( ^ω^)マインドB!のようです


402 名前:名も無きAAのようです:2013/02/26(火) 21:26:54 ID:iY0pz6Rc0
( ^ω^)「モララー先生は、dat大学院で精神医学の専攻を学びながら
      僕と同じように教師兼マインドB専属カウンセラーを目指している学生さんだお。
      だから今回は特別にこのクラスでの……」



ζ(゚ー゚*ζ「あーっ!」



( ^ω^)「へ?」

( ・∀・)「え?」


(*゚∀゚)( ´_ゝ`)「「?」」(`・ω・´)( ,,^Д^)


皆と同様、休憩時間に入りタカラの机を囲っていたデレが
突然嬉しそうな声をあげて、教育実習生の方へと近寄った。

403 名前:名も無きAAのようです:2013/02/26(火) 21:28:47 ID:iY0pz6Rc0
タタタ…

ζ(゚ー゚*ζ ジッ

( ・∀・)「……おや!」


一歩手前で立ち止まり、再度その顔を確認すると
程なくして彼女は ぱっと表情を輝かせた。


ζ(゚ワ゚*ζ「やっぱり!公園で会ったおにーさんだぁっ!」


( ・∀・)「そう言う君は……あの時のお嬢さん!」



(;^ω^)「……え?お知り合い?」

404 名前:名も無きAAのようです:2013/02/26(火) 21:29:53 ID:iY0pz6Rc0
ζ(゚ー゚*ζ「おにーさんが、先生のお勉強しに来る先生なの!?
      わぁっ、すごーい!」

( ・∀・)「いやぁ、まさか君がVIP高の生徒だったなんて!偶然だねぇ」


キャイ ( ・∀・)ζ(^ー^*ζ キャイ


(;^ω^)「も、モララーせんせー?」


( ・∀・)「!」


(・∀・ )ミ「それに、そこの青年も!」


( ´_ゝ`)


( ´_ゝ`)


(;´_ゝ`)「え?俺?」

405 名前:名も無きAAのようです:2013/02/26(火) 21:30:59 ID:iY0pz6Rc0

(・∀・ )「そうか、2人ともVIP高のお友達だったんだね!」ズイッ

(;´_ゝ`)「えっ」

(・∀・ )「あの時はどうもありがとう!いやぁ本当に助かったよ」ズイズイッ

(;´_ゝ`)「えっ、えーと……?
       ……ああーあのときのー!」

ζ(゚ー゚*ζ「あにーちゃん、あにーちゃん」クイクイ

突如現れた身に覚えの無い相手に、親しみを込めた調子で迫られ焦る兄者。
デレはそっとシャツの裾を引いて、小声で耳打ちをした。

(;´_ゝ`)「なになにデレちゃん」

ζ(゚ー゚*ζ「あのね、この前、弟者おにいちゃんと一緒にね、ラウンジ公園で会ったんだよ」

(;´_ゝ`)「あ。ああ……そゆこと」

(;^ω^)「おー……先生完っ全に置いてかれてるお……」


いくら記憶を辿っても、兄者自身は何も思い当たる人物が浮かばない。
それでも相手が自分を知っているということは、つまりそういうことなのだろう。


406 名前:名も無きAAのようです:2013/02/26(火) 21:32:46 ID:iY0pz6Rc0
ζ(゚ー゚*ζ「おにーさん、おにーさん」

( ・∀・)「うん?」

ζ(゚ー゚*ζ「あのね、おにーさんが公園で会ったのは
       あにーちゃんじゃなくて、弟者おにいちゃんの方なんだよ」

( ・∀・)「え??」

ζ(゚ー゚*ζ「そっくりだけどね、違うんだよ。
      だから、あにーちゃんはおにいさんのこと知らないの」

(;・∀・)「そっくりだけど違う……?もしや双子??」

ζ(゚ー゚;ζ「え、えっとね、だからね」

( ・∀・)「あれ?そういえばどうして、君も青年もこのクラスに……」

Σ(;・∀・)「……ああ!そうか」


こういった状況に面した時、兄者には
「あんたと会ったことがあるのは俺の別の人格だ」なんて
いちいち説明するのは面倒極まりないので、その場で適当に誤魔化して
辻褄合わせの軽い嘘を吐く癖が、昔から自然と身についていた。


