(´<_` )むしゃむしゃのようです

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/26(月) 00:35:27.61 ID:dD8P3x9c0



その内臓を俺にくれ、どうぞなみなみ食わせておくれ、

人に鬼との例えもあるぞ、

食欲だけが、じんせいだ。


2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/26(月) 00:39:18.35 ID:dD8P3x9c0

( ´_ゝ`)兄者。

ぐろいのが嫌い。
身体自体が、トカゲの尻尾。

(´<_` )弟者。

主食は人間。副食も人間。おやつも人間。
だいたいいつも、はらへり。

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/26(月) 00:49:26.06 ID:dD8P3x9c0

( ´_ゝ`)「ああ畜生。この村もそうなのか。巫山戯るのも大概にしてくれ、何故女子のひとりやふたり、己れを迎えに来ないのだ」

(´<_` )「考えたんだがな、空や、緋斗や、愁なら、迎えに来てくれるんじゃあないか」

( ´_ゝ`)「あんなの、女子と呼べたものか……あいつらが迎えに来るくらいなら、死神とやらの方が良い…」

(´<_` )「そんなに嫌いなら、喰ってやる。やつら、見目もいいんだから、あんたも連れて歩くに良かろう」

( ´_ゝ`)「お前もわからん奴だな、己れはグロいのが嫌いなんだよ、グロいのが」

(´<_` )「前々からおもっていたんだが、グロいとは何だ」

( ´_ゝ`)「北の方の言葉だ。推して量れ、莫迦野朗。」




7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/26(月) 00:54:16.02 ID:dD8P3x9c0

(´<_` )「あ、看板だ。」

( ´_ゝ`)「なんとある」

(´<_` )「この村は、クビナシ村というらしい」

( ´_ゝ`)「ようし、帰るぞ」

(´<_` )「何故だ」

(;´_ゝ`)「名前からして、グロいからだ!」

(´<_` )「クビナシの何処がグロいのだ」

(;´_ゝ`)「クビナシも、内臓も、四肢切断も、とにかくグロいのだ、判れ!」

(´<_` )「判ってもらおうと努力もせず、判れと喚くのは感心しないと云ったのは、はて、どこの兄者だったかな。」





9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/26(月) 01:02:33.60 ID:dD8P3x9c0

(;´_ゝ`)「名前を呼ぶなというに!」

(´<_` )「まあ、まさか住人全員が、首の断面を晒しているわけでもあるまい」

(;´_ゝ`)「ぜったい、グロいの意味を正しく認識しているだろう、お前!」

(´<_` )「断面からあふれ出す、果汁。……腹へった」

( ´_ゝ`)「いつから人間は果物になった。ああ、忌々しいやつめ」

(´<_` )「あんただって、野宿は嫌だろう。」

( ´_ゝ`)「そりゃあ、ふかふかのべっどで寝たいのは、確かだな」

(´<_` )「べっどとはなんだ」

( ´_ゝ`)「北のほうの、寝具だ。お前、まだびっぷから出たことがないんだなあ。
      そういうところを見ると、つくづくお前はまだ赤子なんだと思い知らされる」


11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/26(月) 01:09:47.46 ID:dD8P3x9c0

(´<_` )「赤子といったか。もう五十、六十は生きた気がするのだが」

( ´_ゝ`)「どっこい、己れは、めいっぱい少なくみても、その十倍生きている」

(´<_` )「それなのにその美味しさなのだから、まったくあんたは流石だとおもう」

( ´_ゝ`)「お前ときたら、己れの肉いがいは褒める気がないらしい。まったく。」

(´<_` )「内臓や、骨も、とても美味しいぞ」

( ´_ゝ`)「お前との付き合いも長いから、そんな挑発、いちいち相手にしてやらないぞ。」

( ´_ゝ`)「赤子はやることが単純だから、困るってんだ。
      平時、お前のくだらん戯言に付き合ってやっている、大人の優しさを慮りもしない。
      おい弟者、これからお前、己れには敬語を使え。敬え。へりくだれ。謙遜しろ。
      己れより早く寝るな。それでいて、己れより早く起きろ」

