( ∵)ビコーズの災難のようです 

7 名前: ◆L66fmP/Ue6 投稿日:2008/05/24(土) 23:09:35.44 ID:XI0zwykLO
恥。

それは誰しもが少なからず持つであろう人生の汚点である。

人前で転んだり、簡単な漢字を読み間違えたりという小さなものから、
もはや一生の恥と言えるものまで、様々な恥がある。

が、

どれにもこれにも共通しているのは、こういった出来事が関わる思い出というものが、
その恥をかいた本人にとって群を抜いて悪い意味で忘れられないものになるということだ。


8 名前: ◆L66fmP/Ue6 投稿日:2008/05/24(土) 23:11:49.55 ID:XI0zwykLO

多分、自分がかいた一番の恥あげろと言われて、それが出来ない人はまずいない。

むしろ多すぎて選べないことの方が多い。

しかも、それらは些細なきっかけでフラッシュバックし、人々を苦しめる。

質が悪いにも程がある代物である。

9 名前: ◆L66fmP/Ue6 投稿日:2008/05/24(土) 23:16:58.83 ID:XI0zwykLO

一度かいてしまった恥、またそれについてまわる汚名に対して、我々には為す術が一つしかない。

自分からその恥を打ち消すに値する行動を取ることだ。

そしてそれは、今の自分に取っての命題でもある。



( ∵)ビコーズの災難のようです      第二話

10 名前: ◆L66fmP/Ue6 投稿日:2008/05/24(土) 23:18:44.70 ID:XI0zwykLO
先日は結局、唯一の知り合いとなったハインとはそれっきりで、自分はそのまま授業を受けた後、帰宅して就寝した。

その翌日。
つまり今日。
自分は約束通り二人分の弁当を鞄の中に入れて登校した。

13 名前: ◆L66fmP/Ue6 投稿日:2008/05/24(土) 23:21:37.20 ID:XI0zwykLO

( ∵)「……」

……今日もしぃさんはいらっしゃらない。

担任( ´∀`)は何故生徒の欠席理由を皆に伝えないのかと、奴自身に小一時間ほど聞き糾してやりたかったが、
やっぱり喋るのが苦手なので聞かなかった。

そんなスタンスが明らかに自分にとってマイナスイメージの増長に繋がると分かっているのに、
だんまりを決め込んでしまう自分に嫌気がさす。

( ∵)「……」

……ダメだ。

ともあれ今の自分には目的がある。
彼女に弁当を渡すことだけだが、それ以外は忘れる事にした。

14 名前: ◆L66fmP/Ue6 投稿日:2008/05/24(土) 23:26:48.28 ID:XI0zwykLO

( ∵)「……」

昼休み。

授業が終わるなり早々と体育館裏へと向かう。

場所や時間の約束などしていない。
が、ふいんきを読めばこの時間帯のこの場所が暗黙の了解での約束の場所だと思う。

しかし、自分が到着したとき、そこには誰もいなかった。

まぁ自分のここまで来るスピードを考慮すれば当然だろう。きっと。

( ∵)「……」

昨日と同じ場所に座り、彼女を待つことにした。

15 名前: ◆L66fmP/Ue6 投稿日:2008/05/24(土) 23:30:18.39 ID:XI0zwykLO

しかし何もすることがないと、嫌が応にも例の記憶が頭をよぎる。

頭の中に浮かぶのは素敵な思い出とそれに対する後悔の念だ。

思い出したくない黒歴史を思い出し、
意味不明な単語の羅列を口走りながら悶えまくるという経験は、少なからず誰にでもあるはずd从 ゚∀从「わッ!!」

( ∵)「!」

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/05/24(土) 23:31:04.52 ID:XI0zwykLO