隣で一生懸命説明しようとしてくれているデレや、そもそもこの状況において
今回その必要は無さそうだが。

407 名前:名も無きAAのようです:2013/02/26(火) 21:34:19 ID:iY0pz6Rc0
(;^ω^)「あのー」

Σ(;・∀・)「ああっ、ブーン先生すいません!ご紹介頂いている途中で……」

ζ(^ー^*ζ「うふふ」


予期せぬ再会に、顔を綻ばせるデレ。

実は、もっと極々最近彼の姿を何処かで目にした彼女だったが
その記憶が浮上することはついに無かった。

408 名前:名も無きAAのようです:2013/02/26(火) 21:36:39 ID:iY0pz6Rc0
(*゚∀゚)「あひゃー。あいつもこのクラスの奴になんのか?大人なのにな」

(`・ω・´)「……」

(*゚∀゚)「?……シャキ兄?」

(`・ω・´)「ん?」

(*゚∀゚)「どした?」

(`・ω・´)「あ、ああ。……いや、なんでもない」



(`・ω・´)「……?」




( ・∀・) ζ(^ー^*ζ



.

409 名前:名も無きAAのようです:2013/02/26(火) 21:37:52 ID:iY0pz6Rc0


  _
( ゚∀゚)「へーっ、それで、その教育実習生がラウンジ公園で会った人だったってわけ?」

('(゚∀゚∩「すごい偶然だよ!」


2年A組、3時限目の授業が始まる前の十分休み。

マインドBクラスから戻ってきた弟者の机周りは、いつもの顔ぶれで賑わっていた。


(´<_` )「ああ。そういえば前会った時、VIP町にしばらく居るって言ってたっけ。
       こんな偶然ってあるんだな……」
  _
( ゚∀゚)「んー、まぁ、狭い町だしな。そういうこともあるかもしれねーな」

410 名前:名も無きAAのようです:2013/02/26(火) 21:39:02 ID:iY0pz6Rc0
('(゚∀゚∩「転校生の方はどうだったんだよ?」

(´<_` )「転校生じゃなくて体験入学生な。
       うん、猫塚っていうんだけど、真面目そうだし良い奴だよ。
       なんか八又先輩タイプ。さっそく隣の席同士、先輩と意気投合してた」
  _
( ゚∀゚)「ああ!八又先輩ってかっこいいよな。
     爽やかスポーツマンって感じでさ。俺憧れちゃうなー」
  _
( ゚∀゚)「自主的に鍛えてるみたいだし、陸上入ればいいのに」

(´<_` )「いや、放課後は忙しいみたいだぞ。
       ほら、先輩のもう1人の人格の、ショボンさんに勉強教えてるんだってさ」
  _
( ゚∀゚)「?ああ、えっと、八又先輩のマインドBだっけ?」

(´<_`;)「何言ってんだ、八又先輩の……、シャキン先輩の方がマインドBなんだよ」
  _
(;゚∀゚)「あれ?そうなの?」

412 名前:名も無きAAのようです:2013/02/26(火) 21:40:10 ID:iY0pz6Rc0
きょとんとした様子のジョルジュ。

だが彼が校内で見かけるのは、常に自信に満ち溢れた憧れの先輩の方なのだ。

シャキンがマインドBクラスに通っている事を知っているジョルジュが
ほとんど表舞台に出てこないショボンのことを、そう勘違いするのも無理は無いだろう。


('(゚∀゚∩「でも僕も、ショボンって人見たこと無いよ。弟者はある?」

(´<_` )「一応」
  _
( ゚∀゚)「ふーん。どんな人?八又先輩と全然違う?」

(´<_` )「さぁ……。ブーン先生と話してるとこ見ただけだから、どんな人かまでは……」


先生と向かい合わせ、顔を俯かせて座る、若干猫背君の後ろ姿を思い浮かべる。


シャキンの基本人格――――八又ショボンとは
言葉を交わしたことも無ければ、直接対面したことも無く
何故表に出てこないのか、何を考えているのかも皆目分からない。


毎日顔を合わせている相手なのに、それがその実全く見知らぬ他人だなんて。おかしな話だ。

413 名前:名も無きAAのようです:2013/02/26(火) 21:41:38 ID:iY0pz6Rc0
ショボンが極度の対人恐怖症だという話は聞いたことがある。が、
誰にでも友好的で明るく、頼れる兄貴肌のシャキンからは、およそ縁遠い言葉と印象に思えた。

実際ジョルジュのように、校内においてはシャキンとしての彼しか知らない生徒が大半の筈だ。


(´<_` )「……」


(´<_` )(……もしも)


―――もしも、自分がその立場だったら?


