( ^ω^)マインドB!のようです

1 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 18:42:41 ID:pF8up2po0

私が ひとりぼっちにならないように



「羽生、どうした!?落ち着け!こ、こら……それを離すんだ!!」


「弟者!?……あんた、弟者……だよね?」


「ツン!どうした、しっかりしなさい!」


「ショボン……?ショボンなの……?」

2 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 18:43:24 ID:pF8up2po0

神様は 私に



「しぃ、しぃって、さっきから誰の事言ってんだ!あたしはそんな名前じゃねぇっ!!」


「え、大丈夫だよ?俺は……」


「ツンじゃないもん。忘れちゃったの?あたしはね……」


「初めまして、ショボンのお母さん。僕は」

3 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 18:44:10 ID:pF8up2po0





もうひとりの

”私” をくれました。

4 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 18:44:58 ID:pF8up2po0





( ^ω^)マインドB!のようです

5 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 18:46:18 ID:pF8up2po0
(;^ω^)「遅刻だおー!」

3階へと続く階段をドスドスと踏み鳴らし
少々肉付きの良い若い男が、汗を飛ばしながら悲痛な声で叫んだ。

ここは、ニューソク町にある一般的な私立校・VIP高等学校。
5時限目の授業が始まる数分前。

(;^ω^)「着地だっとうっ!」

最後の一段を短い足で一気に駆け上がる。
重々しい衝撃音とともに、廊下が震えた。

(;^ω^)「3階ッ!到着ッ!!」

ようやく階段を登りきり、何故かビシッとポーズを決める。

6 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 18:47:06 ID:pF8up2po0
だが、床を破壊しそうな勢いでその巨体を目的の階に着地させても
彼の授業開始時刻との闘いは終わらない。

(;^ω^)「うおおぉおぉぉおぉ!!廊下が長ぇおおぉぉぉ!!!」

彼の目指す教室は、3階の奥の奥。

3年生の教室が並んだ廊下を、端まで一直線し
さらにそこから角度を変え右に曲がった先の、とことん進んだ突き当たりにあるのだ。

「先生がんばー」

「ちょwww地響きwwwww」

教室の窓から覗く3年生達が、愉快そうに声をかける。
だがそんな声に応える余裕は、今の彼には全く無い。

7 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 18:47:51 ID:pF8up2po0
(;^ω^)「ひぃ、ふぅ」

よく見ると、その小脇に抱えられている黒くて厚いカバーのファイルには
表紙に貼られたシールの上にでかでかと『出席簿』と書かれていて。

どこにでも売っているような地味なネクタイに、肘まで捲った安物のYシャツ。
右手から下げた紙袋に入っているのはどうも、数学や英語などといった教材に見える。
そういった持ち物や、先ほどの生徒のセリフからも察する事が出来るように。

この男、内藤ブーン30歳。

まるで学生のように授業開始時刻ギリギリの廊下を全力疾走しているが、
職業は学生ではなく、このVIP高等学校に所属する教師の1人なのだ。

8 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 18:48:46 ID:pF8up2po0

キーン コーン カーン コーン

(;゚ω゚)「鳴ったあああああ!!!」

まるで死の宣告とばかりに、屠殺される豚のような絶叫を喉から絞り出す。

と同時、ようやく辿り着いた目当ての教室に飛び込むブーン。


騒々しく開け放たれた扉の上に、申し訳程度に備えられた板には
無機質な文字で『特別教室』と書かれていた。

9 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 18:50:01 ID:pF8up2po0
ぜぇぜぇと肩で息をしつつ、教壇の上の時計に目をやると
丁度針は昼休み終了、つまり5時限目開始の時刻ぴったりを指している。