唐突に肩を後ろから叩かれて、自分はとても驚いた。
とは言っても、内心で驚いただけで、表面的には反射的に肩を痙攣させただけだ。

从 ゚∀从「驚いた?驚いただろ?」

ハインはそんな自分の反応を見て、とても嬉しそうにはしゃいだ。

从 ゚∀从「でも、驚いても無口なのな」

放っておいてくれ。

从 ゚∀从「まぁ、いいや」

昨日のように胡座をかいて、ハインは自分の真正面に座った。

18 名前: ◆L66fmP/Ue6 投稿日:2008/05/24(土) 23:32:14.93 ID:XI0zwykLO

从 ゚∀从「腹減った」

( ∵)「……」

さりげなく遠回しに言ってるつもりなのだろうが、
言葉の意図は明白なので弁当を渡す。

从 ゚∀从「おっ、サンキュー」

何故かパシられているような気分がしたが、心の奥底にそっとしまい込んだ。


19 名前: ◆L66fmP/Ue6 投稿日:2008/05/24(土) 23:33:58.00 ID:XI0zwykLO
从 ゚∀从「ジャジャーン!!」

ハインが大袈裟な動作で弁当箱の蓋を開ける。

从 ゚∀从「おおー!美味そー!」

本日の献立は生姜焼きとキャベツの千切りサラダとポテトコロッケでございます。
デザートには梨を用意しております。

心の中で一通り説明をしている間に、ハインはいただきますも言わずに凄まじいスピードで弁当の中身をかき込んでいた。

作った側の心情としては、ちょっとは味わってほしいものだ。

20 名前: ◆L66fmP/Ue6 投稿日:2008/05/24(土) 23:35:12.85 ID:XI0zwykLO

从 ゚∀从「……あれ?お前食べないの?」

ハインに指摘されて、自分が弁当に手を付けていないことを思い出す。

从 ゚∀从「要らないなら……」

伸びかけたハインの手をかわし、自分はようやく弁当を食べ始めた。

しばし無言で、いや、いつも無言なのたが……弁当を貪る。

実を言えば、この弁当の為に朝食を抜かざるをえなかったのだ。
もう少し早く起きていれば二人分の弁当を作っても朝食を摂る余裕があったのだが。

そんな事情もあり、自分にしてはかなりのハイスピードで弁当を平らげてしまった。

21 名前: ◆L66fmP/Ue6 投稿日:2008/05/24(土) 23:37:19.02 ID:XI0zwykLO

从 ゚∀从「食った食った」

弁当箱を空にしたハインが腰の後ろに手を突いて、ややのけ反るような体勢で満足そうに言った。

( ∵)「……」

そんな彼女を見ていて、自分はふと何の脈絡も無く、しぃさんの事が頭をよぎる。

やはりこの三日間の欠席は自分に責任、というか原因があるのだろうか。


22 名前: ◆L66fmP/Ue6 投稿日:2008/05/24(土) 23:38:56.32 ID:XI0zwykLO
从 ゚∀从「どーしたよ?」

ふとハインに尋ねられ、自分は我に帰った。

从 ゚∀从「浮かない顔してんなー」

いつもと大して変わりの無い無表情をしていたつもりだったが、彼女は微妙な変化を悟ったらしい。

从 ゚∀从「あれか、お前が笑顔でビックラこかせた女子のことか」

何故自分の極めて微妙な表情の機微を見落とさないフィルターは、
その無遠慮極まりない発言内容を喉元で塞き止めてくれないのか。

そんな自分の不満はスルーして、ハインは話題をそちらに移した。

23 名前: ◆L66fmP/Ue6 投稿日:2008/05/24(土) 23:40:26.10 ID:XI0zwykLO

从 ゚∀从「お前さ、ワザと相手が気絶するように笑顔したのか」

( ∵)「……」

首を横に振る。
間違いなく不慮の事故だと断言する。

从 ゚∀从「だったらさ、やっぱし本人にそうだって理解してもらうのが1番なんじゃねぇの?」

人差し指をビシッとこちらに向けて、ハインは言う。

間違いない。全くもってその通りだ。

しかし、肝心の本人に会えない今、一体どうしろというのか。

从 ゚∀从「……よし!今日ソイツの家に行って謝ろうぜ!」

( ∵)「……」

24 名前: ◆L66fmP/Ue6 投稿日:2008/05/24(土) 23:42:50.41 ID:XI0zwykLO

……んな無茶な。

住所どころか、彼女について知ってるのは名前だけですよ?

自分の立場からして、誰かに聞けるはずもない。

というか"特攻"?

玉砕は前提なんですか?