  _
( ゚∀゚)  ('(^∀^∩


目の前で笑うジョルジュやなおるよが、みんなが。
もしも、”兄者”としての自分しか知らなかったとしたら。

それは一体、どんな気持ちがするのだろう。

414 名前:名も無きAAのようです:2013/02/26(火) 21:43:36 ID:iY0pz6Rc0



自分であって自分で無い、もう1人の自分によって
人々の記憶から、世界から、自らの存在を上書きされていく。



(:::::::::::)



―――八又ショボン。


固い沈黙の檻に徹する彼は一体、どんな思いで日々を過ごし

暗く隔たれた外の世界を、自分によく似た他人という鏡を通して見つめているのだろうか……

415 名前:名も無きAAのようです:2013/02/26(火) 21:44:58 ID:iY0pz6Rc0
(´<_`;)「あっ」

そこまで思考したところで、何気なく開いたスマートフォンの画面を見て思わず声をあげた。
  _
( ゚∀゚)「なになに?」

('(゚∀゚∩「どしたよ?」

□(´<_`;)「ったく」

□⊂(´<_`;)「まーた携帯の待ち受け勝手に変えられてる」
  _
( ゚∀゚)「どれどれ」


【l从*・∀・ノ!リ人】


('(゚∀゚∩「あー!妹者ちゃんだよ。かわいー」
  _
( ゚∀゚)「綺麗に撮れてるじゃん。撮影者兄者?」

(´<_`;)「だろうな。俺が知らない間にフォルダに増えてたから」

416 名前:名も無きAAのようです:2013/02/26(火) 21:46:27 ID:iY0pz6Rc0
('(゚∀゚∩「いいじゃん待ち受け。このままにしときなよ!」

(´<_`;)「いや良いんだけどさ。若干恥ずかしいっつーか……変じゃない?」
  _
( ゚∀゚)「えー?変じゃねーよ、普通だろ?」

('(^∀^∩「あははっ、弟者は気にしぃだよ!」

(´<_`;)「そうかなー」

画面の中で無邪気に微笑む妹者を見つめる。

確かに、携帯を開く度毎回この癒し効果を得ることが出来るなら
このまま待ち受け画面に設定しておくのも、悪くは無いのかもしれない。

417 名前:名も無きAAのようです:2013/02/26(火) 21:47:16 ID:iY0pz6Rc0
(´<_`;)「うーん」

いやでも実際、周りから見てどうなんだろう?

実の妹とはいえ、小さな女の子の写真を待ち受けにしているというのは……
目の前で笑う2人の言うとおり、俺が気にしすぎているだけなんだろうか。

……まぁ、可愛いからいっかな?可愛いは正義。

こうして見ると本当によく撮れてる。被写体が良すぎるせいだろうけど。

それにしても妹者の笑顔はいつ見ても最高に愛くるしいな。マジで心のオアシス俺の天使!


( ´_ゝ`)「……あっ?」

  _
( ゚∀゚)「「?」」('(゚∀゚∩

(*´_ゝ`)「あー!ジュルずになっちーん!おはよー!」


今までスマホ片手に悩みの声を漏らしていた彼から
急に、若干トーンの高くなった能天気な声があがった。

418 名前:名も無きAAのようです:2013/02/26(火) 21:48:46 ID:iY0pz6Rc0

ちらとそちらへ視線を向けるも、すぐにまた元の雑談へ戻る周囲の生徒達。

学校にいる間、いつも一緒につるんでいるジョルジュとなおるよの2人はもちろん、
同じ教室にいるクラスメイト達ももう慣れたものだ。


ミセ*゚ー゚)リ「……でね!その時バイトの先輩がさぁ……、……トソっち?」


(゚、゚トソン「……」



  _
(;゚∀゚)「はいはいおはよ兄者。でもまだ寝てていいのよ?」

('(゚∀゚;∩「妹者ちゃんの写真が起爆剤かよ。うっかりスマホも開けないよ……」
  _
(;゚∀゚)「もしかしてそれ狙ってわざとギミック仕込んだんじゃねーだろなお前」

( ´_ゝ`)「?なにが?……あっ」

フと視線を下げ、自分が手にしている小型の電子機器に気がつくと
嬉々としてそれを、目の前のジョルジュにぐいぐい押し付ける。

419 名前:名も無きAAのようです:2013/02/26(火) 21:50:30 ID:iY0pz6Rc0
(*´_ゝ`)つ□「あー!もしかしてこれ見てた?よく撮れてるだろ、俺が撮ったの!」
  _
(;゚∀゚)「わーってるって、0距離やめろ!」

