- 268 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/10/11(木) 23:03:56 ID:f63SLBkI0
「出席番号1・羽生つー!」
(*゚∀゚)ノ「あひゃひゃひゃ!おはよー先生………あひゃっ?」
「出席番号2・流石兄者!」
(;´_ゝ`)ノ「はいはーい!て、おわ!」
「出席番号3・津田デレ!」
ζ(゚ー゚*ζノ「はーい!ブーン先生こんにt………あれ??」
( ФωФ)「よし。最後に出席番号4・八又シャキン!」
(`・ω・´)「はい!!」
語尾に疑問符が飛ぶそれぞれの反応を静かに見終えた後
「八又シャキン」の項目に最後の丸印をつけ、ぱたんと出席簿を閉じる。
- 270 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/10/11(木) 23:04:54 ID:f63SLBkI0
- ( ФωФ)「以上で出席確認終わり。シャキン、号令を頼むである」
教壇の前に立つロマネスクは
一人を除き、きょとんとした様子の面々を見渡しながら
今日も皆元気そうである。 と内心で頷いた。
( ФωФ)(ちょっと面白かった)
- 271 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/10/11(木) 23:05:44 ID:f63SLBkI0
(*゚∀゚)「あひゃ!いつもの先生じゃないじゃん!ロマじゃん!!」
( ´_ゝ`)「先生どったの?病気?
だからメタボ症候群には気をつけろと日頃あれほど」
挨拶が終わるや否や、さっそく騒ぎ始めるクラスの騒音担当2人。
とはいえ、その容姿や風貌は普段教壇に立っている人物と変わりなく
顕著に変化している点を挙げるなら、引き締まったその表情ぐらいのものなのだが。
それでも精神間での人格交代が日常的となっている、マインドBクラスの生徒達には
彼の全身から放たれる貫禄ある雰囲気から、それがブーンでは無くロマネスクだと一目見て分かるようだ。
それに、服装等細かい趣味もブーンと彼では若干の違いがある。
明色を好むブーンとは対照的に、大人びた渋い色のネクタイをきっちり結んで
堂々と黒板の前に立つ人物は紛れもなく、VIP高等学校特別クラス・副担任教師の姿だった。
- 272 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/10/11(木) 23:06:54 ID:f63SLBkI0
- (*゚∀゚)「わかった!サボりだ!ずりぃんだー」
( ´_ゝ`)「むむっ!さては良い歳して登校拒否か!
悩みがあるなら、サスガ・メンタルクリニックが
いつでもあなたを待ってるって言っておいたのに!」
(;ФωФ)「引っかき回されてむしろ悪化しそうな診療所であるな……」
頭に浮かぶまま、勝手な憶測と疑問を投げかける兄者とつーだが
ロマネスクがブーンの代わりに授業を受け持つことはこれが初めてでは無かった。
月に何度かブーンの代わりに彼が教壇に立つことはあり、その事自体はさして珍しくは無い。
それでもその事は、生徒達に前もって知らされるのが此のクラスでの決まり。
だからみんな不思議そうな顔をし、頭に疑問符を浮かべているのだ。
(*゚∀゚)「今日はロマの番なのか?つーちゃんそんな話聞いてないぞ!」
(`・ω・´)「つーは聞いてたって忘れる癖に」
ζ(゚ー゚*ζ「先生お風邪かな……??」
Σ( ´_ゝ`)「ハッ!もしやドッキリか!?カメラここだ!!」
( ФωФ)「えーい喧しい、みんな静まるである。特にそこの問題児2人」
- 273 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/10/11(木) 23:08:25 ID:f63SLBkI0
- ちょっとしたイレギュラーな事態に、俄かに湧き立つ教室内を一喝し
厳粛な咳払いをした後、生徒達に向き直るロマネスク。
( ФωФ)「今日はブーンは休みである。別に具合が悪いというわけでは無い」
( ФωФ)「ただ、皆が社会に出てから起こり得る、こういった突然の事態にも対応できるよう