(;^ω^)「……」

⊂(;^ω^)⊃ セフセフ!!
 ミ⊃⊂彡

ξ゚听)ξ「アウトです」

そんなブーンの束の間の安堵をばっさりと切り捨てたのは、金髪ロールの女子生徒。

ξ゚听)ξ「鐘もう終わったから」

彼女の名前は、津田ツン。
名前のとおりツンとした性格が伺える声で、若干不機嫌そうにブーンを睨んだ。

(;^ω^)「そんなあぁ!先生めっちゃしんどい思いしてここまで来たんだお!?」

ξ゚听)ξ「遅刻は遅刻ですよ」

情けない教師の言い分をふん、と一蹴して、そっぽを向くツン。

10 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 18:51:36 ID:pF8up2po0
見ると、教室にはツンが座っている机の他に、席が3つしか無かった。

ツンの左隣の席には、可愛く整ったショートヘアの、大人しそうな女子生徒。

(*゚ー゚)「先生、汗すごいですよ。大丈夫ですか?」

そのまた隣には、やけに逞しい眉が特徴的な
いかにもスポーツ好きといった雰囲気を纏う男子生徒が、背筋をピンと伸ばして座っている。

(`・ω・´)「教室が遠いんだから、その分早く来れるよう準備しないと」

(;^ω^)「ぐぬぬ」

ただ一つだけ、窓側に最も近い一番左端の席には誰も座っていなかった。
その空席に素早く目を光らせると、指を差してなおも喚く豚が一匹。

(;^ω^)「あーっ、弟者も遅刻じゃないかお!
      いーけないんだいけないんだー!せーんせに言ってやろっ!」

ξ#゚听)ξ「先生はあんたでしょッ!!」

( ´ω`)「ごもっともですお……」

まるで30歳とは思えない振る舞いのブーンを叱咤するツン。
これではどちらが教師で生徒なんだか分かったもんじゃない。

11 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 18:54:30 ID:pF8up2po0
そんないつものやりとりを困ったように見守りながら、
大人しそうな女子生徒・羽生しぃは、隣の席に座る八又シャキンに囁いた。

(*゚ー゚)「それにしても、珍しいですね。流石先輩が授業に遅れるなんて」

(`・ω・´)「ほんとだな。彼が時間を守らないなんて滅多に無いことなのに」

ξ゚听)ξ「そういえば食堂にも来てなかったわね。
      ひょっとして弟者、今日休んでるんじゃないの?」

( ^ω^)「そんな報告は聞いてないお。間違いなく朝から来てるはずだお」

真面目な性格の彼にしては珍しい。
何かあったのかと皆の頭を不安がよぎる。

(*゚ー゚)「もしかして、何かあったんじゃ……」

ξ゚听)ξ「考えすぎよ。ちょっと遅れる事くらい誰だってあるわ」

だが、いくら少人数の教室といえど、1人の生徒が来ないのを理由に
授業を遅らせるわけにはいかない。

( ^ω^)「……まあいいお!きっとそのうち来るお」

教卓の前についたブーンは、持ってきた紙袋を置いて出席簿を取り出した。

12 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 18:57:42 ID:pF8up2po0
( ^ω^)「まずは出席確認だお」

一般的に授業開始時には、「起立・礼・着席」から入るのが普通だと思うが
そんな事はおかまい無しに、パラパラと出席簿をめくり今日の日付のページを開く。


出席確認といっても、この教室にいる生徒は
この場にいない流石弟者を除いて、たったの3人のみだ。

確認するまでも無いだろうに……と思うが、
この出席確認はこの教室で授業を始めるにあたり、決して欠かせない事なのである。

( ^ω^)「みんな、準備はいいかお?」

(*゚ー゚)「はい。……大丈夫です」

ξ゚听)ξ「大丈夫よ」

(`・ω・´)「僕はいつでも」

( ^ω^)「よし、それじゃあいくお」

ブーンが大きな声で名簿を読み上げた。

13 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 18:58:36 ID:pF8up2po0
( ^ω^)「出席番号1・羽生つー!」

だが、最初に呼ばれたのは、この教室にいる3人のうち
誰の物でもない名前。

しかし確かに、ブーンの手元にある名簿表には
出席番号1番・羽生つーの名前がしっかりと記入されている。

( ^ω^)「つー?いないのかお?ほらほら、大きな声で返事だお!」

ブーンが促すも、誰からも返事は無い。
当然だろう。ここにつーという名の生徒はいないのだから。

だが、その僅かな沈黙は高調子な声で破られた。

14 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 19:00:07 ID:pF8up2po0
「わかってんだよっ!つーちゃんはここにいるぜっ!」

