川 ゚ -゚) クーは夜の管理者のようです

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 13:20:00.85 ID:80yzHpW/0
持ち主の服装が本の中でしか見たことの無いような物ならば、彼女達の住む所もまた、本の中でしか見たことの無いような洋館であった。
蔦の様に複雑に絡み、しかし統一のある文様を編まれた鉄格子の門の向こうの庭は、
花の類は無いものの刈り揃えられた芝生により彩られている。
その向こうの洋館は、大きさで言えば学校、ニ階建ての校舎。人が――しかも二人で――住むには大きすぎる。
ずらりと並んだ窓から数えられる部屋の数は、明らかに二より多い。

ζ(゚ー゚*ζ「……ここだけヨーロッパ(ぼそっ)」

川 ゚ -゚) 「何か言ったか?」

ζ(゚ー゚;ζ「ううん、何でもない」

開錠したミセリが門を押すと、ぎ、と言う鉄の軋む音が連続し、人の通る隙間を作る。
まずクーとデレが通り、最後にミセリが入ると錠を下ろす。
どちらの動作をする時も、ミセリの利き手である左には淡い光が宿っていた。

玄関に着く。館の木製のずっしりとした扉を開くのも、ミセリが担当した。
当然のように左手に光を宿して押す。軽く触れただけに見えた動作に従い、その扉は控えめな音を立てて主と来客を中に迎え入れた。

その内部は、欧州の屋敷に見られる様な明らかに値の張りそうな調度品に装飾されては居なかった。
しかし、吹き抜けた天上から吊られた巨大なシャンデリアと、それの放つ上品で、しかしながら眩すぎない灯りに照る白の壁、
それと扉から正面先に構える階段まで続く蒼の絨毯は、装飾の少なさもあって、すっきりとした高雅さを演出していた。

ミセ*゚ー゚)リ「それでは、食堂の方へと案内させて頂きます」

階段を上らずに左に曲がり、扉を押す。
その先、廊下の白壁もまた控えめな灯りに照らされており、蒼の絨毯が敷かれていた。
違うところがあるとすれば、天上があり、灯りは壁に等間隔に配された燭台に灯る蝋燭である事だろう。
視界の先、ずらりと向こうまで並ぶそれは距離の演出にも一役買っている。

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 13:25:05.39 ID:80yzHpW/0
この廊下を向こうまで歩くのか、と言う考えとは逆に、ミセリはすぐ右側の扉を押した。
続いて、デレも入る。クーが入ったところでミセリは一礼して、扉を閉めた。

その部屋もまた、広く空間を取っていた。
天上は廊下と変わらない――しかし、それでも高い――が、灯りは視界先、部屋の中央に吊るシャンデリアへと戻っている。
ホールのものよりもスケールや豪奢さでは劣るが、それゆえ落ち着いた輝きを部屋に放っている。
床は絨毯の無い白床に変わり、置かれた長テーブルに蒼のテーブルクロスが敷かれている。
そのテーブルの長さを備え付けの椅子の数で言えば、片側だけでおよそ三十。
食事をお持ちしますので適当な椅子にお座りになってお待ちください、とミセリは一礼して奥の方へ歩いて行った。
その言葉に従い、クーは入り口から一番近い椅子に着席。デレはその左の席を選んだ。

ζ(゚ー゚;ζ「ねぇ、クー?」

何だ?の応答を聞いてから、デレは疑問を投げる事とした。

ζ(゚ー゚;ζ「本当にここ、二人だけで住んでたの?」

川 ゚ -゚) 「そうだな」

彼女らしく、返答は一発で、最も簡単な形で出された。
しかし、二人だけで暮らしていて食堂の椅子は六十も必要だろうか?

川 ゚ -゚) 「私の祖母……先代『夜の管理者』の趣味でな。
      本人曰く "自棄になって作った" らしい」

自棄でこれだけのものが作れるのか、とデレは驚愕。
一体、それほどの金をどこから持ってくるのだろう。
そこでふと、デレは先程のクーの言葉に聞き慣れないワードを確認する。


7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 13:30:20.82 ID:80yzHpW/0
ζ(゚ー゚*ζ「『夜の管理者』……って?」

川 ゚ -゚) 「魔獣の討伐を生業とする魔獣狩りの、まあ何だろうな……勝手に名乗ってるブランドだ。
      ちなみに『夜の管理者』は大海創世から続いている唯一のブランドらしい」

ζ(゚ー゚;ζ「らしいって……詳しくないの?」

川 ゚ -゚) 「まあ私の祖母はブランド棄てようとしていたからな。先々代は別の家だったし、私の家には資料が少ないわけだ」

『夜の管理者』についての会話を交わし終えると、タイミングを計ったようにミセリがパンの盛り付けられた大きな籠を運んできた。
続いて、二人の目の前に銀のナイフやフォーク、スプーン、何故か箸、続いてサラダの皿とスープが置かれる。
金の飾り字によりワンポイントの施された皿もまた、クーの祖母の趣味だろうか。
そうだとするならば、彼女はあまり派手好きではなかったことが想像される。

ミセ*゚ー゚)リ「それでは、ごゆっくり」

盆を前に抱えて、ミセリは一例。
くるりと方向転換し、蝶に結んでも余るエプロンの帯を歩みと共に踊らせ、再び奥へ向って行った。

あくまで普通に出された品物を前に、デレは硬直。
その意思を汲み取ったクーは、一言告げてやった。

川 ゚ -゚) 「別にマナーを気にする必要は無いぞ?私も知らんし、多分ミセリも知らないだろう」

これは驚き。見たくれからして慣れていそうな彼女らも、正式なマナーは身に着けていないらしい。
何故?とデレは問う。その返答の際、クーはふふと口元を緩ませ、

川 ゚ -゚) 「屋敷に住んでいるのは二人だけだったし、そこでマナーを気にし始めるのはままごとみたいなものだろう?」


9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 13:35:02.83 ID:80yzHpW/0
返答に、思わずデレの顔から笑みがこぼれる。
その様子に、クーは頬を膨らませて、

川 ゚ -゚) 「何だ、そんなに笑わなくても良いじゃないか」

ζ(^ー^*ζ「ふふっ……だって、こんな屋敷に住んでいて、それでもテーブルマナーはおままごとって……おかしい」

川;゚ -゚) 「べ、別に世間知らずな訳じゃないからな……多分」

そこでクーはスープに手をつけた。
横顔が赤く染まっていたのを見ると、恥隠しのつもりだろう。
デレも、冷めないうちに食事に手をつけることにした。

合間にパンを齧りながら、スープとサラダを食し終えると、タイミングを計っていたかのようにミセリが次の料理を運んでくる。

何でアジのひらきなのかは気にしない方が良いのだろうか。
後でミセリに聞いてみたところ、彼女は作法ではなく作りたいものを作って出しているらしい。

ミセ*゚ー゚)リ「屋敷に住んでいるのは三人だけですし、それと作法を気にしすぎるとメニューに偏りが出てしまいますので」

……言い訳っぽいのは気にしない方が良いだろうと、デレは判断した。

メニューがアジのひらきなのはともかく、味は良かった。

ζ(゚ー゚*ζ(でもアジのひらきとパンを一緒に食べるのはどうなんだろう……)

ちらりと、隣のクーを見る。いたって普通にアジのひらきとパンを食べていた。
ドレスにも似た黒のワンピースを着た欧州の雰囲気を漂わせる彼女が箸を器用に使ってアジを食べているのは……
否、日本文化は今や多国籍化しているので、自分の知らない所ではそういうことも普通なのだろうと、デレは無理矢理に決定した。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 13:40:00.37 ID:80yzHpW/0
食後に出されたコーヒーを啜っていると、クーの懐から携帯電話の着信音が響く。
何の装飾も無い、無機質なアラームだ。
それを取り出し、画面に表示されたナンバーで相手を確認しているクーを見て、

ζ(゚ー゚;ζ(どうも私の中の『クー=欧州系御嬢様』のイメージは崩れつつあるなぁ)

などと考えつつ、再びコーヒーカップに口付ける。

川 ゚ -゚) 「ミセリ、デレを部屋に案内して欲しい」

ζ(゚ー゚;ζ(え?誰かから電話が来たんじゃないの?)