('(゚∀゚∩「1、2時限の間に差し変えたのかよ?弟者、変えようかって迷ってたよ」

Σ(;´_ゝ`)「えっ、やだやだなんで変えんの!?やだ俺あの子のこと理解できない……」
  _
( ゚∀゚)「勝手に変えるからだろもー。ちょっと恥ずかしいからだってよ」

(;´_ゝ`)「なにが!?」
  _
(;゚∀゚)「知るか!てか、俺じゃなくて直接弟者に聞けっての」

( ´_ゝ`)、「よく撮れてるのに……」
  _
( ゚∀゚)「……でもま、そんなこと言って弟者もまんざらじゃない感じだったけど?
     お前ら2人で使う携帯だし、俺は良いと思うぜ」

('(゚∀゚∩「僕も良いと思うよ!弟者に、そのまま使うよう言っといてあげるよ!」

(゜´_ゝ`)「な……なっちぃいいいいいありがと大好き!」

('(゚∀゚;∩「ぎゃー!いちいちくっつくなよ気持ち悪いよ!」

420 名前:名も無きAAのようです:2013/02/26(火) 21:51:51 ID:iY0pz6Rc0
(*´_ゝ`)「頼んだぜ2人とも!
       Myシャイブラザーに、もっと自分の心に素直になれってご指導ご鞭撻ご教授してやって!」 
  _
(;゚∀゚)「お前はお前で自分の心に素直に生きすぎだとジョル君思うなー。
     ……ま、いっか」

(*´_ゝ`)「あっところで今何時?もう昼?うきうきウォッチング始まっちゃう??」
  _
(;゚∀゚)「画面見ろや。3時限目突入およそ3分前」

('(゚∀゚∩「次は歯車王先生の数学だよ!
      マテマテマテマテマ・テ・マ・ティ・カ♪」

( ´_ゝ`)


( ´_ゝ`)


(  _ゝ)


(´<_` )「…・…」


(´<_` )「やっぱこれ、ちょっと恥ず……」
  _
(;゚∀゚)「「いや、無言で消えんなよ!!」」('(゚∀゚;∩

Σ(´<_`;)「はい?!」

421 名前:名も無きAAのようです:2013/02/26(火) 21:52:50 ID:iY0pz6Rc0
+ + + + + + + + + + + +


(`・ω・´)「起立!礼!」

ζ(゚ー゚*ζ(*゚∀゚) ( ,,^Д^)「「おはようございまーす!」」( ´_ゝ`)(`・ω・´)

( ^ω^)「おはようだおー!」

( ・∀・)「おはようございます!」


いつもより若干人口密度の高まった教室内に、元気良い挨拶が重なる。

モララーとタカラが紹介された次の日は3,4時限目が特別授業。

土曜日なので、この日の授業は午前中で終了だ。


( ^ω^)「うーん、ギコ君はまだ出てくる気分じゃないみたいだおね」

( ;^Д^)「みたいですね……ごめんなさい先生」

( ^ω^)「謝ることじゃないお、まだ2日目だお?焦らずやってこうお」

( ,,^Д^)「はい!」

422 名前:名も無きAAのようです:2013/02/26(火) 21:54:55 ID:iY0pz6Rc0
( ^ω^)「では今日は、モララー先生に課題を渡してもらうおー」

( ・∀・)「はい、じゃあまず羽生つーさん!取りに来てください」

(*゚∀゚)ノ「あひゃ!」

( ^ω^)「分からない問題や困ったことがあったら、僕かモララー先生に言っておね」


ζ(゚ー゚*ζ(*゚∀゚) ( ,,^Д^)「「はーい」」( ´_ゝ`)(`・ω・´)


生徒が増え教育実習生が来たからといって、やる事はいつもの授業の形と変わらない。

モララーには予め渡しておいた個人の成績表や記録を参考に、皆に配る教材作りの一部を任せ
授業中はブーンと共に、各々の課題に取り組む生徒の手助けをしてもらう。

423 名前:名も無きAAのようです:2013/02/26(火) 21:56:39 ID:iY0pz6Rc0
その日の3,4時限目はスムーズに流れていった。


モララーは、まるで以前からこの教室にいたかのように自然と生徒の1人1人に接し
目の前の課題に苦戦している生徒がいれば、丁寧な教え方でその問題が解けるまで付き合った。