ツンとシャキンの席の間、しぃが座っている席から
甲高く威勢のいい声があがった。


(*゚∀゚)「あひゃひゃひゃ!おはよー先生!!」


そこで元気よく手を振っているのは
先ほどまでの大人しそうな印象とは打って変わって、軽快に笑う羽生しぃ。

その態度も雰囲気も、先ほどまでとはまるで別人のようだ。

( ^ω^)「こんにちはだお、つー。ちなみに今は昼過ぎだお」

(*゚∀゚)「こまけぇことはいいんだよっ!あひゃ!」

そんなしぃの豹変ぶりに驚く者は誰も居なく
「羽生つー」と名前の書かれた出席欄に丸をつけ、出席確認は続いていく。

( ^ω^)「んで流石……は、いないから後回しっと」

( ^ω^)「次!出席番号3・津田デレ!」

15 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 19:01:03 ID:pF8up2po0
「はーい!」

またしても、先ほどまでは教室にいなかった筈の
活発な少女を思わせる声が明るく応えた。


ζ(゚ー゚*ζ「先生、こんにちはっ!」


笑顔で挨拶をしたのは、ついさっきまで
ブーンに厳しい叱責を浴びせていた女子生徒、津田ツンだ。

だがその表情は明るく柔和な笑みで満たされていて
少しトーンの高くなった声は、まだ幼く純粋な、あどけない少女を思わせた。

( ^ω^)「こんにちはだお。デレ、今日も元気そうだおね」

ζ(^ー^*ζ「えへへ。デレはいつでも元気いっぱいだよ!」

( ^ω^)「おっおっ。そりゃいい事だお」

まるで父と娘のような和やかな会話。
春の午後を思わせる、朗らかな空気が教室に流れる。

16 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 19:01:49 ID:pF8up2po0
( ^ω^)「んで、最後に出席番号4・八又シャキン」

(`・ω・´)「はい!」

唯一先ほどと変わらぬ調子で、威勢良く応えたのはシャキンだ。

シャキンは返事をしたあと、少しだけ困ったような顔をしてブーンに謝る。

(`・ω・´)「すいません先生。
      ショボンのやつ、午前の授業もどうしても受けたくないって言って」

( ^ω^)「ん、分かったお。今度ゆっくり話しあうお」

(`・ω・´)「迷惑かけてすいません」

( ^ω^)「謝ることないお」

17 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 19:02:40 ID:pF8up2po0
最後の丸印をつけ終え、ポン、と出席簿を閉じて生徒達へと向きなおる。
全員の顔を見ながら、今日もみんな元気そうだ、とブーンは微笑んだ。


( ^ω^)「さて、以上で出席確認終わり。
      シャキン、号令お願いおー」

(`・ω・´)「はい先生。起立!」

シャキンのかけ声に、他の2人も立ち上がる。

(`・ω・´)「礼!」

ζ(゚ー゚*ζ(*゚∀゚) (`・ω・´)『先生、こんにちは!!』

( ^ω^)「こんにちはー!だお!」

18 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 19:03:35 ID:pF8up2po0

VIP高等学校、第一校舎3階の奥の奥。

3年生の教室が並ぶ廊下を突き進み、離れた場所にひっそり位置するこの教室で
たった4人の生徒を持つ、このクラスはVIP高等学校特別クラス。

通称“マインドBクラス”である。

19 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 19:04:42 ID:pF8up2po0

マインドBとは

何らかのはずみで、1人の人間の中に
もう1つの自我を持った精神が生まれ、本来存在していた精神と、新たに生まれた別の精神が
それぞれ独自の人間として1つの体の中に共存するという、非常に珍しい症状の名称である。

一般に、最初に親の体から生まれ、名前を付けられた存在は基本人格と呼ばれ、
その中で後に生まれた人格の総称がマインドBと呼ばれている。


発症するケースが非常に少ないので、
原因を含め、現在でも解明されていない点が多く
またその治療法についても、今に至るまで
心理学者や医学界の間で日々研究されている最中だ。