(´<_` )「おいおかみ、二人ばかり泊まらせてくれ。」

( ´_ゝ`)「………これだから赤子は。」

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/26(月) 01:17:51.94 ID:dD8P3x9c0

o川*゚ー゚)o「いらっしゃ…」

(´<_` )「首があるぞ。よかったな兄者」

( ´_ゝ`)「名を呼ぶな、名を」

o川*゚ー゚)o「!」

o川*゚ー゚)o

( ´_ゝ`)「なんだ、色男に見惚れたか。それは仕方がないことだ」

o川;゚ー゚)o「お客さん、この村のことを、何も知らないで来たんだね。そうに決まっている。
       随分遠いとこから来たんだろう。そうに決まっている。
       そうでなければ、こんな村に来る道理がないからね。」

(´<_` )「随分と一人で喋る女だ。普段からそうなのか。」

o川*゚ー゚)o「そりゃあお客さん、一人で喋らなくっちゃ嘘でしょう。
       この村で、首を曝け出している、あんたらを見たら。
       お客さん、悪いことはいわないから、首をお隠しよ。」

( ´_ゝ`)「はん、餓鬼どもの間では、己れの言葉を無視するのが流行っているんだな。皆、綺麗に野垂れ死ねばいい。」

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/26(月) 01:36:59.16 ID:dD8P3x9c0
o川*゚ー゚)o「お客さん、後から首を隠す布を持っていってやるからね。
       ささ、此処に記帳しておくんなまし。」

( ´_ゝ`)「すまんなおかみ、己れは文字を知らんのだ、名を云うから、あんたが書いてくれないか」

o川*゚ー゚)o「とても学のあるように見えますのに、世の中不思議なこともあったもんだね」

( ´_ゝ`)「見た目で判断するのは、とてもよくないことだぞ、おかみ。
      金と銀と鉛の箱を並べてみせて、正解が隠されているのは、鉛の箱だってのは、昔の人が好きな話しだ。
      んでもって、昔の人ってのは、昔だけあって、案外正解が多いんだ」

o川*゚ー゚)o「女に、そんな難しい話しはわかりゃしませんわ。」

( ´_ゝ`)「そりゃあ、女ってことは関係ないだろう。己れの知り合いに、生き字引のような女が居るからな」

o川*゚ー゚)o「私自身に、学がないと申しますの」

( ´_ゝ`)「さあてね、見た目は実に莫迦らしいから、昔の人にのっとってみれば、多分賢いんじゃないかね。
      つまり、あんたは難しい話しがわからんふりをしているんだ」

o川*゚ー゚)o「あら、酷い。其処まで云われちゃあ私もこう云わざるを得ないんだから。
       真実は藪の中、つついたら蛇が出る。私の脳みその皺の数は、神のみぞしることぞ。
       さあお兄さん、名前をどうぞ。」




17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/26(月) 01:44:51.02 ID:dD8P3x9c0

( ´_ゝ`)「俺の名前は高いぞ、よく聞けよ。」

( ´_ゝ`)「願いましては、じゅげむじゅげむ、ごこうのすりきれ、かいじゃりすいぎょのすいぎょうまつうんらいまつふうらいまつ、
      くうねるところにすむところ、やぶらこうじのやぶこうじ、ぱいぽぱいぽぱいぽのしゅーりんがん、しゅーりんがんのぐーりんだい、
      ぐーりんだいのぽんぽこぴーのぽんぽこなーの、ちょうきゅうめいのちょうすけ、あい以上。」

o川*゚ー゚)o「ふうん、じゅげむじゅげむ、ごこうのすりきれ、かいじゃりすいぎょのすいぎょうまつうんらいまつふうらいまつ、
       くうねるところにすむところ、やぶらこうじのやぶこうじ、ぱいぽぱいぽぱいぽのしゅーりんがん、しゅーりんがんのぐーりんだい、
       ぐーりんだいのぽんぽこぴーのぽんぽこなーの、ちょうきゅうめいのちょうすけさんと、そちらは?」

Σ( ´_ゝ`)

(´<_` )「鬼畜生とでも」

o川*゚ー゚)o「そうかい、じゅげむじゅげむ、ごこうのすりきれ、かいじゃりすいぎょのすいぎょうまつうんらいまつふうらいまつ、
       くうねるところにすむところ、やぶらこうじのやぶこうじ、ぱいぽぱいぽぱいぽのしゅーりんがん、しゅーりんがんのぐーりんだい、
       ぐーりんだいのぽんぽこぴーのぽんぽこなーの、ちょうきゅうめいのちょうすけさんに鬼畜生さん、囁きの間にどうぞ。」