そのスマートな指導体制や接し方は、恐らく
申請書にも書いてあった、家庭教師のアルバイトで身につけたものなのだろう。


一時限目の間は、つーがワークブックを進めるのを積極的に手伝い。

終業のチャイムが鳴り渡る頃には、早くもクラスの空気に溶け込んでいた。

424 名前:名も無きAAのようです:2013/02/26(火) 21:58:08 ID:iY0pz6Rc0
ζ(゚ー゚*ζ「あのね、パパはね、すっごく優しいの!」

( ・∀・)「そうなんだ。休みの日なんかは、一緒に遊んでくれるのかな?」

ζ(゚ー゚*ζ「うん!買い物につれてってくれたり、おでかけしたりするよ。
      パパはお仕事忙しいから、たまにしかお休みとれないけど……」


その日の10分休み。

すっかり打ち解けたデレと、楽しそうに談笑するモララーの姿があった。


( ・∀・)「パパのこと好き?」

ζ(^ー^*ζ「うん、大好き!」

( ・∀・)「そっか。じゃあ、ツンちゃんもパパのこと好きなのかな?」

ζ(^ー^*ζ「うん!ツンちゃんほんとは、すっごく甘えたさんなんだから。
        恥ずかしくって言わないけどね、パパのことだーいすきなんだよ」

( ・∀・)「ふふ、それは良いことだねぇ」

425 名前:名も無きAAのようです:2013/02/26(火) 21:59:04 ID:iY0pz6Rc0
( ´_ゝ`)つ□「見てみタカラ!待ち受け変えたんだー」

( ;^Д^)「昨日も見せてもらいましたってば、兄者先輩」

( ・∀・)「ん?その子……」

( ´_ゝ`)つ□「あっ、先生も見る?」

( ・∀・)「……あ!この前デレちゃんと一緒にいた子だね」

ζ(゚ー゚*ζ「妹者ちゃんだよ!」

(*´_ゝ`)「可愛いっしょ?俺の妹!」

(*´_ゝ`)「今年で10歳なんだー」

426 名前:名も無きAAのようです:2013/02/26(火) 22:01:48 ID:iY0pz6Rc0
( ・∀・)「へぇ〜、年の離れた妹か。羨ましいなぁ」

( ・∀・)「待ち受けにしてるなんて、兄者君はよっぽど妹者ちゃんのこと大好きなんだね」

(*´_ゝ`)「もち!毎日一緒にいたいくらい!」

( ・∀・)「うん?……あっ、そっか」

( ・∀・)「確か兄者君は、妹者ちゃんと会える日が決められているんだったね……」

(*´_ゝ`)「うん。でも、明日会えるんだ!超楽しみ!」

( ・∀・)「そっか。それは嬉しいね!」



( ^ω^)(モララー君、上手くやってくれてるおね)

( ФωФ)(うむ、初日でこれなら大したものである)


元々、愛流 モララーに関しては大学からの素晴らしいお墨付きがあったのだが。

送られてきたその推薦文を読んで感じたそれ以上に
彼が教師としての才能に溢れた、魅力的な若者であるという事実を
こうして目の当りにしている今、ブーンとロマネスク 双方ともに認めざるを得なかった。



( ^ω^)(これなら、特に心配しなくても大丈夫みたいだおね……)

( ^ω^)(丁度タカラ君の体験入学の期間とも重なって、僕も人手が欲しいところだったし。
       みんなにも良い刺激になるし、良かったお)

427 名前:名も無きAAのようです:2013/02/26(火) 22:03:02 ID:iY0pz6Rc0
+ + + + + + + + + + + +


時計の針は正午を指して、4時限目終了の鐘が校内に鳴り響く。

緩やかな土曜の午後の始まり。生徒達にとっては下校の時刻だ。


(`・ω・´)「教室に帰るぞ、兄者」

( ´_ゝ`)「はーい」


シャキンに促され、教科書と問題集を詰め込んだカバンを提げると、兄者は
例の如く机の上に座り、暇を持て余しているつーの方を振り向いた。


(*゚∀゚)゙


まるでこの世に悩みなど何も無いかのように、普段通り能天気に振る舞うつー。

そんな彼女だが、学校が休みの日が近づくと
フとした瞬間に寂しげな表情を見せることを、兄者は知っていた。

429 名前:名も無きAAのようです:2013/02/26(火) 22:05:38 ID:iY0pz6Rc0
( ´_ゝ`)ノシ「つー、またなー!」

(*゚∀゚)ノ「おー、またな兄者!」


笑顔で手を振り返すつー。


( ´_ゝ`)ノ

その姿を捉えていた瞳から すぅ、と光が失われ
軽く振られていた手は、ゆるやかに降下していく。


( ´_ゝ`)「……」


(  _ゝ)