20 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 19:05:41 ID:pF8up2po0
そしてこのクラスは、VIP高等学校に通う1年生から3年生までの生徒のうち
マインドB発症者の生徒だけを集め、特別な授業を行う目的で設立された異色のクラス。

通常は、それぞれのクラスで一般の生徒として普通に授業を受け、
その一方で、1日の2、3時間、決められた時間割に沿ってこの教室に集まり
特別授業を受けることになっている。

基本的に、日常の生活においては基本人格が活動し、その間眠っている状態のマインドB達は
この教室にて、担任教師であるブーンに名前を呼ばれることで表面に現れ、
そこで初めて“出席”したこととなる。


それが先ほどの出席確認で起こった、生徒達の豹変理由であり
この教室では毎回繰り返される、ごく平凡な光景なのだ。

21 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 19:06:22 ID:pF8up2po0

ここではマインドBも立派な一人の個人として扱われている。

このクラスの存在目的は症状の治癒では無く
基本人格とマインドBが共に円滑な生活を送れるよう手助けする事だ。

学習面・生活面等での問題を、2つの人格の橋渡し役となって解決しながら
2人の個人として、社会で生きていける力を身につける。
それがクラス担任であるブーンと、生徒達みんなが背負っている課題なのだ。


マインドB発症者に対してこのような方針を取っている学校はほとんど無く、
現在この教室の生徒である4人も、この特別クラスがあるからこそ入学した者が多い。


そして、クラス担任のブーンは
教員免許の他にマインドBに関する専門治療の資格を持ち
このVIP高等学校に配属されている、教師兼カウンセラーなのである。

22 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 19:07:11 ID:pF8up2po0

ζ(゚ー゚*ζ「……あれ?」

気持ちの良い挨拶が終わり、席に着くと
きょろきょろと教室内を見回して、デレが首を傾げた。

(*゚∀゚)「あひゃ?兄者がいないじゃん」

つーも同様に違和感に気づき、デレと並んで疑問符を浮かべる。

( ^ω^)「あ、そうなんだお。珍しく遅刻らしいお」

思い出したようにブーンが応えると、デレは顔を曇らせた。

ζ(゚ペ*ζ「えぇ〜。なんだぁ、つまんないの。
       今日は妹者ちゃんの学校がお昼までって言ってたから、
       遊びにいってもいいか聞こうと思ったのに」

( ^ω^)「へぇー。そうなのかお?」

ζ(゚ー゚*ζ「うん!運動会の練習だけなんだって」

( ^ω^)「運動会かぁ。もうそんな季節かお」

23 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 19:08:01 ID:pF8up2po0
(`・ω・´)「でもデレ、僕らの授業が終わるのはいつもどおりの時間だから
      妹者ちゃんと遊びに帰ることはできないよ」

ζ(゚ー゚;ζ「わ、わかってるもん。
       デレ、ちゃんとお勉強おわってから遊ぶもん!」

( ^ω^)「おっおっ、偉いおね。
      間違っても途中で帰ったりしちゃ駄目だおよ?」

ζ(゚ー゚*ζ「デレそんなことしないよ!」

(*゚∀゚)「あひゃ、兄者じゃあるまいしな!」

つーの言葉に、ブーンとシャキンは
今日はまだ出席していない、糸目の男子生徒の姿を思い浮かべて笑った。


25 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 19:09:45 ID:pF8up2po0
( ^ω^)「ほんとだおねwww」

(`・ω・´)「はは、確かにあいつならやりかねないな!」

( ^ω^)「おっおっおっwwwwww」

(*゚∀゚)「あひゃひゃひゃひゃー」

(`・ω・´)「はっはっh……」


( ^ω^)


(`・ω・´)