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/26(月) 02:02:38.55 ID:dD8P3x9c0

( ´_ゝ`)「これだから女は信用ならんのだ」

(´<_` )「人を見た目で判断するなと、格好つけた言い回しでほざいたばかりじゃあないか。」

( ´_ゝ`)「見た目でなど判断するか、女という性別で判断してるんだ、そしてこの判断は往々にして賢明なのだ、
      己れがどれだけの女に泣きを見てきたか、全てを語ればこれから十年は暇が無くなるってんだ」

(´<_` )「女を連れ込んだと思ったら、物の怪で、いきり立った筆をむちりと喰いちぎられたときのことなら、聞いたぞ」

( ´_ゝ`)「思えばそれが空の奴との腐れ縁の始まりだ……
      筆のために開けられた穴の分際で、筆を食い殺すための牙を仕込むなんて正気の沙汰じゃねえ。」

(´<_` )「下の口からものを喰うなら、子は上の口から産むのだろうか…」

( ´_ゝ`)「気持ち悪い想像をするんじゃない……想像してしまったじゃないか。ああ、グロい。」

(´<_` )「物の怪はまた変わった味がして、中々いいものだ。」

( ´_ゝ`)「お前は仕合せそうでいいな…」

(´<_` )「そうでもないぞ。食事が我が儘を云ってばかりで、滅多に満足には喰わせてもらえないから。」

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/26(月) 02:14:05.03 ID:dD8P3x9c0

o川*゚ー゚)o「ごめんくださいまし、おふたりさん、着物に合わせて蒼と黄緑との布をご用意いたしましたよ」

( ´_ゝ`)「女はこういうところが気が利く……ふむう、これで毒牙さえなけりゃなあ。」

(´<_` )「これを、どう巻けばよいのだ」

o川*゚ー゚)o「どうとでもどうぞ。ただ、首さえ見えなきゃいいんさ」

( ´_ゝ`)「首が見えると、どうなる。……上手く巻けん。」

o川*゚ー゚)o「お貸しんしゃい」

( ´_ゝ`)「すまんな」

o川*゚ー゚)o「首が見えると、おっかないのが、首を引きちぎって、頭を持っていっちまうんさ。
       この村に住む、おっかないけだものがね」

o川*゚ー゚)o「そういうわけだから、命が惜しいなら、それを外さんことやね。じゃあ、私はこれで。
       ちなみにウチ、風呂はあるけど飯はでんからな、その辺で食ってきてや。」
 
31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/26(月) 02:23:22.58 ID:dD8P3x9c0

( ´_ゝ`)「野宿でいい、此処から出よう」

(´<_` )「巻いてりゃ平気なら別にいいだろうが」

( ´_ゝ`)「己れやお前の心配をしてんじゃねえ、うっかり布の外れた村人が、ぶちりと首を引きちぎられてみろ。
      それが目の前で起こってみろ。ああおぞましい、考えるだけでおぞましい」

(´<_` )「頭以外は置いていくなら、俺は余った身体を頂けて、とても嬉しい。」

( ´_ゝ`)「流石の鬼畜生だ、これからこの村はクビナシ村じゃなくてゼンブクワレ村だ。」

(´<_` )「語呂が悪いから、カンショク村にしよう」

( ´_ゝ`)「全員喰う気か、お前は……」


33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/26(月) 02:29:40.80 ID:dD8P3x9c0

( ´_ゝ`)「……いいか、お前、己れ以外の人間を喰ったら、怒るからな。」

(´<_` )「へえへえ。云うなら、飯をくれ。」

( ´_ゝ`)「己れの飯を喰ってからだ、そして食後三時間は待て、血の匂いで吐いちまう」

(´<_` )「自分の血の匂いくらい、慣れてくれ」

( ´_ゝ`)「うるせえ、他人の血だろうが、己れの血だろうが、
      血はくせえし、手足が千切れたらグロい、臓物はてらてらしてて、グロいことこの上ない。」

(´<_` )「まったく、困った食料だ。まあ、怖がってくれたほうがより美味いから、都合はいいが」

( ´_ゝ`)「どういうことだ?」

(´<_` )「云ってなかったか。恐怖ってのは、もともと、生きるためのものだ。危機により早く反応するためのものだから。
      だから、恐怖を感じるってことは、生きようとしてるってことに繋がるわけだ。
      生きようとしてる肉ってのは、生命力に溢れていて、だからとても美味い。」