( ∵)「……」

とにもかくにも、首を横に振って意志を伝える。

从 ゚∀从「何でだよ。何か用事でもあるのか」

( ∵)「……」

ダメだコイツ。
思考は読めるのに、空気とかふいんきを読むことに関しては致命的にダメだ。


25 名前: ◆L66fmP/Ue6 投稿日:2008/05/24(土) 23:43:13.94 ID:XI0zwykLO

从 ゚∀从「無いんだろ?じゃあ行こうぜ」

( ∵)「……」

……よし、逆に考えるんだ自分。
一緒に行ってくれる仲間がいると考えるんだ。


26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/05/24(土) 23:46:27.22 ID:XI0zwykLO
とはいえ。
彼女の家に行けたとして、この言葉を口に出せない男がいかにして弁解するのだ。

从 ゚∀从「何だよ。まだ問題でもあんのかー?」

ハインは呆れたように言う。

从 ゚∀从「あ、そうか。
喋るの馬鹿みたいに苦手だもんなお前」

言い方に不満はあったが、間違ってはいないので頷いて肯定する。

从 ゚∀从「じゃあ手紙書けばいいじゃん」

……成る程。
それは盲点だった。

しかし、生まれてこの方、手紙を書いたのは漫画雑誌の懸賞応募くらいだ。

……年賀状?暑中見舞?何それ。

とにかく、そんな経緯の為に手紙という発想は頭の中にはなかった。

27 名前: ◆L66fmP/Ue6 投稿日:2008/05/24(土) 23:48:29.29 ID:XI0zwykLO
从 ゚∀从「どーよ、手紙なら問題ないだろ?」

自分は頷いて答える。

从 ゚∀从「よし、なら善は急げだ。
早速画用紙買ってくるわ」


……ちょっと待て。


自分は咄嗟にハインのシャツの裾を掴んで立ち上がろうとする彼女を止めた。

28 名前: ◆L66fmP/Ue6 投稿日:2008/05/24(土) 23:50:18.14 ID:XI0zwykLO

画用紙?
今画用紙って言った?
手紙の媒体って画用紙だっけ?
確か便箋とか葉書に書くものだと認識していた気がするよ?

そんな文句を口に出さず目で伝える。

从 ゚∀从「んだよー、どうせなら画用紙にデッカく「ゴメンネ(はぁと」だろー?」

何が不満なんだと言いたげに、ハインはふて腐れた。

取り敢えず断固反対の意志を思い切り首を横に振ることで伝える。

29 名前: ◆L66fmP/Ue6 投稿日:2008/05/24(土) 23:53:05.69 ID:XI0zwykLO

从 ゚∀从「んだよ全く、ちっちゃい男だなー」

再び胡座に座り直して、ハインは呟いた。

从 ゚∀从「それが嫌なら後は便箋とかしかないぞ?」

むしろそっちが普通だろ。
最終手段みたいな言い方すんな。

从 ゚∀从「でも便箋にデッカく「ゴメンネ」って書いてもたかがしれてるぜ?」

根本的に間違ってる。

何故そこが決定事項なんだ。


30 名前: ◆L66fmP/Ue6 投稿日:2008/05/24(土) 23:53:41.94 ID:XI0zwykLO
呆れつつも、自分はポケットからペンを取り出し、生徒手帳のメモ部分に数本の横線を引いた。

从 ゚∀从「え?きちんとした文章で謝りたいってことか?」

何故、意外そうな顔をする。

从 ゚∀从「無口クンにそんな文章書けんのか?」

失敬な。
あくまで表向きに無愛想なだけで、心は結構情緒豊かだと、何度心の中で呟いたことか。


31 名前: ◆L66fmP/Ue6 投稿日:2008/05/24(土) 23:54:05.91 ID:XI0zwykLO
从 ゚∀从「まぁ、いいや。
なら文章はおまえに任せる。
俺はあの被害者の住所調べておいてやるよ」

被害者って言うな。
自分が犯罪を犯したみたいじゃないか。

そんな心の中のツッコミは届かずに、ハインは立ち上がり、スカートをはたいた。

从 ゚∀从「放課後もっぺんここに集合な!
ちゃんと書いとけよ!」

そう言うなり、ハインは風のように去っていった。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/05/24(土) 23:57:41.19 ID:XI0zwykLO