口にした用件からして、ミセリから電話がかかってきたと言うことは無いだろう。
疑問を解決する間もなく、奥――恐らくは調理室――から出てきたミセリがデレに向って一礼する。

ミセ*゚ー゚)リ「それでは、お部屋の方にご案内させて頂きます」

・  ・  ・

クー以外の人の居なくなった食堂は、それでもシャンデリアによって照らされていた。
唯一の主人の為、シャンデリアに光は灯る。その主人、クーは携帯電話を操作し、先程かかって来た番号との通話を開始する。

川 ゚ -゚) 「もしもし、夜の管理者だ」

『おう、さっきは都合が悪かったか?』

川 ゚ -゚) 「まあ、少しな。ところで、私に電話をかけてきたと言うことは、何か思い出してくれたのか」

電話の向こう、ジョルジュ長岡の声が僅かに曇る。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 13:45:00.41 ID:80yzHpW/0
『ああ……都合の悪いことに、あんたにかけた迷惑も含めて全部、な。
 それも含めて話そう。どうもそうするしか俺には恩を返す手は無いようだ』

川 ゚ -゚) 「ありがたい。とりあえず適当な所から話してくれないか」

まず男の口から出たのは、自分に憑いていた魔獣は『魔神』……即ち、はるか昔に実在した神そのものであると言う事だ。

『まあ疑問としてはまず、"何故はるか昔世界を去った神が今の世界に干渉しているか"なんだが、それに関しては俺には解らねぇ。
 アエーシュマ……血塗られた武器を持ち、暴力を司る神……だったか。何故奴が俺に憑く事を必要としたのか……それも解らねぇ』

川 ゚ -゚) 「奴らが何かの形でこの世界に干渉しているとして、何かに憑く事でしか具現できないからだろう」

『ああ……そうであるからこそ、わざわざ俺に憑いた理由が解らねぇ』

川 ゚ -゚) 「どういう事だ?」

『俺は魔獣狩りの中でも機械専門だ。さらに細分化すると、大型砲撃兵器を扱う人間になる。つまり、あまり体を動かすのは得意ではない。
 そして戦闘中、奴の思考はこう語っていた。"全体的なスペックで言えばこの体は『夜の管理者』には劣っている"。ここまでが一つ目のポイント。
 戦闘中に俺が使っていた衝撃増加の能力や魔力からの武器生成は間違いなく魔術だ。これが二つ目のポイントだ』

そこで、と一旦区切り、

『この二つのポイントと、俺が暴れていたときには裏空間が展開されていた―つまり、裏空間を構成できる魔術師が存在した事。
 これらを踏まえれば、別に俺以外にも憑くべき相手は沢山居たと言う事が浮き彫りになって来る訳だ』

確かに、『全体的なスペック』に魔術的な範囲を加えれば、魔術の使えないジョルジュに憑く理由は無い。
アエーシュマが憑いた事によって結果的には魔術を使う事は出来ていたが、それが完全なら全体的なスペックが云々と言う話は出てこない筈。
彼に体力が無い事も重要ではないとは言い切れない。彼より体力のある者はこの町の中にも幾らでも居るだろう。
ならば、彼がわざわざジョルジュに憑いた理由は何だ。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 13:50:00.36 ID:80yzHpW/0
川 ゚ -゚) 「魔神に見る目が無かったか……或いは」

『おいおい、本人が聞いてるのに随分な言い様だな。まあ事実だから仕方が無いんだが……』

閃きが、クーの思考に待ったをかける。
"魔神を仕向けてきているのは誰だ" "そいつは何を持っているのか"。

『まあ、助けになる事と言ったらこれ位だな。全く助けになってなかったら済まない。
 そうだ、宣伝のつもりじゃないんだが軽食屋をやっててな、助けにならなかった分は安くしておくよ』

最後に店の名を告げると、それじゃあとジョルジュは電話を切った。
クーの思考は考察にフル回転する事となる。

今日のアエーシュマ。
素体は大した事がないと自称していたが、戦闘能力は限られた一点で言えば自分、『夜の管理者』を凌駕していた。
その戦闘能力は間違いなく『暴力』を司るその神により与えられた力だろう。

そして、浮かび上がる疑問点。"何故ジョルジュに憑いたのか"。
魔神を仕向けてきている"彼"と魔神として具現した神に何らかの繋がりがある事は違いない。
『仕向ける』と言う言葉から推測するに、"彼"は神をコントロールしていると言えよう。
コントロールしているならば、"ジョルジュに憑いた"と言う能動ではなく、"ジョルジュに憑かされた"と言う受動である事も可能性としてはある。

ふと、一つの単語が脳裏に浮かぶ。

――実験対象。

昨日、ドゥルジ・ナスに向けて放った罵倒の文句だ。
あの時は『スペックからして普通の大型魔獣と大差が無い事』と、『初日である事』を踏まえてその文句を放ったのだが、
神をコントロールしている事とわざわざ弱い人間にアエーシュマを憑かせた事を考えればそれも有り得るかも知れない。

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 13:55:08.05 ID:80yzHpW/0
川 ゚ -゚) (そうだとしたら、何故?)

"彼"は今や魔獣製造機関と化した魔獣消去システムを手中にしている。
それならばもっと強力な魔獣を魔神の寄代にすれば良いのではないか。
これの答えは簡単だった。彼はシステムを完全に我が物にしている訳ではない、と言う可能性。
だとすれば、魔神の寄代が人間になったのも納得は行く。

"彼"が魔神と何らかの繋がりを持って、そして恐らく主導権を握っている事。
"彼"はまだシステムを我が物にしている訳ではない事。

そして、二日目の敵もまた『実験』でしかなかった事。

今日得られた物は多い。
しかしそれには、明日からは『本番』が来るかも知れないと言う示唆も含まれている。

川 ゚ -゚) (その方が、中だるみしなくて良いだろうよ……)

フッと息を吐く。
右手中指にはめられた黄色の宝石を構える指輪を、見上げるようにして眺める。

川 ゚ -゚) (最後まで、勝つのは私だよ……ドクオ。
      神を使った下らないお遊びも、全て私が叩き潰すさ……
      それが、お前が殺した全ての御魂の代弁だよ)

懐中時計を取り出す。
蓋を開けば、示す時間は午後十時。
随分と長く思考していたな、と思いつつ、立ち上がる。
顔にかかる銀髪を右手指で後ろに梳き、左は懐中時計を懐に戻す。
主の去った食堂のシャンデリアは、その役目を果たし部屋に暗闇を与えた。

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 13:58:24.37 ID:80yzHpW/0
ミセリに主導されて蒼の絨毯を敷かれた階段を上る。
踊り場で二手に分かれるそれを右に曲がり、さらに上って廊下に入る。
食堂のある通路と同じく、そこは並ぶ蝋燭によって照らされている。
廊下の入り口から一番近くにあった扉をミセリが開く。

その部屋は、自分が住んでいた所の四倍はあった。
ベッド・クローゼット・机と、必要最小限のものしか置かれていない事も拍車をかけているのだろう。
ベッドの横には、添えられたように三つの段ボール箱が置かれている。

ミセ*゚ー゚)リ「書棚は必要でございましょうか?中身は本が多いと聞いたので……」

聞かれ、本の数を漠然と考える。
続いて、机を見た。壁際に配置されたそれは自分が使っていたものよりもはるかに大きい。

ζ(゚ー゚*ζ「いえ、大丈夫です……でも、机の上に置けるような本棚があると、便利かも知れません」

ミセ*゚ー゚)リ「すぐに必要とされるのであれば、すぐに手配しますが……」

ζ(゚ー゚*ζ「いえ、明日、私が学校に行っている間にでも持ってきて下されば……」

ミセ*゚ー゚)リ「畏まりました。それでは……」

彼女は扉を開こうとして、思い出したように付け足す。

ミセ*゚ー゚)リ「ベッドのあたりにあるボタンを押されますと、私やクー様へ通話が繋がります。何かありましたらお呼び下さい。
       それと、この部屋の隣は書庫となっております。蔵書共々、ご自由にお使い下さい。それでは……」

一礼の後に、彼女は退室した。
時計はまだ九時を指している。寝る時間は少し遠い。

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 14:01:15.52 ID:80yzHpW/0
ζ(゚ー゚*ζ(蔵書……ちょっと気になるかも)

デレは知的好奇心が強い。
クーの蔵書とあれば、自分の知らない魔術に関連した物も多いだろう。
魔術。
その存在だけを知っている未知のワードに、デレの好奇心が踊る。

ζ(゚ー゚*ζ(退屈だし……ちょっと行ってみよーかな)

思い立ち、行動に移るのは早い。
自分が開けたどの扉よりも重いそれを押し開け、隣の部屋の扉も開く。

ζ(゚ー゚*ζ(おぉう……感激)

薄暗いその部屋は、壁に沿って配置された本棚によって窓を失っていた。
その本棚は、どれもが厚さから表紙までまばらな本により空きを無くしている。
中央には、部屋を縦に分割するように、長テーブルが設置されていた。
そこで本を読む事を考慮しての事だろう、明るさを得るためのランプがそこには置かれている。

その書物の多さはデレに感動を呼んだが、同時に迷いも呼び込んだ。
本の多さと、分野への理解が浅い事も相まって『どの本を選べば良いのか』が彼女には判らない。

適当な棚に並ぶ本の背を薄暗い中顔を近づけて見ていると、部屋に一筋の光が差し込んできた。
それは次第に太さを増し、人の形に切り取られた黒をも映し出す。
エプロンドレスのシルエットが、実物も闇に溶けたように染まった髪を揺らす。
それは、デレにとっては助け舟と思えた。

ミセ*゚ー゚)リ「入浴の準備が整いましたが……ご迷惑でしたか?」


17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 14:04:09.53 ID:80yzHpW/0
そう言えば屋敷に連れられてから外観、ホール、食堂、個室と驚いてばかりで、それには気づいていなかった。
ミセリは部屋に入り、扉を閉めて光を閉め出すと、デレの隣に立つ。