( ´_ゝ`)「まァた、いらん知識を手に入れてしまった。こうなったら、ほとんど忘れないこの脳みそが憎らしい」


      






35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/26(月) 02:44:28.14 ID:dD8P3x9c0

(´<_` )「拷問だとかも、よくしたもんだ。すればするほど、美味くなる。
      死んでしまえば、その努力も水の泡ではあるが。
      それなのに、兄者には一切合財していない俺の思いやりを知ってくれ。
      そんで喰わせてくれ」

( ´_ゝ`)「お前の己れに向かう感情は、喜怒哀楽どの色がついていても、結局それに繋がりやがる」


(´<_` )「仕方ないだろう、腹が減っては」

( ´_ゝ`)「さて、東に茶屋があったかな」

(´<_` )「どれだけ早くても三時間は喰えないのか。
      兄者、俺は賽の河原で石を積んでいる心持だぞ。
      ひとつ積んでは腕のため、ふたつ積んでは脚のため…。」

( ´_ゝ`)「お前が石を積み上げるような柄か、巫山戯やがって、
      真っ先に鬼を石で撲殺して、鬼の肉も食っちまうのがお前だろう。」

(´<_` )「こんなに謙虚な俺に酷いことをいうもんだ、さあさ、さっさと茶屋でも赤屋でも、緑屋でも行くぞ。」

( ´_ゝ`)「お前が駄々をこねたんだろうに…」

(´<_` )「ときに。……鬼は美味いのか、兄者。」

( ´_ゝ`)「知るか、鬼に聞け」

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/26(月) 02:52:12.03 ID:dD8P3x9c0

( ´_ゝ`)「ふうん、確かに皆して、首に布を巻いてやがる」

(´<_` )「そのけだものとやらは、この村に昔から居るんだろうな」

( ´_ゝ`)「そりゃあな、村の名前になるくらいだから、そうなんだろう。……ひょっとすると、不死やもしれん」

(´<_` )「不死じゃあなくても、俺とおんなじような体質なのかもしれん。」

( ´_ゝ`)「体質か。まあ、随分軽く云ったもンだなあ…」

(´<_` )「けだものを、見てみたい気もするな。」

( ´_ゝ`)「頭を喰われたら、厄介だから、見たくないな」

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/26(月) 02:58:10.66 ID:dD8P3x9c0

⌒*リ´・-・リ「お茶と、みたらし団子でございます、お客様」

( ´_ゝ`)「やあ、ご苦労」

(´<_` )「この村の、けだものとやらは、何処に居る?」

⌒*リ;´・-・リ「ひっ」

(;´_ゝ`)「この鬼畜生、幼子はまだ毒牙を持たんのだ、宿屋の主人と同じように扱うんじゃねえ!」

⌒*リ;´・-・リ「こわい、こわい……おいぬさま……」

(´<_` )「こわくない、こわくない。犬畜生。」

⌒*リ;´・-・リ「おいぬさまに、そんなことを言っては、いけませぬ…」

(´<_` )「大丈夫だ、この人が退治をしてくれるから。」

(;´_ゝ`)「お前、何を!」

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/26(月) 03:06:47.85 ID:dD8P3x9c0

⌒*リ;´・-・リ「……ほんとうですか?」

(;´_ゝ`)「い、いや、それは…」

⌒*リ;´・-・リ「そうですよね、おいぬさまは、神様ですから……退治なんて、バチがあたってしまいます。」

⌒*リ;´・-・リ「もう何百年と、この村に、お住まいなのです……」

(´<_` )「憎いやつなのだろう、さまだとか、お住まいだとか、おかしいじゃないか。
      あの犬畜生、この村に住み腐りやがってとか、云えばいい。」

⌒*リ;´・-・リ「駄目なのです、駄目なのです、おいぬさまに逆らっては…」

⌒*リ;´---リ「私のちちさまも、食い殺されました。この首の布を訳もわからずほどいてしまった、幼いわたしを庇って」

(´<_` )「なおさら一層、おかしいな。父親を殺した相手に、さまを付けるなんて風習はあるまい。」

( ´_ゝ`)「……」

( ´_ゝ`)むしゃむしゃ

( ´_ゝ`)むしゃむしゃ

⌒*リ;´---リ「貴方さまのいうとおり、そんな道理はございません。しかし、怖いのです、私たちは、おいぬさまが。
        尊敬と恐怖とは、似通っている部分がございます。ですから、おいぬさまと称しておるのです。
        ……私は、わたしが情けのうございます。」