放課後。

( ∵)「……」

何だかんだ言っておきながらきちんと手紙を書いてしまった。

書いてる最中、クラスの奴らの視線は気にならなくなってきていた。

……耐性が身についた訳じゃない。
視線が減ったんだ。ほとぼりが冷めたんだ。きっとそうだ。


しかしながらそれで解決と言うわけには行かない。
少なくとも、しぃさんに誤解を解いてもらうまでは。


从 ゚∀从「お、来てたか」

……ついてくるのが彼女というのが些か不安だが。

再び体育館裏で待っていた自分は、こちらに向かってくるハインを見ながらそう思った。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/05/24(土) 23:58:38.35 ID:XI0zwykLO

从 ゚∀从「出来た?」

自分は無言で便箋を見せる。

素早く伸びてきたハインの手を、寸でのところでかわした。


35 名前: ◆L66fmP/Ue6 投稿日:2008/05/24(土) 23:59:10.05 ID:XI0zwykLO
从 ゚∀从「何で中身見せてくんないんだよ!」

逆に何故見せねばならないのか聞きたい。

内容を考えろ。
謝罪の手紙なんて普通渡す相手以外には見せないだろうが。

从 ゚∀从「まぁ、文章が心配だけどいいか」

お前が言うな。

从 ゚∀从「あ、こっちも住所は分かったぞ。
職員室って意外に警戒レベル低いのな」

……さようで。

ツッコミどころは多々あるが、準備は整った。

後は封筒に便箋を入れて住所を書いてポストに投函……

从 ゚∀从「よし、届けに行くか」

( ∵)「……」

36 名前: ◆L66fmP/Ue6 投稿日:2008/05/25(日) 00:00:06.94 ID:7PZryL5LO

いや、せっかく手紙で書いたんだから送ればいいのでは……。

一応聞いてみよう。

( ∵)「……ポストに投函……」

从 ゚∀从「んな回りくどいことするかよ。
家に特攻に決まってんじゃん」

だから何で決まってんのかと小一時間(ry

从 ゚∀从「……お前さー」

ハインが溜め息を吐いて言った。

从 ゚∀从「実は怖いんだろ」

37 名前: ◆L66fmP/Ue6 投稿日:2008/05/25(日) 00:01:17.93 ID:7PZryL5LO

( ∵)「……」

図星を突かれ、自分は内心焦った。

从 ゚∀从「しぃだっけ? ソイツがまだ休んでる理由が自分のせいだって思ってんだろ。
んで、謝りに行っても許してくれるかどーかわかんねえからウジウジしてんだろ。
直接会うのも嫌だから間接的に済ませば良いとか考えてんだろ?」

( ∵)「……」

悔しいほどに図星である。

38 名前: ◆L66fmP/Ue6 投稿日:2008/05/25(日) 00:02:04.37 ID:7PZryL5LO

从 ゚∀从「てかさー、それを確かめに行くんじゃねぇの?」

視線を下に反らした自分に、ハインは言う。

从 ゚∀从「まずは謝ってみて、何もなけりゃハッピーエンドじゃん。
拒否されるなり許してもらえないなりしたら、そっから悩むなりウジウジするなりしろよ」

( ∵)「……」

全くもって正論だ。
何一つ間違っていない。

从 ゚∀从「ホレ、行くぞ」

ハインは立ち上がる。

从 ゚∀从「「アンタなんか嫌いよ!顔も見たくない!」とか言われたら慰めてやんよ」

そういって高らかに笑う彼女を見上げる。

どうやら覚悟を決める他ないらしい。

自分は弁当箱を二つ包んで立ち上がった。


39 名前: ◆L66fmP/Ue6 投稿日:2008/05/25(日) 00:03:32.31 ID:7PZryL5LO
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