たまにはこういう日を作るのも良い練習になると思ってな。
ブーンと2人で決めたのである」
(`・ω・´)「なるほど。応用力を磨く抜き打ち訓練ってわけですね!」
(*゚∀゚)「ぬきうち〜?」
( ´_ゝ`)「訓練?防災訓練?」
( ФωФ)「うむ、そういう事である。とは言えやる事は普段の授業と変わらん」
( ^ω^)ノシ「というわけで、みんないつも通り授業頑張るんだおよー」
Σ(;´_ゝ`)「おわ!」
- 275 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/10/11(木) 23:09:28 ID:f63SLBkI0
- 厳格な表情を保っていたロマネスクの表情がふにゃっと崩れ、瞬時に別人を形作る。
次に現れた柔和なにやけ面は、生徒達へと親しげに手を振った。
(*゚∀゚)「あひゃ!先生だ!」
ζ(^ー^*ζノシ「はーい」
(`・ω・´)「任せて下さい!」
(;´_ゝ`)「うわーびびった。顔の筋肉どうなってんの?」
- 276 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/10/11(木) 23:10:17 ID:f63SLBkI0
- _,
( ФωФ)「ブーン、今日一日は我輩に任せる約束である。
あまりちょくちょく出てこられると練習にならんぞ」
瞬時に引き締まる顔と低くなった声で、呆れ混じりにたしなめるロマネスクに対し
把握だお、という軽い返事とokサインが心の声で返って来た。
( ФωФ)「……まぁ、とにかくそういうことである。みんな改めて、今日一日よろしくな」
(*゚∀゚) ( ´_ゝ`)「「はーい!!」」ζ(゚ー゚*ζ(`・ω・´)
少しのごたごたがあったものの、元気の良い返事をスタートの合図にして
今日もマインドBクラスの授業が始まる。
- 277 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/10/11(木) 23:12:18 ID:f63SLBkI0
- ( ФωФ)「順に今日の分の課題を取りに来るである。まずはつー」
(*゚∀゚)「あひゃ!」
授業とはいっても、ここで行われるそれは
教師が黒板の前に立ち、文字を書き、それを生徒がノートに写す……という形では無い。
一つの条件を元に集められた彼らは、学年もクラスも精神の年齢もバラバラで
ロマネスクから今日の分の課題を受け取り、それぞれの机で個々の勉強に取り組む。
それをブーン(今日はロマネスクだが)が見て回り
何か困ったことがあれば助けてやる……といった
いわば補習教室のような形だ。
- 278 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/10/11(木) 23:14:37 ID:f63SLBkI0
- (*゚∀゚)「あひゃひゃ!ロマ!ここ、昨日わかんなかったとこ!」
( ФωФ)「うむ、一緒にやる約束であったな。どれどれ」
さっそく、プリントをひらひらさせながらつーが声をあげた。
つーの精神年齢は、明確には診断されていない。
発現した当初、半ば強制的に受けさせられた検査の記憶を思い出すのか
脳波測定や知能指数のテスト等を嫌がり、ろくに検査を受けたためしが無い所為だ。
そのつーにブーンが用意した教材は
算数や国語等一般的な教科の、小学校で習うような基礎固めの問題。
それらを時間をかけ、ほぼつきっきりのマンツーマンで取り組んでいる。
ブーンの教室に来るまで、周囲は暴走事件を起こした凶暴性ばかりに目を取られ
まともにつーに勉強を教えようとした者など誰一人としていなかった。
それに加え、学習自体にさほど興味の無いつーは
精神的に達していると思われる年齢に対し、学業面でかなりの遅れを取っている。
- 279 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/10/11(木) 23:15:17 ID:f63SLBkI0
- (;ФωФ)「うーむ。つーはまず、解答欄に文字を収める練習を頑張った方が良いな」
(*゚∀゚)「でっかい字で書いた方が見やすいだろー?」