ミセ*゚ー゚)リ「何をお探しでしょうか?」

ζ(゚ー゚*ζ「えと……魔術に関して、詳しく知りたいなと思って……」

ミセ*゚ー゚)リ「魔術でしたら……少々お待ち下さい」

彼女は部屋の反対側に走ると、一冊の本を抜き出し戻ってくる。
デレに手渡した布張りのその表紙には、『魔術史』の文字が金に押されている。

ミセ*゚ー゚)リ「サイズは少々大きめですが……魔術関係の入門用として書かれたものなので、分かり易い本です。
       今までそれを知らなかった、魔術師を志す者が初めに手に取るものでもあります」

ありがとうございます、の礼を聞くとミセリは一礼。

ミセ*゚ー゚)リ「それと……この部屋は紙の劣化を防ぐ為に暗くしてありますので、自室にお戻りになって書見なさる事を推奨します。
       後、浴室はこの部屋の隣となっています。用意は整っておりますので、適当な時間にご利用下さい」

ζ(゚ー゚*ζ「ありがとうございます。それでは失礼します……」

本を小脇に抱え、扉の所まで来て疑問。

ζ(゚ー゚*ζ「ミセリさんは出ないんですか?」

ミセ*゚ー゚)リ「はい。少し用事がありまして」

それじゃあお休みなさい、と返すと、お休みなさいませ、とデレの名を後に付けた返事が返ってきた。

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 14:07:05.00 ID:80yzHpW/0
ミセ*゚ー゚)リ「さて、と」

礼儀の悪い事をした、と思う。
自分にその意思はさらさら無いがこの状況、他人に『デレを追い払った』と言われても文句は言えない。
この部屋が暗くて書見に向いていないのは事実だし、入浴の準備が整ったのも事実だ。
それでも、どこか心に引っかかるものが残る。

気を取り直して、ここに来た目的を果たす事とした。
分類五十三番、一冊分のスペースが空いたそこの五冊目が、自分の探している資料だ。
デレに渡したものと同じ色の布張り表紙。そこに押されている金文字は、『魔術史 五』。
機械の黎明期から魔術の衰退まで、近代魔術史の詳細となっている。
しかし目的はその情報ではない。椅子に座り、右手指をフルに行使し、ページをめくる。
ランプの灯りを頼りに、ページを見ては指で飛ばしていく。

ミセ*゚ー゚)リ(偽り・不浄、暴力……そして先程御嬢様に届いたメールに記されていた、熱と渇き……)

ある見出しのあるページで、その右手が止まる。
シベリア奪還戦。
シベリアとは、太平洋の中心に浮かぶニチャンネル大陸のさらに中心に位置する都。
創世期に目覚しい発展を遂げ、後に"創世の聖地"とも呼ばれるようになったそこは、創世と共に世界に出現した魔獣の居城となってしまう。
それから幾世紀、機械が生まれ、強力な魔術師が生まれた事で、人間達は初めて大規模な魔獣討伐作戦を展開する。
その場所に選ばれたのが、創世の聖地、魔獣の都であるシベリアだったのだ。
その戦いには先代"夜の管理者"であるクーの祖母を筆頭とし、多数の魔術師、機械遣いなどが参加した。
その名前のリストの乗ったページを、ミセリは右の中指で飛ばす。欲する情報はそれではない。

ミセ*゚ー゚)リ(……あった)

その戦いでの、魔獣との交戦記録。
中型以上若しくは特殊な魔獣との戦闘は、全て記録として残っている。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 14:10:13.55 ID:80yzHpW/0
その一番最後のページ、見出しは『魔神アンリ・マンユ』。そこでページをめくる手は止まる。
黙読。

ミセ*゚ー゚)リ(シベリア城最上階、"シベリアの鐘"にて……、自らを『魔神』と称す小型ニ足人間型魔獣アンリ・マンユと交戦……。
       交戦者は"夜の管理者"他一名。敵は夜の管理者の持つ同類の能力を凌駕する分類タイプ『闇』の魔術及び能力を行使。
       結果は討伐側の勝利。この交戦で、一名が死亡。
       以下、アンリ・マンユと関連があると推測される魔獣との交戦記録を記す……)

その見出し、詳細だけを目で辿る。

ミセ*゚ー゚)リ(シベリア城制圧戦にて……中型四足狼型魔獣……交戦者の武器が消失する現象が発生……分類タイプ『不明』、
       中型ニ足人間型魔獣……分類タイプ『衝撃』に類似する魔術及び能力を行使……)

能力だけ見ても、昨夜と今夜現れた魔神と酷似している。
さらに下に記された魔獣の能力分類……『炎』が、ある推測を裏付ける。

ミセ*゚ー゚)リ(間違いなく……送られている魔神は、シベリア城制圧戦に現れた魔獣と何か関わりがある……)

確かに、魔獣を自由に生成できるのならば、史上最強であると言われるこれらの魔獣を生成するのは解る。
しかし、それができるなら何故一気にこれらを生成なり複製なりしない?
複製に無理があるとしても、アンリ・マンユを一体送るだけで悪くて関東制圧は余裕だろう。あれには、それだけの力がある。
その理由は、先程メールの件と併せて話された。

ミセ*゚ー゚)リ(彼はシステムを完全に制御できているわけではない、そして『実験』……)

前者、それが本当であるならば納得は行く。
よくよく考えてみれば完全に制御できるなら既に日本は第二のシベリアと化している。
後者、それが良く解らない。
彼の実験とは、『能力』に関するものなのか、単純にこれらの『魔獣』に関するものなのか。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 14:13:25.55 ID:80yzHpW/0
それに関しての収穫は無かったにしても、魔神について自分の仮説が明らかならば、それは大きな収穫だ。
この『魔術史 五』が、いわば魔神戦の攻略本と成り得る。

しかし、それらが全て本当ではない事を、心の中では祈る。
これらは先代"夜の管理者"だけでなく、他に多くの優秀な――字名を現代まで遺す者も多い――魔術師、機械遣いが居て勝てた魔獣達だ。
戦いに命を散らした者も多い。
それら全てと戦って、現"夜の管理者"の御嬢様、クーが命を持って帰ってくる保障は――――

ミセ*   )リ「―――ッ!」

果たして、伝えた方が良いだろうか?
それが対策を与える事になるか、恐怖を与える事になるか。それは伝えて初めて解る事。
今朝は戦うよう促しはしたが、その時は敵がこれほど強大だと思っては居なかった。

しかしたとえ自分が戦いをやめるよう促したとしても、彼女はもう止まる事は無いだろう。
彼女は人の為戦う事を強く決めた。促したのは、自分。


――――それで彼女が、大切な彼女が失われる事があれば、殺したのは、誰?


ミセ*   )リ(……寝よう)

寝て、忘れよう。
明日から、また変わりなく彼女の御世話をできるように。
今のこの状態は、自分の世話で手一杯だ。
本を閉じ、もとあった場所に戻して扉を開く。
蝋燭の照明が、暗さに慣れた自分の目には眩しい。
幸い、自分の部屋に戻るまで誰かに会う事は無く、部屋に戻ってから眠りに就くまで誰かから連絡が来る事も無かった。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 14:16:08.57 ID:80yzHpW/0
デレは部屋に戻り、本を置いて着替えなどを持って浴室の扉を開いた。
そこは銭湯の脱衣所を洋風にアレンジしたような造りとなっていた。それだけでも驚きなのだが、

ζ(゚ー゚;ζ(どう見てもコレ、誰か入ってる……)

誰か、と言ってもクーかミセリしか居ないわけだが、それは置いておいて。
浴場の入り口となっている擦り硝子の扉の所に置かれた籠の中に、黒い衣服とネグリジェが畳まれて入っている。

「デレかー?別に入ってきても良いんだぞー?広すぎるし、私は気にしないからなー」

扉越しに、声量を大きめにした語尾の伸びた声。
喋り方は声量の関係で仕方ないにして、声はクーのものだ。

ζ(゚ー゚;ζ(って言うか気づかれてる!)

