- 106 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/20(日) 22:09:17 ID:VOO9GD8U0
―食堂―
_
( ゚∀゚)o彡「よっしゃ席確保ぉ!今日のおすすめメニューはなんだなおるよ上等兵!」
('(゚∀゚∩「玄米オムライスのカレーソースがけでありますジョルジュ隊長!」
_
( ゚∀゚)o彡「なるほど手応えのありそうな相手だ。腹が鳴るぜェ!
突撃だ!!」
('(゚∀゚∩「我々も隊長に続くぞ!走るよ弟者ー!」
(´<_` )「残念だが今日も俺は弁当持参だ。2人で行ってらっしゃい。
あと食堂で走るな危ない」
- 107 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/20(日) 22:13:05 ID:VOO9GD8U0
- _
( ゚∀゚)「馬鹿野郎!毎日毎日かーちゃん弁当で食費を浮かす昼飯に何の意味がある!?
金とおっぱいは使ってこそなんぼだろ!」
('(゚∀゚∩「毎月雀の涙程のお小遣いの癖によく言うよ!
あとおっぱいの使い所とやらを小一時間ほど謹んでお聞きしたい!」
(´<_` )「こういう毎日のいじらしい節約努力が将来山となるんだよ。
いいからさっさと買ってこい、ジョルジュになおるよ」
_
( ゚∀゚)「マメなかーちゃんで羨ましいよ畜生!
俺だってたまには……!手作り弁当おふくろの味で素朴な優しさに浸りたい!
そんな小さなメランコリックを胸に抱えつつ行ってきます!」
('(゚∀゚∩「神風見せてやるよぉ!」
(´<_`;)「だから走るなっつの!」
- 108 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/20(日) 22:14:26 ID:VOO9GD8U0
- 馬鹿騒ぎをしながらカウンターにメニューを注文しに走る、2人の友人の後姿を見送る。
昼休みというだけでよくあそこまで元気が出るものだと感心しつつ、
あちこちから漂う美味しそうな匂いに空腹感を刺激されながら。
vip高校内に設置された学生食堂は、生徒達を魅了する品数豊富なメニューと
毎週のおすすめメニューや日替わりランチまで用意されている、
味はそこそこだが安価とボリュームにこだわった、貧乏学生達の強い味方だ。
授業中抑え込んでいた空腹を満たすべく食堂通いの生徒達が詰め寄せて
昼休みのこの時間、席はほぼ満席状態。
各々好みのメニューを声を張り上げておばちゃん達に注文する声や
思う存分休憩時間を楽しむべく繰り広げられる友達同士でのゆったりした会話。
昼休みの食堂は、学生達の活気とお喋りと良い匂いに満ちている。
- 109 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/20(日) 22:15:38 ID:VOO9GD8U0
- クラスの友人であり毎度の昼飯メンバーである
ジョルジュとなおるよの2人も例外に漏れずその喧騒の中の一要因となっており
周囲のやかましさに負けず劣らず……いや、明らかに周囲から一層際立つレベルで
持ち前の騒がしさをここぞとばりに発揮している。
正直友達と思われるの恥ずかしい。
今もカウンター前で学食ベスト5メニューの宣伝文句を一品一品大声で読み上げながら
吟味している最中だ。周囲の目線やおばちゃん達の生暖かい笑いなどどこ吹く風。
弁当開けずに待っててやってるんだからさっさと選べよ。
まあ、そんな2人の底抜けの明るさと、持ち前の馬鹿を思い切り発揮できるところは嫌いじゃない。
その陽気さがあの2人の良い所だということは分かっている。
だからこうして友達やってるんだけど。
- 110 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/20(日) 22:16:40 ID:VOO9GD8U0
- さて。
あの2人のランチ選びはもう少し時間がかかりそうだから
俺はその間、読みかけの文庫本でも取り出して待つことにした。
(´<_` )「……ふぁ」
腹はかなり減っているのだが、少しばかり眠い感じがして軽く目をこする。
午前中にマインドBクラスの授業がある日はいつもそうだ。
きっと兄者が無駄にエネルギーを使いすぎるせいだ。ったく。
栞を挟んでおいたページを開き、片方の紙面にずらりと並んだ活字を追う。
読み始めて間もなく、眠気のせいか文字が一瞬ボヤけた気がした。
- 111 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/20(日) 22:18:30 ID:VOO9GD8U0
- _
( ゚∀゚)「おーとじゃ!お・待・た・せv」
('(゚∀゚∩「だよ!」
( )「……」
_
( ゚∀゚)「わりーわりー、ちょっと時間かかっちゃったぜ!」
('(゚∀゚∩「お詫びに、一口ぐらいなら分けてあげても良くってよ!