( ФωФ)「枠からはみ出た回答同士が融合しまくって
紙の上がしっちゃかめっちゃかなのである……」
(*゚∀゚)「枠は壊すためにあるんだよぉ!!」
( ФωФ)「だまらっしゃい」
(*゚∀゚)「あひゃー」
( ФωФ)「さて。じゃあまずはこの問3の問題から……
って、兄者こら!なにしとるか!」
Σ(;´_ゝ`)「ぎくぅ!」
( ФωФ)「教科書に落書きするでない、また弟者に怒られるぞ。
2人で使う物は大事に扱えといつも言ってるであろうが!」
- 280 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/10/11(木) 23:16:06 ID:f63SLBkI0
- 精神年齢が丁度同じくらいの兄者は、弟者の高校二年生用の教科書をそのまま使っている。
初めのうちは母者が配慮して
ちゃんと2人分の教科書を持たされていた2人だったが
教科書代が勿体無い、カバンが重くなる、等の理由から
今ではその心遣いを断り、一冊を使い回ししているのだ。
もちろんノートやワークブック、問題集等は個別に用意されているが
勉強嫌いで飽き症な兄者の悪い癖で、最初の数ページしか手をつけておらず
あとは大半が空欄か、飛ばして白紙のページが多い。
その進み具合を見れば、同じ教材を扱う弟者よりも遅れていることが一目瞭然だった。
- 281 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/10/11(木) 23:16:54 ID:f63SLBkI0
- ( ФωФ)=3「ったく兄者は、目を離すとすぐ別のことに気が逸れる」
(;´_ゝ`)「あひゃひゃ〜、だってわかんねーんだもん!」
(*゚∀゚)「つーちゃんの真似すんな!」
( ФωФ)「兄者は集中力が足りなさすぎである。
ほれ、デレを見習え」
ζ(゚ー゚*ζ「〜♪」
デレが楽しそうに問題を解いているのは、小学校低学年向きの教材。
机の上に置かれたその中には、カラフルな表紙の塗り絵や、折り紙等も混じっている。
彼女の精神年齢は、小学4年生の妹者と同じくらいなのだが
ツンがマインドBを発症し、クラスに入学したのがつい一昨年のこと。
発現時に受けた検査によって、精神面や知能になんら問題は見られなかったデレだが
国語や算数等の学習面に関しては、ほぼ白紙の状態だった。
その為デレはこの教室に来て、まず文字の読み書きを覚える事から始めたのだ。
- 282 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/10/11(木) 23:18:14 ID:f63SLBkI0
- ζ(゚ー゚*ζ「デレ、お勉強大好きだもん!」
( ФωФ)「うむうむ偉いぞ。デレはいい子であるな」
(*´_ゝ`)「ほんとほんと。素直で可愛いし、頭も良いし、将来が楽しみだな〜」
ζ(^ー^*ζ「あにーちゃんもがんばって勉強しなきゃ、妹者ちゃんに嫌われちゃうよ!」
(;´_ゝ`)「ぐはぁ!兄者の精神面に999のダメージ!!」
(*゚∀゚)「あひゃひゃwwwもっと言ってやれデレ!」
元々賢い子供のデレは学習能力も高く、読み書きはすぐに上達した。
今では低学年向きの児童書や教科書は難なく読めるし、識字能力にも長けているが
さらに地名等の漢字が読み書き出来るようになれば、より日常生活の助けになるだろう。
万が一、ツンが眠っている状態で迷子になったり
1人でおつかいをする事があっても安心だ。
- 283 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/10/11(木) 23:19:06 ID:f63SLBkI0
- ( ФωФ)「遅れた分は宿題、または補習に回すであるからな。
みんな、頑張って今日中に課題を済ますのである!」
(`・ω・´)「任せてください!」
(*-∀-) ゜ スピー
∩( ´_ゝ`)「ろませんせー、つーが居眠りして教科書に涎垂らしてまーす」
(`・ω・´;)∩「そう言う兄者はノートの隅にパラパラ漫画描いて遊んでまーす!」
Σ(;ФωФ)「ああもう、小学生であるかお前ら!
