
僕は目を開け、閃光魔法が効果をなしたのを確認し、全速力でその場から走り去る。
ジョルジュさんとハインさんも僕が指示をするまでもなく、僕の横を既に並走していた。
_
(;゚∀゚)「ナイスだ、ブーン!」
(;^ω^)「まだ助かったわけじゃないですお。それより、魔法かけますから気を付けて走ってくださいお。ksk!」
- 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:44:47.09 ID:KUBlz4yJ0
僕はジョルジュさんの返事を待たず、エア・シューズの魔法をジョルジュさんにかける。
エア・シューズは自身の行動速度を上げる魔法だが、術式をいじれば他者にもかける事は出来る。
自分にかけるよりはだいぶ効果は落ちるが、それでもこの場面では有効な魔法だ。
_
(;゚∀゚)「うぉっ!? 何だこりゃ? 速いが走り辛いな」
1歩で進める距離が変わるので、慣れないと奇妙な感覚だろうが、ジョルジュさんはすぐにコツを掴んだのか、
どんどん先に走って行く。
あまり先に行かれて別々に逃げる事になるのはよろしくないので、すぐに追いかけなければならない。
僕は次にハインさんに魔法をかけようと右を向いた。
油断していたつもりはない。
ほんのわずかな時間、横を向くだけだ。
しかし、そんな短い瞬間を狙い澄ましたかのように正面から何かが飛来した。
____
@ ゚ V V)「シャァァァッ!」
(;゚ω゚)「しまッ──」
気配を感じ、視線を戻した時には目の前に大きく開かれたバンダースナッチの大顎があった。
白く輝く牙が生命の終わりを告げるべく、上下から挟み込まれる。
- 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:46:15.28 ID:KUBlz4yJ0
从#゚∀从「でええええりゃぁぁぁぁッ!!!」
それよりも一瞬速く、僕の前に踊り出たハインさんが2振りの蛮刀を交差させてバンダースナッチの牙を受け止める。
そしてそのまま力任せに蛮刀を振り広げ、バンダースナッチの顎を切り裂いた。
____
@ ゚"{{ }}"「!?」
バンダースナッチは声も上げず地面に落下する。
仕留め切れたかどうかはわからないが、あの様子では恐らく追っては来れないだろう。
(;^ω^)「た、助かりましたお」
从 ゚∀从「なに、やっとまともな仕事が出来たってとこだ」
从;-∀从「このまま終わってたら、2度と依頼してもらえないような駄目っぷりだったしな」
(;^ω^)「そんな事は……まあ、その話は後にして、魔法かけますから気を付けてくださいお。ksk!」
僕はハインさんにエア・シューズの魔法をかけ、自分にもかける。
ハインさんもすぐにコツを掴み、全速力で麓を目掛けて走り出した。
僕は元々使い慣れているので、ハインさんを引き離さないように速度を調整しながら走る。
- 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:49:47.44 ID:KUBlz4yJ0
从;゚∀从「ジョルジュの姿が見えねえな。どこまで走ればいい?」
(;^ω^)「多分さっきので離されたと思いますけど、前にいるはずですお。一気に麓までは厳しいですおね」
速度は上げたが体力的なものは変わらないので、全速力で長時間走っていられるものでもない。
出来ればジョルジュさんに追い付いてから速度を緩めたい所だ。
そんな事を言っていたら、僕らは木々を抜け、登って来た道に出る事が出来た。
从;゚∀从「いた、ジョルジュ!」
下る道の先、ジョルジュさんの背が見えた。
僕らはジョルジュさんに追い付き、速度を落とす。
_
(;゚∀゚)「おう、無事か?」
(;^ω^)「何とか……。ツン達は見かけませんでしかたお?」
まだ2人の姿は見掛けてないらしく、僕らはそのまま走り続けた。
それからまたしばらく走り、道が二手に別れた場所でしゃがみ込んでいるツン達に追い付く事が出来た。
- 62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:51:45.34 ID:KUBlz4yJ0
ξ;゚听)ξ「ブーン! それにハイン達も無事なの?」
(;^ω^)「無事だお。てか、何でこんなとこで待ってんだお」
合流出来たのは単に運が良かったからだ。
逃げる方向は適当だったのだから、通って来た道に戻れても知らないうちに追い越している可能性もあった。
ξ;゚听)ξ「別に待ってたわけでもないんだけどね」
川;゚ -゚)「すまない……私が……」
どうやらクーが体力切れでもう走れる状態ではなかったようだ。
それで小休止している所に、僕らが追いついただけの事らしい。
_
(;゚∀゚)「ここまで追っては来ねえかな?」
从;゚∀从「そいつはわかんねえが、どうやら別の客がご来店のようだぜ?」
ハインさんは蛮刀を構え、僕らが降りて来た方を見据える。
そこに走って来た一群、それは……
- 64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:53:20.05 ID:KUBlz4yJ0
∧∧ ∧∧ ∧∧
(コдボ) (コдボ) (コдボ)
(;^ω^)「……ああ、そういう事かお」
もう何度目かわからないコボルドとの遭遇。
僕はようやくこうもコボルドと遭遇するわけを理解出来た。
ξ゚听)ξ「あの2匹に追い立てられてたってわけね」
僕らと同じく、バンダースナッチとジャバウォックから逃げ出して来たのだろう。
あの2匹ははある種の共生関係にあり、バンダースナッチが追い立てた獲物をジャバウォックが狩り、
バンダースナッチはそのおこぼれに与るという記述があったのを覚えている。
(;^ω^)「……って、事はあいつらごく最近出るようになったって事かおね」
僕が戦列に加わるまでもなく、次々とハインさん達によってコボルドは倒されていく。
僕の呟きは誰にも届かなかった様で、誰からも反応はない。
僕は浮かんだ疑問はひとまず保留にし、山を降りる事にした。
- 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:55:15.60 ID:KUBlz4yJ0
幸いにもそれ以降はコボルドとも遭遇する事無く、無事下山する事が出来た。
(;^ω^)「やっと着いたお……」
ξ;゚听)ξ「流石に疲れたわね……」
川;゚ -゚)「……」
(;^ω^)「お? クー、どうしたお?」
川;゚ -゚)「いや、私は何の役にも立てなかったなと思ってな……」
クーは悲痛な表情で俯き、後悔の言葉を吐く。
今回のは想定外も想定外な事だったので、何も出来なくても仕方のない事だったとは思う。
ξ゚听)ξ「最初は誰だってそんなもんよ」
_
( ゚∀゚)「生きてりゃ次がある。それに今回は、皆大した働きは出来てねえしな」
从;-∀从「うるせえな。……悪かったよ、反省してる」
ハインさんがさもすまなそうに頭を掻いて謝罪すると、その仕草がおかしかったのか、皆からごく自然に笑いが漏れた。
ようやく僕らは助かったという事を実感出来たのかもしれない。
- 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:57:31.71 ID:KUBlz4yJ0
( ^ω^)「まあ、何にせよ、クエストは成功だお。お疲れ様でしたお」
僕は背負っていた採集袋を掲げ、皆に微笑みかける。
かなり危険な場面もあったが、クエスト自体は成功だ。
ニスリル銀はちゃんと採掘出来たので、あとはペンダントの解呪を行うだけだ。
ξ゚听)ξ「さあ、馬車に戻ってヴィップの町に帰りましょう」
( ^ω^)「お! そうするお」
こうして僕らは全員無事に馬車に戻り、ニゲット山を後にした。
第九話 ニゲット山の戦い 終
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