从 ゚∀从「到着ー」

( ∵)「……」

ハインの後に付いていくこと数分。
ハインの言う通り、しぃさんの自宅は学校から大して遠くはなかった。


40 名前: ◆L66fmP/Ue6 投稿日:2008/05/25(日) 00:04:44.04 ID:7PZryL5LO
从 ゚∀从「さぁ、行ってみよー」

片手を振り上げ、ハインは玄関へと向かう。

追い掛けるようにしてハインの隣に並ぶと、彼女はすでに玄関脇の柱に備え付けられた呼び鈴を鳴らしていた。

( ∵)「……」

すぐに押すなよ。
心の準備とかさせろよ。

そんな余裕もないほど早く、家の中から玄関に駆け寄る音が聞こえて来た。


41 名前: ◆L66fmP/Ue6 投稿日:2008/05/25(日) 00:05:02.86 ID:7PZryL5LO
……どうしよう。

今更ながら手渡す際のことを何も考えていないのに気付く。

無表情かつ無言で渡すのは非常に印象が悪いだろう。
かと言って、あの笑顔で渡せば今度こそアウトだ。

どーする、どーするよ、俺。

そんな自分の逡巡をよそに、玄関のドアが開いた。


42 名前: ◆L66fmP/Ue6 投稿日:2008/05/25(日) 00:05:50.84 ID:7PZryL5LO
(*゚ー゚)「はーい」

出て来たのは紛れも無いしぃさん本人だった。

多分、彼女に双子がいても、彼女が彼女だと分かっただろう。

何故か。
自分と目が合った瞬間、物凄く、半端なく、気まずい顔をしたからだ。

とはいえそれは一瞬で、しぃさんはすぐに表情を整えた。

(*゚ー゚)「あの、何か……?」

( ∵)「……」

何か。
何か喋れ自分。

自分に言い聞かせるも、ただでさえ開く機会の少ない口は緊張もあいまって全く開こうとしない。

気まずい沈黙が流れ始める。

いっそ無言で渡してしまうか。

そう思った矢先だった。


44 名前: ◆L66fmP/Ue6 投稿日:2008/05/25(日) 00:08:29.18 ID:7PZryL5LO
从 ゚∀从「いやー悪いね!
この馬鹿がしぃさんを驚かせたのを謝りたいって言ったんで連れてきたんだけどさ、
何分コイツ馬鹿みたいに無口な奴なもんだから!
わざわざ手紙に書いてきたんだよ。
つーわけで、オイ、手紙手紙」

突如物凄いマシンガントークでまくし立てたハインが、自分の脇腹を小突いた。

自分は内心慌てながら、表面的には至って落ち着いて手紙を取り出し、しぃさんに手渡す。

(*゚ー゚)「あ、ありがとう」

しぃさんはやや戸惑いつつも手紙を受け取る。

46 名前: ◆L66fmP/Ue6 投稿日:2008/05/25(日) 00:10:55.45 ID:7PZryL5LO

从 ゚∀从「いやホント悪いねー無愛想で!
悪気はないらしいから勘弁してやって!
ところでさ……コイツの笑顔ってどんn(ry」

もう止めろ。
恥で悶死させたいのか。

まだ喋ろうとしたハインの首根っこを掴み、自分は全力でしぃさん宅の玄関を後にした。


48 名前: ◆L66fmP/Ue6 投稿日:2008/05/25(日) 00:12:42.19 ID:7PZryL5LO

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

そのまま学校の近くにまで戻り、自分はようやくハインを離した。

从 ゚∀从「お、おま……殺す気かよ……」

( ∵)「……」

むしろ死ねよ。

息切れしながら、自分は思った。

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/05/25(日) 00:15:40.97 ID:7PZryL5LO

从 ゚∀从「何だよチクショー、俺のおかげでスムーズに手紙を渡せたんじゃないのかよ」

喉元を押さえながらハインが愚痴った。

それを全否定できないのが何とも悔しい。

あの時ハインが勢いを作らなければ、間違いなく手紙は無言のまましぃさんに押し付けられていただろう。

そういう点では感謝せねばなるまい。

何度も言うが、自分は表面的に味気無いだけで、心は至って普通なのだ。
相手がどんなに生意気であっても、感謝の心を持つことだってある。

52 名前: ◆L66fmP/Ue6 投稿日:2008/05/25(日) 00:17:05.29 ID:7PZryL5LO

从 ゚∀从「なぁ、なんかお礼は?」

得意げな表情でハインが尋ねた。
( ∵)「……」

……そうだな。

少なくとも自分には彼女に感謝しなければならない道理がある。

自分は感謝の心を表すため、簡単で明快な行動をとった。



笑うことだ。



数分後。

一瞬凄まじい表情で硬直し、直後激昂したハインに追い掛けられつつ、自分は久しぶりに楽しい帰路についた。



( ∵)ビコーズの災難のようです  第二話 終わり


戻る 次へ

inserted by FC2 system