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/26(月) 03:17:14.19 ID:dD8P3x9c0

( ´_ゝ`)むしゃむしゃ

( ´_ゝ`)むしゃむしゃ

( ´_ゝ`)「……おいぬさま、か」

( ´_ゝ`)むしゃむしゃ

(´<_` )「心当たりでも?」

( ´_ゝ`)「いんや。して幼子よ、そのおいぬさま、頭を喰うのか。」

⌒*リ;´---リ「ああ、私の口からはとてもとても、この恐ろしい答えを云うことが出来ませぬ。
        どうかこれを答えとしてくださいまし…」

( ´_ゝ`)「……そうか、そうか。それで、そのおいぬさまのおわす場所畜生は、何処であられるのかね。」

(´<_` )「また凄いところに畜生をつけたなあ」

⌒*リ;´・-・リ「それは……」

( ´_ゝ`)「己れァ、たぶん強いから、絶対に大丈夫だよ。」

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/26(月) 03:23:39.94 ID:dD8P3x9c0

(´<_` )「情ってもんは、面倒臭いな。俺には無いから、よかった、よかった。」

( ´_ゝ`)「情ってもんは、この己れに唯一ないもんだって、何度云ったらわかるんだ」

(´<_` )「へえへえ、そうですかい。
      して、こんな祠にいらっしゃるのか、その犬畜生。」

( ´_ゝ`)「おい、お前、その布外せ。」

(´<_` )「兄者が外せよ」

( ´_ゝ`)「いやだいやだ。さっさと外せ」

(´<_` )「はあ、損な役回りだこと」


(´<_` ) 


しゅるり。

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/26(月) 03:28:36.14 ID:dD8P3x9c0

( ´_ゝ`)「……む。」

(´<_` )「このかんじ。まるで老人の死体の血液のようだ。食欲が失せる。
      やっぱり物の怪か。物の怪風情が、神様気分で居るなんて。」

( ´_ゝ`)「でもまあ、人間を、しかも頭ばっかを喰ってるだけは、あるじゃあないか。
      何百年生きてるってのも、あながち嘘じゃないのかもな。
      さあ、出てこいよ。こちらに、美味しくない肉畜生がおわしますぞ。」


▼・ェ・▼ わん!


( ´_ゝ`)

(´<_` )

( ´_ゝ`)

(´<_` )


▼・ェ・▼ わん!

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/26(月) 03:34:37.42 ID:dD8P3x9c0

( ´_ゝ`)「……可愛いぞ。」

(´<_` ) 「不味そうだ。」

▼*・ェ・▼ わふわふ!

(´<_` )「……」

( ´_ゝ`)「……」

(´<_` )「あ、兄者危ない」

( ´_ゝ`)「は?」

▼゚ェ゚▼  ガブッ! ムチッ! ブチブチ! ボキィ!

(;´_ゝ`)「己れの腕ェー!?ちょ、ちょ、話しが違うだろうが!首はどうした首は!」

(´<_`#)「ガルルルルル!」

(;´_ゝ`)「獣のように己れの腕を取り合うんじゃあない!」

(´<_`*)「ふん、犬畜生が、調子に乗るな」

(´<_` ) むしゃむしゃ

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/26(月) 03:43:50.05 ID:dD8P3x9c0

( ´_ゝ`)「首むき出しの、弟者には見向きもしない……」

(;´_ゝ`)「これは一体全体、どういう…」

川 ゚ -゚)「その理由を、聞きたいか」

ノパ听) 「きっきたいかぁ?」

lw´‐ _‐ノv 「?かいたきき」

(;´_ゝ`)「弟者!己れの持ちうる、内臓っていう内臓を、全部くれてやるから、全力で逃げろ!」

(´<_` )「おうおう、久々に本気出すぞ?」

o川*゚ー゚)o「それはつまり、こういうことやわ、お二人さん」

( ´_ゝ`)「聞きたいなんて、ほんのちょっぴりも、言ってないのだが……って」

(;´_ゝ`)「まさか宿屋の、お前も素直愚鈍行列の一員なのか!?」

o川*゚ー゚)o「尾来、おいで」

▼・ェ・▼ わふわふ





58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/26(月) 03:55:57.85 ID:dD8P3x9c0

