- 3 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/28(火) 21:13:05 ID:atJiWxL6O
古い木製の扉、くすんだ金色のベル。
狭い室内に並ぶ棚、その上には乱雑にがらくたが積まれる。
用途も解らないようながらくたばかりのそこ。
ひとつあるカウンターにはレジスターが置いてあるが、埃まみれでいつ使われたかもわからない。
古時計、欠けた食器、妙な機械、蓋の開かないオルゴール。
よく言えば骨董品で、悪く言えば、どれもただのがらくた。
そんながらくたまみれの部屋。
否、店の中。
カウンターの向こう側で、だらしなく転がり惰眠を貪る人間が、一人。
川 ゚ -゚)「かー……くかー…………」
白目を剥いてよだれを垂らしていた。
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/28(火) 21:15:08 ID:atJiWxL6O
- からん、ころん。
( ΦωΦ)「うぇーい、居るかー」
川 ゚ -゚)「くけー……」
( ΦωΦ)「また寝とるんかいこいつは、ほれ起きろ、起きんか白目」
川 ゚ -゚)「ほげー……」
( ΦωΦ)「起きろてコラ」
川 ゚ -゚)「ほんぎゃー……」
( ΦωΦ)「それ本当に寝息なの?」
川 ゚ -゚)「が、んがっ…………あー……?」
( ΦωΦ)「ん、起きたか」
川 ゚ -゚)
( ΦωΦ)
川 ゚ -゚)「何だお前」
( ΦωΦ)「幼馴染みだよ」
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/28(火) 21:16:56 ID:atJiWxL6O
【思い出屋さんのようです】
川 ゚ -゚)「幼馴染みとか、はは、何いってんだお前エロゲのやりすぎだろ」
( ΦωΦ)「どつき回すぞ白目女、幼馴染みの杉浦だよ、これでもお前より年下だよ」
川 ゚ -゚)「はいはい説明乙、なんすか杉浦くん」
( ΦωΦ)「殴りてー、これ差し入れ」
川 ゚ -゚)「今日は何だ、肉か」
( ΦωΦ)「肉じゃが」
川 ゚ -゚)「じゃがいらねー」
( ΦωΦ)「はいはいじゃがいも差別禁止、不摂生女め」
川 ゚ -゚)「あーだりー……ねみー……」
( ΦωΦ)「ずっと寝とるがな」
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/28(火) 21:18:41 ID:atJiWxL6O
我輩は杉浦ロマネスク、外見は悪魔超人、中身は子羊の18歳男子である。
趣味は家事全般、特技は四階から飛び降りても怪我一つしない事。
好きなものは小さいもの、苦手なものはこの白目女。
川 ゚ -゚)「あー肉じゃがうめぇ、冷えてもうめぇ、生きるのつれぇ」
この白目女は幼馴染みの直野クール、クールの意味を履き違えた無表情女である。
年齢は二つ上の二十歳。ここ、直野骨董店の仮店主。
因みに骨董品については何も知らない役立たず店主である。
川 ゚ -゚)「今なんか悪口言ったろ」
( ΦωΦ)「うむ」
川 ゚ -゚)「素直ですね、死ね」
( ΦωΦ)「そんな事言ってるともう飯やらんぞ」
川 ゚ -゚)「あ、すみません、マジすみません、明日は魚の煮付けが良いです」
変な女である。
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/28(火) 21:20:25 ID:atJiWxL6O
( ΦωΦ)「しかし、相変わらず」
川 ゚ -゚)「私が美しいか」
( ΦωΦ)「店きったねぇ」
川 ゚ -゚)「こーやつぅ☆」
( ΦωΦ)「少しくらい片付けてはどうだ、あまりにも汚い、あまりにも汚い」
川 ゚ -゚)「そこまで大事な事かよそれ……」
( ΦωΦ)「あーもー肉じゃがこぼすし、おかずだけ食ってないで飯も食え」
川 ゚ -゚)「肉じゃがうんめー」
( ΦωΦ)「お茶入れるから机拭いとけよ」
川 ゚ -゚)「ぇーい」
(´ΦωΦ)「どんな返事だよ……」