( <_  )


(´<_` )

430 名前:名も無きAAのようです:2013/02/26(火) 22:07:53 ID:iY0pz6Rc0
(´<_` )「……じゃ、教室に帰ります。ブーン先生、モララー先生、さようなら」

(`・ω・´)「先生さようなら!また月曜日に」

ξ゚听)ξ「さよなら」

( ^ω^)「はいお。3人とも、気をつけて帰るんだおよ」

( ・∀・)「さようなら。みんな、またね!」


教室を出ていくシャキンと弟者、ツンの背を見送る。

数歩歩いたところでフと、壁際の方に顔を向けたシャキン達のその目先
笑顔で3人に挨拶する、1人の女生徒の姿がドア越しに覗いた。


从^ー^从゙


( ・∀・)「……おや?あの子……」

( ・∀・)「確か昨日も教室の前にいましたよね。誰かのお友達ですか?」

431 名前:名も無きAAのようです:2013/02/26(火) 22:08:47 ID:iY0pz6Rc0
( ^ω^)「うん、しぃと同じクラスの渡辺さんだお。
      いつも、授業が先に終わると迎えにきてくれるんだお」

( ・∀・)「ああ、羽生さんのお友達なんだ。
       いつも待っててくれるんですか?仲が良いんですね」

( ・∀・)「でもあんな窓際の隅にいないで、もっと近くに来れば良いのに」

( ^ω^)「ああ、それは……しぃと約束してるんだお。
      教室の中が見えない所で待っててねって」

( ・∀・)「……へぇ。なるほど」


( ・∀・)「大事な人に、見られたくないんですね。もう1人の自分を」

432 名前:名も無きAAのようです:2013/02/26(火) 22:09:59 ID:iY0pz6Rc0
( ^ω^)「マインドB発症患者でそういう人は割と多いお。
      思春期の子は特にそうだし、それにしぃは繊細な性格だからね。
      デリケートな問題なんだお。僕らも十分気をつけないと」

( ・∀・)「はい。僕も気をつけます」


( ^ω^)「じゃ、渡辺さんも待ってることだし、しぃを起こすかお。
      準備いいかお、つー?」

(*゚∀゚)ノ「おー」


(*゚∀゚)「……」

433 名前:名も無きAAのようです:2013/02/26(火) 22:11:04 ID:iY0pz6Rc0


(*゚ー゚)「じゃあ先生、私これで……」


( ^ω^)「あ、待っておしぃ」

(*゚ー゚)「?」

( ^ω^)「悪いんだけど、終礼が終わったらもう一度ここに来てくれるかお?」

(*゚ー゚)「え?」

( ^ω^)「タカラ君に、一年生の靴箱の場所を案内してあげてほしいんだお。
      昨日はスリッパだったしね」

( ,,^Д^)「よろしくお願いします!」

(*゚ー゚)「あっ、はい。……分かりました」

( ^ω^)「ここで待ってるから、一緒に行ってあげておね」

( ^ω^)「頼んだお、しぃ」

(*゚ー゚)「はい」

434 名前:名も無きAAのようです:2013/02/26(火) 22:12:19 ID:iY0pz6Rc0
  _
( ゚∀゚)ノシ「じゃあなー弟者!」

('(゚∀゚∩「バイバイだよ!」

(´<_` )「うん、またな2人とも」


放課後 学校からの帰り道。

ジョルジュとなおるよと別れた後で、1人帰路につく弟者。


(´<_` )「……」



「モララー先生、どうだった?兄者」



表面や声に出すことはせず、内面に意識を向け心のなかの相手に尋ねる。
いつもと同じ通学路を歩く、弟者の目が僅かに左右に動き、声無く唇が動いた。

435 名前:名も無きAAのようです:2013/02/26(火) 22:15:12 ID:iY0pz6Rc0
「んー?うん、良い先生だったぞ。プリント終わらすの手伝ってくれたし。
休み時間には、妹者の待ち受け見せて自慢したんだ!」