我が軍がパートのおばちゃん軍から確保した兵糧は、
優秀な指揮官である貴殿にも等しく配給される権利が……」
(く_ )ミ クルッ
ヽ( ´_ゝ`)ノ「お帰りジュルずになっちん!」バァーン!
('(゚∀゚;∩「よー!?」
_
Σ(;゚∀゚)「うお!兄者になっとる!!」
ヽ( ´_ゝ`)ノ「お昼休みはうきうき兄者たいむ!」
- 112 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/20(日) 22:20:42 ID:VOO9GD8U0
- ('(゚∀゚;∩「きゃー変態よ!学校抜け出して幼女の部屋に侵入する変態ロリコン男よー」
( ´_ゝ`)「なんだ昨日のこと知ってんのか。どだ!俺弟者のふり上手かっただろ!」
_
(;゚∀゚)「べ、べべべっつに、俺全然気づいてたし?うん!寧ろ気づいてたからね!?
全然気づいてたけど、そこはあえて友達として見逃してやっただけだし!当然だよねー!」
( ´_ゝ`)「この味は!……嘘をついてる『味』だぜ……ジョルジュ・ジョヴァーナ!」
('(゚∀゚;∩「やっぱり昨日、昼休みの時点で兄者だったかよ。懲りない奴だよ……」
_
( ゚∀゚)「昼飯食わないでそのままマインドBクラスに行くっていうからおかしいと思ったぜ」
- 113 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/20(日) 22:23:21 ID:VOO9GD8U0
- ( ´_ゝ`)「俺の迫真の演技!なんならこのままハリウッドにスカウトしてもらってもよろしくてよ!」
('(゚∀゚;∩「ロマネスク先生に怒られて大泣きしてたくせに調子乗るんじゃないよ!」
(;´_ゝ`)「なんで知ってんのおおお」
('(゚∀゚∩「3年の先輩から教えてもらったんだよ!
廊下の隅までロマネスク先生の怒鳴り声と兄者の泣き声が響いてたってよwww」
(;´_ゝ`)「いやんもうお嫁にいけない!」
_
( ゚∀゚)「心配しなくても貰い手なんて現れねーよwww
……まぁ、とにかく腹減ったし、飯食おうぜ飯!」
- 114 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/20(日) 23:13:38 ID:VOO9GD8U0
('(゚∀゚∩「そだよ、せっかく確保した兵糧が冷めちゃうよ。
弟者には悪いけど、先にいただきますだよ!」
_
( ゚∀゚)「ちゃんと弟者と弁当分けるんだぞ兄者。お前ちゃんと謝ったの?昨日のこと」
( ´_ゝ`)「もちだともジョルず隊長。俺は男の義理人情を踏み躙るような真似はしないぜ」
_
(;゚∀゚)「どの口が言ってんだか……。まぁいいや、弟者もそのうち出てくるだろ」
('(゚∀゚∩「よーし!それじゃあさっそく」
( ´_ゝ`)「いっただき」
( ´_ゝ`)「ま」
( ´_ゝ`)
_
( ゚∀゚) 「?」 ('(゚∀゚∩
ヽ(´<_`#)ノ「はいそこまでええええ!!」ズバァーン!!
_
Σ(;゚∀゚) 「うおおお!!」Σ('(゚∀゚;∩
- 116 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/20(日) 22:27:53 ID:VOO9GD8U0
- (´<_`#)「しばらくは好き勝手にさせないぞ馬鹿兄者!反省しろ反省を!!」
兄者の意識を無理矢理奥に引っ込めさせる。
危ない危ない。今日はもう学校にいる間は兄者は出たらいけない事に決めたんだ。
兄者がすんなり了承する筈も無いことは分かっていたが、うっかり気を抜いてしまった。
いつもならばせっかくの休憩時間だ、兄者だって自由に友達と喋ったり昼飯を楽しむ権利がある。
兄者が出たい時は大抵好きに時間を使わせてやるのだが、なにせ昨日のことがあったすぐ後だ。
勝手に学校を抜け出した事も充分すぎるほどの大問題だが
その上『約束』を破ったことも、前から問題になっている兄者の困った行動の一つだった。
今月に入って数えても、兄者が『約束』を破ったのはもう3回目だ。
俺や母者が気づいていないのを含めたら、もしかしたらもっとあるかもしれない。
母者やブーン先生にもそこのところを今以上に厳しくするよう言われていた。
- 117 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/20(日) 22:29:36 ID:VOO9GD8U0
- 兄者にとって酷な約束だということは俺も分かっている。
だが、守ってくれないと困るのは俺や兄者ではなく
俺達にとって最愛の妹者なのだ。
兄者にはそこのところの意識をしっかりさせる必要がある。
よって、今日みたいに一日交代禁止のルールも厳しく守らせなくてはならない。
兄者が意識の奥から抗議の声をあげてくる。
頭の中で兄者の声が反響しまくってかなり五月蝿い。
だが心を鬼にして無視に徹底する。
シャキンやツンとは違い、俺と兄者は精神面の強さからいうと丁度五分五分といったところだ。
お互いちょっと気を抜いている時なら簡単に入れ替わることができる。
意地でも出させるか!