o川*゚ー゚)o「まさか、姉さんらが常々解剖したいって云ってた、兄者がこの村へ来て、
       それでいて私の宿屋にわざわざ来るなんて、あれや、かもねぎ、ってやつやね」

lw´‐ _‐ノv 「ぎねもか、ぎねもか。」

川 ゚ -゚)「チンゲンサイをしっかりしませうとの姉妹の誓いをしっかり守って、弓斗はすぐに連絡をくれた。」

(;´_ゝ`)「なンだ、その、チンゲンサイってのは…」

ノパ听) 「ちんちん、元気、最高!」

( ´_ゝ`)「緋斗は、相も変わらず、莫迦だなあ…」

ノパ听)「ほめても、かいぼうっ、する!」

(´<_` )「それは、美味しそう。」

o川*゚ー゚)o「おいぬさま、こと尾来は、私の命令を忠実に守ってるだけやよ。
       私の命令に従わない、すなわち、首に布を巻かない不届き者を、やっつけろってな。
       これが、結構おるんやわあ。別に、布自体に意味はないわ。
       ただ、私への忠誠心が、簡単にわかりますやろ。」

( ´_ゝ`)「けっ、やっぱり昔の奴の言うこた当たってら。馬鹿と書かれた箱ン中こそ、とんだ曲者が入ってやがる。」

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/26(月) 04:08:29.43 ID:dD8P3x9c0

o川*゚ー゚)o「それ、褒めてくれてはんの?」

( ´_ゝ`)「それくらい、その出来た脳みそで、平らかな胸に聞いてみりゃいいだろ。」

lw´‐ _‐ノv 「たぺるつ」

o川*゚ー゚)o「……今日は、随分と久しぶりにな、尾来に新しい命令をしたんや。
       すなわち、”蒼い布を首に巻いた、間抜け面を喰い殺せ”ってな?」

( ´_ゝ`)

( ´_ゝ`)「……己れ以外に、蒼い布を巻いたやつだって、居ただろう」

o川*゚ー゚)o「そりゃあ、居ますわ。ほら、そこに喰い散らかしがあるやんか。
       でも、いした問題じゃあないでしょう。
       人間なんて、どうせすぐ死ぬ。十年や、二十年、早く死のうが、変わらない。」

( ´_ゝ`)「その十年のあいだに、人間は山ほど、することがあるンだよ。お前等物の怪と違ってな」

(´<_` )「おお、兄者。なんで怒ってるんだ」

(´<_` )「………ああ、成る程。確かに其処の服は、あの茶屋の幼子のものに見える。」

o川*゚ー゚)o「いややわ、幼女趣味?」

( ´_ゝ`)「弟者。その犬、ぶち殺せ」

(´<_` )「喰えもしねェのに、殺すのは気が引ける…。」


64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/26(月) 04:18:56.46 ID:dD8P3x9c0

o川*゚ー゚)o「ふふ、尾来をそう簡単に、どうにか出来ると…」

川 ゚ -゚)「あっ、やばいぞ、きゅう。尾来死ぬぞ」

lw´‐ _‐ノv 「にじぬいにさま」

o川*゚ー゚)o「へ?だってねえさま、何回も兄者を解剖したって言ってたじゃない。
       言っておくけど、尾来は姉さまと負けず劣らずの…」

(´<_` )「兄者、力入れすぎて、犬ころ、あいつの胸みたいになっちまった。」

( ´_ゝ`)「見せるなそんなもん、喰っちまえ。」

(´<_` )「だから、俺は人間しかくわねんだって…」

o川;゚Д゚)o

川 ゚ -゚)「あーあ……本当にきゅうの胸みたいになっちまって…」

o川;Д;)o「びぃいいいいぃいいっぃいいいくるぅぅううっぅうううう!」

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/26(月) 04:31:01.51 ID:dD8P3x9c0