「どうしたー?遠慮する事はないぞー?」

ζ(゚ー゚*ζ(それじゃあお言葉に甘え……)

ネクタイを外そうと、手を首元へ運びかける。

ζ(゚ー゚;ζ「(……られるわけ無いじゃない!危うく乗ってしまう所だった!)
       いえ!ちょ……ちょっと遠慮しておきます!」

「そうかー、じゃあ部屋でくつろいでてくれー。終わったら私が呼びに行くー」

ホッと溜息をつく。

ζ(゚ー゚*ζ(……流石に恥ずかしいよ、ね)

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 14:19:00.76 ID:80yzHpW/0
部屋でくつろげと言われたら、やるべき事はあった。
先程渡された『魔術史』。自分の好奇心を満たす知識の泉だ。
部屋に戻ると早速、机を使って本と対面する。
無意識のうちに、姿勢を正してしまう。

ζ(゚ー゚*ζ(おぉう、こいつぁたまんねぇなグヘヘヘヘ)

本を開くなり、内容に魅了される。
魔術の歴史。
起源から系統、様式等、網羅されている内容はどうも"一般"らしい。
今までそれを知らなかった、魔術師を志す者が初めに手に取るもの、と言うミセリの言葉に、頷く。

川;゚ -゚) 「デレー、済んだぞってうおっ」

扉を開けた音も、クーの声も聞こえていない様子。
それ以上に、彼女から迸る形容しがたいオーラが、クーを驚かせる。

川;゚ -゚) (不味い……これは"邪魔をしたら殺す"と暗に語っている……)

邪魔をしていない(ように見える)今が好機か、と摺り足で後ろに下がる。
ふと、デレがビクンと体を震わせ、此方を向く。

ζ(゚ー゚;ζ「ぁ……ご、ごめんなさい!気づきませんでした……」

川;゚ -゚) 「い、いや……謝る事は無いんだが……風呂、空いたぞ……?」

ζ(゚ー゚;ζ「あ、ありがとうございます……それじゃ、行ってきます。それと、おやすみなさい」

川;゚ -゚) 「あ、ああ……おやすみ」

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 14:22:04.32 ID:80yzHpW/0
部屋から一歩出たところに居る自分の横を、デレが扉を閉め、抜ける。
脱衣所にデレが入るところまで確認して、敬語を正す事も忘れるほどに緊張させていた神経を解く。
同時に、膝から力が抜ける。ガクンと地べたに座り込む事となった。

川;゚ -゚) (な、何だったんだあの殺気は……?)

膝が力を取り戻すまでは、二分を要した。

川;゚ -゚) (その知識欲……悪い方向へ運ばれなければ良いが……。
      と言っても装飾回路も儀式用の器具も無いから気づいたらデレが魔術師になってたなんて事は無いだろう)

立ち上がり、白のネグリジェから埃を払う。
そういえば、ミセリを見ないなと思考。

川 ゚ -゚) (体調でも崩しているのか……?だとしたら、働かせすぎてしまったか。
      詫びとして何かしてやれれば良いんだが……如何せんミセリは優秀すぎて私がしてやれる事が思いつかない)

料理、掃除、洗濯と家事一般は平均以上にこなすし、世話のタイミングも絶妙だ。
例えば、読書中に何か摘みたいと思ったときにはテーブルにコーヒーと茶菓子が置かれている。
ミセリが言うには、『御嬢様は何かを摘みたいと思う十分前から目の動きがせわしなくなる』だそうだ。
長い付き合いゆえか、それとも彼女が自分を良く見ているからだろうか。恐らく両方だろう。

川 ゚ -゚) (そう言えば、ミセリの事を詳しくは知らないな……)

物心付いたときから、ミセリは自分のそばに居た。
自分を産んですぐにこの世を去った母親に代わり、ミセリは自分を育ててくれた。
魔術を学び始めた頃、自分の質問にミセリは何でも答えてくれた。
成長して、背丈を追い越したことを誇った事もあった。
尤も、彼女はあまり取り合ってはくれなかったが。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 14:25:29.89 ID:80yzHpW/0
自分の思い出には、いつも変わらないミセリがいた。
黒いドレスに白のエプロン、肩まで伸ばした黒の髪に白いヘッドドレスを飾り、双眸は翡翠のように透いていて。
歩けば蝶に結んでも余るエプロンの帯を揺らして――――

川;゚ -゚) (そう言えば、彼女はいつ歳をとるんだ?)

以前も疑問に思って聞いてみたが、『不老の魔術を用いているので七十年前から年齢は十六歳です』等と言っていた。
その言葉の意味するは道化か、それとも真意か。
不老の魔術が高位に位置し、加えて『改良の成されなかった』術である事は、把握している。

川 ゚ -゚) (こう考えると、感謝してもし切れないな、ミセリには。
      気軽に礼や詫びなどできるわけが無い……)

ならば何をしてやれるだろうか、産まれてから今までずっと世話になり、迷惑をかけてきた給仕の少女に。
デレの部屋とは踊り場を隔てて向こう側にある部屋まで歩き、考える。
しかし良い案を思いつくこともなく、扉を開きベッドと対面する。

川 ゚ -゚) (……寝て考えるか)

夜更かしをして体力が万全でなかろうが、魔神は容赦なく襲い来る。
加えて、明日からは『本番』かも知れないのだ。

川 ゚ -゚) (何日もかけて考えて……それでも思いつかなければ、魔神をすべて倒した後にゆっくりまた考えよう)

ベッドの縁に座り込み、そのまま体を横に寝かせる。
何かを抱くような姿勢となり、枕に頭がちょうど乗る。
温度はちょうど良い。掛け布団は不要に感じた。
目を閉じると、暗闇が自分を包み込むように迎え入れる。
今宵は、紛れも無く護られたのだ。

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 14:28:05.85 ID:80yzHpW/0
夜の黒がうす青みを帯びてきた時分、ベッドから衣擦れの音が起こった。
その部屋、加えて家具は屋敷の持ち主や彼女が保護した少女のものと比べても、大きさや質では劣っていない。
むしろ給仕に身分を置く彼女が空いた時間を見て自分で手を加えたそれは、彼女にとっては最高の空間である。

しかしその最高でさえ、彼女の憂さを完全に払う事は叶わなかった。
惰眠を繰り返した彼女の翡翠の目は泥に落としたように暗く、着たまま寝た事によりエプロンドレスは無駄な皺を増やしている。
長い枕を抱えて横になっている彼女の目に映るのは、三回目の目覚めの時にはずしたヘッドドレス。

薄いカーテンを通し差し込むくらい明かりから、彼女は時間を五時くらいと判断する。
もう何度目か解らない睡眠に意識を沈めようと考えたが、彩度を増してきた意識はそれを受け入れない。
仕方なく、体を起こす。寝すぎにより肩や背中に痛みを感じた。

自らを惰眠に叩き込む元凶となった気分はと言うと、だいぶ落ち着いていた。
誰を目の前にしても、この程度なら隠し通す事はできるだろう。

まず何をしたものか、と彼女は考える。
まず皺くちゃの給仕服を換えなければならない。その後はさらに気分を落ち着ける為に紅茶でも飲みたいな、と思考が告げる。
そうなれば行動は起こせる。まずは部屋の隅の簡易調理台へ赴き、ガスコンロを使いやかんに火をかける。茶器の用意も欠かさない。
ガスコンロとは無粋ではあるが、自分で使う分には問題にはならない。

湯を沸かしている間に着替えを済まそうと言う寸法であるので、次はクローゼットを開く。
六着はある同じデザインのドレスとエプロンを一組、ハンガーと共に摘み上げ、ベッドに放り投げる。
クローゼットを閉じ、着替えに取り掛かる。ドレスを換え、エプロンの帯を結んでいる最中にやかんが鳴き声を上げた。
きっちり背に蝶に結んでから、やかんを火から下ろしにかかる。
湯でそれを十分に温めてから、感覚で量った茶葉をティーポットに投入する。
注ぐ湯は勢い良く。琥珀に染まる湯に茶葉が踊る。
十分に紅が染み出たのを確認すると、茶葉を濾し取る為の布を取り付けたポットにそれを注ぐ。
茶葉の溜まった布を外し、ポットに蓋をすれば完了だ。
窓際に置かれた一人用の円テーブルに座り、ティーカップに茶を注ぐ。

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 14:31:12.56 ID:80yzHpW/0
カップを口元に運ぶと、その広口から漂う芳香が鼻腔をくすぐる。
口に流し込む事で、それは内側から鼻に抜ける。続く渋みが、舌と意識を引き締める。
その熱が、より意識を目覚めに引き寄せる。
ポットが空になると、彼女は立ち上がり、伸びを一つする。
弓のようにしならせた目にまばたきを一つ与える。
翡翠はその澄みを取り戻していた。

ミセ*゚ー゚)リ「それじゃあ、頑張ろうか」

口に出す事で意志を固める。
腰を左右に捻り、右、左と肩を回す。体が軽い。
まずは朝食の準備だ。
扉を開け、廊下に出る。並ぶ窓から差す薄青い明かりが、黒味のある木製の床をキャンパスに描いている。
階段を下り、調理場まで歩いてその扉を開ける。

弾ける油の音、肉の焼ける香り。

ミセ*゚ー゚)リ(あれ……?)