( ^ω^)(`・ω・´)「「……」」


(;^ω^)(`・ω・´;)「「ま さ か ……」」


ζ(゚ー゚*ζ「?」

(*゚∀゚)「あひゃー」

26 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 19:10:44 ID:pF8up2po0

+ + + + + + + + + + + +


開放感と湧き上がる興奮に浮き足立ちながら
学校から歩いて30分弱の道のりを越え
俺は「流石」と書かれた表札の前で立ち止まり、我が家を見上げた。


この石垣をくぐり、ドアノブに手をかけるのは結構久しぶりな気がする。
毎日暮らしてる自分の家なのに、なんだか変な感じだ。

ドアノブに手をかける。
用心深い母者のこと、もちろん鍵はかかっているだろうが問題はない。

予想通りロックされている事を確認すると、
カバンから合鍵を出してドアに差し込み、手応えを感じるまで回す。

カチャリ

27 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 19:11:25 ID:pF8up2po0
ロックの外れたノブを回して、そぅっとドアを開いた。
それから素早く視線を下に落として玄関先の靴を確認。

子供用の、かわいらしい赤色の靴がきちんと揃えて置いてある。
そして母者がいつも履いてるオバサン靴は見当たらない。

今の時間、母者は近所のタイムセールに行っていて家には居ない筈。
冷蔵庫に貼ってあったチラシは昨日のうちに確認済みだ。


だからこそ今日は、密かに練っていた計画を実行するにあたって絶好の好機だったのである。


今のところ順調に進んでいる計画に、思わず口の端が上がってしまう。
ニヤリ、計画通り。

28 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 19:12:17 ID:pF8up2po0
体の半分をドアに挟まれた状態のまま、玄関先で不敵にほくそ笑んでいると
奥の方から何か小さい生き物がこちらへ向かって走ってくる、軽やかな足音が聞こえてきた。


|・∀・ノ!リ人「!」


そしてその小さくて可愛い生き物が、曲がり角からひょこっと顔を覗かせる。
すぐに、くりくりとした大きな2つの瞳が俺を捕らえた。


その瞬間、俺の全身に電気の信号がバチバチと駆け巡り
眠っていたあらゆる電源のスイッチを次々とONに変えていく。



マジ天使幼女 ロックオン
脚力 瞬発力 共にオールグリーン

―――――抱きつきスタンバイ、完了。

29 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 19:13:13 ID:pF8up2po0
l从・∀・ノ!リ人「ちっちゃいあに……」

(*´_ゝ`)「妹者ぁ―――!!!」

Σl从・∀・;ノ!リ人「わぶっ!?」

愛らしい口が、俺ではないその名前の全てを言い終わらないうちに
俺は小さくて可愛い生き物、妹者に飛びかかった。

l从・∀・;ノ!リ人「むぎゃー!?」

がっしり抱きしめた俺の二本の腕の中でジタバタしながら
ぷはっと顔を出した妹者は、丸くした瞳を俺に向け、驚いた声で叫ぶ。

l从・∀・;ノ!リ人「き、きさまはっ……」

l从・∀・;ノ!リ人「おっきい兄者か!おっきい兄者じゃな!?」

(*´_ゝ`)「ぴんぽんぴんぽん!流石だ妹者ー!」

高揚する気分と共に、そのまま高く抱き上げた。

それにあわせて肩まで切った柔らかい髪がふわっと舞い上がる。
気のせいか、前に抱っこした時よりちょっと重くなったような。

30 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 19:14:20 ID:pF8up2po0
短く切った前髪の下では、最初の驚きが終わって、満面の笑みが広がっていった。