とりあえず兄者は一発デコピンさせろ、つーは涎拭け!」
Σ(*-∀-)「んがっ」
ζ(゚ー゚*ζ「〜♪」
- 284 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/10/11(木) 23:21:13 ID:f63SLBkI0
- + + + + + + + + + + + +
キーン コーン カーン コーン
6時間目終業を知らせる鐘が、高らかに校内へ響き渡る。
全員で軽く教室内の掃除をして、今日の授業はお終いだ。
(`・ω・´)「起立、礼!」
(*゚∀゚) ζ(゚ー゚*ζ「「「「先生さよならー!」」」」( ´_ゝ`)(`・ω・´)
( ФωФ)「うむ。さよならである」
一日ラストの授業から解放され、さらに明日からの連休を控えている為か
元気よく挨拶する彼らの顔は、心なしかいつもより晴れ晴れとしていた。
- 286 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/10/11(木) 23:22:23 ID:f63SLBkI0
- ζ(゚ー゚*ζ「先生、先生」
( ФωФ)「ん?どうしたデレ」
終礼が済んだ後、ロマネスクの元へと駆け寄るデレ。
嬉しそうな笑みを浮かべ、ちょいちょいとその服の裾を引っ張ってくる。
ζ(^ー^*ζ「うふふ……あのね。
明日、お休みだからね、パパが新しいお洋服買いに連れてってくれるの。
ツンちゃんとデレと、どっちも買ってくれるって!」
( ФωФ)「はは、それはよかったであるな。
ツンと一緒に、一日中思いっきりパパさんに甘えると良いである」
ζ(^ー^*ζ「うん!」
- 288 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/10/11(木) 23:23:43 ID:f63SLBkI0
- ζ(゚ー゚*ζ「じゃあまたね、ロマ先生。ブーン先生も!」
( ^ω^)ノシ「おー、デレばいばいだおー」フニャッ
(*´_ゝ`)ノシ「デレちゃんばいばーい!元気でなー」ニュルッ
( ФωФ)「じゃあなデレ。良い週末を過ごすである。
それから、にゅるりと割り込んでくるでない兄者」
(;´_ゝ`)「ブーン先生はスルーなのに!?俺だってデレちゃんにバイバイしたい!」
(*゚∀゚)「やーい、兄者のロリコンやろー!」
(;`・ω・´)「どこで覚えたんだそんな言葉!」
ヾ( ;_ゝ;)ノシ「ち、ちがわいちがわい!俺はデレコンかつ妹コンだー!!」
(`・ω・´)「それ何のフォローにもなってないぞ兄者。むしろ自滅だろ」
- 289 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/10/11(木) 23:24:50 ID:f63SLBkI0
- ζ(^ー^*ζ「えへへ。
あにーちゃんもつーちゃんも、シャキンにぃちゃんもばいばいね」
ζ(゚ー゚*ζ「………」
ζ(゚−゚*ζ
ζ( − *ζ スゥ…
ξ )ξ
ξ゚听)ξ
( ФωФ) ヽ( ;_ゝ;)ノ (*゚∀゚) (`・ω・´)
Σξ;゚听)ξ ギョッ!
- 290 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/10/11(木) 23:28:41 ID:f63SLBkI0
- ξ;゚听)ξ「な、なんなのあんたら?人の前に密集して。こわっ」
( ФωФ)「数時間ぶりに起きて発した第一声がそれであるか」
( ´_ゝ`)+「男同士、ロリータコンプレックスという崇高な精神の素晴らしさについて
有意義な語り合いをしていたところだ!」
(`・ω・´)「結局認めてるんじゃないか……」
ξ;゚听)ξ「げ!あんた兄者ね。
って、ええ!?兄者だけならともかく、八又先輩や先生までそんな……!?」
Σ(;ФωФ)「うぉい!?」
(`・ω・´;)「誤解だ津田君!僕は違うぞ!」
(*゚∀゚)「ところでロリコンてなんだ??あひゃひゃ」
- 291 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/10/11(木) 23:29:43 ID:f63SLBkI0
- ( ´_ゝ`)「じゃあなロマちゃん!今日は俺このまま帰る!」
( ФωФ)「うむ、弟者によろしくな。
それと、休みの間に予習復習しっかりやっておけよ」
( ^ω^)b「連休明けに僕がしーっかり確認するから、覚悟しとくよーに!だお」
( ФωФ)「だそうである。
母者さんにも、気を抜き過ぎないよう見張っておいてくれと連絡してあるからな」
( ´_ゝ`)「鬼や……鬼がおる……」
(`・ω・´)「ロマネスク先生、さようなら!