そこには先客が居た。
白の寝間着に身を包んだ、クーだ。
フライパンの上で焼かれているのはベーコンだと、香りが告げている。

川 ゚ -゚) 「ああ、おはようミセリ」

顔だけこちらに向けて言った。
言えばすぐに、視線をフライパンに戻す。

ミセ*゚ー゚)リ「何故、御嬢様がここに?」

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[キャンパスに、の方が妥当か] 投稿日:2009/04/19(日) 14:34:03.15 ID:80yzHpW/0
川 ゚ -゚) 「具合が悪そうだったのでな」

視線をこちらに向けずに言った。
肉の弾ける音に、空腹を思い出す。

川 ゚ -゚) 「それに、最近迷惑ばかり掛けている気がしてな」

焼けたベーコンを皿に降ろす。
出来不出来はここからでは定かではない。

川 ゚ -゚) 「済まないな、お前の体調に気を遣ってやれなくて」

恐らくは自分の早寝の事を言っているのだろう。
要らぬ心配を掛けてしまったな、と思う。
だから、言葉を紡いだ。

ミセ*゚ー゚)リ「私の体調管理の不全の結果です」

言って、近づく。
視界の端にちらと見えたベーコンは、まだ焼きが足りないようだ。

ミセ*゚ー゚)リ「御嬢様のお心遣いで体調も整いました。仕事は私が継ぎますので、お休み下さい」

言われたクーは不満そうな顔だ。

川 ゚ -゚) 「たまには礼をしてやろうと言う私の意志を尊重して欲しいんだが……」

ミセ*゚ー゚)リ「私にお礼を授けなさるのであれば、もう少し腕前をお上げになってからお越し下さい」


30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 14:37:09.41 ID:80yzHpW/0
クーは笑顔を作り、ははと笑う。

川 ゚ -゚) 「その調子だと、万全みたいだな」

ミセ*゚ー゚)リ「当然です、万全でなければ給仕は出来ませんので」

技術も、と付け加えると、クーは溜息をつく。

川 ゚ -゚) 「どうやら私にミセリの世話は無理みたいだな」

ミセ*゚ー゚)リ「掃除と洗濯くらいならお出来になられるのでは?
       尤も、今の私は万全ですので御嬢様が何か心配なさる必要はありません。存分にお休みくださいな」

敵わないな、とクーは笑う。

川 ゚ -゚) 「それじゃあお言葉に甘えさせてもらうよ。
      それと、いつもありがとう、な」

返事を待たずに、クーは調理場を後にした。
まったく、と一人呟き、ミセリはフライパンを握る。

ミセ*゚ー゚)リ「押し付けて行っちゃうのは、ずるいと思いますよ……」

残された材料から、メニューを推測する。
成程、悪い選択ではない。
ちょうど作りたいものでもあったし、心が躍る。

後でクーに料理を教えようか等と思いながら、卵を一つ割った。


31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 14:40:09.00 ID:80yzHpW/0
目覚めると、違和感に気づく。
妙に天井が高く、空気が広い。
自分の寝ているベッドも、五回は寝返りがうてそうなほどだ。
やはり一日では慣れないと思いながらデレは身を起こし、目を擦る。

特に何をするでもなくそのままの姿勢でぼうっとしていると、扉をたたく乾いた音が二回響いた。
どうぞ、と答えると扉を開いて現れたのはクーだ。
昨晩見たときは思わなかったが、彼女が白の寝間着に身を包んでいると何か違和感がある。

川 ゚ -゚) 「黒は外着だな。寝る時まで黒を着ているとどうも落ち着かない」

というのがその違和感に対する回答であった。

ζ(゚ー゚*ζ「それで……着替えないの?」

沈黙、約五秒。

川;゚ -゚) 「そ、そうだな。そろそろ朝食になるから、着替えて食堂に来るんだ。着替えて、な」

態度から察するに、着替えるのを忘れていたらしい。
勢い良く扉を閉めて、彼女はどこか――恐らく自分の部屋――へ行った。
自分も着替えなきゃ、と思ってダンボールを開ける。
パジャマを脱いで、制服に袖を通す時に思う。

ζ(゚ー゚*ζ(洗濯物……どうしよう)

まあ朝食の時に聞けばいいかと結論付けた頃には、黒のソックスを履き終えていた。
ネクタイを締め、靴を履いたら着替えは終了だ。
やはり夏服は軽くて良い。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 14:43:11.30 ID:80yzHpW/0
廊下の大きな窓は朝日を多く導き入れる。
空間の広さも相まってそれは開放感を演出する。
まったく夢みたいな場所だ、とデレは思った。
自分の住んでいた住宅街の、どの家でもこれを味わう事はできないだろう。

青い絨毯が正面扉に一直線を描くホールも自身を、吊られたシャンデリアではなく窓から取り入れた日差しで照らされている。
青の階段を下り、食堂へと向う。
黒のワンピースに着替えたクーは既にそこに居た。
テーブルにも二人分の皿が置かれている。

ζ(゚ー゚*ζ「そういえば、洗濯物はどうすれば良い?」

席に着きながら問う。
クーは齧っていたトーストを皿に置くと、答えた。

川 ゚ -゚) 「そうと判るように部屋に置いておけばいい……籠に入れておくとかな。
      ミセリが掃除に入った時に洗濯してくれる」

掃除までしてくれるのか、とデレは恐縮する。
主人であるクーにならまだしも、ほぼ赤の他人である自分がそこまでさせてしまうのは迷惑を掛けるのではないか。

ζ(゚ー゚;ζ「掃除くらいは、自分でするよ……。
       流石にそこまで迷惑掛けられないって」

川 ゚ -゚) 「そうか。なら籠を部屋の外に置いておくと良い。部屋の掃除は自分でする旨は、ミセリに伝えておく」

礼をすると、どういたしまして、と返る。
そしてすぐにクーは目玉焼きを切り分けて口に運ぶ作業に戻った。
デレもそれに習い、食事を済ませる事にした。

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 14:46:10.18 ID:80yzHpW/0
食事が済むと、ちょうどそのタイミングでミセリがコーヒーを運んできた。
ありがとうと礼を言うと、彼女からは一礼が帰ってくる。

ミセ*゚ー゚)リ「デレ様、御登校の方は……」

言われるまで気づかなかった。
昨夜からカルチャーショックを受けっぱなしであったし、他に服が無い為制服は休日でも着ているからだ。

川 ゚ -゚) 「心配するな、あれが用意できている」

ζ(゚ー゚*ζ「あれ?」

成程、とミセリは顎辺りに右手を持ってきて思考する。
"あれ"について解らないのはこの場では自分だけのようだ。

ミセ*゚ー゚)リ「デレ様がそれで良いと仰るのであれば……」

同意を求められても、その正体がわからないのではどうしようもない。

ζ(゚ー゚;ζ「あの、"あれ"って?」

川 ゚ -゚) 「転送魔術……と言うか、転送紋章だな」

転送、魔術。デレは記憶の糸を手繰る。
昨夜、目の前に跳びかかってきた魔神の上方に突然現れて拳を食らわせたクーの姿が浮かんでくる。

ζ(゚ー゚;ζ「でも、瞬間移動って難しいんじゃ……?」


35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 14:49:04.83 ID:80yzHpW/0
川 ゚ -゚) 「なに、心配は無い。ただ起動するだけで良い。場所の指定も済んでいる。便利だぞ?」

クーの中指と親指に摘まれていたのは、一枚の下敷きのようなものであった。
クリアブルーのそれの真ん中には、円をベースとした模様が大きく描かれている。

ζ(゚ー゚*ζ「体力の消耗とか、そういうのは……?」

川 ゚ -゚) 「無い。こいつは機械に切れない燃料筒が付いているような物でな、魔力の生成から式の発動まで一人でやってくれる。
      発動するには真ん中の紋章の外周を指で辿ればOKだ。時計回りに辿れば学校、反時計回りならこの屋敷に着く」

そのまま、差し出してくる。
デレは両手でそれを受け取った。

川 ゚ -゚) 「とりあえず、反時計回りになぞって見てくれ。デレの部屋に着くはずだから、そしたら登校の用意を済ませてここに戻ってきてくれ」

言われた通りにすると、反応はすぐ起こる。
まず紋章が発光。続いてその光が体を包むほどに強くなる。
手を見てみると、先の方からみるみる消えていく。良く目を凝らすと、塵のようになって霧散しているのがわかる。
手足、胴、首、頭と消えると、閉まったシャッターを下に下ろし開けるように視界が広がっていく。
ここまで全て一瞬。周りを見てみると確かに自分の部屋だった。

ζ(゚ー゚*ζ(……すげえ)

鞄を肩に引っ掛け、食堂まで戻ると変わらない位置にクーとミセリはいた。

川 ゚ -゚) 「問題は無いな」

肯定を返す。

川 ゚ -゚) 「それじゃあ時計回りになぞって行ってらっしゃい、だ。もし失敗しているようだったらすぐに助けに行く」

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 14:52:00.11 ID:80yzHpW/0
ζ(゚ー゚;ζ「最後に怖い事言わないでよ……」

川 ゚ -゚) 「何、心配は要らないさ。私を信じろ」

従い、時計回りに指でなぞる。
再びの発光、体の分解、視界の開帳。
校門前に現れた自分を見て、何人かは驚いているようだった。

ミセ*゚ー゚)リ「……一晩で用意されたのですか?」

デレが転送された食堂で、ミセリは問うた。
クーの態度を見るに、転送は成功しているようだ。

川 ゚ -゚) 「まあ、原理はこれと同じだろう?」

右手を差し出す。そこに光るのは黄色の宝石の指輪。

川 ゚ -゚) 「時間が無かったから多少サイズが大きくなってしまったのは仕方ないな」

ミセ*゚ー゚)リ「いえ、そうではなくて……」

一拍置いてから、尋ねる。

ミセ*゚ー゚)リ「何故、デレ様の学校を知っておられたのですか……?」

沈黙。

川;゚ -゚) 「い、いやー……ははははは」


37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 14:55:10.33 ID:80yzHpW/0
ξ#゚听)ξ「笑ってごまかさないの!」

どうしても、納得がいかないらしい。
机を挟んで向こうに立っている少女、ツンが机を叩く。

ζ(゚ー゚;ζ「いや、だから見間違いだって……」

ξ#゚听)ξ「見間違いで人が突然現れるわけ無いでしょ!」

ζ(゚ー゚*ζ「授業とテストの結果以外存在感ゼロの私でも?」

ξ#゚听)ξ「アンタだったら気づくわよ!」

ζ(゚ー゚*ζ「それ、ツンだけでしょ?」

言われて、思考モードに入る事五秒。ツンは結論を出した。

ξ゚听)ξ「まあそれもそうよね。私以外が普段からアンタを一々気にするわけないもの」

ζ(゚ー゚;ζ(地味に傷つくなぁ……)

ξ゚听)ξ「それじゃあそういう事にして置いてあげるわ。今日も一日頑張りなさいね」

おほほほ、とわざとらしい笑いを残して、ツンは自分の席に帰る。

ζ(゚ー゚;ζ(あ、あっぶねぇぇぇーーー!)