l从・∀・*ノ!リ人「やっぱり!すぐ分かったのじゃ」

(*´_ゝ`)「そうかそうか。やっぱり妹者には敵わんな!」

l从・∀・*ノ!リ人「久しぶりなのじゃー!」

(*´_ゝ`)「久しぶり〜」

高くなった視線の先で、太陽の光みたいにきらきら笑う妹者。

俺はゆっくりと妹者を床に降ろして、わしゃわしゃ頭を撫でた。

l从・∀・ノ!リ人「おっきい兄者も、今日は学校お昼まで?」

( ´_ゝ`)「そうだよ。だから今日は妹者といっぱい遊べるぞ!」

l从・∀・*ノ!リ人「わーい!妹者の部屋に行って遊ぶのじゃー!」

(*´_ゝ`)「ふひひ、それじゃお邪魔しようかねぇ」

l从・∀・ノ!リ人「れっつごー!」

31 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 19:15:55 ID:pF8up2po0

こちらスネーク 幼女の部屋に潜入成功。


l从・∀・ノ!リ人「おっきい兄者、見て見て!
         あの絵ね、先生に褒められて、おっきな花丸もらえたのじゃ!」

( ´_ゝ`)「ん?おー、この前描いてた公園の絵だな。どれどれ」

勉強机の上に飾ってあった絵は
何日か前に妹者が描いていた、近所の公園の絵だった。
学校の宿題で、テーマは何か知らないけど、多分好きな風景を描いてこいとかだったんだろう。

l从・∀・ノ!リ人「おっきい兄者のあどばいすのおかげなのじゃ!ありがとなのじゃー!」


公園のベンチに座り、隣で一生懸命クレヨンを走らせる妹者の姿は微笑ましく。
黙って見ているつもりだったのだが、俺は絵を描くのが好きなのでつい口を出してしまったのだ。

深い緑や黄緑を混ぜて、葉っぱが生い茂ってる風に見せるやり方なんかを教えると
妹者は嬉しそうに、画用紙いっぱいを色とりどりのクレヨンで彩っていった。


俺の方は後で弟者に怒られたのだが、ここ最近で一番楽しい時間だったと記憶してる。

32 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 19:17:55 ID:pF8up2po0
( ´_ゝ`)「妹者は絵が上手だな!ひょっとするとすごい才能の持ち主かもしれないぞ」

l从・∀・*ノ!リ人「えへへ、照れるのじゃー」

(*´_ゝ`)「俺は妹者の絵が大好きだぞ!
      ちっちゃい頃からよく色々なものを描いて見せてくれたもんな」

妹者の勉強机の周りには、その公園の絵の他にも今まで描いた作品達が所狭しと飾られていた。



その中に一枚、懐かしい絵があるのを見つける。
真ん中に妹者を挟んで、俺と弟者の3人が描かれた絵だ。
何年か前妹者が見せてくれたその絵を見て、俺は嬉しい思いを抱いた。


妹者は昔この絵のことで母者に怒られたのに、まだ大切にしてくれてたんだな。



暖かな色に囲まれ、手を繋いだ3人が仲良く微笑むその絵には
妹者の優しい気持ちが溢れていた。

33 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 19:18:52 ID:pF8up2po0
l从・∀・ノ!リ人「それでね、妹者、障害物競走と短距離走に出ることになったのじゃ」

( ´_ゝ`)「運動会あるの日曜だったよな!
      よし、俺も見に行くから頑張るんだぞ」

l从・∀・*ノ!リ人「ほんとに!?やったー!」

台所の棚から拝借したスナック菓子を貪りながら
妹者とする最近の事や学校の話なんかのおしゃべりは楽しい。


もうすぐ行われる妹者の小学校での運動会。
晴天の下、妹者の頑張ってる姿を応援して、正午には一緒にお弁当を食べる。

一等賞の旗をかかげ、自慢げに走り寄ってくる妹者。
そんな妹者を抱き上げて、目いっぱいその頭を撫でくり回す俺。
最高の日曜日になる予定だ。運動会万歳!

34 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 19:20:12 ID:pF8up2po0
それに、なんといっても小学校の運動会だ。
元気いっぱい走り回る、愛らしい体操着姿の低学年ロリ幼女達がグラウンド中そこかしこ……