- 118 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/20(日) 22:32:06 ID:VOO9GD8U0
- (´<_`#)「大体兄者は勝手すぎるんだ!それで結局その被害を受けるのはいつも俺!
やってられるか!!」
(´<_`#)
∩´<_`#∩「あーあー何も聞こえなーい!!」
(´<_`#)「あっ、この!俺を通じてジョルジュとなおるよに訴えかけるのやめろ!!
お前はアイフルのチワワか!?でも残念でした、ほらこうしたら見えませーん!」
(´<_`#)
(´<_`#)「なるほど分かった、よっぽどロマネスク先生を呼ばれたいらしいな!
いいだろう、兄者がその気なら」
('(゚∀゚;∩「お……弟者さん弟者さん」
(´<_`#)「なんだなおるよっ!今忙しい!」
_
(;゚∀゚)「いやその……できたら兄者との喧嘩は心の中だけでやった方が……」
(´<_`#)「だからk」
(´<_` )
『…………』
- 120 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/20(日) 22:34:09 ID:VOO9GD8U0
- 気がつけば、さっきまで騒がしかった食堂内は今や完全に静まり返り
各々好きな席に昼食を広げ笑いあっていた生徒達は、皆同様に目を丸め口をぽかんと開けて
昼食に伸ばした手を、他愛無い会話を繰り広げていた口を止め
その視線をただ一点―――
―――すなわち俺の元へと集中させていた。
(´<_` )
(´<_` )
(´<_` )「……お」
(´<_`;)「……お騒がせしました……」
おいなんとかいえよばかあにじゃ。
- 121 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/20(日) 22:36:31 ID:VOO9GD8U0
- _
(;゚∀゚)「まあなんだ、あんま落ち込むなよ弟者」
(´<_`;)「す、すまん2人とも……うわああ死にたい……」
なるべく目立たないよう移動した壁際の席で、弁当を広げる事も忘れ
手で頭をかかえこみ机に撃沈する。
ああいつもこうだ。
兄者のペースに乗せられて結局恥ずかしい思いをするのはいつも俺。
その癖当人は調子が悪くなるといつも引っ込んでしまう。
出来る事ならぶん殴ってやりたいが、それで結局痛い思いをするのも俺じゃないか。
実際、兄者と喧嘩して顔が腫れるまで兄者の、すなわち自分の顔を殴り
気づいた時には自分が物凄く痛い思いをしていたのは小学生高学年の時だっけ。
あの時は小学生ながらに、心から自分馬鹿だと思いました。畜生泣きたい。
_
( ゚∀゚)「まぁまぁ気にスンナ!兄者が何かやらかすのは俺らももう慣れっこだしさ」
('(゚∀゚∩「そうだよ!それに、たまには思いっきり喧嘩するのも良いと思うよ!
特に弟者は、たまにはあれぐらい怒鳴ってすっきりしなきゃだよ!」
- 122 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/20(日) 22:39:08 ID:VOO9GD8U0
- (´<_` )「……はは」
本来ならジョルジュやなおるよは、先程の大多数の人達のように
好奇や奇異の目で、まったく違う生き物のように俺を見てもおかしくはないのだ。
厄介で面倒な病気と関わる事を避け、俺の存在そのものを無視したっておかしくない。
実際今まで、そういうことだって何度か経験してきた。
だがこうして励まされ、共に笑うことが出来るのは
この病気を理解し、それでも距離を置かずに自然に接してくれる
目の前の大切な友達のおかげだった。
- 123 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/05/20(日) 22:41:04 ID:VOO9GD8U0
- (´<_` )「……ありがとな、2人とも」
_
( ゚∀゚)b「おう!くよくよしてたら飯が不味くなっちまうぜ!」
('(゚∀゚∩「そうだよ!
どんなにくるしくても
おいしいものたべて
うんこしたらなおるよ!」
_
( ゚∀゚)「名言いただきましたー!!」
少なくとも自分は人間関係には恵まれている。
……兄者もな。
心の奥で、小さく同意する声が聞こえた。
戻る 次へ