クーは"突然人が現れたらそりゃ普通大騒ぎだろ"とは考えていなかったのだろうか。
帰ったら転送場所を検討してもらおう、と思いつつ、デレは次の授業の用意をした。

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 14:57:59.46 ID:80yzHpW/0
川 ゚ -゚) 「しかし暇だな」

ふと、クーが口を開く。
屋敷に残ったクーとミセリの二人は現在、庭にテーブルと椅子を用意してティータイム中である。

ミセ*゚ー゚)リ「下手に仕事が無いのも困りもので御座いますね」

川 ゚ -゚) 「全くだ。身分で食っていける今の状況も手を貸しているに違いない」

ミセ*゚ー゚)リ「そこは……働いてみては如何でしょうか?」

仕事か、とクーは頭を抱える。
そのままの姿勢で結論を先に下した。

川 ゚ -゚) 「無理だと思う。魔獣狩りでしかも魔術師だからな」

ミセ*゚ー゚)リ「国から止められるのでしょうか?」

川 ゚ -゚) 「だろうなあ。魔術が知れ渡るのは構わないんだろうが、私が何をするかわからないとか言われてな……。
      国からしてみれば私達は魔獣狩ってれば良いのだろうよ。尤も、今回の戦いが終わったら、その役目も終わりだな」

ミセ*゚ー゚)リ「制御機関……ですか」

川 ゚ -゚) 「ああ。ドクオからあれを取り戻してヴィップに送れば、それで魔獣は全部消えるさ。
      ドクオのやってる"産み出す"方法だと、どうやら『シベリアの鐘』経由じゃなくても使えるようだけどな」

ミセ*゚ー゚)リ「あれを使うんですか……だとすると、歴史に名前が残りますよ」

川 ゚ -゚) 「だろうな。創世以来の『シベリアの鐘』の出番だ」

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 15:01:01.54 ID:80yzHpW/0
シベリアの鐘。その言葉に昨日の苦痛が蘇りかける。

ミセ*゚ー゚)リ「……御嬢様」

川 ゚ -゚) 「何だ?改まって」

ミセ*゚ー゚)リ「もし……もしもですよ?この先に現れる魔神がとてつもなく強大で、一目見ただけで敵わないと解る位強大で……、
       それでも、御嬢様は退かずに戦われるのですか?」

川 ゚ -゚) 「そうだな。共に研究した仲間や、デレの両親の命を奪ったドクオの勝手は許しては置けん。
      独りよがりだが、デレを家に護る事で、両親を失わせてしまった償いもしなければならない」

予想通りであった。
即ち、これで魔神に関する自分の予想も合っていたならば、彼女の命は――

川 ゚ -゚) 「どうした、ミセリ?お前らしくもないぞ?」

気づかずに表情が暗くなっていただろうか。
慌てていつもの表情を作る。

ミセ*゚ー゚)リ「その……自分の命も、大切に扱っていただかなければ……」

川 ゚ -゚) 「心配か?ますますお前らしくないな」

プラス思考が大きな力となるのはミセリも知っている。
しかし、魔神――その強大な敵の正体――は、その思考をたやすく打ち破るだろう。
それを告げることは、力を奪う事に他ならない。


42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 15:04:09.11 ID:80yzHpW/0
ミセ*゚ー゚)リ「しかし、強大な力を目の前に――」

右手が伸びてきた。
それは頭に触れるとくしゃくしゃと撫で回す。

川 ゚ -゚) 「心配は要らないぞ、私は夜の管理者だからな。
      必ず勝って帰ってくる。ミセリが待っててくれるから。デレはどうか解らないが、彼女のためにも帰るつもりだ」

ミセ*゚ー゚)リ「――――有難う御座います、御嬢様」

上出来だ、と返事を評価すると、クーは右手を戻す。
その右手を腰辺りのポケットに突っ込み、懐中時計を取り出して見る。

川 ゚ -゚) 「四時、か。もうすぐと言えばもうすぐだな。
      ……街に出る。その方が、遭遇は早いだろうからな」

時計をポケットに戻し、立ち上がる。
歩いていく後姿に戸惑いは無い。銀の髪は夕の灯りに照り、歩む微風をはらむ。

川 ゚ -゚) 「ミセリ」

後ろに呼びかける。

川 ゚ -゚) 「帰る私をもてなす準備を忘れるなよ?」

彼女の回答は決まっている。
それが給仕の仕事だから。

ミセ*゚ー゚)リ「――――畏まりました、御嬢様」

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 15:07:03.42 ID:80yzHpW/0
屋敷は森の中にある。
そこから歩いて町へ出ると、一時間はかかることになる。
五時。
まだ明るい時間ではあるが、可能性は棄てきれない。
何故ならば、違和感を感じるからだ。

目に見えているものが"見えているのに存在を感じられない"感覚。
非常に精巧に存在を作られてはいるが、魔術に精通したものならば一瞬でその違和感を見抜く。
裏空間。
特定のあるべき空間を『裏返す』事により、魔獣の被害を最小限に減らす大規模魔術だ。
魔獣の出没地帯ではないこの区域には発生装置が存在しないゆえ、魔術の都ヴィップから魔術師が数人派遣されている。

川 ゚ -゚) (この感覚だと……今日は何のイレギュラーも無いようだな……)

その例が、一日目、二日目のデレである。尤も、二日目はある意味例外である。
何故なら、この裏空間はクーと魔神を目安とし展開されるものだ。
そしてその裏空間に『入れられる』のは、その二者のみである。
しかし、二日目のデレは裏空間が展開された時にちょうどクーの近くに居た。
よって半ば巻き込まれる形で裏空間に取り残されてしまった、所謂ミスである。

一日目のデレがクーの言う『イレギュラー』である。
これは単に裏空間を形成した魔術師のミスでしかない。

川 ゚ -゚) 「さあ」

声を上げる。
フィールドは既に市街地。偽物の塀に囲まれた偽物の家が立ち並ぶ虚像の空間。

川 ゚ -゚) 「私はここだ魔神、殺せるものなら殺してみろ」

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 15:10:10.34 ID:80yzHpW/0
「随分なものの言いようじゃあないか」

「俺達を舐めてもらっては困る」

声は二つ聞こえた。
地面から生えるように現れた陽炎。それが人の形を形成する。
黒のスーツに身を通した二人。その顔は、ひどく似通っている。

( ´_ゝ`)「始めまして夜の管理者。活躍は聞いている」

(´<_` )「七十年ぶりの出番に相応しい相手だと、私達は判断した」

川 ゚ -゚) 「は、見当は付いている。おおかたシベリアで殺された人型だろうが」

笑いに感情は込めない。
近い感情があるとするならば、嘲り。

( ´_ゝ`)「良く知っているな夜の管理者。勉強好きは嫌いじゃあない」

(´<_` )「尤も、貴様が軽く言ってのけたシベリアがどんな場所かは予習不足なようだがな」

川 ゚ -゚) 「何を戯言を、お前らが墓標を立てた場所だ。この回答で百点は硬いな?
      そして次のテストにはこう出してやろう。"熱と渇きの二つ目の墓は?"答えは勿論――――」

光が右手に満ちる。
夜を切り裂く、眩い力が。

川 ゚ -゚) 「極東大陸 新都・東京」


45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 15:13:08.75 ID:80yzHpW/0
( ´_ゝ`)「言ってくれるな夜の管理者」

(´<_` )「だが私達は"本物"だ」

( ´_ゝ`)「ドゥルジやアエーシュマ等の寄代とは訳が違う」

(´<_` )「七十年前の 『魔神』 」

川 ゚ -゚) 「減点三十だ」

空高く右手を掲げ、その指を一つ鳴らす。
霧散する光は帯を成して空に上り、氷柱の形を取る。

川 ゚ -゚) 「それも含めての『二つ目の墓』だと、読み取れ!」

降り注ぐ。
硝子の割れる快音を上げて地面に殺到すると思われたが、それはならなかった。
鼻の高い男の両手には、炎が宿る。
その片方を上空に弧を描くように振ると、殺到する光の氷柱を炎が切り裂く。
炎が空気を破る音と共に、それら全ては無音で霧散。