ほら行くぞ兄者、先生の邪魔になる」
( ;_ゝ;)「お前もかシャキン!誰か俺に優しくしてよ!」
( ФωФ)「はいはい。兄者もシャキンも、気をつけて帰るであるぞー」
- 292 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/10/11(木) 23:32:58 ID:f63SLBkI0
- ( ФωФ)「……さてと。じゃあ、つーはしぃと交代であるな。
ほれ、机から降りる」
(*゚∀゚)「おう!今日は良い感じに眠いぜ!」
( ФωФ)「まぁ、今日は授業中の居眠り見逃さなかったであるからな。
いつもそれくらい素直なら良いのだが」
(*゚∀゚)b「あひゃひゃ〜。
じゃあ、つーちゃんは寝るぜ!
おやすみロマ!」
自分の机に腰掛け、足をブラブラさせていたつーが
軽快に地面へと降り立ち にっと笑った。
- 293 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/10/11(木) 23:34:16 ID:f63SLBkI0
从'ー'从「しぃちゃーん帰ろー」
(*゚ー゚)「ナベちゃん」
ロマネスクに挨拶をし、教室を出るとすぐ
間延びした調子で自分の名を呼ぶ、聞き慣れた声がした。
窓際で小さく手を振る渡辺の元へと駆け寄るしぃ。
数時間ぶりに覚醒した直後、マインドBクラスでの授業の後はいつも
自分の存在が不明瞭になってしまったかのように意識がぼんやりとして
複雑な不安感が、しぃの胸の内を支配する。
何度経験しても、未だその感覚に慣れることができない。
だが、廊下に立ち、のんびりと手を振ってこちらへ向って微笑む親友の姿を見つければ
心細さは掻き消えて、いつだって暖かな安心感で満たされるのだ。
- 294 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/10/11(木) 23:35:07 ID:f63SLBkI0
- (*゚ー゚)「いつもごめんねナベちゃん。廊下で待つの、退屈でしょ?」
从'ー'从「平気だよ〜。今日はロマネスク先生だったんだね〜」
(*゚ー゚)「そうなの!私達も知らなかったんだけどね、5時間目の始めにね……」
自分のクラスの授業が早く終わった時はいつも
三階奥にあるこの教室まで来て、自分を待ってくれている渡辺。
そんな彼女にしぃは、自分が扉を開けて出てくるまで
決して教室の中には入らないでほしいという約束を交わしていた。
マインドBクラスで過ごす空白の時間―――
”つー”として動いている姿を、親友である彼女に見られたくないのだ。
もちろん渡辺は、しぃがマインドBという症状を抱え、特別クラスに通っている事は知っている。
が、その固い約束の元、実際に”つー”である彼女を見た事は一度も無い。
- 295 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/10/11(木) 23:35:54 ID:f63SLBkI0
- 本人であるしぃだって、つーのことは全く知らない。
声さえまともに聞いたことが無い。
しぃが脳内で描く”つー”のイメージは、ただただ
中学の時のあの忌まわしい事件を起こした、危険な存在であるという認識だけだ。
人格間での共在意識を持たず、“つー”である間、意識が完全にシャットダウンされるしぃは
ブーンやロマネスクから
“つー”は自分の行動や感情を抑制する力を身につけつつある
もうむやみに暴走したり、人を傷つける危険性は無い。
いくらそう聞かされても
自身が認識していないものを、はっきりと信じきることなど出来なかった。
- 296 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/10/11(木) 23:36:43 ID:f63SLBkI0
- かつて暴走しクラスメイトを傷つけた”つー”としての凶悪な姿を
