('A`)バケモノが暮らすお城のようです

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/31(土) 15:47:25.81 ID:yn8xCS7x0
太陽が沈みかけている夕暮れ時、風が吹くと爽やかな音をたてる草。
童話の舞台として使えそうな広い草原で、場に相応しくなく汚れた格好の男が寝ていた。もとい、仰向けに倒れていた。


('A`)


男の服装は葬式でもあったかのような真っ黒なスーツ。
それが万遍なく汚れ、所々穴が開き、靴もはいていない。

('A`)「・・・ん」

異様な男は目が覚め、上半身を起こして辺りを見回す。
あくびをしながら独り言を言い始めた。

('A`)「・・・んん?」

('A`)「・・・ここ」

('A`)「・・・どこですか」


第一話 発見

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/31(土) 15:49:46.82 ID:yn8xCS7x0

('A`)「えー・・・」

('A`)「・・・何してたんだっけ・・・」

('A`)「・・・・・・走ってた?かな・・・うーん」

('A`)「・・・なんで?」

('A`)「・・・」

男は立ち上がり、背筋を伸ばして大きな欠伸をしたのち、再び辺りを見回す。

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/31(土) 15:51:54.15 ID:yn8xCS7x0
('A`)「うわ、なんだあれ・・・」

男の後ろには森が茂り、そしてその森の中に巨大な城が立っているのが見えた。
夕暮れがそうさせるのか、不気味な雰囲気を漂わせている。

('A`)「・・・ここにいてもなんだし、行ってみるか・・・誰かいるといいけど」

そうして男は鬱蒼としている森の中へと入っていく。
一羽の鳥が低い声で鳴いていた。

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/31(土) 15:54:39.98 ID:yn8xCS7x0
森の中に道はなく、背の高い草木を掻き分けて男は黙々と進む。
裸足では辛い状況だが男に休む様子はない。

(;'A`)「はぁ・・・はぁ・・・い、意外と遠いじゃねーか畜生・・・」

(;'A`)「もう辺りも真っ暗だっつーのに着く気がしn・・・お、あれか?」

(;'A`)「ん?」

城の入り口が見えたと同時に森の出口も見えた。が異変に気付く。その城には灯りがついていない。

(;'A`)「・・・おいおいまさか人がいないなんて言い出すんじゃないだろうな・・・」

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/31(土) 15:59:01.67 ID:yn8xCS7x0
ぶつぶつ言いながらも森を抜けることができた。いや、開けた場所に出たというべきか、城の周りはまだ森に囲まれている。一部を除いて。
城の横を見ると崖になっていることに気付いた。男はそこへ歩を進める。

('A`)「・・・坂道があるな、この崖の下は、と」

('A`)「明かりが見えるな・・・村か?」

('A`)「そこに行くべきなんだろうが・・・」

後ろを見ると巨大な城がそびえたっている。夕暮れ時に見たときよりも数段不気味な雰囲気だ。
ぼーっと見ていると怖いもの見たさに城の中へ入りたくなり、城の前へとゆっくり歩いた。

(;'A`)「・・・こわすぎるだろ、これじゃどう考えても人は住んでないな」

(;'A`)「・・とりあえず開けてみるか・・・?」

城の木製の扉に両手をかける、その瞬間─

(;゚A゚)「・・・ぐぁ!?」

一瞬、頭に激痛が走った。あまりに突然な、強烈な痛みにとっさに扉から手を離し、両手で頭をおさえ、倒れた。

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/31(土) 16:01:48.15 ID:yn8xCS7x0
それは激しい頭痛、物理的なものではない。
ほんの数秒の間に何度も意識を失いそうになる。痛みの波が過ぎて、呟いた。

(; A )「・・・ぐ・・・ぅ・・・今のは・・・・・・?」

( A )「・・・懐かしい・・・・・・?俺は・・・」

( A )「・・・」

立ち上がり、扉を押し開ける。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/31(土) 16:05:32.93 ID:yn8xCS7x0
城内は外と同じ様に暗闇で覆われ、かび臭い空気が充満している。
やはり人はいない様子だ、男はひたひたと城内へと踏み入れる。

('A`)「・・・城・・・か、ずっと探していたのにいざ見つかるとあっけないものだな」

('A`)「・・・明かりがないと困るな、さっきの村へ行ってみるか」

振り返って城へ出ようとする。その時─

「待て」

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/31(土) 16:13:37.41 ID:yn8xCS7x0


突如城内からしわがれた声が聞こえた。男は驚くことなくその声に返す。この声は─

('A`)「いたのか、ロマネスク」

( ФωФ)「なんじゃ、少しは驚かんか。相変わらずおもしろくない奴じゃ」

('A`)「わぁびっくりした、心臓破裂の危機に陥ったにょ」

( ФωФ)「きめぇ」

暗闇の中で言葉をかわす。お互いに姿は見えてないが淡々と会話は進む。

( ФωФ)「・・・八年じゃぞ、貴様が城を飛び出してからな。
       どうじゃ?嫁は見つかったか?」

(;'A`)「・・・・・・そんな理由・・・だったのか・・・?」

( ФωФ)「?」

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/31(土) 16:15:17.87 ID:yn8xCS7x0
('A`)「・・・・・・なんて言えばいいかな・・・その・・・記憶がないんだ・・・
   何故こんな格好なのか、何故あそこにいたか・・・ ・・・思い出せるのは今日のことぐらいで・・・・」

( #ФωФ)「何を言っておるのだ!馬鹿が!では何故わしのことはわかると言うのだ!いい加減なことを抜かすな!!」

(;'A`)「落ち着けよ・・・俺だって何がどうなってるのかわからない。
    ただ、城の扉に手をかけた時・・・頭痛と同時に・・・こう・・・懐かしい感じっていうか、頭の中で・・・ああもう何ていえば・・・」

( ФωФ)「・・・何を言ってるのかさっぱりじゃ。もういい、今日は休め。夜が明けたら洗いざらい吐いてもらうからな。
       そんな格好から思うに疲れているじゃろうて」

('A`)「・・・そうするよ、ていうかそろそろ灯りつけてくれよ」

( #ФωФ)∩「・・・我輩が光嫌いのことも忘れおったか・・・今回だけじゃぞ」


17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/31(土) 16:17:46.59 ID:yn8xCS7x0
そういうとロマネスクは左手をあげ、指パッチンを高く鳴らす。
それと同時に天井のシャンデリヤの蝋燭に火が点いた。
暗闇で気づかなかったが城内は荒れている。壊れたイスの木片、真っ二つに折れた長テーブル、一つだけある汚れた黒いソファ。
それらが扉の前で散乱しているのだ。まるで争いごとでもあったかのように。

( ФωФ)「・・・よもや、自分の名前は忘れておるまいな?」

扉の真正面に位置する、二階のギャラリーから赤いローブを着た若い男が尋ねた。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/31(土) 16:21:08.67 ID:yn8xCS7x0
('A`)「・・・ドクオ。ドクオ=バラッドだ。そうだろ?ロマネスク=フルム」

( ФωФ)「よろしい、大まかなところは覚えておるの。では自分が何者かも・・・いや、これは明日じゃったな。
       それじゃあ我輩は寝るぞぃ、良い夜を・・・」

('A`)「・・・良い夜を」

('A`)(・・・俺が何者か・・・?)

ロマネスクはギャラリーの奥へ続く通路に姿を消した。
ドクオは先程見つけた黒いソファに倒れこみ、あくび。そして消え入りそうな声で一言だけつぶやいた。

('A`)「・・・俺の城、みーつけた・・・」

シャンデリヤの蝋燭がフッと消えた。



第一話 終




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