( ´_ゝ`)「……本物 だ」

川 ゚ -゚) 「成程、それでは本物に敬意を払おう」

光は、既に宿っている。
話す間にも、それは密度を増している。

川 ゚ -゚) 「灰に帰すか塵に帰すか……どちらを取るはお前ら次第だ」

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 15:16:09.54 ID:80yzHpW/0
(´<_` )「……"ほ・ん・も・の"だよ夜の管理者」

後ろから聞こえる声に疑問は抱かず、クーは無言で右手を裏拳で叩きつける。
右の爪先を軸にし、体を独楽のように回す事で、高速の拳が水平に飛ぶ。
しゃがんで回避した鼻の低い男は距離を取るように地面を蹴った。

川 ゚ -゚) 「……思ったよりは厄介じゃあないか、墓の数でも増やす気か?」

後ろから飛来する炎の矢に、そちらは向かないまま右手の光を盾としてぶつける。
狙い通り攻撃は防ぐことができたが、爆煙が満ちる事となった。
しかし目の前には関係ない。鼻の低い男は何をするでも無くそこに立っている。
命取りだ。地を蹴って加速。右手の光が虚空に漏れ、一直線を描く。
到達点は鼻の低い男。一気に一人を仕留め、終わらせる。

川 ゚ -゚) 「貰った……!」

加速と共に突き出された右腕は、体を貫いた。
そのまま腕、肩、胴、肩、腕と貫いた所で、この立体の正体に気づいた。

川 ゚ -゚) (こいつも虚像か……!)

視界上に、此方を飛び越える男の姿が見えた。
何を考えるでもなく、反射的に右手の光を開放し、衝撃で追うように飛ぶ。
間違いだった、と感じたのは体が浮いた直後であった。
自分が相手をしているのは一人だけではない。

( ´_ゝ`)「落ちろ」

鼻の高い男の指から、炎のつぶてが放たれる。

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 15:19:01.64 ID:80yzHpW/0
その軌道は直撃コース。
空に逃げ場は無い。
右手の指輪が光を集め始めるが、完全な防御には間に合わない。

被弾スレスレまで光を集めると、それを開放する。
霧散したそれは体を覆う膜となる。しかし、護る盾とはならない。
五連の爆発を受ける。煙を突き破って、勢いを弱めたクーが地面に降り立った。
手や顔に受けた煤とその苦い表情がダメージを物語る。

川 ゚ -゚) (何だ?この大した事のない攻撃……目的は殺傷ではないな)

恐らくは虚像と関係している。
光を集めながら、静まり返る周囲に警戒を配る。

(´<_` )「さて、流石に生きているな」

電柱から鼻の低い男が下りる。

川 ゚ -゚) 「小細工しか仕掛けずに何を言う。まさかこれしか出来ないとは言わないだろうな」

( ´_ゝ`)「そういう台詞は小細工を破ってから言うものだ」

後ろの上空から言葉と共に地面を斜めに穿つよう飛来した炎弾を、後ろに跳躍して回避。
地面を穿ったそれは煙を上げる。
それらの弾を追うように鼻の高い男が煙に飛び込むのが見えた。
地を擦る音。
煙の向こうから、再び放たれた炎弾もまた避けるに容易い。

川 ゚ -゚) 「発射が見えなければ良い訳ではない……!」

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 15:22:09.73 ID:80yzHpW/0
跳ぶ。前に行われたそれは炎弾と対面するたび地面を蹴る事で進路をずらし、それを横に見送る。
全ての弾を抜けると、右手を目の前にかざす。手首を軸に回る円盤が形成され、そこから光の弾が連続する。
それらは煙を破り、向こうに突き刺さる。
速度は、クーに煙を突き破らせる。
見える双子。
円盤を剣に変化させると、左腕の向こうに構える。

川 ゚ -゚) 「厄介なら……纏めて葬る!」

振り抜く。
しかし手ごたえは無い。
迷う事無く、前に投げる脚で上に跳躍する。
その地点に、とびきり大きな炎弾が飛来したのはその一瞬後だ。

体を捻り、向きを百八十度変える。
下を望んでも敵は居ない。あるのは巨大炎弾の生み出した爆煙のみだ。

川 ゚ -゚) (煙の中か!)

溜めていた光を爆発させる事で推進力を生み、煙に突っ込む。
薄暗いその中に、二つの濃い影が見えた。

川 ゚ -゚) 「終わ――――」

「待っていたよ夜の管理者」

声が聞こえたのは前からではない。
ならば、と振り向こうがそこは煙幕だ。しかし声は間違いなく後ろから聞こえた。
背に一筋汗が伝うのを、クーは間違いなく感じた。

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 15:25:29.71 ID:80yzHpW/0
突然煙を突き破り飛来した赤の熱弾を、防ぐ事はできなかった。
連続。鳩尾を五回穿つ。
衝撃がクーの体を浮かし吹き飛ばすと共に、黒い飛沫が散る。

川  - ) 「が……ッ!」

突き抜ける。煙の向こうは見えない。
地面落下の衝撃は、意識を一瞬暗転させた。
尤も、その一瞬を意識出来なかっただけかも知れないが。

視界が開けてくるとすぐに、炎の弾が飛来するのが見えた。
防御は間に合うだろうが、それをさせるための思考が間に合っていない。
爆発音は無機質に響く。

煙幕が路地を支配するのを、双子は眺めていた。

( ´_ゝ`)「やったか」

(´<_` )「動きは止めただろうな」

自分の姿を隠す反面、向こうも隠れるのが煙幕の難点ではある。

( ´_ゝ`)「動きを止めたと言うのは?」

(´<_` )「相手は夜の管理者だ。その力なら、この程度の魔術攻撃で絶命したりはしない」

( ´_ゝ`)「成程そういう事か弟者。私の力を馬鹿にするか」

(´<_` )「事実は認めるべきだ兄者。私も自分の力を半ば諦めてはいる」

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 15:28:15.13 ID:80yzHpW/0
( ´_ゝ`)「何、動きが止まっているなら死んだも同様。肉体的に殺れば良い」

(´<_` )「魔術に特化した人型とは思えない台詞だな兄者よ」

( ´_ゝ`)「なあに元は魔獣。力に訴えるのがその生き方よ」

煙幕に歩む。
その足音までも一体化させて、双子はその距離をつめる。

「確かに便利で御座いますね、煙幕」

響く声に、双子は振り返る。
左腰に垂らす右手に光るカードを一枚摘んだ少女。
黒のドレスを白のエプロンで染める黒髪は、不敵な笑みを浮かべていた。

( ´_ゝ`)「誰お前」

(´<_` )「何でここに居るの」

ミセ*゚ー゚)リ「この程度の裏空間への侵入、造作も無い事で御座います」

カードを握りつぶす。
塵となった光は少女の両手に宿り、消えた。

( ´_ゝ`)「とりあえず殺すか」

(´<_` )「魔獣らしくな」

ミセ*゚ー゚)リ「……御嬢様、お迎えに上がりました」

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[まったくファッキンなシステムだぜ] 投稿日:2009/04/19(日) 16:03:05.19 ID:80yzHpW/0
「心配しないで待って居ろと、言っただろう?」

煙が晴れる。
夜の管理者は、傷一つ無い姿でそこに立っていた。

ミセ*゚ー゚)リ「お帰りが遅かったので、心配になって」

( ´_ゝ`)「どういうことだ弟者、夜の管理者、無傷だぞ」

ミセ*゚ー゚)リ「煙幕は便利なもので御座いますね」

割り込むようにミセリが言う。

ミセ*゚ー゚)リ「時には姑息な手段も悪くは無いものです」

( ´_ゝ`)「何言ってる、こいつ」

(´<_` )「煙にまぎれて傷を治したらしい」

( ´_ゝ`)「なんて卑怯な……!」

ミセ*゚ー゚)リ「それでは私は此方の相手をしますので、御嬢様は其方をぶちのめしてくださいませ」

そう言うが早いか、弟者に蹴りを放つ。
自分の視界の端を吹き飛んでいく弟者とそれに続くミセリを見送り、クーも右手に光を宿す。

川 ゚ -゚) 「一人だけならお前なぞ煙を撒き散らす公害に過ぎんよ」

( ´_ゝ`)「それは承知している」

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[状況としては全く>>62の通り] 投稿日:2009/04/19(日) 16:07:50.71 ID:80yzHpW/0
兄者の両手に、炎が生まれる。

( ´_ゝ`)「だが腐っても魔神、人間に劣るようではその名を持てん!」

頭上に持ってきた両手を、地面に振り下ろす。
そこに宿る炎は地を伝いクーに襲い掛かる。
虚像のアスファルトを砕きながら進む炎を、クーは光の盾で止めた。
それを飛び越え、兄者に接近する。