o川;Д;)o「尾来!!尾来!!!もう、もう、何百年も、私と、一緒だった!」

川;゚ -゚)「きゅう、やめろ!」

o川;Д;)o「それをお前等、お前等……貴様らぁああぁあああ!」

(;´_ゝ`)「あっ、莫迦、狙うなら己れを狙え!」

(´<_` )「そんなに泣くなら、死ねばいいんだ。いぬが殺されるような運命を組んだのは、お前だろう。」

o川;Д;)o「アアアアアアアアああぁああぁあああああぁああ!」

(´<_` )「うるせェ喉だな。」

o川;Д;)o「―――!」

(;´_ゝ`)「グロッ、嗚呼、くう、そのまな板を、寄越せ!治療(なお)してやる!
      弟者のこさえた傷は、物の怪風情じゃどうにも出来んぞ!」

川;゚ -゚)「むっ…」

(;´_ゝ`)「うう……グロい…」

川;゚ -゚)「おお………」

(´<_` )「折角、気を利かせてやったのに。捕食者のこころ、餌知らず。
      そいつが、憎いんだろう、兄者。」

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/26(月) 04:47:08.38 ID:dD8P3x9c0

( ´_ゝ`)「……はあ。お前のお陰で、頭が冷えた。ひんやりで、うんざりだ。かえるぞ。」

(´<_` )「なんだなんだ。まったく、情ってやつは理解できん。
      いぬを殺してしゅじんを殺さぬなんて諺は無かったはずだぞ。
      犬だけ死ぬなんて、こんなの不公平じゃないか」

( ´_ゝ`)「仕方ないだろう、
      己れに殺されないためには、ほんの少し己れと交流すりゃいいだけなんだ。
      どうやったって、やっぱり、己れは人なんだって。」

(´<_` )「俺のほうが、兄者なんかより、ずっと公平な存在だ。
      いぬを殺したんだから、飼い主を殺す。それが当然だろう。
      罪はひとしく、どちらにも在るんだからな。」

( ´_ゝ`)「弟者。おまえは、それだからいまひとつ、人間らしくねェんだよ。
      ひとは、不平等なんだ。究極の不平等が、愛ってやつだ。
      愛がありゃあ、殺されたって無罪なんだって。」

(´<_` )「なんだそりゃ。まったくもってくだらんな。
      愛があれば人を喰っても無罪ってんなら、俺は一生懸命不平等になってやるが、どうせ有罪だろう。」

( ´_ゝ`)「どうかな。愛があればこその有罪ってのもあるからな」

(´<_` )「なんだと。もう、八方塞だ。」

( ´_ゝ`)「ついでにその口も、塞いでしまえ。」


75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/26(月) 05:00:09.51 ID:dD8P3x9c0

( ´_ゝ`)「いぬを殺して、わるかったな。
      でも、実際のところは、お前らが悪いんだから、くれぐれも、恨み言を言うんじゃないぞ。」

o川* ー )o「……」

( ´_ゝ`)「…なあ、」

⌒*リ;´・-・リ「おふたりさま!ああ、ご無事で!」

( ´_ゝ`)「・…」

( ´_ゝ`)「ん?」

⌒*リ;´・-・リ「わたくしの勤め先の茶屋の、仲間が、布をしっかりつけていたのに、くびなしになりました!
        こんなこと、今までなかったことです。
        きっと、わたくしがいけないことを願ってしまったから、おいぬさまが、お怒りに!
        いくらおふたりさまがお強くても、と、いてもたってもいられず…」

(´<_` )「いや、兄者の記憶は正常だぜ。あの着物、茶屋の制服だったから、間違いなく、この幼子が着てたやつと同じ色形をしている。」

( ´_ゝ`)「その流暢な援護射撃。あの子のじゃないって、わかってたのか」

(´<_` )「まあ、匂いで。」

( ´_ゝ`)「飯抜き」

(´<_` )「そんな……殺生な…」

76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/26(月) 05:07:26.18 ID:dD8P3x9c0










(´<_` )「どうした、兄者」

( ´_ゝ`)「看板に、またおこしやす、って書かれてる」

(´<_` )「ほう」

( ´_ゝ`)「世界中が崩落して、この村以外は地獄に堕ちたとしても、来ない、こんなとこ。」

(´<_` )「じゃあ、地獄で宴会だ」

( ´_ゝ`)「人肉は、お断りだ」

(´<_` )「えー。」

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/26(月) 05:10:09.28 ID:dD8P3x9c0



ちなみに、この後、くびなし村は、くびあり村に名を変えたそうな。


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