「そうか、良かったな。
……先生慣れてないんだから、あんまり迷惑かけるなよ」


「迷惑なんてかけませんー」


「どうだか」



(´<_` )=3


ジョルジュとなおるよ曰く、2-Aに帰ってきた直後にも
兄者はまた不意に表れて、掃除の当番に当たっていることを知るとすぐ引っ込んだそうだ。

普段なら兄者も、学校が終わるまでの間くらいもう少し大人しくしていられるのだが。
こうもちょくちょく双方無意識の人格交代が起きるのは、決まって兄者が浮かれている証拠である。


マインドBの診断を下されて5年。
気まぐれな兄者との付き合いにももう慣れたとは言え
こう何度も、何の心構え無く意識喪失を起こし不意に目覚めるのが続くと流石に疲れてしまう。


(´<_` )(……まぁ、兄者が浮かれるのも仕方無いか)

436 名前:>>435訂正:2013/02/26(火) 22:17:05 ID:iY0pz6Rc0
数秒の間を置いて、声が返ってくる。


「んー?うん、良い先生だったぞ。プリント終わらすの手伝ってくれたし。
休み時間には、妹者の待ち受け見せて自慢したんだ!」


「そうか、良かったな。
……先生慣れてないんだから、あんまり迷惑かけるなよ」


「迷惑なんてかけませんー」


「どうだか」



(´<_` )=3


ジョルジュとなおるよ曰く、2-Aに帰ってきた直後にも
兄者はまた不意に表れて、掃除の当番に当たっていることを知るとすぐ引っ込んだそうだ。

普段なら兄者も、学校が終わるまでの間くらいもう少し大人しくしていられるのだが。
こうもちょくちょく双方無意識の人格交代が起きるのは、決まって兄者が浮かれている証拠である。


マインドBの診断を下されて5年。
気まぐれな兄者との付き合いにももう慣れたとは言え
こう何度も、何の心構え無く意識喪失を起こし不意に目覚めるのが続くと流石に疲れてしまう。


(´<_` )(……まぁ、兄者が浮かれるのも仕方無いか)

437 名前:名も無きAAのようです:2013/02/26(火) 22:19:22 ID:iY0pz6Rc0

*(‘‘)*「いもちゃーん!」

l从・∀・ノ!リ人「あ!ヘリカルちゃん」

*(‘‘)*「ねーねー日曜日暇?リリちゃん家で遊ぶんだけど」

l从・∀・ノ!リ人「あ……んー、ごめんのじゃ!
       日曜日はちょっと、約束があるのじゃ」

*(‘‘)*「むーそっかぁ……残念。他の子と?」

l从・∀・*ノ!リ人「……えへへ、内緒なのじゃ!」

*(‘‘)*「あー、いもちゃん嬉しそう。さてはデートだなー!」

l从・∀・;ノ!リ人「ちちち違うのじゃ!なんでそうなるのじゃっ」

*(‘‘)*「えー、じゃあ誰と?」

l从・∀・;ノ!リ人「むむむ……。……ぉ……お兄ちゃんと約束、なのじゃ」

*(‘‘)*「あー、なるほど。
     いもちゃん、お兄ちゃんのこと大好きだもんね!」

l从・∀・*ノ!リ人

*(‘‘)*「いもちゃんのお兄ちゃん、優しくてかっこよくて良いな。うらやましいなー」

l从・∀・*ノ!リ人「……えへへ」


我が流石家には、もう1人
優しくて面白くて、大好きなお兄ちゃんがいることを
学校のお友達や、ヘリカルちゃんは知らない。

438 名前:名も無きAAのようです:2013/02/26(火) 22:20:34 ID:iY0pz6Rc0


(*゚ー゚)「えっと……此処とあと、保健室の隣の階段からも降りられるからね」

( ,,^Д^)「わかりました!」



東館の地下に設けられた広い靴置き場は、授業が終わったばかりの今の時間
下校する生徒の数もまばらで、ひっそりとした静けさにつつまれている。


地上へと続く石階段では、数人の生徒が気だるげな様子で
箒を片手に段差の掃き掃除をしていた。

439 名前:名も無きAAのようです:2013/02/26(火) 22:21:44 ID:iY0pz6Rc0
(*゚ー゚)(……)