親友である渡辺にだけは、絶対に見られたくない。
万が一その姿を
自分の心の奥底に眠る本性を知られてしまったなら
彼女はきっと、もう二度と自分に優しく笑いかけてくれることは無いだろう。
そのことを考えるだけで
中学時代味わったのと同じ、叫び出したくなるほどのドス黒い恐怖が胸を締め付ける。
もう二度と、あんな思いをするのは嫌だった。
それだけではない。
いつか”もう1人の自分”が
幸せで平穏な日常のさなか、唐突に現れ
大事な親友である彼女を傷つけるのではないか―――
いつまで経っても拭い去れぬ不安が、しぃの心の奥底に居座り続けていた。
- 297 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/10/11(木) 23:37:25 ID:f63SLBkI0
( ФωФ)「ふー」
( ^ω^)「おつかれーだお。ロマネスク」
いつも持ち歩いている紙袋の中に、色んな教科の教材を片付けながら
一息零すロマネスクに心の声で労いの言葉をかけるブーン。
とはいえ、表に出ている人格の視界を通して外界の様子を把握する事が可能なので
実質ロマネスク同様、午後の授業をずっと生徒たちと共に過ごしていたのだが。
誰もいない教室。
人格間での交代をする時のような、声や表情の変化を表に出すことはせず
そのまま、心の内だけのブーンとロマネスクのやりとりが続く。
- 298 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/10/11(木) 23:39:35 ID:f63SLBkI0
- ( ^ω^)「で、どうだったかお?”ぬきうち担任交代”やってみた感想は」
( ФωФ)「ふむ。
まぁ、約二名ほど赤点つけたくなる者もいるにはいるが……」
( ФωФ)「今では皆充分、クラスとしてのまとまりを見せている。
あやつらなら、少しばかり変則的な事が起きても問題無く対応出来るであろう。
心配は無いである」
( ^ω^)「だおね。
じゃあ、このまま手続きを進めるお。早ければ来週には……」
( ФωФ)「ああ。なにせ急に決まったことであるからな」
( ФωФ)「今日は、心構えのつもりで我輩が急遽授業を担当することに決めたが
なかなかいい練習になったである」
( ^ω^)「皆に知らせるのは3日前くらいにしといた方がいいおね。
あんまり早くに知らせすぎると、つーや兄者の集中力がますます落ちそうで心配だお」
( ФωФ)「なに、しっかり者でまとめ役のシャキンもいる事だ。
そんなに心配せずとも、大丈夫であるよブーン」
( ^ω^)ゞ「僕もみんなのこと信頼してないわけじゃないんだけどおね」
( ФωФ)「わかっておる」
- 299 名前:訂正 投稿日:2012/10/11(木) 23:40:51 ID:f63SLBkI0
- ( ^ω^)「で、どうだったかお?”ぬきうち担任交代”やってみた感想は」
( ФωФ)「ふむ。
まぁ、約二名ほど赤点つけたくなる者もいるにはいるが……」
( ФωФ)「今では皆充分、クラスとしてのまとまりを見せている。
あやつらなら、少しばかり変則的な事が起きても問題無く対応出来るであろう。
心配は無いである」
( ^ω^)「だおね。
じゃあ、このまま手続きを進めるお。早ければ来週には……」
( ФωФ)「ああ。なにせ急に決まったことであるからな」
( ФωФ)「今日は、心構えのつもりで我輩が急遽授業を担当することに決めたが
なかなかいい練習になったである」
( ^ω^)「皆に知らせるのは3日前くらいにしといた方がいいおね。
あんまり早くに知らせすぎると、つーや兄者の集中力がますます落ちそうで心配だお」
( ФωФ)「なに、しっかり者でまとめ役のシャキンもいる事だ。
そんなに心配せずとも、大丈夫であるよブーン」
( ^ω^)ゞ「僕もみんなのこと信頼してないわけじゃないんだけどおね」