いやいや。妹者の手前、俺は決してやましい事など考えては……
おっと涎が

l从・∀・;ノ!リ人「おっきい兄者、なにニヤついてるのじゃ?若干きもちわるいのじゃ」

( ´_ゝ`)「Oh…辛辣だな妹者。毒舌幼女もばっちりお兄ちゃんの守備範囲内だぜ」

l从・∀・;ノ!リ人「何言ってるかわかんないのじゃ。
         あとヨダレ垂れてるのじゃ」

35 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 19:21:32 ID:pF8up2po0
( ´_ゝ`)「それにしても、怪我しないように気をつけるんだぞ?」

l从・∀・ノ!リ人「大丈夫なのじゃ!
         準備体操ばっちりすれば怪我しないって、先生言ってたのじゃ!」

( ´_ゝ`)「mjsk。準備体操すごいな。今でもラジオ体操第一とかするのか?」

l从・∀・ノ!リ人「ううん。AKBのヘビロテ」

(;´_ゝ`)「そういえば俺らの時代もポルノグラフィティとかだったな……」

l从・∀・ノ!リ人「妹者、いっぱい練習してばっちし覚えたのじゃ。
         だから、怪我しないのじゃ!」

( ´_ゝ`)「まあ、備えあれば憂い無しというからな!
      準備体操といえど、気を抜くんじゃないぞ妹者」

l从・∀・ノ!リ人「ラジャ!なのじゃ!」

( ´_ゝ`)「よーし、じゃあ本当に大丈夫かどうか、お兄ちゃんに見せ……」

36 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 19:22:33 ID:pF8up2po0





「妹者の心配より自分の心配をするんだね!」





(;゚_ゝ゚)「ッ!!!」

その瞬間、和やかな空気が一瞬にして凍りついた。

37 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 19:23:20 ID:pF8up2po0
(;゚_ゝ゚)「そ……その声は!!」

金縛り一歩手前の状態で、ぎこちなく首を後方に向ける。
いつの間にか開いていた部屋の入り口には



 @@@
@#_、_@
 (  ノ`)「兄者……まぁたあんた約束破ったね?」



ゴゴゴゴゴ…と威圧的な効果音が聞こえてきそうな勢いで厳然と聳え立つ

流石家最強神―――流石母者の姿があった。

38 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 19:28:29 ID:pF8up2po0
l从・∀・ノ!リ人「母者!」

(;゚_ゝ゚)「ひぎぃ何故!?タイムセール終了の時間まではまだ余裕があるはず!」

 @@@
@#_、_@
 (  ノ`)「学校から携帯に連絡が来たんだよ!
      授業が始まっても弟者の姿が見えないから、家に行ってないかってね!!」

(;゚_ゝ゚)「なんと……文明の利器恐るべしッ!!」

 @@@
@#_、_@
 (  ノ`)「あたしを出し抜こうなんざ百万年早いんだよ……覚悟はいいか?あたしは出来てる」

熊をも素手で殺す鉄拳を従え、ゆっくりとこちらへ距離を詰めてくる母者。

( ´_ゝ`)「オワタ\(^o^)/」

瞬時に脳内を走馬灯が駆け巡る。
俺の脳が今までの人生の中でこの状況を打破する方法を探している証拠だ。
だが、圧倒的死へのオーラを放つこの鬼神を前に、生き残る術などある筈も無く―――

39 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 19:29:26 ID:pF8up2po0


―――準備体操ばっちりすれば怪我しないって―――


(;゚_ゝ゚)「レイディオ体操その一イイィ!!!」

ヽ(;゚_ゝ゚)ノ「よーい!」

ヽ(´<_` )ノ「腕をおおーきく上にあげて……って
        ……あれ?」


l从・∀・ノ!リ人「ちっちゃい兄者!」

 @@@
@#_、_@
 (  ノ`)「ああーっ!ちぃッ……また逃げられた!!」

ヽ(´<_` )ノ「え?母者?……え?」

40 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 19:30:44 ID:pF8up2po0

+ + + + + + + + + + + +


( ^ω^)「兄者、いい加減出てくるお」

(´<_` )「……」

( ^ω^)「今なら先生まだそれほど怒ってないお。
      出てくるなら今のうちだお」

(´<_` )「……」

(´<_` )「……駄目だな。出てきませんね」

(;^ω^)「おー」

41 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 19:31:35 ID:pF8up2po0
場所は変わって、VIP高等学校特別教室。