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/28(火) 21:22:04 ID:atJiWxL6O
店の奥の古雑誌が積まれた狭い通路を抜けて、がらくたばかりの居住区へと向かう。
申し訳程度のコンロとシンクが置かれた炊事場でお茶を入れながら、辺りを見回す。
古雑誌、古道具屋、古い古い、何もかもが古い。
炊飯器がガス炊きで保温が出来ないレベルに古い。
小ぢんまりしたテレビにアンテナが立ってたり足があったり扉が付いてたりリモコンが無い。
ノット総天然色である。
( ΦωΦ)「……よく生きてんなあ、この部屋で……」
( ΦωΦ)「あ、力道山のポスターだ……」
川 ゚ -゚)「お茶マダー?」
( ΦωΦ)「催促するなら自分でやるが良い」
川 ゚ -゚)「冷蔵庫に納豆あるからとって」
( ΦωΦ)「この白目女……冷蔵庫まだ動くのかあれ」
川 ゚ -゚)「冷凍庫は使えないけどな」
( ΦωΦ)「だろうよ、よいせっと……」
川 ゚ -゚)「いちいち氷入れるのめんどくせーしな」
(ΦωΦ;)「古代の冷凍庫!?」
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/28(火) 21:24:15 ID:atJiWxL6O
川 ゚ -゚)「老舗とかではまだ使ってるだろ、古代とか言うな」
(;ΦωΦ)「一般家庭では使わんだろ……はい納豆、消費期限が激しく過ぎてそうだよ」
川 ゚ -゚)「腐らねぇよ発酵してるし」
(´ΦωΦ)「いや……いや…………もう良いや」
川 ゚ -゚)「あ、カラッカラになってる」
(;ΦωΦ)「いつか腹壊すぞ」
川 ゚ -゚)「すげーこれ粉ふきそう、カサカサだぞ、醤油くれ醤油」
( ΦωΦ)「はい、結晶化が進んでる醤油」
川 ゚ -゚)「あ、この醤油腐ってるから隣の壺のやつ」
( ΦωΦ)「捨てろ」
川 ゚ -゚)「更に発酵したらどうなるかって実験してんだよ」
( ΦωΦ)「黒っぽい染みになって終わるわ、虫がわかんのが不思議だぞここ」
川 ゚ -゚)「虫がわくほど食い物がない」
( ΦωΦ)「納得した」
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/28(火) 21:25:00 ID:atJiWxL6O
川 ゚ -゚)「白飯に肉じゃがと納豆がマジヘブン、生きるのつれぇ」
( ΦωΦ)「死んでも悲しまんから勝手にしろ」
川 ゚ -゚)「お前って本当に幼馴染み甲斐が無いよね」
( ΦωΦ)「じゃあたまには差し入れの礼を言え」
川 ゚ -゚)「あざーす」
( ΦωΦ)
川 ゚ -゚)
( ΦωΦ)"
川 ゚ -゚)「すみませんありがとうございますだからパイルドライバーに入ろうとしないで下さい」
( ΦωΦ)「世話のし甲斐のない女であるなあもう」
川 ゚ -゚)「この絶世の美女の世話出来んだから爪先くらいなら嘗めても許されるレベル」
( ΦωΦ)
川 ゚ -゚)「ごめんなさいネックハンギングツリーの体勢やめてください本当ごめんなさい」
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/28(火) 21:26:42 ID:atJiWxL6O
( ΦωΦ)「全く……ところで、仕事はしているのか?」
川 ゚ -゚)「客なんか来るわけねーだろ、どこにこの店あると思ってんだ」
( ΦωΦ)「商店街を抜けた先の住宅地から離れて潰れた工場の先に行ったきったねぇ路地裏の中」
川 ゚ -゚)「野良猫すらこねぇよ」
( ΦωΦ)「先代の時代は客が来ていたらしいが」
川 ゚ -゚)「そりゃ昔のお得意さんがジジイと同じ様に亡くなってるからな」
( ΦωΦ)「何でお前が店主なんだろうな」
川 ゚ -゚)「跡継ぎのねーちゃんが旅に出たからだよ」
( ΦωΦ)「もう店閉めとけよ」
川 ゚ -゚)「まあ金には困らないし、どうでも良いよ」
( ΦωΦ)「そうだな、土地貸しもしてるしな」
川 ゚ -゚)「あと株な」
( ΦωΦ)「株転がしてんのかよ」
川 ゚ -゚)「安定してるから気楽なもんよ」