( ФωФ)「わかっておる」
- 300 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/10/11(木) 23:42:28 ID:f63SLBkI0
- ( ФωФ)「では、あとは任せるぞ」
( ^ω^)「はいお。シュビドゥバタッチヘンシーン」
_,
( ФωФ)「なんであるかそれは」
( ФωФ)
( ω )
( ^ω^)
きっちりと締めたYシャツの第一ボタンを外し、首を回して一息。
さて 明日から連休だ。
色々準備しなくてはいけないこともあるので
家へ持ち帰る仕事は出来るだけ減らしておきたい。
学校を出るまでの時間を、生徒達から回収したワークブックやプリントの採点に当てることに決め
教室から溢れ出てくる3年生達へ挨拶を返しながら、ブーンは職員室へと向かった。
- 301 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/10/11(木) 23:44:41 ID:f63SLBkI0
- + + + + + + + + + + + +
地下の下駄箱にて上靴をローファーに履き替え、校舎を出る。
校門付近は、同じく授業から解放されて帰宅する生徒達で賑わっていた。
从'ー'从「それでね〜、そこでまた
毎度お馴染み波瀬川先生の初恋話が始まっちゃって〜」
(*゚ー゚)「あはは……
……あ」
( ´_ゝ`)「ジョルずー、なっちーん、カラオケいこー」
_
(;゚∀゚)「うおーのしかかんなアホ!重いー」
(*´_ゝ`)「ふひひwww」
(*゚ー゚)(流石先輩だ)
- 302 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/10/11(木) 23:45:45 ID:f63SLBkI0
- それは確かに先程、特別教室にて5時限目の初め顔を合わせた
一学年上の先輩の姿なのだが。
(;゚ー゚)(えーと……。
兄者先輩の方……だよね)
眉毛が特徴的な同級生に、中学男子のノリで楽しげにじゃれつくその様子を見れば
今の彼が”どっち”なのか、一目で分かる。
- 303 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/10/11(木) 23:48:38 ID:f63SLBkI0
- (*´_ゝ`)「JOL( ・3・)で山崎Pの最新曲ついに配信されたらしいぞ!
明日いこ明日!」
('(゚∀゚∩「明日は土曜だから混むかもよー。予約いれなきゃ良い機種とれないよ!」
_
( ゚∀゚)「予約はまかせろー!ご希望の機種はございますか?」
(*´_ゝ`)o彡「くるっそ!くるっそ!ボカロアニソン歌いまくるおwwwww」
_
( ゚∀゚)「おーし。じゃあ俺となおるよと兄者と弟者、4人で予約入れちゃる!」
(´<_` )「いや、3人でいいから」
_
(;゚∀゚)「ハイテンションの兄者に急に冷静につっこまれると一瞬びびるな〜。
分かってるって弟者、じゃ、明日待ち合わせな!」
- 304 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/10/11(木) 23:49:48 ID:f63SLBkI0
- ヾ(*´_ゝ`)ノシ「ひゃっほおおおおい!!!流石ジョルジュ隊長!!
そこにしびれりゅあこが……」
(´<_` )「兄者うるさい。……でも、いいのか?2人とも。
俺と兄者が行くと、結局1人で2人分歌う事になるから
なんだか悪い気がするんだが……」
_
( ゚∀゚)「何言ってんだよ、さっきまで真面目な顔でバンプとかコブクロとか歌ってた奴が
次の選曲でいきなり美少女アニメのOPノリノリの振り付けつきで歌いだすから面白いんだろ!」
('(゚∀゚∩「声も歌い方もガラッと変わるから面白いよ!退屈しないよ!」
(´<_`;)「そ、その楽しまれ方は不本意だ!