教室の後ろにて、学校に連れ戻された弟者と、教師であるブーンが対峙していた。
他の生徒達は各々課題や勉強に取り組んでいる。


今回の騒動は、弟者のマインドBである兄者がやらかした事だった。
4時間目の授業が終わると同時、こっそり弟者と人格交代して学校を抜け出したのだ。

だが当の兄者は拗ねて意識の奥に隠れ、なかなか出てこようとしない。
そのため、もう何十分もの間、弟者とブーンはこんなやりとりを繰り返している。

42 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 19:34:00 ID:pF8up2po0
( ^ω^)「早く出てきて昨日の課題の続きやるお。もう1時間しかないお」

(´<_` )「そうだぞ兄者。これじゃまるで俺が怒られてるみたいじゃないか」

(´<_` )「……」

(´<_` )「ヤダじゃないだろ」

(´<_` )「……」

(´<_`#)「こんのアホ兄者!
      早く出てこないと妹者の運動会見せてやらないぞこら!!」

必死で自分の意識下から兄者を引っ張り出そうとしている弟者だが、
何も知らない人が見たらちょっと危ない人である。

43 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 19:34:48 ID:pF8up2po0
( ^ω^)「むぅ。このままじゃ埒が明かないお。
     ……しょうがない、助っ人を呼ぶかお」

(´<_` )「え?助っ人って?」

( ^ω^)「ちょっと待っててお。
     あー、シャキン、デレ、つー。耳を塞いでるお」

∩`・ω・´∩『はーい』∩゚ー゚*∩ζ

∩*゚∀゚∩「あひゃ!」

(´<_` )「へ?」

46 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 19:38:21 ID:pF8up2po0

( ^ω^)


(  ω )スゥ……




(#ФωФ)カッ!!!




(#ФωФ)「くおっらああああああぁぁぁ!!!
       兄者!!!いい加減出てこんかい!!!!!」

Σ(;゚_ゝ゚)「ひぎゃあああああ!!!!」

47 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 19:39:38 ID:pF8up2po0
今まで柔和なにやけ面だったブーンの顔が一変し、目を見開いて鬼のような形相となる。


廊下の隅から隅まで震え上がらせるような怒声を発すると、
瞬時に弟者の意識下から兄者が引っ張り出された。


(#ФωФ)「こんの馬鹿もん!
       授業をサボった上学校抜け出して約束を破るとは何事か!!」

( ;_ゝ;)「うああああん!怒ってないって言ったじゃん!!」

(#ФωФ)「ほうほうちゃんと聞いていたのであるな。
       だが生憎それはブーンの言った言葉である。
       我輩の方は怒ってないどころか、腸煮え滾る思いであるぞ!!」

48 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 19:40:58 ID:pF8up2po0
頭から湯気をたて怒りをあらわにする彼の名前はロマネスク。
ブーンのマインドBである。


そう。
実は、教師兼マインドB専属カウンセラーのブーンは、自らもマインドBの発症者なのだ。


自身がマインドB発症者であった事が、ブーンをこの道へと導いた最大の要因であった。

長年の付き合いから、既に確固とした信頼と協力体制を築いている2人。
今回のように、助っ人としてロマネスクを呼ぶのはブーンのとっておきの奥の手である。

温厚なブーンと、厳格なロマネスク。
ブーンは担任、ロマネスクは副担任教師として
正反対の性格を持つ2つの人格は互いに協力し合い
上手い具合にこのクラスをまとめあげているのだ。

49 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/15(火) 19:42:28 ID:pF8up2po0
脳の芯まで響くロマネスクの喝は、今回のように
基本人格の意思に反抗して表に出てこないマインドBに対して、非常に有効な手段なのである。

( ;_ゝ;)「先生卑怯だぞ!いきなりロマ出すなんて!!」

(#ФωФ)「己のとった行動に謝罪もせず、
       弟者の裏にコソコソ隠れたお前の言って良いセリフではないわ!!」

( ;_ゝ;)「ごめんなさいいぃ!!」


その後、ロマネスクによる怒涛の説教でこってりしぼられる兄者。

結局ブーンが止める間もなく1時間は過ぎ、下校時刻と相成ったのであった。


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