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/28(火) 21:28:19 ID:atJiWxL6O
( ΦωΦ)「あー」
川 ゚ -゚)「あー?」
( ΦωΦ)「汚い」
川 ゚ -゚)「うるせーな骨董屋なんぞこんくらいで良いんだよ」
( ΦωΦ)「全国の骨董屋さんに謝れ」
川 ゚ -゚)「まあ、骨董は別枠だしな」
( ΦωΦ)「まあな…………ん?」
川 ゚ -゚)「あん? ……お」
からん、ころん。
('、`*川「あの……失礼します……?」
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/28(火) 21:30:17 ID:atJiWxL6O
川 ゚ -゚)「いらっしゃいま……」
('、`*川「あ」
川 ゚ -゚)
('、`*川
川 ゚ -゚)「んだよ……チン子伊藤かよ……」
('、`*川「ぼてくり回すぞクソアマ」
川 ゚ -゚)「何だよ遊びに来たのかよ元同級生」
('、`*川「誰がわざわざこんなとこまで遊びに来るか」
川 ゚ -゚)「じゃあ客か、何買いに来た」
('、`*川「いや、気が付いたらここにいたのよ、もはや帰りたいけど」
川 ゚ -゚)「うわー嫌な客だぞロマ男、塩持ってこい」
( ΦωΦ)「結晶化した醤油しかないわ」
('、`*川「追い返す事を前提に進めるな」
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/28(火) 21:32:43 ID:atJiWxL6O
川 ゚ -゚)「はいはい、じゃあ骨董じゃないな」
('、`*川「え?」
川 ゚ -゚)「おうチン子、良いもん持ってるじゃねぇか、寄越せ」
('、`*川「この酒の事? あとその呼び方は二度とするな」
川 ゚ -゚)「そうそう、それを代金に売ってやるよチン子」
('、`*川「殺すぞお前、だいたい何を売るってのよ、がらくたまみれじゃないここ」
川 ゚ -゚)「欲しくて来たんだろ、こっち来いよ」
('、`*川「だから、何を」
川 ゚ -゚)「それは」
( ΦωΦ)「思い出、である」
川 ゚ -゚)
('、`*川「……思い出? …………何してるの、元後輩の杉浦くん」
( ΦωΦ)「飼育当番です、元先輩の伊藤さん」
('、`*川「大変ねぇ元後輩の杉浦くんも……」
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/28(火) 21:34:31 ID:atJiWxL6O
( ΦωΦ)「ここは直野骨董店、別名、思い出屋である」
('、`*川「思い出……」
( ΦωΦ)「左の奥の棚、そこから見覚えのあるものを持ってくるが良い
それが、伊藤さんの大事なものである」
('、`*川「…………解った、見てくる」
片手に風呂敷包みを下げたまま、女、伊藤が奥の棚へと歩みを進める。
がらくたに挟まれた棚の中、外からはわからぬ場所に置かれたそこ。
そこだけは小綺麗に、少しばかり古ぼけた物が並んでいる。
万華鏡、オルゴール、おもちゃの指輪、小さな麦わら帽子。
空っぽのラムネ瓶、ビー玉、王冠、片方だけのサンダル。
視線を動かして棚の中を見ていた伊藤の目が、ふと止まった。
そっと手を伸ばし、掬い上げたのは小さな空き瓶。
瓶は半端にはがれたラベルが残り、中にはこっそりと、真空管が入っていた。
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/28(火) 21:36:25 ID:atJiWxL6O
- ('、`*川「……これ」
( ΦωΦ)「見つけたか」
('、`*川「…………見覚えがある、これ……何だっけ……」
( ΦωΦ)「どれ、こっちへ来て置くが良い」
('、`*川「う、うん……はい、これ……」
( ΦωΦ)「おい、白目女」
川 ゚ -゚)
(ΦωΦ )「おいこら白目女、納豆に没頭するな」
川 ゚ -゚)「あーはいはい、んだよ無視しやがって」
(ΦωΦ )「やかましいわ、はようせんか」
川 ゚ -゚)「へいへいっと……おい座れチン子、売ってやるよ」