ナベちゃんは、今日は委員会の話し合いで遅くなるそうだ。
そして自分は特に用事も無く、こうしてカバンを手に提げて帰り支度は万全。

此処で自分の靴箱からローファーを取り出し、上靴を履き替えれば
そのまま下校出来る状態、なのだが。


(;゚ー゚)、「……」

( ,,^Д^)「わぁ、流石に大きいですね!あっちは部活動用ですか?」

(;゚ー゚)「ふぇっ?あ……う、うん!」


このままいけば、昨日知り合ったばかりのタカラと2人で校門を出る流れになってしまう。

それは、若干、いや、かなり気恥ずかしい。


親しい第三者がこの場にいてくれれば、まだ話は別だっただろう。
けれど、会話が苦手でまともに人の目も見れない自分には
たとえ校門までの短い距離であったとしても、もしくはそれ以上の道すがら
ほぼ初対面の男子生徒と2人きり、何を話せば良いのかなんて皆目見当がつかなかった。

440 名前:名も無きAAのようです:2013/02/26(火) 22:24:35 ID:iY0pz6Rc0
このままタカラと一緒に地上に出たところで
両者にとって気まずい下校になることは目に見えている。


(*゚ー゚)「ここから3列目の棚までが、一年生の靴箱」

( ,,^Д^)「はい!」

(*゚ー゚)「A組は一番端の……」

(*゚ー゚)(……)


このまま、タカラには1人で帰ってもらって
自分は図書館で本でも読みながらナベちゃんを待とうか?

……しかし仮にも相手は同じ教室に通うクラスメイト、入学して来たばかりの同級生。

そんな相手に対して初日から、余所余所しく、突き放すような態度を取るのは
いくらなんでも無責任っていうか、冷たすぎるんじゃないかな……。


ブーン先生にも、同じ学年だから色々教えてあげておね、と
昨日お願いされたではないか。


『 頼んだお、しぃ 』


こんな自分を信じて、そう言ってくれたのに。

441 名前:名も無きAAのようです:2013/02/26(火) 22:26:10 ID:iY0pz6Rc0
(;゚ー゚)(でも変に気まずくなって、嫌われるのも嫌だなぁ……)

(;₋ ₋)(ああ、もう)


……どうして自分はこうも、何事も上手くできないんだろうか。
自分で自分に腹立つ。

中学にあがる頃までは、こんな風に
人と関わることに対して、極端に苦手意識を持つことなんて無かった筈だ。

筈、なのに……


(*゚ー゚)「えっと……、あった!46番。タカラ君はここ……」


(*゚ー゚)「……?」


フと、先ほどまですぐ傍で感じていた、背後の気配が遠のいた事に気がつく。

442 名前:名も無きAAのようです:2013/02/26(火) 22:27:20 ID:iY0pz6Rc0


(    )「……」


(*゚ー゚)「……タカラ君?」


不審に思い振り返ると、さっきまで自分のすぐ後ろをついて来ていた相手は
反対側の棚に体を向けて、その場にしゃがみ込んでいた。


(;゚−゚)「えっ!ど、どうしたの?」

(    )「……」

(;゚−゚)「どうしたの?気分悪い?」


(;゚−゚)


不意に陥った、ぞっとするような静けさ。


今まで自分が何か言う度、元気良く返事をしていた彼の明るさは沈黙に没し
地下の暗がりで静かに俯く、そのギャップに嫌な胸騒ぎが走る。

443 名前:名も無きAAのようです:2013/02/26(火) 22:29:11 ID:iY0pz6Rc0
(;゚−゚)(大変、先生呼んでこなきゃ……!)

幸い、この先の西階段を上がればすぐそこに保健室がある。

(;゚−゚)「ま、待っててタカラ君、今……」

助けを呼ぼうと彼に背を向け、走り出そうとした一歩手前。


(    )「……」


背後で屈んでいたタカラが、音も無く立ち上がった。
後方から刺すように滲む、空気と気配を感じて思わず立ち止まる。


(    )


(   ,,)


( ,,Д)



(;゚−゚)「……タカラ、君?」

444 名前:名も無きAAのようです:2013/02/26(火) 22:31:12 ID:iY0pz6Rc0


( ,, Д )「……」


(;゚−゚)「だ、大丈夫……?タカラく―――」



( ,, Д )「お前」





(,,゚Д゚)「もう1人の自分の存在を、消したいと思ったことは無いか?」





(*゚ー゚)「……え」


射抜くような目線でこちらを真っ直ぐに見据えた、目の前の男子生徒は

常に明るく、人好きするにこやかな笑顔を浮かべた彼――――



――――先ほどまでの猫塚タカラとは 別の『誰か』だった。


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