頼むから俺と兄者は別人として聴いてくれえええ」
(´<_` )
(´<_` )
(´<_`;)「いやそれ兄者しか得しないだろ!どこが良い事だよ!!」
_
( ゚∀゚) ('(゚∀゚∩(多分兄者が
「いいこと思いついた、俺が振り付け踊って弟者がアニソン歌えば万事解決じゃね?」
とか提案したんだな……)
- 305 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/10/11(木) 23:50:39 ID:f63SLBkI0
- (;゚ー゚)
時折僅かなタイムラグが挟まれるものの
瞬時に180度変わる雰囲気の変転ぶりや、謎の1人ツッコミの様は
いくら事情を知っているとはいえ、見ているとぎょっとするものがある。
現に、フと周りに見をやると
その様子を遠巻きから奇異の目で伺う、数名の生徒の姿が視界に入った。
- 306 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/10/11(木) 23:51:34 ID:f63SLBkI0
- 同じ症状を持ち、別の人格が同じクラスに所属しているとはいえ
弟者とはマインドBクラスで集まった時の、出席確認前の数分しか顔を合わせる機会は無く
普段の学校生活においても、それ以上の接点と言えるものは乏しい。
それでも、マインドBクラスで見る流石弟者は、いつも冷静で真面目そうな
どちらかといえば物静かな印象の先輩だ。
(´<_` ) (*´_ゝ`)
その彼が、あんな風に突然
突拍子無く、テンションの高い性格に一変してしまう光景は
実際にこの目で見てもなかなか信じ難い。
彼だけではない。
- 307 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/10/11(木) 23:52:39 ID:f63SLBkI0
ξ゚听)ξ ζ(^ー^*ζ
責任感が強くモラルに厳しい、大人びた印象のあるツンだって
人格が交代すれば、無邪気な幼い女の子になって
お人形遊びやクレヨンでお絵かきをしたりするのだ。
(`・ω・´) (:::::::::::)
シャキンの基本人格である、ショボンという人にはまだ会ったことは無かったが
やはり、何事にも積極的で頼りがいのあるシャキンとは正反対の性格で
自らの殻に篭り続ける、内向的な人物だと噂で聞いたことがある。
- 308 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/10/11(木) 23:53:21 ID:f63SLBkI0
- そして
(*゚−゚) (:::∀:::*)
(*゚−゚) (―――私も)
―――マインドBという奇病。
それは、どんなに周りの家族や友達が受け入れて、自然な関係に見えたとしても
世間の目からすれば、異常である事実を否定することは出来ない。
もしも何も知らないで彼らを見たとしたら、まず頭がおかしい人だと思うだろう。
それが普通だ。
おかしいのは、自分達の方なのだ。
- 309 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/10/11(木) 23:54:06 ID:f63SLBkI0
- (*゚−゚)(……)
本当のことを言えば、”つー”になど二度となりたくはなかった。
事実ブーンの授業を欠席しようとした経験だって、今までに何度もある。
授業をサボるなんて、もちろんいけない事だとは分かっているのだが。
それでも、みんながみんな、全く違う別の誰かになってしまう、あの教室が。
それが普通のことのように受け入れられてしまう、あの空間が怖い。
だが、大人しく真面目な”いいこ”であるしぃには
自分をあたたかく迎え入れ、最善を尽くして頑張るブーンの気持ちと努力を、
何よりも一人娘の幸せを願い、引越しまでして見つけた治療の場に未来と希望を託した
両親の期待を裏切ることなど、出来る筈も無かった……
- 310 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/10/11(木) 23:55:08 ID:f63SLBkI0
- 从'ー'从「?しぃちゃん、どうしたの〜?」
(*゚ー゚)「あ……な、なんでもないよ」
既に弟者達は校門を出て、その姿は見えなくなっていた。
無意識で追ったその視線と関係無く、脳は別のことを思考する。
(*゚−゚)「……」
(*゚−゚)(……いっそ……)
“つー”なんて、いなくなっちゃえばいいのにな……
.
戻る 次へ