('、`*川「クソアマ……売るって、この瓶を?」
川 ゚ -゚)「だから言っただろうが、売るのは」
思い出だよ。
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/28(火) 21:38:11 ID:atJiWxL6O
クールがべたつく手を瓶に乗せて、優しく撫でた、その瞬間。
ふ、と
伊藤の視界が、白い光で塗りつぶされた。
『ぺにちゃん、ぺにちゃん』
『なあに、お兄ちゃん』
『ほら、これ、キレイだろ』
『わ、きれい……何? それ』
『真空管って言うんだって、面白い形だよな』
『へぇ……なんか、不思議だね……』
『……ほしい?』
『ぇ……でも、お兄ちゃんのでしょ?』
『ぺにちゃんがほしいなら、あげるよ』
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/28(火) 21:40:21 ID:atJiWxL6O
いつも一人で遊んでいた私、ふと現れたお兄ちゃん。
少し年上で、私からすれば大人っぽく見えたお兄ちゃん。
それは夏の日、じゃわじゃわと蝉がうるさい日。
公園のブランコの上で、いつもの様に近所のお兄ちゃんと遊んでいた。
お兄ちゃんはどこか寂しそうな顔で、いつもより少しやって来た。
その手には、小さな瓶を握りしめていて。
『ぺにちゃん、これ』
『ん?』
『あげる』
『……ううん、それはお兄ちゃんのだから』
『良いんだよ、あげる』
『よくないよ』
『良いんだ、良いんだよ』
『お兄ちゃん?』
『おれ、もう居なくなるから』
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/28(火) 21:42:05 ID:atJiWxL6O
『……居なくなるの?』
『うん……引っ越すから』
『……』
『だから、あげる、ぺにちゃんに』
『……じゃあ、もらえない』
『ぇ……』
『それは、わたしと、お兄ちゃんのもの
だから、またね、また会った時、返すの』
『……ぺにちゃん、』
『また……会えるもん』
『……うん』
『それまで……わたしが持っとくだけ』
『うん』
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/28(火) 21:44:19 ID:atJiWxL6O
受け取った瓶詰めの真空管。
お兄ちゃんの手も、私の手も震えていた。
お互いの顔を見る事は出来なくて、こぼれそうな涙を目のふちに溜めておく事に必死で。
私はお兄ちゃんの顔を見ずに、またね、と呟いた。
お兄ちゃんも、私を見ずに頷いた。
もう十年以上前、十五年も前の事。
気が付けば、お兄ちゃんの事も、瓶の事も忘れていた。
ただぼんやりと成長して、成人して、ぼんやりと生きている。
どうして、今さらこの思い出を手に取ったんだろう。
どうして、今さらこの思い出を買いに、こんなところまで来たんだろう。
真っ白な視界の中、“お兄ちゃん”の笑顔だけが、浮かんで見えた。
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/28(火) 21:46:19 ID:atJiWxL6O
('、`*川「…………お兄ちゃん……」
川 ゚ -゚)「受け取ったな、思い出」
('、`*川「……うん」
川 ゚ -゚)「お代はその酒で良いぞ」
('、`*川「これおばあちゃんちのお使いものなんだけど」
川 ゚ -゚)「お前にとって、思い出と純米大吟醸玉乃光、どっちの方が価値がある?」
('、`*川「勝手に風呂敷開くなボケナス…………そうね、こ一万と思い出なら……」
('、`*川
('、`*川「大吟醸じゃね?」
川 ゚ -゚)「夢もへったくれもねぇなお前」
('、`*川「いや、思い出に値段はつけられないし」
川 ゚ -゚)「思い出にも酔えるだろうが」
('、`*川「変にうまい事言いやがってくそったれ」
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/28(火) 21:48:34 ID:atJiWxL6O
('、`*川「はぁ……何だって、今さらこの思い出が……」