( ´_ゝ`)「望むところだ、夜の管理者!食らえぃ!」

交差させた手に宿る炎は溶岩の如き密度を持つ。
対するクーの、空を走る勢いに任せ後ろに残したままの右腕も、眩い光に覆われていた。

( ´_ゝ`)「これが私のマグマ・アクシスだ……!」

川 ゚ -゚) 「パクリは良くないぞ、魔神」

魔神が両腕を突き出すと、そこから炎が噴出する。
竜の如きそれにクーは右手の光を叩きつける。形は円盤を組み合わせた盾だ。
半透明のそれを通し、視線が対峙する。

川 ゚ -゚) 「成程……確かにッ……魔神だ……な!」

( ´_ゝ`)「言った……だろ……う?その名は……簡単には……ッ持てん!」

焼かれる盾と、焼く炎。
クーの右腕には血管のように光が辿っているし、兄者の手からは炎が濁流のように噴出している。
辿る光は盾に力を与え、噴出する炎は盾を破らんとする。

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 16:12:37.61 ID:80yzHpW/0
やがて、その均衡が破られる事となる。
兄者の手からは炎が生まれなくなった。
両腕をだらりと下げ、肩で息をする。

(;´_ゝ`)「ハァ……ッ……み、見事、夜の管理者……!」

川 ゚ -゚) 「当然だろう。単純な力比べでは私が上だ」

さて、とクーは前置きし、兄者の頭を左の手で鷲掴みにする。

川 ゚ -゚) 「塵になるか灰になるかは選ばせてやる。どちらだ?」

(;´_ゝ`)「敗者に……口を出す権利……は無い」

川 ゚ -゚) 「そうか」

速度は激流、指先から肩まで、赤黒い何かが幾筋も通る。
鷲掴みした兄者の頭から何かが流れ出ているのだ。
正確には、吸い出していると言った方が妥当であろうか。
兄者は痙攣する。目は既に白を剥き、口はだらしなく開いていた。
激流が終わると兄者は気絶したように頭を垂れるが、すぐにそれを上げてクーの顔と対面する。

( ´_ゝ`)「……何故私は生きている?」

川 ゚ -゚) 「私にも解らん。ただ、単純に魔力を構造体とした魔獣は魔力を吸われると消える」

( ´_ゝ`)「何故だ……七十年前に倒された時は確かに消えた筈。今の私は―――」

は、と笑うクーの声が響く。直後に成程、の言葉も付随。

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 16:16:07.16 ID:80yzHpW/0
川 ゚ -゚) 「恐らくお前はこれで魔術回路を失っている筈だ。人型の魔獣は……お前は魔神か。人として産まれているらしい。
      七十年前に消えたって言うのは、恐らくお前を産み出した奴が消したんだろうな。魔術回路の漏出防衛の為に」

( ´_ゝ`)「どう言う……?」

川 ゚ -゚) 「鹵獲防止の為に兵器を爆破するようなものだ。尤も、この例えがお前に通用するかは解らんが。
      ところでお前はどうする?今やお前は魔獣ではなく人間だ。恐らく、向こうも同じ結果にはなっているだろうが」

後ろを指差す。
その先には弟者とミセリが戦っているはずだ。

( ´_ゝ`)「弟を誇ってやりたい気持ちはあるが、おおむね同感だ」

溜息をつき、うわごとのように呟く。

( ´_ゝ`)「結局私達は昔も今も利用されていただけか」

川 ゚ -゚) 「利用とは……主、と言う奴か」

( ´_ゝ`)「ああ。我が主は昔も今も変わらん。
      アカ・マナフ……悪しき思考を司る、野心に溢れた神さ」

その名前に、クーは疑問を覚える。
すぐさま問う。

川;゚ -゚)「待て、"アンリ・マンユ"の間違いではないのか?」

( ´_ゝ`)「アンリ・マンユ?聞いた事の無い名前だな。
      少なくとも私を呼ぶ声は"アカ・マナフ"と名乗っていた。今も昔もそうだ」

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 16:20:44.72 ID:80yzHpW/0
ミセ*゚ー゚)リ「さて」

右手が押していた弟者を、地面に叩きつける。
肺から息を漏らす音と背中が地面に叩きつけられる音が同時に鳴る。

ミセ*゚ー゚)リ「私は目を離しませんし貴方を隠す煙幕もありません。
       果たして貴方はその能力でどう私に抵抗しますか?」

(´<_`;) 「難しい質問だな。はっきり言って無理だ」

ミセ*゚ー゚)リ「ならば、負けを認めますか?出来る事なら私も面倒は掛けたくないもので」

(´<_` )「兄が戦っていると言うのに、弟である私がそれを裏切るわけにも行くまい」

それを聞くとミセリはくるりと振り返り、三歩遠ざかる。
後ろを向きながら弟者に告げる。

ミセ*゚ー゚)リ「なら十秒待ちます。その後、私は本気で貴方を倒しに掛かる。
       ……後ろを向いている今なら虚像を作っても判りませんよ?」

数える。聴こえるように声を出して。
十のカウントが終わると、ミセリは右足を軸に回転し、振り向く。
両手には既に光が宿っている。
地を蹴り、目の前に立つ弟者に容赦なく拳を叩き込む。
しかしそれは虚像。拳は貫通する。

(´<_` )「ワンパターンで悪いが、これしか能が無いものでな」

その隙に、実像の弟者は後ろからミセリに跳びかかった。

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 16:25:13.76 ID:80yzHpW/0
自分の力は強くは無いが、それでも頭を思い切り殴れば戦闘不能に陥らせる事は可能だ。
弟者はそれを狙っていた。
跳びこみの加速を持って突き出された拳は、当たったならば確かにそれ相応の威力を持つだろう。
しかし、頭に接触するかしないかのところで、突然そこに光の円盤が具現、打撃を防いだ。

ミセ*゚ー゚)リ「本日の私は万全ですので、これくらいは朝飯前なのです」

振り返る事もなく言い放つ。
直後、弟者の足元から光が伸びる。
それは高く伸び、十字架を形成する過程で弟者の身を拘束した。

ミセ*゚ー゚)リ「還りなさい」

赤い何かが拘束された弟者の身から染み出し、幾束もの筋を作って十字架を伝って根元に殺到する。
根元に渡ったそれは地面を伝いミセリの足元に一直線を描く。
弟者は声を発さなかったが、その表情が声を発していたならば恐らく叫びだろう。
何かを絞りきると、ミセリは右手を横に切るように振る。
すると十字架は硝子の割れるような音と共に砕け、拘束を解かれた弟者は糸を切られたマリオネットのように地面に落ちる。

ミセ*゚ー゚)リ(……なんで体が残っているんです?)

川 ゚ -゚) 「終わったか、ミセリ」

振り向くと、声の通りにクーが居た。
その隣に兄者が居る事から、恐らくそれも同じ状況だろう。

ミセ*゚ー゚)リ「これは一体?」

ミセリは地面にくず折れた弟者を指差して言う。

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 16:29:54.94 ID:80yzHpW/0
川 ゚ -゚) 「どうもこいつらは人間と魔術的視点から見た構造が同じらしい。
      魔術回路を失っている以上こいつらは人間の害にはならないだろう。人格的にも。
      と言う訳で殺すのも忍びないと思うんだが……ミセリはどう思う?」

( ´_ゝ`)(え?決定権譲ってくれたんじゃないの?)

ミセ*゚ー゚)リ「まあ大丈夫でしょう。大した事もない奴らですし」

(;´_ゝ`)(何て奴らだ……)

川 ゚ -゚) 「と言う事だ兄者とやら。その弟引きずって何処へでも行け。着いて来るなよ」

去ろうとするクーとミセリに、兄者は待ったを掛けた。

(;´_ゝ`)「待てよ!私達はどう生活すれば良いんだ?家とか!」

それを聞くと二人は立ち止まる。
顔を向き合わせていることから、一応は取り合ってくれていることを判断した。
話し合いが終わると、クーだけが振り向き結果を告げる。

川 ゚ -゚) 「最近住人が引っ越した家があってな。彼女が許しさえすればだが、その家を使って良いぞ。
      一応今から聞いてやる。駄目だったら諦めて飢えろ」

懐から携帯電話を取り出し、コール。
ベル三回でそれは相手に繋がった。

川 ゚ -゚) 「もしもし……え?何で知ってるかってそんな事はどうでも良いだろう。
      そんな事より前にデレが住んでいた家なんだが、ちょっとホームレスを拾ってな。住ませてやっても良いだろうか?
      ……もう自分の家じゃないって?そんな悲しい事は言うな。出来れば断って欲しかったんだが。ん?気にするな。それじゃ」

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 16:33:23.97 ID:80yzHpW/0
川 ゚ -゚) 「OKらしいぞ、良かったな。じゃあな」

結果だけ告げると、二人はスタスタと帰って行ってしまった。
残された兄者は一応は安心する。
そう、一応は。

( ´_ゝ`)「……で、その家は何処にあるんだって言う」

気絶している弟者も含めて、問題は山積みである。

- 3rd night. 熱と渇きの双子の兄弟 end


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