川 ゚ -゚)「予兆だろうよ」
('、`*川「予兆?」
川 ゚ -゚)「ここに思い出買いに来る奴は、その思い出が必要な時にしか来ない」
('、`*川「この思い出が、必要になるっての?」
川 ゚ -゚)「だろうな、私は思い出売るだけだから」
('、`*川
川 ゚ -゚)
('、`*川「何で私の思い出をあんたが売るの?」
川 ゚ -゚)「無意識だろうがなんだろうが、一度手放したのはお前だ
私は手放されて流れてきた思い出を、必要な奴に売るだけだよ」
('、`*川「質屋かよ…………あーあー解ったわよ、ほら酒」
川 ゚ -゚)「まいどー」
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/28(火) 21:51:24 ID:atJiWxL6O
('、`*川「クーリングオフは?」
川 ゚ -゚)「お前の思い出をお前に代金貰って返しただけだ、あとは知らん」
('、`*川「なんつー店だ」
川 ゚ -゚)「また手放した思い出が欲しくなったら来いよー」
('、`*川「二度とこねーよこんな暴利店、瓶は納豆まみれになったし」
川 ゚ -゚)「手放した方が悪い、またなーチン子」
('、`*川「たいがいブチ殺すぞクソアマ」
からん、ころん。
川 ゚ -゚)「あー久々に仕事した」
( ΦωΦ)「お疲れである」
川 ゚ -゚)「酒入れてー」
( ΦωΦ)「氷ないぞ」
川 ゚ -゚)
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/28(火) 21:52:55 ID:atJiWxL6O
( ΦωΦ)「……ところで、なぜに真空管だったのか」
川 ゚ -゚)「知らんわ」
( ΦωΦ)「だと思ったよ」
川 ゚ -゚)「ま、あれが原因かは知らんが」
( ΦωΦ)?
川 ゚ -゚)「あいつ工学系の大学行ってんだよな」
( ΦωΦ)「……思い出を手放していても、どこかには繋がっているのか」
川 ゚ -゚)「知らね、まあ一度繋いだ因縁はそう簡単にゃ切れんわな」
( ΦωΦ)「因縁つったら聞こえ悪いぞ」
川 ゚ -゚)「変わんねーよ、因果も因縁も一緒、縁は縁だ」
( ΦωΦ)「ふむ……」
川 ゚ -゚)「ねぇ氷、酒飲みたい、お前にも一舐めくらいやるから」
( ΦωΦ)「我輩まだ未成年だから」
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/28(火) 21:55:00 ID:atJiWxL6O
( ΦωΦ)「しかし、やっと仕事があったな」
川 ゚ -゚)「おう、働く私は美しかっただろ」
( ΦωΦ)「はは、わろす」
川 ゚ -゚)
( ΦωΦ)
川 ゚ -゚)「氷買ってこい」
( ΦωΦ)「はい」
直野骨董店店主には、不思議な力がある。
それは、流れてきた思い出を形にして、その持ち主に返す力。
別に対価などは必要ないらしいが、体裁のために“代金”を受け取っている。
だからパクリじゃない。決してパクリじゃない。
この直野骨董店と、先代の先代の時代から家ぐるみで関わりのある我輩は、
『直野骨董店の手伝いをする』と言う家訓に従い、せっせと仮店主の飼育係をしている。
まあ実際は、ただ幼馴染みのよしみで世話をしているだけなのだが。
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/06/28(火) 21:56:22 ID:atJiWxL6O
( ΦωΦ)「外あっつ…………ん?」
店を出てコンビニに向かう我輩の視線の先には、先ほどの客。
その向かいに立つのは、長身の男性。
伊藤さんが恥ずかしそうに、俯きがちに男性と話して、瓶を差し出していた。
( ΦωΦ)「……ま、悪くない商売……か」
変な仮店主、直野クール。
あの変な女の仕事は、決して悪いものではない。
我輩は額に流れる汗を拭いながら、どこか暖かい胸を抱いて、軽い足取りでコンビニへと向かった。
おわり。
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